4.4: 独立集合,被覆と監視問題 [部屋の手配の問題] 宿泊客n人があるホテルに 部屋の予約を入れてきた。 ホテルはm部屋持っているが, 宿泊客が泊まってもよいと 思っている部屋は異なる。 最大何人の予約を成立させる ことが可能か? H26 グラフ理論 ー第10回ー マッチングと独立集合 予約客の希望の関係 1 2 独立集合:グラフ G=(V, E) で,どの辺 e∈ E に対しても, e の端点のうち多くともどちらか一方しか含まない 部分集合 S⊆V を,独立集合という.点数が最大の 独立集合の大きさを G の独立数といい α(G) で表す. [コミュニティーの発見問題] 特定の条件を満たす人の集まりをコミュニティーという. できるだけ大きなコミュニティーを発見する問題. α(G) = 3 知り合い同士を表すネットワーク お互いが知り合いである 最大のコミュニティー G これらの問題をグラフ理論として特徴付ける 3 独立集合(黒丸) (independent set) 最大独立集合 (max. independent set) 4 1 グラフのクリーク:グラフ G=(V, E) の部分グラフで 完全グラフであるものを G のクリークという. 頂点が最も多いクリークを G の最大クリークという. グラフの点被覆:グラフ G=(V, E) で,どの辺 e∈ E に 対しても,e の両端の点のうち少なくとも一方を含む ある部分集合 S⊆V を,G の点被覆という. 最小の点被覆の大きさ (被覆数) をβ(G) と表す. β(G)=3 β(G)=3 G G 点被覆 (set cover) 最小点被覆 (min. set cover) クリーク (clique) 最大クリーク (max. clique) 5 6 グラフ G の最大独立集合,最小点被覆,最大クリーク の計算は困難.(簡単な計算法は知られていない) グラフ G の最大独立集合,最小点被覆,最大クリーク の計算は困難.(簡単な計算法は知られていない) このグラフの最小点被覆は? これが最小? このグラフの最小点被覆は? 7 最小点被覆の解 8 2 最小点被覆問題は,最適解を計算する簡単な方法は 知られていないが,以下のように近似的な解を求める 簡単な方法がある. グラフの独立集合,点被覆,クリークには自明な関係が 成立し,どれか一つが計算できれば他の解を直ちに 求めることができる.(1対1の関係がある) アルゴリズム1(貪欲法) それまでに被覆されていない辺のうち,最も被覆する 数が多い点を選んでいく手法 アルゴリズム2(最大マッチング法) 最大マッチングを求めるアルゴリズムを利用する手法 これらの手法は最適解の2倍以内の解を保証する. (詳細は次回) 点被覆:どの辺に対してもどちらかの 端点は選ばれている 9 元のグラフの補グラフを考えると,以下の関係も自明 最小点被覆 独立集合:辺でないどの頂点の組も どちらの端点も選ばれている 最大独立集合 10 以上をまとめると,以下の関係となる. 定理:任意のグラフ G=(V,E) とその頂点の 部分集合 S⊆V に対して,以下は等価である. (1) S が G の最大独立集合 (2) V-S が G の最小点被覆 (3) S が G の補グラフの最大クリーク どの頂点の組に対しても それらを結ぶ辺がない 最大独立集合 それらの辺(左図の点線)は 補グラフの辺(右図) 補グラフの最大クリーク 11 12 3 辺に関する独立集合と被覆 辺の被覆:グラフ G=(V, E) で,G のどの点も S⊆ E の ある辺の端点となっているとき,S を G の辺被覆という. 最小の辺被覆の大きさを辺被覆数といい,β’(G) で表す. 辺の独立集合:グラフ G=(V, E) で,ある部分集合 S⊆ E のどの2辺も接していないとき,S を G の 辺独立集合 (マッチング) という( α’(G) ). β’(G)=3 α’(G)=3 G マッチング (辺独立集合) G 最大マッチング (完全マッチングでもある) 辺被覆 最小辺被覆 13 [紛らわしい概念について] 基本定理: , β’(Kp)= . (1)α(Kp)=1, β(Kp)=p-1, α’(Kp)= (2)α(Kn,m)=n, β(Kn,m)=m, α’(Kn,m)=m, β’(Kn,m)=n, (n≧ m). 頂点の(被覆・独立集合)と辺の(被覆・独立集合) 頂点の被覆・独立集合 証明: (1) α(独立数),β(被覆数)であることに注意 α(Kp)=1: Kpの任意の点はその他のすべての点と 接続しているので,α(Kp)=1. β(Kp)=p-1:どのような点の選び方をしても i 番目に選んだ点が 新たに被覆する辺の数は,p-i本であるので,最後の1本を被覆 するまでに選んだ点の総数はp-1である. 