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サイバーセキュリティを巡る立法の動向
岡田 好史(専修大学法学部教授)
コンピュータ及びコンピュータ・ネットワークにより形成されるサイバー空間は、われ
われの社会生活にとって欠かせない存在となっている。そのセキュリティが侵害された場
合に如何に対処すべきか。セキュリティの問題は、常に情報の記録・保存技術や、それに
対応した情報の利用・保護技術とともにあったといってよい。本講演は、昨年成立したサ
イバーセキュリティ基本法を中心に、セキュリティ関連の立法動向を概観しようというも
のである。
コンピュータが開発された当初は、コンピュータ・システムそのものが少数かつ大規模
であったことから、従来の法の枠組みの中での対処に重点が置かれていたが、社会生活の
コンピュータ化が進展に合わせて、立法的対応が開始されることとなった。1990 年代後半
のインターネットの商用開放、2000 年代の携帯電話等のモバイル機器のインターネット接
続等により、高度情報通信ネットワーク社会を形成するに当たっての理念法が求められる
ことになり、
IT 基本法が制定されるとともに個別の立法化が推進された。2010 年代に入り、
もはや情報通信技術(ICT)は社会基盤となったといってよい。しかし、脅威は世界的規模
で増大・深刻化し、ICT を取り巻く諸情勢は大きく変化した。そのため、サイバーセキュ
リティ推進体制に関する法的根拠、新たな時代に即した施策が求められ、サイバーセキュ
リティ基本法が制定されることとなった。
セキュリティをめぐる問題は、技術的な問題であるとともに社会問題でもある。物理的、
人的対策のみならず、立法化による社会的対策と合わせた総合的な対策が求められている。
いずれが欠けてもセキュリティの問題は解決できない。
情報セキュリティに係るリスクの深刻化に対応するためには、国民自身が、サイバーセ
キュリティの重要性に関する関心と理解を深めるとともに、人材の量的不足の解消に向け、
社会全体で必要な人材を育成し、活用するための仕組みが必要である。