IS(インフィニット・ストラトス) 2人目の男性IS操縦者 ID:72337

IS(インフィニット・ス
トラトス) 2人目の男性
IS操縦者
スーパープルコギ
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︻あらすじ︼
その概念を破壊した男、織斑一夏。そして第2の男性IS操縦者が現れた。
﹃インフィニット・ストラトス﹄は女性にしか使えない。
﹁俺はISがあまり好きじゃないんだ﹂
曽我美優太は過去の事故からISに嫌悪感を抱いていた。
束の仕業でIS学園へと入学することになった彼は、何のためにISを駆るか。その
意味を見出だしていく。
目 次 第 1 話 2 人 目 の 男 性 I S 操 縦 者 第 2 話 ク ラ ス メ イ ト は 女 子 ば っ か 1
第 3 話 V S セ シ リ ア・オ ル コ ッ ト 12
33
│
第1話 2人目の男性IS操縦者
┃へぇ。面白いね君は┃
ドア越しによく聞く声がする。本当に聞き慣れた、いつもの声。だが今日はやや溜め
﹁ん、今起きたよ。すぐ下りるからぁふぁ⋮⋮﹂
﹃優太、いつまで寝てるんですか﹄
寝過ぎだ。
を確認。既に9時を回っている。
ベッドの脇に置いた小さな手作りのテーブルからフューチャーフォンを掴んで時刻
﹁⋮⋮何時⋮⋮﹂
4月の初め、俺はいつもと特に変わらない朝にいつもと特に変わらない欠伸を1つ。
寒い。意識が覚醒した時一番に思ったのはそれだった。
﹁ん⋮⋮﹂
1
息がちに│
﹃⋮⋮昨日も遅かったんですね﹄
﹁ん、まぁね。でも稼ぎは良いんだ﹂
﹃貴方はまた⋮⋮はぁ。取り敢えず、今日はルイディナが日本に発つ日ですよ。早く起
きてください﹄
﹁⋮⋮忘れてた。すぐ起きるわ﹂
俺の部屋は2階だ。だから今日みたいな寒い日は階段が冷たくてよく目が覚める。
◇
﹁おはようルディ﹂
食堂に着くと既に見覚えのない白い制服に身を包んだ妹、ルイディナ・ニコラエフの
﹁おはようユウ。珍しく遅いじゃん﹂
姿があった。
俺が物珍しく見ているとそれに気付いたルディが自慢気に立ち上がり、胸を張ってみ
せる。
﹁おう。似合ってんじゃん﹂
﹃IS﹄それは俺にとっては良いイメージのない物だ。
﹁可愛いでしょ。これが、IS学園の制服。私も遂にIS学園の生徒になったんだよ﹂
第1話 2人目の男性IS操縦者
2
ルディ姉ちゃん﹃あいえす﹄の服着てるー﹂
﹁えへへ﹂とルディがニヤニヤし始めた所に数人の子供達が続々と食堂に入ってきた。
﹁あ
事をするかも分かりきってる。
?
﹂
?
彼女はこの孤児院の院長、皆が﹁お母さん﹂と呼ぶ人だ。
﹁はい。おはようございます﹂
﹁おはよう母さん﹂
子供達が手を振りながら礼拝堂へと駆けて行く。
﹁うん。今度お土産買ってくるからね﹂
﹁お姉ちゃん頑張ってねー﹂
﹁今やるー﹂
と、そこに優しい聞き慣れた声が聞こえる。
﹁こらこら。ちゃんと礼拝堂のお掃除は出来たんですか
五指をワキワキと動かして子供達に近付くと直ぐ様楽しそうな声を上げて逃げ出す。
﹁こぉら。誰だ俺のくすぐり攻撃を食らいたい奴はぁ
﹂
各々が色んな反応を示しながら俺の腹をどついてくる。いつもの事だ。何でこんな
﹁おはよー﹂
﹁お姉ちゃんかわいー﹂
!
3
此処に居る皆は血の繋がりは無い。だからルディも妹ではあるが、彼女もそして先刻
の子供達も俺と同じく、孤児だ。
﹁お母さん、本当にありがとう。私、夢が叶ったよ﹂
﹁ええ。ええ。本当におめでとう。ルイディナは頑張りましたもの﹂
りがとう﹂
﹂
﹁でもお母さんが今まで学費を出してくれなかったらここまで来れなかった。本当にあ
﹁良かったなルディ。お前頑張ってたもんな﹂
またその話か⋮⋮。
﹁まあね。ところでユウ⋮⋮本当に学校行かないつもり
くれたお陰でここまで漕ぎ着けたのだ。まぁ、俺はやることがあるしな⋮⋮。
そう、俺は高校どころか義務教育すら受けていない。ルディは母さんが学費を出して
?
﹂
?
そう、言える訳無い。何しろ俺がやっているのは某資本家の警護だ。つまり命の危険
︵言える訳無いだろ⋮⋮︶
﹁秘密だよ。皆には関係ない﹂
掛けてるけど⋮⋮何をしたらあんなに稼げるの
﹁毎年稼ぎ時言ってるよ。⋮⋮ねぇ、今日こそ話して。ほぼ毎日仕事だ、なんて言って出
﹁ん。今年も稼ぎ時なんだ。勉強なんてしてる暇ねぇよ﹂
第1話 2人目の男性IS操縦者
4
が伴う仕事だ。幸いにも資本家のおじさんには贔屓してもらって稼ぎも多いし、信頼も
得ている。
勿論その資本家だけではない。他にも大臣クラスも陰ながらではあるがやったこと
もある。ただ、俺の存在はあまり公表したくはないので、いつもは借りたスナイパーラ
イフルで遠距離から警護、たまにすぐ横で居たりする位だ。当然、警護中に危険人物を
〝処理〟した事も多くある。だからこそ、言えない。
それに、俺が稼いだ金はこの孤児院に入れてるし、ルディの今までの学費にも入って
いる。母さんは、この孤児院は決して潤ってる訳ではない。孤児も多く居る。お金は足
りていないのだ。皆働けるような歳ではない。だからこそ、そう言った仕事は〝専門〟
の俺が、一番年上の俺が稼がねばならないのだ。たとえ母さんが今に至っても反対して
いたとしても。
そうしないと、此処は、皆の家は無くなってしまう。
﹂
﹁何を想像してるか分かんないけど、それは無いから安心しろって。ほら、もう電車だろ
一体何の仕事を想像しているんだ⋮⋮。
﹁⋮⋮じゃあ約束して。危ないことして、死なないって﹂
5
時計を見ればルディが決めた出発時間に迫っている。
?
﹁⋮⋮じゃあ、また今度ね﹂
﹂
昨夜出発パーティして一杯泣いたからもう泣かないだろうと思っていたが、目が潤ん
でる。
﹁おう、またな。頑張れよ
﹁⋮⋮面倒臭ぇ﹂
皆がだぁい好き
たb﹄ブツッ。
!
別に出なくても良かったんだが、如何せん出ないと何をするか分からないから思わず
かってきた。
見送ってから大分経って日が沈んだ頃、面倒臭い相手からハイテンションな電話が掛
?
孤児院から離れて森の中。トレーニング中に悲劇は起きた。
◇
4月の始め、俺はまたいつもと特に変わらない日々がまた明日も来ると思っていた。
ん、孤児院の外はやっぱり寒い。だからこういう日は〝接合部〟が痛む。
ドアを開けてルディが行く。
﹁行ってきます、お母さん、ユウ﹂
﹁いってらっしゃい﹂
背中を一発叩いてやった。
!
﹃もすもーす。ゆー君ですかぁ
第1話 2人目の男性IS操縦者
6
出てしまった。
実は相手はかの有名な篠ノ之束。前に色々あって助けて貰ったり諸々してもらった
のだが、近くに居ると頭が狂いそうだから逃げた。
﹂
いやね、確かに恩知らずだと思うよ。だけどね、んまぁ、あれだ。⋮⋮到底理解出来
ない事ばかり有るとね⋮⋮うん。だから切った。
﹂
﹁むー。ゆー君ってばヒドーイ﹂
﹁んぬぁ
いきなり後ろからドロップキックされて地面に顔から突っ込む。
今日はゆー君で遊ぼうと思ってねー。ていやっ
!
てきた。
ろくなことにならねぇ
こいつ、動くぞ ゆー君良いねー。おっ
ヤメロー
﹁おお
テンション高いわ話しは一貫してないわ最悪だー
?
ジタバタしてもビクともしない。相変わらずは此方だわ
﹁クッソォ
﹂
相変わらず良い筋肉だね。ハァハァ﹂
最早此方の意見など知ったこっちゃないと起き上がろうとする俺に何かをくっ付け
﹁はーいどうもー
!
!?
﹁よーし。これなら大丈夫そうだねー。ゆー君ありがとー。じゃねっ﹂
!
!
!?
!
!
!?
!
