日経平均ボラティリティー・インデックス先物取引 の利用のコツ 10 か条

日経平均ボラティリティー・インデックス先物取引
の利用のコツ 10 か条
日経平均ボラティリティー・インデックス先物取引の利用のコツ
10 か条
1.
日経平均 VI は今から 1 か月間の相場変動の大きさを市場がどのように想定して
いるかを表した指数です。目安として指数値が 25 より高いときは警戒感が高い
ので投資額を控えめに。
2.
日経平均 VI の指数値を 16 で割ってみましょう。直感的にわかりやすい日次の変
動率に換算することができます。
初級
3.
日経平均 VI 先物は先物の満期日から 1 か月間の相場変動の大きさを予測する商
品です。
初級
4.
日経平均 VI 先物によって、相場の「警戒感の高さ」を取引できます。相場変動が
大きくなると考えるときは買い建て(ロング)してみましょう。
初級
5.
日経平均 VI 先物によるヘッジにはコストがかかることがあります。
中級
6.
ボラティリティー・インデックス(VI)に関連した ETF・ETN もあります。
初級
7.
日経平均 VI と日経平均 VI 先物の価格をみて、市場の警戒感を計る予報カレンダ
ー(ボラティリティーの期間構造)を作りましょう。
中級
8.
ボラティリティーの期間構造によって日経平均 VI 先物の動き方が異なることを把握
しましょう。
上級
コラム:なぜボラティリティーの期間構造ごとに日経平均 VI 先物の変動の仕方に
特徴がでてくるのか?
上級
取引コストが高い場合は投資を避けましょう。流動性の高い時間帯やアスクとビッド
の価格差が狭まっている時に取引しましょう。
上級
日経平均 VI、日経平均 VI 先物に関連した情報を集めましょう。
初級
9.
10.
1
V
初級
1.
日経平均 VI は今から 1 か月間の相場変動の大きさを市場がどのように想定しているかを
表した指数です。目安として指数値が 25 より高いときは警戒感が高いので投資額を控え
めに。
日経平均ボラティリティー・インデックス(日経平均 VI)は今から 1 か月間の相場の変
動の大きさを市場がどのように想定しているかを表した指数で、大阪取引所で取引されて
いる日経 225 オプションの価格等を参照して、高度な数学を用いて算出されます。
日経平均 VI と比較されるボラティリティー・インデックス(VI)として、S&P500 を
対象とした米国の VIX(ビックス)があります。両指数とも数値が大きいほど、投資家が
今後の相場見通しについて強い警戒感を持っていることを示します。
一般的な目安として、指数値が 25 以上になっているときは警戒感が高まっていると考
えられます。指数値が高いときは、長期のポジションを持っている投資家は投資額を減ら
して様子をみることを検討しても良いでしょう。
日経平均株価と日経平均 VI の推移
(円)
(pt)
20,000
100
日経平均株価(終値・左軸)
90
日経平均VI(終値・右軸)
80
18,000
16,000
70
14,000
60
12,000
50
40
10,000
30
8,000
20
6,000
10
4,000
2007/01
0
2008/01
2009/01
2010/01
2011/01
2012/01
2013/01
(株)日本経済新聞社提供データより作成
2001 年1月~ 2013 年 12 月の市場のショックイベント
ピーク値
背 景
63.44
2001.9~10
同時多発テロ
期
間
(2001/9/17)
2002.9~10
2007.8
2008.1~3
2008.9~2009.4
2010.5
2011.3
2011.8
2013.5
40.71
(2002/10/9)
47.32
(2007/8/17)
49.67
(2008/3/17)
92.03
(2008/10/31)
44.00
(2010/5/21)
69.88
(2011/3/15)
42.69
(2011/8/9)
43.74
(2013/ 5/23)
不良債権処理の加速懸念による銀行株下落
サブプライム問題
ベアスターンズ破たん
世界金融危機(リーマンショック)
ギリシャ財政危機
東日本大震災と原発問題
米国債格下げ
日本株大幅下落
2
2.
