自動車走行に係る環境影響評価のための産業連関表の

C2-18
第 7 回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2012 年3月)
自動車走行に係る環境影響評価のための産業連関表の拡張
Extension of Input-Output Table for Environmental Impact Assessment
Caused by Road Transport
○井伊 亮太*1)2) 中谷 隼 1), 栗栖 聖 1), 花木 啓祐 1)
*Ryota II, Jun NAKATANI, Kiyo Hasegawa KURISU and Keisuke HANAKI
1)東京大学, 2)パシフィックコンサルタンツ
[email protected]
1.
はじめに
数量を用い同部門の投入係数を作成する。金額から数量
産業連関表では、製造業等が多部門に分かれているの
に変換することで、輸送数量の指標と対象とする環境負
に比して、自動車走行は、二酸化炭素等の大気排出物質
荷の比例性の程度に応じ、環境負荷推計の正確性が増す
などで寄与の大きい環境負荷発生源であるにも係らず、
ことが期待される。また、積み上げ法の輸送数量データ
部門解像度が粗い。例えば道路貨物輸送は営業用と自家
を輸送単価で換算せずに接続可能な点で積み上げ法との
用の2部門しかない。この点は、産業連関表に基づく環
親和性が高まり、LCI 実施において金額が出現すること
境負荷誘発原単位における不確実性要因となっている可
への関係者の違和感を回避できるため、ハイブリッド法
能性がある。また、いわゆる積み上げ法の LCI データを
の受容性の向上も期待できる。産業連関表付帯物量表に
産業連関表と組み合わせてハイブリッド法による LCI を
は輸送部門は含まれないため、輸送数量の指標(単位)
実施しようとした場合、前者に含まれる輸送(自動車走
の設定と、輸送数量の取引別推計が必要である。
行)のデータを産業連関表の自動車輸送部門と接続させ
②車種等別部門分割型拡張方法
る際にも、後者の単位が金額基準で区分が粗い点が制約
となりうる。
輸送指標と環境負荷の関係の変動性を低下させる方法
として輸送部門を車種等別に分割する方法が考えられる。
本研究では、自動車交通のうち多くの LCA において対
③一次波及分付帯表型拡張方法
象プロセスとして含まれる貨物輸送を対象として、以上
上記の①及び②は自動車輸送に限らない一般的方法で
の課題に対応するために産業連関表を拡張する方式につ
あるが、ほぼ全ての部門に産出する自動車輸送の特徴を
いて、試算を含む検討を実施した。
踏まえ、自動車輸送起源の環境負荷量の一次波及分を付
2.
帯表として設ける方法を提案する。
自動車走行に係る産業連関表の拡張方法
2.1 通常の環境分析用産業連関表を利用した LCI 手法
評価対象部門 i の生産1単位が誘発する輸送部門t の生
産額を Bti(B はレオンチェフ逆行列)とすると、輸送部
門 t から発生する誘発環境負荷量原単位はεkit=Bti×ekt と
して求まる。ここで、ekt は輸送単位額あたりの環境負荷 k
の直接環境負荷発生量であり輸送部門 t 全体の直接環境
負荷年間発生量Ekt を同部門の国内生産額Pt で除して得る。
本法では、輸送部門の産出先部門の自動車利用態様に
よらず ekt は一定値をとる。積み上げ法データとの接続に
おいては、車種や積載率の違いは考慮できず、単一の平
均輸送単価を仮定して換算する必要がある。もしくは、
輸送単価がそれらの違いを反映しており環境負荷評価で
もその違いを考慮することが妥当であれば、積み上げ法
すなわち、利用部門毎の輸送実態の違いを原単位に反
映させる方法として、利用部門(j)別に自動車走行に係
る項目 k の直接環境負荷単位発生量 ekjt を推計し、εkt=Σ
k
(ekjt=Ekjt÷Pj)
j Bji×e jt として求める。
本法は、既存の環境分析用産業連関表の部門別二酸化
炭素排出量と同様に、産業連関表の付帯表形式で部門別
に当該部門が投入する自動車走行に伴う直接環境負荷量
を整理し、その結果を利用するものである。
適切に ekjt が推計できれば、部門間の自動車利用態様の
相違を反映可能である一方、ekjt÷Ajt の部門間の変動が小
さければ意義は小さい。本法は①及び②と組み合わせ可
能ではあるが、①及び②を使用しない場合に有効性が高
まると考えられる。
本法では、道路貨物輸送に係る環境負荷量(活動量)
の輸送数量に当該輸送態様に即した輸送単価を適用して
金額に換算し、産業連関表に組み合わせることになる。
のみ一次波及を産業連関表とは別に予め求めていること
になる。このため、レオンチェフ逆行列に基づき計算し
2.2 自動車走行に係る産業連関表の拡張方法
以下の 3 つの組み合わせ可能な方法があると考えた。
た場合の道路貨物輸送への一次波及量とは比例しない。
3.