7
シュバッ
と擬音を口で放って姿を消した天災。
﹂
!!
無関係の筈だ。
い。それは俺が身をもって体験している。ただ、例外で1人日本に居るが、彼とは俺は
そんな馬鹿な、と最初は思っていた。いや、今も思ってる。ISは女性にしか使えな
﹃曽我美優太。これよりISの適正テストを行う﹄
ぼやいても仕方がない。無論理由は知ってる。
﹁展開速すぎるだろ⋮⋮﹂
後日、俺は黒服の男達に連行され、何処かの部屋に放り込まれた。
﹁⋮⋮嫌な予感しかしない
地面にキスして、女1人退かせなくて、惨めだ⋮⋮。
!
災、何のためにそんな設定にしたのか知らないが、お陰でとんでもない迷惑だ。
ISは女性にしか使えない。これこそが世界で起きた意識の変化の元凶だ。あの天
無理もない。ISが世界に登場してから、社会の女尊男卑が著しくなった。
だ。
何処かで喋ってるのは女性だな。明らかに男の俺に対して嫌悪感を抱いている声音
﹃其処に有る﹃打鉄﹄に乗れ﹄
﹁あの、俺は何をすれば⋮⋮﹂
第1話 2人目の男性IS操縦者
8
それに、俺はIS絡みで体の一部が無い。だからISに対して俺は嫌悪感を抱いてい
る。
﹁⋮⋮﹂
だ。
だ。そんな事は知っている。兎に角俺がこいつをどうにかして帰れれば万事解決なの
ただ、現在は宇宙運用云々よりも﹃スポーツ﹄へと落ち着いた飛行パワード・スーツ
フォーム・スーツ。
こそが﹃IS﹄。正式名称﹃インフィニット・ストラトス﹄宇宙運用が目的だったマルチ
放り込まれた部屋。その中心に佇む鎧のような妙ちくりんな形を成した機体。それ
﹁⋮⋮﹃打鉄﹄か⋮⋮。﹃マリオネッタ﹄以降だな、ISに触るのは﹂
ガンガン嫌な予感しかしないが、こうなったらやるしかない。
兎に角、ここで何か起こさないと帰れそうにもない。
聞こえてる。いや、聞こえるように言ったのか。
﹃早くしろ。ったく面倒な⋮⋮﹄
がない訳で⋮⋮。
だが、心当たりが無いわけでもない。だからそのIS絡みの事が大変気になって仕方
﹁⋮⋮﹂
9
静かに佇む﹃打鉄﹄はとても冷たかった。
│﹃打鉄﹄起動。
│ハイパーセンサー接続⋮⋮完了。
│スキンバリアー展開⋮⋮完了。
│PIC作動。
│完了。完了。完了⋮⋮。
頭の中に膨大な量の情報が流れ込んでくる。
そして解る。俺はこいつを動かせてしまう。
│パイロット確認⋮⋮照合。曽我美優太 確認を。
﹄
﹄
目の前に現れるYesかNo。俺としては非常にNoを押したい。だが、それは叶わ
こんな事が有り得るの
﹂
それと手続きの準備を
!?
ぬ夢だ。
本当に
﹃直ぐに学園に連絡を
!?
﹁⋮⋮﹃打鉄﹄、No押しても良い
!
!?
ハイパーセンサーのお陰でマジックミラーの向こうやら部屋の外やらが慌ただしく
﹁はぁ⋮⋮。してやられたよ。全く⋮⋮﹂
応える筈もない。相手は機械。考えれば分かる。
?
!
﹃嘘
第1話 2人目の男性IS操縦者
10
11
なったのを知覚しながら、俺は諦めてYesの押した。
この日、俺は篠ノ之束の仕業により、
﹁ISを使える第2の男﹂として、世間に名と顔
を知られることになった。
第2話 クラスメイトは女子ばっか
│あの日からこうなる運命だったのかも知れない。あの日、俺が﹃マリオネッタ﹄に
乗せられた時から。│
﹁全員揃ってますねー。それじゃあSHR始めますよー﹂
4月。この月は大体が新しくなっていく時期だ。
主にこの時期でふと思うのは進学ないし入学だろうか。日本の4月は桜が咲き、ピカ
ピカの制服、ランドセルを背負った学生の姿が〝此処〟に来るまで何度も見受けられ
た。
俺は中学はおろか、小学校にすら行っていない。だから入学式と言うのを初めて体感
したし、教室で皆同じ制服を着、学業に励むなどするとは思ってなかった。
そして│
﹁皆さん、先ずは此処、
﹃IS学園﹄に入学おめでとうございます。私はこのクラスの副
第2話 クラスメイトは女子ばっか
12
担任、山田真耶です﹂
そこはかとなく彼女から漂う背伸びした感。比喩的な事だ。
身長は目測で157cm程だろうか︵実際は155cm︶。眼鏡はややずれているし
服は確実にサイズが合っていない。何だろう、物凄く﹃子供が無理して大人の服を着ま
した﹄感じが否めない。て言うか副担任って何だろう
?
SHRと呼ばれる授業︵
︵おおっ
ありがたい
!
︶開始から丸5分。俺の周りは1人を除いて女子しか居な
男が居るってやっぱり良いな
!
︶
ほれ、﹃第一残業胃腸薬プラス﹄をおすそ分けだ。因みに水無で飲めるぞ。
目の前の織斑一夏も大分胃に来てそうだ。俺も既に12錠飲んだ。
︵何だこれは⋮⋮。何故にこんな息苦しい思いをしなきゃならないんだ⋮⋮︶
どれも興味津々の眼差しで、いつ自己紹介するのかと待ちわびている。
い。その視線が俺ともう1人、織斑一夏にこれでもかと注がれている。
?
﹁⋮⋮はぁ⋮⋮﹂
先ずは女子。その次も女子、まだ女子、もっと女子、終わらぬ女子⋮⋮。
タート。
ポ フ ッ と 擬 音 が つ け ら れ そ う に 手 を 打 っ た の を 合 図 に 出 席 番 号 順 に 自 己 紹 介 が ス
﹁じゃあ、先ずは自己紹介から始めましょうか。それでは、出席番号順に⋮⋮﹂
13
!
﹂
何だこの周りの女子の動き⋮⋮あ、おい。何メモしてるんだ
振り向いた彼は大分青ざめていたが大丈夫だろう。
ん
キャラじゃないぞ
﹁⋮⋮ら君。織斑一夏君っ
﹂
俺は胃腸が弱い
!
てくれるかな⋮⋮
駄目⋮⋮かな
﹂
何故この人は怯えた様に言うか。
﹁ほ、本当ですねっ
約束ですよっ
止めてあげてくれ
!
?
礼儀正しく一礼して座る。
﹂
﹁お、織斑一夏ですっ。その⋮⋮宜しくお願いします﹂
何処まで怯えるか。
?
﹁これで終わりか ﹂と言うの視線の訴えが再び彼を襲う。止せ
に0なんだ
!
彼のライフはとっく
!
?
?
?
﹁えっ、えーと、今自己紹介で、
﹃あ﹄から始まって今﹃お﹄なんだけど⋮⋮自己紹介し
さる視線に身震いしている。
ボーッとしていたんだろう。驚いたように跳ねた彼が今度は全身にくまなく突き刺
﹁あっ、はい
!?
?
!
?
﹁だ、大丈夫です。しますから﹂
第2話 クラスメイトは女子ばっか
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﹁えっ
終わりですか
折れたな。
﹁⋮⋮はい﹂
﹂
﹁じ、じゃあ次は曽我美君何だけど、大丈夫ですか
?
﹂
ち着くだろうと例外で織斑一夏の後ろになっている。
!?
﹁⋮⋮﹂
このプレッシャーは これが、ISを扱う女子の力か
﹂感が全身に突き刺さる
!
立ち上がり、眼だけで少し見渡す。
な、何だ⋮⋮
!?
﹁お前はもっと喋れるよな
?
とてつもない
因みに本来なら俺はもっと後ろの席なんだが、学園のささやかな助けか、男同士が落
り正気度しかり。
先生、何を言いますか。我々は既に5分以上前から大丈夫ではありません。胃腸しか
?
?
止めろ織斑一夏。その同情するようで可哀想なものを見る目は心が折れる⋮⋮。
噛んだ。最悪だ⋮⋮。
迷惑をお掛けするとはおもあますが﹄
えっと、学校その物がよく分かりません。なので⋮⋮えっと、そのぉ、ごめ、んんっ。ご
﹁⋮⋮ そ、曽 我 美 ⋮⋮ 優 太 で す ⋮⋮。せ、先 日 ま で ロ シ ア の 孤 児 院 で 暮 ら し て た の で、
!
15
﹁えー、ご迷惑をお掛けするとは思いますが宜しくお願いします﹂
俺も同じく一礼。もう十分だろう。今の俺は犬が腹を晒し出すように諦めているん
﹂な視線が逃げ場のない俺を集中放火。もう十分だろっ さっ
?
