2014/10/23 びわ湖発 新技術説明会 廃液からの貴金属回収を目的とした リユース可能な新規吸着材 滋賀県工業技術総合センター 機能材料担当 中島 啓嗣 目次 ■概要 ■Au吸着 ・吸着メカニズム ・競合品との性能比較 ・実用化に向けて -スケールアップ検討- ■その他金属吸着 ・吸着メカニズム ・他分野への応用 ■まとめ 2 背景 有価物質・希少物質 ■レアメタルおよびレアアースは、現代の先端技術には欠かせない資源 ・地球上の埋蔵量に限界があるため、各国において国家備蓄等の対策 ■日本は埋蔵資源に乏しい ■廃棄された電子機器・家電等には数多くの有価金属が含まれている → 「都市鉱山」として有効利用 → 回収技術の開発が盛んに行われている 環境 http://www.jnews.com ■工場等の廃水処理では、凝集剤、キレート樹脂等を用いた処理 ・発生したスラッジ・使用済み吸着材は再び廃棄物 (焼却・埋め立て) ・処理システム全体で考えると環境負荷は大きい → 廃棄物の排出を抑えた処理システムの構築 3 目的 廃水・廃液中の有用物質・希少物質を選択的に吸着し、 条件の変化によってそれらを再び脱着することができる高分子材料の開発 ・有用物質・希少物質の再資源化 ・リユース可能な吸着材 吸・脱着サイクル (滋賀県地域結集型共同研究事業) テーマ:環境調和型産業システム構築のための基盤技術の開発 サブテーマ:2 有害物質補集高分子の開発 4 対象液・吸着材コンセプト Auメッキ槽洗浄液 100ppm以下(実測20~80ppm) 他の廃液と混合され凝集沈殿で廃棄 メッキ液成分:Na3Au(SO3)2、Na2SO3、キレート剤等 Na3Au(SO3)2 nNa+ + Au(SO3)2(3-n)- ■可逆的に吸脱着可能な吸着サイト ・pHによる吸脱着が可能な官能基 ■被処理液との効率的に接触 ・親水性が高い ( 吸着後に被処理液からの分離が可能) -NH + 3 - H+ + H+ -NH 2 ■低コスト ・市販材料 ・簡単に作製 5 原料(ポリマー)の選択 Poly allylamine(PAAm ) ○ 官能基が多い (1unitあたり1アミノ基) × 分子状態で水に分散 ← 親水性が高く、回収難 日東紡績(株) Poly vinylalcohol (PVA) ・親水性が高い ・容易にゲル形成が可能 ・安全性が高い (株)クラレ 日本合成化学(株) CH 2 CH n CH2 NH2 Poly allylamine CH 2 C H n OH Poly vinylalcohol 6 試料調製 1.PVA / PAAmブレンド溶液作製 DMSO/水混合溶媒(=6/4)にPVAを加え、90℃で2~3時間攪拌 20wt%PAAm水溶液添加、約30分間攪拌 2.成形 凍結融解法 Et-OH 湿式紡糸法 N2 7 吸・脱着操作 吸着 被処理液 (金属イオン水溶液) 脱着 アルカリ溶液 Au(SO3)2(3-n)吸着後、脱着後の溶液中の金属を定量 + -NH 3 - H+ + H+ -NH 2 8 Auの吸・脱着 吸着 120 CAu0=100ppm 25mL Sample Weight:200mg 100 cAu / ppm 脱着 NEAT HCl処理 80 アンモニア水溶液. 60 40 濃縮 20 0 0 5 10 φ PAAm 15 / wt% 20 ・PAAm率増加により吸着量増 ・酸処理により 〃 9 アミノ基の種類による吸着性能評価(Au、Pt) 1級アミン 3級アミン 2級アミン 4級アミン 100 金属溶液:原子吸光分析用 金属濃度:100ppm 吸着量 / mg g-1 80 Au Pt 70 60 50 50 吸着量 / mg g-1 90 Pt吸着 Pt脱着 40 30 20 10 0 1 40 2 3 4 アミノ基級数 30 20 10 0 1 2 3 アミノ基級数 4 アミノ基級数により、 Au・Ptの吸着(脱着)性能に差 ↓ 100%ではないが、選択性あり 10 競合品との性能比較 強アニオン交換樹脂(オルガノ社製) → 吸着性能は高いが、放出しない 弱アニオン交換樹脂(オルガノ社製) アンバーライト タイプ : 特徴 : IRA67 アクリル系ゲル形 弱塩基性陰イオン交換樹脂 大きな交換容量 物理強度および化学的安定性に優れる アンバーライト タイプ : 特徴 : IRA96SB スチレン系MR形 弱塩基性陰イオン交換樹脂 物理的および化学的安定性にきわめて優れる 再生効率、耐熱性に優れる 11 競合品との性能比較 吸着 120 120 cAu0 = 100ppm 25ml Sample weight:200mg 100 100 HCl処理 IRA67 IRA96SB 80 前処理なし 放出液:0.1N NaOH aq. 60 40 20 60 40 ほとんど 脱着しない 20 0 0 5 φ 10 PAAm / wt% 15 吸着性能 IRA67 ≒ IRA96SB ( ≒ PVA/PAAm) adsorption release 80 cAu / ppm cAu / ppm 脱着 20 0 c0 IRA67 IRA96SB 脱着性能 ○ IRA67 : 吸着量 = 脱着量 × IRA96SB : 脱着しない PVA / PAAmブレンドとIRA67の脱着性比較 12 競合品との性能比較 脱着速度(カラム試験) ①放出速度が速い 0.3 ・濃縮性に優れる(約5~6倍) ②残留金属量が少ない ・再生、長寿命性に優れる 0.2 ex.) 