①金額物量混合型拡張方法
試算方法
産業連関表において、輸送部門の産出量を金額から輸
道路貨物輸送を対象に前節③の方式による試算を、
送数量に置換し、同部門の国内生産額にかえて国内生産
NIES/3EID と同じ正方行列化した場合の約 400 部門を
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第 7 回日本LCA学会研究発表会講演要旨集(2012 年3月)
対象に平成 17 年表について実施し、通常の方法の結果と
3.3 部門別輸送量または走行量原単位の試算
比較した。既存の産業連関表では、営業用貨物車による
①通常の環境分析用産業連関表を利用した LCI 手法:Ekt
「道路貨物輸送」部門と自家用貨物車による「自家輸送
として自動車輸送統計より車種別年間トンキロまたは台
(貨物自動車)
」仮設部門がある。前者は、生産者価格に
キロを引用した。
加えて産出先別に構成される国内貨物運賃と、後者と同
②一次波及分付帯表型拡張方法:Ekjt として、3.1 または
様に生産者価格を構成するコスト運賃の二つからなり複
3.2 で推計した結果を用いた。
雑なことから、前者を試算対象とした。ここでは、環境
4.
負荷そのものではなく環境負荷推計上の有力な活動量指
標である車種別の輸送量及び走行量を試算対象とした。
3.1 部門別輸送量(トンキロ)の推計
積み上げ法 LCI では、輸送プロセスの基準フロー(単
位)は「トンキロ」が多い(例:CFP 試行事業 CO2 換算
量共通原単位データベース)点を踏まえ、部門別輸送ト
ンキロを推計した。自動車輸送統計(平成 17 年、以下「輸
送統計」という。
)の車種別に、以下の手順で推計した。
①輸送統計の 36 品目別輸送トンキロの推計:輸送統計報
告(流動表)の営業用車種別品目別距離帯別輸送トン数
より品目別輸送距離を設定し、これに輸送統計月報より
4.1 部門別輸送量・走行量の推計
輸送統計とIO表の基本部門分類とを対応付けた結果と
して、輸送統計での輸送トンキロ(全車種合計、以下同
様)
とIO 表の輸送金額との品目毎の関係を図S1 に示す。
図 S1 中の直線の傾きは IO 表の道路貨物輸送の国内生産
額を輸送統計の合計輸送トンキロで除した平均輸送単価
(約 45 円/tkm)に相当する。比較的多くの品目が直線
のまわりに位置している一方で、直線からの乖離が大き
い品目もある。この乖離は、品目別輸送単価の相違(物
量化の必要性)と対応付けの限界(誤差の導入)が要因
として考えられるが、さらに検証が必要である。
求めた年間輸送トン数を乗じた。2 品目ある「くずもの」
は合算して 1 品目とした。
②輸送統計 36 品目と IO 表の約 500 行部門(国内貨物運
賃)及び約 400 列部門(コスト運賃)の対応表の作成:
輸送統計の対象品目と IO 表の部門を対応づける対応表
約 400 投入列部門別輸送量及び走行量の推計結果とし
て、各列部門の輸送量と道路貨物輸送の投入額を比較し
た結果を図 S2 に示す。また、輸送量と同様に走行量に係
る比較を図 S3 に示す。それぞれファクター2の範囲に収
まる部門が多いことが分かった。
は産業連関表作成時に作成されているが、非公表である。
よって、輸送統計の品目の例示等を参考に対応表を作成
した。対応づけが難しいと判断した部分については、産
業連関表作成での担当部局に問い合わせを行い、回答が
得られた部分はその結果を踏まえて修正した。
輸送量と走行量の部門別の比較を図 S4 に示す。部門間
の道路貨物輸送の車種と積載率の違いにより変動がみら
れるが、全体として相関は高い。
4.2 誘発原単位の試算
通常の方式と「一次波及分付帯表型拡張方法」による
③36品目別約500 産出行部門別約400投入列部門別輸送
量(国内貨物運賃分)の推計:品目毎に、対応する行部
門の国内貨物運賃(道路)及び列部門の道路貨物輸送(コ
スト運賃)の合計(A)を分母に、産出先部門別国内貨物
運賃(道路)を分子とした割合で、当該品目の輸送量①
を按分した。
④約 400 列部門別輸送量(国内貨物運賃分)の推計:③
部門別誘発輸送量原単位の計算結果の比較を図 S5 及び
S6 に示す。両者の順位相関係数は 0.95 と高かったが、誘
発輸送量の大きい部門で後者の値が大きくなる傾向がみ
られる(表 S1)など数値は異なっていた。誘発走行量原
単位(表 S2)では、順位相関係数は 0.91 に低下した。
5.