だ。もう無理。
が、
﹁まだ行けるだろ
﹂
このやろ織斑、お前もその視線か
と思って満足したろうに。
あっ
ええい、ままよ
﹂とも﹁え
?
﹂とも聞こえる。予想外の反応と待ってましたという反応両方だ。
!
き﹁見た目ガッツリ外国人なのに名前で何か残念﹂感とか﹁何それ芸人 ﹂みたいなこ
?
!
!
!
?
日本人で更に意外なモノ
﹂
孤児院でも子供達にウケてるネタだ。俺のNo.18
﹁ほっ
﹁⋮⋮﹂
﹁﹁﹁⋮⋮﹂﹂﹂
耳が動く。しかも片方ずつだ。
!
!
!
俺は分かってる。今皆が求めてるのは見た目に反したモノ。ロシア顔してガッツリ
﹁お
?
﹁と、特技が有ります
第2話 クラスメイトは女子ばっか
16
止めてくれぇ
そのいたたまれない雰囲気を醸し出さないでくれ
﹂
﹂にしか聞こえなかった。
皆も﹁ゴメンね﹂みた
!
世界が沈黙した。
頼む織斑
いなの止めろ
俺には﹁異常ですか
?
﹁⋮⋮以上です⋮⋮﹂
!
!
﹁⋮⋮だい⋮⋮以上ですか
!
入ってきた。
﹂
﹁﹁﹁きゃぁぁあ
﹁何だぁ
!
⋮⋮嘘です。
﹂
しかしこの異様な盛り上がり様は何だ
﹂
﹁お姉様に憧れてここに来ました
﹁千冬様ー
!
!
?
でいた俺の気分は一気に吹き飛ばされた。スッキリだ。
突然クラス中の女子が黄色い歓声を上げる。そのせいか、つい今さっきまで落ち込ん
!?
﹂﹂﹂
それから程なくしてクラス全員の自己紹介が終わり、いよいよクラスの担任が教室に
◇
?
17
あ
こいつら俺達のメモ消すの早ぇ
﹁きゃああああ
﹂
お姉様もっと叱って
﹂
何か悲しくなるわ。
罵って
﹂
!
馬鹿者を集めているのか
﹁全く⋮⋮。よくもまぁ毎年ここまで馬鹿者が集まるものだ。それとも何か
!
!
?
﹂
﹂
!
私の所に
織斑の頭に何かが激突したのは確認した。が、当たったのは何でもない普通の出
?
言っても大丈夫かな
﹁お、織斑先生。もう職員会議は終わったんですか
織 斑
﹂
⋮⋮ あ ぁ、ま ぁ 確 か に 似 て る な。良 か っ た な 織 斑 一 夏。身 内 が 学 校 に 居 て。
﹁ああ、山田君。挨拶を押し付けて済まなかったな﹂
?
?
初 速 か ら 人 間 に 当 て て 良 い よ う な も の で は な い 凶 器 に し か な っ て な い。教 器 っ て
席簿だ。
は
﹁いっ⋮⋮
織斑が声を上げたと同時、否、僅かにそれより早く打撃音が響いた。
﹁千冬姉
ニーズの辛子とかTOKYOとかとは別次元だ。
それほどまで有名なのか分からないが、この盛り上がり方はジョ
何て奴等だ⋮⋮
﹁でも時には優しく
!!
!
!?
?
!
!
第2話 クラスメイトは女子ばっか
18
?
⋮⋮どうした
﹁いや、千冬姉俺は﹂
﹁で、お前は満足に挨拶も出来んのか
?
﹂
!?
﹂
﹁さて、時間が無いから進めるぞ。それと﹂
は別次元だ。逆らうのは絶対嫌だ。
ある程度は実力っていうのが分かる。今まで自分でも多く手練れを見てきたが、この人
一目で分かった。俺だってやっていた〝仕事〟の都合上、相手の動き、立ち方等から
︵かなり強いな、この人は︶
叩いて居るが│
有無を言わさぬ威圧感とはまさしくこの事だろう。それに先程から織斑一夏をブッ
6までに鍛え抜く事だ。逆らうのは良いが、私の言うことは聞け。いいな﹂
﹁⋮⋮さて。私がこのクラスを担任する織斑千冬だ。私の仕事は弱冠15のお前達を1
た視線が織斑一夏に移る。頑張れ。
このやり取りで漸く他の女子も2人の関係に気付いたらしく、先程よりも密度が増し
﹁織斑先生と呼べ。馬鹿者が﹂
﹁∼っ
再度一閃。そう、最早一閃だ。しかも明らかに面ではなく角が入った。
?
19
頭を押さえる織斑一夏を一瞥し│
﹁早く席につけ。馬鹿者﹂
◇
﹁⋮⋮はい、織斑先生﹂
1時限。IS基礎理論を容赦なく頭に詰め込まされた優太と一夏はこの休み時間で
既に死にかけていた。
﹁⋮⋮もう無理。ギブ⋮⋮﹂
一夏も優太もISの知識なんて持ってる訳もなく、ただただ教科書にマーカーを引く
だけで精一杯だった。
更に教室の内外から更に増した視線でグロッキー状態。そんな中、優太は心の傷を何
とか減らそうと一夏に話し掛ける。
﹂
?
傷付いた者同士硬い握手を交わし、メールアドレス、電話番号を交換する。これで孤
﹁宜しく一夏﹂ ﹁おう。宜しくな。俺も一夏でいいよ﹂
﹁曽我美優太。優太でいいよ﹂
﹁あぁ⋮⋮。何とかな。えっと君は⋮⋮﹂
﹁織斑一夏君⋮⋮大丈夫かよ⋮⋮
第2話 クラスメイトは女子ばっか
20
立することは先ず無くなったと安堵する双方。
﹁お前、孤児院に居たんだってな。此処に来る経緯みたいのって聞いても良いか
﹂
﹁いやぁ、あれはちょっと⋮⋮﹂
﹁ちょっと良いか
﹁ほ、箒
どうした
急に⋮⋮﹂
?
︶
﹁ちょっと宜しくて
︵うぁぁぁぁ
﹂
?
!!
?
﹁⋮⋮な、何でしょうか
﹂
当然トイレを使おうにも此処は生憎女子高なのだ。望みは薄い。
︵トイレ行きてぇ⋮⋮︶ 一夏が居なくなった事で全女子の視線を浴びる優太。
﹁⋮⋮嘘ぉ⋮⋮﹂
箒と呼ばれた彼女は一夏の腕を掴んでそそくさと教室を出ていく。
﹁話がある﹂
?
うに見上げる。
﹂
ポニーテールが印象的な何処か鋭い雰囲気を纏った彼女を見た一夏がやや驚いたよ
優太がどうするものかと思案していると、窓際に居た女子が一夏に話し掛けてきた。
?
?
21
既に正気度が限界を振り切った所に高めの声がかけられる。振り返ると腰に手を当
て、仁王立つ女子が居た。
ブルーの瞳にロールが僅かにかかった金髪。
﹂
口調も雰囲気も高貴、そして如何にも男は自分以下と言った考えを持ってそうな彼女
あれ、同じクラスだった⋮⋮か⋮⋮な⋮⋮
はややつり目。
﹁ん
?
﹁まぁ
貴方わたくしを知りませんの
﹂
すると、それを聞いた彼女は大仰に│
自分の一番後ろに居た生徒だと理解するのに大変な時間を要した。
自己紹介のショックで他人の事は右から左だった。その結果、優太は目の前の女子が
?
︵思い出せ
︶
﹂
記憶を探れぇ
﹁ゲ、ゲルニカ⋮⋮さん
﹁﹁﹁だぁぁっ﹂﹂﹂
!
?
﹂
やってしまった。優太は変な汗が止まらなくなっていた。
一斉に他の女子達がずっこける。
?
!
﹁ご、ごめん⋮⋮覚えてなくて⋮⋮えっと⋮⋮﹂
!
﹁あ、あ、貴方、わたくしを馬鹿にしてますの⋮⋮
?
第2話 クラスメイトは女子ばっか
22
﹁いやいや
そんなつもりは
﹂
﹁セ、セシリア・オルコットさん
そう、思い出したよ
直ぐ様体の影で座席表を表示。一瞬振り向いて確認。
!
ねぇ⋮⋮
﹂
﹂
!
?
私は代表候補生、エリートなのですわ
!
