「電気回路第三」講義資料 2014年度版 熊本大学工学部情報電気電子工学科 勝木 淳 15. 分布定数回路(7) 15.1 反射と自由振動 15.2 分布RC線路 15.1 反射と自由振動 (1) 開放端における反射 開放端では、Zl = ∞ vr Zl − Z0 ρ= = =1 vi Zl + Z0 電圧は同符号のまま反射、 電流は符号を反転して反射。 ir Z0 反射係数 vr = vi vr vi ir = − =− = −ii Z0 Z0 開放端 ii vi vr vl = 2vi 電圧の反射 vr vi v=0 電流の反射 i=0 il = 0 ii ir (2) 短絡端における反射 短絡端では、Zl = 0 反射係数 ir Z0 vr Zl − Z0 ρ= = = −1 vi Zl + Z0 vr = − vi vr vi ir = − = = ii Z0 Z0 短絡端 ii 電圧の反射 vi vr il = 2ii 電流の反射 ir i=0 vr vl = 0 v=0 電圧は符号を反転して反射、 電流は同符号のまま反射。 vi ii (3) 無損失線路にステップ電圧を加える場合 S t=0 E Z0 開放端 Q P 注)電流につい ては省略 ステップ電圧を加えた場合の振動 (4) 有限長無損失線路自由振動 S1 t=t1 < 0 E S2 t=0 Z0 開放端 Q P PQ 間の伝送線路を電圧 E に充電し、t = t1 < 0 で S1 を開き、 t = 0 で S2 を閉じ、電圧分布の時間変化をみる。 E/2 L v1 E/2 0 v2 P Q 0 P L (a) 電位 (b) 電流 自由振動の初期状態(t < 0) 見かけ上、電圧分布に変化はない。 i1 Q i2 スイッチ S2 短絡後 (t ≧ 0) の自由振動(電圧) スイッチ S2 短絡後(t ≧ 0)の自由振動(電流) 【問15.1】 下の無損失線路において、時刻 t = 0 でスイッチ S を閉じて から t = 2 l/c まで、 l/2c 毎の線路上の電圧・電流分布を図 示せよ。ただし、c は電磁波が伝搬する速さとする。 Zl − Z 0 ρ= = 0.5 Zl + Z0 S t=0 E Z0 A ZL B l 15.2 固有値、固有振動と自由振動 伝送線路上の過渡現象を、振動という観点から、一般的な初期条件下 の現象をみる。 固有振動 イミタンス関数のゼロ点または極 無損失線路の伝搬方程式を変数分離法を用いて解く。 電圧を とおくと、伝搬方程式は次のようになる。 v = v1 (x)v2 (t ) d 2 v1 ( x ) 1 d 2 v 2 (t ) v 2 (t ) = 2 v1 ( x ) 2 dx c dt 2 c 2 d 2 v1 ( x ) 1 d 2 v 2 (t ) ∴ = 2 v1 ( x ) dx v2 (t ) dt 2 x のみの関数 t のみの関数 独立した変数の関数が恒等的に等しい、すなわち両辺とも定数である。 定数を -ω2 として、 d 2 v1 ( x ) ω 2 d 2 v 2 (t ) 2 + v ( x ) = 0 , + ω v 2 (t ) = 0 1 2 2 2 dx c dt これらは、いずれも単振動の式であるから v1 ( x ) = Ae j(ω /c )x + Be − j(ω /c )x v2 (t ) = Pe jωt + Qe − jωt または、 ⎛ ω ⎞ ⎛ ω ⎞ ʹ′ ʹ′ v1 ( x ) = A cos⎜ ⎟x + B sin⎜ ⎟x ⎝ c ⎠ ⎝ c ⎠ v2 (t ) = Pʹ′ cos ωt + Qʹ′ sin ωt よって、電流 i は、 ∂i ∂v − =C = Cv1 ( x )(− Pʹ′ sin ωt + Qʹ′ cos ωt ) ∂x ∂t C ⎛ ω ω ⎞ ʹ′ ʹ′ ∴ i= ⎜ A sin x − B cos x ⎟( Pʹ′ sin ωt − Qʹ′ cos ωt ) L ⎝ c c ⎠ 両端を接地した長さ l の有限無損失線路 に落雷が発生し、電圧分布が生じたことを 想定する。 境界条件(x = 0 および x = l において v = 0) を考慮すると、 A’= 0、B’sin(ω/c) l = 0 nπ ∴ ωn = c (n = 1,2 ,3,⋅⋅) l ωnを固有値(共振周波数)、 sin ωn c x (n = 1,2 ,3,⋅⋅) を固有関数とよび、n=1, 2, 3,・・に相当する上式 を姿態(MODE)という。 MODE 15.3 分布RC線路の過渡現象 (1) 分布RC線路(トムソンケーブル) L = G = 0 として近似される伝送線路。 線路が十分に長く、周波数が低い 場合に適用される。 無損失線路に比べて実際に近い 現象を模擬できる。 この場合、基礎方程式は、 ∂v ∂i ∂v − = Ri , − =C ∂x ∂x ∂t 伝搬方程式は、 ∂2v ∂v ∂ 2i ∂i = RC , = RC 2 2 ∂x ∂t ∂x ∂t RC線路 A. 半無限長RC線路にステップ電圧を加えた場合 RC線路の伝搬方程式をラプラス変換して、 ∂ 2V ∂2I − RCsV = 0 , − RCsI = 0 2 2 ∂x ∂x ここで、 t ⇒ τ , (τ ≅ t − x /c ), RC ⇒ K , (K ≅ のようにおくと、電圧は次のように表される。 V = K1e RCs x + K2 e− RCs x 基礎方程式から電流は次のようになる。 ∂I − = Cs(K 1 e RCsx + K 2 e − RCsx ) ∂x Cs ∴I = ( −K 1 e RCsx + K 2 e − RCsx ) R Δk /c ) 境界条件: 送電端にステップ電圧 Eu(t) を加える。 x=∞ ⇒ V =0 x = 0 ⇒ V = L [Eu(t )] = E / s 境界条件から、K1 = 0、K2 =E/s となり、 E − x RCs e s Cs E − x I ( x , s) = ⋅ e R s V (x , s) = V = K1e RCs C −x =E e Rs RCs x + K2 e− RCs x RCs これをラプラス逆変換して次式を得る。 C −( RC /4 t )x 2 i( x , t ) = L [I ] = E e πRt −1 ⎛ RC x −( RC /4t )x 2 RC x −( RC /4 t )x 2 ⎞ ⎜ v( x , t ) = − ∫ Ridt = − E e dx + K = E⎜ 1 − e dx ⎟⎟ ∫ ∫ πt 0 πt 0 ⎝ ⎠ 立上がりが鈍る。 i v E 0 t (a) 電圧波形 0 t (b) 電流波形 分布RC線路のステップ応答 有限長線路の場合は送端と受端における反射の繰り返しを 考慮しなければならない。解を解析的に求めることは困難。 本講義では省略する。 分布RC線路における遅延時間 無ひずみ(無損失)線路における遅延時間 → 距離 x に比例する。 分布 RC 線路における遅延時間 → 距離の2乗 x2 に比例する。 t d = aRCx 2 ただし、td は63%に達するまで の時間。 速度w = 1/√(LC)で伝搬 コンデンサの充電時間によって伝搬時間が決まる。 v 最終値 63% 0 td t 分布RC線路における遅延時間
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