ピーチ・アビエーションから読み解くLCCの成功の秘訣

戦略ケース
ピーチ・アビエーションから読み解くLCCの成功の秘訣
構成
1.最低限のサービスで低価格を実現した航空システム
2.日本での本格スタートは 2012 年
3.ピーチ・アビエーションの躍進
4.新規参入が続く LCC 業界
5.LCC の定着に向けて
2012 年に日本に本格参入を果たした LCC3 社であるが、明暗が分かれつつある。ピーチ・アビエーショ
ンが早くも黒字に転換した一方で、バニラ・エア(旧エアアジア・ジャパン)とジェットスター・ジャパンは赤字
から抜け出せずにいる。ピーチ・アビエーションの成功を振り返り、国内での LCC 普及への課題を明らかに
する。
1.最低限のサービスで低価格を実現した航空システム
LCC とは、ローコストキャリア(Low Cost
図表 1
Carrier)という名称が示す通り、低コストの運
航システムによって低価格な運賃を実現してい
る航空会社である。LCC の登場は 1970 年代
の米国サウスウエスト航空の誕生に遡る。サウス
ウエスト航空の低価格運賃が 90 年代に米国
内で人気が出始めると、2000 年代には欧州、
南米、豪州、東南アジアなど世界各地で LCC
が続々と生まれた。各地域における国際線と国
内線の座席キロベースの供給シェアを確認する
と、2001 年時点では北米において LCC がシェ
ア 18%を占める一方で、その他の地域では LCC は 10%にも満たない状況であったが 2012 年になると
全ての地域でシェアは 10%を超え、特に東南アジア(52%)、西欧(39%)では高いシェアを獲得
するまでに成長した。(Centre For Aviation HP)東南アジアでは経済成長に伴う所得増加に伴い
海外への渡航ニーズが増加する中で LCC による低運賃サービスは広く受容されたと考えられ、西欧では
4 時間以内の短距離路線の範囲の中に多くの主要都市があり、その都市間の行き交いが活発であると
いう市場特性が LCC の特性にマッチしていたと考えられる。
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LCC はこれまでの航空サービスでは当然と考えられていたサービスを大幅に省略しコストを抑えることで、
低価格運賃を実現している。
航空サービスにおけるコストには、燃料費などの変動費や、機材の購入費またはリース費用や、運航や
チェックイン、整備に関わる人員の人件費や、機材のメンテナンス費、機内サービスの飲食費や空港利用
料などの固定費がある。LCC はこれらのコストを大幅に削減している。
例えば、LCC では機内での飲食提供サービスが有料となっているケースが多い。飲料等のコストはもと
より、機内で一斉に飲食サービスを提供するために搭乗していた過剰な搭乗員数を減らすことで人件費
コストをも削減している。
また、高稼働によるコスト削減も行っている。機材の減価償却費や空港利用料、メンテナンス業務やチ
ェックイン業務に携わる地上業務の人員や設備は固定費となる。ひとつの機材の稼働率を高めることで、
固定費の割合を下げ運航コストを小さくすることが出来る。大手の全日本空輸の国内線では 1 機材当
たり 1 日 3 往復が平均である一方で、LCC では 4 往復が理想とも言われている。
また、飛行機の機種が異なればメンテナンスや操縦など技術面における必要な知識は多様になる。そ
れをカバーするには人員の拡充や教育コストの負担が必要となるが、LCC では運航機材の統一によって
整備や教育などにかかるコストも効率化している。
以上のように低コスト運航を実現するために提供サービスの削減や有料化、自動化などを極力進めて
いるため、LCC の快適性には多少の難が生まれる。そのため長距離運航サービスには不向きという特性
もある。LCC の運航時間の上限は 4 時間と言われており、実際に 4 時間以内の短距離路線で LCC の
進出は進んでいる。
LCC は劇的な"低コスト低価格"を実現している。国内の航空会社別の輸送人キロあたりの旅客収入
を見ると、大手航空会社である日本航空(17.1 円/人 km)や全日本空輸(17.5 円/人 km)など