⑤約 400 投入列部門別輸送量(コスト運賃分)の推計:
品目毎に輸送量を、A を分母に、対応する列部門の国内
貨物運賃(コスト運賃)投入額を分子とした割合で按分
した。品目毎の結果を合算し約 400 列部門別の値を得た。
⑥約 400 投入列部門別輸送量の推計:⑥=④+⑤
おわりに
産業連関表を用いた自動車走行由来の環境負荷量につ
を品目及び産出行部門について合算した。
いて、利用部門別の推計精度と積み上げ法との親和性を
高める観点から、推計手法を検討するとともに、営業用
貨物自動車による品目別車種別の輸送量と走行量を求め
て産業連関表部門別数値に変換し、これを用いて誘発原
単位を試算した。その結果、通常の手法とは異なる値が
得られ、ここで検討した手法の有用性が示唆された。た
3.2 部門別走行量(台キロ)の推計
車種別品目別トンキロ(3.1①)を、車種別品目別積載
重量(トン/台)を用いて、車種別品目別台キロに換算
だし、実用に向けては自動車輸送統計と IO 表との対応付
け等に検証すべき点が残る。
なお、自動車輸送統計から求めた輸送トンキロは、品
し、トンキロと同様の手順で推計した。車種別品目別積
載重量としては、平成 17 年道路交通センサスの OD 調査
マスタデータ(オーナーインタビュー調査;平日)を集
計した結果を用いた。
結果と考察
目間で大きさが全く異なる。輸送量が大きくかつ品目内
で輸送態様の相違が大きいと想定される品目(例:食料
工業品)の輸送統計における分割が期待される。
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Supporting Information
産業連関表での輸送金額(百万円)
2,500,000
取り合せ品
2,000,000
機械
食料工業品
1,500,000
日用品
1,000,000
500,000
その他の製造工業品
金属製品
野菜・果物
その他の化学工業品
紙・パルプ
鉄鋼
その他の窯業品
くずもの
木材
分類不能のもの
輸送用容器
0
0
10,000,000
20,000,000
30,000,000
40,000,000
50,000,000
化学薬品
営業用貨物車
自動車輸送統計(千トンキロ)
図 S1 自動車輸送統計の品目別輸送トンキロ算定結果と対応させた産業連関表部門の輸送金額との比較
注)直線は、自動車輸送統計の輸送トンキロ合計と道路貨物輸送部門の国内生産額との関係を示す。
7,000,000 1,800,000 5,000,000 y = 21.717x + 34960
R² = 0.9193
4,000,000 冷凍魚介類
3,000,000 ÷2
2,000,000 郵便・信書便
1,000,000 直接走行量 千台km
6,000,000 直接輸送量 千 t.km
1,600,000 ×2
一般飲食店
(除喫茶店)
1,400,000 ×2
1,200,000 y = 3.99 x + 17,816.91 R² = 0.76 1,000,000 冷凍魚介類
800,000 ÷2
600,000 400,000 再生資源回
収・加工処理
200,000 冠婚葬祭業
0 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 道路貨物輸送部門からの投入額 (MY‐道路貨物輸送)
図 S2 列部門の輸送量と道路貨物輸送部門からの投入額
冠婚葬祭業
0 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 道路貨物輸送部門からの投入額 (MY‐道路貨物輸送)
図 S3 列部門の走行量と道路貨物輸送部門からの投入額
• 図中の中央の赤の実線は、全体合計に対応する。
• 図 S2 で、冷凍魚介類部門の直接輸送量が投入額に比して大きい傾向にあるのは、自動車輸送統計品目の水産品の輸
送量の按分結果による。
• 図 S2 で、冠婚葬祭業の直接輸送量が投入額に比して小さい傾向にあるのは、自動車輸送統計には冠婚葬祭業の輸送
