JEOL アプリケーションノート ER-090004 Application Note ラジカル重合で生じるポリマー中間体 時間分解 ESR による測定 通常の ESR 法の時間分解能は磁場変調の制約を受けます。光照射により励起されて生じる初期過 程の短寿命のラジカルを測定するためにはより高い時間分解能が必要となります。そのような測定を 可能にするシステムとして、ES-CIDEP3 時間分解 ESR(Time Resolved ESR;TR-ESR)が用いら れています。光化学反応で生じる熱平衡からはずれたスピンの異常分極(Chemically Induced Dynamic Electron Polarization:CIDEP)を受けたラジカルを、磁場変調をかけず直接観測するこ とにより約 200ns の時間分解能が得られます。 広帯域プリアンプ 装置の構成を図1に示します。パルスレーザーによ マイクロ波ユニット り共振器(図 1 の C)内の試料を励起し、生じた光反 デジタルオシロスコープで積算します。データは時間 デジタル オシロスコープ 磁石 応中間体の ESR 信号を広帯域プリアンプで増幅し、 分光計 軸スペクトルとしてコンピュータに蓄積されます。 フォトダイオードとレーザーは YAG レーザー お客様にご用意いただきます 時間分解能のデータを得ることができます。 図1 O O P O ・ DPO . TMDPO 図2 時間分解 ESR の装置構成 O ・ + ・. P. hv フォトダイオード ホスト コンピュータ レーザーパルスと同期して信号検出することで、高い C レーザー照射 ・ TMB . TMDPO のレーザー開裂反応 0 0.5 1 1.5 2.5 5 (μs) 図 3 レーザー照射により生じた DPO の時間軸スペクトル ・ 2,4,6-Trimethylbenzoyl Diphenylphospineoxide(TMDPO)のベンゼン溶液に YAG レーザーの3倍 波(355nm)を照射して生じた DPO・(図 2)の時間軸スペクトルを図 3 に示します。レーザー照射 により中間体ラジカルが極めて短時間に生成し、分極の解消に伴い減衰するのが捉えられました。こ うした測定を広い磁場範囲で行い、得られた時間軸スペクトルを磁場軸で展開すると図 4 のようなス ペクトルが得られました。磁場変調を加えないため、スペクトルは吸収波形となります。DPO・のリ aP=38.26mT (DPO・) ン由来の 2 本に分裂した信号と TMB・ の信号が検出されました。 ・ TMB こうした反応性に富んだ系にモノマー を添加すると、初期の重合過程で生じる 生長ラジカルが観測できます。TR-ESR はこのような反応中間体の研究で有用な データを提供すると期待されます。 参考文献:Kamachi M., et.al, J.Chem.Soc. Perkin Trans.Ⅱ 1988,961-965 http://www.jeol.co.jp 303.28 (mT) 352.28 図 4 TMDPO にレーザー照射して生じたラジカルの TR-ESR スペクトル 日本電子 Copyright © 2010 JEOL Ltd.
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