夏秋なす栽培を始めるにあたっての注意点と定植前の準備 【H26.5.23 新規栽培者講習会】 【H26.10.7 収穫後半のほ場】 平成26年12月24日 芳賀農業振興事務所 -1- 1.夏秋なすの経営的特徴 ◆栽培暦 月 主な 作業 1 2 3 4 5 ○ ▽ 播種 移植 ○ ▽ △ 播種 移植 定植 (トンネル栽培) 6 7 △ 定植 収 8 収 穫 9 10 穫 期 期 間 11 12 間 ※セル苗購入の場合は▽移植から、定植苗購入の場合は△定植からの作業となる。 注)収穫期間は、6 月から 11 月中旬まで(霜が降るまで)。 トンネル栽培は、作業が 1 か月前進する。 ◆月別、作業別10a当たり労働時間(農業経営診断指標 平成24年版より) ○月別労働時間 月 1 2 3 4 5 6 7 8 労働時間(hr) 2 8.5 4.5 11 25.5 32 169 186 割 合(%) 0.2 1.0 0.6 1.4 3.2 4.0 21.0 23.2 9 10 11 計 188.5 138.5 37.5 803 23.5 4.7 100 出荷 後片 付け 17.2 ○作業別労働時間 作業内容 労働時間(hr) 割 合(%) 育苗 定 植 定植 かん水 支柱立て 葉かき 追肥 準 備 換 気 誘引 摘心 防除 収 穫 選別 調 整 荷造 16 13.5 14.5 7.5 32.5 54.5 4 12 371.5 218 21.5 37.5 2.0 1.7 1.8 0.9 4.0 6.8 0.5 1.5 46.3 27.1 2.7 4.7 (1)長所 ①露地栽培であるため、施設栽培と比べると初期投資が少ない。 ②他の露地野菜と比べて、まとまった収入が得られる。(所得率は、約60%) (2)短所 ①長期間の栽培であるため、整枝剪定、収穫、調整などに多くの労力がかかる。 なすは、手をいれれば、たくさんの実をつけ期待に応えてくれる。 しかし、手を抜くと、すぐに収量・品質が落ちる作物!! -2- 2.必要な資材と初年度の10a当たりのおおまかな必要経費 (1) ほ場で使用する主な資材 ○仮支柱、マルチ 仮支柱 定植直後に風等に揺られて苗が倒伏するのを防ぐのに用いる。 黒マルチ 雑草の発生を防いだり、乾燥、雨による肥料の流亡を防ぐ等の 効果がある。 ○V字支柱 主枝を左右に振り分けて、長期間良好な受光態勢を保 ち、草勢と果実品質を維持するために用いる。 ○防風ネット、防風ネット用支柱 風による果実のスレや枝折れを防ぐため、ほ場周辺に 設置する。 ○フラワーネット、または、マイカー線 主枝を誘引するために用いる。(いずれかの方法 を選択) -3- (2)栽培管理に使用する主な資材 ○ハサミ ○テープナー ○テープナー針 ○動力噴霧機 ○収穫用台車 ○コンテナ ○テープナーテープ (3)調整・出荷に使用する主な資材 ○5㎏段ボール箱 ○プリメラ ○等級印 ○スタンプインク等 + 定植苗、肥料、農薬 夏秋なすを10a作付けするのに初年度に必要な経費は 70~80万円 3.夏秋なすの栽培目標 ○収量(10a当たり) : 10t以上 (5㎏箱×2,000箱) 1株当たり5㎏箱で3箱 【参考:JAはが野なす部会過去10年間の年次別平均単収及び㎏単価の推移】 夏秋なす 年 次 単収 平成 26 年産 平成 25 年産 平成 24 年産 6.7 t 6.0 t 6.6 t ㎏単価 282 円 ★平成26年産なす部会実績 ○収量(10a当たり) 平均収量 : 6.7t (栽培開始3年以内の生産者 最高収量 :14.1t (栽培開始3年以内の生産者 6.8 t 10.7t) 289 円 ○販売額(10a当たり) 平均販売額 : 190万円 233 円 (栽培開始3年以内の生産者 平成 23 年産 6.3t) 最高販売額 291 円 : 422万円 (栽培開始3年以内の生産者 平成 22 年産 7.0 t 258 円 平成 21 年産 7.1 t 240 円 平成 20 年産 6.9 t 214 円 平成 19 年産 6.5 t 261 円 平成 18 年産 6.1 t 267 円 平成 17 年産 7.3 t 203 円 177万円) 345万円) 過去10年間の㎏平均単価254円、収 量6.7tで計算すると10a当たりの販売 額は170万円。所得率60%で計算する と10a当たりの所得は102万円となる。 ※JAはが野なす部会反省検討会資料より -4- 4.夏秋なす栽培を始めるにあたっての注意点と定植前の準備 (1)注意点 その1 最初から大規模作付けは禁物!! 長期間の栽培となり、特に、最盛期は収穫作業は毎日、併せて,枝葉の整理 等の細かな作業が続くことから、作業が後手後手になりやすい。