博士論文 豚におけるサルモネラおよび 大腸菌感染系の確立と 抗菌剤代替物質評価への応用 2014 年 8 月 田中剛志 1 The development of infection models for S . Typhimurium and E. coli and their application for evaluation of antimicrobial substitution Tsuyoshi Tanaka 2 目次 第一章 緒論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 第二章 豚 サ ル モ ネ ラ ・ テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確 立 ・ ・ ・ ・ ・ 11 第三章 豚サルモネラ・ティフィムリウム感染系を用いた乳酸添加飼 料 の 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 35 第四章 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 47 第五章 豚 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い た 乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 68 第六章 総 括 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 81 論 文 目 録 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 84 参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 85 謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 100 3 第一章 緒論 4 抗 菌 剤 は 、家 畜 の 健 康 を 守 り 、安 全 な 畜 産 物 の 安 定 生 産 を 確 保 す る 上 で 重 要 な 資 材 で あ る が 、そ の 使 用 に よ る 薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 か ら ヒ ト や 家 畜 に 対 す る 健 康 リ ス ク が 懸 念 さ れ て い る [1]。 家 畜 に お け る 健 康 リ ス ク と は 、 病 原 細 菌 が 対 象 動 物 に 使 用 さ れ た 薬 剤 に 対 し て 耐 性 化 し 、そ れ に よ っ て 治 療 が 困 難 に な る リ ス ク で あ る [2]。 一 方 、 家 畜 に 対 す る 抗 菌 剤 の 使 用 に お け る ヒ ト へ の 健 康 リ ス ク と は 、動 物 か ら ヒ ト に 耐 性 化 し た 菌 あ る い は 耐 性 遺 伝 子 が 感 染 あ る い は 伝 播 す る リ ス ク で あ る [3]。 1969 年 の 英 国 の ス ワ ン レ ポ ー ト に よ り 、 初 め て 家 畜 由 来 の 薬 剤 耐 性 菌 の 公 衆 衛 生 へ の 影 響 に つ い て 注 目 さ れ る よ う に な っ た [4]。そ こ で は 、「家 畜 に 成長促進目的で使用される飼料添加の抗菌性物質が薬剤耐性菌や R プラス ミ ド の 増 加 を 促 す 原 因 と な り 、ひ い て は ヒ ト お よ び 食 用 動 物 の 健 康 を 損 な う 恐 れ が あ る た め 、 十 分 な 規 制 措 置 が 必 要 」と 報 告 さ れ て い る 。 こ の ス ワ ン レ ポ ー ト を 契 機 と し て 、各 国 で 家 畜 へ の 抗 菌 性 物 質 使 用 に よ る 薬 剤 耐 性 問 題 が 立 ち 上 が り 、各 種 の 対 応 が 図 ら れ る よ う に な っ た 。例 え ば 、デ ン マ ー ク で は 、 1999 年 か ら 全 て の 抗 菌 性 成 長 促 進 剤 の 使 用 が 中 止 さ れ た [5]。し か し 、デ ン マークでは抗菌性成長促進剤の使用が中止された後に治療用の抗菌剤の使 用 量 が 増 加 し 、全 体 と し て 抗 菌 剤 の 使 用 量 を 大 幅 に 削 減 す る ま で に は 至 ら な か っ た [6]。 一 方 EU で は 、 EU 委 員 会 傘 下 で 飼 料 添 加 物 の 科 学 的 評 価 を 行 う 機 関 で あ る 家 畜 栄 養 科 学 委 員 会( SCAN)が「 抗 菌 性 飼 料 添 加 物 の 使 用 が 家 畜 や 人 に 危 害 を 及 ぼ す と い う 根 拠 が な く 、動 物 由 来 の 薬 剤 耐 性 遺 伝 子 が 人 の 消 化 管 内 細 菌 に 伝 達 す る こ と を 証 明 す る 新 た な 根 拠 は 示 さ れ て い な い 」と の 審 査 結 果 を 提 出 し た が [4]、EU 委 員 会 は 疑 い が あ る 限 り は そ の 使 用 を 中 止 す べ き と す る “ 予 防 の 原 則 ” に 則 っ た 対 応 を 行 い 、 2006 年 1 月 か ら 成 長 促 進 を 目的とした抗菌性飼料添加物の使用が全面的に中止されることになった。 EU の 抗 菌 剤 を め ぐ る 薬 剤 耐 性 菌 へ の 懸 念 は 、 そ の 後 治 療 用 の 動 物 用 医 薬 品にも向けられ、特にヒト医療上重要度の高い、フルオロキノロン系薬剤、 第三および第四世代セファロスポリン系薬剤およびマクロライド系薬剤の 3 系 統 の 薬 剤 に 対 す る リ ス ク 評 価 が 行 わ れ 、フ ル オ ロ キ ノ ロ ン 系 薬 剤 と 第 三 お よ び 四 世 代 セ フ ァ ロ ス ポ リ ン 系 薬 剤 に 対 し て は 、他 剤 無 効 例 に そ の 使 用 を 温 存 す る 、マ ク ロ ラ イ ド 系 薬 剤 に 対 し て は 適 正 使 用 を 強 力 に 推 し 進 め る 必 要 5 が あ る と い っ た 、 い わ ゆ る “ 慎 重 使 用 ” が 打 ち 出 さ れ て い る [4]。 こ の よ う に デ ン マ ー ク を は じ め EU 諸 国 で は 、 薬 剤 耐 性 菌 へ の 懸 念 か ら 家 畜 に お け る 抗菌剤の使用に厳しい目が向けられている。 ま た 、 EU 以 外 で も 米 国 で は ヒ ト 医 療 上 重 要 視 さ れ る 抗 菌 性 物 質 の 動 物 へ の 治 療 的 使 用 を 中 心 に 対 策 が 進 め ら れ て お り [4]、 具 体 的 に は 科 学 的 に リ ス ク を 評 価 し 、対 策 を 考 慮 す る と い う も の で 、現 在 ま で に セ フ ァ ロ ス ポ リ ン 系 お よ び マ ク ロ ラ イ ド 系 の リ ス ク 評 価 が 行 わ れ て い る 。そ の 他 に も オ ー ス ト ラ リ ア 、カ ナ ダ 、韓 国 な ど 各 国 で 動 物 に お け る 適 切 な 抗 菌 剤 使 用 へ の 対 策 が 進 められている。 一 方 、 我 が 国 に お い て は 、 諸 外 国 の 動 き も 受 け て 、 平 成 7 年 度 ( 1995 年 度 ) か ら 家 畜 病 原 細 菌 の 薬 剤 耐 性 調 査 を 開 始 し 、 平 成 12 年 度 か ら は 家 畜 衛 生 分 野 に お け る 薬 剤 耐 性 モ ニ タ リ ン グ 体 制 (JVARM: Japan Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring System)を 設 立 し 、 食 用 動 物 に お け る抗菌剤使用量の調査および野外流行株や食品媒介病原性細菌等における 薬 剤 耐 性 調 査 を 実 施 し 、こ れ ら の 結 果 を「 治 療 効 果 を 最 大 化 し 、薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 を 最 少 化 す る 」と い う“ 慎 重 使 用 ”に 反 映 さ せ る こ と と な っ て い る [7]。 我 が 国 に お い て は 現 在 、ヒ ト 医 療 で の 重 要 度 が 高 い フ ル オ ロ キ ノ ロ ン 系 、第 三および第四世代セファロスポリン系およびマクロライド系を中心に臨床 獣 医 師 に 対 し て“ 慎 重 使 用 ”の 呼 び か け が 行 わ れ て い る 。実 際 、我 が 国 の 畜 産 領 域 で の 抗 菌 剤 等 抗 菌 性 物 質 の 使 用 量 を 、2001 年 度 と 2011 年 度 で 比 較 す る と 飼 料 添 加 物 と し て 2001 年 は 233 ト ン 、一 方 2011 年 度 は 234 ト ン 、動 物 用 医 薬 品 と し て は 2001 年 で 1,059 ト ン 、一 方 2011 年 度 は 781 ト ン で 、こ れ ら を 合 計 し た 使 用 量 は 2001 年 度 が 1,292 ト ン で 、2011 年 度 は 1,015 ト ン と 減 少 傾 向 に あ る [7、 8]。 し か し な が ら 、 2012 年 度 に 我 が 国 で 使 用 さ れ た 抗 菌 物 質 等 の 抗 生 物 質 の 合 計 1,693 ト ン の 内 飼 料 添 加 用 に 175 ト ン 、家 畜 の 治 療 用 に 727 ト ン の 併 せ て 902 ト ン と 、実 に 半 分 以 上 が 畜 産 現 場 で 使 用 さ れ て い る [9](図 1)。 ま た 、 我 が 国 の 消 費 者 か ら も 抗 菌 性 物 質 に 関 す る 責 任 あ る 慎 重 な 使 用 を 求 め る 声 が 上 が っ て お り [10]、今 後 そ の 使 用 量 を 減 ら す 取 り 組 みをさらに強化する必要がある。 一 方 、畜 産 現 場 に お い て 、抗 菌 剤 は 畜 産 物 の 安 定 生 産 に は 不 可 欠 な 資 材 と 6 し て 使 用 さ れ て い る 。 畜 種 別 に み る と 、 2001 年 で は 動 物 用 抗 菌 剤 の 販 売 高 の 実 に 54%を 豚 が 占 め て お り 、 次 い で 水 産 用 に 22%、 鶏 用 に 16%、 牛 用 に 8% と な っ て い る [7、8]。ま た 、我 が 国 で ヒ ト 医 療 上 重 要 度 が 高 い た め に 、第 二 次 選 択 薬 と し て 承 認 さ れ 特 に 強 く“ 慎 重 使 用 ”が 求 め ら れ て い る 上 記 3 系 統 ( フ ル オ ロ キ ノ ロ ン 系 、第 三 お よ び 第 四 世 代 セ フ ァ ロ ス ポ リ ン 系 お よ び マ ク ロ ラ イ ド 系 ) の 動 物 用 抗 菌 剤 の 中 で 、 2012 年 度 に 使 用 実 績 が あ っ た フ ル オ ロキノロン系薬剤および第三および第四世代セファロスポリン系薬剤のそ れ ぞ れ 25.5%お よ び 45.8%が 豚 で 使 用 さ れ て お り [11]、 こ れ ら “ 慎 重 使 用 ” を 求 め ら れ て い る 薬 剤 で も 豚 で の 使 用 が 多 く な っ て い る 。こ の よ う に 治 療 用 抗 菌 剤 の 使 用 量 が 豚 で 多 い 理 由 と し て 、採 卵 鶏 で は 産 卵 期 間 中 の 抗 菌 剤 の 使 用 は 原 則 と し て 禁 じ ら れ て お り 、ま た ブ ロ イ ラ ー で は 飼 養 期 間 が 短 い た め に 抗菌剤の使用による休薬期間を考慮すると実際に投薬できる期間が短いこ と が あ げ ら れ る 。一 方 で 、牛 や 豚 は 飼 養 期 間 も 長 く 休 薬 期 間 も 守 り や す い が 、 牛 で は 個 体 診 療 に よ る 注 射 や 飼 料 添 加 が 中 心 で 、豚 で は 群 で の 管 理 が 一 般 的 で あ り 、群 全 体 へ の 投 薬 が 行 わ れ る た め に 豚 で の 使 用 量 が 増 え る も の と 考 え ら れ る 。ま た 、豚 で は 呼 吸 器 感 染 症 や 腸 管 感 染 症 に 多 く の 病 気 が あ り 、そ の 対 策 と し て 、ワ ク チ ン と 併 せ て 抗 菌 剤 の 飼 料 添 加 が 衛 生 プ ロ グ ラ ム に 組 み 込 まれている農場が多いことも一因となっている。 実 際 に 多 く の 養 豚 場 に は 複 数 の 病 原 体 が 浸 潤 し て お り [12]、中 で も 豚 の 腸 管 感 染 症 は 多 く の 養 豚 場 に お い て 頻 繁 に 認 め ら れ て い る 。豚 の 腸 管 感 染 症 の 原 因 と な る 主 な 病 原 体 と し て サ ル モ ネ ラ と 大 腸 菌 が 挙 げ ら れ る [13、 14]。 豚 の サ ル モ ネ ラ 症 は 我 が 国 で の 発 症 例 の 報 告 も あ り [15]、豚 の 下 痢 便 か ら も 高 率 に 分 離 さ れ て い る [16]。加 え て 、サ ル モ ネ ラ は ヒ ト 食 中 毒 の 主 な 原 因 菌 と し て も 知 ら れ て お り 、特 に EU で は 1990 年 代 に 発 生 し た ヒ ト の サ ル モ ネ ラ 食 中 毒 の 20%程 度 が 豚 肉 の 喫 食 と 関 連 し て い た と 報 告 さ れ て い る [17]。そ の た め EU 諸 国 で は 、 生 産 農 場 か ら 食 卓 ま で 全 て の 段 階 で 畜 産 物 の 食 中 毒 対 策 に 取 り 組 む “ Farm to Table” を 実 践 す る こ と で 、 ヒ ト 食 中 毒 の 発 生 を 減 少 さ せ る 成 果 を 挙 げ て お り [18]、生 産 現 場 か ら の コ ン ト ロ ー ル が 有 効 で あ る こ と が 示 さ れ て い る 。養 豚 場 に お け る サ ル モ ネ ラ 対 策 と し て は 、飼 養 環 境 の 改 善 や オ ー ル イ ン・オ ー ル ア ウ ト の 実 践 等 と 併 せ て 、抗 菌 剤 を 用 い た 対 策 も 7 行 わ れ て い る [19、20]。し か し 、サ ル モ ネ ラ に お け る 薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 が 報 告 さ れ て お り [21]、慎 重 使 用 が 求 め ら れ て い る 第 二 次 選 択 薬 を 使 用 せ ざ る を 得ない事例も発生している。 一 方 、大 腸 菌 は 豚 で は 新 生 期 下 痢 症 、離 乳 後 下 痢 症 お よ び 浮 腫 病 等 の 原 因 菌で、多くの農場から分離されており、我が国でも発症が認められている [22]。大 腸 菌 の 対 策 も サ ル モ ネ ラ と 同 様 に 飼 養 管 理 の 改 善 や 飼 養 環 境 の 整 備 と 併 せ て 生 菌 剤 の 給 与 や 抗 菌 剤 の 投 与 が 行 わ れ て い る 。し か し 、大 腸 菌 で も 薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 が 報 告 さ れ て い る [23]。 そ の た め 、 サ ル モ ネ ラ と 同 様 に 、 慎重使用が求められている第二次選択薬を使用せざるを得ない事例も発生 している。 近 年 、こ れ ら 抗 菌 剤 の 慎 重 使 用 の 呼 び か け や 豚 を 含 め た 家 畜 に お け る 重 要 な 病 原 体 で の 薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 を 受 け 、抗 菌 剤 代 替 物 質 の 研 究 が 活 発 に 行 わ れ て い る [24、25]。抗 菌 剤 代 替 候 補 物 質 と し て プ ロ バ イ オ テ ィ ク ス 、有 機 酸 、 ハ ー ブ 類 な ど に つ い て 得 に 多 く 報 告 さ れ て お り 、実 際 に 野 外 養 豚 場 で 応 用 さ れ て い る も の も あ る 。し か し 、こ れ ら 代 替 物 質 の 中 で 野 外 養 豚 場 に お い て 安 定 し た 効 果 を 示 し て い る も の は 少 な い [26、27]。そ の 原 因 と し て こ れ ら 代 替 物 質 の 評 価 試 験 が in vitro や 齧 歯 類 で は 多 く 行 わ れ て い る が 、 対 象 動 物 で ある豚に対応した試験が十分に行われていないためと考えられる。例えば、 ヒトの特定保健用食品でも対象となるヒトでの効果を確認する試験が求め ら れ て お り [28]、家 畜 で も 同 様 に 対 象 動 物 で 効 果 を 確 認 す る 試 験 が 不 可 欠 と 考 え ら れ る 。家 畜 を 用 い た 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 試 験 の 中 で も 、特 に 病 原 体 に対する効果を確認する感染試験を用いた評価はほとんど行われておらず、 世 界 の 先 進 国 の 中 で も 日 本 に お け る 取 り 組 み は 特 に 遅 れ て い る 。そ こ で 本 研 究 で は 、ま ず 豚 の 重 要 な 病 原 体 で あ る サ ル モ ネ ラ と 大 腸 菌 の 感 染 系 の 確 立 を 目的とし、第二章で豚サルモネラ・ティフィムリウム感染系の確立を試み、 第四章で豚大腸菌症感染系の確立を試みた。 ま た 、第 二 章 お よ び 第 四 章 で 確 立 し た 豚 を 用 い た 感 染 系 が 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 に 応 用 で き る か を 、有 機 酸 の 一 種 で あ る 乳 酸 を 用 い て 検 討 し た 。有 機 酸 は 畜 産 分 野 で は 飼 養 効 率 の 改 善 等 を 目 的 と し て 使 用 実 績 が あ り 、非 乖 離 状 態 で は 直 接 的 な 殺 菌 作 用 が あ る [29]。殺 菌 作 用 の 機 序 は 非 乖 離 型 の 有 機 酸 が 8 細 菌 の 中 に 侵 入 し て 細 菌 内 の pH を 低 下 さ せ プ ロ ト ン ポ ン プ を 過 剰 に 活 動 さ せ 、細 菌 の エ ネ ル ギ ー を 枯 渇 さ せ 死 滅 さ せ る と さ れ て い る 。ま た 、乳 酸 に は 野 外 養 豚 場 で サ ル モ ネ ラ や 大 腸 菌 対 策 と し て 有 効 で あ る と の 報 告 が あ り [30、 31]、 本 研 究 で 確 立 し た 感 染 系 を 評 価 す る に は 適 し て い る と 考 え ら れ る 。 そ こ で 、第 三 章 で は 豚 サ ル モ ネ ラ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 を 用 い て 乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 を 行 い 、第 五 章 で は 豚 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い て 同 様 に 乳 酸 添 加 飼 料 の評価を実施した。 9 農薬 (91t) 水産用 (182t) 抗菌性飼料添加物 (175t) ヒト医療用 (517t) 総量 1,693t 家畜治療用 (727t) 図 1 2012 年 度 に 我 が 国 で 使 用 さ れ た 抗 生 物 質 の 目 的 別 割 合 [9] 10 第二章 豚サルモネラ・ティフィムリウム感染系 の確立 11 【諸言】 Salmonella に は 多 く の 血 清 型 が あ り 、 豚 か ら 分 離 さ れ る 血 清 型 も 多 岐 に 渡 る が 、 豚 に 対 し て 病 原 性 が 強 く 、 単 独 で 臨 床 症 状 を 起 こ す Salmonella は Salmonella Typhimurium と Salmonella Choleraesuis の 2 血 清 型 と 考 え ら れ て い る [13]。前 者 は 主 に 下 痢 を 発 症 し 、後 者 は 主 に 敗 血 症 や 肺 炎 を 発 症 さ せ る 。 S . Typhimurium を 原 因 と し た 下 痢 は 我 が 国 で も 頻 繁 に 認 め ら れ 、 我 が 国 の 養 豚 場 の 下 痢 便 か ら Salmonella の 分 離 を 試 み た 試 験 で は S . Typhimurium が 最 も 高 率 に 分 離 さ れ て い る [16]。さ ら に 、 S . Typhimurium は ヒ ト の Salmonella を 原 因 と し た 食 中 毒 事 例 か ら も 頻 繁 に 分 離 さ れ て い る [32]。日 本 で は 、2011 年 度 と 2010 年 度 に 蒸 し 豚 が 原 因 の ヒ ト の サ ル モ ネ ラ 食 中 毒 事 例 が 発 生 し て い る が [ 33]、 豚 肉 を 原 因 と し た ヒ ト 食 中 毒 事 例 は 少 な く 、 豚 肉 か ら の Salmonella 分 離 率 も 1~3%と 低 い 値 を 示 し て い る [ 34]。 