Title トラッキング・ストックと非支配持分 : 負債と資本の区 別

トラッキング・ストックと非支配持分 : 負債と資本の区
別に関する個別上と連結上の議論における接点
Title
Author(s)
Citation
産業経理 (2011), 70(4): 54-60
Issue Date
URL
野口, 晃弘; 二村, 雅子
2011-01
http://hdl.handle.net/10252/4881
Rights
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Barrel - Otaru University of Commerce Academic Collections
トラッキング睡ストックと非 3
互理持分
一負{賓と資本の区腕に関する舗関上と
連結上の議論における接点一
名古屋大学教授聖子口
名古屋大学大学続
博士課程後期課程二村
1.はじめに
訳として表示することも、企業結合専門委員会
で検討されている O
負債と資本の区別について論じる際に、連結
従来、負債と資本の区別については、優先株
財務諸表特有の論点となってきたのが、非支配
式、新株予約権、取得請求権あるいは取得条項
持分(少数株主持分)である O 企 業 会 計 基 準 委
を中心として、個別財務諸表であるか連結財務
員会では、平成 2
1年 1
2月 1
0日に少数株主持
諸表であるか特に意識する必要なく取り上げら
分を資本とする方向で暫定合意がなされ、平成
れてきた。これに対し、少数株主持分は連結財
2
2年 2月 1
2日には、国際的な会計基準に合わ
務諸表に特有の項目であったため、それらの議
せて少数株主持分を非支配持分へ名称変更する
論とは藍接結びつけられることなく、論じられ
ことについても審議されている O
てきたように思われる O 企業会計基準委員会で
わが国では、昭和 5
0年に連結財務諸表原則
が設定された当初、少数株主持分は負債の部に
も、少数株主持分については企業結合専門委員
会を中心に議論されてきた。
表示するように指示されていた(第関連結貸借
しかし、倍加財務諸表における優先株式と連
対関表の作成基準六表示方法1)0 それが、平
結財務諸表における非支配持分の扱いの整合
成 9年の連結財務諸表原則の改訂に伴い、負債
性が問題となる金融商品は過去に存在してお
の部と資本の部の中間に底分されて記載される
り、両者を組み合わせた議論も必要となってい
ようになり(第四連結貸借対照表の作成基準九
るO それがトラッキング・ストック (
t
r
a
c
k
i
n
g
表示方法1)、さらに平成 1
7年 の 純 資 産 会 計
s
t
o
c
k
.特定事業連動株式)であり、本稿では、単
基準によって中関区分から純資産の部の中に記
に個別と連結に共通する会計問題を取り上げる
)
。
載場所が変更された(企業会計基準第 5号 7項
のではなく、個別財務諸表における優先株式の
そして、平成 2
2年 2月 1
2日の企業会計基準委
扱いと連結財務諸表における非支配持分の扱い
会審議資料によれば、株主資本とその他の包
の整合性という視点から、負債と資本の区別を
括和益累計額に係る非支配持分をそれぞれの内
5
4 (野口晃弘・二村雅子)
論じる。
2
. トラッキング@ストック
トラッキング・ストックとは、会社が有する
ており (Murphy,1
9
8
9,p
.
6
5
)、対象となる完全
子会社の資産に対するトラッキング・ストック
t
.a
l
.
の権利の弱さも指摘されている (Loguee
特定の完全子会社・事業部門等の業績にのみ価
1
9
9
6, pp.
4
6
4
7
)0 1990年代初め、その点を改良
値が連動するように設計された株式である(江
t
a
r
g
e
t
e
ds
t
o
c
k
) と呼ば
したターゲテッド株式 (
その 1諸矢は、 1984年にゼネ
れるトラッキング・ストックがリーマン・ブ
頭, 2
0
0
9,1
3
9頁)0
ラル・モーターズ (GM) が発行したクラス E
ラザーズによって開発され、用いられるよう
4
朱式であり、エレクトロニック・データ・シス
H
a
s
s,1
9
9
6,p.
