Kobe University Repository : Kernel Title レビー小体型認知症の灰白質ならびに白質萎縮部位の検 討 Author(s) 高橋, 竜一 / 石井, 一成 / 柿木, 達也 / 横山, 和正 Citation 神戸大学医学部神緑会学術誌, 27: 65-67 Issue date 2011-08 Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 Resource Version publisher URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81006772 Create Date: 2015-01-31 神緑会学術誌 第 27 巻 2011 年 助成研究報告 レビー小体型認知症の灰白質ならびに白質萎縮部位の検討 県立リハビリテーション西播磨病院神経内科 高 橋 竜 一(平成15年卒) 近畿大学付属病院放射線科 石 井 一 成(昭和61年卒) 県立リハビリテーション西播磨病院高次脳機能科 柿 木 達 也(山口大学,昭和58年卒) 県立リハビリテーション西播磨病院神経内科 横 山 和 正(昭和50年卒) 緒言 い 3D spoiled gradient-echo(SPGR)(14/3/2, 20 ° flip レビー小体型認知症(DLB)は老年期認知症にお angle, 220-mm field of view, 256×256 matrix, 124× いてアルツハイマー型認知症(AD)に次ぐ頻度を占 1.5-mm contiguous sections)により全脳撮影した. める認知症である.DLB の主要症候は幻視,変動す る認知機能低下,パーキンソン症候群である1).DLB データ分析 は 臨 床 的 に も 病 理 的 に も AD と は 異 な る が, 確 定 統 計 分 析 は MATLAB(MathWorks Inc., Natick, 診 断 は 死 後 剖 検 脳でのみなされる.近年生体内で MA, USA) 上 で 作 動 す る Statistical parametric PET,SPECT で,後頭葉の代謝低下,血流低下が示 mapping version 8 software for Windows(SPM され AD との鑑別診断の一助となっている 2)3) .一 方形態学的には内側側頭葉の萎縮を示し AD と間違 4) われやすい .本研究は voxel-based morpohometry 5) 8, Wellcome Department of Cognitive Neurology, London, United Kingdom)を用いて行った.今回の MRI データを用いた脳テンプレートを用い,MRI 画 (VBM) を用い voxel ごとの灰白質,白質容積を検 像を灰白質,白質に分けた後同一標準脳に解剖学的 討することにより,DLB と AD との形態学的な鑑別 標準化を行った.このアルゴリズムには今回 SPM 8 を目的とした.また,本研究では従来の VBM と,新 に新たに組み込まれ解剖学的標準化の精度が飛躍 たに近年開発された DARTEL 法 6) を用いた VBM に 的 に 向 上 し た と さ れ る Diffeomorphic Anatomical Registration Through Exponentiated Lie Algebra よる解析での結果の違いについても検討した. (DARTEL) を 用 い た. 患 者 間 の 群 間 比 較 に は one- 方法 way ANOVA を用い p < 0.001を用いた. 本研究では2002年から2006年に受診し臨床診断さ れ,最低₃年追跡された,probable DLB 患者43名, 結果 probable AD 患者51名について検討した.患者群間 正常群との比較では AD,DLB はともに内側側頭葉 では年齢,MMSE(Mini-Mental State Examination) の萎縮を認めた.DLB では AD と比較し萎縮部位は の点数をマッチさせた.正常群として年齢を合わせ 限局していた.従来の VBM による解析では脳室周囲 た正常群40名を用いた.DLB 診断は Consortium on を中心に散在性に萎縮部位を認めたが,DARTEL 法 7) DLB International Workshop(CDLBIW) で提唱さ による解析では脳室周囲の萎縮は減少し,より強い内 れた臨床基準に基づき,AD 診断は National Institute 側側頭葉の萎縮を認めた(Figure. 1). of Neurological and Communicative Disorders and AD と DLB の群間比較では,従来の VBM による Stroke/Alzheimer’s Disease and Related Disorders 解析では側脳室周囲,深部灰白質に DLB でより強い Association(NINCDS/ADRDA)による基準を用い 萎縮が認めたが,DARTEL 法による解析ではこの部 た.正常人では MMSE > 28を満たし,MRI 上年齢相 位が消失した. 応の変化のほかは認めないものとした. AD では DLB と比較し内側側頭葉に強い灰白質萎 縮を認めた.DARTEL 法では内側側頭葉により限局 MRI 手順 し,また強い萎縮を認めた(Figure. 2). 1.5 テスラ Signa Horizon MR imaging system を用 - 65 - 群 間 比 較 で は 従 来 の VBN,DARTEL 法 と も に DLB 群 で AD よ り 強 い 萎 縮 は 認 め ず.両懐石で深部白質,内側側頭葉で AD 群 のほうが強い白質萎縮を認めた.DARTEL 法での解析ではその差が明瞭に描出された (Figure. 4). 