辺を被覆するように頂点を選ぶ 頂点が独立する(隣接しない)ように頂点を選ぶ 14 辺の被覆・独立集合 頂点を被覆するように辺を選ぶ Kp 辺が独立する(隣接しない)ように辺を選ぶ 15 最初に選ぶ点が被覆する辺の数はp-1 どれを選んでも次の点が被覆する辺数は p-2 16 4 定理4.3: 任意のグラフ G と任意の S⊆V(G) に対して, 以下の条件は等価である. (1) S は G の独立集合である (2) V(G)-S が G の被覆である 基本定理: , β’(Kp)= . (1)α(Kp)=1, β(Kp)=p-1, α’(Kp)= (2)α(Kn,m)=n, β(Kn,m)=m, α’(Kn,m)=m, β’(Kn,m)=n, (n≧ m). 証明: (1) :1つの辺 e=(i,j) を選ぶ毎に,i も j も α’(Kp)= 他の辺に使うことが出来ないから. :1本辺を選ぶ毎に2個ずつ頂点を被覆していくから. β’(Kp)= (2)は自明なので省略する. Kp 証明:S が G の独立集合ならば,G のどの辺も S の点を 両端には持っていない (多くともどちらか一方).このこと は G の任意の辺の少なくとも一方の点が V(G)-S に 含まれることと同値,すなわち V(G)-S が G の被覆と同値. どの辺も V(G)-S の頂点を持つ. そうならないのはSの頂点同士に辺がある ときだけで,それはSが独立であることに反する ある辺を選ぶことで, (a) 独立な辺として利用可能な点が2個減る (b) 選んでいない点が2個減る S V(G)-S が G の被覆となる 17 18 ガライの定理: 孤立点を持たないグラフ G に対して, α’(G)+β’(G)=|V(G)|が成り立つ. 定理4.3: S⊆V(G) が G の独立集合であることと V(G)-S が G の被覆であることは同値. 系4.3.1: 任意のグラフ G に対して, α(G) +β(G) = |V(G)| が成り立つ. α’(G)=3 証明: S を最大独立集合とし,K を最小被覆とすると, 定理4.3より,V(G)-S は被覆,V(G)-K は独立集合である. このことから, α(G) ≧ |V(G)-K| = |V(G)|-β(G) β(G) ≦ |V(G)-S| = |V(G)|-α(G) したがって,α(G)+β(G)=|V(G)| が成り立つ. 19 β’(G)=3 α’(G)+β’(G)=|V(G)| となり, これは一般に成り立つ 最大マッチング 最小辺被覆 20 5 ガライの定理: 孤立点を持たないグラフ G に対して, α’(G)+β’(G)=|V(G)|が成り立つ. ガライの定理: 孤立点を持たないグラフ G に対して, α’(G)+β’(G)=|V(G)|が成り立つ. 証明: α’(G)+β’(G) ≦|V(G)| の証明 M を最大マッチングとすると,M は 2α’(G) 個の点を被覆する. (α’は隣接しない辺の本数.よって頂点はその2倍) U を M の端点でない点集合とすると,U の各点に接続する辺が 少なくとも1辺ずつ存在する(孤立点がないから). 証明: α’(G)+β’(G) ≦|V(G)| の証明 これらの辺集合を M ’ とすると,M と M ’ に共通要素はなく, M ∪M ’はG の辺被覆であるから, β’(G) ≦ |M∪M’| = |M|+|U| = α’(G) + (|V(G)|-2α’(G)) = |V(G)|-α’(G) となり,α’(G)+β’(G) ≦|V(G)| を得る. 最大マッチング M 最大マッチング M U に接続する M 以外の辺 U の点 U に接続する M 以外の辺 21 証明:逆の関係: |V(G)| ≦α’(G)+β’(G)の証明. L’ を G の最小辺被覆とし,L をその連結成分の集合とすると, すべての連結成分は木である. もしそうでないなら閉路があり,そこから辺を取り除いても G を被覆できるので,最小であることに反する. |L| ≦α’(G) である(各連結成分内で1つ以上独立な辺を選べるから). また,各連結成分が木であるので, 木の性質から,頂点数=辺数+1が成り立つので, |V(G)| = |V1|+...+|VL |= (|E1|+1)+...+(|EL|+1)=|L’|+|L|であることから, |V(G)|= |L’|+|L| ≦α’(G)+β’(G).以上より,α’(G)+β’(G)=|V(G)|. U の点 22 次回は最大マッチングの効率的な計算と,それを応用 した最大独立集合の近似計算について講義する. 最小辺被覆 L’ (L=2) (2つの木からなる) 23 24 6
© Copyright 2024 ExpyDoc