ESG情報の可能性 - 日本証券アナリスト協会

高度化する投資情報
ESG情報の可能性
―投資意思決定での活用に向けて―
鷹 羽 美奈子
目
1.はじめに ESG情報への期待と疑問
2.ESG情報の種類と特徴
3.ESG情報選択のための論点整理
次
4.ESG評価の実務
5.ESGデータの投資実践での活用
6.まとめ
ESG投資への関心が高まる中、金融情報ベンダーが提供するESG情報の具体的なイメージを持つ投資実務家は
まだ少ない。しかし、定性的なESG情報を定量化して投資実務家に提供するESG情報ベンダーの役割は今後ます
ます重要になる。本稿ではESG情報ベンダーが提供する情報の特徴や活用方法(指数やポートフォリオ管理ツー
ルでの使用)をMSCIの事例を中心に紹介し、投資判断でのESG情報活用の可能性を示す。
1.はじめに ESG情報への期待と疑
問
⑴
投資意思決定への活用の期待と疑問
ていることと比較しても、日本でのESG情報への
需要は改めて低かったと感ずる。しかしながら、
昨今において、国連責任投資原則(通称UN PRI)
への署名機関投資家の増加や日本版スチュワード
1990年代からエコファンドや社会貢献型ファ
シップ・コードの導入によって、日本においても
ンドが日本の個人向け投資信託市場に登場した
ESG格付けやESG指数などの投資サポートツール
が、当時はテーマ投資の域を出ないものが多く、
にも急速に関心が高まっている。特に、国連が提
投資家の間で環境、社会、ガバナンス(以下、
唱したPRIに署名している海外アセットオーナー
ESG)情報への本格的な需要があったわけではな
から出される運用委託のRequest For Proposal
かった。欧米においては、責任投資として投資プ
に含まれているESG投資状況に関する質問への対
ロセスへのESGインテグレーションや古くからの
応や、スチュワードシップ・コードの実践に役立
倫理投資の情報源としてESG情報は広く活用され
てることを目的に運用会社における関心が強まっ
鷹羽 美奈子(たかば みなこ)
MSCI ESGリサーチ ヴァイス プレジデント。2000年青山学院大学国際政治経済学部
卒業。02年横浜国立大学社会科学研究科修士課程修了。同年、あずさ監査法人入社。そ
の後、ボーダフォン日本法人、ソフトバンクモバイル㈱を経て、07年よりMSCIにてESG
リサーチに従事。著書に『金融機関の環境戦略(共著)
』
(金融財政事情研究会、05年)
がある。
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