の大手航空会社に比べて、ピーチ・アビエーション(8.6 円/人 km)やジェットスター・ジャパン(6.7 円/
人 km)、バニラ・エア(6.1 円/人 km)といった LCC は半額程度の運賃を実現している(国土交通
省「特定本邦航空運送事業者に係る情報」より)。
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図表 2.輸送人キロあたり旅客収入
LCC の実現する低価格は、"安さ"という強力な競争優位をもたらす一方で、非常に重要な制約をも
たらす。多くの搭乗率者数の獲得である。大手航空会社に比べて安価な運賃であるため、搭乗者一人
当たりの利益額も小さくなる。大手航空会社に比べて"薄利多売"を実現しなくてはならない。
一方で企業全体の利益率は大手航空会社を上回ることもある。2014 年 3 月期の全日本空輸の営
業利益率が 4.1%である一方で、2013 年のエアアジアの営業利益率は 19.8%という高い数値を記録
している。
2.日本での本格スタートは 2012 年
当初、国内の低価格航空サービス市場を牽引していたのはスカイマークであった。スカイマークは、
1998 年の就航開始当初は大手航空会社の半額程度の運賃を実現し話題を集め、高い搭乗率を獲
得した。しかし、その後スカイマークの運航時間帯で大手二社がスカイマークの運賃に追随したため低価
格という優位性が霞んでしまい、徐々に勢いを失っていった。新興 LCC3 社の参入の際には、格安航空
会社のライバルの出現に先立ち戦略の方針転換を行った。従来の"低価格"から"低価格と高品質の両
立"への転換と、"国内線のみの就航"から"国際線への進出"への転換である。その方針転換に向けて同
社初の大型機エアバス A380 の購入へとふみきった。しかし、購入契約を締結した当時からスカイマーク
社の経営の状況が大きく変わり、納入受取に関する協議を行う中でエアバス社から契約を解除され違約
金の支払いを請求されるという状況に陥っている。
外資系企業とのイメージが強い LCC だが、航空法では日本の航空会社への外国企業の出資比率を
議決権ベースで 3 分の 1 未満に規制しているため国内で就航を開始した 3 社には全て国内資本、特に
全日本空輸や日本航空といった国内大手航空会社が資本参加していた。
ジェットスター・ジャパンはカンタス航空と日本航空などが出資する合弁会社である。豪州大手カンタス
航空資本の LCC でありながら成功を収めたジェットスター航空のノウハウを日本に持ち込んだのだ。一方
で日本航空は「株主として経営に関わる」というスタンスにとどめ、運航業務やサービス内容への口出しは
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最小限に控えた。
ジェットスター・ジャパンは低価格に強いこだわりを持っており、「最低価格保証」として同一路線、同一
日程、同一時間帯にて他社サイトよりもジェットスター・ジャパンの価格が高い場合、他社の価格の 10%
引きの価格でチケットを提供している。
バニラ・エアの前身であるエアアジア・ジャパンは東南アジアにおける"LCC の風雲児"と呼ばれたマレーシ
アのエアアジアと全日本空輸の合弁会社として大きな話題を呼んだ LCC である。しかし、東南アジアで成
功したノウハウを全面的に活かしたいエアアジアと日本流のサービスにこだわった全日本空輸の間で意識
の溝が埋まらず、就航開始から 1 年とたたず合弁を解消した(2012 年 6 月に提携解消)。その後は
全日本空輸がエアアジアの持つ全株式を買い取り 100%子会社の「バニラ・エア」として 11 月に再スター
トしている。
バニラ・エアは再スタートをきっかけに、コンセプトを"リゾート"にした。成田空港を拠点に就航先は、海外
ではソウルや台北、香港、国内では札幌や那覇、奄美大島といった観光地域として有名なエリアに絞り
観光路線への特化を鮮明にしていった。またエアアジア流のサービスから日本流のサービスへの変更を実
施。その一環として航空券のウェブ予約サービスのシステムの刷新や、エアアジア・ジャパン時代には事前