日経平均 VI の指数値を 16 で割ってみましょう。直感的にわかりやすい日次の変動率に換
算することができます。
ボラティリティーとは、株価の収益率の変動の大きさを示す単位です。VI はそのボラテ
ィリティーを指数化し、“株価が今後 1 年間でどれ位動きそうか?”を示したものです。
日経平均 VI は、世界各国の様々な VI の一つであり、「日経平均の今後 1 か月間の価格
変動が 1 年間続いた場合(年率に換算)、日経平均がどれ位変動するのか」の想定値を示
します。
「日経平均 VI が 24 ポイント」とは?
今後 1 か月間の日経平均の変動が年率で 24%と市場が考えているということ。
仮に、今日の日経平均が 15,000 円とすると・・・
「この相場状況が 1 年間続いた場合、±24%(±3200 円)動く可能性がある(※1)」という相場変動の
大きさを示しています。
株価の変動をわかりやすくするため、日経平均 VI の数値を 16(※2)で割ってみましょう。
年率のボラティリティーを日率のボラティリティーに換算することができます。
日率に変換すると、
年率で 24%のボラティリティーを日率に換算すると、24÷16 で約 1.5%。
仮に、今日の日経平均が 15,000 円とすると・・・
「日経平均が 15,000 円を中心に一日で±1.5%(±225 円)動く可能性がある(※1)」という相場変動
の大きさを示すこととなります。
※1 例えば、日経平均のリターンが、「平均 0 で標準偏差(σ)の正規分布」に従うと仮定すると、リター
ンの変動幅が±σにおさまる確率は約 68%となります(下図の赤枠で囲った部分)。このとき、日経平
均 VI によってその標準偏差(σ)の水準を推測することもできます。
≪日経平均のリターン(株価変動率)の分布のイメージ≫
(横軸:リターン、縦軸:リターンの発生頻度)
±σのレンジに入る確率は 約 68%
(赤枠の部分)
σ
σ
※2 年率換算されたボラティリティーを日率に直すためには年間の営業日数(=260 日ほど)の平方根、す
なわちおよそ 16 で割り算するとよいことが知られています。
3
3.
日経平均 VI 先物は先物の満期日から 1 か月間の相場変動の大きさを予測する商品です。
将来の日経平均 VI を予測して取引できる商品として、日経平均 VI 先物があります。日
経平均 VI 先物の価格から、今後における市場の警戒感が高まるのか、それとも収まるのか
といった投資家の見通しを把握することができます。
例えば、X 月限の日経平均 VI 先物とは、「X 月の満期日において、日経平均 VI がいく
らになっているかを予測する先物」です。
≪日経平均 VI 先物取引概要≫
日経平均 VI を原資産とする先物取引のこと。例えば、日経平均 VI 先物の
2014 年 4 月限の最終清算数値は、「2014 年 4 月の満期日時点の日経平均
VI」となります。
いいかえると、日経平均 VI 先物 4 月限とは、4 月の SQ 日を起点とした 30
日間の日経平均の変動がどの程度になるかを予測する指数の先物です。
取引内容
最終損益
(買いの場合)
主要取引者
( SQ 日における日経平均 VI の値 ― 取引した時点における日経平均 VI 先物価格 )
× 10,000 [円] × 取引枚数
証券会社、海外投資家、個人投資家
(例)2014 年 4 月限の日経平均 VI 先物を 30 ポイントで 3 枚購入した場合
SQ 日(2014 年 4 月 9 日)における日経平均 VI が 32 ポイントとすると、日経平均 VI 先物
の最終損益は、以下のとおり + 60,000 円となります(委託手数料は考慮していません)。
( 32pt - 30pt ) × 3(単位) × 10,000 円 = + 60,000 円
VI の値
先物価格
4
4.