一 方 、 EU 諸 国 で は 1990 年 代 に 発 生 し た ヒ ト の サ ル モ ネ ラ 食 中 毒 の 20%程 度 が 豚 肉 の 喫 食 と 関 係 あ る と さ れ て い た が 、近 年 は 農 場 段 階 か ら 食 卓 ま で 全 て の 段 階 で 食 中 毒 対 策 に 取 り 組 む “ Farm to Table” の を 実 践 す る こ と で 、 ヒ ト 食 中 毒 の 発 生 を 低 下 さ せ て お り [ 18]、 農 場 で の Salmonella コ ン ト ロ ールがヒト食中毒にも有効であることが示されている。そこで、本章では Salmonella の 中 で も 、 豚 と ヒ ト の 両 方 で 注 目 さ れ る S . Typhimurium を 用 いた感染系の確立を目指した。 現 在 報 告 さ れ て い る 豚 を 用 い た Salmonella 感 染 試 験 の 多 く は 、肥 育 期 の 豚 を 対 象 と し て い る 。 そ の 背 景 に は 、 EU 諸 国 で は 養 豚 場 で 下 痢 を 伴 う 豚 Salmonella 症 が 殆 ど 発 生 し て い な い こ と も あ り 、 養 豚 場 に お け る Salmonella 対 策 が 豚 肉 を 介 し た ヒ ト 食 中 毒 の 予 防 に 主 眼 が 置 か れ て お り 、 生 産 現 場 に お い て は 出 荷 豚 の Salmonella 陽 性 率 を 低 下 さ せ る こ と が 求 め ら れ て い る た め で あ る 。そ の た め 、農 場 に お い て 症 状 を 伴 わ ず 糞 便 に 間 欠 的 に Salmonella を 排 泄 す る 不 顕 性 感 染 豚 に よ る 豚 群 内 で の Salmonella 感 染 拡 大 を 予 防 す る 方 法 が 研 究 、 提 案 さ れ て い る 。 特 に 出 荷 豚 の Salmonella 陽 性 率 に 直 接 関 係 す る 肥 育 期 間 中 の 豚 群 内 で の Salmonella 感 染 拡 大 の 予 防 法 に つ い て 多 く の 提 案 が な さ れ て い る [35-37]。 そ れ ら の 提 案 の 中 に は 、 豚 を 用 12 いた感染試験で出荷豚や肥育豚を対象に下痢を伴わない不顕性の豚 Salmonella 感 染 を 再 現 し た 報 告 も あ る 。そ れ ら 豚 を 用 い た 感 染 試 験 の 中 で 、 豚 の Salmonella 感 染 は 感 染 菌 数 が 多 い ほ ど 臨 床 症 状 が 強 く 発 現 し 、糞 便 中 の 菌 数 も 多 く な る こ と が 示 唆 さ れ て い る [38、 39]。 豚 群 内 で の Salmonella の 感 染 が 主 に 糞 口 感 染 に よ る こ と か ら 、豚 群 内 に お け る Salmonella 感 染 拡 大の予防には糞便中の菌数を減少させることが重要であると考えられてい る。 一 方 、 我 が 国 で は 下 痢 を 伴 う 豚 Salmonella 症 が 発 生 し て お り [16]、 そ の 好 発 時 期 が 離 乳 後 で あ る こ と か ら 、EU 諸 国 の 取 り 組 み と は 別 に 、離 乳 期 の 臨 床 症 状 を 伴 っ た Salmonella 症 の 対 策 を 提 案 す る 必 要 が あ る 。過 去 に 離 乳 豚 を 用 い た 感 染 系 も 報 告 さ れ て い る が [39]、 糞 便 に 含 ま れ る Salmonella 数 を 測 定 し た 情 報 は 少 な く 、特 に 下 痢 や 軟 便 等 の 糞 便 性 状 と そ れ ら に 含 ま れ て い る Salmonella 数 に つ い て の 調 査 は 全 く 行 わ れ て い な い 。そ こ で 本 試 験 で は、糞便中に含まれる菌数を定量し、糞便性状との関連を調査することで、 今 後 の 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 を 行 う 際 に 糞 便 中 の Salmonella 数 が 指 標 と な りうるかも合わせて調査した。 【材料と方法】 1. 供 試 菌 株 の 選 抜 供 試 豚:21 日 齢 あ る い は 22 日 齢 の SPF 豚 20 頭 を 当 所 に 導 入 し 、馴 致 期 間 中 に 糞 便 検 査 に よ り Salmonella 陰 性 を 確 認 し 、 試 験 に 供 試 し た 。 供 試 菌 株 : そ れ ぞ れ 異 な る 野 外 養 豚 場 か ら 分 離 さ れ た S . Typhimurium-5 (ST-5)株 、 S . Typhimurium-8 (ST-8)株 、 S . Typhimurium-64 (ST-64)株 お よ び S . Typhimurium-116 (ST-1116)株 そ れ ぞ れ に 当 所 で リ フ ァ ン ピ シ ン 耐 性 を 付 与 し 、 ST-5 Rif r 株 、 ST-8 Rif r 株 、 ST-64 Rif r 株 お よ び ST-116 Rif r 株として供試した。 接 種 菌 の 菌 液 調 整 で は 各 株 を DHL 寒 天 培 地 ( 栄 研 化 学 株 式 会 社 、 東 京 ) 13 に そ れ ぞ れ 発 育 さ せ 、 発 育 し た 各 株 の 単 一 コ ロ ニ ー を 200mL の SCD 液 体 培 地 に そ れ ぞ れ 接 種 し 37℃ で 5 時 間 振 盪 培 養 し た 後 に 、 培 養 液 の 菌 濃 度 を PBS で 調 整 し 、 最 後 に 等 量 の 20% Skim Milk と 混 合 し て 接 種 菌 液 と し て 供 試した。 感 染 試 験:供 試 豚 を 導 入 時 に 各 区 5 頭 の 4 区( ST-5 株 区 、ST-8 株 区 、ST-64 株 区 お よ び ST-116 株 区 )に 分 け 、5 日 間 の 馴 致 期 間 を 経 た 26 日 齢 あ る い は 27 日 齢 時 に 、4 区 そ れ ぞ れ に 異 な る S . Typhimurium 株 を 経 口 で 接 種 し た 。 具 体 的 に は 、 ST-5 株 区 で は ST-5 Rif r 株 を 1 頭 あ た り 4.1×10 9 CFU/mL を 10mL、ST-8 株 区 で は ST-8 Rif r 株 を 1 頭 あ た り 2.6×10 9 CFU/mL を 10mL、 ST-64 株 区 で は ST-64 Rif r 株 を 1 頭 あ た り 2.0×10 9 CFU/mL を 10mL、 ST-116 株 区 で は ST-116 Rif r 株 を 1 頭 あ た り 2.0×10 9 CFU/mL を 10mL そ れぞれ経口で接種した。 観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便 の 採 取 を 随 時 実 施 し た 。体 温 測 定 と し て 直 腸 温 度 の 測 定 を 毎 日 実 施 し た 。剖 検 は 経 時 的 に 実 施 し 、 接 種 後 3 日 目 、 7 日 目 お よ び 14 日 目 に 各 区 か ら そ れ ぞれ 1 頭、2 頭および 2 頭を無作為に選抜し剖検に供試した。 2. 接 種 菌 数 の 検 討 供 試 豚 : 28 日 齢 の SPF 豚 15 頭 を 当 所 に 導 入 し 、 馴 致 期 間 中 に 糞 便 検 査 お よ び 血 清 を 用 い た 抗 体 検 査 に よ っ て Salmonella 陰 性 で あ る こ と を 確 認 し 、 供試した。 供 試 菌 株 : 野 外 養 豚 場 か ら 分 離 さ れ 、 上 記 「 1. 供 試 菌 株 の 選 抜 」 で 選 抜 さ れ た ST116Rif r 株 を 供 試 し た 。接 種 菌 の 菌 液 調 整 は「 1.供 試 菌 株 の 選 抜 」 と 同 様 に 実 施 し た 。 つ ま り 、 DHL 寒 天 培 地 ( 栄 研 化 学 株 式 会 社 、 東 京 ) に 発 育 さ せ た ST116Rif r の 単 一 コ ロ ニ ー を 200mL の SCD 液 体 培 地 に 接 種 し 37℃ で 5 時 間 振 盪 培 養 し た 後 に 、 そ の 培 養 液 の 菌 濃 度 を PBS で 調 整 し 、 最 後 に 等 量 の 20% Skim Milk と 混 合 し て 接 種 菌 液 と し て 供 試 し た 。 14 感 染 試 験 : 導 入 時 に 供 試 豚 を 各 区 5 頭 の 3 区 ( ST-9 区 、 ST-7 区 お よ び ST-5 区 )に 分 け 、7 日 間 の 馴 致 期 間 を 経 た 35 日 齢 時 に 3 区 そ れ ぞ れ に 異 な る 菌 数 の ST116Rif r を 経 口 で 接 種 し た 。 具 体 的 に は 、 ST116Rif r を ST-9 区 で は 1 頭 あ た り 3.2 ×10 8 CFU/mL を 10mL、 ST-7 区 で は 1 頭 あ た り 3.2× 10 6 CFU/mL を 10mL お よ び ST-5 区 に は 1 頭 あ た り 3.2×10 4 CFU/mL を 10mL そ れ ぞ れ 経 口 で 接 種 し た 。 観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便 の 採 取 を 随 時 実 施 し た 。体 温 測 定 と し て 直 腸 温 度 の 測 定 を 毎 日 実 施 し た 。採 血 は 毎 週 実 施 し た 。観 察 期 間 中 に 著 し い 脱 水 症 状 や 沈 鬱 が 認 め ら れ た 際 に は 、 ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル を 用 い た 安 楽 殺 を 施 し た 。 接 種 後 39 日 目 に は 耐 過 豚 全 頭の剖検を実施し、主要臓器および腸管内容物を採取した。 3. 観 察 お よ び 検 査 項 目 糞便性状のスコア化:糞便性状は随時スコア化して記録した。すなわち、 正 常 便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1、 下 痢 便 を ス コ ア 2 と し た 。 糞 便 中 お よ び 腸 管 内 容 物 中 の 接 種 S . Typhimurium 数 の 測 定 、増 菌 お よ び 遅 延 二 次 増 菌 培 養:観 察 期 間 中 の 糞 便 の 採 取 は 各 個 体 か ら 直 接 行 い 、糞 便 採 取 後 は す ぐ に 接 種 S. Typhimurium 数 の 測 定 を 行 っ た 。 菌 数 測 定 で は 糞 便 1g を PBS で 10 倍 段 階 希 釈 し 、 適 切 な 希 釈 段 階 の 糞 便 希 釈 液 を 100μ g/mL リ フ ァ ン ピ シ ン 含 有 DHL 寒 天 培 地( RFDHL)に 塗 抹 し 、37℃ で 24 時 間 培 養 後 に 発 育 し た コ ロ ニ ー 数 を 計 測 し た 。菌 数 測 定 で 接 種 S . Typhimurium が 検 出 さ れ な か っ た 検 体 に つ い て は 、引 き 続 い て 増 菌 培 養 を 行 っ た 。増 菌 培 養 で は 糞 便 1g を 10mL の PBS で 希 釈 し た 上 記 の 糞 便 希 釈 液 か ら 1mL 採 取 し 、 そ れ を 10mL の ハ ー ナ・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地( 栄 研 化 学 株 式 会 社 )に 接 種 し 、 41.5℃ で 24 時 間 培 養 後 に RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 37℃ で 24 時 間 培 養 し 、 コ ロ ニ ー 形 成 の 有 無 を 観 察 し た 。 菌 数 測 定 お よ び 増 菌 培 養 で S. Typhimurium が 検 出 さ れ な か っ た 際 に は 遅 延 二 次 増 菌 培 養 を 実 施 し た 。 遅 15 延 二 次 増 菌 培 養 で は 増 菌 培 養 で 用 い た ハ ー ナ・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 を 増 菌 培 養 終 了 後 に 室 温 で 1 週 間 静 置 し た 後 に 、 培 養 液 を 1mL 採 取 し 、 10mL の ハ ー ナ ・ テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 接 種 し 、 41.5℃ で 24 時 間 培 養 し た 培 養 液 を RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 、37℃ で 24 時 間 培 養 後 に RFDHL 寒 天 培 地 で のコロニー形成の有無を観察した。 剖 検 時 に 採 取 し た 腸 管 内 容 物 に つ い て も 同 様 に 菌 数 測 定 、増 菌 培 養 お よ び 遅延二次増菌培養を実施した。 各 種 臓 器 に お け る S . Typhimurium の 検 出 : 剖 検 時 に は 肝 臓 、 肺 、 脾 臓 、 腎 臓 、 腸 間 膜 リ ン パ 節 、 空 腸 内 容 物 お よ び 盲 腸 内 容 物 を 各 1g ず つ 無 菌 的 に 採 取 し た 。腸 管 内 容 物 以 外 の 各 臓 器 は 表 面 を 火 炎 滅 菌 し た 後 に 、10mL の ハ ー ナ ・ テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 懸 濁 し 41.5℃ で 24 時 間 培 養 し た 。ま た 、腸 内 容 物 も 同 様 に 10mL の ハ ー ナ ー・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 懸 濁 し 、41.5℃ で 24 時 間 培 養 し た 。 臓 器 お よ び 腸 内 容 物 は 培 養 終 了 後 に 培 養 液 を RFEHL 培 地 に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 し 、 コ ロ ニ ー 形 成 の 有 無 を 観 察 し た 。 発 育 が 観 察 さ れ な か っ た 際 に は 、上 記 と 糞 便 中 の S . Typhimurium の 遅 延 二 次 増菌培養と同様に遅延二次増菌培養を実施した。 抗 体 測 定 : 豚 抗 O4 抗 体 を 市 販 さ れ て い る ELISA キ ッ ト ( SALMOTYPE Pig Screen, Labor Diagnostik, Leipzg, Germany)を 用 い て 測 定 し た 。キ ッ ト の 操 作 は 全 て 使 用 説 明 書 に 従 っ た 。 キ ッ ト の 説 明 書 に 従 い 、 10 OD% 以 上を陽性とした。 統 計 処 理:測 定 さ れ た S . Typhimurium 各 株 の 菌 数 は 対 数 変 換 し 、検 出 限 界 以 下 と な っ た 検 体 は 0 と し た 。菌 数 測 定 で は S . Typhimurium が 検 出 さ れ ず 、増 菌 培 養 あ る い は 遅 延 二 次 増 菌 培 養 で S . Typhimurium が 検 出 さ れ た 検 体 は 一 律 に 10 2 CFU/g と し て 統 計 処 理 を 行 っ た 。 S . Typhimurium 数 は Student’s t -test で 有 意 差 の 判 定 を 行 っ た 。ま た 、体 温 測 定 で は 試 験「 1.供 試 菌 株 の 選 抜 」 で は 各 区 の 接 種 前 2 日 間 の 体 温 と 、 試 験 「 2. 接 種 菌 数 の 検 討 」で は 各 区 接 種 前 5 日 間 の 体 温 と Student’s t -test で 比 較 し て 有 意 差 を 示 16 し た 際 に 発 熱 と し た 。 糞 便 性 状 の ス コ ア は Mann-Whitney U -test で 統 計 処 理 を 行 っ た 。 特 に 記 載 の な い 場 合 に は p <0.05 で 有 意 差 あ り と し た 。 【結果】 1. 供 試 菌 株 の 選 抜 臨 床 症 状:全 区 全 頭 で 試 験 期 間 中 に 著 し い 臨 床 状 態 の 悪 化 を 示 す 個 体 は 認 め られず、全頭が生残耐過した。 ST-64 株 区 お よ び ST116 株 区 で は 接 種 後 1 日 目 か ら 糞 便 性 状 の 悪 化 が 認 め ら れ 、接 種 後 2 日 目 お よ び 3 日 目 に は ほ ぼ 全 頭 で 下 痢 が 認 め ら れ た 。両 区 と も 接 種 後 5 日 目 以 降 は 下 痢 が 認 め ら れ ず 、 ST-116 株 区 で は 試 験 終 了 ま で 接 種 後 12 日 目 を 除 く 各 観 察 日 で 1~2 頭 で 軟 便 が 観 察 さ れ た が 、ST-64 株 区 で は 接 種 後 7 日 目 に は 全 頭 で 正 常 便 と な り 、そ の 後 は 軟 便 の 発 現 は 散 発 的 で あ っ た 。 一 方 、 ST-5 株 区 お よ び ST-8 株 区 で は 糞 便 性 状 の 悪 化 は 殆 ど 認 め ら れ ず 、 ST-5 株 区 で 下 痢 お よ び 軟 便 が 観 察 さ れ た の は 、 接 種 後 3 日 目 に 1 頭 が 下 痢 を 発 現 し た 1 回 の み で あ っ た ( 図 2、 3)。 全 区 で 接 種 翌 日 か ら 体 温 上 昇 が 見 ら れ た が 、 ST-8 株 区 で は 発 熱 に は 至 ら な か っ た 。 一 方 、 ST-5 株 区 で は 接 種 後 1 日 目 か ら 3 日 目 に 、 ST-64 株 区 で は 接 種 後 1 日 目 か ら 4 日 目 に か け て 、 ST-116 株 区 で は 接 種 後 2 日 目 か ら 4 日 目 に か け て 発 熱 が 認 め ら れ た ( 図 4)。 各 区 と も 接 種 後 1 週 間 以 内 に 体 温 上昇は収まった。 糞 便 中 の 接 種 S . Typhimurium 数 の 推 移:接 種 後 1 日 目 か ら 全 区 全 頭 の 糞 便 か ら S. Typhimurium が 検 出 さ れ 、 観 察 期 間 中 に は 全 頭 の 糞 便 か ら 複 数 回 検 出 さ れ た 。 各 区 の 平 均 S. Typhimurium 数 も 接 種 後 1 日 目 に は 1 × 10 4 CFU/g 以 上 と な っ た( 図 5)。各 区 の 糞 便 中 S. Typhimurium 数 の 平 均 の ピ ー ク は ST-5 株 区 で は 接 種 後 2 日 目 の 2.3×10 6 CFU/g、 ST-8 区 で は 接 種 後 1 日 目 の 2.7×10 4 CFU/g、ST-64 株 区 で は 接 種 後 3 日 目 の 2.3×10 7 CFU/g お よ び ST-116 株 区 で は 接 種 後 3 日 目 の 2.2×10 8 CFU/g と な っ た 。 観 察 期 17 間 を 通 じ て ST-8 株 区 は 他 の 3 区 と 比 べ て 低 い 菌 数 で 推 移 し 、接 種 後 2 日 目 に は 他 の 3 区 と 、接 種 後 3 日 目 に は ST-64 株 区 お よ び ST-116 株 区 の 両 者 と 有 意 差 が 示 さ れ た 。 ST-5 株 区 の 平 均 S. Typhimurium 数 は 接 種 後 2 日 目 ま で は ST-64 株 区 お よ び ST-116 株 区 と 同 程 度 を 示 し た が 、 3 日 目 以 降 は 低 値 を 示 し た 。接 種 後 3 日 目 に は ST-5 株 区 と ST116 株 区 間 で 有 意 差 が 示 さ れ た 。 ST-64 株 区 と ST-116 株 区 間 で は 有 意 差 は 示 さ れ な か っ た が 、 全 測 定 日 で ST116 株 区 の 方 が ST-64 株 区 よ り も 多 い 菌 数 を 示 し た 。 各 種 臓 器 か ら の 接 種 S . Typhimurium の 分 離:接 種 後 3 日 目 、7 日 目 お よ び 14 日 目 に 剖 検 を 実 施 し 、 各 種 臓 器 か ら 接 種 菌 の 分 離 を 試 み た が 、 最 も 高 率 に 菌 が 分 離 さ れ た の は 各 区 と も 接 種 後 7 日 目 で あ り 、 ST-5 株 区 、 ST-64 株 区 お よ び ST-116 株 区 で は 10 検 体 中 9 検 体 で 陽 性 と な っ た が 、 ST-8 株 区 は 10 検 体 中 3 検 体 の み が 陽 性 と な っ た( 表 1)。接 種 後 14 日 目 に は ST-5 株 区 、 ST-64 株 区 お よ び ST-116 株 区 で も 検 出 率 が 低 下 し 、 そ れ ぞ れ 10 検 体 中 2 検 体 、 3 検 体 お よ び 3 検 体 が 陽 性 と な っ た 。 接 種 後 3 日 目 に は ST-64 株 区 お よ び ST-116 株 区 で は 5 検 体 中 そ れ ぞ れ 3 お よ び 4 で 陽 性 と な り 、 ST-5 株 区 お よ び ST-8 株 区 で は 両 区 と も 5 検 体 中 2 検 体 が 陽 性 と な っ た 。 