2
0
9
0
)0 1
9
9
1年にじSX
になった (
テムズ (EDS) を株式交換によって取得するた
が USスチール・グループ普通株式 (USXU
.S
.
9
8
4,p
.1
.3
7
)0 クラス
めのものであった (Gary,1
S
t
e
e
lGroupCommonS
t
o
c
k
) 及びマラソン・グ
E株式の配当は、 EDSが計 kした利主主の金額
ルーフ。普通株式 WSX-MarathonGroupCommon
に基づいて決定されるため、クラス E株式を
9
9
2年にデリー・グループ普通株式
S
t
o
c
k
)、翌 1
保有すれば EDSへ投資したのと同様の効果が
(
U
S
X
D
e
l
h
iG
r
o
u
pCommonS
t
o
c
k
) を発行し、 1
9
9
3
得られるように設計されていた。 1984年の年
年には 3社 (Loguee
t
.a
l
.1996,p
.
5
0T
a
b
l
e2
)、そ
次報告書によれば、クラス E株式への現金配
れ以降も 1998年まで毎年数社程度で和用され
当は、 G Mによる取得後に EDS及びその子会
E
l
d
e
randWestra,2
0
0
0,p.
41Table1
)0
ていた (
社が計上した利益(パーチェス法の影響額を除い
1999年にトラッキング・ストックの発行は
た EDS帰属連結利益)から支払われると説明さ
急増し、注目されることになるが、それは電子
G
e
n
e
r
a
lMotors
,A
nnualRφo
r
t1984
,
れている (
商取引分野への多角化を進める上で必要となる
p
.
2
6,ProQuestH
i
s
t
o
r
i
c
a
lAnnualR
e
p
o
r
t
s
)0
多額の資本を調達するためであったと説明され
G Mがトラッキング・ストックを発行した自
L
e
v
i
n
s
o
h
n,2
0
0
0,p
.
6
4
)。その頃、松古 (
1
9
9
8
)
ている (
的は、 EDSを取得するための資金調達と、取
や橋本(19
9
9,2
0
0
0
) のように、わが国にもトラッ
得後に EDSから人材が流出してしまうのを防
キング・ストックについて、当時進められてい
.1999,p
.
4
6
)0 翌 1985
ぐことにあった (Banham
た事業再編あるいは会社分割法制の整備と関連
年にも、 G Mは企業買収を進めるため、ヒュー
させて、本格的に紹介する文献が現れた。
l
e
c
t
r
o
n
i
c
s
)を
ズ・エレクトロニクス (HughesE
わが国でのトラッキング・ストック第 1号
対象に同様のトラッキング・ストックである
は
、 2001年にソニーが発行した子会社連動株
クラス豆株式を発行している O このようにク
式であった。それは国内の 100%子会社である
ラス E株式、クラス E株式とアルファベット
ソニーコミュニケーションネットワーク (SCN)
が付けられていたため、アルファベット株式
を対象としたものであり、議決権のある非参加
(
a
l
p
h
a
b
e
ts
t
o
c
k
) あるいはレター株式 O
e
t
t
e
r
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d
累積的種類株式である。配当は、対象子会社
s
t
o
c
k
) とも呼ばれている (
H
a
s
s,1
9
9
6,p
.
2
0
9
0
)0
の普通株式の配当金額に基づき、普通株主に先
1980年代には G Mが 2銘柄(クラス E と H)
立って支払われる。残余財産の分配についても、
を発行しただけで、追随する企業はすぐには現
対象子会社の株式は、普通株主に先立つて、分
れなかった。その理由としては、事業部門間取
配されることになっている
引における利益相反の問題があったと考えられ
及び一斉消却・転換に関する条項が設けられて
O
そして、任意消却
産業経理 V0.
1
7
0N0.
4(
'
I
1
.1
) 5
5
いた(ソニー株式会社「ソニーコミュニケーショ
では、新たな資金を調達することにはならない
ンネットワーク(株)を対象とする子会社連動株式
0
0
1,p.