日経平均 VI 先物によって、相場の「警戒感の高さ」を取引できます。相場変動が大きくな
ると考えるときは買い建て(ロング)してみましょう。
“1か条”に示されている通り、日経平均 VI 及び日経平均 VI 先物価格は相場が急変動
した際に大きく上昇する傾向があります。
下図は、2013 年中の日経平均と、日経平均 VI 先物価格から算出される日経平均 VI 先
物指数(※)の日次リターンをプロットしたものです。この散布図より以下の2つの傾向
が読み取れます。
① 日経平均と日経平均 VI 先物指数の間には、弱い負の相関(グラフが概ね右下がり)が
ある。
② 日経平均の変動が大きいタイミングでは、日経平均 VI 先物指数の方がより変動が大き
くなる傾向(グラフが下に凸)がある。
→ 日経平均 VI 先物を買い持ち(ロング)することにより、日経平均が大きく変動する時
(特に下落時)は、日経平均 VI 先物の価格が上昇することで収益があがる可能性があ
ります。また、多くの株式を保有しているとき、日経平均 VI 先物が、相場の急変動に
備えた有効な「ヘッジツール」として役立つ可能性があります。
≪2013 年の日経平均株価と日経平均 VI 先物指数の日率変動の散布図≫
日経平均 VI 先物指数
のリターン(%)
20
15
10
5
0
-5
日経平均のリターン(%)
-10
-8
※
-6
-4
-2
0
2
4
6
日経平均 VI 先物指数は、日経平均 VI 先物取引の期近限月と期先限月のウエイトを日々調整すること
で、仮想的に満期1ヵ月の日経平均 VI 先物取引を合成し、その合成した先物取引の価格の日々の変動
率に連動するよう設計されたもので、日経平均 VI 先物価格の変動を知る上で有用な指数です。
なお、日経平均 VI 先物指数は日本経済新聞社が算出しています。詳しくは日本経済新聞社の指数サイ
ト「日経平均プロフィル」(http://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile?idx=nk225vifi)
をご覧ください。
5
5.
日経平均 VI 先物によるヘッジにはコストがかかることがあります。
日経平均 VI 先物価格は平時(相場が荒れていないとき)には徐々に下落する傾向がある
ことが知られています(“8か条”参照)。平時には、日経平均 VI 先物は概ね日経平均 VI
よりも高めに取引され、満期に近づくにつれて徐々に下落し日経平均 VI に漸近していく傾
向(時間減衰)があります。
このため“4 か条”で学んだように、日経平均 VI 先物を買い持ち(ロング)すること
は、相場急変時の有効な「ヘッジツール」になる可能性がある一方、相場が急変しなかっ
た場合には徐々に先物価格が下落していく可能性があります。取引を行う際にはこの点に
注意が必要です。
(pt)
≪日経平均 VI と日経平均 VI 先物価格の日次推移≫
33
日経平均VI先物価格は満期日に
日経平均VIに収束します。
31
29
27
25
23
21
19
2013.09
2013.10
2013.11
2013.12
2014.01
日経平均VI
13年09限
13年10限
13年12限
14年01限
14年02限
6
2014.02
13年11限
6.
ボラティリティー・インデックス(VI)に関連した ETF・ETN もあります。
大阪取引所では日経平均 VI に関連した先物が取引されていますが、東京証券取引所に
は、世界の VI に関連した ETF・ETN が上場しています。
現在、東京証券取引所で取引されている商品は以下のとおりです。特に日経平均 VI 先物
指数 ETN(2035)は、日経平均 VI に関連した商品であり、日経平均 VI 先物などのデリ
バティブ商品はハードルが高いと考える個人投資家でも取り扱いやすい商品であるといえ
るでしょう。
≪東京証券取引所に上場している VI に関連した ETF・ETN 一覧≫
コード
名称
概要
1552
国際の ETF VIX 短期先物指数
米ドルベースの「S&P500 VIX 短期先物指数(トータ
ル・リターン指数)」を円換算した対象株価指数に連動す
る投資成果を目的とした ETF(上場投資信託)です。
1561
国際の ETF VIX 中期先物指数
米ドルベースの「S&P500 VIX 中期先物指数(トータ
ル・リターン指数)」を円換算した対象株価指数に連動す
る投資成果を目的とした ETF(上場投資信託)です。
2029
i Path VIX 中期先物指数連動受益
証券発行信託
連動対象は、S&P 500 VIX 指数の平均 5 ヶ月先の先物契
約を買い持ちしたパフォーマンスに連動した指数(S&P
500 VIX 中期先物指数トータル・リターン)です。
2030
i Path VIX 短期先物指数連動受益
証券発行信託
連動対象は、S&P 500 VIX 指数の平均 1 ヶ月先の先物契
約を買い持ちしたパフォーマンスに連動した指数(S&P
500 VIX 短期先物指数トータル・リターン)です。
NEXT NOTES 日経平均 VI 先物
指数 ETN
連動対象は、日経平均ボラティリティー・インデックス先
物取引の期近限月と期先限月のウエイトを日々調整するこ
とで、仮想的に満期1ヵ月の日経平均 VI 先物取引を合成
し、その合成した先物取引の価格の日々の変動率に連動す
るよう設計された指数(日経平均ボラティリティー・イン
デックス先物指数)です。
ETF
ETN
2035
7
7.
