「10 月買い・4 月売り」アノマリー

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株式会社ジャパンエコノミックパルス
Japan Economic Pulse Co., Ltd.
「10 月買い・4 月売り」アノマリー
日本株 4 月相場、ヘッジ F 米国株ショート戦略
新年度入り日本株「4 月相場」は公的・準公的資
金による好需給が下支えるも米国株の本格調整と円
高再燃リスクを孕み、2 月第 2 週-3 月第 3 週の 2 兆
円超のヘッジファンド主体の日経平均・TOPIX 先物
買いの利益確定売り、3 月第 3 週迄の 6 週連続の海
外投資家の計 1 兆円強の日本株買い越しの益出しや
金融機関の年度初期の含み益確定売り、4 週連続で
増加した個人投資家の信用買い調整売り等重石に 1
万 8000-1 万 9500 円で「10 月買い・4 月売り」アノ
マリーの様相を呈しそうだ。
日本のバブル時代に匹敵するバフェット指標
ある米系証券幹部は、
「米企業 1-3 月期決算の減益
転落、設備投資の急減、自社株買い減少の需給悪化
を背景に変幻自在のヘッジファンドが『米国株ショ
ート戦略』に大挙すべく虎視眈々と機会を伺ってい
る」と打ち明ける。
日米ゲームチェンジ株価デ・カップリングの様相
を呈す日本株だが、実際、ヘッジファンドが米国株
ショート戦略に大挙、15-20%に及ぶ本格調整が現実
のものとなれば、日本株「4 月相場」への影響は避
けられない。
何よりすでに米国株は株式時価総額を名目 GDP で
割った「バフェット指標」が 1.4 に上昇、これはバ
ブル時代 1989 年の日本株大天井の 1.44 に匹敵する。
しかも、
米ダウ平均は 2011 年 10 月以降、
一度も 10%
以上の調整局面を経験していない。これは極めて異
例であり、しかも 2009 年 3 月 6 日からの「強気相場」
は 7 年目に入っている。
だが、上げ相場 7 年目にして QE(量的緩和)出口
の利上げ協奏曲が鳴り響き、特にここに来て、1)
「強
すぎるドル」による米企業 1-3 月期の減益転落、2)
原油安に伴うシェール関連等の設備投資の大幅減少、
3)自社株買い減少に伴う需給悪化、4)オバマ・レ
イムダック(死に体)と政治不安-等本格調整リス
クを孕みつつある。
「(最近の)ドル高は米国の輸出を阻害する可能性
がある」-。イエレン議長は 27 日カリフォルニア州
で講演、開口一番「強すぎるドル」に警鐘を鳴らし
た。
時代は、まさに尻尾(相場)が犬(ファンダメン
タルズ)を振り回す「リスクオン経済」の衝撃に覆
われている。実際、
「増益が続いた米企業収益が『強
すぎるドル』によって 1-3 月期に減益転落リスクが
高まりつつある」
(同証券幹部)。
海外収益に依存するグローバル企業が米 S&P500
採用企業のうち 6 割を占める現状、
「強すぎるドル」
[email protected]
2015/4/3
が国際競争力の減退とドル建て手取り額減少に拍車
をかける。トムソン・ロイターによれば、米主要 500
社の 1-3 月期の収益予想は 101 社で利益悪化が予想
される。
米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ 紙)3
月 30 日(電子版)は、
「売上高の 50%超を海外で稼
ぐ企業の年初から 26 日までの株価騰落率は平均
-1.8%の下落。対照的に、売上高の 50%超を米国内
で稼ぐ企業の株価は平均+1.5%の上昇だった」と調
査会社ファクトセットの分析を紹介した。
一方、米国企業は未曽有の QE(量的緩和)を背景
に超低金利で社債を発行、調達した資金を事業に回
さず自社株買いに充当してきた。2 月にはこうした
米企業の自社株買いが円換算 12 兆円と年間 100 兆円
超の膨大な規模に達した。利上げによる超低金利時
代に幕が降ろされれば、旺盛な社債発行に幕が降ろ
され、自社株買い減少に株式需給の悪化は避けられ
ない。
さらに、27 日発表された米 10-12 月期 GDP(確定
値)は前期比+2.2%と事前予想の+2.4%を下回った。
住宅投資や GDP の 7 割を占める個人消費こそ上方修
正されたが、企業の設備投資が下方修正された。
実際、
「米設備投資の 3 分の 1 を占めるシェールオ
イル・ガス関連設備投資が、原油安に伴う設備稼働
率低下に今後 20-40%の大幅減少を強いられる可能
性」
(同証券幹部)がある。
米エネルギー省統計によれば、3 月 13 日現在の米
原油在庫は 4.5 億バレルと史上最高、原油生産量は
日量 942 万バレルと過去最高にあり、関連設備の過
剰解消が急がれる。案の定、設備投資の先行指標で
ある米 2 月耐久財受注(3 月 25 日発表)は前月比
-1.4%と予想外の減少となった。今回、NY ダウ平均