量(霊きゅう)が把握されていないことによる。自動車輸送統計の営業用自動車の対象範囲よりも産業連関表の道路
貨物輸送部門の対象範囲の方が概念的に広い部分があると考えられる。
• 図 S3 で一般飲食店の直接走行量の投入額に対する割合(傾き)が他部門に比して相対的に大きくなるのは、入荷
において、普通車に対して特種車の比率が相対的に高く、かつ、特種車のトンキロを台キロに変換する際に増加
したためである。
1,800,000 1,600,000 1,400,000 y = 0.1858x + 10506
R² = 0.8474
千台km
1,200,000 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 0 1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000 7,000,000 千tkm
図 S4 輸送量と走行量の部門別比較:年間総量表示
表 S1 誘発輸送量原単位(千 tkm/百万円)の上位 10 位の比較
従来の方式
順位
部門
一次波及分付帯表方式
数値
部門
数値
1
再生資源回収・加工処理
6.7 再生資源回収・加工処理
6.7
2
肉鶏
2.0 パルプ
3.5
3
段ボール
2.0 肉鶏
3.1
4
鶏卵
1.9 鶏卵
3.0
5
と畜(含肉鶏処理)
1.8 木材チップ
2.9
6
生コンクリート
1.7 素材
2.9
7
パルプ
1.7 と畜(含肉鶏処理)
2.9
8
段ボール箱
1.6 肉用牛
2.6
9
豚
1.6 生コンクリート
2.5
10
肉用牛
1.6 豚
2.5
• パルプ・木材チップの数値の上昇は自動車輸送統計の木材の輸送量を、肉鶏等の上昇は動植物性肥・飼料を、それぞ
れ反映している。
表 S2 誘発走行量原単位(千台 km/百万円)の上位 10 位の比較
従来の方式
順位
部門
1
再生資源回収・加工処理
2
肉鶏
3
段ボール
4
鶏卵
5
と畜(含肉鶏処理)
6
生コンクリート
7
パルプ
8
段ボール箱
9
豚
10
肉用牛
一次波及分付帯表方式
数値
部門
1.47 再生資源回収・加工処理
0.44 パルプ
0.43
0.41
0.40
0.37
0.37
0.36
0.35
0.35
ぶどう糖・水あめ・異性化糖
内水面漁業・養殖業
と畜(含肉鶏処理)
木材チップ
素材
肉鶏
冷凍魚介類
鶏卵
数値
0.57
0.52
0.48
0.44
0.44
0.43
0.43
0.38
0.38
0.36
• 再生資源回収・加工処理の数値低下は鉄くず等の高い積載量を反映している。/食料工業品は、特種用途車による輸
送割合が高く、かつ、特種用途車の積載量(kg/台)が小さい。このため、食料工業品の入荷輸送金額の生産額に対
する比率が高い部門(ぶどう糖・水あめ・異性化糖)では、
(車種合計した)走行量原単位が大きくなる傾向がある。
図 S5 輸送量誘発原単位の部門別比較
• 縦線の上端と下端は、それぞれ、一次波及分付帯表方式による数値または従来の方式による数値に対応する。
• 青は、一次波及分付帯表方式による数値が従来の方式よりも大きくなった部門である。
(上端が一次波及分付
帯表方式による数値、下端が従来の方式による数値)
• 赤は、一次波及分付帯表方式による数値が従来の方式よりも小さくなった部門である。(上端が従来の方式に
よる数値、下端が一次波及分付帯表方式による数値)
図 S6 走行量誘発原単位の部門別比較
• 縦線の上端と下端は、それぞれ、一次波及分付帯表方式による数値または従来の方式による数値に対応する。
• 青は、一次波及分付帯表方式による数値が従来の方式よりも大きくなった部門である。
(上端が一次波及分付
帯表方式による数値、下端が従来の方式による数値)
• 赤は、一次波及分付帯表方式による数値が従来の方式よりも小さくなった部門である。(上端が従来の方式に
よる数値、下端が一次波及分付帯表方式による数値)