こちら - サイペイントジャパン株式会社

防音・防振塗料の技術
田 端 伸 行(たばた・のぶゆき)
サイペイントジャパン㈱ 代表取締役社長
は じ め に
「音がうるさい」と聞いた時,工場や倉庫に連立
している事務所などの折板屋根に豪雨が降ると雨
音がうるさい。振動音が増幅されクレームが絶
音で会話が中断してしまうような場面を思い出し
えない。
た。
こんな話が最近増えてきている。
「振動そのものや振動から来る騒音」について
当社の製品の代表的なものは遮熱塗料である。
は,ショッピングセンターなどにある大型室外機
しかし,ここ数年のアセアン地域を始め,アフ
やコンプレッサーなどの振動が,近隣住民への騒
リカ,南米までもがその需要が増大している中
音問題となるケースが非常に多かった。
で,先進国での遮熱塗料の普及の遅さを見ている
しかし,多くの場合クレーム処理は隠密裏に行
と,本当に先進国と言えるのかと不安になる。そ
われ,その話が漏れ聞こえる事は少ない。
んな中,音の問題も出てきた。
クレームがクレームを呼び,その対策費が増大
遮熱塗料の需要が急激に伸びているのは,温暖
するからである。
化の進む世界の中で当然の事と思っていたが,騒
特に金銭で解決しているクレーム処理は,その
音とはいかなる問題なのか。
状況が近隣住民に知れ渡ると同じようなクレーム
防音や振動防止に関しては,これも世界的に先
が増加発生する。
進国が高度な製品を数多く発明していて,この上
今まで気にしていなかった微々たる騒音が,そ
クレームなど来るものなのかと思いながらも,そ
れでお金がもらえると分かれば,その話はたちま
の声に耳を傾けて,少しの間音の世界を探ってみ
ち近隣住民に派生することになるからだ。
た。
と言う事がわかっただけでも新たに解決すべき
1. 騒音対策から生まれた考え
問題点を持った市場が存在する。
先進国は,自国の市場があらゆる高性能の製品
に満たされ,その次なる市場を夢見て世界各国に
飛び出している。
どの製品メーカーやそれを取り扱うディーラー
も自国の市場だけではその売上高に満足できず,
新たな市場形成を隣国や遠き国々に求めているよ
うに思う。
しかし,自国の足元にもいろいろな市場は存在
する。
遮熱塗料の市場さえ,日本国内にもまだまだそ
の存在理由が隠されている。
Vol.63,No.13(2015)
第 1 図 防音のメカニズム
JETI 1
当社の環境対策製品に該当するものか,問題点
当社は塗料会社ではなく,あくまでも地球環境
が気になり始めるところである。
を改善し,地球とその上に生存する生物の健康と
例えば,実際に工場で遮熱塗料の打合せをして
幸せを追求するメーカーである。
いた正にその時の事である。
防音製品を開発する事がこの理にかなっている
突然訪れた豪雨が,打合せをしていた事務所の
事が必然でなければならない。
折半屋根を凄まじい音でたたき続け,会話も聞き
取れないまま 90 分以上もの間,雨音と苦笑いの珈
3. 防音・制振塗料の誕生
琲ブレイクにしかならなかった事があった。
本題目は「防音塗料の技術」とある。
「屋根の内側に断熱材か防音シートを貼ったほ
技術とはそもそもなんぞや,と思って調べてみ
うがいいですか」
るとテクノロジーとか特別な叡智と書かれている
「せっかく遮熱塗料を塗れば,断熱材を施工する
事が多いが,技術とは本来困ったことを巧みに解
必要がないと話していたのですがね」
決する手段である。
などと言うことになる。
自然または人為的現象に意図的に手を加えて物
2. 環境製品としての防音塗料
事に役に立つ方法論的な手段である。
当社の防音塗料技術について書くようにとの要
遮熱塗料で断熱材を省略する事はできるが,防
請であるが,化学的な説明を駆使し,科学技術的
音はどうだろう。
な回答を要求されても 筆者の頭は過熱するだけ
既存の遮熱塗料を販売しているメーカーの中に
なので,
当社の技術論から書かせていただきたい。
は,遮熱塗料で遮熱のみならず,断熱・防黴・防
当社にとって防音塗料の技術は,防音と言う観点
汚・防音・結露防止から防火まで,まるで何でも
から困っている事実を確認し,それを解決する事で
できるスーパーマンのような営業文句を言ってい
地球環境や人類的環境に貢献できるものであれ
るところを多々見かけるが,実際には何でもでき
ば,その現象を解決する製品を開発する事である。
るものではない。
前述のように,音の問題を抱えている人たちや
遮熱塗料が,断熱材を凌ぐ性能を発揮するのは
