末端平滑化を伴うプラスミドの改変

June 12, 2014
末端平滑化を伴うプラスミドの改変
Kenichiro Donai
vector 構造の組換えを行う際、丁度良く粘着末端を形成する制限酵素部位が
ないこともある。
この protocol は pB-CAG-RudolphRFP-IRES-cometGFP (DNA2.0 のものを
改変)の IRES-cometGFP の部分と、CSII-CMV-MCS-IRES2-mRFP1 (RIKEN
BRC)の IRES2-mRFP1 部分を入れ替えた際の方法を例とし、末端平滑化を伴う
プラスミド作成の protocol を示す。
MluI
BamHI$
PB’$5
RFP$
(MCS)
CAG$
IRES
GFP
BamHI$
CMV
PB’$5
CAG$
MCS
RFP$
(MCS)
PGK
hygror
PB’$3
hygror
PB’$3
NotI
IRES2
IRES2
mRFP1
mRFP1
PGK
Vector: piggyBac-CAG-RudolphRFP-IRES-CometGFP
(https://www.dna20.com/eCommerce/catalog/datasheet/53、
Mammalian promoter を hEF1alpha から CAG へ改変)
Insert: CSII-CMV-MCS-IRES2-mRFP1
(http://ja.brc.riken.jp/lab/cfm/Subteam_for_Manipulation_of_Cell_Fate_J/Pla
smid_List_J.html)
制限酵素部位の探索
組換えを行いたい部位周辺で制限酵素部位が存在するかどうかを sequence
や map で探す。
注意すべき点は、IRES などの領域の途中で切らないようにすること、また組
換え後に ORF の中でフレームシフトが起きないようにすることである。
今回 swap して導入したい部分は、CSII の中の mRFP1 の部分だけであるが、
その前後に適切な制限酵素部位がないことと、両ベクターの MCS の後ろに粘着
末端を形成する制限酵素部位が豊富に存在することから、IRES-cometGFP と
IRES2-mRFP1 ごと切り出し、組換えることとした。cometGFP の後ろには MluI
サイト、mRFP1 の後ろは NotI サイトになっているため、平滑末端化して対応
する。これによって粘着末端-平滑末端の insert となる。
制限酵素による切断(1回目)
5’末端側は両ベクターともに BamHI サイトがあるため、3’末端側を先に処理し、
平滑化を行う。確実に切断するため、制限酵素処理は全て o/n で行う。
DNA
DNA
(Vector)
20μg 分
10x buffer
25μl
制限酵素
(MluI)
(Insert)
10x buffer
20μg 分
25μl
制限酵素
2.5-5μl
(NotI-HF)
2.5-5μl
DW
残り
DW
残り
total
250μl
total
250μl
37℃ウォーターバスやビーズバスで 10h 程度反応させる。
必ず電気泳動を行い、1 本のバンドになっているかを確認
する。
T4 DNA polymerase による平滑末端化
T4 DNA polymerase は 5’→3’ polymerase 活性と 3’→5’ exonuclease 活性を
有している。例えば、NotI 部位を例に取ると、以下のようになる(黄+水色が
insert 側になる)。
G C G G C C G C → G C G G C C + G G C C G C
C G C C G G C G → C G C C G G + C C G G C G
1.
切断を終えた 250μl の入った 1.5ml tube に、25mM dNTPs を 2μl、T4
DNA polymerase (M0203, NEW ENGLAND Biolabs) を 1μl 加え、よく
混合する。
2.
37℃ウォーターバスで 15 分 incubate する。
3.
LaboPass mini (COSMO Genetech)に付属している AW buffer を5倍相当
量(1000μl で良い)加え、よく混合する。
4.
2本のカラムに半分ずつ加え、1min 遠心し廃液を捨てる。
5.
PW buffer を 750μl ずつ加えカラムを洗浄する、1min 遠心し廃液を捨て、
さらにもう 1min 遠心しカラムから PW buffer を完全に切る。
6.