考察 本研究では,同程度の認知機能低下を示 す AD,DLB ではともに内側側頭葉の灰白質 萎縮を認め,その領域は DLB で有意に小さ かった.また従来の VBM では疾患群で脳室 周囲の萎縮が灰白質,白質についても認めた が DARTEL 法では脳室周囲の萎縮は消失し た.さらに DLB では正常群と比較し白質萎 縮を認めなかった. DARTEL 法は従来の VBM 手法に比べ空間 Figure. 1 的標準化精度に優れており,アルツハイマー 病の画像統計解析による診断能を向上させる 技術として期待されている.また,DARTEL 法の空間的標準化は従来の手法よりも精密に 行われるため,今まで評価対象としてきた灰 白質だけではなく,白質をも評価対象とする ことができる. 本研究により,DLB と AD の白質萎縮に明 瞭な差が描出され,Whitwell らによると,従 来の VBM を用いた AD と,DLB との比較で は灰白質萎縮は本研究と同様に AD で有意に 強かった8).また,VBM の結果を用いた関心 領域の解析で,中脳萎縮は DLB で AD と比 較して強いと報告している.今回中脳萎縮に ついては本研究では示されなかった.しかし ながら本研究で示されたように従来の VBM では脳室周囲など脳脊髄液の周囲では灰白質 の標準化が正確になされない可能性があるこ Figure. 2 と,中脳では白質,灰白質の信号強度の区別 白質萎縮に関して,従来の VBM 法による解析では が難しいことを考慮すると DLB で中脳萎縮が AD よ AD,DLB で内側側頭葉の萎縮をみとめた.AD につ り強いとは言いがたい. いては深部白質,側脳室周囲の萎縮を認めた.萎縮領 また,本研究では MMSE20前後の DLB において正 域は AD でより大きかった. 常人と比較し白質萎縮を呈さないことが明らかとなっ DARTEL 法による解析では,側脳室周囲の白質萎 た.AD では白質病変は内側側頭葉,深部白質につい 縮は,両群で消失した.DLB では正常群と比較し萎 て強い萎縮が認められており.白質萎縮がないことが 縮部位は消失し,AD では内側側頭葉,深部白質の萎 DLB 診断の補助となる可能性がある. 縮を認めた(Figure. 3). 本研究では臨床診断のみに基づいて解析を行い,剖 検脳での病理診断は行っていない.しかしながら,本 - 66 - 神緑会学術誌 第 27 巻 2011 年 1999;53:413-416 ₄ )Hashimoto M, Kitagaki H, Imamura T, et al. Medial temporal and whole-brain atrophy in dementia with Lewy bodies: a volumetric MRI study. Neurology 1998;51:357-362 ₅ )Ashburner J, Friston KJ. Voxel-based morphometry--the methods. Neuroimage 2000;11:805-821 d isease with and without dementia: a comparison with Alzheimer's disease, dementia with Lewy bodies and controls. Brain 2004;127:791-800 ₆ ) Ashburner J. A fast diffeomorphic image registration algorithm. Neuroimage 2007;38:95-113 ₇ )McKeith IG, Galasko D, Kosaka K, et Figure. 3 al. Consensus guidelines for the clinical and pathologic diagnosis of dementia with Lewy bodies(DLB): report of the consortium on DLB international workshop. Neurology 1996;47:1113-1124 ₈ ) Whitwell JL, Weigand SD, Shiung MM, et al. Focal atrophy in dementia with Lewy bodies on MRI: a distinct pattern from Alzheimer's disease. Brain 2007;130:708-719 Figure. 4 研究は多数による検討でありまた最低3年のフォロー 行っていることから誤診断の結界及ぼす影響は非常に 少ないと考えられる.将来的に剖検脳による検討が期 待される. 参考文献 1 ) McKeith IG, Dickson DW, Lowe J, et al. Diagnosis and management of dementia with Lewy bodies: third report of the DLB Consortium. Neurology 2005;65:1863-1872 ₂ )Ishii K, Imamura T, Sasaki M, et al. Regional cerebral glucose metabolism in dementia with Lewy bodies and Alzheimer's disease. Neurology 1998;51:125-130 ₃ ) Ishii K, Yamaji S, Kitagaki H, et al. Regional c e r e b r a l b l o o d f l o w d i f f e r e n c e b e t w e e n dementia with Lewy bodies and AD. Neurology - 67 -
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