日経平均 VI の数値や日経平均 VI 先物の価格をみて、市場の警戒感を計る予報カレンダー
(ボラティリティーの期間構造)を作りましょう。
横軸に現時点からの期間、縦軸にボラティリティーをプロットしたものをボラティリテ
ィーの期間構造といいます。
日経平均 VI の数値や日経平均 VI 先物の価格はそれぞれ特定の期間のボラティリティー
の大きさを予測した数値ですから、それらをつないで作られるボラティリティーの期間構
造は、市場参加者による「どの期間にどれくらい相場が変動しそうか」といった見通しを
可視化したもので、いわば「市場の警戒感を計る予報カレンダー」ともいえる興味深い情
報です。
日本経済新聞の市況欄などに、日経平均 VI や日経平均 VI 先物価格が掲載されています
ので、この情報からボラティリティーの期間構造の概要を知ることができます。
以下は 2014 年 2 月 18 日時点の日経平均 VI と日経平均 VI 先物の各限月の価格をもと
に、ボラティリティーの期間構造を示したものです。
この期間構造から、相場は徐々に落ち着きを取り戻しつつも、警戒感は高止まりしてい
ることがわかります。
≪日経平均 VI と日経平均 VI 先物価格(2014 年 2 月 18 日時点)≫
日経平均VI
27.67
14 年 3 月限
26.50
日経平均 VI 先物
14 年 4 月限
14 年 5 月限
26.10
14 年 6 月限
26.25
26.25
・まず、日経平均 VI と日経平均 VI 先物の各限月の価格をプロットします。
ボラティリ
ティー
(pt)
日経平均 VI
(27.67)
3 月限先物
(26.50)
4 月限先物
5 月限先物
6 月限先物
(26.25)
(26.25)
(26.10)
現時点
3 月限の満期日
4 月限の満期日
5 月限の満期日
6 月限の満期日
7 月限の満期日
・次に、プロットした点を線で結ぶことで、ボラティリティーの期間構造を把握できます。
ボラティリ
ティー
(pt)
日経平均 VI
(27.67)
3 月限先物
(26.50)
4 月限先物
5 月限先物
6 月限先物
(26.25)
(26.25)
(26.10)
現時点
3 月限の満期日
4 月限の満期日
5 月限の満期日
8
6 月限の満期日
7 月限の満期日
8.
ボラティリティーの期間構造によって日経平均 VI 先物価格の動き方が異なることを把握しまし
ょう。
“7 か条”で学んだようにボラティリティーの期間構造は市場が想定する株価変動に対
する警戒感の大きさを時期ごとに示してくれます。ここで過去の実績をみると期間構造の
形状は平時ではアップワードスローピング、市場の変動が大きいときはダウンワードスロ
ーピングと呼ばれる形状になっていることが多いことが知られています。
【平時の場合】
目先は市場が落ち着いているため変動があまり想定さ
れておらずボラティリティーは低いが、長期の相場見通
しとしては不透明感が残り、遠い将来になるほどボラテ
ィリティーが高くなる。すなわち期間構造が右上がりの
形状になっている(アップワードスローピング)ことが
多い。
ボラティリティー
【市場の変動の大きい場合】
目先は相場が変動すると市場が想定しているが、長
期的には相場が落ち着くと見られているときは、遠い
将来になるほどボラティリティーが低くなる。すなわ
ち期間構造が右下がりの形状になっている(ダウンワ
ードスローピング)ことが多い。
ボラティリティー
←期間短い
←期間短い
期間長い→
オプション
の残存期間
期間長い→
オプション
の残存期間
ボラティリティーの期間構造ごとに日経平均 VI 先物価格の動き方に特徴があることが知られています。たとえば
下記の表に示されるとおり 2013 年 1 年間のデータからボラティリティーの期間構造がアップワードスローピング
の場合は、日経平均 VI 先物価格は下落する傾向にあり、ダウンワードスローピングの場合には日経平均 VI 先物価格
は上昇する傾向にあることがわかります。
このことから“5 か条”で学んだ「平時の場合には日経平均 VI 先物価格は徐々に下落する(買い持ち(ロング)
した場合にヘッジコストが発生する)傾向がある」ことについても確認できます。日経平均 VI 先物を用いて投資を