2本のカラムをそれぞれ新しい 1.5ml tube に挿し、45μl の EB buffer を
加え 1min 静置する。1min 遠心し、1 本の tube にまとめる(計 90μl)。
制限酵素による切断(2 回目)
DNA
DNA
(Vector)
90μl
(Insert)
90μl
10x buffer
10μl
10x buffer
10μl
制限酵素
(BamHI)
制限酵素
2.5-5μl
(BamHI)
2.5-5μl
37℃ウォーターバスやビーズバスで 10h 程度反応させる。
必ず電気泳動を行い、2 本のバンドになっているかを確認する。
M vector insert
← vector は上のバンドが目的部分
← insert は下のバンドが目的部分
切断が確認できたら、回収用のゲルに DNA を全量流し回収を行う。
DNA のゲルからの回収
① 大きい方のコームで、大判の 0.8%アガロースゲルを作成する。
② 100μl の切断溶液に 10μl の 10x Dye をそれぞれ加える。
③ 計 110μl になった溶液をそれぞれ4well ずつに分けてアプライし、DNA ラ
ダーの黄色マーカーがなくなるくらいまで電気泳動する。Buffer には新しい
TAE buffer を使うこと。
⑤ ゲルをラップを敷いた机に置き、ハンディ UV(long wave のもの)でバン
ドを確認、ゲルのバンド部分を切り出す。DNA が損傷するため UV を照射しす
ぎないようにする、また防護メガネを必ず着用すること。
⑥ 切り出したゲルを2レーン分ずつ一つの 1.5ml チューブに入れる(計 4 本)。
ゲルが大きいとチューブに入らなかったり、後述の GB Buffer が溢れたり、溶
解に時間がかかって回収量が落ちたりする。切り出しの際には出来るだけ、バ
ンドの部分だけを切り出し余計なゲルを持ち込まないようにすること。
⑦ ゲルの入ったチューブに Labo Pass™ Gel (COSMO Genetech)付属の GB
buffer を 700μl 加える。
⑧ 65℃に加温したヒートブロックにチューブを入れ、ゲルを完全に溶解する。
5 分以内には溶かしきること(もっとかかるようならゲルが大きすぎる)。
⑨ 1ml 程度の GB-gel Solution が 4 本出来るので、1 回目 700ul、2 回目 300ul
というように 1 本を 2 回に分けてカラムを通し、全量を 15,000rpm で遠心す
る(時間は 1 分弱、液が全て下に落ちれば良い)。廃液は捨てる(4本のチュ
ーブから4本のカラムチューブが出来る)。
⑩ カラムに GB Buffer を 500μl 加え、再び遠心する。廃液は捨てる(ただし、
ゲルの溶解に時間がかかっていたりして収量が少なそうな時は行わなくて良
い)。
⑪ NW buffer をカラム 1 本あたり 700μl 加え、遠心して廃液を捨てる。
⑫ もう一度 2 分間カラムを遠心し、buffer を完全に切る。
⑬ vector 側の 1 本、insert 側の 1 本のカラムにそれぞれ EB buffer を 50-55μ
l 加え 1 分間静置する。その後遠心して溶液を得たら、その溶液を buffer を加え
なかった残りの対応するカラムにそれぞれ加え、もう一度 1 分間静置する。再
び遠心し、溶液を得る。これで、vector 側、insert 側ともにカラム2本分の DNA
溶液をそれぞれ 50-55μl 得ることになる。
⑭ 回収した DNA の濃度を測定する。溶解を手早く行っていれば 20ng/λ弱の
濃度になっているはずである。
Ligation
プラスミドの長さや transformation の効率によって、通常の Ligation Kit か
Ligation Kit Long (ともに TaKaRa Bio)を使い分ける。
Ligation Kit の場合 (反応系 10μl)
Tube 1 (self ligation を確認するための negative control として必ず置く)
Arm 1μl + DW 4μl+ Enzyme Mix I 液 5μl
Tube 2
Arm 1μl + Insert 4μl + Enzyme Mix I 液 5μl
Tube 3 (2つ目の Negative Control、あれば望ましいがなくても良い)
DW 1μl + Insert 4μl + Enzyme Mix I 液 5μl
16℃のビーズバスで 1h incubate する。
Ligation Kit Long の場合(反応系 25μl)
Tube 1 (上記同様の Insert なし)
Arm 25-50ng 分
10x buffer 2.5μl
DW 計 24μl に届く分量
Tube 2
Arm 25-50ng 分
Insert 25-50ng 分
10x buffer 2.5μl
DW 計 24μl に届く分量
① 上記を調整したら、65℃ヒートブロックで 3 分間加温し、その後氷上で3分
間急冷する。
② DNA Ligase <long>を 1μl 加え、よく混合する。
③ 16℃ビーズバスで 15 時間ほど incubate する。
Transformation
① Ligation の済んだプラスミド溶液を氷上においておく。
② Competent E.Coli を氷上で解かす。
③ 解けるのを待っている間に、新しい 1.5ml チューブに、プラスミド溶液を 5
μl ほど取る。
④ Competent E.Coli をそれぞれのチューブに 50μl ずつやさしく加え、氷上で
10-30 分静置する。
⑤ 37℃に加温したウォーターバスで 2 分間 incubate する(絶対に揺らさない
こと)。
⑥ 再び氷上に戻し 5 分間静置する(ここも絶対に揺らさないこと)。
⑦ 50ml チューブに SOC 培地(37℃に加温しておく)を 945μl 入れ、そこに
上記の菌液 55μl をやさしく加える。37℃、150-200rpm で振とう培養する。長
鎖のプラスミドや増えにくいものはこの pre-incubation の時間を長めにとる
(5時間ほど)。
⑧ incubation した溶液を 1.5ml チューブに移し、8,000rpm で3分間遠心し集
菌する。上清を 150-200μl ほど残して捨て、やさしく suspend する。
⑨ suspend した菌液を plate に撒く(量は調節する、生えにくいものは全部撒
く)。翌日 plate を確認し生えているかを確認する。ターゲットのものが、
self-ligation のコントロールよりも 2 倍くらい多く生えていれば成功している
可能性が高い。ただし、Ligation Kit Long を使った場合など ligation 効率が高
すぎる場合、コントロールとターゲットのコロニー数が同程度になることがあ
る。ターゲットのコロニー数がある程度あれば成功している可能性が高いので、
pick up してプラスミドを抽出し制限酵素切断によって確認をしてみる。