﹂
﹁そんなわたくしとクラスが同じなんて、幸運だというのをもう少し理解していただけ
自身の試験話をし始める。
突然代表候補生と言われて機嫌を良くしたセシリアはまたも大仰な身ぶり手振りで
﹁そう
﹂
﹁そりゃぁ、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんと比べれば俺の知識なんて
﹁よくもまぁ、ISの事を何も知らずに入学出来たものですわね﹂
優太の返答にセシリアが何度目かの﹁まぁ﹂から話始めた。
が本当に居るとはなぁ⋮⋮不機嫌にすると何されるか分かったもんじゃねぇな︶
︵イギリス代表候補生⋮⋮そう言えばさっきそんな事も言ってたな。しかし、こんな奴
いた。
相手の態度にえらく冷静になった優太は座席表と同時にセシリアの情報を検索して
﹁どうも⋮⋮所で、俺に何の用で
?
!
!
﹁ふん。まぁ、下々の者としては上出来ですわ﹂
!
23
ます
﹂
﹁そうか﹂
官を倒したエリートですから
何しろわたくし、試験で唯一教
まぁ 私は優秀ですから、貴方達のような無知の者にも
﹂
手を差し伸べる位はしてあげないこともないですのよ
﹁⋮⋮貴方、馬鹿にしてますの
?
教官
﹂
倒したよ
﹂
それってISで戦う奴か
が意外な反応を示した。
﹁ん
﹂
﹂
﹁それ以外に何がありますの
﹁は
﹁いや、3分マッチのヤツだろ
?
﹁くっ⋮⋮
また後で聞きますわ
!
逃げないことね﹂
ているとチャイムが鳴って続々と皆が席に着いていく。
何かが狂ったのか、ブツブツと独り言を始めたセシリアに﹁まぁまぁ﹂と落ち着かせ
?
?
?
?
﹁わたくしだけと聞きましたが⋮⋮﹂
?
?
﹁知らんよそんなの⋮⋮﹂
ああ、あと一夏も倒したって﹂
やたら自分が優秀だと主張してくるセシリアにこっそり嘆息した時、その一言に優太
!
?
?
?
?
﹁いや、俺も倒したぞ
第2話 クラスメイトは女子ばっか
24
!
﹁いや、逃げられない⋮⋮はぁ⋮⋮﹂
この後絶対良くないことが起きる。優太はもはや確信していた。
◇
﹁この授業では各種装備について説明する﹂
また専門用語やらなんたら現象、なんたら効果の話をされるのか⋮⋮。
﹁いや、その前に再来週のクラス対抗戦に出る代表者も決めないとな﹂
ふと、思い出したように織斑先生が言う。
クラス対抗戦は入学時点での実力推移を測る行事だ。クラスの代表者は選ばれると
1年間変われないやや面倒臭そうな役だ。
推薦でも立候補でも構わんぞ﹂
﹂
生のセシリア・オルコットに推薦を│
﹁はい。私は織斑君を推薦します
﹁じゃあ私は曽我美君を﹂
!
﹂
しまった。出鼻を挫かれた。物珍しさで推薦は此方としても大変困る
ISに疎いというのに。
﹁ちょ、ちょっと待ってくれ
一夏も俺も
多分これは関わらない方が身のための奴だ。ここは穏便に済ましたいので代表候補
﹁さて、早速だが誰か居るか
?
!
!
25
一夏が立ち上がって拒否の体勢を取る。よし、俺も便乗して。
おしまいだぁ
﹂
あー。駄目だなこれは。
﹂
この無責任な推薦を止めてくれ一夏
彼女達の﹁何とか
﹁推薦された者に拒否権など存在しない。良いから黙って席につけ織斑﹂
流石だ一夏。お前のお陰で俺も助かりそうだ。
﹁俺はそんなのやらないぞ
!
!
﹁俺もはn﹁席に着け、邪魔だ﹂はい。すみません﹂
もう駄目だ
!
してくれそう﹂な考えを破壊してくれ。
!
!
来た
来たぞ代表候補生
あまり期待はしていないが、お前が立候補して俺達を論破
!
GO
な極東の猿に任せますの
⋮⋮猿
﹂
!
?
!
﹁実力でもわたくし、セシリア・オルコットがやって当然でしょう
それを、こんな無知
﹁何故イギリス代表候補生のわたくし、セシリア・オルコットではなく、物珍しさでこん
!
してくれれば全ては解決するんだ。
!
そこでセシリア・オルコットが声を上げた。
﹁納得いきませんわ
第2話 クラスメイトは女子ばっか
26
な彼等に任せて⋮⋮サーカスでもやって恥をかきますわ
これは予想外だ。
⋮⋮黙って聞いていれば好き勝手言ってくれてまぁ。
﹂
﹂
えっと⋮⋮﹂
あ、一夏キレたな。しかもその一言は相当ヤバイぞ。
﹁⋮⋮イギリスだって、世界一不味い料理で何年覇者だよ﹂
﹁それに、このわたくしがどうしてこんな極東の遅れた国なんかで⋮⋮﹂
!
信じられませんわ
イギリスにだって良い料理は有るぞ
﹂
このままだと俺の目論見がぁ
﹁なっ⋮⋮
﹁止めろ一夏
!
私の祖国を侮辱しますの
無いわ︵笑︶﹂
暫く沈黙。
﹁⋮⋮﹂
﹁⋮⋮あれ
﹁あ、貴方達
﹁それは此方の台詞だ﹂
!
!
!
?
﹁∼っ
決闘ですわ
﹂
貴方織斑一夏と言いましたわね
わたくしに逆らったことを後悔
一夏も大分頭に来てるみたいだ。頼む、頼むから穏便に済ましてくれ
!
!
!
させてあげますわ
!
!
!
!
27
!
うわ
決闘申し込まれてる
最悪の事態だ⋮⋮
!
﹁それと曽我美優太
貴方も同じですわ
﹂
!
!
チャンス
特別
男性ですけど
?
⋮⋮ふざけるな。
?
﹂
確かに凄いよ。だけど
!?
から立場が無いとか、寝言は寝てから言え 俺は人間だ
て、実験動物みたいに使い捨てで扱われる者の痛みが
﹂
人権を剥奪され
恐怖がわかるか
お前もだろ
苦しみが
!
!
﹂
!
﹁一夏
ここは俺に譲れ
!
﹂
不味い⋮⋮。抑えないといけないのに、言葉が止まらない。
んだよ
﹁そうやって自分が他の人を支配できると思ってふんぞり返ってる奴が俺は大っ嫌いな
!
!
!
!
貴な身分でもなければ誰かさんに嵌められてなかったら此処に居ないさ。それに、男だ
な、それを理由に他人を従えようとするのは間違いだろ。俺は確かにお前とは違って高
﹁何の権限があって俺にそんな事言ってやがる。代表候補生だ
?
?
特別に私の下僕、いえ、奴隷になると言うのでしたら許してあげなk﹁却下だ﹂んな
﹁何を言いますの⋮⋮まぁ、貴方にはチャンスを差し上げますわ。貴方は男性ですけど、
﹁え⋮⋮いや、お、俺は関係ないからっ⋮⋮﹂
!
あ、でも済まない一夏。俺は関係ないから頑張っ│ !
﹁貴方⋮⋮何を言ってますの⋮⋮﹂
第2話 クラスメイトは女子ばっか
28
!
﹁ゆ、曽我美⋮⋮
たぁぁ。
﹁い、良いですわ
﹂
﹂
!
⋮⋮勢い怖ぁ
?
イメージ・インターフェイスとか大気圏内における荷電粒子の摩耗とか⋮⋮もう並の
かい中授業の復習。
放課後、俺と一夏は山田先生に教室で待つように言われて、帰ってくるまで夕陽が暖
﹁大丈夫だ一夏⋮⋮俺もさっぱりだ﹂
﹁駄目だぁ⋮⋮わからない﹂
◇
を切り替えた。
俺は動悸が激しくなった胸を押さえて、怒鳴ってしまった事を後悔しながら授業に頭
︵くっそぉ⋮⋮。やってしまった︶
美とオルコットは準備をしておくように。それでは授業を始める﹂
﹁⋮⋮ふむ。話は纏まったか
では来週の月曜日。放課後に第三アリーナで行う。曽我
もう話す事はないとセシリア・オルコットが席に着く。
受けてあげますわ
大 分 引 か れ た な。間 違 い な い。し か し 自 分 で も 驚 く 位 怒 鳴 っ ち ま っ た ⋮⋮。参 っ
?
!
!
29
物理じゃないぜ。
まだIS乗ってドンパチする方が楽で良いや。
﹁そう言えば優太さ、さっき滅茶苦茶怒ってたけど、何かあったのか
最低限予習をしないと破滅する。間違いない。
気にするなよ。と再び教科書に視線を落とす。
﹁悪い。変なこと聞いて⋮⋮﹂
知ってる⋮⋮。そいつらのことを思うと、つい、ね﹂
﹂
﹁⋮⋮別に。ただ、俺はそういう目に昔あってなぁ⋮⋮。そういう目にあった奴も大勢
?