行うときは、以上のような傾向を念頭に入れておくとよいでしょう。
≪2013 年におけるボラティリティー期間構造と日経平均 VI 先物のパフォーマンスの関係≫
2013 年中でボラティリティー期間構造が
アップワードスローピングの日数(*1)
32 日/245 営業日中
アップワードスローピングで
アップワードスローピングで
日経平均 VI 先物が上昇(*3)
日経平均 VI 先物が下落
14 日/32 営業日中(44%)
18 日/32 営業日中(56%)
アップワードスローピングでの
日経平均 VI 先物のパフォーマンス
2013 年中でボラティリティ-期間構造が
ダウンワードスローピングの日数 (*2)
128 日/245 営業日中
ダウンワードスローピングで
ダウンワードスローピングで
日経平均 VI 先物が上昇
日経平均 VI 先物が下落
70 日/128 営業日中(55%)
58 日/128 営業日中(45%)
ダウンワードスローピングでの
日経平均 VI 先物のパフォーマンス
-0.23%
+0.37%
(1 営業日あたり日経平均 VI 先物パフォーマンス平均)
(1 営業日あたり日経平均 VI 先物パフォーマンス平均)
2013 年 1 年間(245 営業日)のデータを使用して分析。
※1 アップワードスローピングとは、引値ベースで「日経平均 VI < 日経平均 VI 先物第 1 限月 < 日経平均 VI 先物第 2 限月」となっていた場
合を指します。
※2 ダウンワードスローピングとは、引値ベースで「日経平均 VI > 日経平均 VI 先物第 1 限月 > 日経平均 VI 先物第 2 限月」となっていた場
合を指します。
※3 「アップワードスローピングで VI 先物が上昇」とは、アップワードスローピングと判定された日の翌営業日に日経平均 VI 先物第 1 限月
の価格が上昇した場合を指します(それ以外のケースも同様)。
9
コラム:なぜボラティリティーの期間構造ごとに日経平均 VI 先物の変動の仕方に特徴がで
てくるのか?
前頁の現象を解釈するために、時間が経ってもボラティリティーの期間構造が変化しない状況を考えます。この場合、ボラ
ティリティーの期間構造が変わらない(※)中で、日経平均 VI 先物の満期までの時間だけが減っていくことになります。つま
り、日経平均 VI 先物価格が予測するボラティリティーが期間構造のカーブに沿って近づいてくるというイメージです。より詳
細には、下記のようになります。
♦ ボラティリティーの期間構造が右上がり(アップワードスローピング)の場合
▸
時間が経ってもボラティリティーの期間構造が変化しないと仮定した場合、満期までの日数が少なくなるにつれて、保有して
いる日経平均 VI 先物の価格は低下していく傾向を保持します(図 1 から図2の変化を参照)。
▸ 日経平均 VI 先物の買い持ちは、プットオプションの買い持ちしたときにオプション価値が時間減衰していく(「セータ」を支
払っている)状況に類似した時間減衰をもつともいえます(図 1, 2 参照)。“5 か条”はこのような傾向を示したものである
ともいえます。
図 1:現時点におけるボラティリティーの期間構造と X
月限の日経平均 VI 先物(イメージ)
図 2:40 日経過後も期間構造が変化しない場合は、X
月限の日経平均 VI 先物価格が下落(イメージ)
40 日間経過
ボラティリティー
ボラティリティー
カーブに沿ってフォワード
ボラティリティーが低下
現時点におけ
る X 月限の
日経平均 VI
先物価格
現時点から 40
日後における X
月限の日経平均
VI 先物価格
X 月限の日経平均 VI 先物の最終清算数値は
この期間におけるボラティリティーとなる。
時間経過とともに、X 月限の日経平均 VI 先物が予
測するボラティリティーが徐々に低下する。
現時点からの時間
現時点からの時間
現時点
Ⅹ月限残存日数
Ⅹ月限残存日数+30 日
Ⅹ月限残存日数+30 日
現時点
Ⅹ月限残存日数
♦ ボラティリティーの期間構造が下がり(ダウンワードスローピング)の場合
▸