予約と 20kg 以内で 999 円が必要だった手荷物を預けられる手数料も 20kg までは基本的に無料と
した。
ピーチ・アビエーションは外資系 LCC のノウハウや親会社である ANA からの支援にも極力頼らずにゼロ
ベースで設立された"国産 LCC"である。ピーチ・アビエーションのアドバイザーに就任したアイルランドの
LCC 大手ライアンエアーのパトリック・マーフィー元会長からの助言や、「新会社が独自性を持って経営を
完結させる形を採りたい」という伊藤全日本空輸社長の意向もあって全日本空輸をベースにした提供サ
ービスでなく、ゼロベースでの航空サービスの確立に挑戦していた。
またピーチ・アビエーションの特徴として、他の LCC2 社が首都圏の成田空港を拠点とする中、関西国
際空港を拠点空港としていることもあげられる。今後は、那覇空港を第二の拠点空港とし、東南アジアに
向けた本格就航への足がかりにすることも検討している。
3.ピーチ・アビエーションの躍進
2012 年に、ほぼ同時に就航を開始した LCC3 社だが、就航 3 年目にして唯一黒字化に成功したの
はピーチ・アビエーション(営業収入 305 億 9,500 万円、営業収益 20 億 700 万円、当期純利益
10 億 4,600 万円)であった。他の 2 社はジェットスター・ジャパン(営業収入 290 億 9,100 万円、
営業損失は 170 億 2,900 万円、当期純損失は 111 億 100 万円)、バニラ・エア(旧エアアジア・
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ジャパン、売上高 65 億 9,100 万円、営業損失 56 億 9,000 万円、当期純損失 60 億 500 万円)
がともに赤字から抜け出せずにおり、ピーチ・アビエーションの躍進が際立つ結果となっていた。
ピーチ・アビエーションの躍進の秘訣を紐解くと、"拠点空港の適切な選択"と"信頼感の醸成"というふ
たつのキーワードが見えてくる。
図表 3.LCC 各社の業績
拠点空港の設定は LCC にとって非常に重要な選択である。一般的に新規参入の LCC は通常、限ら
れた機材数での運航となるため大手航空会社のように日本中に航空路線のネットワークを張り巡らせるこ
とは出来ない。そこで拠点空港となるひとつのハブ空港を設定し、そこから各地へと路線を展開する。その
状況下でいかに多くの搭乗者数を獲得できるかが重要となるため、LCC の運航路線の「ハブ」となるべき
拠点空港の選択は LCC の創世期において非常に重要な選択となる。
選択基準のひとつは市場規模である。多くの搭乗者の獲得が必須の LCC にとっては、大都市近くの空
港をハブ空港とすることが望ましい。多くの人口を抱える首都圏には羽田空港と成田空港のふたつの主
要空港がある。羽田と成田のふたつの空港は空港利用者数でも、国内の他の空港を圧倒しており LCC
のハブ空港として非常に魅力的である。しかし、国内線の運航客数で群を抜く羽田空港は航空会社各
社がその離発着枠を熱望するドル箱路線であり、新興の LCC に参入の余地はない。LCC が首都圏の
巨大な市場をカバーしようとすれば、残された成田空港が有力な選択肢となる。
実際に新興 LCC のうち 2 社(ジェットスター・
図表 4.平成 25 年空港別乗降客数(年間)
ジャパン、エアアジア・ジャパン)は成田空港を拠
点空港に設定した。しかし、ここには落とし穴があ
った。首都圏の空港は成田空港が設立されて以
来、長らく「国内線は羽田、国際線は成田」と棲
み分けがなされていた。加えて成田空港は羽田
空港に比べて首都圏からの距離の遠さなどにより
アクセスの不便さがイメージづけられているため国
内線の就航空港としての成田空港のイメージは
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芳しいものではなかった。
加えて、成田空港には深夜から早朝にかけて航空機の離発着が出来ないという制限がある。この制限
は LCC が理想とする 1 日 4 往復と言われる高稼働への大きなハードルとなっていた。
これらの条件によって成田空港は必ずしも LCC のハブ空港として適しているとは言えない状況となってい