︵勢いで言っちまったけど⋮⋮仕方ない、少し聞くか︶
来週のセシリア・オルコットとの試合だ。
部屋問題はクリア。学習面はこれからやっていくしかない。取り敢えず今の問題は
﹁ん﹂
﹁分かりました。行こうぜ優太﹂
だったらと思うと寒気がする。男2人だけとはいえ、とても心強いな。
漸くだ。なんでも、俺達の部屋は今日の今日までモメていたらしい。もし男独りだけ
とそこで山田先生がルームキーを持って帰って来た。
﹁はいー。お待たせしました。漸く部屋に案内出来ますよー﹂
第2話 クラスメイトは女子ばっか
30
﹁ちょっと電話してきます﹂
教室から離れて通話履歴から例の人物を出す。
﹁じゃあ待ってますね﹂
いやぁ、出るかなぁ⋮⋮。
もすもす
珍しいねぇ、ゆー君から電話なんて。知ってるよ、喧嘩売ったん
通話ボタンを押すと直ぐにコールが始まり、2回ほどで目的の人物が出た。
﹃はぁーい
それに手を打ったって何だし
怖い
あと、俺が聞きたいのはそれじゃなくて⋮⋮。って言うか
人は
相手は代表候補生ですし﹂
大丈夫大丈夫ー。だって〝このISは今の今までゆー君の事をシミュレー
﹂
﹂
﹄
トしかしてなかった〟からねー﹄
﹃そんな事
このIS⋮⋮
?
﹃あっちゃぁ⋮⋮。また今度ね
!
﹁ん
何で知ってるのかねこの
だーい丈夫、もう手は打ってあるよー。待っててねー﹄
?
相手は天災束さん。テンション高いねぇ⋮⋮。
でしょ
!
?
!
切れた。しかも〝このIS〟って⋮⋮まさかとは思うけどあの人それはやらないよ
﹁え、ちょ
!
!
?
﹁はぁ⋮⋮束さん。俺、勝てると思いますか
!
?
?
!?
31
な⋮⋮
いやまさかな⋮⋮。
?
﹁はぁ。⋮⋮ごめん、待たせた﹂
第2話 クラスメイトは女子ばっか
32
│
第3話 VSセシリア・オルコット
│行くぞ﹃シンモラ﹄
部屋は俺が居た孤児院とは比べ物にならない豪華さだった。
コンセントが一杯
!
!
でっかいベッドが2つにシャワーもベランダも付いてる。おお
ある
!
が住んでるので、あんまり騒いじゃ駄目ですよ﹂
俺の荷物が届いてる﹂
既に机の上に俺のバッグが置いてある。一夏のも奥にあるが⋮⋮何あれ
﹁あれ
少な。
?
?
着替えか
?
充電器と
﹁今日から此処が織斑君と曽我美君の部屋になります。隣の部屋にも上にも下にも学生
な﹂
﹁は ぁ ⋮⋮。凄 い 部 屋 だ な。そ こ ら の ビ ジ ネ ス ホ テ ル よ り も 確 実 に 良 い も の 揃 っ て る
33
﹂
﹁お前の荷物は私が見繕っておいた。あれだけ有れば十分だろ﹂
﹁いや、千冬姉⋮⋮確かにそうなんだけどぉ
んて思ってたけど、やっぱりあるとないとではかなり違うものだ。
﹁トイレもあって安心だな一夏。でもここって大浴場があるって⋮⋮﹂
何でですか
﹂
﹂
﹁それなんですけど⋮⋮暫く2人は大浴場を使用できません﹂
﹁え
﹁あ⋮⋮そっか﹂
﹁ええ、まぁ﹂
3人が冷たい眼差しを向けてくる。
﹁﹁﹁⋮⋮⋮﹂﹂﹂
え、何その反応。や、やだなぁ。冗談だって。
じゃあ男の人に⋮⋮
それはそれで
ありがたい。でも孤児院に置いていった物はそんなに多くないから別に良いかなな
﹁曽我美君のは孤児院の方が送ってくれましたよ﹂
本日何度目だかの出席簿が炸裂。一夏も避けようとしたけど軌道読まれてたな。
!?
﹁馬鹿かお前は。同年代の女子と風呂に入りたいのか
?
曽我美君、女の人に興味無いんですか⋮⋮
?
?
?
?
﹁冗談ですよ。そんなの興味無いですって﹂
﹁え
?
第3話 VSセシリア・オルコット
34
駄目なような⋮⋮﹂
あ
何だ
﹂
いつの間にか部屋から覗いてる女子達がメモし始めたぞ
﹂
止せぇ
そん
嫌だぁぁ
!
﹁何でそう言う歪んだ方に行くんですか
なの流されたら誤解される
﹂
すぐにベタを始めるわよ
﹁織斑君と曽我美君⋮⋮行けるわ
﹁漫研呼んで
もう既に俺と一夏の禁断の﹁掛け算﹂が産声をあげているのか
不味い
!
!
!
弱冠数名、ハァハァするのは止めろ
屋の使用にあたっての資料を受け取っている。
こらぁ
気休めになりませんよ織斑先生
!
よく聞こえなかったわ。⋮⋮男を襲う⋮⋮趣味
!
﹁安心しろ。あいつは男を襲う趣味はない﹂
﹁何だって
﹂
!?
!
?
止めて下さい⋮⋮。
禁断の薄い本が出歩くのも間もないな。そんな事は露知らず、一夏は山田先生から部
﹁あ、はい。分かりました﹂
ださい﹂
﹁じゃあ夕食は18時から1時間、朝食は7時から1時間で寮の学年別食堂で摂ってく
!
?
!
もうベタとか早すぎるだろ
あと漫研
!
!
!
!
!
!
!
35
﹁﹁﹁キタァァァァ
﹂﹂﹂
禁 断 が 加 速 し た ぁ ぁ ぁ
悟ったぜ⋮⋮。
﹁おお
光 輝 く 眼 に 力 強 い 雄 叫 び。嗚 呼、も う 手 遅 れ だ ⋮⋮。俺 は
ベッドのモフ感凄いな
﹂
粗方説明を受けた俺達は取り敢えず荷物を整理していた。駄目だ。今は掛け算を忘
!
◇
﹁五月蝿いぞお前達。少しは静かに出来ないか﹂
!
!
﹁ぁぁ⋮⋮そうだな⋮⋮﹂
!
れよう。早く荷物を整理して母さんに電話しないと。
﹂
!!?
りの、野郎と野郎の掛け算が濃縮された1冊
!
しかも手紙付きだ。
そんな意味の﹁仲良く﹂は一切
コニー﹄
なんちゅーもん入れてくれてるんじゃ
コニィィィ
!
﹃ユウ兄ちゃんへ。もう1人の操縦者と仲良くな
合切御断りだ
!
!
!
入ってる。しかもそれは、まさしく禁断の書物。白子のバスケしかりテニスの王様しか
俺のバッグ、あっちにあった全部の着替えが入ってるのは良いんだが、何やら本が
﹁
第3話 VSセシリア・オルコット
36
ソッコで捨てるからな
﹃あのー。すみませんー﹄
﹂
容赦しねぇ
﹁あ、はーい。どなたですか
!
!
きた。
ん
﹃えっと、1年のルイディナ・ニコラエフですけど、曽我美優太は居ますか
﹁おい優太。誰か呼んでるぞ﹂
﹁およ、ルディか。ちょっと待ってー﹂
そう言えばルディもIS学園に居たんだったな。すっかり忘れてた。
どうせすっかり忘れてたとか
今しがた投げようとしていた禁書をベッドに置いてドアを開けに行く。
﹂
ドアを開けると同時に顔面にグーパンチがめり込む。
!?
ユウ、私が何度電話したと思ってるの
﹂
?
﹁おう、ルディ。久しぶりぃぁ
﹁⋮⋮久しぶり
落ち着け
思ってるんでしょ﹂
﹁ま、まて
!
?
?
?
﹁これが落ち着いて居られますか⋮⋮。お母さんから聞いたわよ。ユウの〝仕事〟⋮⋮
!
﹄
俺がとある腐女子の禁書をゴミ箱に叩き付けようとした時、誰かがドアをノックして
?
37
それと学費や生活費とかの事も⋮⋮﹂
母さん話したのか。止めてくれよマジでぇ⋮⋮。
けど。お母さんから聞いたこと﹂
﹂
﹁しかもIS使えたなんてね⋮⋮。まぁ、それは良いとして、もっと詳しく聞きたいんだ
分かったから凄むな
!
大丈夫か優太
﹂
!?
って、そっちか一夏ぁぁぁ 誤解だぁぁぁ
!
あれは俺のバッグに入ってて、あれを参考に仲良くしよう
!
?
﹁⋮⋮ユウ、まさか⋮⋮﹂
!
としたんじゃな│﹂
﹂
﹁まて、落ち着こう。良いか
﹂
﹁嘘⋮⋮信じられない
﹁ぐでぇぁ
鳩尾にににに
!