は 3 月 23 日高値 1 万 8206 ドルから調整局面入りも
3 月 26 日安値は 61.8%押し(1 万 7515 ドル)の 1
万 7579 ドル水準で下げ止まった。だが、
「今後、1
万 7515 ドルの 61.8%押し水準を割り込めば一段と
調整色を強め、とても 10%程度の調整では済みそう
にない」
(同証券幹部)。
残る 2 兆円超のヘッジファンドの先物買い
一方、ある財務省高官は、
「貿易赤字など国際収支
の構造変化により 1 ドル=116-117 円水準では膨大
な規模のドル買い・円売り需要が待ち構えている」
(財務省高官)と打ち明ける。
だが、米国株が 2 割の本格調整となれば、そこか
ら派生するリスク回避の円買いに、「少なくとも
115-116 円水準への円高再燃は避けられない」
(米系
証券幹部)
。
むろん 115 円水準への円高は、二ケタ増益を織り
込む市場に企業業績の先行き下方修正を迫りつつ、
否応なく輸出関連株中心に日経平均に下押し圧力を
加える。
確かに、日本株「4 月相場」は、公的・準公的資
金による好需給、前年を上回る賃上げによる消費拡
大、原油安による 8 兆円「交易利得」に企業業績拡
大、設備投資の広がり等マクロ景気の好循環を背景
に下値は限られよう。
だが、問題は 1 ドル=115 円水準で円高が止まる
かどうかだ。ドル/円週足「一目均衡表」基準線の
113 円台後半へと円高が進めば、企業業績の前提が
狂い、二ケタ増益期待が萎み株価 1 万 8000 円割れが
懸念される。
2 月 18 日、ゆうちょ銀行のリスク資産拡大報道を
契機とした海外投資家の先回り買いに 1 万 8200 円へ
と上放れた局面でドル/円は 118.60 円台で推移して
いた。円相場が 115.76 円水準へと下押した年明け 1
月 16 日の日経平均は、安値 1 万 6592 円と 1 万 7000
円を割り込んでいる。
つまり、米国株の本格調整となればリスクオフの
円高再燃に、少なくとも日経平均は 2 月 18 日安値 1
万 8092 円で空いた「窓」を埋めるべく 2 月 16 日高
値 1 万 8074 円水準へと下押し圧力が強まる可能性が
高い。しかも、米 FRB は 3 月 FOMC 声明文から「can be
patient(忍耐強くあれ)
」を削除するも景気・物価
見通しを下方修正し、米利上げは今秋 10 月に後ズレ
の様相を呈す。一方、日本株「4 月相場」で好材料
視されていた 4 月末の日米首脳会談までの TPP(還
太平洋連携協定)
「基本合意」シナリオが延期され、
支援材料を欠きそうだ。TPP「合意」はオバマ米大統
領のレイムダック化による米内政問題に依るところ
が大きく、安倍政権の経済優先路線からの逸脱では
い。
だが、アベノミクス「三の矢」成長戦略として農
業や医療など岩盤規制改革を後押し、貿易・投資自
由化に伴い法人実効税率 5%引き下げに匹敵する
GDP 押し上げ効果を有するだけに、TPP「合意」延期
は日本株にとって手痛い好材料喪失といえよう。
さらに、2 月第 2 週-3 月第 3 週の 2 兆円超のヘッ
ジファンド主体の日経平均・TOPIX 先物買いの利益
確定売り、3 月第 3 週まで 6 週連続の海外投資家の
計 1 兆円強の日本株買い越しの益出しが観測される。
また、金融機関の年度初期の含み益確定売り、4 週
連続で増加した個人投資家の信用買い調整売り等が
米国株の調整と円高再燃に誘発される可能性がある。
特に、東京証券取引所が 3 月 31 日発表した 27 日
申し込み時点の信用取引の買い残高が 3 兆 380 億円
と 20 日申し込み比で 653 億円増えている。4 週連続
の増加であり、個人投資家が下げ局面で逆張り投資
に動いた実状が浮かび上がる。
この週(3 月 23-27 日)の日経平均は週後半に株
価指数先物に売りが出て 23 日 1 万 9778 円の高値か
ら 274 円下落した局面で投資余力のある個人投資家
が押し目買いを入れた。だが、公的年金を代替する
信託銀行が売り越し、ヘッジファンドの先物買いの
巻き戻し売り越しに傾斜する中での唯一、個人投資
家の買い越し(信用取引)は危うい市場の一端を物
語る。
さらに、国内金融機関は 4 月期初に運用成績を睨
み利益が乗った資産売却で利益を確保したい誘因か
ら売りを出しやすい。すでに日経平均はアベノミク
ス強靭化により 1 年前比で約 3 割上昇し、
「国内金融
機関の含み益が 18 兆円に膨らんでいる」
(4 月 1 日
付け日経新聞)
。
いずれにせよ、日経平均は約 15 年ぶりの高値圏に
あり、これまで一本調子の上げ相場を牽引したヘッ
ジファンドが米国株ショート戦略に傾斜、リスクオ
フの円高再燃となれば日本株「4 月相場」は「10 月
買い・4 月売り」のアノマリーの様相を呈しそうだ。
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