2. 接 種 菌 数 の 検 討 臨 床 症 状:全 区 に 共 通 し て 下 痢 等 の 臨 床 症 状 は ST116Rif r 接 種 後 1 週 間 以 内 に 多 く 観 察 さ れ 、 そ れ 以 降 は 回 復 す る 傾 向 に あ っ た ( 図 6)。 ST-9 区 で は 著 し い 脱 水 症 状 と 沈 鬱 を 示 し た た め に ST116Rif r 接 種 後 3、4、 5 お よ び 7 日 目 に そ れ ぞ れ 1 頭 ず つ に 安 楽 殺 が 施 さ れ 、観 察 期 間 を 耐 過 し た のは 5 頭中 1 頭のみで、その 1 頭でも接種後 3 日目および 4 日目に下痢が 観 察 さ れ た 。 一 方 、 ST-7 区 お よ び ST-5 区 で は 全 頭 が 観 察 期 間 を 耐 過 し た 。 ST-7 区 で は 接 種 後 3 日 目 に 2 頭 お よ び 接 種 後 12 日 目 に 1 頭 で 下 痢 が 観 察 さ れ 、 全 頭 で 軟 便 が 観 察 さ れ た 。 ST-5 区 で は 下 痢 は 観 察 さ れ な か っ た が 、 5 頭 中 4 頭 で 軟 便 が 観 察 さ れ た 。接 種 後 3 日 目 に は ST-5 区 と 他 の 2 区 の 間 で 接 種 後 4 日 目 に ST-9 区 と 他 の 2 区 の 間 で 糞 便 性 状 ス コ ア で 有 意 差 が 認 め ら 18 れた。 体 温 は 接 種 翌 日 か ら 上 昇 し 、ST-9 区 で は 接 種 後 1、3 お よ び 5 日 目 、ST-7 区 で は 接 種 後 2 日 目 か ら 6 日 目 、 ST-5 区 で は 接 種 後 2 お よ び 4 日 目 に 発 熱 が 認 め ら れ た ( 図 7)。 抗 体 価 の 推 移 : ST-9 区 で は 接 種 後 3 週 目 に は 耐 過 し た 1 頭 で 抗 体 が 陽 性 と な っ た( 図 8)。ST-7 区 で も 接 種 後 4 週 目 に は 5 頭 中 3 頭 で 抗 体 陽 性 と な り 、 39 日 間 の 観 察 期 間 中 に 全 頭 で 抗 体 陽 性 と な っ た 。 一 方 、 ST-5 区 で は 接 種 後 5 週目でも 5 頭中 2 頭が抗体陽性となった。 糞 便 中 ST116Rif r 数 の 推 移:各 区 の 糞 便 中 の ST116Rif r 数 は 接 種 後 7 日 目 ま で に ピ ー ク と な り 、 ピ ー ク 時 の 糞 便 中 ST116Rif r 数 は ST-9 区 で は 4.8× 10 8 CFU/g、 ST-7 区 で は 1.0×10 6 CFU/g お よ び ST-5 区 で は 3.2×10 4 CFU/g と な っ た ( 図 9)。 有 意 差 は 接 種 後 3 日 目 お よ び 4 日 目 に 3 区 間 と も に 認 め ら れ 、 接 種 後 6 日 目 に は ST-9 区 と ST-5 区 の 間 で 認 め ら れ た 。 糞 便 性 状 毎 の ST116Rif r 数 : 本 試 験 で は 下 痢 便 が ST-9 区 お よ び ST-7 区 で そ れ ぞ れ 7 回 と 3 回 観 察 さ れ 、合 計 で は 10 回 観 察 さ れ た 。一 方 、軟 便 は ST-9 区 、 ST-7 区 お よ び ST-5 区 で そ れ ぞ れ 6 回 、 10 回 お よ び 9 回 観 察 さ れ 、 合 計 で は 25 回 観 察 さ れ た 。 正 常 便 は 92 回 観 察 さ れ た 。 本 試 験 で 観 察 さ れ た 10 個 の 下 痢 便 中 に 含 ま れ て い た ST116Rif r 数 は 平 均 で 1.0×10 8 CFU/g と な っ た ( 表 2)。 一 方 、 25 個 の 軟 便 中 お よ び 92 個 の 正 常 便 中 に 含 ま れ て い た ST116Rif r 数 は 、 そ れ ぞ れ 1.6×10 4 CFU/g お よ び 7.1×10 1 CFU/g と な り 、 各 糞 便 性 状 間 で 有 意 差 が 示 さ れ た 。 ま た 、 正 常 糞 便 95 検 体 中 5 検 体 に お い て ST116Rif r が 1×10 6 CFU/g 以 上 検 出 さ れ た 。 剖 検 時 臓 器 か ら の 菌 分 離:観 察 期 間 中 に 安 楽 殺 を 施 さ れ た 個 体 で は 臓 器 か ら 高 率 に ST116Rif r が 分 離 さ れ た が 、 39 日 間 の 観 察 期 間 を 耐 過 し た 豚 で は 肝 臓 、 肺 、 脾 臓 お よ び 腎 臓 か ら は ほ と ん ど 分 離 さ れ な か っ た ( 表 3)。 一 方 、 扁桃、腸間膜リンパ節、空腸および盲腸内容物中からは耐過豚でも高率に 19 ST116Rif r が 分 離 さ れ た 。耐 過 豚 の 試 験 期 間 中 の 糞 便 性 状 と 剖 検 時 の 各 種 臓 器からの菌分離陽性率に関連は認められなかった。 20 図2 S . Typhimurium 実 験 感 染 豚 で 再 現 さ れ た 下痢便(左)および下痢発症豚で観察された発育不良(右) 21 22 糞便スコアと剖検実施の頭数 2 1 0 剖検頭数計 2 1 0 剖検頭数計 2 1 0 剖検頭数計 2 1 0 剖検頭数計 2 ●●●●● ● ●●●● ●●●●● ●●●●● 3 ●●●● ● ● ●●● ● ●●●●● ● ●●● ● ● 5 6 ●●●● ● ●●●● ● ●●●●● ● ●●●● ● 接種後日数 ●●● ● ● ●● ●● ● ●●●●● ● ●●●● ● 7 ●● ●●● ●●● ●●● ●● ●●● ●● ●●● 8 ●● ●●● ●● ●●● ●● ●●● ●● ●●● 11 ● ● ●●● ● ● ●●● ●● ●●● ●● ●●● 12 ●● ●●● ●● ●●● ●● ●●● ●● ●●● 13 ● ● ●●● ● ● ●●● ●● ●●● ●● ●●● 糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。 各区の糞便性状スコアの推移と剖検頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。 S . Typhimurium 株 接 種 後 の 糞 便 性 状 の 推 移 と 剖 検 頭 数 1 0 図3 ●●● ● ● ●●● ●● ●●●●● ●●●●● ●●●●● ST‐116 株 ●●●●● ST‐64株 ●●●●● ST‐8株 ●●●●● ST‐5株 42.0 41.5 * * 体温(℃) 41.0 * * * * 40.5 * * * * 40.0 39.5 39.0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 S. Typhimurium接種後日数 図4 S . Typhimurium 株 接 種 後 の 体 温 の 推 移 各 区 の 平 均 体 温 を 示 す 。各 記 号 は ● が ST-5 株 区 、▲ が ST-8 株 区 、■ が ST-64 株 区 お よ び ◆ が ST-116 株 区 を 示 す 。 * は 各 区 の 接 種 前 体 温 と の 有 意 差 ( p <0.05)を 示 す 。 23 10.0 9.0 各区接種 S. Typhimurium株数 (Log CFU/g) d 8.0 b 7.0 b c b b 6.0 b 5.0 a 4.0 b 3.0 a 2.0 1.0 0.0 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 S. Typhimurium接種後日数 図5 S . Typhimurium 株 接 種 後 の 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 の推 移 各 区 の 平 均 糞 便 中 S . Typhimurium 数 を 示 す 。各 記 号 は ● が ST-5 株 区 、▲ が ST-8 株 区 、 ■ が ST-64 株 区 お よ び ◆ が ST-116 株 区 を 示 す 。 a, b は 異 符 号 間 で 有 意 差 ( p <0.05)を 示 す 、接 種 後 3 日 目 は a と c お よ び d、b と d で 有 意 差 ( p <0.05)を 示 す 。 24 25 肺 0/1* 1/1 0/1 0/1 1/4 2/2 1/2 2/2 2/2 7/8 1/2 2/2 1/2 2/2 6/8 14/20 * : 陽 性 検 体 数 /供 試 検 体 数 ST-5株 ST-8株 ST-64株 ST-116株 小計 7 ST-5株 ST-8株 ST-64株 ST-116株 小計 14 ST-5株 ST-8株 ST-64株 ST-116株 小計 合計 区 0/1 1/1 0/1 1/1 2/4 2/2 1/2 2/2 2/2 7/8 0/2 0/2 1/2 0/2 1/8 10/20 肝臓 0/1 0/1 1/1 1/1 2/4 2/2 0/2 1/2 2/2 5/8 0/2 0/2 0/2 0/2 0/8 7/20 腎臓 1/1 0/1 1/1 1/1 3/4 1/2 0/2 2/2 1/2 4/8 0/2 0/2 0/2 0/2 0/8 7/20 脾臓 腸間膜 リンパ節 1/1 0/1 1/1 1/1 3/4 2/2 1/2 2/2 2/2 7/8 1/2 1/2 1/2 1/2 4/8 14/20 2/5 2/5 3/5 4/5 11/20 9/10 3/10 9/10 9/10 30/40 2/10 3/10 3/10 3/10 11/40 計 4 株 の S . Typhimurium 接 種 試 験 で の 剖 検 時 の 各 種 臓 器 か ら の S . Typhimurium の 分 離 率 接種後 日数 3 表1 26 糞便スコアと安楽殺豚の頭数 4 ● ●●●● b ● ●●●● 6 ●●● ●● ●●●● ● ●● ●●● 12 ●● ●●● ●●●● ● ● ●●●● 15 19 ●●●●● ●●●●● ● ●●●● 接種後日数 ●●●●● ●●●●● ● ●●●● 22 ●●●●● ●●●●● ● ●●●● 26 ●●●●● ●●●●● ● ●●●● 29 ●●●●● ●●●●● ● ●●●● 33 ●●●●● ●●●● ● ● ●●●● 糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。 ●●●● ● ● ●●●● 36 ●●●●● S . Typhimurium 接 種 後 の 糞 便 性 状 の 推 移 お よ び 安 楽 殺 頭 数 3 0 図6 ●●●●● b ●●● ●● b ●●●● a ●●● ● ●●●●● ST‐5 ●●●●● ST‐7 ●●●●● a ●● a 各区の糞便性状スコアの推移と剖検頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。 安楽殺 2 1 0 安楽殺 2 1 0 安楽殺 2 1 0 ST‐9 42.0 41.5 * 体温(℃) 41.0 40.5 40.0 ** ** * * * * 39.5 39.0 38.5 0 7 14 21 28 35 接種後日数 図7 S . Typhimurium 接 種 後 の 体 温 の 推 移 各 区 の 平 均 体 温 を 示 す 。各 記 号 は ● が ST-9 区 、▲ が ST-7 区 お よ び ■ が ST-5 区 を 示 す 。 * は 各 区 の 接 種 前 体 温 と の 有 意 差 ( p <0.05)を 示 す 。 27 60 50 抗体価 (OD%) 40 30 20 10 0 0 7 14 21 28 35 38 接種後日数 図 8 S . Typhimurium 接 種 後 の 抗 O4 抗 体 価 の 推 移 各 区 の 平 均 抗 体 価 を 示 す 。 各 記 号 は ● が ST-9 区 、 ▲ が ST-7 区 お よ び ■ が ST-5 区 を 示 す 。 28 10 a a a (Log cfu/g) 8 b 6 ST116Rifr数 b b 4 c c 2 0 0 5 10 15 20 25 30 35 接種後日数 図9 S . Typhimurium 接 種 後 の 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 の 推 移 各 区 の 平 均 糞 便 中 S . Typhimurium116Rif r 数 を 示 す 。 各 記 号 は ● が ST-9 区 、 ▲ が ST-7 区 お よ び ■ が ST-5 区 を 示 す 。 a、 b、 c は 異 符 号 間 で 有 意 差 ( p <0.05)を 示 す 。 29 表 2 糞 便 性 状 別 の S . Typhimurium 数 糞便性状 下痢 検体数 検出限界以下 軟便 検体数 正常便 検体数 2 40 2 26 <2.0-≦3.0 4 <3.0-≦4.0 3 7 <4.0-≦5.0 3 5 <5.0-≦6.0 5 5 5 <6.0-≦7.0 2 4 <7.0-≦8.0 2 1 <8.0-≦9.0 4 1 <9.0-≦10.0 2 平均±標準誤差 (Log CFU/g) 有意差(p<0.05) 8.01±1.08 4.20±2.27 1.85±2.01 a b c 30 31 4/4 0/3 1/7 0/1 4/4(a) 下痢発症豚 0/3 軟便発症豚 1/7 非発症豚 0/1 a: 陽 性 検 体 数 /供 試 検 体 数 耐過豚 安楽殺豚 肺 肝臓 3/4 0/3 1/7 0/1 4/4 3/3 6/7 0/1 4/4 0/3 2/7 0/1 脾臓 扁桃 腎臓 腸間膜 リンパ節 4/4 1/3 3/7 0/1 腸管内容物 空腸 盲腸 4/4 4/4 3/3 3/3 5/7 3/7 0/1 0/1 各 種 臓 器 お よ び 腸 管 内 容 物 か ら の S . Typhimurium 検 出 率 臨床症状 表3 【考察】 本 章 で は S . Typhimurium 感 染 系 を 確 立 す る た め 、「 1. 供 試 菌 株 の 選 抜 」 で は 異 な る 野 外 養 豚 場 で 分 離 さ れ た 4 株 の S . Typhimurium を 感 染 さ せ 、豚 に 対 す る 病 原 性 を 比 較 し た 。 具 体 的 に は そ れ ぞ れ 10 1 0 CFU/頭 程 度 を 経 口 で 接 種 し 、糞 便 性 状 の 悪 化 と 糞 便 中 に 排 泄 さ れ る 接 種 S . Typhimuirum 数 等 を 測 定 し た 。そ の 結 果 、4 株 の S . Typhimuirum 内 の 2 株 で は 供 試 豚 に 高 率 で 下 痢 が 認 め ら れ た が 、残 り の 2 株 で は 糞 便 性 状 の 悪 化 は 殆 ど 認 め ら れ な か っ た 。ま た 、糞 便 中 へ の S . Typhimurium の 排 菌 数 も 、糞 便 性 状 を 悪 化 さ せ た 2 株 の 方 が 他 の 2 株 よ り も 高 い 値 で 推 移 し た 。近 年 の 研 究 に よ り Salmonella の 病 原 因 子 は 200 種 類 以 上 が 報 告 さ れ て お り [40]、 S . Typhimurium は 株 毎 に 病 原 性 が 異 な っ て い る こ と が 知 ら れ て い る 。 例 え ば 、 Namimatsu ら は 死 亡 に 至 る 敗 血 症 を 引 き 起 こ す S . Typhimuirum は 、病 原 性 プ ラ ス ミ ド を 高 率 に 保 有 し て い る こ と を 報 告 し て い る [41]。ま た 、毒 素 、線 毛 お よ び 鞭 毛 も そ の 病 原 性 の 発 現 に 関 与 す る こ と が 報 告 さ れ て い る [40]。本 章 の 研 究 に お い て 、 S . Typhimurium 株 間 で 豚 に お け る 病 態 に 違 い が 認 め ら れ た 事 も 、そ れ ぞ れ の 株 が 保 有 す る こ れ ら 病 原 因 子 が 異 な る た め と 考 え ら れ る 。各 株 が ど の よ う な病原因子を保有しているかについては、今後更なる研究が必要である。 次 い で 4 株 の 中 で 臨 床 症 状 が 強 く 発 現 し 、糞 便 中 か ら も 多 量 の 菌 の 排 泄 が 認 め れ ら た S . Typhimurium 株 1 株 を 用 い て 、適 切 な 感 染 菌 数 を 調 査 す る た め 、 S . Typhimurium の 感 染 菌 数 を 3 段 階 に 設 定 し て 豚 に 経 口 接 種 さ せ た 。 そ の 結 果 、感 染 菌 数 が 多 い ほ ど 生 残 率 、下 痢 や 軟 便 等 の 糞 便 性 状 お よ び 発 熱 が 悪 化 す る こ と が わ か っ た 。豚 で の Salmonella 感 染 で は 感 染 菌 数 が 多 い ほ ど 臨 床 症 状 が 悪 化 す る こ と は 以 前 か ら 報 告 さ れ て お り 、今 回 の 結 果 も そ れ ら を 支 持 す る も の と な っ た [38 、 42-44] 。 ま た 、 Salmonella の 感 染 菌 数 と Salmonella の 糞 便 中 へ の 排 菌 数 も 、 感 染 菌 数 が 多 く な る ほ ど 糞 便 中 へ 排 泄 さ れ る S . Typhimurium 数 も 多 く な る こ と が 明 ら か と な り 、こ れ に つ い て も 過 去 の 報 告 を 支 持 す る も の と な っ た [42、 44]。 本 試 験 に よ り 、今 ま で 科 学 的 な 解 析 が 十 分 に 行 わ れ て い な か っ た 糞 便 性 状 毎 の 糞 便 中 S . Typhimurium 数 に つ い て 解 析 す る こ と が で き 、糞 便 性 状 が 悪 32 化 す る ほ ど 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 が 多 く な る こ と を 見 出 し た 。 一 方 、 正 常 便 の 中 に も 1×10 6 CFU/g 以 上 の S . Typhimurium を 含 ん で い る 糞 便 が 認 め ら れ た 。Pires ら に よ る と 、Salmonella 陽 性 の 野 外 養 豚 場 か ら 出 荷 さ れ る 不 顕 性 感 染 豚 の 糞 便 中 で 、1×10 6 CFU/g 以 上 の Salmonella が 検 出 さ れ た と 報 告 し て い る [45]。こ の こ と は 、離 乳 豚 お よ び 肥 育 豚 が 排 泄 し て い る 正 常 便 中 に も ま れ に 多 量 の Salmonella が 含 ま れ て い る こ と を 示 唆 し て い る 。 ま た 、 Salmonella 感 染 を 成 立 さ せ る た め に 必 要 な Salmonella 数 に つ い て 、 5 × 10 2 CFU/g 程 度 の S . Typhimurium が 含 ま れ て い る 糞 便 や [46] 、 4 × 10 2 CFU/100cm 2 の Salmonella で 汚 染 さ れ て い る 環 境 で 、 Salmonella の 感 染 が 成 立 す る と 報 告 さ れ て い る こ と か ら [47] 、 正 常 便 で も 豚 群 内 の Salmonella 感 染 源 と な る こ と が 示 唆 さ れ た 。こ の こ と は 、 Salmonella 陽 性 の 豚 群 内 で Salmonella の 感 染 拡 大 を 予 防 す る た め に は 、野 外 養 豚 場 に お い て 、 Salmonella 症 に よ る 臨 床 症 状 の 悪 化 を 予 防 す る こ と と 同 時 に 、 臨 床 症 状 を 示 さ な い 健 康 豚 で あ っ て も 、糞 便 中 の Salmonella 数 を 低 下 さ せ る 取 り 組みが重要であることを示唆している。 【小括】 本 章 で は 豚 に お け る S . Typhimurium 実 験 感 染 系 を 確 立 し 、野 外 よ り 分 離 さ れ た ST116Rif r 株 を 10 9 CFU/頭 程 度 経 口 感 染 さ せ る と 下 痢 や 著 し い 脱 水 症 状 を 示 し 、10 7 CFU/頭 程 度 経 口 感 染 さ せ る と 下 痢 や 軟 便 を 示 し 、10 5 CFU/ 頭 程 度 感 染 さ せ る と 軟 便 程 度 の 糞 便 性 状 等 を 示 す こ と が わ か っ た 。ま た 、感 染 菌 数 が 10 5 CFU/頭 で も 糞 便 中 か ら は 安 定 し て ST116Rif r が 検 出 さ れ 、糞 便 性 状 に よ り 糞 便 に 含 ま れ る ST116Rif r 数 が 異 な る こ と も 示 唆 さ れ た 。 今 後 、 本 実 験 感 染 系 に お い て 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 を 行 う 上 で 、臨 床 症 状 と 共 に 糞 便 中 の 菌 数 を 測 定 す る こ と で 、臨 床 症 状 を 抑 え る 効 果 と 、豚 群 内 で の 感 染 予 防効果を評価できるものと考えられた。 33 第三章 豚サルモネラ・ティフィムリウム感染系を 用いた乳酸添加飼料の評価 34 【諸言】 Salmonella は 日 本 の 養 豚 場 の 22%か ら 分 離 さ れ た と 報 告 さ れ て お り [ 48]、 ま た 下 痢 便 を 対 象 と し た 調 査 で も 19%の 農 場 か ら 分 離 さ れ た と 報 告 さ れ て い る [ 16]。 