よりによってその禁書に触れるとはぁ
おお、一夏。頼む助けてくれ。現状はかなり厳しく至急応援が欲しい。
﹁うわっ
俺もジリジリと下がっては居るが、どうしたものか。鼻が痛い。
ジリジリと迫ってくるルディが恐ろしい。
﹁分かった
!
!?
!
!
﹁優太⋮⋮お前こんなの読むんだな﹂
第3話 VSセシリア・オルコット
38
﹁もう良い
﹂
ルディ
!
何でそんなに怒るんだルディ
怒り肩になったルディが鼻息荒くして部屋から出ていく。
まって、行かないでくれ⋮⋮ 誤解なんだ
!
!
その事情は分かったような顔を止めてくれ⋮⋮。
﹄
﹃一夏居るか
?
﹁⋮⋮一夏、それは何だ
﹂
誤解を招くには十分だな。
合ってる禁書が。
今 一 夏 は 倒 さ れ た 俺 を 起 こ し て い る 最 中。し か し そ の 手 に は 例 の 野 郎 同 士 が 絡 み
﹁⋮⋮いや、箒。これはだな﹂
?
たな。
居たのは剣道着に竹刀を持ったポニーテールの女子生徒。たしか一夏が箒と呼んで
と疑問する前に、と言うか此方が返事をする前にドアが開け放たれる。
今度は誰だ
?
と、そこへ再びノック。
女﹂な本だったらと思うと⋮⋮それはそれで無茶苦茶怖い。
でもこれはこれで助かったのかも知れない。もし部屋の相手が女子でもっと﹁男と
!
!
﹁安心しろよ優太。俺は相手の趣味にとやかく言うつもりは無いからな﹂
39
﹁問答無用
その⋮⋮腐った精神を叩き直す
﹂
!
﹂
竹刀を躊躇いなく降り下ろしてきたぞ
﹂
何でそんなに怒ってらっしゃるので
何だ
一喝と共に腰に差していた竹刀を抜刀。そのまま⋮⋮
うぁぁぁぁ
﹂
見損なったぞ一夏
﹁ほ、箒さん
﹁五月蝿い
﹁ぎゃぁぁぁ
!?
!?
⋮⋮
﹂
脳天に一撃。な、何なんだよコイツらは⋮⋮ どうしてこうも簡単に人を殴れるんだ
!
!
?
!
!
!? !
!
!
翌日。
◇
少しだけ腹を満たして就寝と、何とかハードすぎる初日を終えることができた。
その後、疲れて夕飯を食べる気が失せた俺はシャワーを浴びてソッコで就寝。一夏も
﹁お互い様だ⋮⋮﹂
﹁お前⋮⋮その事情は分かったみたいな顔は止めてくれ⋮⋮﹂
何だかんだやっぱりお前も苦労してるんだな一夏⋮⋮。
箒の人も怒り肩で出ていった。
!
!
﹁ふんっ
第3話 VSセシリア・オルコット
40
授業は予習をしていたお陰で途中までついていけたものの、善戦むなしく敢えなく撃
沈。その時間、僅か12分。しかもまだ1時限のIS基礎理論だ。
﹁あーもう無理⋮⋮﹂
﹁⋮⋮大丈夫だ一夏。12分は保った方だと思うぞ﹂
休み時間にも復習を怠らない。怠れない。
﹁無様なものですわね、織斑一夏、曽我美優太﹂
⋮⋮セシリア・オルコットか⋮⋮。
﹁⋮⋮セシリア・オルコットか⋮⋮。ごめんな、今構っても面白くないぞ⋮⋮﹂
別に面倒臭いからとかじゃなくて、単純に昨日からの精神的疲労と殴られたからの痛
み。更には知識不足の脳ミソの限界からの織斑先生の制裁⋮⋮。今セシリア・オルコッ
トを見ても﹁負けたくない﹂とか﹁話したくない﹂といった感情が微塵も湧かない。
セ シ リ ア・オ ル
あぁ、馬鹿
ループしてないか
何でセシリア・オルコットが居るんだ
?
﹁優太⋮⋮次はISと操縦者の関係についてだぞ⋮⋮﹂
んぁ
?
﹁あ ぁ。そ こ ま で 難 し く な さ そ う だ ⋮⋮ だ が 予 習 は せ ね ば ⋮⋮ ん ぁ
ループしてないか
?
コット⋮⋮ごめんな⋮⋮今構っても面白くないぞ⋮⋮﹂
あれ
?
にしに来たな。でもごめんな⋮⋮今構っても面白くな⋮⋮あれ
?
?
﹁な、何だか⋮⋮大変そうですわね⋮⋮﹂
?
41
﹁そうなんだ⋮⋮﹂
﹁はーい。席に着いて下さいねー﹂
授業が始まる。ノートをひろげ、ペンを取り、また変な発言をして出席簿制裁を喰ら
わぬようにと精神を研ぎ澄ます。
﹂
⋮⋮来た。初速は人智を越え、そして人の限界を越える、歩く加速機⋮⋮
﹁
!
﹂
インパクト。だけど俺にじゃない。揺れたのは目の前の一夏だ。一体何故⋮⋮
﹁いってぇ
﹁馬鹿な事を考えてる暇があったらその頭に知識を詰め込め馬鹿者﹂
!
入れた知識も飛んでくぞ
何ですか⋮⋮
﹂
?
﹁ああ、それと曽我美﹂
﹁はひっ
﹁専用機⋮⋮
俺にですか
一夏は無いんですか
?
﹂
?
やっぱりか。予想出来ていた事とは言え、いざそうなると束さんの力は恐ろしい。
?
﹁何を怯えている。来週の事だが、お前に専用機が与えられることが決定した﹂
?
?
一夏はしょっちゅう叩かれてるな。何考えてるのか知らないけど、あまり叩かれると
?
!
﹁はい、ちふ⋮⋮織斑先生﹂
第3話 VSセシリア・オルコット
42
手を回してあると言っていたのもこの専用機の事だろう。しかし、これで益々好奇の
目に晒される事になったに違いない。
﹁え
俺も
﹂
?
︶態度で│
?
随分物分かりが良くなったんじゃありませんの
﹂
?
﹁あ、じゃあ曽我美君。何故専用機でも勝てないと思ったか、具体的な事を聞いても良い
そりゃあそうだ。何しろ│
﹁あら
?
﹁んだよなぁ。専用機だからって勝てるわけじゃ無いもんなぁ⋮⋮﹂
﹁良かったですわね。これで更に無様な負け様を晒す事になりまして﹂
た︵
するとセシリア・オルコットが立ち上がっていつものように腰に手を当て、堂々とし
うだ。
一夏は何で貰えるか知らないけど、取り敢えず1人でおかしな扱いを受けずに済みそ
ることがあるみたいだが、多くない。
じイギリス代表候補生でも持っていない人も居る。企業に所属してる人にも与えられ
俺が喧嘩を売った代表候補生のセシリア・オルコットは専用機持ちだったが、他の同
周りの女子がざわめく。当然だ。専用機を持てるのはほんの僅かにしかいない。
?
﹁ああ。織斑、お前にも専用機が与えられる﹂
43
ですか
﹂
ば専用機は強いので、俺が1日2日で勝てる確率は低いと思いました﹂
過ごせば過ごすほど、より操縦者体の一部のようになっていく。かなり噛み砕いて言え
めてその操縦者専用機として再起動します。それから専用機は既知の通り、長い時間を
し、そして﹃一次移行︵ファーストシフト︶﹄を完了。機体の形状等、変更を終了して初
化を行い、以降操縦者のバイタル等をチェック。現状で操縦者に最も良い最適化を終了
では露程も効果は期待できません。それに対して専用機は初期起動時に初期化と最適
と非常に多いので制限がかなりかかってます。なので最適化と言っても練習用の機体
体でも自分に最適化されていたりと、一応は可能なんですが、その情報が学生1人1人
化した情報の保存やコア・ネットワークによる他機体へフィードバックさせる事で他機
です。練習用の機体である﹃打鉄﹄や﹃ラファール・リヴァイブ﹄でも操縦者別で最適
し、最適化を行っていきます。つまり、ISと長い時間過ごせればより良いと言うこと
の特性を感じてそれに合わせていくように、ISもまた、操縦者の特性を理解しようと
﹁はい。先ず、ISと操縦者の関係です。ISには意識のようなものがあり、俺達がIS
山田先生からのご指名だ。丁度良いや。
?
織斑、教科書6ページを音読しろ﹂
﹁上出来だな。因みにだが、お前達に与えられるのはあくまでデータ収集の為だ。では
第3話 VSセシリア・オルコット
44
﹁え、えーと│﹂
電話帳の如く、厚く重たい教科書からページを見付けて一夏が音読する。
コアは全部で467個で束さんしか作れず、完全なブラックボックスの事。束さんは
それ以上作ることを拒否しており、世界では割り振られたコアを使用して研究、開発、訓
練を行っている事。コアを取引することはあらゆる場合においても禁止されている事。
﹂
このクラスに有名人の身内が2人も
﹂
﹂
!
