【要約】 築後 40 数年を経た旧国立岡山病院の建物を、県の福祉に関する総合拠点施設としてコンバージョン整備した。耐震補強や コンバージョンでの様々な機能的な課題を解決し、同時に環境負荷の低減や街並みの景観を一新する付加価値を生み出す 手法として、ダブルフレーム構法を開発した。格子状ダブルフレームは、単に耐震性能を満足させるだけでなく、意匠・ 設備・構造・工法が一体となって、機能・外観・環境などの付加価値を同時に生みだす外殻補強である。 【耐震改修の特徴】コンバージョン、付加価値向上、デザイン性向上、短工期施工 【耐震改修の方法】強度向上、靭性向上、免震改修、制震改修、仕上げ改修、設備改修、液状化対策、その他( ) きらめきプラザ(岡山県総合福祉・ボランティア・NPO会館) 岡山県 株式会社 竹中工務店 株式会社 竹中工務店 所 在 地 竣 工 年 改修竣工 岡山県岡山市 1961 年(昭和 36 年) 2005 年(平成 17 年) ●架構計画・外観デザイン・補強設計のポイント 機能・外観・環境などの付加価値を同時創出 -格子状ダブルフレームによるコンバージョン- ダブルフレームは、純ラーメン構造とし、既存長辺方向 5.8m スパン 間にもフレームを設けて 2.9m スパンとすることで補強架構の剛性を向 いる。 構造種別 :SRC造、RC造、S造 ①部材の耐力低下を考慮した荷重増分解析によるDs設計 延床面積 :20,816㎡(建築面積:5,781㎡) ②既存建物とダブルフレームとの接合部設計 S造 ●改修工事概要 生活をとりまく環境の変化から多様化し増大している福祉サービス 改修後 指して、築後 40 数年を経た旧国立岡山病院の建物を、県の福祉に関す SRC造 の施工、補強効果の検証など行った。 改修前 フレキシブルな空間を実現するために、壁撤去を行った状態と補強後 RC造 2.環境負荷低減への配慮、3.高度情報化への対応、4.構造体の耐震 の必要保有水平耐力 Qun(1.25 倍割増し、地域係数 0.9 考慮)に対する PHC杭 安全性の 1.25 倍割増しが求められた。 保有水平耐力 Qu の検証(Qu/Qun)を行った。 祉活動の拠点として、1.バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進、 トイ レなど 水まわりや 設備スペースによ る 空間の制約 然エネルギーの活用により、CASBEE S ランク(BEE=4.1)を実現した。 間仕切リ が耐震壁 既存長辺方向 スパン 5.8m ●設計者コメント 350 Qy 750 475 350 250 100 1,450 ■ 接 合 部の設計方針 既存での耐力不足分をダ ブルフレーム にて負担するも のとする。 ・4~RFのS接合部では、せん断力Qx、Qyを 伝達 ・1~3FのRC接合部では、せん断力Qx、Qyと鉛直力Nを 伝達 2005/2 2005/4 2005/5 格子状ダブルフレームにより、築後 40 年を超える既存建物の価値や ダブルフレーム架構の施工状況 雨水を活用した水盤とモニュメント ダブ ルフレーム これにより、病院や学校など耐震補強・機能整備が急がれる建物のリニ 耐震壁撤去 ューアルあるいはコンバージョンの手法を提示できたと考えています。 トイ レなど 水まわりや 設備スペースはダブ ルフレーム内に設置 耐震壁のない広く使いやすい室内空間 ●施工者コメント 解体・増築・改修の多種多様な工事を、合理的な工区分け、施工手順 匠・設備・構造・工法が一体となって、機能・外観・環境などの付加価値 耐震壁がなく、高い天井でフレキシブルな執務空間 の綿密な検討により同時進行させ、工期 10 ヶ月(通常工期の 63%) 、全 天井高さ 2,550 耐震要素は、 建物外部のダブ ル フレームに集約 ダブルフレーム スパン 2.9m 二重外壁 ④既存病院のイメージの刷新と、新たな街区イメージの創出 室外機 メン テ 通路 配管スペース メン テ 緑化テラ ス 通路 室内機 3,200 2,550 ペリメータ負荷削減 ・フレームによ る 庇効果 ・外壁ダブ ルスキン 空地の確保 ・緑化と水盤の設置 ・透水舗装の採用 県民総参加のもと、ボランティア・NPO 、各種団体などが手を携えて、 屋上緑化 緑化テラ ス 自然通風 自然採光 執務空間 (既存部分) 透水舗装 水盤(雨水・井水) ダブ ルフレーム 工期無災害で実現しました。 ●発注者コメント 太陽光発電(110KWH) ③自然エネルギーの活用・熱負荷の低減・日影の改善 いやすさ Qx RC接 合 部 2004/12 環境の質を高めて生まれかえらせ、福祉の総合拠点施設を実現しました。 改修後 格子状ダブルフレームは、単に耐震性能を満足させるだけでなく、意 ⑤歩行弱者・加齢者だけでなく多様な利用者に安心を与える安全性と使 HD 19@250(1F@200) ( 接 着系アンカー) 解体・新築(県試算)に比較し、60%のイニシャルコスト削減。 耐震壁撤去 ●耐震改修計画 ②補強架構を利用した設備機器・配管ルートによる合理的な空調システム ダブ ルフレーム RC接合部 既存建物 ●改修コスト 天井高さ 2,350 判断された。 ①自由な間取りが可能なフレキシブルな内部空間 750 2-HD22 確認した。 既存建物の耐震診断の結果、X・Y 方向ともにIs=0.25 となり、構造 を同時に生みだす外殻補強である。特徴は以下の通りである。 N B1FL ▽ 1.14、Y 方向で最小 1.03 であり、必要な耐震性能を満足していることを 年間 20 万人近くの利用者を数え、福祉の拠点として広く親しまれて 耐震判定指標Iso(≧0.54)を満足していないため、耐震補強が必要と ■ 使 用 鋼材 柱:BCP235、 SS400 梁:SS400 通しダイアフラム:SN490C 内ダイアフラム:SM490A 補強後は、既存建物補強とダブルフレーム補強により、X 方向で最小 対効果(岡山県試算)をあげたほか、フレームによる熱負荷の削減や自 ●耐震診断結果 2FL ▽ Qy Qx 震性能を満足していないため耐震補強が必要と判断した。 耐震壁 改修前 して、ダブルフレーム構法を開発し、解体・新築に対して約 60%の費用 いる。 M 壁撤去後は、X 方向で最小 0.26、Y 方向で最小 0.34 であり、必要な耐 耐震補強やコンバージョンでの様々な機能的な課題を解決し、同時に 環境負荷の低減や街並みの景観を一新する付加価値を生み出す手法と S接合部 6-M20 PL-16 4~6FL ▽ 1FL ▽ ●耐震改修の効果 る総合拠点施設としてコンバーション整備した。整備にあたっては、福 BH-400×300×16×25 BH-800×300×22×36 既存建物 C T -294×300×12×20 H- 400×200×8×13 施工に際しては、既存利用のための事前調査・補修を行い、環境配慮 改修後の鳥瞰 ダブルフレーム S接合部 H- 400×200×8×13 3FL ▽ ダブルフレーム架構の施工状況を右記に示す。 へのニーズに対応するため、ボランティアや NPO など民間の活動と行政 既存建物 7FL ▽ ③既存杭基礎のパイルド・ラフト基礎としての支持力評価 ●改修経緯 サービスとの連携を図り、県民総参加による確かな福祉社会の実現を目 ダブ ルフレーム RFL ▽ 1,100 補強設計のポイントは下記のとおりである。 :地下1F、地上7F、塔屋2F 400 600 主用途 :事務所 規模 既存スパン ダブ ルフレームスパン 5,800 2,900 高 層 部 伏図 接合部 700 上させ、階高 3.2mとのバランスにより、格子状デザインを実現させて ●建物概要 750 発 注 者 改修設計 改修施工 450 26-001-2012 作成 種別 耐震診断・耐震改修 建物用途 事務所 いきいきと活動しながら社会づくりを進める多参画社会の形成を目指 ●各種受賞 すとともに、県民と行政が協働して地域福祉を推進することのできる総 2007 第 17 回 BELCA 賞、2007 第 6 回エコビルド賞、2008 第 6 回建築・ 合拠点施設として整備しました。 設備環境デザイン賞、平成 17 年度日本建築学会中国支部構造賞、2006 岡山市まちづくり賞、2009 第 8 回「建築と社会」賞 ダブ ルフレーム 雨水・井水活用 日建連 耐震事例集 ℂ2013 日本建設業連合会 当事例集の二次利用を禁止します。 お問い合わせ先 社団法人日本建設業連合会 建築部 〒104-0032 中央区八丁堀 2-5-1 東京建設会館 8 階 TEL 03-3551-1118 FAX 03-3555-2463
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