Salmonella に よ る 下 痢 や 軟 便 の 発 現 は 事 故 率 の 増 加 だ け で な く 、 飼 養効率の悪化を招くこともあるため対策が必要で、一部養豚場では陰性化に成 功 し て い る [ 19、 20]。 Salmonella 陰 性 農 場 に お け る Salmonella 対 策 は 、 ま ず 第 一 に 、 導 入 豚 、 ヒ ト お よ び 車 両 等 を 介 し た 農 場 へ の Salmonella 侵 入 を 防 止 す る た め の バ イ オ セ キ ュ リ テ ィ を 確 立 す る こ と で あ る [13]。一 方 、Salmonella 陽 性 農 場 で は 、 サ ル モ ネ ラ 症 の 発 症 に よ る 事 故 豚 の 増 加 、下 痢 や 軟 便 の 発 現 に よ る 飼 養 効 率 の 悪 化 を 防 ぐ こ と が 必 要 と な る 。ま た 、Salmonella 陽 性 農 場 で は 、Salmonella 陽 性 豚 を 出 荷 す る こ と に よ り 、豚 肉 を 介 し た ヒ ト 食 中 毒 の 発 症 の リ ス ク が あ る た め 、出 荷 豚 の Salmonella 陽 性 率 の 低 下 に 継 続 し て 取 り 組 む 必 要 が あ る 。 下 痢 や 死 亡 事 故 が 見 ら れ る 豚 サ ル モ ネ ラ 症 の 発 生 農 場 で は 、発 症 を 抑 え る ために抗菌剤の投与が一般的に行われている。しかし、薬剤耐性化した Salmonella の 出 現 が 報 告 さ れ て お り [49]、 例 え ば S . Typhimurium DT104 のように 5 剤(アンピシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、 ス ト レ プ ト マ イ シ ン お よ び サ ル フ ァ 剤 )に 対 し て 耐 性 を 示 す よ う な 、複 数 の 抗 菌 剤 に 対 し て 耐 性 を 示 す 多 剤 耐 性 化 し た Salmonella も 国 内 養 豚 場 か ら 分 離 さ れ て い る [50、51]。そ の た め 、養 豚 場 の 中 に は 通 常 使 用 し て い る 抗 菌 剤 で は 効 果 が 認 め ら れ な く な っ た た め 、第 二 次 選 択 薬 を 使 用 す る 事 例 も 認 め ら れ て い る 。し か し 、第 二 次 選 択 薬 で あ る フ ル オ ロ キ ノ ロ ン や 第 三 お よ び 第 四 世代セファロスポリンに対しても耐性化したサルモネラも報告されるよう に な り [52、 53]、 抗 菌 剤 代 替 物 質 が 益 々 求 め ら れ て い る 。 一 方 、 豚 サ ル モ ネ ラ 症 の 発 症 が 認 め ら れ て い な い Salmonella 不 顕 性 感 染 の 養 豚 場 に お い て も 、 Salmonella 陽 性 豚 の 出 荷 に よ る 豚 肉 を 介 し た ヒ ト の 食 中 毒 発 症 の リ ス ク を 回 避 す る た め 、 出 荷 豚 の Salmonella 陽 性 率 を 下 げ る こ と が 求 め ら れ て い る [18]。出 荷 豚 の 陽 性 率 を さ げ る た め に は 、養 豚 場 の 豚 群 内 に お け る Salmonella の 伝 播 を 抑 え る 必 要 が あ る [30、 54]。 養 豚 場 で の 35 Salmonella の 伝 播 の 主 な 経 路 は 糞 口 感 染 で あ る が 、 感 染 菌 数 が 少 な い 際 に は Salmonella の 感 染 が 成 立 し な い こ と も あ る [46、 47, 55]。 ま た 、 感 染 菌 数 が 少 な い ほ ど 、 感 染 後 の 臨 床 症 状 や 糞 便 中 に 含 ま れ る Salmonella 数 が 少 な い こ と が 示 唆 さ れ て い る [38、39]。こ れ ら の こ と か ら 、不 顕 性 感 染 豚 群 内 の Salmonella 陽 性 率 を 下 げ る た め に は 、糞 便 中 の Salmonella 数 を 減 少 さ せ ることが重要な対策と考えられる。 以 上 の こ と か ら 、 Salmonella 対 策 に 用 い ら れ る 抗 菌 剤 代 替 物 質 は 、 臨 床 症 状 を 伴 う 豚 サ ル モ ネ ラ 症 の 発 症 を 抑 え ら れ る こ と と 、 Salmonella 不 顕 性 感 染 豚 の 糞 便 中 へ の 排 菌 数 を 低 下 さ せ ら れ る こ と が 重 要 と 考 え ら れ る 。こ れ ま で に 、 豚 Salmonella 対 策 の 抗 菌 剤 代 替 物 質 と し て 幾 つ か の 候 補 が 提 案 さ れ て お り 、 そ の 中 に は プ ロ バ イ オ テ ィ ク ス [56]、 有 機 酸 [30、 39]、 ハ ー ブ 類 [57]や 発 酵 飼 料 な ど が あ る [58]。 中 で も 本 研 究 で は 、 Jorgensen ら が 飼 料 に 2.8%添 加 し た 結 果 、 Salmonella 陽 性 農 場 で の 陽 性 率 を 低 下 さ せ た と 報 告 し て い る 有 機 酸 の 一 種 で あ る 乳 酸 [30]に 着 目 し 、第 二 章 で 確 立 し た 感 染 系 で そ の効果について評価した。 【材料と方法】 供 試 豚:21 あ る い は 22 日 齢 の SPF 豚 20 頭 を 当 所 に 導 入 し た 。導 入 豚 は 馴 致 期 間 中 に 糞 便 か ら の Salmonella 分 離 を 試 み 、Salmonella 陰 性 で あ る こ とを確認した後に試験に供試した。 供 試 菌 株:本 研 究 の 第 二 章「 豚 サ ル モ ネ ラ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確 立 」で 選 抜 さ れ た 、野 外 か ら 分 離 さ れ た S. Typhimurium 116 株 に リ フ ァ ン ピ シ ン 耐 性 を 付 与 し た S. Typhimuirum 116 Rif r 株 ( ST116Rif r 株 ) を 供 試 し た 。第 二 章 で 示 し た よ う に 、ST116Rif r 株 は 豚 に 1 頭 あ た り 10 7 CFU を 経 口 接 種 す る こ と で 下 痢・軟 便 を 発 現 し 、10 5 CFU を 経 口 接 種 す る こ と で 軟 便 を 発 現 す る 。ま た 、ど ち ら の 感 染 菌 数 に お い て も ST116Rif r 接 種 後 の 糞 便 か ら は 安 定 し て ST116Rif r が 検 出 さ れ る 。 接 種 菌 液 の 調 整 も 第 二 章「 豚 サ ル モ ネ ラ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確 立 」 36 と 同 様 に 行 っ た 、 す な わ ち 、 DHL 寒 天 培 地 ( 栄 研 化 学 株 式 会 社 、 東 京 ) に 発 育 さ せ た ST116Rif r の 単 一 コ ロ ニ ー を 200mL の SCD 液 体 培 地 に 接 種 し 37℃ で 5 時 間 振 盪 培 養 し 、 そ の 後 培 養 液 の 菌 濃 度 を PBS で 調 整 し 、 最 後 に 等 量 の 20% Skim Milk と 混 合 し て 接 種 菌 液 と し て 供 試 し た 。 感 染 試 験:導 入 時 に 供 試 豚 を 各 区 5 頭 の 4 区( LA-hiST 区 、LA-loST 区 、 C-hiST 区 お よ び C-loST 区 )に 分 け 、LA の 2 区 で は 導 入 時 か ら 試 験 終 了 ま で 市 販 飼 料 に 乳 酸 を 2.8%添 加 し た 乳 酸 添 加 飼 料 を 給 与 し た 。 一 方 、 C の 2 区では導入時から試験終了まで市販飼料を給与した。馴致期間が終了した 51 あ る い は 52 日 齢 時 に ST116Rif r を hiST の 2 区 で は 1 頭 あ た り 5.6× 10 6 CFU/mL を 10mL 経 口 で 接 種 し 、 loST の 2 区 で は 1 頭 あ た り 5.6× 10 4 CFU/mL を 10mL 経 口 で 接 種 し た 。 観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便 の 採 取 を 随 時 実 施 し た 。観 察 期 間 中 に 著 し い 脱 水 症 状 や 沈 鬱 が 認 め ら れ た 際 に は 、 ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル を 用 い た 安 楽 殺 を 行 っ た 。 接 種 後 21 日 目 に は 耐 過豚全頭の剖検を実施し、主要臓器および腸管内容物を採取した。 糞 便 性 状 の ス コ ア 化:糞 便 性 状 は ス コ ア 化 し て 記 録 し た 。す な わ ち 、正 常 便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1、 下 痢 便 を ス コ ア 2 と し た 。 糞 便 中 お よ び 剖 検 時 の 腸 管 内 容 物 中 の S . Typhimurium 116Rif r 数 の 測 定 、 増菌および遅延二次増菌培養:観察期間中の糞便は各個体から直接採取し、 採 取 後 す ぐ に ST116Rif r 数 の 測 定 を 行 っ た 。菌 数 測 定 で は 糞 便 1g を PBS で 10 倍 段 階 希 釈 し 、適 切 な 希 釈 段 階 の 糞 便 希 釈 液 を 100μ g/mL リ フ ァ ン ピ シ ン 含 有 DHL 寒 天 培 地( RFDHL)に 塗 抹 し 、37℃ で 24 時 間 培 養 し た 後 に 発 育 し た コ ロ ニ ー 数 を 計 測 し た 。そ の 後 、菌 数 測 定 で ST116Rif r が 検 出 さ れ な か っ た 検 体 に つ い て 増 菌 培 養 を 行 っ た 。 増 菌 培 養 で は 糞 便 1g を 10mL の PBS で 希 釈 し た 上 記 糞 便 希 釈 液 か ら 1mL 採 取 し 、 そ れ を 10mL の ハ ー ナ ・ テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 ( 栄 研 化 学 株 式 会 社 ) に 接 種 し 、 41.5℃ で 24 時 間 培 養 後 に RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 37℃ で 24 時 間 培 養 後 に 、コ ロ ニ ー 形 成 の 37 有 無 を 観 察 し た 。菌 数 測 定 、増 菌 培 養 で ST116Rif r が 検 出 さ れ な か っ た 際 に は 遅 延 二 次 増 菌 培 養 を 実 施 し た 。遅 延 二 次 増 菌 培 養 で は 増 菌 培 養 で 用 い た ハ ー ナ・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 を 増 菌 培 養 終 了 後 に 室 温 で 1 週 間 静 置 し た 後 に 、 培 養 液 を 1mL 採 取 し 、 10mL の ハ ー ナ ・ テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 接 種 し 、 41.5℃ で 24 時 間 培 養 し た 培 養 液 を RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 後 に RFDHL 寒 天 培 地 で の コ ロ ニ ー 形 成 の 有 無 を 観 察 し た 。。 腸 管 内 容 物 は 上 記 の 糞 便 中 の ST116Rifr の 測 定 と 同 様 に 、 ST116Rif r 数 の 測 定 、 増菌培養および遅延二次増菌培養を実施した。 臓 器 か ら の S. Typhimurium116Rif r の 分 離:剖 検 時 に は 肝 臓 、肺 、脾 臓 、 腎 臓 、 扁 桃 、 腸 管 膜 リ ン パ 節 、 回 腸 内 容 物 お よ び 盲 腸 内 容 物 を そ れ ぞ れ 1g ずつ無菌的に採取し、腸管内容物以外の各臓器は表面を火炎滅菌した後に、 10mL の ハ ー ナ・テ ト ラ チ オ ン 酸 塩 培 地 に 懸 濁 し 41.5℃ で 24 時 間 培 養 し た 。 培 養 終 了 後 の 培 養 液 は RFDHL に 塗 抹 し 、37℃ で 24 時 間 培 養 後 に コ ロ ニ ー 形 成 の 有 無 を 観 察 し た 。コ ロ ニ ー 形 成 が 観 察 さ れ な か っ た 際 に は 、上 記 と 同 様に遅延二次増菌培養を実施した 統 計 処 理:測 定 さ れ た ST116Rif r 数 は 対 数 変 換 し 、検 出 限 界 以 下 と な っ た 検 体 は 0 と し た 。菌 数 測 定 で は ST116Rif r が 検 出 さ れ な か っ た が 、増 菌 培 養 あ る い は 遅 延 二 次 増 菌 培 養 で ST116Rif r が 検 出 さ れ た 検 体 は 100CFU/g と し て 統 計 処 理 を 行 っ た 。 ST116Rif r 数 は Student’s t -test で 有 意 差 の 判 定 を 行 っ た 。ま た 、ST116Rif r 接 種 前 5 日 間 の 体 温 と 比 較 し て 優 位 差 を 示 し た 際 に 発 熱 と し た 。 糞 便 性 状 の ス コ ア は Mann-Whitney U -test で 有 意 差 判 定 を 行 っ た 。 特 に 記 載 の な い 場 合 に は p <0.05 で 有 意 差 あ り と し た 。 【結果】 臨 床 症 状 : LA-hiST 区 で は 下 痢 ・ 軟 便 等 の 糞 便 性 状 の 悪 化 は 認 め ら れ な か っ た が 、 C-hiST 区 で は 接 種 後 2 日 目 か ら 軟 便 が 観 察 さ れ 、 接 種 後 6 日 目 には 5 頭中 4 頭で下痢が観察され、接種後 9 日目に 1 頭で軟便が観察され 38 た以降は、下痢および軟便は観察されなかった。6 日目および 7 日目には LA-hiST 区 と C-hiST 区 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た ( 図 10)。 一 方 、 LA-loST お よ び C-loST で は 糞 便 性 状 の 悪 化 は 散 発 的 で あ っ た 。 LA-hiST 区 で は 体 温 上 昇 は 認 め ら れ な か っ た が 、 C-hiST 区 で は 接 種 後 2 か ら 9 日 目 に か け て 発 熱 が 認 め ら れ た( 図 11)。一 方 、LA-loST 区 で は 体 温 上 昇 は 認 め ら れ な か っ た が 、 C-loST 区 で は 接 種 後 5 か ら 8 日 目 に か け て 発 熱が認められた。 糞 便 中 S . Typhimurium 116Rif r 数 の 推 移 : 糞 便 中 ST116Rif r の ピ ー ク 時 の 菌 数 は LA-hiST 区 で は 接 種 後 2 日 目 の 3.2×10 1 CFU/g、C-hiST 区 で は 接 種 後 3 日 目 の 1.3×10 5 CFU/g と な り 、接 種 後 3、12 お よ び 16 日 目 に LA-hiST 区 と C-loST 区 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た ( 図 12)。 一 方 、 LA-loST 区 の ピ ー ク 時 の 糞 便 中 ST116Rif r 数 は 接 種 後 7 日 目 の 2.5CFU/g で 、 C-loST 区 で は 接 種 後 9 日 目 が ピ ー ク で 1.3×10 4 CFU/g と な り 、接 種 後 6、7、9 お よ び 12 日 目 に LA-loST 区 と C-loST 区 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た 。 剖 検 時 臓 器 お よ び 腸 管 内 容 物 か ら の S . Typhimurium 116Rif r の 分 離 : 接 種 後 21 日 目 に 実 施 し た 剖 検 で は 肝 臓 、 肺 、 脾 臓 お よ び 腎 臓 か ら は C-loST 区 の 肝 臓 の 1 検 体 の み で ST116Rif r が 検 出 さ れ た ( 表 4)。 一 方 、 扁 桃 、 腸 管 膜 リ ン パ 節 、空 腸 内 容 物 お よ び 盲 腸 内 容 物 中 か ら は 全 区 で ST116Rif r が 検 出 さ れ た 。 LA-hiST 区 、 C-hiST 区 、 LA-loST 区 お よ び C-loST 区 の 空 腸 内 容 物 か ら の ST116Rif r の 検 出 率 は そ れ ぞ れ 20% 、80% 、40% お よ び 80% と な り 、盲 腸 内 容 物 か ら の ST116Rif r の 検 出 率 は 80%、100%、40%お よ び 80% と な っ た 。盲 腸 内 容 物 中 の ST116Rif r 数 で は LA-hiST の 方 が C-hiST よ り 少 なく、有意差が認められた。 39 40 ●●●●● C-hiST ●●●●● LA-hiST 2 1 0 ●●●●● 1 ●●●●● ●●●●● ●●●●● ●●●●● 2 ●●●●● ●● ●●● ●●●●● ●●●●● 3 ● ●●●● ●●● ●● ●●●●● 接種後日数 ●●●●● 6 ●●●●● ● ●●●● b ●●●●● a ●●●● 7 ● ●● ●●● ● ●● ●● b ●●●●● a ● ● ●●● 9 ● ●●●● ● ●●●● ●●●●● ●●●●● 13 ●●●●● ●●●●● ●●●●● a、 b 異 符 号 間 で 有 意 差 あ り 。( p<0.05) 糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。 各区の糞便性状スコアの推移と剖検頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。 S . Typhimurium 接 種 後 の 糞 便 性 状 の 推 移 ●●●●● 0 C-loST 2 LA-loST 1 0 ●●●●● 2 1 0 2 1 0 図 10 糞便スコア ●●●●● 16 ●●●●● ●●●●● ●●●●● 41 -1 A 2 * * * 5 * * * * 11 図 11. 接種後日数 8 * 17 20 B 38.5 -1 B 2 5 * * * 11 接種後日数 8 * S . Typhimurium 接 種 後 の 体 温 の 推 移 14 39.0 39.5 40.0 40.5 41.0 14 17 * は 各 区 の 接 種 前 体 温 と の 有 意 差 を 示 す ( p <0.05)。 右 側 の グ ラ フ B は 1 頭 あ た り 5.6×10 5 CFU を 経 口 接 種 し た 、 □ は LA-loST 区 、 △ は C-loST 区 を 示 す 。 左 側 の グ ラ フ A は 1 頭 あ た り 5.6×10 7 CFU を 経 口 接 種 し た 、 ■ は LA-hiST 区 、 ▲ は C-hiST 区 を 示 す 。 各区の平均体温を示す。 A 38.5 39.0 39.5 40.0 40.5 体温 (℃) 41.0 41.5 体温(℃) 20 42 A 0 1 2 3 4 5 6 7 8 3 図 12. 0 * 接種後日数 9 12 15 * 18 21 B 0 1 2 3 4 5 6 7 0 3 * 6 * 9 * 接種後日数 * 12 15 18 21 S . Typhimurium 接 種 後 の 糞 便 中 S . Typhimurium 数 の 推 移 6 * * は LA-hiST 区 と C-hiST 区 間 お よ び 。 LA-loST 区 と C-loST 区 間 の 有 意 差 を 示 す ( p <0.05)。 右 側 の グ ラ フ B は 1 頭 あ た り 5.6×10 5 CFU を 経 口 接 種 し た 、 □ は LA-loST 区 、 △ は C-loST 区 を 示 す 。 左 側 の グ ラ フ A は 1 頭 あ た り 5.6×10 7 CFU を 経 口 接 種 し た 、 ■ は LA-hiST 区 、 ▲ は C-hiST 区 を 示 す 。 各 区 の 平 均 糞 便 中 S . Typhimurium 116Rif r 数 を 示 す 。 ST116Rifr数 (log CFU/g) 9 ST116Rifr数 (log cfu/g) 43 肺 0/5 0/5 0/5 0/5 肝臓 0/5a) 0/5 0/5 1/5 0/5 0/5 0/5 0/5 脾臓 0/5 0/5 0/5 0/5 腎臓 5/5 4/5 1/5 2/5 扁桃 ST116Rifr検出率 2/5 3/5 4/5 3/5 腸間膜 リンパ節 1/5 4/5 2/5 4/5 空腸 4/5 5/5 2/5 4/5 盲腸 0.32±0.49 1.52±1.26 0.18±0.40 0.37±1.33 空腸 0.89±1.22b)* 2.02±1.30 ** 1.40±1.03 2.66±0.37 盲腸 各腸管内容物1g中のST116Rif r数 (Log CFU/g) 剖 検 時 の 各 種 臓 器 か ら の S . Typhimurium の 検 出 率 b:* と * * 間 で 有 意 差 あ り ( p<0.05)。 