作業の遅れは、 収量、品質にも大きく影響するため、栽培開始1年目は、10a程度の作付けと し、2年目以降から増やしていくことが無難。 参考までに、平成26年産のJAはが野なす部会、夏秋なす栽培者(235名)の 1戸当たりの平均作付け面積は、13.2a(平成26年産作付1年目の1戸当たりの 平均作付面積は7.8a)となっている。 その2 ほ場の選定、なすは連作を嫌がる作物!! なすは、連作を嫌う作物であるため、少な くとも3年以上なす又はなす科の作物(トマ ト、ジャガイモ、トウガラシ、シシトウ、ピーマ ン、パプリカ、ペピーノ、タバコ等)を作付け していないほ場を選ぶ。 連作を続けると、収量が低下したり、土壌 病害(青枯病、半身萎凋病)が発生しやすく なる。 【H25.10.4土壌病害による被害を受けたほ場】 (2)定植前(1~4月)の準備と手順 ①ほ場を選ぶ ○排水が良くて、根が深く伸びることから、作土が深く、軟らかく、そして、最近なす 科の作物を作付けしていないほ場を選ぶ。 ○かん水の可能なほ場 ↓ ②作付けほ場の土壌診断(JAに依頼) ○土壌診断の結果に基づいて肥料を施用することで、栽培期間中に生育に異常が発 生した場合の原因究明にも役立つため必ず実施する。 ↓ ③定植苗の注文(JAに依頼) 〈10a当たりの定植本数の目安〉 栽植距離 定植本数 畝幅 210 ㎝ × 株間 70 ㎝ 680 株 畝幅 220 ㎝ × 株間 70 ㎝ 640 株 畝幅 230 ㎝ × 株間 70 ㎝ 620 株 畝幅 230 ㎝ × 株間 75 ㎝ 570 株 -5- 【作付け品種】 ○品種:穂木(千両2号) 台木:(赤なす):台木別の特性(下記参照) ※千両2号:昭和39年にタキイ種苗で育成された古い品種であるが、長卵形なすの 代表的品種として、全国で最も広く栽培されている品種。 ※接木栽培:なすを栽培するためには、土壌伝染性の病害を防ぐために、病気に強い 品種を台木にして品質や収量の優れた品種(穂木)を接いだ『接木栽培』が行われて いる。 【参考:台木の特性比較】 低 耐 草 温 湿 勢 伸 性 長 性 抵抗性・耐病性 台木名 青 半 半 褐 ネ 特 徴 枯身 枯 色 コ 病萎 病 腐 ブ 凋 敗 セ 病 病 ン チ ュ ウ 赤なす △ ○ ・栽培期間をとおして草勢が安定する。 ○ △ 強 ・新しいほ場、または、過去に土壌病害の発生がないほ場で 用いる。 ・湿気に対してはやや弱いため、畑作に適する。 トルバム ○ ○ ○ ○ ○ ・草勢は強く、生育中後期に特に強くなる。 △ ○ 極 ・青枯病と半身萎凋病の発生が心配なときに有効。 強 ・土壌病害とネコブセンチュウに強い。 ・へた枯れ、葉枯れが出やすい。 ・マグネシウム欠乏と見られる葉の黄化が発生しやすい。 トナシム ○ ○ ○ カレヘン ○ ○ 台太郎 耐病VF *凡例 ○ ○ △ ○ ○:抵抗性 ○ ・トルバムビガーでは草勢が強すぎる場合に有効。 ・葉の黄化、へた枯れ、葉枯れの発生は、トルバムビガーと同 様に発生しやすい。 ・青枯病と半身萎凋病の発生が心配され、草勢を抑え、低 温伸長性を求める場合に有効。 ・青枯病対策を優先する場合に有効。 ・半身萎凋病に抵抗性がない。 ・半身萎凋病と半枯病に抵抗性があるが青枯病に抵抗性が ない。 △:耐病性 △ ○ 極 強 ○ ○ 弱 △ ○ 強 ◎ △ 強 ○『抵抗性』のほうが『耐病性』より病気に強い。『抵抗性』は、病原菌を接種しても病徴が出ない くらいに強いが、『耐病性』は、病原菌が少なければ発病しない、発病はするが程度が軽い、また は、感染はするが発病は遅いレベル。 ↓ -6- ④土壌診断結果に基づいた堆肥、基肥の施用 ○堆肥は、糞尿臭(悪臭)がしない完熟堆肥を使用する。なお、家畜糞堆肥は、種類に よって窒素含量が違うため注意する。 (窒素が多い) 鶏ふん > 豚ぷん > 牛ふん 〈堆肥投入量の目安(㎏/10a)〉 牛ふん堆肥 3,000kg 豚ぷん堆肥 1,000kg 鶏ふん堆肥 500kg (窒素が少ない) ○堆肥の施用は、定植予定の1か月前まで、基肥の施用は、定植予定の2週間前まで に完了させる。 ↓ ⑤防風ネットの設置 ほ場空間の取り方 2m 2m ↓ ⑥定植ベッドの作成及びマルチの被覆 ○ベッドの作り方(図参照) 肩 20cm うねの高さ 20cm 120cm (150cm 幅マルチ) 通路幅 50cm ~ 70cm うね幅 210cm ~ 230cm *ベッドの方向 → ほ場の条件にもよるが、南北畦の方が光線が均一に差し込むため理想。 ○マルチの被覆 降雨後、ほ場が湿っている時に行い、土壌水分と地温の確保に努める。 -7-
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