た。
新興 LCC ではピーチ・アビエーションのみが拠点空港を関西国際空港に設定した。就航開始当初は
関西圏を拠点空港として設定した判断に疑問が集まったが、この英断がピーチ・アビエーションの黒字化
に大きく貢献したと言える。
関西国際空港は、市場規模自体は首都圏ほどではないものの、関西圏という大きな市場に立地して
いる。また周辺の伊丹空港や神戸空港との棲み分けは明確ではなく国際線、国内線ともに多くの利用
者が集まる空港であり、関西国際空港への国内線利用者を呼び込める素地は十分にあるのだ。
加えて、空港や自治体や財界から大きな支援が見込めることも非常に大きな選択材料となったと考え
られる。関西国際空港を含め関西圏の空港は利用者数で首都圏の 2 大空港から大きく引き離されてお
り、利用者数の拡大は喫緊の課題となっていた。航空サービスの潜在需要の掘り起こしに効果があると
考えられる LCC は関西国際空港にとって重要な航空会社なのであった。ピーチ・アビエーションとしてもいく
つもの困難が伴う創世期に、空港施設や周辺地域から多大な支援があることは迅速な黒字化に向けて
大きな助けとなる。
実際に関西国際空港はピーチ・アビエーションの意向を積極的に取り入れるなど、ピーチ・アビエーション
に対する支援を惜しまなかった。関西国際空港は既存の第 1 ターミナルに加えて LCC 専用の「第 2 ター
ミナル」の建設を進める際も、ピーチ・アビエーションの意向を大きく反映した。第 2 ターミナルの建設費用は
85 億円と、整備に 1,500 億円を要した第 1 ターミナルのおおよそ 1/18 の費用で建設されている。施
設の建設にかかった費用が抑えられたため、賃料や各施設(手荷物検査場など)の使用料が低く抑え
られ、ピーチ・アビエーションにとっても固定コストの低減につながった。
ピーチ・アビエーションへの支援を強化したのは関西国際空港だけではない。ピーチ・アビエーションの朝
一の便は 06:40 の長崎行があったが、チェックインは 30 分前の 06:10 までであった。しかし大阪駅から
鉄道の始発で行っても最寄りの関西空港駅には 06:16 到着となり間に合わない。そこでリムジンバスの
共同運行を行う関西空港交通、大阪空港交通、阪神バスの 3 社は関西国際空港―梅田の運行を早
朝と深夜で一便ずつ増便し、ピーチ・アビエーションの始発に間に合うアクセスを確保したのだ。ピーチ・アビ
エーションの旅客増は、将来的にはリムジンバスの利用増にもつながる、と考え支援に踏み切った。
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他にも大阪府などの自治体や経済団体などでつくる関西国際空港全体構想促進協議会(以下、
促進協)は、12 年度からピーチ・アビエーションを念頭に置いた就航奨励策を導入した。着陸料の補助
として最大 2 億円程度の支給や、新路線への就航や既存路線での増便の際に、最初の 1 年限定で着
陸料の 20%を促進協が肩代わりするなど、強力な支援策を打ち出した。それまでは全ての航空会社に
同じ補助をしてきたが、ピーチ・アビエーションはより経済効果が大きいとみてより手厚い補助を行った。
ピーチ・アビエーションは、こうした空港施設や自治体などからの手厚い支援を受けて、順調に利用者を
拡大するとともに黒字化へと突き進んでいった。
ピーチ・アビエーションは運航サービスにおいて重要視していたのが"信頼感の醸成"である。そのためにこ
だわっていたのが、"定時運航率"と"就航率"のふたつの基本項目であった。航空サービスの利用者は、
大前提として「ちゃんと飛ぶこと」であり、それが損なわれてしまえばいくら安くとも利用者は増えない。
日本に LCC が参入した頃にはその安全性を疑問視する消費者も多かったと思われる。「安かろう、悪
かろう」の意識が強く、機材や整備に対して不安を抱く旅行客はなかなか LCC の利用に踏み切れなかっ
たと考えられる中で、航空便の欠航や遅延が頻発すれば LCC のイメージダウンは避けられない。加えて、
同じ機体を高頻度で運航する LCC は、ひとつの遅延や欠航が同じ機材を使う予定であったその後の便
にも大きく影響を及ぼすため、大手航空会社よりも遅延や欠航のリスクは非常に大きい。