a:陽 性 検 体 数 /検 体 数 LA-hiST C-hiST LA-loST C-loST 区 表4. 【考察】 本 章 で は 、第 二 章「 豚 サ ル モ ネ ラ ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確 立 」で 確 立 さ れ た S . Typhimurium 感 染 系 を 用 い て 10 7 CFU/頭 の 経 口 接 種 に よ り 下 痢 を 伴 う 豚 サ ル モ ネ ラ 症 を 再 現 し 、 ま た 10 5 CFU/頭 の 経 口 接 種 で 糞 便 性 状 の 悪 化 等 の 臨 床 症 状 は 軽 度 だ が 安 定 し た 排 菌 が 認 め ら れ る Salmonella 不 顕 性感染を再現した。 今 回 、我 々 は 豚 S . Typhimurium 感 染 系 で 不 顕 性 感 染 を 再 現 し 、そ の 感 染 系 に お い て 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 に よ り 糞 便 中 の Salmonella 陽 性 率 が 下 が る こ と を 確 認 し た 。 Jorgensen ら は 、 Salmonella の 不 顕 性 感 染 が 確 認 さ れ て い る 野 外 養 豚 場 に お い て 、 乳 酸 2.8%添 加 飼 料 を 給 与 す る こ と で 、 糞 便 中 の Salmonella 陽 性 率 が 低 下 す る こ と を 報 告 し た [30]。 我 々 は さ ら に 糞 便 中 に 排 泄 さ れ る S . Typhimurium 数 は 乳 酸 無 添 加 の 対 照 飼 料 と 比 べ て 乳 酸 添 加 飼 料 の 方 が 優 位 に 減 少 し て お り 、 ピ ー ク 時 で も 1×10 1 CFU/g 以 下 と 豚 群 内 の Salmonella 伝 播 に 必 要 と 報 告 さ れ て い る 1×10 3 CFU/g 以 下 に ま で 菌 数 を 低 下 し た こ と を 示 し た [46] 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 2.8% 乳 酸 添 加 飼 料 が Salmonella 不 顕 性 感 染 豚 群 内 の Salmonella 感 染 拡 大 防 止 に 有 効 で あ る こ とが示唆された。 一 方 、 S . Typhimuirum 感 染 系 で 再 現 さ れ た 下 痢 を 伴 う 豚 サ ル モ ネ ラ 症 に お い て も 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 で は 下 痢 の 発 現 が 認 め ら れ ず 、S . Typhimurium 感 染 に よ る 糞 便 性 状 の 悪 化 を 改 善 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。第 二 章「 豚 サ ル モ ネ ラ・テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 の 確 立 」で 示 さ れ た よ う に 、S . Typhimurium に よ る 糞 便 性 状 の 悪 化 に は 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 の 増 加 を 伴 う が [59]、 本 研 究 で は 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 が 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 を 低 下 さ せ る こ と 、盲 腸 に お け る S . Typhimurium 数 を 低 下 さ せ る こ と が 示 さ れ た 。こ れ ら の こ と か ら 、乳 酸 添 加 飼 料 に は 腸 管 内 で の S . Typhimurium の 増 殖 を 抑 制 す る 効 果 が あ り 、そ れ ら が 糞 便 性 状 の 悪 化 等 の 臨 床 症 状 発 現 の 軽 減 に つ な が るものと考えられた。 乳 酸 の 殺 菌 作 用 は 、 pH3.7 の 環 境 中 で は 3 時 間 で 1/100 ま で Salmonella を 減 少 さ せ 、 pH4.0 の 環 境 中 で は 3 時 間 で 1/10 ま で Salmonella を 減 少 さ 44 せ る が 、 pH4.4 の 環 境 中 で は 殺 菌 作 用 は 発 揮 さ れ な い [60]。 豚 の 胃 の pH は 3.82-4.07 と 報 告 さ れ て お り [61]、 胃 で は 乳 酸 の 殺 菌 作 用 が 発 揮 さ れ る 環 境 にあることが示唆されている。しかし、胃を通過した後の乳酸については、 給 与 さ れ た 乳 酸 は 腸 管 に 移 行 す る と 、す ば や く 酢 酸 、プ ロ ピ オ ン 酸 、ギ 酸 に 変 換 さ れ る と の 報 告 や [62]、 乳 酸 は Salmonella の 病 原 性 に 関 与 す る 遺 伝 子 の発現に影響を与えることで鶏での感染防止に効果が認められたとの報告 も あ る [63]。 さ ら に 、 Salmonella 感 染 は 腸 内 菌 叢 の 変 化 の 影 響 も 受 け る と 報 告 さ れ て お り [56]、飼 料 に 添 加 さ れ た 乳 酸 の 作 用 機 序 の 詳 細 に つ い て は 今 後の更なる研究が必要となる。 豚 サ ル モ ネ ラ 対 策 に は 、 環 境 中 の Salmonella 数 を 減 ら す 飼 養 環 境 の 改 善 や オ ー ル ア ウ ト の 実 施 な ど と 併 せ て 、豚 の 体 内 に お け る Salmonella の 増 殖 を 抑 制 す る 取 り 組 み が 必 要 と な る 。 豚 体 内 の Salmonella の 増 殖 を 抑 制 す る に は 、現 時 点 で は 、豚 に ス ト レ ス を か け な い こ と と 併 せ て [64]、抗 菌 剤 の 使 用 は 避 け ら れ な い 。 し か し な が ら 近 年 の Salmonella 対 策 の 報 告 で は 、 飼 養 環 境 の 改 善 と 併 せ て 、生 菌 剤 等 の 使 用 が 報 告 さ れ て お り 、抗 菌 剤 代 替 物 質 の 使 用 が 広 ま り つ つ あ る [20]。本 章 で は 、2.8%乳 酸 添 加 飼 料 が そ れ ら 代 替 物 質 の 一 つ と し て 豚 Salmonella 対 策 に 応 用 で き る こ と を 示 唆 す る デ ー タ が 得 ら れ た 。ま た 、第 二 章 で 確 立 し た 豚 S . Typhimuirum 感 染 系 が 抗 菌 剤 代 替 物 質 の評価に応用できることも示され、その有用性が大いに期待された。 【小括】 豚 S . Typhimurium 感 染 系 を 用 い て 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 臨 床 症 状 を 伴 う 豚 サ ル モ ネ ラ 症 を 再 現 し た 感 染 系 で は 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 が 糞 便 性 状 の 悪 化 を 抑 制 し 、糞 便 中 へ の Salmonella 排 菌 数 も 減 少 さ せ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た 、 Salmonella 不 顕 性 感 染 を 再 現 し た 感 染 系 で も 糞 便 中 へ の Salmonella 排 菌 数 を 減 少 さ せ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、第 二 章 で 確 立 し た 豚 S . Typhimurium 感 染 系 が 、抗 菌 剤 代 替 候 補 物 質 の 評 価 に 応 用 で き る こ と が 示 唆 さ れ た 。ま た 、乳 酸 添 加 飼 料 が Salmonella に 対 す る 抗 菌 剤 代 替 物 質 と し て 活 用 で き る こ と も 示 唆 さ れ た 。 45 第四章 豚大腸菌感染系の確立 46 【緒言】 大 腸 菌 に よ る 感 染 症 は ヒ ト 、豚 、牛 な ど 多 く の 宿 主 で 発 生 し 、そ の 病 態 は 下 痢 、 毒 血 症 、 敗 血 症 お よ び 尿 路 感 染 な ど と 多 様 で あ る [ 14]。 豚 に お け る 大 腸 菌 症 は 感 染 や 発 症 機 序 の 違 い か ら 、腸 管 感 染 症 で あ る 下 痢 症( 新 生 期 下 痢 症 、離 乳 後 下 痢 症 )お よ び エ ン テ ロ ト キ セ ミ ア( 浮 腫 病 、脳 脊 髄 血 管 症 )、 全 身 感 染 症 で あ る 敗 血 症 、局 所 感 染 で あ る 子 宮 内 膜 炎 等 に 分 け ら れ る 。こ れ らの原因となる大腸菌はそれぞれ異なる病原因子を保有する特定の大腸菌 株 で 、例 え ば 下 痢 を 起 こ す 大 腸 菌 の 1 種 で あ る 毒 素 原 性 大 腸 菌( ETEC)で は 付 着 因 子 と 下 痢 原 性 毒 で あ る 易 熱 性 エ ン テ ロ ト キ シ ン ( LT) や 耐 熱 性 エ ン テ ロ ト キ シ ン ( ST) の 両 方 あ る い は 片 方 を 保 有 し て い る こ と が 知 ら れ て いる。 我 が 国 で は 、 哺 乳 豚 や 離 乳 豚 の 下 痢 便 か ら 頻 繁 に ETEC が 分 離 さ れ て お り [ 22]、 多 く の 農 場 で 問 題 と な っ て い る [ 65]。 ETEC に よ る 下 痢 が 発 症 す る と 事 故 率 の 増 加 や 飼 養 効 率 の 悪 化 が 認 め ら れ 、経 済 的 な 損 害 を 与 え る た め に 対 策 を 行 う 必 要 が あ る [ 14]。 ETEC 対 策 と し て 、新 生 期 下 痢 症 で は 飼 養 環 境 の 改 善 と 併 せ て 抗 菌 剤 の 注 射 、移 行 抗 体 を 介 し て 子 豚 を 守 る た め の 母 豚 へ の ワ ク チ ン 接 種 等 が 行 わ れ て い る [66]。一 方 、離 乳 後 下 痢 症 で も 飼 養 環 境 の 改 善 と 併 せ て 、抗 菌 剤 の 飼 料 添 加 や 注 射 が 行 わ れ て お り [ 67]、 大 腸 菌 症 対 策 で は 抗 菌 剤 が 広 く 使 わ れ て い る 。し か し 、抗 菌 剤 の 使 用 に よ る 薬 剤 耐 性 菌 の 問 題 や [68]、抗 菌 剤 の 使 用 量 が よ り 少 な い 畜 産 物 を 求 め る 消 費 者 か ら の 要 望 も あ り 、抗 菌 剤 の 使 用 に は 厳 し い 目 が 向 け ら れ て い る 。特 に 、薬 剤 耐 性 菌 の 問 題 で は 複 数 の 抗 菌 剤 に 対 し て 耐 性 を 持 つ 多 剤 耐 性 の ETEC の 出 現 や [23、 69]、 豚 由 来 の 薬 剤 耐 性 菌 が ヒ ト へ 伝 播 す る こ と に よ る ヒ ト の 健 康 リ ス ク の 増 大 も 危 惧 さ れ て お り 、各 国 で 重 要 な 問 題 と な っ て お り 、抗 菌 剤 に 頼 ら な い 、抗 菌 剤 代 替 物 質 に よ る 対 策が求められている。 こ れ ら を 背 景 と し て 、ETEC 対 策 に 応 用 で き る 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 研 究 が 活 発 に 行 わ れ て お り 、 そ の 候 補 物 質 と し て 有 機 酸 [31、 70]、 生 菌 剤 [71]お よ び 鶏 卵 抗 体 [72、 73]、 亜 鉛 [74]等 の 活 用 が 報 告 さ れ て お り 、 実 際 に 養 豚 場 で 応 用 さ れ て い る 資 材 も あ る [31、70、75]。し か し 、こ れ ら 資 材 の 中 で 養 豚 場 に 47 お い て も 安 定 し た 効 果 を 示 し て い る 資 材 は 少 な い [ 26、 27]。 そ の 理 由 の 一 つとしてそれら資材の開発段階で対象動物である豚に対応した評価が十分 に 行 わ れ て い な い こ と が 挙 げ ら れ 、特 に 豚 を 用 い た 大 腸 菌 感 染 対 策 で の 評 価 は遅れている。 そ こ で 、本 研 究 で は 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 に 適 し た 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立 を 目 指 す こ と と し た 。豚 大 腸 菌 感 染 系 は 過 去 に も 報 告 さ れ て い る が 、離 乳 豚 を 用 い た 大 腸 菌 感 染 系 は 再 現 性 が 難 し い こ と が 知 ら れ て お り 、離 乳 豚 で の 安 定 し た 感 染 系 を 確 立 す る た め に 感 染 時 に 胃 酸 中 和 剤 の 給 与 や [76]、接 種 大 腸 菌 を 胃 を 通 過 さ せ る た め の 腸 溶 性 カ プ セ ル で 覆 っ た り [77]、感 染 前 に 豚 に ス ト レ ス を 与 え る 等 が 行 わ れ て い る 。ま た 、離 乳 豚 の 豚 大 腸 菌 感 染 の 発 症 に は 腸 内 菌 叢 が 関 与 す る こ と も 報 告 さ れ て お り [78]、安 定 し た 豚 大 腸 菌 感 染 症 を 確 立 す る に は 感 染 豚 の 腸 内 菌 叢 も 考 慮 す る 必 要 が あ る 。本 研 究 が 目 指 し て い る 、抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 に 応 用 で き る 豚 大 腸 菌 感 染 系 で は 、胃 酸 中 和 剤 や 豚 に ス ト レ ス を 与 え る 等 の 処 理 を 避 け る 必 要 が あ る 。そ の こ と か ら 、離 乳 豚 ではなく哺乳豚を用いた豚大腸菌感染系の確立を目指した。 一 方 、哺 乳 豚 の 大 腸 菌 症 は 移 行 抗 体 で 防 御 で き る こ と が 知 ら れ て お り [66]、 安 定 し た 感 染 系 を 確 立 す る に は 、移 行 抗 体 を 接 種 し て い な い 豚 を 供 試 す る 必 要がある。 そ こ で 、本 研 究 で は 移 行 抗 体 を 接 種 し て お ら ず 、腸 内 菌 叢 の 影 響 も 排 除 で き る よ う に 、 帝 王 切 開 で 作 出 し 、 初 乳 を 摂 取 し て い な い cesarean-derived, colostrum-deprived ( CDCD) 豚 を 供 試 す る こ と で 安 定 し た 豚 大 腸 菌 感 染 系の確立を目指した。 【材料と方法】 1. in vitro で の 菌 株 の 選 抜 供試菌株:野外より分離され、当所に保存されていた溶血性大腸菌 ( Enterotoxigenic Escherichia coli ; ETEC) 13 株 そ れ ぞ れ の リ フ ァ ン ピ シ ン ( Wako Pure Chemical Industries, Ltd., Osaka, Japan) 耐 性 株 を 当 所 48 で 選 択 し 、 リ フ ァ ン ピ シ ン 耐 性 溶 血 性 大 腸 菌 13 株 を 供 試 し た 。 リ フ ァ ン ピ シ ン 耐 性 株 の 選 択 は 具 体 的 に は 、 リ フ ァ ン ピ シ ン を 100μ g/mL の 濃 度 に 含 む DHL 寒 天 培 地( Eiken Chemica, Co., Ltd., Tokyo, Japan)に 供 試 菌 株 を そ れ ぞ れ 濃 厚 に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 し 、 そ れ ぞ れ の 株 で 発 育 し て き たコロニーをリファンピシン耐性株として供試した。 O 抗 原 の 検 出 : O8 、 O9 、 O20、 O21 、 O45 、 O64 、 O101、 O115 、 O138 、 O139 、 O141 、 O147 、 O149 、 O153 及 び O157 の 15 種 類 の 抗 O 血 清 ( Laboratorio de Referencia de E. coli 、 University of Santiago de Compostela, Santiago, Spain) を 用 い て 定 法 に 従 い 実 施 し た 。 付 着 因 子 の 検 出:毒 素 原 性 大 腸 菌 線 毛 抗 血 清「 生 研 」 ( Denka Seiken Co., Ltd. Tokyo, Japan) を 用 い て 定 法 に 従 い 実 施 し た 。 LT の 検 出 : 大 腸 菌 易 熱 性 エ ン テ ロ ト キ シ ン 検 出 用 キ ッ ト 「 コ リ ス ト EIA」 ( Denka Seiken Co., Ltd.) を 用 い て 定 法 に 従 い 実 施 し た 。 ST の 検 出 : 大 腸 菌 耐 熱 性 エ ン テ ロ ト キ シ ン 検 出 用 キ ッ ト 「 VET-RPLA 」 ( Denka Seiken Co., Ltd.) を 用 い て 定 法 に 従 い 実 施 し た 。 病 原 因 子 遺 伝 子 の 検 出 : 付 着 因 子 の F4ab、 F4ac お よ び F4ad[79]、 毒 素 の LT、 ST お よ び Vero Toxin の 遺 伝 子 検 出 を PCR 法 に て 実 施 し た [80]。 2. 豚 を 用 い た 供 試 菌 株 の 選 抜 供 試 豚:1 頭 の 母 豚 よ り 作 出 さ れ た CDCD 豚 7 豚 を 供 試 し た( 図 13)。供 試 豚 は 作 出 日 か ら 2 区 ( EC389 区 お よ び BD2699 区 ) に 区 分 け さ れ 、 各 区 別の部屋で単飼のケージで飼育された。 供 試 菌 株 : 「1. in vitro で の 菌 株 の 選 抜 」で 選 抜 さ れ た リ フ ァ ン ピ シ ン 耐 49 性 の 毒 素 原 性 大 腸 菌 ( ETEC) EC389Rif r 株 お よ び BD2699Rif r 株 の 2 株 を 供試した。 接 種 菌 の 菌 液 調 整 で は 、 そ れ ぞ れ の 株 を SCD 寒 天 培 地 で 培 養 し 、 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を Minca ISO vitalex 寒 天 培 地( BBL Microbiology Systems Cookeysville, Md) に 塗 抹 し 、 37℃ で 一 晩 培 養 し た 。 そ の 後 、 Minca ISO vitalex に 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を 掻 き 取 り 生 理 食 塩 水 に 懸 濁 し 、 生 理 食 塩 水を用いて菌濃度を調整した後に接種菌液として供試した。 供 試 飼 料:抗 菌 性 飼 料 添 加 物 お よ び 機 能 性 飼 料 原 料 が 添 加 さ れ て い な い 試 験 用 代 用 乳 飼 料 「 SPF-LAC」( Borden Inc., Norfolkk, VA) を 作 出 当 日 か ら 試験終了時まで給与した。 感 染 試 験 : 4 日 齢 時 の 供 試 豚 に EC389 区 ( n=4) に は EC389Rif r 株 を 、 BD2699 区 ( n=3 ) に は BD2699Rif r 株 を 、 そ れ ぞ れ 1 頭 あ た り 5.4 × 10 8 CFU/mL を 10mL お よ び 3.2×10 8 CFU/mL を 10mL 経 口 で 接 種 し た 。 観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 と 糞 便 の 採 取も毎日行った。観察期間中に著しい脱水や食欲不振が認められた際には、 ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル を 用 い た 安 楽 殺 を 施 し た 。接 種 後 7 日 目 に 耐 過 豚 全 頭 の 剖検を実施し、主要臓器および腸内容物を無菌的に採取した。 3. 観 察 お よ び 検 査 項 目 糞 便 性 状 の ス コ ア 化:糞 便 性 状 は ス コ ア 化 し て 記 録 し た 。す な わ ち 、正 常 便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1、 下 痢 便 を ス コ ア 2 と し た 。 