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キャドゥアライアンス CADU Alliance(サイバー絆研究所)
2016 年 1 月 15 日(金)
東京大学医科学研究所
病院棟8階会議室
シリーズ 「薬づくりの新しい R&D モデルを探る」
第 11 回「薬づくりと健康食品開発を結ぶ」
開催趣旨:
次世代ヘルスケアにおいては、薬事法に定められた薬(医療用医薬品)だけでなく、薬
にあらざる介在法(Non Pharmacological Intervention, NPI)が、現在より効果的に活用
されるだろうと予想されている。両者の規制には大きな違いがあるが、科学研究の視点か
らは、両者に本質的な違いは存在しない。これは医薬品と環境汚染物質のような化合物の
生体への影響(毒性)に関わる研究についても言えることである。すなわち食、薬、毒の
いずれについても、その効果(生体作用)に関わる研究は、現在では分子レベルで進めら
れるようになっている。この研究集会では、そうした食薬毒の研究が(三位)一体となっ
た新しい(ゲノム)健康科学のフロンティアをいくつか紹介する。このような研究は、純
粋な薬づくりよりもアカデミア研究者にも取り組みやすく、生活者にも参加しやすいのが
特徴である。こうした領域は、生活者が参加した薬づくりに関心をもっている製薬会社に
も興味深い領域だと思われる。
最初の話題は、線虫を用いたスクリーニングによって抗酸化作用に関係したヒトでの
Keap1/Nrf2/ARE 経路網に似た経路網を発見し、これを基礎として健康食品成分をスクリ
ーニングする系を開発した三輪らの仕事に関係している(第1の話題)。Keap1 の構造が決
定されているヒトの場合は、すでにこの経路を標的にした薬物も開発されている(第2の
話題)
。この経路に関しては、抗がん剤の開発から抗酸化作用をもつ健康食品の開発、化学
物質の安全性の評価など幅広い研究が行われている。しかし、線虫を用いた実験とヒトの
経路を結びつけた研究は、薬づくりの視点からも健康食品開発の視点からも、まだ発展の
余地があると考えている。我々は製薬会社の研究者たちにも、モデル生物をつかったフェ
ノタイプスクリーニングの威力を示す事例として、ぜひこの課題に関心を持っていただき
たいと考えている。
次の話題は、腸内細菌に関係している。腸内細菌が宿主の健康状態に影響するという事
実を踏まえ、腸内細菌の構成を変化させ、それによって健康状態を良好な方向に変化させ
る可能性を検証する研究が精力的に展開されているが、その介在法としては薬よりはむし
ろ食事、とくにヨーグルトに代表されるプロバイオテックスやプレバイオテックス、さら
にはポリフェノールや運動の効果などまで、幅広い研究が展開されている。またそうした
研究には、多様なヒトの参加が重要なカギになっている。そこで今回は、次世代ヘルスケ
アの視点から、このフロンティア領域にどう取り組むべきかを、立場や専門を異にする関
係者に討議していただくことにした。
腸内細菌は、薬や環境汚染物質のような生体外からの物質の代謝にも関係していること
がわかってきた。その役割は、宿主の代謝機能との関係も含めて解明されなければならな
い。これは例えば薬開発では前臨床試験や臨床試験(治験)における患者の層別化の見直
しを迫るものである。この課題も薬の開発と化学物質の安全性(毒性)研究の双方に関係
している。
以上紹介した食、薬、毒に関わる研究は、分子的には共通の経路網や標的分子を対象に
している。予防や予兆への対策を重視する次世代ヘルスケアでは、こうした事例が増えて
いくであろう。そこで第3の話題として、次世代ヘルスケアのエッセンスである参加型ヘ
ルスケアのイメージを探るために、先端的な論客である米国の Eric Topol らの本や文献を
紹介しいただくこととした。ここでは、我が国の状況と合わせて、参加型ヘルスケア実現
への道程を議論したい。
この会は、我々がめざす「次世代ヘルスケアのイメージを探り、そこから明日の薬づく
りを考える」という、新しい視点を理解していただく絶好の機会だと考える。薬づくりだ
けでなく、いわゆるヘルスケアビジネスに関心のある幅広い方々の参加を期待している。