"定時運航率"と"就航率"を高めるた
図表 5.航空各社の欠航率
めにピーチ・アビエーションは、整備を重点
的に強化している。整備体制に関しては
全日本空輸本社から整備に関するエキ
スパートの人的支援を受けた。ピーチ・ア
ビエーションは全日本空輸の助力によっ
て整備体制を万全にしたこともあり、欠
航便の発生率は初年度こそ 2.81%だっ
たものの、以降は 0.96%(平成 24 年
度)、0.55%(平成 25 年度)と大
手航空会社にも引けを取らない非常に
優れた実績を残すまでに至った。
欠航便の少なさは、利用者にとっても「ピーチ・アビエーションは安全で確実」という安心感の醸成に繋り
利用者の拡大にも寄与したと考えられる。
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4.新規参入が続く LCC 業界
LCC が日本国内で普及していく中で、海外からの国内 LCC への参入も続く。
中国の春秋航空は 2012 年に春秋航空日本株式会社を設立し、2014 年 8 月に就航を開始した。
今後も、中国から日本への観光客は増加すると見込み、中国人観光客による日本国内の移動需要の
獲得を目指している。
国内利用客に向けても、成田-広島の早朝便(朝 06:55 発)のため新宿駅を深夜に出発する
無料シャトルバス(新宿駅 03:30 発)を運行するなど利用客向けのサービス充実に努めている。
提供サービスに対する考え方の違いから全日本空輸と決別したエアアジアは、楽天、ノエビア等の新し
いパートナーと共に日本への 2015 年の夏に日本への再参入を計画している。提供サービスの異なる全
日本空輸との合弁会社では自社の培ってきたサービスを満足には提供出来なかったが、今後は東南アジ
アで LCC を定着させた自社サービスのノウハウを遺憾なく発揮することになる。
5.LCC の定着に向けて
広大な国土を誇るアメリカや、海に囲まれた島々が多い東南アジアと異なり、日本は狭い国土の中で
鉄道網や道路網が整備されているなど LCC の定着に向けた障壁は高い。今後 LCC が日本に定着する
のに必要なのは何なのか、課題を見ていく。
まず挙げられるのが、"LCC 需要の掘り起こし"である。ピーチ・アビエーションであれば、関西国際空港
が立地する関西圏には京都の神社仏閣や大阪市街、神戸市街等の観光地が多くあり、渡航先として
の魅力がある。その魅力を香港や台湾などで PR したこともあって各地から関西国際空港への渡航ニーズ
の掘り起こしにも成功した。就航先の各地からハブ空港への就航ニーズを引き出す取組みも非常に重要
となる。
また、これまでになかった新たな就航ニーズの創出も必要と言える。東京や関西から沖縄や札幌、福岡
などへは観光やビジネスなど渡航ニーズが大きく、既に大手航空会社がその路線で多くの航空便を運航
している。その激戦区に飛び込むよりも、現在は就航ニーズが小さく大手航空会社が手薄となっている路
線に就航し、就航先の観光地を盛り上げ、観光ニーズを高める努力など、"就航先とともに成長する"こと
も必要と考えられる。
日本にローカライズされた"日本流 LCC の確立"も必要となる。日本では独自に鉄道や航空などの交
通インフラサービスが発展してきた背景もあり、日本人の求める交通インフラサービスの基準は欧米や東
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南アジアのそれとも異なっている。日本人の利用客のニーズを見極め、削れるサービス、維持するサービス、
付加すべきサービスなどを見極める高度な需要の読みとバランス感覚が求められる。
最後に、今後 LCC が日本国内に定着するには、大手 2 社に頼らない"独立系 LCC の躍進"が必須
事項と言える。大手航空会社が親会社では、路線決定や価格の設定において親会社の利益を損なわ
ない選択を行うこととなってしまう。日本に LCC が定着するためにも、人気の路線や時間帯にも堂々と踏
み込んでいける独立系 LCC の躍進が望まれる。
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