糞 便 中 お よ び 消 化 管 内 容 物 中 の 接 種 ETEC 数 の 測 定 : 観 察 期 間 中 の 糞 便 の 採 取 は 各 個 体 か ら 直 接 行 っ た 。 糞 便 は 採 取 後 す ぐ に 接 種 ETEC の 菌 数 測 定 に 供 試 し た 。 菌 数 測 定 で は 糞 便 1g を PBS で 10 倍 段 階 希 釈 し 、 適 切 な 希 釈 段 階 の 糞 便 希 釈 液 を 100 μ g/mL リ フ ァ ン ピ シ ン 含 有 DHL 寒 天 培 地 ( RFDHL) に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 し た 後 に 発 育 し た コ ロ ニ ー 数 を 50 計測した。 各 種 臓 器 に お け る ETEC の 分 離 : 剖 検 時 に は 全 頭 か ら 肺 、 肝 臓 、 心 臓 、 腎 臓 、脾 臓 、扁 桃 、腸 間 膜 リ ン パ 節 お よ び 脳 を 無 菌 的 に 採 取 し 、観 察 期 間 中 に安楽殺を施した個体からは上記の部位に加えて血液を無菌的に採取した。 採取した血液以外の臓器は表面を火炎滅菌した後に各臓器検体の中央部で 切 断 し 、 そ の 割 面 を RFDHL 寒 天 培 地 に 押 し 付 け 、 37℃ 、 24 時 間 培 養 後 の コ ロ ニ ー の 発 育 の 有 無 で 判 定 を 行 っ た 。血 液 は 直 接 RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 、 37℃ 、 24 時 間 培 養 後 の コ ロ ニ ー の 有 無 で 判 定 を 行 っ た 。 4. 豚 を 用 い た 接 種 菌 数 の 検 討 供 試 豚 :2 頭 の 母 豚 よ り 作 出 さ れ た CDCD 豚 18 頭 を 供 試 し た 。供 試 豚 は 作 出 日 に 4 区 ( ETEC-4、 ETEC-6、 ETEC-8 お よ び 陰 性 対 照 区 ) に 区 分 け され、各区はそれぞれ別の部屋で、単飼用のケージで飼育された。 供 試 菌 株 :「 1. in vitro で の 菌 株 の 選 抜 」 お よ び 「 2. 豚 を 用 い た 供 試 菌 株の選抜」で選抜されたリファンピシン耐性を有する毒素原性大腸菌 EC389Rif r 株 を 供 試 し た 。 接 種 菌 の 菌 液 調 整 は 「2. 豚 を 用 い た 供 試 菌 株 の 選 抜 」と 同 様 に 行 っ た 、 す な わ ち EC389Rif r 株 を SCD 寒 天 培 地 で 培 養 し 、 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を Minca ISO vitalex 寒 天 培 地( BBL Microbiology Systems Cookeysville, Md) に 継 代 、 塗 抹 し 、 37℃ で 一 晩 培 養 し た 。 そ の 後 、 Minca ISO vitalex に 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を 掻 き 取 り 生 理 食 塩 水 に 懸 濁 し 、菌 濃 度 を 調 整 し た 後 に 接 種菌液として供試した。 供 試 飼 料:抗 菌 性 飼 料 添 加 物 お よ び 機 能 性 飼 料 原 料 が 添 加 さ れ て い な い 試 験 用 飼 料 「 SPF-LAC」( Borden Inc., Norfolkk, VA) を 作 出 当 日 か ら 試 験 終 了まで供試した。 51 感 染 試 験 : 供 試 豚 は 4 日 齢 時 に 供 試 菌 株 で あ る EC389Rif r 株 を 経 口 で 接 種 さ れ 、ETEC-8 区( n=4)で は 1 頭 あ た り 4.3×10 8 CFU、ETEC-6 区( n=5) で は 1 頭 あ た り 4.3×10 6 CFU、 ETEC-4 区 ( n=5) で は 1 頭 あ た り 4.3× 10 4 CFU を 経 口 で 接 種 さ れ 、 陰 性 対 照 ( n=4) に は 生 理 食 塩 水 を 接 種 し た 。 観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便 の 採 取 は 随 時 実 施 し た 。観 察 期 間 中 に 著 し い 脱 水 や 沈 鬱 頭 が 認 め ら れ た 際 に は 安 楽 殺 を 実 施 し た 。 接 種 後 14 日 目 に は 耐 過 豚 全 頭 の 剖 検 を 実 施 し 、 腸 管 内容物を採取した。 糞便性状のスコア化:糞便性状は随時スコア化して記録された。つまり、 正 常 便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1 お よ び 下 痢 便 を ス コ ア 2 と し た 。 糞 便 中 お よ び 腸 管 内 容 物 中 の E.Coli 389Rif r 数 の 測 定:観 察 期 間 中 の 糞 便 の 採 取 は 各 個 体 か ら 直 接 行 っ た 。 糞 便 中 の EC389Rif r 数 の 測 定 で は 、 糞 便 1g を PBS で 10 倍 段 階 希 釈 し 、 適 切 な 希 釈 段 階 の 糞 便 希 釈 液 を 100μ g/mL リ フ ァ ン ピ シ ン 含 有 DHL( RFDHL) に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 後 に 発 育したコロニー数を計測した。 【結果】 1. in vitro で の 菌 株 の 選 抜 供 試 菌 株 の 選 抜:対 象 と し た 13 株 の 内 、付 着 因 子 は 12 株 で F4( K88)の 発 現 お よ び 遺 伝 子 が 保 持 さ れ て い る こ と が 確 認 さ れ 、残 り の 1 株 は F5 の 発 現 が 確 認 さ れ た ( 表 5)。 LT の 遺 伝 子 は 12 株 で 保 有 さ れ て お り 、 そ の 内 の 2 株 で 発 現 が 認 め ら れ た 。 一 方 、 ST は STⅠ 遺 伝 子 が 5 株 で 、 STⅡ 遺 伝 子 が 12 株 で 保 有 さ れ て お り 、 STⅠ 遺 伝 子 お よ び Ⅱ 遺 伝 子 の 両 方 を 保 有 し て い た 4 株 の 内 の 1 株 で ST の 発 現 が 確 認 さ れ た 。13 株 全 て で VT 遺 伝 子 の 保 有 は 認められなかった。 本 試 験 で は 、 凝 集 因 子 の F4 の 発 現 が 認 め ら れ 、 毒 素 と し て LT の 発 現 が 52 認 め ら れ た EC389Rif r 株 お よ び EC412Rif r 株 の 2 株 の 内 STⅠ お よ び STⅡ 両 方 の 遺 伝 子 の 保 有 が 認 め ら れ た EC389Rif r 株 と 、 F4 の 発 現 が 認 め ら れ 、 ST の 発 現 お よ び LT 遺 伝 子 の 保 有 も 認 め ら れ た BD2699Rif r 株 の 2 株 を 豚 を 用いた感染試験に供試し、最終選抜を実施することとした。 2. 豚 を 用 い た 供 試 菌 株 の 選 抜 臨 床 症 状 : EC389 区 で は 安 楽 殺 を 実 施 し た の は 、 接 種 後 1 日 目 の 1 頭 の み で あ っ た が 、BD2699 区 で は 接 種 後 2 日 目 に 3 頭 中 2 頭 の 安 楽 殺 を 実 施 し た 。 糞 便 性 状 の 悪 化 に つ い て は 接 種 後 8 時 間 目 に は EC389 区 お よ び BD2699 区 で そ れ ぞ れ 4 頭 中 3 頭 お よ び 3 頭 中 2 頭 で 軟 便 が 観 察 さ れ た( 図 14-15)。 接 種 後 1 日 目 に は EC389 区 で 3 頭 中 2 頭 が 下 痢 を 発 現 し 、 BD2699 区 で は 全 頭 で 下 痢 が 観 察 さ れ 。 両 株 と も ETEC 接 種 後 1 日 目 に は 糞 便 性 状 の 悪 化 が 認 め ら れ た 。接 種 後 1 日 目 以 降 は 観 察 期 間 を 通 じ て 耐 過 豚 全 頭 で 継 続 し て 下痢が観察された。 糞 便 中 の ETEC 数 推 移:接 種 後 8 時 間 目 に は EC389 区 お よ び BD2699 区 の 両 区 全 頭 の 糞 便 か ら 接 種 ETEC が 検 出 さ れ 、 糞 便 中 に は そ れ ぞ れ 6.2 × 10 7 CFU/g お よ び 2.5×10 8 CFU/g の 接 種 菌 数 が 検 出 さ れ た( 図 16)。そ の 後 試 験 終 了 ま で 両 区 と も 10 8 CFU/g 以 上 の 接 種 菌 が 継 続 し て 検 出 さ れ た 。観 察 期間中を通じて両区に有意差は認められなかった。 消 化 管 各 部 位 の ETEC 数:7 日 間 の 観 察 期 間 を 生 残 耐 過 し た 供 試 豚 で は 十 二 指 腸 で は EC389 区 お よ び BD2699 区 で そ れ ぞ れ 8.7×10 3 CFU/g お よ び 1.4 × 10 7 CFU/g の 菌 が 検 出 さ れ た 。 空 腸 で は 2.0 × 10 7 CFU/g お よ び 6.6 × 10 7 CFU/g の 菌 が 検 出 さ れ( 図 17)、十 二 指 腸 お よ び 空 腸 で EC389 区 の 方 が BD2699 区 よ り 少 な い 菌 数 を 示 し た 。 本 研 究 で 臨 床 症 状 が 著 し く 悪 化 し た た め に 安 楽 殺 を 施 し た EC389 区 の 2 頭 お よ び BD2699 区 の 1 頭 の 3 頭 で は 十 二 指 腸 で 2.0×10 8 CFU/g の 菌 が 検 53 出 さ れ 、 空 腸 で も 6.6×10 8 CFU/g の 菌 が 検 出 さ れ た 。 安 楽 殺 を 施 さ れ た 豚 の 十 二 指 腸 の ETEC 数 は EC389 区 の 生 残 豚 と 比 べ て 有 意 に 多 か っ た 。 各 種 臓 器 か ら の 接 種 ETEC の 分 離:EC389 区 お よ び BD2699 の 耐 過 豚 の 肺 、 肝 臓 、 腎 臓 、 脾 臓 、 心 臓 お よ び 扁 桃 か ら は 接 種 ETEC は 分 離 さ れ な か っ た が 、 EC389 区 で は 3 頭 全 頭 の 腸 間 膜 リ ン パ 節 か ら 分 離 さ れ た ( 表 6)。 一 方 、 安 楽 殺 を 施 さ れ た 豚 の 肺 、 腎 臓 、 扁 桃 か ら は 接 種 ETEC が 分 離 さ れ 、 さ ら に 血 液 か ら も 接 種 ETEC が 分 離 さ れ た 。 3. 豚 を 用 い た 接 種 菌 数 の 検 討 臨 床 症 状 : ETEC-6 区 お よ び ETEC-8 区 で は 接 種 後 1 日 目 に そ れ ぞ れ 5 頭 中 4 頭 お よ び 全 頭 で 下 痢 を 発 現 し た( 図 18)。一 方 、ETEC-4 区 で は 接 種 後 1 日 目 で は 5 頭 中 1 頭 で 下 痢 が 確 認 さ れ 、接 種 後 2 日 目 に は 全 頭 で 下 痢 が 確 認 さ れ た 。 ETEC-8、 ETEC-6 お よ び ETEC-4 区 で は 接 種 後 10 日 目 以 降 で は糞便性状の改善が認められた。 陰性対照区では接種後 2 日目に 4 頭中 2 頭で軟便が観察され、その後も 軟便が観察され続け、接種後 6 日目には全頭で下痢を発現した。接種後 7 日目以降では陰性対照区の糞便性状には改善が認められた。 糞 便 中 の E. coli 389Rif r 数 の 推 移 : 糞 便 中 の EC389Rif r 数 は 接 種 後 1 日 目 に は ETEC-6 区 お よ び ETEC-8 区 で 10 8 CFU/g ま で 増 加 し た( 図 19)。一 方 、 ETEC-4 区 の 糞 便 中 EC389Rif r 数 が 10 8 CFU/g ま で 増 加 し た の は 接 種 後 2 日 目 で あ っ た 。そ の 後 は 試 験 終 了 ま で 全 区 で 10 8 CFU/g 以 上 の 菌 数 が 検 出 さ れ た。 陰 性 対 照 区 で は 試 験 期 間 中 を 通 じ て 糞 便 か ら EC389Rif r は 検 出 さ れ な か った。 剖 検 時 腸 管 内 容 物 中 の E. coli 389Rif r 数:ETEC-4、ETEC-6 お よ び ETEC-8 区 の EC389Rif r 数 は 盲 腸 、 結 腸 お よ び 直 腸 で は 1×10 7 CFU/g 以 上 と な っ た 54 ( 図 20)。一 方 、ETEC-8、6 お よ び 4 区 の 3 区 全 て で EC389rif r 数 は 回 腸 、 空 腸 、十 二 指 腸 と 腸 管 上 部 に 移 行 す る に 従 い 減 少 し た が 、区 間 で 有 意 差 は 認 められなかった。 陰 性 対 照 区 か ら は 全 て の 腸 管 部 位 で EC389Rif r は 検 出 さ れ な か っ た 。 55 図 13 CDCD 豚 作 出 時 の 写 真 内部を滅菌したチャンバーを用意する(左上)。 母豚とチャンバーを滅菌させ、母豚の術野を殺菌する(右上)。 チャンバー内で子宮から子豚を取り出す(左下)。 56 57 BD2699 EC420 EC432 EC452 EC459 ECB-41 EC415 EC412 EC 3 8 9 EC382 EC374 EC376 EC379 株名 表5 毒素 F4 LT ST F5 F6 VT O抗原 (K88) (易熱性毒素) (耐熱性毒素) (K99) (987P) (Vero毒素) PCR PCR 凝集反応 凝集反応 PCR PCR 凝集反応 凝集反応 EIA F4ab F4ac F4ad LTⅠ LTⅠ STⅠ STⅡ + + + O149 + + O149 + + + + O149 + + + + O149 + + + + + O1 4 9 + + + + + + O149 + + + + + O149 + + + + O149 + + + + + + O149 + + O149 + + + + + + O149 + + O101 + + - O149 + + + + + + - 付着因子 当 所 保 存 ETEC 株 の 付 着 因 子 お よ び 毒 素 の 遺 伝 子 保 有 お よ び 発 現 図 14 ETEC 感 染 時 の 発 症 豚 と 下 痢 下痢発症豚の外観(左) 発現した下痢便(右) 58 59 ●●● 0 EBD2699 ●● ● 8hr ●●● ● 1 ●●● ● ● ●● 3 ●● ● ● ●●● 接種後日数 2 ●● ● ● ●●● 4 ●● ● ● ●●● 5 ●● ● ● ●●● 6 ●● ● ● ●●● 糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。 各区の糞便性状スコアの推移と安楽殺頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。 EC389Rif r お よ び ECBD2699Rif r 接 種 時 の 糞 便 性 状 の 推 移 安楽殺頭数 2 1 0 EC389区 安楽殺頭数 2 1 0 ●●●● 図 15 糞便スコアと安楽殺実施の頭数 12 接種ETEC数 (Log CFU/g) 10 8 6 4 2 0 0(8hr) 図 16 1 2 3 4 接種後日数(時間) 5 6 EC389Rif r お よ び BD2699Rif r 接 種 時 の 糞 便 中 接 種 ETEC 数 の 推 移 ● は EC389 区 、 ▲ は BD2699 区 を 示 す 。 EC389Rif r 株 あ る い は BD2699Rif r 株 を 経 口 接 種した際に糞便中に排泄された接種菌の菌数を示す。 60 10 9 b 菌数 (Log CFU/g) 8 7 6 5 a 4 3 2 1 0 十二指腸 図 17 空腸 回腸 盲腸 結腸 直腸 剖 検 時 消 化 管 各 部 位 の EC389Rif r お よ び BD2699Rif r 数 バ ー は 左 が EC389 区 、 中 央 が BD2699 区 、 右 が 安 楽 殺 豚 を 示 す 。 a、 b 異 符 号 間 で 有 意 差 あ り ( p <0.05) 61 62 EC389区 耐過豚 BD2699区 小計 EC389区 安楽殺豚 BD2699区 小計 肝臓 0/3 0/1 0/4 0/1 0/2 0/3 肺 0/3(a) 0/1 0/4 1/1 1/2 2/3 0/3 0/1 0/4 0/1 1/2 1/3 腎臓 0/3 0/1 0/4 0/1 0/2 0/3 心臓 0/3 0/1 0/4 0/1 0/2 0/3 脾臓 0/3 0/1 0/4 0/1 2/2 2/3 扁桃 腸間膜 リンパ節 3/3 0/1 3/4 0/1 1/2 1/3 剖 検 時 各 種 臓 器 お よ び 血 液 か ら の 接 種 ETEC の 分 離 率 a:陽 性 検 体 数 /検 体 数 表6 NT NT NT 1/1 2/2 3/3 血清 63 糞便スコア ●●●● ● ● ●●● ● ●●●● ● ETEC-4 b, c ●●●●● ● 3 ●● 2 4 6 ●●●● ●●●●● ●●●●● 接種後日数 ●●●● b ●●●●● a ●●●●● a ●●●● 7 ●●● ● ●●●●● ●●●●● ● ●●● EC389Rif r 接 種 後 の 糞 便 性 状 の 推 移 ●●● b ●●●●● a ●●●●● a a ●●●● 8 ●●● ● ●●●●● ●●●●● ●●●● a、 b、 c: 異 符 号 間 で 有 意 差 を 示 す ( p <0.05) 糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便および 2 が下痢便を示す。 各区の糞便性状スコアの推移を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。 図 18 a ●●●● ●● b ●●●●● a ●●●●● a a ●●●● a ●●●● ETEC-6 a, b ●●●● ETEC-8 2 陰性対照 c 1 0 ●●●● ●●●● 0 1 2 1 0 2 1 0 2 1 0 10 ●●● ● ●● ●● ● ●● ●● ● ●●● ● 12 ●●● ● ●●●● ● ●●● ●● ●●● ● EC389Rifr数 (Log CFU/g) 10 8 6 4 2 0 0 図 19 1 2 3 4 5 6 7 接種後日数 8 9 10 11 12 EC389Rif r 接 種 時 の 糞 便 中 接 種 EC389Rif r 数 の 推 移 ■ は ETEC-4 区 、▲ は ETEC-6 区 、● は ETEC-8 区 、◇ は 陰 性 対 照 区 を 示 す 。EC389Rif r 株 あ る い を 10 8 (ETEC-8 区 )、 10 6 (ETEC-6 区 )あ る い は 10 4 (ETEC-4 区 )CFU/頭 経 口 接 種 し た 際 に 糞 便 中 に 排 泄 さ れ た EC389Rif r 数 の 菌 数 を 示 す 。 64 10 9 EC389Rifr数 (Log CFU/g) 8 7 6 5 4 3 2 1 0 十二指腸 図 20 空調 回腸 盲腸 結腸 消 化 管 各 部 位 の EC389Rif r 数 バ ー は 左 か ら ETEC-4 区 、 ETEC-6 区 、 ETEC-8 区 を 示 す 。 65 直腸 【考察】 本 章 で は ETEC に よ る 下 痢 症 の 感 染 系 を 確 立 す る た め に 、 当 所 に 保 存 さ れ て い た 大 腸 菌 株 を 対 象 に 供 試 菌 株 の 選 抜 を 実 施 し た 。選 抜 さ れ 、そ の 後 の 感 染 試 験 に 供 試 さ れ た EC389Rif r 株 は 付 着 因 子 で あ る F4 遺 伝 子 、下 痢 原 性 毒 で あ る LT、 STⅠ お よ び STⅡ 遺 伝 子 を 保 有 し 、 そ れ ら の 内 F4 お よ び LT の 発 現 が 確 認 さ れ た 。 Katsuda ら が 我 が 国 の 哺 乳 豚 ・ 離 乳 豚 の 下 痢 便 か ら 分 離 し た 大 腸 菌 を 対 象 に 行 っ た 調 査 で は 、付 着 因 子 と 毒 素 の 組 み 合 わ せ で 最 も 多 か っ た パ タ ー ン が F4、 LT、 STⅠ お よ び STⅡ 遺 伝 子 を 保 有 し て い る も の で [22]、こ の パ タ ー ン は 本 研 究 で 感 染 試 験 に 供 試 し た EC389Rif r 株 と 同 じ で あ り 、 感 染 試 験 に 供 試 し た EC389Rif r 株 が 保 有 し て い る 付 着 因 子 お よ び 毒 素 の パ タ ー ン が 野 外 養 豚 場 に 浸 潤 し て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。一 方 、当 所 保存大腸菌株で最も多かった付着因子遺伝子および毒素遺伝子の保有パタ ー ン は F4、 LT お よ び STⅡ を 保 有 し て い る も の で あ っ た 。 Katsuda ら の 報 告で示された付着因子遺伝子および毒素因子遺伝子の保有パターンが当所 保 存 菌 株 の そ れ と 異 な っ て い た 理 由 と し て は 、 当 所 保 存 の 大 腸 菌 株 が 13 株 と 少 な か っ た こ と 、Katsuda ら と 当 所 保 存 菌 株 で は 分 離 さ れ た 時 期 、地 域 、 農場が異なっているためと考えられる。 