性能が90%まで低下するには PVA / PAAm ・・・105回 IRA67 ・・・ 35回 PVA/PAAm 0.1 IRA67 0 0 100 200 300 送液量 / ml 400 500 脱着量 / 全吸着量 脱着量 / 全吸着量 cAu=100ppm φ PAAm=9.1wt% 0.02 0.01 0 0 脱着液の液性 PVA / PAAm IRA67 pH ≧12 pH ≧13 100 200 300 400 500 送液量 / ml マイルドな条件で脱着可 13 実用化に向けて -水系コーティング試料- スケールアップ(Kgオーダーの試料が必要) ・コーティング試料を検討 ・ブレンド水溶液によるコーティング 問題:PVA、PAAmはともに水に易溶 → 耐久性に不安 ◆水系コーティング試料の不溶化処理 ・化学処理(ホルマール化)→吸着量低下 ・熱処理・・・150℃ 2hr ◆耐久性評価(繰り返し試験) ◆スケールアップ 14 実用化に向けて 水系コーティング試料 目的:再生性・寿命を確認 0.01N HCl 30 Au吸・脱着量 / mg・g-1 0.1N NaOH -耐久性評価- cAu0 = 100ppm 100ml Sample weight:100mg 吸着 脱着 25 試料が赤変(Auの還元) 20 15 10 5 0 0 5 10 15 20 25 30 サイクル数 15 実用化に向けて 1. 2. 繰り返し回数を増やしても、ある一定の吸・脱着は起こっている → 可逆的な吸着サイトの絶対量は大きく変化していない 1~10回では、試料の色が徐々に赤変、濃厚に → 金属Au微粒子が析出している(表面プラズモン吸収) HO HO HO -耐久性評価- NH3+ HO HO Au NH3+ HO NH3+ 核生成 (Au還元) NH3+ Au NH3+ 還元による吸着 (pH不可逆) NH3+ 核成長 HO HO HO NH3+ NH3+ NH3+ HO HO Au HO NH3+ 官能基による吸着 (pH可逆) Au NH3+ NH3+ ① 吸・脱着による濃縮液として回収 ② 吸着材燃焼による回収 16 実用化に向けて -スケールアップ- ラボレベルの バッチ試験(100ml程度) カラム試験(カラム容量 60ml程度) Wsample /g cAu / ppm SV / hr-1 No.7 1cm 切断 490 132.8 9.6 No.8 1cm 切断 490 127.5 49.4 No.10 糸巻 149 101.0 24.9 切断 糸巻 水系コーティング試料 140 120 cAu / ppm 充填 方式 実用化に向けたスケールアップを実施 カラム方式(カラム容量 470~2000ml) 約8~33倍 糸巻(SV:25) No.7 No.8 No,10 100 80 60 切断(SV:50) 40 切断(SV:10) 20 0 0 20 40 60 80 100 120 通液量 / L ■切断(No.7, 8) 結果良好 SV値を5倍に上げても比較的良 17 その他金属について CuSO4 aq. 1000ppm 100ppm PAAm / PVA blend PAAm aq. PVA繊維 φPAAm = 5.7 wt% 100ppm Cu2+ aq. 25ml Concentration of Cu2+ / ppm 100 80 95.7% 吸着 95.2ppm 60 吸着 40 HCl aq. 20 脱着 ・吸着したCu2+をほぼ100%脱着 ・再生可能 0 adsorption release 18 Cu2+の吸着状態 Cu aq. : 400ppm (10ml) PVA aq. : 10wt% (1ml) PVA-PAAm-Cu PVA aq. PAAm aq. 少 PAAm 多 Cu aq. PAAm-Cu PAAm aq. NH2 NH2 M+ NH2 NH2 Cu aq. 少 PAAm 多 19 Cu2+の吸着状態 Cu aq. : 400ppm (10ml) PVA aq. : 10wt% (1ml) PVA-NaOH-Cu PVA aq. NaOH aq. 少 NaOH 多 Cu aq. pH≒7 OH Cu2+ pH>7 Cu(OH)2 NH3+ HO HO OH OH HO ・Cd、Ni等も同様の吸着 ・錯イオン系(Au、Pt、Pd等)とは異なるメカニズム 20 他分野への応用 金属微粒子作製用資材として Pt 20~200nm Ni 数~10nm ・ディーゼル車等の触媒担持フィルター ・電子材料等への利用 21 他分野への応用 金属微粒子作製用資材として 吸着 合成 焼結 吸着 合成 コーティング 焼結 優位点(可能性) ○ポリマーゲル中での微粒子合成のため、微粒子の凝集が抑制が期待できる → 液体の乾燥・焼結に比べ、微粒子化・担持量増加 ○母材に触媒が埋没することがない → 効率的な触媒の配置 ○コーティング・吸着・還元・焼成と一連のプロセスで母材への固定ができる → 固体粉末粒子を取り扱う必要がない → 安全性・材料ロス低減 22 まとめ ■Au吸着(吸着:酸性 脱着:アルカリ性) ・アミノ基との電気的相互作用 ・市販弱アニオン交換樹脂と比べ、・同等の吸着性能 ・脱着(速度等)に優れる → 再生性、長寿命性 ・スケールアップした場合も十分な吸着性能(水系コーティング) ・Pt、Pd等、アニオン性染料も吸着可 ■Cu吸着(吸着:中性~弱酸性 脱着:酸性) ・アミノ基の存在により生じた水酸化物をPVAが保持 ・Ni、Cd等の吸着可 ■その他 ・焼結により微粒子作製(Pt:20~200nm Ni:数~10nm) ・特許4981671「ポリマーブレンドを含んでなる液中物質捕集材料」 ・複数社から問い合わせ → 1社 共同研究・技術移転 23
© Copyright 2024 ExpyDoc