時間が経ってもボラティリティーの期間構造が変化しないと仮定した場合、満期までの日数が少なくなるにつれて、保有して
いる日経平均 VI 先物の価格は上昇していく傾向を保持します(図3から図4の変化を参照)。
▸ 市場が落ち着いてくると足元のボラティリティーの値が大きく下落し、期間構造が平坦化してくる傾向があります。(図 4 の
赤破線のシナリオ)。この際、日経平均 VI 先物の価格は低下しますが、期先の方の価格は、期近より下げ方が緩やかなことが
多いことに注意が必要です。そのようなとき日経平均 VI 先物の変動のしかたは限定的になることが知られています。
図3:現時点におけるボラティリティーの期間構造と X
月限の日経平均 VI 先物(イメージ)
図4:40 日経過後も期間構造が変化しない場合は、X
月限の日経平均 VI 先物価格が上昇(イメージ)
40 日間経過
ボラティリティー
ボラティリティー
現時点から 40
日後における X
月限の日経平均
VI 先物価格
カーブに沿ってフォワード
ボラティリティーが上昇
現時点におけ
時間経過とともに、X 月限の日経平均 VI 先物が予
測するボラティリティーが上昇する。
る X 月限の
日経平均 VI
先物価格
現時点からの時間
現時点
Ⅹ月限残存日数
現時点からの時間
現時点
Ⅹ月限残存日数+30 日
Ⅹ月限残存日数+30 日
Ⅹ月限残存日数
※「時間が経ってもボラティリティーの期間構造が変化しない」という仮定は、実際の相場では頻繁に起こることが知られています。“1 か条”で学んだ
ように、日経平均 VI は日経 225 オプションの価格等を利用して算出されるため、日経平均 VI の指数値はオプション価格に大きな影響を受けます。た
とえば平時の場合、オプション市場では比較的満期の近いオプション(超短期満期のオプションではなく 2、3 ヶ月もののオプション等)を好んで買う
投資家が多く、安定的に期間構造がアップワードスローピングの形状を維持しやすいなどの現象が知られています。そしてこのオプション市場での需給
の傾向こそが、日経平均 VI 先物に現れるボラティリティーの期間構造の形状が一定に保たれやすいという特徴を生み、日経平均 VI 先物が期間構造ごと
に変動の仕方について特徴が出やすい要因になっているのです。
10
9.
取引コストが高い場合は投資を避けましょう。流動性の高い時間帯やアスクとビッドの価
格差が狭まっている時に取引しましょう。
日経平均 VI 先物に投資する場合には、取引所での売値(アスク)と買値(ビッド)の価格差に注意が必要で
す。例えば、下記のような板状況において日経平均 VI 先物の購入を検討する場合を想定します。
日経平均 VI 先物(平成 26 年 2 月 24 日午後 2 時 40 分時点)
直近
2014 年 3 月限
2014 年 4 月限
ビット
アスク
建玉
27.00
25.80
26.65
25.80
27.00
26.00
490
417
….
….
….
….
….
2014 年 6 月限
--
25.50
26.60
64
例えば、この状況で 2014 年 4 月限日経平均 VI 先物を購入する場合は、購入価格は 26.00 と
なりますが、手仕舞い売りによって利益を確保するためには、アスクとビッドの価格差の 0.20 以
上、4 月限日経平均 VI 先物価格が上昇する必要があります。このため、自分の相場観に加えて、
この 0.20 の取引コストを踏まえたうえで、取引するべきかを検討することが重要です。
一方、この状況において 2014 年 6 月限日経平均 VI 先物を購入しようとすると、購入価格は
26.60 となりますが、アスクとビッドの価格差(取引コスト)は1.10 以上と、4 月限よりも取
引コストが高くなってしまうことに注意が必要です。このように取引コストが大きい場合は、特に
大きな理由がなければ、より流動性のある銘柄を選択する、もしくは流動性の高い時間帯やアス
クとビッドの価格差が狭まっている時を待って取引するほうが、損失をこうむる確率を減少で
きる可能性が高くなります。
11
10.
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方法”のポイントが押さえられます!
