品質設計特論 No. 9 和歌山大学システム工学研究科 鈴木 新 木曜日 4限目 A203教室 動的SN比の考え方 • バネはかり – 測りたいもの(測定対象)とバネの伸びの関係 → 比例関係 良いはかりは • 同じ対象は同じ:誤差が小さい • 違う対象は違う:伸び(感度)が大きい 1kg どのようなはかりが良いか? 2kg 1 おもりと伸びの関係 伸び 𝑦 大きく 小さく 𝛽 おもり 𝑀 おもさの違いは 大きく現れた方が 良い 𝑦 = 𝛽𝑀 各おもりにおいて 測定のばらつきは 小さい方が良い 産業的に有効と考えられるばねはかり 伸び 先ほどと比べて 明らかに差が大きい 𝑦 𝛽 おもり 𝑀 2 実測値と1次式のずれ y M より e 𝑦 y M 0 となる. しかし,実際は誤差, e y M (ex : y1 M 1 ) 𝑀1 𝑀2 𝑀3 が存在 つまり 最小2乗法 e を最小にする が直線の傾き (以前に説明したもっとも平均 的なところを通る) 最小二乗法 n y M 2 i i 1 n i y12 2M 1 y1 2 M 12 n y 2 M i yi i 1 2 i i 1 2 n M i 1 2 i Se で微分 n n d S e 2 M i yi 2 M i2 0 d i 1 i 1 M y M i i 2 i 3 動特性SN比の重要な特性(前提条件) 𝑦 𝛽 𝑀 • 因果の向き:Mから y へ 対象システムに M を入力して得られる出力 y を評価する 誤差は各 M における推定値と実測値の差(2乗の) • ゼロ点比例式 入力されるエネルギー M が理想とする出力 y に変換され たかを評価する 理想関係に近い=利点 𝑦 𝑦 𝑀1 𝑀2 𝑀3 𝑀1 𝑀2 𝑀3 どちらが良いデータ(システム)か? 機能が理想関係に近いと 設計しやすい,ロバスト,省エネ,・・・ 4 信号(感度):SN比のS (Signal) e3 𝑦 y2 y1 𝛽 y3 𝑀1 𝑀2 𝑀3 傾き 𝛽 が大きければ良い 相関が負の場合はマイナス に,エネルギーは2乗で扱う, 信号とノイズの分離・・・2乗 和の分解 傾きの2乗を信号とする(実 際は不偏推定量) M y 2 i 2 i Mi 2 ノイズ(誤差):SN比のN (Noise) y e3 M1 積算時に正負で相殺されな いように,エネルギーは2乗 で扱う,信号とノイズの分 離・・・2乗和の分解 y2 y1 𝛽 y3 M2 実測値 𝑦 と推定値 𝛽𝑀 の 差が小さければ良い M3 誤差の2乗(分散と同じ)をノ イズとする y M 2 i i n 1 5 動特性SN比(誤差条件無し) M i yi 2 2 Mi 信号 ノイズ 2 y M 2 i i n 1 信号とノイズの比に足し算の関係を成立させるため 2 にlog化 M i yi 2 2 Mi 10 log 10 log 2 Ve yi M i n 1 動特性SN比の2乗和を考える y e3 全ての出力 M1 M2 M3 yi の2乗和は ST yi2 y2 y1 𝛽 y3 これはどんな成分に分解で きるか? 直線上の点,そこからの誤差。つまり, 全2乗の積算値=直線上の積算値+誤差の積算値 yi2 2 M i2 2 y M i i 6 2乗和の分解 全ての出力 yi の2乗和は ST yi2 S Se S は比例項変動 S e は誤差変動 理想値の2乗の項と ばらつきの2乗の項に分解 ST S S e 2 M i2 yi M i 2 2乗和の分解を利用してSN比を表現 ST S S e 2 M i2 yi M i 2 M i yi S 2 M M i2 2 i 10 log 10 log 10 log 2 ST S Ve y M i i n 1 n 1 2 7 SN比(不偏推定値補正) 𝛽 は平均的に大きくも小さくもない推定値 • 期待値をみると E 2 2 V ( ) V ( ) の不偏推定値は Ve M i2 正のバイアス有 正のバイアスを引いてあげるとSN比は 10 log S Ve M i2 M i2 Ve 10 log S Ve M i2 Ve 補正値の算出 y x e x y x x e x y xe x x xe b x xe b x i i i 2 i i i i i i i i i 2 i 2 i i i 2 i 2 2 i i 2 i 誤差の直交性を利用 Ve xi2 今までの書き方に合 わせると Ve M i2 8 機能性評価の方法(復習) デジタルカメラの機能は x a y 被写体 デジカメ 撮影画像 y ax 出力 入力 被写体の寸法 寸法の転写性 被写体の色 色の転写性 撮影画像の寸法 撮影画像の色 17 演習(復習) • 2つの班に分かれる • 機能を乱すノイズを決める – 照明環境(日光 or 蛍光灯) – 撮影角度(真上 or 斜め45℃) – 背景(白バック or 黒バック) – 撮影距離(15cm or 30cm)・・・ 真上 スケール 上側 • それぞれのノイズ条件において自分のカメラでグレースケー ルを撮影しPCに取り込む。 