企業が大勢いたわけである。
暑さについてであり,寒い冬の暖房を断熱材のよ
それを解決する方法を考え,組み立て,模索して
うに補完することはありえない。
できた製品が「PLANET SUPRA NRVC」だ。
防音効果もなきにしも非らず,だが,果たして
ちなみにこの「NRVC」は,Noise Reduction
マイクロレベルの膜厚の塗料でどの程度軽減でき
& Vibration Control の頭文字を取ったもので筆
ているのかをはっきりと提示しているメーカーは
者は勝手に「ナルベック」と読むことにした。
見当たらない。
自ら書くのは本来憚られる事ではあるが,この
個々に具体的な事を記すことはできないが,防
ナルベックが凄いのである。
音をしながら,省エネ対策を施して二酸化炭素排
本当に音や振動の問題を解決してしまう優れも
出量を減らし,
地球の温暖化を防ぐことができる。
のである。
第2図 PLANET SUPRA NRVC の制振効果
2 JETI
Vol.63,No.13(2015)
屋根に塗れば雨音を和らげ,遮熱塗料の効果も減
衰させず,壁に塗れば防音効果が顕著に現れたかと
思えば,今までのブチルゴムやアスファルトの 3 分
の 1 未満の量で同程度以上の防音・防振効果を発揮
してしまうのである。
しかも,それは塗料である。
が,以前から何度も言っているように当社は塗料
会社ではない。
地球環境を根本から解決し,地球とその上に棲む
総ての生物の生活環境を改善する製品を創造し,生
第3図 PLANET SUPRA NRVC 塗布後(イメージ図)
産して普及させるための会社である。
しかし,今回もたまたま,遮熱塗料,輝度増加 よって湧きあがった問題に対する問題意識と,本
塗料に続き,塗料で防音・防振製品を創ってしまっ
当に困っている地球やその上に生活する人類を始
たわけだ。
めとした総ての生物たちに対する改善策の提案思
塗料は施工が比較的簡単だ。
考であり,万物に対する感謝の気持ちである。
切ったり,貼ったり,形を整えたり,対象物に合
それが技術なのかと憤慨する諸氏も多々いらっ
わせたりがあまり必要ない。
しゃることとは思うが,これはまぎれもない事実
塗料であれば,誰でも簡単に塗布できる。
である。
しかも,塗り方もそれほど高度な技術を必要とし
問題意識と解決思惑がなければ改善策は思考さ
ない。
れない。
やっぱり塗料は簡単であり,ローコストであ
思考されなければ手段は生じないのである。
り,大きな効果を生める製品群なのである。
筆者は,今現在まさに忘れ去られそうになって
だから,当社は塗料会社ではなく,環境改善会
いる本来の高度な技術,それは けっして政策論的
社であると言い続けながらも,塗料製品ばかり続
なものではなく「心の問題」だと思う。
けて開発してしまうのかもしれない。
地球上のあるいは宇宙の総てのなかで,誰もが
つまり,
塗料の潜在能力はそれほど凄いのである。
平和で安心できる社会を創造し,そのために必要
建築関係や設計関係での塗料の立場は弱い。
なものを開発する力が技術であり,当社の防音塗
ほとんど最低ランクと言ってよい。設計段階で
料の完成もその心の技術力から必要とされ産み出
はその指定さえいただけない事が多い。
されたものだ。
されど,安価な塗料で今は世界最高水準の省エ
お わ り に
ネと環境改善が可能なのである。
今までのどの制振材料よりも軽く,安価に,そ
前号でも引用させていただいた,有名なパスカル
して,自由に。
の遺稿集『パンセ』中の言葉に,
そこには,どこにも負けない当社の高い技術力が
「人間は自然のうちで最も弱い葦の一茎にすぎな
貢献している。
い,だがそれは考える葦である」
というと,生産するためのノウハウを少しでも開
とある。
示してくれると思った読者諸賢もおられるかもしれ
誰でもが人の為になる事,地球の為になる事を真
ないが,そのテクニックは何処にでも転がっている
剣に考え,それを実現する事を諦めずに信念を持っ
ものである。
て研究する事が開発であり,その手段が技術であ
ハイテクではなく,しかし,けっしてローテクで
る。 もない技術でもある。
サイペイントの技術力とは,常に地球環境を考え
なかなかまねをすることのできない技術力が存在
ることであり地球に恩返しをする気持ちである。
している。
地球を想う人々の心の「信念の強さが技術力」
それは,世界中に蔓延する環境悪化やそれに
ではないかと思う。
Vol.63,No.13(2015)
JETI 3