先端科学技術研究センターの現状 先端科学技術研究センター(先端研)は、2004 年 4 月の東京大学の法人化とともに 東京大学で最も新しい研究所へと先端経済工学研究センタと統合の上、改組された。 その役割は「東京大学が持つ総合大学としての資源、人材を有効に活用し、工学のみ ならず人文科学・社会科学を含めた既存部局の枠をこえる広い学術的知見から先端科 学技術ならびにその関連分野において中枢的役割を担うもの」と規定されている。現 在では 28 基幹部門、6 客員分野、3 先端学際工学基幹講座、2 寄付研究部門、全教官 50 数名である。さらに、2001 年(平成 13 年)より、文部科学省科学技術振興調整費 によるオープンラボ・プロジェクトがいわゆるスーパーCOE として始動し、特任教官 20 数名が陣容に加わった。このプロジェクトは、21 世紀の大学組織のあり方とも密接 に関連するもので、各界から大きな期待をもって見つめられている。 先端研は、かつての東大宇宙航空研究所の跡地である駒場リサーチ第 2 キャンパス に立地する。その前身は、1981 年(昭和 56 年)に設置された工学部境界領域研究施 設(通称、境界研)であり、同施設の定員枠、建屋などを継承して 1987 年(昭和 62 年)東京大学の全学組織の研究部局として新設された。現在では、新しい研究棟であ る新 4 号館、新 3 号館が完成し、時計台などの一部の保存建物を除いて面目を一新し つつある。 先端研のモットーは、流動性、学際性、国際性、公開性にあり、その趣旨にのっと り自然科学から社会科学にわたる広い領域をカバーしている。特に人材の流動性につ いての意識が高く、教官の任期は基本的には 10 年以内と申し合わされている。任期制 をより明白なものにするために、一方ではテニュア制の議論も始まっている。 産学の連携についても積極的であり、振興調整費によるテクノロジー・ビジネス・ インキュベーション・プログラム、大学 TLO である CASTI、より多様な産業連携を目 的とした ASTEC、などの組織を設立している。 新しい研究体制において、進歩的な制度を作り上げてきたのも先端研の特徴で、寄 付講座が全国に先駆けて設置されたほか、先述の振興調整費スーパーCOE プロジェク トでは、研究費によって教官の雇用が可能になる特任教授制度を本学ではじめて実施 し、さらに、その制度を一歩進めた基金教授制度もこの 4 月に誕生した。これによっ て、従来の国立大学時代に問題であった定員の問題を超えて、自由な人事計画が行な えるようになった。 このように、これまでわが国の大学で、理想としながらも実現が難しかった新しい 大学の教育、研究のあり方を模索する先端研であるが、この運営に機械系 3 学科も参 画、協力するということで 1988 年(昭和 63 年)4 月より、平田賢教授、久田俊明助 教授が先端システム大部門巨大システム研究分野に任官した。1991 年(平成 3 年)10 (左)駒場第 2 キャンパス正門(背後に先端研 13 号館時計台が見える) (右)平成 11 年 6 月に竣工した先端研新 4 号館 月からは平田教授の後任として佐藤知正教授が任官し、1994 年(平成 6 年)3 月から は久田助教授に代わり溝口博助教授が任官している。1994 年(平成 6 年)4 月からは 部門名も生命知能システムと改名され、人に優しい知能ロボットや、マイクロマシン や細胞などの微小な物体を操作する知能ロボットを機構、制御、知能情報処理の観点 から研究している。平成 10 年度からは、溝口助教授に代わり森武俊講師が任官し、改 組にともない、同年 4 月より生命知能システム分野は情報システム大部門に所属する こととなった。1999 年(平成 11 年)7 月から佐藤教授の後任として、廣瀬通孝教授が 任官し、さらに、2000 年(平成 12 年)1 月から森講師に代わり広田光一助教授が任官 した。現在当分野では、バーチャル・リアリティやヒューマン・インタフェースを中 心に研究が行われている。 振興調整費・オープンラボにおいて、とくに当分野とかかわりの大きな分野は、廣 瀬教授がディレクタを務める「五感情報通信に関する研究プロジェクト」で、メディ アアートの第一人者である岩井俊雄氏を特任教授として迎えて工学の枠を越えたメデ ィア技術の研究が始まった。さらに、「バリアフリー空間の構築に関する研究プロジェ クト」では、ウェアラブルコンピュータのような先端的情報技術を活用することで、 障害者や高齢者のハンディを取り除くことなどを目指している。 大学院教育においても、先端研のモットーは尊重されており、1992 年(平成 4 年) 4 月には博士課程を社会人に開くための先端学際工学専攻が開設された。この専攻は、 企業等に籍をおいた社会人を対象としたものであって、仕事と両立可能なカリキュラ ム、実社会における経験や業績が評価される入学試験など、様々な配慮がなされてい る。先端学際工学専攻の中で機械系 3 学科に関係が深い分野としては、上述の廣瀬教 授と広田助教授の生命知能システムの1分野がある。 (平成 16 年 10 月、廣瀬通孝記) (教 授)廣瀬通孝(昭和 57 年 3 月工学系研究科産業機械工学専攻博士課程修了) (助教授)広田光一(平成 6 年 3 月工学系研究科産業機械工学専攻博士課程修了) 廣瀬通孝 広田光一
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