4
3
)0
(
F
r
a
n
k,2
5日
)
。
発行決議に関するお知らせJ2
0
0
1年 5月 1
トラッキング・ストックや支配関係を維持し
当時の商法(平成 2年改正) 222条 2項では、
たままの子会社上場に関する実証研究では、短
株式の内容について定款に記載することが求め
期的には良い材料としての反応が見られるのに、
られており、ソニーの子会社連動株式でも、同
長期的にはむしろ負の異常収益率が観察されて
条問項但書に従い、配当の上限金額が定められ
.
ta
,
.
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0
0
9,p
.
2
8
)oLogueet
.a
.
l(
1
9
9
6
)は
、
いる (
H
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0 トラッキング・ストッ
ていた(康問, 2
0
0
2,1
4頁)
トラッキング・ストック採用公表前後の株価を
クに関して、商法上どの範囲で発行が認められ
調査し、当時の限られたサンプルについてでは
るか不明確であったという問題については、平
あったが、正の反応、が見られたことを示してい
成1
3年改正商法 222条 3項で、優先配当の算
る。その後、 B
i
l
e
t
tandMauer (
2
0
0
0
)、D'Souza
定の基準の要項を定めれば足りるようになり、
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d
e
randWestra (
2
0
0
0
)な
andJ
a
c
o
b(
2
0
0
0
)、E
また、 242条が削除されたことによって無議決
どで、
権株式に対する規制も緩和された(何時, 2
0
0
1,
て、統計的に有意な正の異常収益率を観測して
8
9
9
0頁;蹟岡, 2
0
0
2,1
4頁
)
。
いる
トラッキング・ストック採用公表に伴っ
O
なお、わが国ではその後追随する事・例が見ら
これに対し、 Boonee
.a
t
.
l(
2
0
0
3
) は、支配関
れず、ソニーの子会社連動株式も 2005年にソ
係を維持したままの子会社上場やトラッキン
ニーの普通株式に一斉転換され、 SCN普通株
グ・ストックを発行した企業の経営成績が改善
式が株式公開されて、
されないという調査結果を示しており、 B
i
l
l
e
t
t
は姿を消している
トラッキング・ストック
andV
i
j
h(
2
0
0
4
)は
、
O
トラッキング・ストック
発行後 3年間の株価収益率を分析し、統計的
3
. トラッキング・ストックと非支配
持分との対比
に有意で、はなかったものの、比較対象とした企
業群よりも収益率が低かったという結果を示し
2
0
0
4
) は、長期的
ている o ClaytonandQian (
トラッキング・ストックは、効果のよく叡た
には有意な差は見られないとしており、子会社
組織再編手段である子会社上場 (
e
q
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i
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a
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e
-
上場を対象とした V
i
j
h(
1
9
9
9
) でも同様の結果
o
u
t
s
) や株主に子会社株式を配当するという方
となっている
式による会社分割(スピン・オフ;s
p
i
n
o
f
f
s
)と
フに関する実証研究でも、短期的には株価に正
対比して論じられている
O
いずれも会社の事業
を分離し、その持分を公開する手法という点で
は共通しているものの、子会社上場やスピン・
O
なお、子会社上場やスピン・オ
の反亦が観察されている (
S
c
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i
p
p
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randS
m
i
t
h
,
1
9
8
6;1
9
8
3
)0
このように、
トラッキング・ストックと支配
オフの場合には、新たな会社の株式が公開さ
関係を維持したままの子会社上場は、間種の組
れ、親会社の持分が低下するのに対し、
トラッ
織再編手段として実証研究の対象とされてお
キング・ストックの場合には、その事業に対す
り、株式市場の反応、についても同様の傾向が観
る持分の 100%所有の状態を維持することがで
察されている
,
k2
0
0
,
1p
.