豚を用いた大腸菌実験感染系では過去の報告と同様に接種後 1 日目ある い は 2 日 目 か ら 下 痢 の 発 現 が 認 め ら れ 、さ ら に 接 種 8 時 間 後 に は 糞 便 中 へ の 排 菌 も 確 認 さ れ た [81、82]。過 去 の 哺 乳 豚 を 用 い た 大 腸 菌 感 染 試 験 で は 1 頭 あ た り 10 8 CFU/頭 程 度 接 種 し て い る も の が 多 く 、 本 研 究 で 供 試 し た 接 種 菌 数 よ り 著 し く 多 い 。本 研 究 と そ れ ら 過 去 の 報 告 で は 、初 乳 を 摂 取 し て い な い 点 で は 一 致 す る 報 告 も あ る 。し か し 、哺 乳 豚 の 娩 出 方 法 が 、本 研 究 で は 帝 王 切 開 で 無 菌 的 に 行 い 、過 去 の 報 告 で は 通 常 通 り に 母 豚 か ら 分 娩 さ れ た 点 が 異 な っ て い る 。過 去 の 報 告 で は 分 娩 時 に 母 豚 や 環 境 中 の 菌 を 取 り 込 み 腸 内 菌 叢 が 形 成 さ れ た た め に 、い わ ゆ る 競 合 排 除 の よ う な 現 象 が 起 き [83]、無 菌 的 に 作 出 さ れ た 哺 乳 豚 と 比 較 し て 、感 染 成 立 に 多 量 の 感 染 菌 が 必 要 と な っ た と 考 えられる。 過去の豚を用いた大腸菌感染系では感染菌数と臨床症状や糞便中に排泄 66 さ れ る 菌 数 に つ い て の 報 告 は 多 く な い 。し か し 、過 去 の 報 告 で は 哺 乳 豚 で は 感 染 菌 数 が 10 8 CFU/頭 と 比 較 的 高 濃 度 に 接 種 し て い る[ 84、85]。ま た 、離 乳 豚 を 用 い た 感 染 系 で も 10 1 0 CFU/頭 と 高 濃 度 の ETEC を 接 種 し て い る こ と を 考 慮 す る と [86]、少 な い 接 種 菌 数 で は 感 染 が 成 立 し な い あ る い は 臨 床 症 状 が 認 め ら れ な か っ た と も 考 え ら れ る 。一 方 、本 研 究 で は 10 4 CFU/頭 の ETEC 接 種 で も 下 痢 が 発 現 し 、 糞 便 中 か ら も 安 定 し て ETEC が 検 出 さ れ た 。 こ れ は 、 本 研 究 で は CDCD 豚 が 用 い ら れ た 影 響 と 考 え ら れ る が 今 後 更 な る 検 討 が 必 要 で あ る 。さ ら に 、本 研 究 で は 感 染 菌 数 を 少 な く す る と 臨 床 症 状 の 発 現 お よ び 糞 便 中 へ の ETEC 排 泄 の 遅 延 が 示 さ れ た が 、 こ の こ と に つ い て も 接 種 ETEC が 少 な い と ETEC が 腸 管 内 で 発 症 レ ベ ル ま で 増 殖 す る の に 時 間 を 要したためとも考えられるが、更なる研究が必要となる。 本 研 究 で は 感 染 豚 の 糞 中 へ の 排 菌 数 は 10 8 CFU/g 程 度 で 安 定 し て お り 、過 去 の 報 告 で は 1 週 齢 健 康 豚 の 糞 便 中 で も 10 9 CFU/g 程 度 の 大 腸 菌 群 が 排 泄 さ れ て い る こ と か ら [ 87、 88]、 発 症 豚 で も 糞 便 中 の 大 腸 菌 数 は 著 し く 増 加 し て い な い こ と が 示 唆 さ れ た 。こ の こ と か ら 、ETEC に 対 す る 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 効 果 を 評 価 す る 際 の 指 標 と し て 糞 便 中 ETEC 数 は 応 用 で き な い と 考 え ら れた。 剖 検 時 の 消 化 管 各 部 位 の ETEC 数 も 回 腸 よ り 下 部 の 消 化 管 で は 安 楽 殺 を 施 し た 豚 で も 、耐 過 豚 で も 10 8 CFU/g か ら 10 9 CFU/g 程 度 の ETEC が 検 出 さ れ て お り 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 一 方 、 接 種 し た ETEC の 2 株 の 内 、 死 亡 頭 数 が 少 な か っ た EC389 株 区 で は 回 腸 よ り 上 部 の 消 化 管 で は ETEC 数 が 減 少 し た が 、 も う 一 方 の BD2699 株 区 や 安 楽 殺 を 施 さ れ た 豚 で は 消 化 管 上 部 に 向 け て ETEC 数 の 減 少 は 認 め ら れ ず 、 十 二 指 腸 で は 安 楽 殺 し た 豚 と EC389 株 区 で 有 意 差 が 認 め ら れ た 。 過 去 の 報 告 で も ETEC の 発 症 に は 消 化 管 上 部 で の 増 殖 が 重 要 で あ る こ と が 報 告 さ れ て お り [89]、本 研 究 で も 消 化 管 上部で増殖した株や個体では臨床症状が強く発現したと考えられる。 本 研 究 で は ETEC を 接 種 し て い な い 陰 性 対 照 区 で も 下 痢 が 認 め ら れ た 。 本 研 究 を 実 施 し た 感 染 施 設 は 入 場 時 に は シ ャ ワ ー を 浴 び 、高 圧 蒸 気 滅 菌 に よ り 滅 菌 さ れ た 衣 類 の 着 用 が 行 わ れ て い る 。ま た 、持 ち 込 む 資 材 も 燻 蒸 あ る い は 浸 漬 に よ り 滅 菌 し て か ら 持 ち 込 ま れ て い る 。 更 に 、 入 気 口 に は HEPA フ 67 ィ ル タ ー が 設 置 さ れ 、各 室 は 陽 圧 に 保 た れ て い る 。そ の た め 外 部 か ら 病 原 体 が侵入したために陰性対照区で下痢が発生した可能性は低いと考えられる。 ま た 、本 研 究 で は 各 区 が 独 立 し た 部 屋 で 飼 育 さ れ て お り 、陰 性 対 照 区 の 給 餌 や 健 康 状 態 の 観 察 等 は 毎 回 一 番 最 初 に 実 施 さ れ て お り 、試 験 期 間 を 通 じ て 陰 性 対 照 区 か ら ETEC が 分 離 さ れ る こ と も な か っ た こ と か ら 、 ETEC が 誤 っ て 感 染 し た 可 能 性 も 低 い と 考 え ら れ る 。そ の た め 、陰 性 対 照 区 で の 下 痢 の 発 生は感染症によるものではなく、生理的な原因によるものと考えられた。 【小括】 本 章 で は 、 CDCD 豚 を 用 い て 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立 を 試 み 、 付 着 因 子 の F4、エ ン テ ロ ト キ シ ン の LT お よ び ST を 保 有 す る ETEC の EC389Rif r 株 を 選 抜 し 、感 染 系 に 供 試 す る こ と と し た 。EC389Rif r 株 を 10 4 CFU/頭 経 口 接 種 す る と 、接 種 後 2 日 目 に は 全 頭 で 下 痢 を 発 現 し 、糞 便 中 へ の 安 定 し た 排 菌 が 認められた。また、抗菌剤代替物質を評価する際の指標として糞便中の ETEC 数 で は な く 、 剖 検 時 の 小 腸 部 で の ETEC 数 の 方 が 活 用 で き る こ と が 示 唆 さ れ た 。 本 章 で は 14 日 間 の 観 察 期 間 を 設 け た が 、 試 験 用 代 用 乳 の 給 与 を 開 始 し た 11 日 目 以 降 に は ETEC 接 種 区 で も 糞 便 性 状 が 回 復 傾 向 に あ る こ と か ら 、観 察 期 間 を 試 験 用 代 用 乳 の 給 与 期 間 で あ る 7 日 間 程 度 に 設 定 す る こ とが望ましいと考えられた。 68 第五章 豚大腸菌感染系を用いた 乳酸添加飼料の評価 69 【緒言】 毒 素 原 性 大 腸 菌( ETEC)感 染 に よ る 豚 の 新 生 期 お よ び 離 乳 後 下 痢 症 の 対 策 に は 、 環 境 中 お よ び 豚 体 内 の 両 方 に お い て ETEC 数 を 減 少 さ せ る 必 要 が あ る 。 環 境 中 の ETEC 数 を 減 少 さ せ る た め に は 、 オ ー ル ア ウ ト の 実 施 、 豚 舎 や 豚 房 の 洗 浄 、 消 毒 お よ び 乾 燥 が 有 効 と さ れ て い る が [90] 、 末 吉 は 特 に ETEC が 乾 燥 に 弱 い こ と を 報 告 し て い る [ 67]。 一 方 、 豚 体 内 に お い て ETEC 数 の 増 加 を 抑 え る た め に は 、 ま ず 第 一 に 飼 養 環 境 の 改 善 が 挙 げ ら れ る [91]。飼 育 環 境 を 豚 の 適 温 に 調 整 す る こ と で 豚 大 腸 菌 症 に 改 善 が 認 め ら れ た 事 例 や 、隙 間 風 を 防 ぐ こ と も 有 効 と 報 告 さ れ て い る [92]。し か し 、ETEC に よ る 下 痢 が 発 生 し て い る 農 場 で は 、こ れ ら 飼 養 環 境 の 改 善 に 併 せ て 抗 菌 剤 に よ る 対 策 が 不 可 欠 と な っ て い る [92]。し か し な が ら 、 ETEC に も 薬 剤 耐 性 菌 の 出 現 が 認 め ら れ て お り [8]、 中 に は 複 数 の 抗 菌 剤 に 対 し て 耐 性 を 示 す 多 剤 耐 性 化 し た ETEC や [69]、我 が 国 で 特 に 慎 重 使 用 が 求 め ら れ て い る「 第 二 次 選 択 薬 」に 対 す る 耐 性 菌 の 出 現 も 報 告 さ れ て い る [93]。そ の た め 、農 場 で は 過 去 に ETEC 対 策 で 効 果 を 示 し た 抗 菌 剤 を 使 用 し て も 、ETEC が 耐 性 化 し た た め に 十 分 な 効 果 が 得 ら れ な い 例 も 出 て き て い る 。 また、消費者からは抗菌剤の使用量がより少ない畜産物が求められている。 そ の た め 、ETEC 対 策 に 有 効 な 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 探 索 が 続 け ら れ て お り 、そ の開発も急務の課題として進められている。 ETEC 対 策 に 提 案 さ れ て い る 抗 菌 剤 代 替 物 質 等 に は 、 生 菌 剤 [ 75]、 有 機 酸 [ 1]、 ハ ー ブ 類 [ 31]、 鶏 卵 抗 体 [ 72、 94]、 飼 料 中 の 蛋 白 含 量 を 減 ら す 方 策 [ 95、 96]、 亜 鉛 [ 97] 等 が あ る 。 第 三 章 「 豚 サ ル モ ネ ラ ・ テ ィ フ ィ ム リ ウ ム 感 染 系 を 用 い た 乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 」で サ ル モ ネ ラ へ の 効 果 が 認 め ら れ た 乳 酸 等 の 有 機 酸 の ETEC に 対 す る 効 果 に つ い て は 、 Tsiloyiannis ら が 野 外 の ETEC に よ る 離 乳 後 下 痢 症 発 症 農 場 に お い て 、 1.6%乳 酸 添 加 飼 料 と 併 せ て 1.0%プ ロ ピ オ ン 酸 、1.2%ギ 酸 、1.2%リ ン ゴ 酸 、1.5%ク エ ン 酸 お よ び 1.5%フ マ ル 酸 添 加 飼 料 の 6 種 類 の 有 機 酸 添 加 飼 料 の ETEC に よ る 下 痢 の 発 現 、 死 亡 率 お よ び 糞 便 か ら の ETEC の 検 出 率 と 増 体 重 や 飼 養 効 率 を 比 較 し て い る [ 31]。 そ の 結 果 、 有 機 酸 添 加 飼 料 は 無 添 加 飼 料 よ り も 下 痢 の 発 現 、 70 事 故 率 お よ び 飼 養 効 率 等 で 改 善 が 認 め ら れ 、特 に 乳 酸 添 加 飼 料 に 改 善 が 認 め られたと報告されている。 Tsiloyiannis ら の 報 告 で は 乳 酸 の 作 用 機 序 に つ い て の 詳 細 な 検 討 は 行 わ れ な か っ た が 、Cole ら や Thomlinson ら は 有 機 酸 添 加 に よ り 消 化 管 内 の pH が 低 下 す る こ と を 見 出 し 、pH が 低 下 し た 結 果 ETEC の 増 殖 が 抑 制 さ れ る と 考 察 し て い る [98、99 ]。一 方 、Li ら は 豚 を 用 い た ETEC 実 験 感 染 で 、ETEC に 有 機 酸 添 加 飼 料 が 有 効 で あ る こ と を 報 告 し て い る が 、有 機 酸 添 加 飼 料 が 腸 管 の pH に は 影 響 を 与 え て い な い と 報 告 し て お り 、有 機 酸 添 加 飼 料 が 腸 内 菌 叢 に 影 響 を 与 え る こ と で ETEC に 効 果 を 示 す と 考 察 し て い る [ 100]。 こ の よ う に 、有 機 酸 添 加 飼 料 の 作 用 機 序 の 詳 細 に つ い て 、特 に 腸 管 内 pH 低 下 の 影響については明確にされていない。 そ こ で 、本 試 験 で は 乳 酸 添 加 飼 料 の 2 段 階 に 設 定 し 、ETEC に 対 す る 乳 酸 の 濃 度 に よ る ETEC に 対 す る 効 果 に つ い て 、 ETEC 感 染 系 で 検 証 す る と 共 に 、 乳 酸 添 加 飼 料 に よ る 消 化 管 内 の pH 低 下 に つ い て も 検 証 し た 。 【材料と方法】 供試豚:2 頭の母豚から帝王切開で作出され、初乳を摂取していない ( caesrean-derived and colostrum-derived) CDCD 豚 を 18 頭 供 試 し た 。 供 試 豚 は 作 出 日 に 4 区( 2%LA 区 、1%LA 区 、陽 性 対 照 区 お よ び 陰 性 対 照 区 ) に区分けされ、各区別の部屋で単飼ケージで飼育された。 供 試 菌 株 : 前 章 で 選 抜 し た EC389Rif r 株 を 供 試 し た 。 前 章 で は EC389Rif r を 1 頭 あ た り 4.3×10 4 CFU を 経 口 接 種 す る と 全 頭 で 下 痢 を 発 現 し 、 糞 便 中 か ら も 安 定 し て EC389Rif r が 検 出 さ れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 接 種 菌 株 の 調 整 は 前 章 と 同 様 に 実 施 し た 。 す な わ ち 、 EC389Rif r を SCD 寒 天 培 地 で 培 養 し 、 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を Minca ISO vitalex 寒 天 培 地 ( BBL Microbiology Systems Cookeysville, Md) に 継 代 、 塗 抹 し 、 37℃ で 一 晩 培 養 し た 。 そ の 後 、 Minca ISO vitalex に 発 育 し て き た コ ロ ニ ー を 掻 き 取 り 生 理 食 塩 水 に 懸 濁 し 、生 理 食 塩 水 に 菌 濃 度 を 調 整 し た 後 に 接 種 菌 液 と し 71 て供試した。 供 試 飼 料:陽 性 対 照 区 お よ び 陰 性 対 照 区 に は 機 能 性 飼 料 原 料 や 抗 菌 性 飼 料 添 加 物 を 含 ま な い 試 験 用 代 用 乳 ( SPF-LAC) を 供 試 し た 。 2%LA 区 で は 試 験 用 代 用 乳 に 乳 酸 を 2%添 加 し 、 1%LA 区 で は 試 験 用 代 用 乳 に 乳 酸 を 1% 添 加 し て 給 与 し た 。各 区 で は そ れ ぞ れ の 飼 料 を 作 出 当 日 か ら 試 験 終 了 ま で 給 与 し た。 感 染 試 験 : 供 試 豚 を 4 区 に 分 け 、 2%LA 区 ( n=5)、 1%LA 区 ( n=5)、 陽 性 対 照 区 ( n=5) お よ び 陰 性 対 照 区 ( n=3) に そ れ ぞ れ の 飼 料 を 作 出 日 か ら 給 与 し た 。 4 日 齢 時 に 2%LA 区 、 1%LA 区 お よ び 陽 性 対 照 区 で は EC389Rif r 株 を 1 頭 あ た り 5.1×10 3 CFU 経 口 接 種 し た 。 観 察 期 間 中 は 臨 床 症 状 の 観 察 を 毎 日 行 い 、糞 便 性 状 の ス コ ア 化 お よ び 糞 便 の 採 取 を 随 時 実 施 し た 。期 間 中 に 著 し い 脱 水 症 状 や 沈 鬱 が 認 め ら れ た 際 に は 、 ペ ン ト バ ル ビ タ ー ル を 用 い た 安 楽 殺 を 施 し た 。接 種 後 7 日 目 に は 耐 過 豚 全 頭 の剖検を実施し、腸管内容物を採取した。 糞便性状のスコア化:糞便性状は随時スコア化して記録された。すなわち、 正 常 便 を ス コ ア 0、 軟 便 を ス コ ア 1、 下 痢 便 を ス コ ア 2 お よ び 水 様 便 を ス コ ア 3 とした。 糞 便 中 お よ び 消 化 管 内 容 物 中 の E. coli 389Rif r 数 の 測 定:観 察 期 間 中 の 糞 便 の 採 取 は 各 個 体 か ら 直 接 行 っ た 。 糞 便 は 採 取 後 す ぐ に EC389Rif r 数 の 測 定 を 行 っ た 。 菌 数 測 定 で は 糞 便 1g を PBS で 10 倍 段 階 希 釈 し 、 適 切 な 希 釈 段 階 の 糞 便 希 釈 液 を 100μ g/mL リ フ ァ ン ピ シ ン 含 有 DHL( RFDHL) に 塗 抹 し 、 37℃ で 24 時 間 培 養 後 に 発 育 し た 後 に 発 育 し た コ ロ ニ ー 数 を 計 測 し た 。 各 種 臓 器 に お け る E. coli 389Rif r の 分 離:剖 検 時 に は 肺 、肝 臓 、腎 臓 、心 臓 、 脾 臓 お よ び 扁 桃 を 採 取 し た 。観 察 期 間 中 に 安 楽 殺 を 施 し た 豚 か ら は 併 せ て 血 液 も 採 取 し た 。採 取 し た 血 液 以 外 の 臓 器 は 表 面 を 火 炎 滅 菌 し た 後 に 中 央 を 切 72 断 し 、そ の 割 面 を RFDHL 寒 天 培 地 に 接 種 し 37℃ 、24 時 間 培 養 後 の コ ロ ニ ー の 発 育 の 有 無 で 判 定 を 行 っ た 。 血 液 は 直 接 RFDHL 寒 天 培 地 に 塗 抹 し 、 37℃ 、 24 時 間 培 養 後 の コ ロ ニ ー の 有 無 で 判 定 を 行 っ た 。 消 化 管 内 容 物 の pH の 測 定 : 剖 検 時 に は 胃 、十 二 指 腸 、空 腸 、回 腸 、盲 腸 お よ び 結 腸 を 採 取 し た 。 採 取 後 の 各 部 位 の 内 容 物 は イ オ ン 交 換 水 で 10 倍 に 希 釈 し 、 希 釈 さ れ た 各 検 体 の pH を 測 定 し た 。 【結果】 臨床症状:陽性対照区では接種後 3 日目までに 5 頭中 3 頭が安楽殺され、 残 り の 2 頭 で も 4 日 目 以 降 で は 水 溶 性 下 痢 が 観 察 さ れ た( 図 21)。1%LA 区 で は 接 種 後 3 日 目 に 5 頭 中 1 頭 が 安 楽 殺 さ れ た 。 1%LA 区 の 残 り の 4 頭 で も糞便性状の悪化は観察され、2 頭で水溶性下痢、1 頭で下痢、1 頭で軟便 が 観 察 さ れ た 。一 方 、2%LA 区 で は 全 頭 が 生 存 耐 過 し 、糞 便 性 状 の 悪 化 も 下 痢および軟便がそれぞれ 1 および 2 回観察されるにとどまった。 陰 性 対 照 区 で は 接 種 後 3 日 目 を ピ ー ク に 軟 便 が 観 察 さ れ た が 、試 験 期 間 を 通じて下痢は観察されなかった。 糞 便 中 の EC389Rif r 数 の 推 移:糞 便 中 の EC389Rif r 数 が ピ ー ク の 10 1 0 CFU/g 程 度 ま で 増 加 し た の は 、陽 性 対 照 区 で は 接 種 後 2 日 目 、1%LA 区 お よ び 2%LA 区 で は 接 種 後 3 日 目 と な っ た ( 図 22 )。 接 種 後 3 日 目 以 降 は 全 区 と も 10 1 0 CFU/g 程 度 の EC389Rif r が 試 験 終 了 ま で 継 続 し て 検 出 さ れ た 。 剖 検 時 腸 管 内 容 物 中 の EC389Rif r 数:胃 で は 陽 性 対 照 区 で は 4.1×10 6 CFU/g の EC389Rif r 数 が 認 め ら れ 、2%LA 区 で は 全 頭 が 検 出 限 界 以 下 と な り 、両 者 の 間 で 有 意 差 が 認 め ら れ た( 図 23)。ま た 、胃 よ り 下 部 の 消 化 管 各 部 位 で も 2%LA 区 の 方 が 、1%LA 区 お よ び 陽 性 対 照 区 よ り 少 な い EC389Rif r 数 を 示 し て お り 、 十 二 指 腸 で は 陽 性 対 照 区 と 2%LA 区 間 で 、 空 腸 で は 陽 性 対 照 区 と 2%LA 区 お よ び 1%LA 区 で そ れ ぞ れ 有 意 差 が 認 め ら れ た 。