≪日経平均 VI 先物取引制度概要≫
項 目
取引単位
呼値単位
取引時間
限月
取引最終日
最終決済
価格規制
証拠金
概 要
日経平均VI× 10,000 円
0.05 ポイント (1ティックの金額は 500 円)
日中立会: 午前9時~午後3時15分
(ナイト・セッション無し)
直近の連続した8か月
限月の翌月の第2金曜日(休業日にあたる場合は繰上げ)の 30 日前となる日の前営業日
取引最終日の翌営業日における日経平均 VI の平均値に基づいた特別な数値による差金決済
制限値幅:10ポイント(以降、拡大ごとに5ポイント)
即時約定可能値幅:0.5ポイント
SPANによる計算。他商品とのリスク相殺は認めない。
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ご注意
日経平均 VI の変動の特性上、日経平均 VI 先物の売方には、以下のような特有のリスクが存在しますので資産・経験が
十分でない投資家の皆様が日経平均 VI 先物を利用する際には、売建てを避けてください。
・日経平均VIは、相場の下落時に急上昇するという特徴があります。
・日経平均VIは、急上昇した後に数値が一定のレンジ(20~30 程度)に回帰するという特徴を持っています。
下の実例では、1日で日経平均株価が約6%低下したのに比べ、日経平均VIは約 74%上昇しました。日経平均VIは、こ
のように短期間で急激に数値が変動するため、リアルタイムで価格情報を入手できない環境での取引は推奨されません。
日経平均VIは、日経平均株価など株価指数とは数値の変動の特徴が大きく異なっています。日経平均VIの特徴につい
て十分にご理解の上で、日経平均VI先物取引を行って頂きますようお願いいたします。
●免責事項: 本資料は、先物取引に関する概要・市場状況等の説明のみを目的としたもので、先物取引の勧誘を目的として
いるものではありません。なお、先物取引においては、各商品の価格の変動等により損失が生ずるおそれがあります。先物
取引の利用においては、取引金額が顧客の差し入れる証拠金の額に比べて大きいため、差し入れた証拠金以上の損失が
生ずるおそれがあります。相場の変動等により証拠金額に不足が生じた場合には追加差し入れが必要となります。 先物取
引を行うに際しては、あらかじめ取引先の金融商品取引業者等より交付される契約締結前交付書面等の書面の内容を十
分にお読みいただき、商品の性質、取引の仕組み、手数料及びリスクの存在等を十分に御理解いただいたうえで、御自身
の判断と責任で行っていただきますようお願い申し上げます。
●「日経平均株価」は、株式会社日本経済新聞社(以下「日本経済新聞社」という。)によって独自に開発された手法によって、
算出される著作物であり、日本経済新聞社は、「日経平均株価」自体及び「日経平均株価」を算出する手法に対して、著作
権その他一切の知的財産権を有しています。「日経平均株価」を対象とする株価指数先物取引、及び株価指数オプション取
引に関するすべての事業、取引規制及び実施については、専ら株式会社大阪取引所及びその参加者の責任であり、それら
について日本経済新聞社は、一切の義務ないし責任を負いません。日本経済新聞社は、「日経平均株価」を継続的に公表
する義務を負うものではなく、公表の誤謬、遅延又は中断に関して、責任を負いません。日本経済新聞社は、「日経平均株
価」の構成銘柄、計算方法、その他「日経平均株価」の内容を変える権利及び公表を停止する権利を有しています。
● 「日経平均ボラティリティー・インデックス」(以下「日経平均VI」という。)は、株式会社日本経済新聞社(以下「日本経済新聞
社」という。)によって独自に開発された手法によって、算出される著作物であり、日本経済新聞社は日経平均VI自体及び日
経平均VIを算出する手法に対して、著作権その他一切の知的財産権を有しています。日経平均VIを対象とする指数先物取
引に関するすべての事業、取引規制及び実施については、専ら株式会社大阪取引所及びその参加者の責任であり、それら
について日本経済新聞社は一切の義務ないし責任を負いません。日本経済新聞社は、日経平均VIを継続的に公表する義
務を負うものではなく、公表の誤謬、遅延又は中断に関して、責任を負いません。日本経済新聞社は、日経平均VIの計算方
法、その他日経平均VIの内容を変える権利及び公表を停止する権利を有しています。
日経平均ボラティリティー・インデックス先物取引の利用のコツ 10 か条
平成 26 年 3 月 第 1 版
編集・発行 ㈱大阪取引所
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