4
0
)0 なお、スピン・オフ
きる (
F
r
a
n
5
6 (野口晃弘・ニ村雅子)
O
トラッキング・ストックと非支記持分とでは、
法的形式上の相違をなくすことはできないが、
結上か、特に意識されることなく、議論されて
そもそもトラッキング・ストックは子会社株式
きた。これは少数株主持分(非支配持分)を除
に代わるものとして開発された金融商品なの
けば、論点が両者に共通していたためと考えら
で、経済的実質という観点からすれば類蝕して
れる O また、商法の規定との関係が資本会計に
おり、整合的な会計処理を適用すべきものと考
おける重要な論点となっていたため、むしろ個
えられる O トラッキング・ストックに対する配
別財務諸表を前提とした議論が行われてきた。
当は、特定の事業から生まれた和益から支払わ
ところが、
れるように設計されており、残余財産に対する
株式の登場によって、種類株式に関する負債と
請求権についても、その事業の範聞に限定する
資本の区別と、連結上の非支配持分に関する負
ことも可能である。無議決権株式であれば、親
債と資本の区別の整合性が論点として浮かび、上
会社の株主総会で議決権を行使できないという
がってきた。
トラッキング・ストックという種類
点でも同じになる O トラッキング・ストックの
現行の国際基準では、原則として契約上の支
場合、同じ取締役会の下で、対象とされた事業
払義務を負う金融商品は負債、それ以外を資本
とそれ以外の事業が経営されることになるが、
に分類し、例外として契約上の支払義務を負わ
子会社も親会社の支配を受けることから、法的
なくても、所有者としてのリスクにさらされず、
形式上、異なる取締役会が存在していたとして
リターンも享受しないような金融 i
商品について
も、その経済的実質が大きく異なるとは限らな
I
A
S3
2,
は負債に分類するように指示している (
し
ミO
pa
r
.
lLpa
r
.
l6
)0
非支配持分は連結グループ企業の中のある会
こ の よ う な 広 義 資 本 説 に 対 し 、 FASBと
社に対する投資を行った外部株主が保有する持
IASBは「資本としての特性を舗えた金融商品 J
分を表している O 連結グループ全体に対する投
プロジェクトにおける議論の過程で、それとは
資であれば、それは親会社の株式に投資しなけ
異なる狭義資本説 (
b
a
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co
w
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i
pa
p
p
r
o
a
c
h
)
ればならないが、わが国のように上場子会社が
を FASBの予備的見解 (
FASB,2007) で示し、
存在している場合には、必ずしもグループ全体
検討が行われた。現時点では、公開草案の公表
に対する投資ではなく、その一事業を形成する
が 2011年第 1四半期に予定されている O
上場子会社に投資するという選択肢も存在して
FASB (
2
0
0
7
) の狭義資本説では、負債と資
いる O このように非支配持分をとらえると、そ
本を区別するため、残余財産の分配に関して最
の実質はトラッキング・ストックと大きく変わ
も劣後する請求権のみを資本に分類し、当該種
るものではなく、むしろ実質的には同じものと
類の金融謁品の保有者のみを報告主体の所有者
とらえて会計処理を考えることが望ましいよう
とみなしている (
p
a
r
.
l6
)0 一方、 PAAinE(
2
0
0
8
)
に思われる O
は、金融商品に関して、利益や残余財産の分配
に対する参加あるいは劣後、償還期限、議決
4
. トラッキング・ストックと非支配
持分の会計処理における整合性
負債と資本の区別を論じる場合、個別上か連
権について検討し、資本の本質を、損失が生じ
た時にそれを負担することととらえる広義資
本説(J
o
s
sa
b
s
o
r
p
t
i
o
na
p
p
r
o
a
c
h
) を提唱してい
るo FASB (
2
0
0
7
) の狭義資本説が資本を最も
産業経理 V
o
L
7
0No
.
