“地殻・マントル変動と地球深部レオロジー” 教授 道林 克禎(地質学) 1965年6月生まれ、1994年James Cook大学(豪)大学院博士課程修了、1994年静岡大学助 手、2013年静岡大学教授、2015年海洋研究開発機構招聘上席研究員 2016年より第3期研究フェロー 研究フェロー 研究概要 専門分野は地質学と岩石のレオロジー(流れ学)である。岩石をプレパラー トに貼り付けて100分の3ミリメートルまで研磨した薄片にすると偏光顕微鏡 でその組織構造を観察できる。さらに、岩石を構成する鉱物の結晶方位や化学 組成は、薄片を電子顕微鏡で分析することによって測定可能である。私はこれ らの手法を使って、地球の層構造である地殻と上部マントルの大構造発達とそ の形成過程を理解することに興味を抱いてきた。特に、地球体積の80%以上を 占めるマントルとその構成物質であるカンラン岩について、日本列島を含めた 西太平洋を中心に調査・研究を続けている。さらにマントル最上部を直接研究 できる場所として世界最深のマリアナ海溝やトンガ海溝の調査を、有人潜水調 査船しんかい6500に乗船しながら6000m以深の超深海の海底調査を海洋研 究開発機構と共同で続けている。また、国際深海科学掘削計画に参加してジョ イデスレゾリューション号による掘削航海に乗船して、小笠原海溝やマリアナ 海溝の海底下の物質を研究している他、超深部探査船「ちきゅう」によるマン トル掘削計画を推進する国際プロジェクトチームの代表者の一人である。 マントル掘削計画(モホール計画)は 太平洋の海底3000mから深さ6km掘 削してマントル物質を直接採取し、地 球の成り立ちを解明することである。 メッセージ 岩石は、川縁に転がっている身近な物質ですが、地球惑星科学の視点でみると、身近な岩石は実は大変貴重な 物質です。一方、地球で最も普遍的で普通な岩石は身近に存在しません。この普通な岩石はカンラン岩という種 類の物質です。カンラン岩は私たちが生きている地殻の地下6kmよりも深いマントルにあって、意外なことに 我々人類は未だこの物質を直接マントル内で確認したことはありません。現在日本では、超深部探査船「ちきゅう」 を使って太平洋の海底3000mから6kmの厚さの海洋地殻を掘削貫通してマントルからカンラン岩を採取する計 画が進んでいます。このマントル掘削計画(モホール計画)は元々1950年代にアメリカ合衆国でアポロ計画と横 並びで発案されたものですが、人類は月に降り立つことができたのにマントルには到達できませんでした。今も なおマントルへの6kmの道程は月より遠く感じます。順調にいけば10年後に計画が実現する予定なので、これ から地球惑星科学を目指す若い世代の活躍と台頭を期待しています。 【主な研究業績】 外部資金獲得状況: 学会等: 科学研究費補助金基盤研究(A) 「マントルウェ 日本地球惑星連合・固体地球セクションボード ッジカンラン岩のレオロジーと変成プロセス」 (2012-現在)・理事(2014-現在)、日本地質学会 (2010-2013) 、科学研究費補助金基盤研究(B) 「マ 代議員(2010-現在) ・岩石部会部会長(2015-現在)、 ントルウェッジ前弧側のマントル流動と地震波特 日本地球掘削科学コンソーシアムIODP執行部会 性」 (2007-2009) 。 (2011-現在)。 国内外の学会誌編集等: 国際誌「Island Arc」編集(2008-現在)、日本 地質学会会誌「地質学雑誌」編集(2014-現在)。 著書・論文: 1)固体地球の事典(分担)/朝倉書店. 2)海洋底調査の基本(分担)/共立出版. 3)「最上部マントルかんらん岩の結晶方位ファ ブ リ ッ ク と P 波 速 度 構 造 」/地 学 雑 誌/124/397409/2015. 4)「カンラン石ファブリック:上部マントルを 探る手がかり」/岩石鉱物科学/41/267-274/2012. 5)「かんらん岩の構造敏感性と弾性的異方性」/ 地学雑誌/117/93-109/2008. Shizuoka University 13
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