﹂
それらを音読し終え、一夏が席に着くとクラスの誰かがおずおずと織斑先生に質問す
る。
﹁あの、先生。篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか⋮⋮
﹁そうだ。篠ノ之はあいつの妹だ﹂
凄い
ほぉ。初めて知ったぞ。束さんから聞いたことも無かった。
﹁えぇー
﹁今度教えて
﹁やっぱり篠ノ之さんもIS詳しいの
!
しかし束さんの妹さんか。なんと言うか全然雰囲気が違う。何か後で聞いてみるか。
方がおかしい。
リュンヒルデと呼ばれた︵最近調べた︶織斑先生の身内が居るとなれば盛り上がらない
クラスがドンドン盛り上がっていく。そりやぁそうだ。あの天災束さんの身内とブ
!
?
!
?
45
﹁あの人は関係ない
﹂
⋮⋮やっぱり後で聞くのはやめる。
そう言って窓の外に顔を向けてしまう。
ない﹂
﹁⋮⋮大声を出して済まない。だが、私はあの人じゃない。教えられるような事は何も
刻と180度変わって一気に静まり返った。
織斑先生以外、皆が何が起こったのか分からないような表情をしていて、クラスが先
盛り上がっていく中、篠ノ之箒さんが突然大声を上げた。
!
そ、それでは教科書の8ページを⋮⋮﹂
!
﹁おーい、箒﹂
﹁⋮⋮﹂
﹁なぁ、箒﹂
ていた。
その後も授業を何とか乗り切り、昼休みになった時に一夏が篠ノ之箒の所に歩み寄っ
◇
突然の事態に困惑していた山田先生も気持ちを入れ換えて授業を再開する。
﹁あっ、はい
﹁んんっ。山田君、授業の続きを﹂
第3話 VSセシリア・オルコット
46
﹁名前で呼ぶな﹂
﹁じゃあ篠ノ之さん﹂
﹁⋮⋮篠ノ之は止せ﹂
﹁じゃあ箒﹂
なんじゃありゃ。話が進まねぇぞ
﹁⋮⋮﹂
昼飯の時にお願いしに行くって言ってたけど、先が思いやられるわ。て言うか篠ノ之
?
一夏が床に叩き付けられたぞ
⋮⋮こっちも怖ぇー。
箒と一夏が幼馴染みって事は、俺は一夏と完全な無関係じゃなかったんだな。束さん
怖ぇー。
んぉ
﹁なぁ、箒ってば﹂
俺も今日はやることがある。
﹁じゃあ俺も⋮⋮﹂
?
俺がフューチャーフォンを耳に当てると同時に賑やかな中から、ヘヴィーなメタルが
﹁⋮⋮さぁ、来るぞ﹂
て電話帳から﹃ル﹄を出して⋮⋮。
先ずは廊下に出て多くの女子達の視線を浴びながらフューチャーフォンを取り出し
?
47
聞こえてくる。
﹃ユウゥゥゥゥ
緊急事態
﹄
そりやぁ一杯あったよ。トイレの紙がなくなった時とか買い物中に何買
て欲しいと無茶行ったんだ。
頼んだのはもう何年前か忘れたけど、俺が緊急事態の時だけ電話するから絶対気付い
簡単。俺が頼んだからだ。
実はあいつ、ルディは俺からの着信音だけは音が出るようになっているんだ。理由は
お。あいつは3組か。
!!
﹂
うか忘れたとか。本当、大変な時に必ず出てくれるから助かるわ。
?
!?
﹂
も表紙ではなく背表紙だ。
﹁ぉ、ごぁ⋮⋮
﹂
だったらもっと違うのにしておけよ
﹁ユウゥゥゥ⋮⋮何の用ぉぉぉ⋮⋮
そうだろ
この鬼神の如く形相は
な、何だ
!?
着信音だな
!
?
!?
!
!
!?
い、ごめんなさい。
あぁ、眼光止めて下さ
3組に入ると同時に例の電話帳の如く質量を持った教科書が顔面に激突する。しか
﹁おー。ルディこごがぁ
第3話 VSセシリア・オルコット
48
﹂
﹁ひ、ひあ、はなひを⋮⋮しようほ⋮⋮﹂
何
﹂
﹂
﹂
詳しいって言うか、特に専攻して勉強したのが開発とか仕組みとかになるけど。
﹁⋮⋮落ち着いた。ルディ、突然で悪いんだけど、お前IS詳しいよな
ちょっと待て。鼻血をどうにかしないとマトモに喋れない。
﹁話
?
それがどうしたの
?
﹂
!
﹂
?
てたんでしょ
お礼じゃないけど、どのみちこのままだとユウ授業もマトモに着いてい
﹁⋮⋮学費、正式な学校じゃなかったし、塾にも行ってお金が掛かってたのも出してくれ
﹁教えてくれるのか⋮⋮
﹁⋮⋮分かったから、それ止めて﹂
でいる奴の台詞だ。
この通りだ。なんて言わない。それは自分が頭を下げればどうにかなると思い込ん
﹁頼む﹂
﹁え、ちょ、何頭下げてるの
最低限知識を持っていたい。それにこのままだと授業にも追い付けない。
頭を下げる。とてもじゃないが何も知らずにセシリア・オルコットとやり合うよりは
﹁それで良い。俺にISを教えてくれ、頼む
!
?
﹁ん
?
?
49
?
頼もしい限りだ。
けないし⋮⋮その代わり、容赦しないからね
おお
﹂
?
⋮⋮﹂
﹁⋮⋮あ、あと昨日の。あの本コニーが入れたって聞いたよ。ごめんねいきなり殴って
そっちに教えてもらった方が絶対良いと思ったわけだ。
だから、詳しい人でも過去に教えてもらった事のある知り合い、て言うか家族だな。
前で日本語喋れないキャラ﹂にはならずに済んだ。
分で学びながら俺に教えていた時期があった。お陰で俺は普通に喋れるし﹁日本人の名
前にルディはIS学園行くためには日本語も勉強しなきゃいけないなんて言って、自
!
ルイディナって曽我美君の知り合いなの
﹂
?
﹁﹁﹁えぇー
﹂﹂﹂
﹁ああ。ルディは俺の妹だ。戸籍上も血の繋がりもないけどな﹂
何だ。言ってなかったのか。
と、ここで周りに居た女子達がルディに視線を注ぐ。
﹁ねぇ
?
俺が頷いていると先程までルディと話していた女子が質問を飛ばしてきた。
それだけでも十分だ。お陰で悩みが2つも消えた。うん。
﹁分かってくれたかぁ⋮⋮﹂
第3話 VSセシリア・オルコット
50
!
﹁何々
﹂
インスピレーション湧いてきたぁぁ
ってことは同じ孤児院の出なの
﹁ああ﹂
﹁おおぉ
﹂
次の作品も期待してます
﹂
何か覗いてた漫研連中が眼光煌めかせて雄叫びを⋮⋮。あぁ
先輩
これは予想外の出来です
今チラリと一夏っぽい顔が見えたぞ
!
!
おう
?
!
何だ
!
る。へぁ
攻めかよ
その本は今の一夏の顔が見えた⋮⋮うぁぁぁぁ
見たくなかったぁぁ
完成してる
その手の本は
しかも俺が
!
﹁⋮⋮﹂
そして遂に来た月曜日。
◇
⋮⋮うん、この涙は禁書の完成に対するものじゃないと信じたい⋮⋮。
のはそれ以上に喜ばしい事だ。
確かに大変な事になっている。だけど、それの苦しみを分かってくれる仲間が増えた
﹁あぁ⋮⋮﹂
﹁⋮⋮大変な事になってるねユウ﹂
!
!!
漫研連中を見ると足元で鼻血を噴出させた女子生徒が幸せそうな顔をして倒れてい
﹁先輩
! !?
!?
!
!?
!? !
! !?
51
﹁えっと、大丈夫か
優太﹂
駄目だぁぁぁ
﹂
﹂
済まされねぇぇぇ
﹂
﹁お、落ち着け優太
﹁ひっひっふぅー
﹂
いつの間に2人は仲良くなってるんだ
﹂
啖呵切っておいて﹃IS来てないので戦えません︵笑︶﹄じゃ
この2人っていつもこんなのなの
﹁それはラマーズ法だ
﹁⋮⋮篠ノ之
あれ
﹁あぁ。似たような事は良くやっているな⋮⋮﹂
﹂
?
!
!
曽我美君、曽我美君
!
?
﹁曽我美君
!
?
?
!
Sが来ていない。
そう。今現在俺が居るのは第3アリーナはAピットに待機中。だけど、肝心な俺のI
﹁⋮⋮来ないな﹂
﹁⋮⋮﹂
いかん。ついロシア語が出ちまった。翻訳ありがとうルディ。
﹁大丈夫だって﹂
﹁Да. Неважно⋮⋮﹂
?