4(
'
1
1
.1
)
5
7
劣後する請求権に限定するのに対し、 PAAinE
非支配持分に関する親会社説と経済的単一体説
(
2
0
0
8
) の広義資本説は損失吸収責任を負うか
を対比させて示すと、以下のように整理するこ
否かを規準としている
とができる
O
O
連結上の負債と資本の区別に関しては、親会
礎概念と結びつけて議論が行われている
O
非支配持分
優先株式
社説と経済的単一体説と呼ばれる 2つの連結基
現行
狭義説
広義説
親会社説
経済的
単一体説
の国際基準も米国基準も経済的単一体説の方向
貸借対照表
負債
資本
(j疑似)負債
資本
に収赦しており、非支配持分は貸借対照表で持
損益計算書;
費用
利益の
分自己
費用
利益の
分配
分に含まれて表示され、非支配持分への振替も、
包括利益を計算する上で控除される項目ではな
したがって、狭義資本説を採用し、優先株式
く、包括利益の分配として表示する項目とされ
を負債に分類しながら、連結財務諸表において
,
p
a
r
.
5
4(
q
),
p
a
r
.
8
3
)0
ている(IAS1
経済的単一体説を採用し、非支配持分を資本に
トラッキング・ストックは種類株式なので、
分類すると、
トラッキング・ストックと子会社
広義資本説を
その法的形式に従って会計処理を行えば、貸借
上場で会計処理が異なってくる
対照表では資本に含まれ、配当は利益の分配と
採用しながら、親会社説を採用した場合にも、
して扱われることになる。狭義資本説であれば、
河様の問題が生じることになる O 経済的実質が
優先株式としての側面を強調して負債に分類
類似する金融商品に対し、その形式の違いに着
広
目して異なる会計処理を求めた場合、企業の行
現定されてはい
義資本説では、対象が一事業に i
動に歪みを生じさせる可能性があることについ
るものの、所有者としてのリスクを負い、リター
9
9
0年代にワラント債への底分法適用
ては、 1
ンを享受する立場にある上、義務償還株式のよ
に{半ってカノ fード・ワラント
うな償還期限の定めがあるわけではなく、また、
の利用をもたらした経緯などの歴史から学ぶべ
株主に償還請求選択権が付与されているわけで
9
9
9
,
3
7
3
9頁
)
。
きである(野口, 1
し、配当を費用許上することが考えられる
O
O
(
1
).パッケージf
責)
もないので、資本として扱うほうが適切である
ように思われる O
非支配持分は子会社の株式を反映したものな
ので、子会社にとっての法的形式は資本であり、
5
. おわりに
本稿では、
トラッキング・ストックを材料に
配当は利益の分配であるものの、子会社の残余
優先株式に関する個別財務諸表上の議論と非支
財産に対する請求権では、親会社の債権者に優
配持分という連結財務諸表上の議論を対比さ
このため親会社説では、非
せ、両者の整合性という視点から、負債と資本
先する立場にある
O
支記持分は(疑鉱)負債、配当は費吊(純和益
の区別について論じた。
設する環日)として会計処理
を誤算するために控 i
トラッキング・ストックは企業内の一事業を
することになる。これに対し、経済的単一体説
対象として投資を行うための撞類株式であり、
では、非支配持分も資本、配当は利益の分担と
その種類株主は、子会社上場が行われている場
して扱うことになる
合の子会社の少数株主と、経済的実質は似てい
O
優先株式に関する狭義資本説と広義資本説、
5
8 (野口晃弘・二村雅子)
る
O
もちろん、子会社の株主であれば子会社に
対して株主としての権利を行使することができ
るのに対し、 トラッキング・ストックの場合は、
それが子会社連動株式の場合であっても、子会
社に対しては株主としての権利を直接行使する
ことはできないなど、法的形式上の相違はある O
しかし、企業の財政状態及び経営成績を開示す
るという観点からすれば、法的形式上の梧違よ
りも、経済的実質上の類似性を重視し、両者の
会計処理を整合させる必要がある
O
会計基準の裏をかこうというインセンテイブ
を残さないためにも、優先株式と非支配持分の
会計処理の整合性は重要である
O
〈参考文献〉
Banham,R
.(
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9
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