盲 腸 、結 腸 お よ び 73 直 腸 で の EC389Rif r 数 は 陽 性 対 照 区 お よ び 1%LA 区 で 2×10 9 CFU/g 程 度 を 示 し た 。一 方 、2%LA 区 で は 2×10 8 CFU/g 程 度 を 示 し 、陽 性 対 照 区 と 2%区 間で結腸および直腸内容物中で有意差が示された。 各 種 臓 器 に お け る EC389Rif r の 分 離 : 各 区 の 耐 過 豚 で は 殆 ど 全 て の 豚 の 臓 器 か ら EC389Rif r は 分 離 さ れ な か っ た (表 7)。 陽 性 対 照 区 の 耐 過 豚 で 肝 臓 、 腎 臓 お よ び 扁 桃 か ら そ れ ぞ れ 1 検 体 で EC389Rif r が 分 離 さ れ た が 、 そ れ ら は全て同一豚に由来していた。 一 方 、 安 楽 殺 豚 で は 肺 、 腎 臓 、 心 臓 、 脾 臓 お よ び 扁 桃 か ら EC389Rif r が 分 離 さ れ 、 4 頭 中 2 頭 で は 血 液 か ら も EC389Rif r が 検 出 さ れ た 。 剖 検 時 消 化 管 内 容 物 の pH: 各 区 の pH に 差 は 認 め ら れ ず 、 各 区 の 平 均 pH は 胃 で は 3.6 か ら 3.9 で 、十 二 指 腸 か ら 回 腸 に お け る 小 腸 で は 6.1 か ら 6.4、 盲 腸 か ら 直 腸 に お け る 大 腸 で は 6.6 か ら 7.5 を 示 し た ( 図 24)。 各 区 間 で 有 意差は認められなかった。 74 75 安楽殺 3 2 1 0 安楽殺 3 2 1 0 安楽殺 3 2 1 0 2 ●● 接種後日数 3 ●●● ● ● ●●● 4 ●●● ●● ●●● 5 ●● ● ●● ●●● ● ●● ● ● ●●●● ● 6 ●● ● ●● ●●● ●● ● ● ● ●●●●● EC389Rif r 株 接 種 時 の 糞 便 性 状 の 推 移 1 0 図 21 ●●● ● ● ● ●● ●● ●● ●● ● ● ●●● ● ● ● ● ●●●●● ●● ● ●●●● ● ● ●●●● ● ●● ●●●●● ●●●●● ●●● 陰性対照 ●●●●● 陽性対照 ●●●●● 1% LA 安楽殺 2% LA 3 2 1 ●●●●● 0 糞便性状スコアは 0 が正常便、1 が軟便 2 が下痢便および 3 が水様性下痢を示す。 各区の糞便性状スコアの推移と剖検頭数を示す。表中の●が供試豚 1 頭を示す。 糞便スコアと安楽殺豚の頭数 EC389Rifr数 (Log CFU/g) 12 10 8 6 a 4 2 b 0 0 1 2 3 4 5 接種後日数 図 22 EC389Rif r 接 種 時 の EC389Rif r 数 の 推 移 ■ が 2%LA 区 、 ▲ が 1%LA 区 、 ● が 陽 性 対 照 区 お よ ◇ が 陰 性 対 照 区 を 示 す 。 a、 b 異 符 号 間 で 有 意 差 あ り ( p <0.05) 76 10 a a (Log CFU/g) 8 EC389Rifr数 9 4 b a a 7 a b b 6 a b b b 5 3 2 1 0 b 胃 十二指腸 図 23 空腸 回腸 盲腸 結腸 直腸 消 化 管 各 部 位 に お け る EC389Rif r 数 バ ー は 左 か ら 青 色 が 2%LA 区 、 赤 色 が 1%LA 区 お よ び 黒 色 が 陽 性 対 照 区 を そ れぞれ示す。 a、 b 異 符 号 間 で 有 意 差 あ り ( p <0.05) 77 78 肺 0/5 0/4 1/2 0/3 1/14 0/1 0/3 0/4 肝臓 0/5 0/4 1/2 0/3 1/14 0/1 2/3 2/4 腎臓 0/5 0/4 0/2 0/3 0/14 0/1 1/3 1/4 心臓 0/5 0/4 0/2 0/3 0/14 0/1 1/3 1/4 脾臓 0/5 0/4 1/2 0/3 1/14 1/1 1/3 2/4 扁桃 臓 器 、 組 織 お よ び 血 清 か ら の EC389Rif r 分 離 率 2%LA 0/5 1%LA 0/4 陽性対照 0/2 陰性対照 0/3 小計 0/14 安楽殺豚 1%LA 0/1 陽性対照 1/3 小計 1/4 耐過豚 表7 0/1 2/3 2/4 NT NT NT NT 血清 8 7 pH 6 5 4 3 2 1 0 胃 十二指腸 図 24 空腸 回腸 盲腸 結腸 直腸 消 化 管 各 部 位 に お け る pH バ ー は 左 か ら 青 色 が 2%LA 区 、赤 色 が 1%LA 区 、黒 色 が 陽 性 対 照 区 お よ び グ レーが陰性対照区をそれぞれ示す。 79 【考察】 本 章 で は 、第 四 章「 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立 」で 確 立 し た 豚 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い て 、2%お よ び 1%乳 酸 添 加 飼 料 の 下 痢 症 緩 和 に 対 す る 評 価 を 行 っ た 。そ の 結 果 、 1%乳 酸 添 加 飼 料 で は ETEC 感 染 に よ る 糞 便 性 状 の 悪 化 が 遅 延 し 、 2%乳 酸 添 加 飼 料 で は 糞 便 性 状 が 悪 化 せ ず 、 剖 検 時 の 消 化 管 各 部 位 の ETEC 数 も 減 少 し て い た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 2%乳 酸 添 加 飼 料 が ETEC 対 策 に 有 効 で あ る こ と が 示 唆 さ れ る と 共 に 、第 四 章 で 確 立 し た 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 抗 菌 剤代替評価への有用性が示された。 本 試 験 は 第 四 章 で 確 立 し た 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い て 実 施 し た が 、陽 性 対 照 区 で は 第 四 章 と 同 様 に ETEC 接 種 翌 日 に は 糞 便 性 状 の 悪 化 と 、 糞 便 中 へ の ETEC の 排 泄 が 認 め ら れ た 。さ ら に 、接 種 後 2 日 目 に は 糞 便 中 へ の 排 菌 数 が ほ ぼ ピ ー ク に 到 達 し た が 、こ れ は 感 染 後 数 日 で 糞 便 中 へ の 排 泄 が ほ ぼ ピ ー ク に 達 し た 第 四 章 の 陽 性 対 照 区 と 同 様 で あ る 。ま た 、剖 検 時 の 消 化 管 各 部 位 の ETEC 数 は 盲 腸 、結 腸 お よ び 直 腸 で は 第 四 章 と 同 様 に ほ ぼ 一 定 の 菌 数 を 示 し て い た が 回 腸 よ り 上 部 の 消 化 管 で は 、第 四 章 の 1.接 種 菌 株 の 検 討 と 同 様 に 十 二 指 腸 、 空 腸 お よ び 回 腸 で も 比 較 的 高 い ETEC 数 が 測 定 さ れ た 。 一 方 、 第 四 章 の 2.接 種 菌 数 の 検 討 で は 盲 腸 よ り 上 部 の 消 化 管 で は ETEC 数 が 減 少 し て い た 。こ れ は 第 四 章 の 2.接 種 菌 数 の 検 討 で は 剖 検 時 に 臨 床 症 状 が 回 復 していたためと考えられる。 本 試 験 で は 乳 酸 の 添 加 濃 度 を 2%と 1%の 2 段 階 に 設 定 し 、 乳 酸 の 添 加 濃 度 に つ い て も 検 討 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 乳 酸 1%添 加 で は 糞 便 性 状 の 悪 化 が 遅 延 し 、 乳 酸 2%添 加 で は 糞 便 性 状 の 悪 化 が 認 め ら れ な か っ た 。 こ の こ と か ら 、乳 酸 添 加 濃 度 が 高 い 方 が 糞 便 性 状 の 悪 化 を 抑 制 す る 効 果 が 強 い こ と が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、 消 化 管 各 部 位 の 菌 数 も 乳 酸 2%添 加 の 方 が 乳 酸 1%添 加 よ り も 少 な い 菌 数 で 推 移 し 、特 に 上 部 消 化 管 で は 大 幅 な 減 少 が 認 め ら れ 、消 化 管 で の ETEC の 増 殖 を 抑 制 す る 効 果 も 乳 酸 添 加 濃 度 が 高 い 方 が 強 い こ と が 示 唆 さ れ た 。 ETEC 感 染 の 発 症 時 に は 上 部 消 化 管 で ETEC が 増 殖 し て い る こ と が 知 ら れ て お り [89]、 乳 酸 2%添 加 に は 消 化 管 で の ETEC の 増 殖 を 抑 制 したために糞便性状が悪化しなかったとものと考えられる。 80 一 方 、 糞 便 中 に 排 泄 さ れ る ETEC 数 は 乳 酸 2%添 加 と 乳 酸 1%添 加 で 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ れ は 剖 検 時 に 直 腸 で 乳 酸 2%添 加 と 1%添 加 で ほ ぼ 同 程度の菌数を示していたことと一致する。 乳 酸 の 殺 菌 作 用 は 周 囲 の pH が 4.0 で は 発 揮 さ れ る が 、 4.4 で は 発 揮 さ れ な い と 報 告 さ れ て お り [60]、 本 研 究 に お け る 剖 検 時 の pH か ら 、 胃 で は 殺 菌 作 用 が 期 待 で き る が 、 十 二 指 腸 よ り 下 部 の 消 化 管 で は pH6.0 以 上 で あ る た め 、 乳 酸 の 殺 菌 作 用 は 胃 で 発 揮 さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 Li ら も 胃 、 十 二 指 腸 、 回 腸 の pH を そ れ ぞ れ 3.27、 5.75、 6.94 と 報 告 し て い る [100]。 今 回 の 研 究 で は 、 胃 お よ び 腸 管 の pH に 乳 酸 の 影 響 は 認 め ら れ な か っ た 。 2%乳 酸 添 加 飼 料 が ETEC に よ る 糞 便 性 状 の 悪 化 を 軽 減 で き た こ と の 理 由 の 一 つ と し て 、乳 酸 の 添 加 濃 度 が 高 い 2%の 方 が 胃 で 殺 菌 さ れ る ETEC が 多 か っ た ためと考えられる。 一 方 、 第 三 章 で 実 施 し た Salmonella Typhimurium 感 染 系 を 用 い た 乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 で は 、 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 が 糞 便 中 の S . Typhimurium 数 を 著 し く 低 下 さ せ る こ と が わ か っ た が 、 本 章 で も 2%乳 酸 添 加 飼 料 区 で は 盲 腸 以 下 の 大 腸 で は ETEC 数 は 減 少 さ せ た が 、S. Typhimuirum で 観 察 さ れ た 程 の 著 し い ETEC 数 の 低 下 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ の 異 な る 結 果 は 、 病 原 体 や 供 試 豚 の 影 響 と 考 え ら れ る が 、詳 細 に つ い て は 今 後 の 更 な る 検 討 が 必 要 で ある。 【小括】 第 四 章 で 確 立 さ れ た 、豚 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い て 乳 酸 添 加 飼 料 の 評 価 を 実 施 し た 。そ の 結 果 、2%添 加 飼 料 を 給 与 し た 群 で は 、糞 便 中 へ 排 泄 さ れ る ETEC 数 は 低 下 し な か っ た が 糞 便 性 状 の 悪 化 が 抑 制 さ れ 、接 種 後 7 日 目 に 実 施 し た 剖 検 で は 2%乳 酸 添 加 飼 料 し た 区 の 小 腸 上 部 で の ETEC 数 が 低 下 し て い た 。 こ れ ら の こ と か ら 乳 酸 を 2%添 加 す る こ と で 豚 大 腸 菌 症 の 発 現 を 抑 制 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。ま た 、本 研 究 で 確 立 し た 豚 大 腸 菌 感 染 系 が 、抗 菌 剤 代 替 物 の評価に応用できることが示唆された。 81 第六章 総括 82 本研究では抗菌剤に依存しないサルモネラおよび大腸菌感染症対策の確 立 に 不 可 欠 な S . Typhimurium( ST) お よ び 毒 素 原 性 大 腸 菌 ( ETEC) 感 染 系を豚において確立し、その有用性を乳酸添加飼料で検証した。その結果、 乳 酸 添 加 飼 料 が 豚 ST 感 染 系 お よ び 豚 ETEC 感 染 系 に お い て そ の 抑 制 効 果 が 示 さ れ た 。こ の こ と か ら 、本 研 究 で 確 立 し た 感 染 系 の 有 用 性 が 検 証 で き 、ま た、乳酸添加飼料が抗菌剤代替物質として活用できることが示唆された。 具 体 的 に は 第 二 章 で は 、 豚 を 用 い た ST 感 染 系 の 確 立 を 試 み 、 供 試 し た ST116Rif r 株 を 10 9 CFU/頭 程 度 経 口 感 染 さ せ る と 下 痢 や 著 し い 脱 水 症 状 を 示 し 、10 7 CFU/頭 程 度 経 口 感 染 さ せ る と 下 痢 や 軟 便 を 、ま た 10 5 CFU/頭 程 度 感 染 さ せ る と 軟 便 程 度 の 糞 便 性 状 の 悪 化 を 示 す こ と が 示 唆 さ れ た 。一 方 、感 染 菌 数 が 10 4 CFU/頭 で も 糞 便 中 か ら は 安 定 し て ST116Rif r が 検 出 さ れ た 。本 試 験 で は 糞 便 性 状 に よ り 糞 便 に 含 ま れ る ST116Rif r 数 が 異 な る こ と も 示 唆 さ れ 、今 後 の 抗 菌 剤 代 替 物 質 の 評 価 試 験 で は 臨 床 症 状 の 観 察 と 糞 便 中 の 菌 数 を 測 定 す る こ と で 、臨 床 症 状 を 抑 え る 効 果 と 、豚 群 内 で の 感 染 拡 大 を 防 止 で きるかを考察できる結果を得られると考えられた。 第 三 章 で は 、 第 二 章 で 確 立 し た 豚 ST 感 染 系 を 用 い て 乳 酸 2.8%添 加 飼 料 の 評 価 を 行 っ た 。そ の 結 果 、臨 床 症 状 を 伴 う サ ル モ ネ ラ 症 を 再 現 し た 実 験 感 染 系 で は 2.8%乳 酸 添 加 飼 料 が 糞 便 性 状 の 悪 化 を 抑 制 し 、 糞 便 中 へ の サ ル モ ネ ラ 排 菌 数 も 減 少 さ せ る こ と が 明 ら か と な っ た 。ま た 、不 顕 性 の サ ル モ ネ ラ 感染を再現した実験感染系でも糞便中へのサルモネラ排菌数を減少させる こ と が 明 ら か と な っ た 。こ れ ら の 結 果 か ら 、豚 ST 感 染 系 が 確 立 さ れ 、抗 菌 剤代替物質の評価に応用できることが示唆された。 第 四 章 で は 、 安 定 し た ETEC 感 染 系 を 確 立 す る た め に 、 CDCD 豚 を 用 い て 豚 大 腸 菌 感 染 系 の 確 立 を 試 み 、EC389Rif r を 1 頭 あ た り 10 4 CFU 経 口 接 種 す る こ と で 、全 頭 で 下 痢 が 発 現 し 、糞 便 中 か ら も 安 定 し た 排 菌 が 認 め ら れ た 。 し か し 、 ETEC 非 接 種 の 対 照 群 で も 糞 便 性 状 の 悪 化 が 認 め ら れ た こ と 、 14 日 間 の 観 察 期 間 で は ETEC 接 種 の 陽 性 対 照 区 で も 糞 便 性 状 が 回 復 傾 向 に あ る こ と か ら 、観 察 期 間 を 試 験 用 代 用 乳 の 給 与 期 間 で あ る 7 日 間 程 度 に 設 定 す ることが望ましいと考えられた。 第 五 章 で は 、第 四 章 で 確 立 さ れ た 、豚 大 腸 菌 感 染 系 を 用 い て 乳 酸 添 加 飼 料 83 の 評 価 を 実 施 し た 。 そ の 結 果 、 2.0%乳 酸 添 加 飼 料 を 給 与 し た 区 で は 、 糞 便 中 へ 排 泄 さ れ る ETEC 数 は 低 下 し な か っ た が 糞 便 性 状 の 悪 化 が 抑 制 さ れ 、 接 種 後 7 日 目 に 実 施 し た 剖 検 で は 2%乳 酸 添 加 飼 料 し た 区 の 小 腸 上 部 で の ETEC 数 が 低 下 し て い た 。 こ れ ら の こ と か ら 乳 酸 を 2%添 加 す る こ と で 豚 大 腸 菌 症 の 発 現 を 抑 制 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。ま た 、本 研 究 で 確 立 し た 豚 大 腸 菌感染系が、抗菌剤代替物の評価に応用できることが示唆された。 2013 年 10 月 か ら 我 が 国 で も 大 流 行 し 、ア ジ ア 各 国 お よ び 米 国 で も 同 様 に 猛 威 を 振 る っ て い る て い る 豚 流 行 性 下 痢 は 、原 因 病 原 体 が ウ イ ル ス と 本 研 究 と は 異 な る も の の 、的 確 な 生 物 学 的 製 剤 が な く 、ワ ク チ ン 製 造 も 追 い つ か な い 状 況 下 で 、 そ の 発 生 件 数 も 急 激 に 増 加 し 蔓 延 し 続 け て い る [101]。 こ の 様 な流行性疾病の予防には、日頃からの家畜の健全育成が重要なカギとなる。 本 研 究 に よ っ て 得 ら れ た 知 見 は 、薬 剤 に 依 存 し な い 健 全 畜 産 の 技 術 向 上 に つ な が り 、安 全・安 心 な 畜 産 食 品 の 持 続 的 供 給 か ら ヒ ト の 健 康 生 活 の 向 上 に 貢 献するものと期待される。 84 論文目録 主論文 Tsuyoshi Tanaka*, Yasuo Imai, Naosuke Kumagae, Takashi Sasaki, Narutoshi Ochiai, Katsuyoshi Uruno, Haruki Kitazawa, Tadao Saito and Shizuo Sato (2014) Quantitative Microbiological Evaluation of Salmonella Typhimurium shed in Diarrhea, Loose, and Normal Stools of Infected Pigs. Open Journal of Veterinary Medicine 4(4), 58-66 (査 読 有 ) Tsuyoshi Tanaka*, Yasuo Imai, Naosuke Kumagae, Takashi Sasaki, Narutoshi Ochiai, Haruki Kitazawa and Shizuo Sato Establishment of ETEC experimental infection model of CDCD pigs and evaluate the effect of lactic acid supplemented feed. Open Journal of Animal Science (投 稿 予 定 ) その他の公表論文 田 中 剛 志 *, 北澤春樹 (2013) 冬場の呼吸器病に打ち勝つ 月 号 :17-20 (査 読 無 ) 85 養豚の友 11 参考文献 1 . Aarestrup, Frank Møller. (1999). Association between the consumption of antimicrobial agents in animal husbandry and the occurrence of resistant bacteria among food animals. International journal of antimicrobial agents 12.4. 279-285. 2.Bywater, R. J. (2004). Veterinary use of antimicrobials and emergence of resistance in zoonotic and sentinel bacteria in the EU. Journal of Veterinary medicine, Series B, 51(8‐ 9), 361-363. 3.Hsueh, P. R., Teng, L. J., Tseng, S. P., Chang, C. F., Wan, J. H., Yan, J. J.,Lee, C. M., Chuang, Y. C., Huang, W. K., Yang, D., Shyr, J. M., Yu, K. 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