A M 19 読み取る場所は 「A」「M」「19」の色 18 9 𝑦 SN比計算法(詳細は後日) 𝑦23 𝑁2 L12 L22 S N S 2r S e ST S S N 𝑁1 𝑦13 𝑀1 𝑀2 𝑀3 33, 116, 242 r M 12 M 22 L1 M 1 y11 M 2 y12 L2 M 1 y21 M 2 y22 2 ST y112 y122 y21 ( L1 L2 ) 2 S 2r Ve VN Se 2(3 1) S e S N 2 3 1 1 ( S Ve ) 2 r dB 10 log VN 上記のSN比を計算し考察 消費者のことを考えた設計へ t cT m W 沸騰までの時間は変化する! 季節,地域,・・・ 冷蔵庫内で実験,評価 可愛い子には旅をさせよ! ばらつきの原因はそのまま 従来には無い考え方 10 誤差を考えた(取り入れた)評価 • バネはかりの評価では誤差が無かった – のびを測る簡単なシステム – 乱れる要因が少ない • 紙飛行機では? – 投げる人,風,紙,他・・・ • エンジンでは? – 温度,湿度,燃料の質,運転の方法,部品のばら つき,他・・・ • デジカメでは? – 照明,背景,撮影距離,他・・・ 意図的に誤差条件を与える • 例:電気ケトル – 初期水温が低いと遅い→冷水,外気温が低いと 遅い→風,冬場,古いヒーターは遅い→劣化(マ イナス条件) – 電圧が高いと速い→高電圧(プラス条件) • これらを誤差因子と呼ぶ – 設計によって(設計者が)変更できない因子 – 外乱:気温や風,内乱:部品の劣化やばらつき 11 誤差因子を考える • まずはばらつきについて考える • ばらつきの要因は何か?消費者の立場で • ケトルで湯を沸かすとき ケトル内部のばらつき 【内乱】 ヒーター消費電力や摩耗劣化,金属板の厚み,部品 ばらつき(抵抗値),部品精度(熱の逃げ),他 ケトル外部のばらつき 【外乱】 外気温の変化,水温の変化,風による冷却,他 誤差因子 • • 設計パラメータ:設計者が自由に変更可能 誤差因子:設計者が変更不可(手出しできない) 例: 1. 季節による温度,湿度の変化 (外乱) 2. 抵抗のばらつきと経時変化 (内乱) • 単純繰り返しとは違う意図的な誤差を与え評価 – わざとばらつかせるという考え方 → 画期的! 誤差(内乱,外乱) 水の量 𝑀 𝛽 沸騰までの時間 𝑦 例:ケトル 12 誤差因子導入とロバストネス • 実用誤差を考慮 成果 タグチメソッドの最大の Mが大きくなれば誤差も 大きくなる(当たり前) 𝑁2 𝑦 𝑁1 しかし,誤差が意図した ものであれば解釈は異 なる(繰返しは無意味) 𝑀1 𝑀2 𝑀3 可愛い子には旅をさせよ! 意図的誤差を与え評価 誤差因子の設定(例:ケトル) • 誤差因子は外気温(初期水温) – 外気温は設計者が変更できない(使用者によって変化) 𝑁1 と 𝑁2 の差が最小と なる組み合わせを求める 𝑁2 𝑦 𝑁1 𝑀1 𝑀2 𝑀3 外気温が低温 熱の逃げが多いために,出 力(沸騰時間)は大きく(長 く)なる 外気温が高温 熱の逃げが少ないために, 出力(沸騰時間)は小さく (短く)なる 13 誤差因子有SN比の概念 𝑁2 𝑦 𝑁1 本来のエネルギー S 誤差因子によるばらつき S N 比例関係からのばらつき 𝑀1 𝑀2 Se 𝑀3 ST S S N S e 二乗和の分解 誤差因子の導入 𝑁2 𝑦23 𝑦 𝑦22 𝑦21 𝑦11 𝑀1 S 傾き 𝛽 が変動 𝑁1 𝑦12 𝑀2 は比例項変動 𝑦13 𝑀3 全ての出力 𝑦𝑖𝑗 の2乗和は ST yij2 S S e S N S e は誤差変動 S N は誤差による変動 14 二乗和の分解1 𝛽2 ST S Se S N 𝑁2 𝑦23 𝑦 𝑦22 𝑦21 𝑦11 𝑀1 𝛽 1 𝑦13 𝛽1 𝑀2 𝛽2 𝑦22 𝑦11 𝑀1 M j y1 j M M y M 2 j j 2j 2 j ST S Se S N 𝛽 𝑁1 𝑀2 M j yij S 2 2 M 2j 