!
!
!
﹁うぉぉぉ
第3話 VSセシリア・オルコット
52
﹁来ましたかぁぁ
先生ぇぇ
﹂
ぇ、あ、その、ごめんなさい
優太
優太ぁぁぁ
まだ来てません
﹂
曽我美君の専用IS
このままだと本当に﹁IS来ないから戦えません﹂になってしまう
﹁どうした優太
!
!
織斑先生がピットに入ってきた。
俺と一夏はそれぞれ脳天に出席簿を1発ずつ喰らって静かになる。
﹁織斑、お前昨日ISが届いてたろう﹂
えぇ、まぁ﹂
オルコットの相手をしてろ﹂
﹁⋮⋮﹂
沈黙する一夏。
?
何その軽く言う感じ。
﹁お前もオルコットに喧嘩を売ったんだろ
だったら一戦やって見せろ﹂
﹂
﹁お前は昨日の時点で既に一次移行は済ませてある筈だ。曽我美のISが到着するまで
!
!
転びそうな駆け足でやって来た山田先生。嘘だぁぁぁ
﹁ふぇ
!
!?
﹁⋮⋮まったく、騒がしいぞお前達﹂
!
一夏が制服の右袖を捲ると白いブレスレットのようなものが見える。
﹁え
?
!
!
!
!?
53
そうだ。何も俺が最初に吹っ掛けた訳じゃないんだ。
﹂
お前そう言うこと言うなよ
ち、チキショー分かったよ
やってやるさ
!
こい
﹁頑張ってくれ一夏。元はと言えば一夏がキレなかったらこうならなかったんだから﹂
﹁ああ
!
!
これが一夏の専用機﹃白式﹄。
わせるデザイン。
真っ白な色をした装甲。滑らかな曲線とシャープなラインが特徴的な中世の鎧を思
く。
一夏がISの名を叫ぶと全身を光の粒子が覆い、やがて装甲のような物を形作ってい
﹃白式﹄
!?
!
﹁ああ。行ってこい﹂
﹁でもまぁ、行ってくる﹂
あ、俯いた。
﹁⋮⋮う、うむ﹂
﹁⋮⋮なぁ箒、結局この6日間ISの事を全く教えてくれなかったな⋮⋮﹂
PICも作動し、俺達を見下ろす形となった一夏が篠ノ之箒に振り向く。
初めて目の前で見るISの展開。
﹁ほぉ⋮⋮﹂
第3話 VSセシリア・オルコット
54
白式を纏った一夏が勢い良くピットから飛び出していく。
⋮⋮すまない一夏。
どうして貴方が
﹄
﹄って飛び出したから⋮⋮﹂
!
がやや驚いた顔で反応した。
﹄
﹃あら、そうなんですの
心配しなくても大丈夫だ一夏、お前は今皆にウケてるぞ。
ソッコで一夏の否定が入る。
﹄
﹃そんな事言ってねぇよ
?
戦闘開始から5分後。一夏は完全に劣勢だった。
◇
に直撃した。
刹那、セシリア・オルコットの持っていたライフルから放たれたレーザーが白式の肩
!
!
﹃まぁ、良いですわ。わたくしが待つと言うせめてもの情け、感謝することですわ
﹄
ピットで叫ぶとあっちのハイパーセンサーで捉えられたのか、セシリア・オルコット
番を奪ってやるぜ
まだISが届いてなくて⋮⋮でも一夏が﹃俺がお前の出
暫くするとアリーナを映していたモニターに一夏が映った。
﹃あら
?
﹁ごめんセシリア・オルコット
!
?
55
セシリア・オルコットの駆る機体はイギリスの第3世代型IS﹃ブルー・ティアーズ﹄。
特徴的なフィン・アーマーを4枚背に従え、どこか王国騎士のような高貴な雰囲気の鮮
やかな青色の機体だ。
2m越えのレーザーライフルを構え、優雅に宙を舞いながら遠隔無線誘導型の武器、
﹂
所謂﹃ビット﹄で死角からレーザーを放っている。
﹁⋮⋮っ、まだか
専用ISが
!
﹂
いつまでも来ない俺のISに苛立ち始める。
!
来ました
﹂
﹁曽我美君
﹁漸くか
!
!
﹂
させていながらも落ちそうな眼鏡を上げた山田先生が居た。
その声に撃たれたように振り向くと、そこには今しがたまた走って来たのか肩を上下
!
!
アメジストを思わせる。
ている。紫よりも濃い、バイオレットを基調とした鋭い部分が目立つその機体はどこか
ポンコンテナのような縦長の物が9つ付いてる。両腰には補助スラスターが1対付い
背中には非固定式のウィングが浮いていて見たところ、スラスターと言うよりはウェ
ピット奥の搬入扉が重々しく開く。其処には確かに、ISが佇んでいた。
﹁こ、これです。曽我美君の、専用IS
第3話 VSセシリア・オルコット
56
﹁これが、曽我美君の専用IS﹃シンモラ﹄です
﹂
!
﹂
!
﹁待たせた一夏
﹂
オープンチャンネルを開く。設定は無制限。
﹁⋮⋮いける﹂
が広くなっていく感覚。
この感じだ。頭の中にこのISの情報が流れてくるこの感覚。俺が認知できる世界
│完了。完了。完了⋮⋮。
│PIC作動。
│スキンバリアー展開⋮⋮完了。
│ハイパーセンサー接続⋮⋮完了。
│﹃シンモラ﹄起動。
する。
するとシンモラの装甲が俺の体にあわせて閉じていき、所々から空気が抜かれた音が
俺はシンモラに駆け寄り、座るように体を預ける。
﹁はい
﹃曽我美、すぐに準備を済ませろ。織斑も限界そうだ﹄
﹁シンモラ⋮⋮これが俺の専用機⋮⋮﹂
57
!
﹃あら
﹄
随分早かったですわね。まだ私のシールドエネルギーは30程も削れてません
けど、もう宜しいんですの
﹂
﹂
ああ。問題ない。楽しませるつもりなんて毛頭ないからな
﹁頑張れユウ
行くぞシンモラ
ハイパーセンサーに敵性IS、つまりブルー・ティアーズの情報が表示される。
│敵性IS確認。
の中で﹁墜ちない﹂と言う絶対の自信と安定感が生まれる。
ウィングが開き、一瞬体を浮遊感が襲ったかと思うとすぐにそれは失せ、流れる景色
﹁ああ
!
!
!
﹃それは別に構いませんわ。ただ、待たせて頂いた分、楽しませて頂きますわよ﹄
当に悪いと思ってる﹂
﹁ん。端から2人がかりでどうにかしようなんて思っちゃいない。ただ、遅れた事は本
?
?
!
題ではない。
イパーセンサーからすれば何でもない距離で、すぐにズーム出来るが今はそんなのは問
一夏と同じ目線に上がるとアリーナに居たクラスの女子達が小さく見える。無論、ハ
﹁ああ⋮⋮もう少し遅かったらやられたぞ⋮⋮﹂
﹁待たせた一夏﹂
第3話 VSセシリア・オルコット
58
真っ赤ですわよ﹂
一夏の肩を叩き、下がるように促す。それに頷いた一夏は真っ直ぐピットに戻ってい
く。
﹁始めるぞ﹂
﹁構いませんわ。ですけど、貴方その右眼⋮⋮怪我でもしましたの
﹂
!
﹂
!
﹁がっ
﹂
半身捻ってレーザーを避けようとした時、全身を違和感が襲った。
﹁ダンスは苦手でなっ
リア・オルコットが突いてくる死角だ。
撃などの情報はどうしても人が処理する上で遅れが出てくる。その一瞬の遅れがセシ
本来、ISに死角など殆ど存在しない。ただ、人が普段見えていない場所から来る攻
襲い掛かる。
刹那、ブルー・ティアーズから射出されたビット﹃ブルー・ティアーズ﹄が死角から
コットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲︵ワルツ︶で
﹁分かりましたわ。では始めましょう。そして踊りなさい。わたくし、セシリア・オル
﹁今は気にしないでくれ。ほら、いつでも良いぞ﹂
るよ。
やっぱり〝出ちゃってるか〟⋮⋮。ま、嘆いても仕方がない。後で興味があれば教え
?
59
!?
痛みが伝わってくる。不味いと思った時にはシールドエネルギーが既に50は削ら
れていた。
全身に走る妙な違和感。それはまるで、寝起きで思ったように体が動かないようなそ
れと似ている。つまり、シンモラがまだ最適化中で俺の動きについてこれていない状態
﹂
だった。
!
再び痛みが駆けてきた。
ブルー・ティアーズの主力武装、
︽スターライトmkⅢ︾の銃口が煌めいたかと思うと、
﹁そこ
第3話 VSセシリア・オルコット
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