𝑁2 𝑦23 𝑦12 2 𝑀3 二乗和の分解2 𝑦21 𝑁1 𝑦12 j 1, 2 , 3 2 M 2j 回帰直線上の点 𝑦 i 1, 2 𝑦13 𝛽1 誤差因子による変化 S N M j i M j 2 M 2j i 2 𝑀3 原点比例式の •傾きが共通 𝛽 の回帰変動と •傾きが異なる 𝛽1,2 回帰変動の差 【誤差因子による変動成分】 15 二乗和の分解3 𝛽2 𝑦 𝑁2 𝑦23 𝑦22 𝑦21 𝑀1 S e ST S S N 𝑁1 𝑀2 y ji M i j 𝑦13 𝑦12 𝑦11 ST S Se S N 𝛽 2 𝛽1 Se を自由度で割る(不偏分散) 3個のデータから1個の直線 𝑀3 それらが2個あるので 𝑗 = 1,2,3 𝑖 = 1,2 Ve Se 23 1 誤差因子SN比1 不偏推定値補正をしたSN比(誤差因子数:I,信号水準:J) シグナルは傾き S I 2 M 2j 2 S I M 2j ノイズはばらつきをすべて合計し自由度で割る S N S e IJ 1 で割る 全ノイズの自由度は IJ 1 S e の自由度は I ( J 1) を自由度 N S N S e IJ 1 16 誤差因子SN比2 不偏推定値補正をしたSN比(誤差因子数:I,信号水準:J) S 10 log S , S / IJ 1 Ve / I M 2j N e Se Ve I ( J 1 ) 誤差無と同じく分子は不偏推定値 分子は正のバイアスを引いた形 海外では単なる傾きの2乗が多い 本講義では正のバイアスを引いた形を用いる 誤差因子有SN比計算法1 1 S Ve I M 2j 10 log 1 S S IJ 1 N e Ve Se I ( J 1) を求める 𝑆𝑒 を求めなければいけない S e ST S S N ST yij2 は既知の値 (実測値)なので求めること可能 S I 2 M 2j なので 𝛽 2 を求める 𝛽 は全データIJ個の傾き 17 誤差因子有SN比計算法2 S I 2 M 2j M j yij IM となり,次に i Se ST S S N S N を考える M j yij 2 1 M j S N M j i Se も求まるので I ( J 1) Ve 2 j M y M M j 1j 2 j 2 j ST , S , S N を得たので これによりSN比が算出できた 1 S Ve I M 2j 10 log 1 S S IJ 1 N e 信号水準 𝐽 誤差水準 𝐼 SN比(誤差因子有無の比較) 不偏推定値補正をした推定値(誤差因子無し) I は繰り返し数 S 10 log Ve / I M 2j Ve S , Ve e IJ 1 不偏推定値補正をした推定値(誤差因子有り) I は誤差因子数 S 10 log S , S / IJ 1 Ve / I M 2j N e Se Ve I ( J 1 ) 信号 𝑗 = 1,2, ⋯ , 𝐽 誤差or繰り返し 𝑖 = 1,2, ⋯ , 𝐼 18 SN比について • 機能性の評価や誤差因子の考え方など(聞 いてしまえば)当たり前に感じるが最初に提 案することは難しい → 独創的 • 設計法が体系的にまとめられ誰でも(それな りの)解を得ることができる • ただSN比についてはまだ議論の余地がある (期待値のバイアスなど)というか必要だ • 新しいSN比を考えていく必要がある(例えば エネルギー比型など) 実験計画 • • • • • SN比は理解できた(?) どうやってSN比が高いシステムを設計するか? 設計の手順も規定されている(おせっかい?) タグチメソッドの流れを思い出す システム選択 創造したものを調節する方法 – 技術者の知恵,創造 • パラメータ設計 つまり最適化 調節には直交表を利用 – タグチメソッドが提供する設計手順 • 許容差設計 – タグチメソッドが提供する安全率,コストの設定 19 直交表 • 直交とはすべてがバランス良く組み合わされる • 直交表の作成には一貫した理論は無い 問題 大佐,中佐,少佐が3人ずついる。 3×3配列にバランスよく並べよ。 大 中 少 中 少 大 少 大 中 直交表 • 直交とはすべてがバランス良く組み合わされる • 直交表の作成には一貫した理論は無い 問題 大佐,中佐,少佐が3人ずついる。 3×3配列にバランスよく並べよ。 L1 L2 L3 L4 A 1 1 2 2 B 1 2 1 2 C 1 2 2 1 20
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