SURE: Shizuoka University REpository

SURE: Shizuoka University REpository
http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/
Title
Author(s)
出芽酵母の増殖に伴う世代構成の変動とストレス応答に
よる細胞死に関する研究
萩原, 利行
Citation
Issue Date
URL
Version
2012-01
http://doi.org/10.14945/00007483
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静 岡大 学
博士論文
出 芽 酵 母 の 増 殖 に 伴 う世 代 構 成 の 変 動 と
ス ト レス 応 答 に よ る細 胞 死 に 関 す る研 究
2012年
1月
大 学 院 自然 科 学 系 教 育 部
環 境 。エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム 専 攻
萩原
利行
次
頁
序
章
緒論
1
研 究 目的
2
先行研 究
1
1) 出芽 酵 母 の 世 代 構 成 にお け る数 理 解 析 ___
2) 出芽 酵 母 に お け る細 胞 死 と寿命 __… ………………
04
3
論 文構 成
出芽酵母 の世 代構 成解析 手法
第一章
14
1
数理解析 法
15
2
実験的手法
19
出 芽 酵 母 の 増 殖 に 伴 う世 代 構 成 の 変 動
第 二章
21
要 旨
22
2
序論
24
3
材 料 お よび 方 法
26
4
実験結 果
5
数 理 解 析 結 果 ……
考察
8
2 ¨
1
3
¨ 0
一 4
〓一
1 2
第
章
¨ 4
6
出 芽 酵 母 の ス トレ ス 応 答 に よ る 増 殖 へ の 影 響 お よ び 細 胞 死 ……11
44
要旨
45
序論
第 一節
栄 養 源 飢 餓 に よ る影 型
47
1
は じめ に
47
2
材 料 お よび 方 法
50
3
結果
53
4
考察
58
第二節
活 性 酸 素 に よ る影 響
59
1
は じめ に
59
2
材 料 お よび 方 法
60
頁
3
4
三
第
1
節
2
3
4
結果
66
考察
77
密 度 効 果 /そ の 他 に よ る影 響
は じめ に
79
材 料 お よび 方 法
81
結果
83
考察
90
出 芽 抑 制 /細 胞 死 を誘 発 す る物 質 の 特 定
第 四節
終
79
93
1
は じめ に
2
材 料 お よび 方 法
3
結果
97
4
考察
101
章
総括
103
93
1
結論
104
2
今 後 の課 題
107
参考文献
109
_
121
添付 資料
122
謝
辞
出芽 酵 母 の 増 殖 に 伴 う娘 細 胞 の 大 き さ の 変 化
表 2 ∼5
出芽 酵 母 の 増 殖 に 伴 う世 代 構 成 の 変 化 _
出芽 酵 母 の 増 殖 に 伴 う細 胞 周 期 の 比 較
表 6
123
本 研 究 に 用 い た 出芽 酵 母 株 の リス ト
本 研 究 に用 い た 欠 損 株 の 遺 伝 子 の機 能
129
表 1
表 7
表 8
124
128
130
略 語 お よび用語 の 定義
本 論 文 に 用 い た 略 語 は 、 次 の 通 りで あ る 。
AGC:
AIDS:
Amt
AO:
Apo
ATG
ATP
A-kinase, cGMP-kinase, C-kinase
Acquired immune deficiency syndrome
Ammonium transporter
Acridine orange
Ap opto sis
CD
Cdk
Autophagy
Adenosine tri phosphate
B-cell Iymphoma/B-cell leukemia
CycIin - dependent
Cyclin'dependent kinase
ces
Caspase
Cit
Citruline
bcl
CLS
CPS
CySH
DAPI:
EB:
Chronological life span
Carb amylpho sphate synthase
Cysteine
4',6-diamidino-2-phenylindole
Ethidum bromide
egl:
endo- 1,4-beta-glucanase
ELS:
Ecological life span
ERCs
Extrachro mo somal ribosomal DNA circles
Fas:
Fasligand
fob :
F-line obesity QTL
Fum:
Fumaric acid
‐
γ Glu Cys : y - Gluta mylcy steine
GSH:
Reduced glytathione
GSSG
Glutathione -S - S -Glutathione
MAP:
Mitoge n - activat e d protein
MBF:
Mlul cell cyle box binding factor
Mep:
Methylammonium permease
MPKl
Mitogen-activated protein kinase 1
OD:
Optical Density
p53:
PI:
protein 53000
Propidium iodide
PLS:
rDNA :
RLS
ROS
SBF
SCH
Physiological life span
Ribosomal deoxyribonucleic acid
Replicative life span
Reactive oxygen specie s
Swi4/Swib ceII cycle box binding factor
Serine/threonine'protein kinase
Schwannomin
Silent information regulator
sch:
Sir:
SIRT 1 :
SOD
TG:
TNF
TOR
TUNEL :
WT :
YCA1
:
:
Ypkl :
YPA
Sirtuin
Superoxide dismutase
Tran s genic
Tumor necrosis factor
Target of rapamycin
Terminal deoxynucleotidyl transferase -mediated
deoxyuridine triphosphate -biotin nick end labelling
Wild type
Yeast caspase- 1
Yeast extract peptone adenine
Yeast cells reguires the protein kinase
lV
本 論 文 に用 い た 用 語 の 定 義 は 、 次 の 通 りで あ る。
母 細 胞 :一 般 に母 細 胞 とは 出芽 中 にお け る 出芽 させ る側 (母 核 )の 細
胞 を い うが 、 本 論 文 で は 出芽 痕 を保 有 した 細 胞 、 す な わ ち 出
芽 (出 産 )経 験 の あ る細 胞 全 て を母 細 胞 と定 義 す る。 ま た 、
出芽 痕 が 多 い 細 胞 を成 熟 細 胞 あ る い は老 齢 細 胞 とす る。
娘 細 胞 :一 般 に娘 細 胞 とは 出芽 中 にお け る母 細 胞 か ら 出芽 す る細 胞 部
分 を い うが 、本 論 文 で は 出芽 に よ つ て 発 生 した 細 胞 お よび 出
芽 (出 産 )経 験 の な い 細 胞 全 て を 娘 細 胞 と定 義 す る。
世 代 構 成 :出 芽 酵 母 の 母 細 胞 と娘 細 胞 の 比 率 お よび 出芽 痕 数 毎 の 分 布
状 態 を 世 代 構 成 と定 義 す る。 ス テ ー ジ 構 成 は世 代 構 成 と同 義
語 とす る。
保 存 則 :出 芽 痕 の 数 と 出芽 に よ つ て 生 まれ た 娘 細 胞 の 数 は 同 じで あ る
法 則 を い う。
保 存 則 比 :保 存 則 の 保 持 状 況 を 数 値 にて 表 した も の 。 総 出芽 痕 数 を 総
細 胞 数 に て 割 っ た 値 とな り、完 全 に 保 存 され て い る 場 合 は 1
とな る。
少 子 化 パ ラ ドック ス :増 殖 環 境 が 悪 化 し、集 団 全 体 の 増 殖 率 が 低 下 し
た 場 合 に 、 子 供 の 比 率 が 増 え る とい う逆 理 を い う。
セ パ レー シ ョン :母 細 胞 と娘 細 胞 と の 出芽 を開 始 す る ま で に 至 る時 間
の 相 異 や 、 娘 細 胞 の 出芽 は 抑 制 す る が 、 母 細 胞 の 出芽 は 抑 制
出
され な い こ とか ら発 生 す る 二 極 化 現 象 を い う。
芽 :娘 細 胞 を 出産 す る行 為 が 出芽 とな るが 、 本 論 文 で は 、 出芽 し
た こ とを 単 に 出産 と捉 え るば か りで は な く、 年 齢 を重 ね た こ
と と同 義 語 的 に 扱 う。 す な わ ち 、 3回 出芽 した 細 胞 よ り 5回
出芽 した 細 胞 の 方 が 高齢 と解 釈 す る。 そ れ に は 、 出芽 行 為 が
連 続 的 で あ り、 一 定 時 間 に て 定 期 的 に な され る こ とが 前 提 と
な るが 、本 論 文 で は そ の よ うに解 釈 す る 。
ス テ ー ジ :出 芽 酵 母 の 出産 回数 を寿 命 と定 義 す る。 出芽 経 験 1回 の 細
胞 が ス テ ー ジ 1と な る◇
生 理 的 寿 命 :physiO10gical life span(PLS)。
最 適 な条 件 下 で 実 現 す る
ポ テ ン シ ャ ル と して の 寿 命 。主 に遺 伝 子 の 背 景 で 規 定 され る。
生 態 的 寿 命 :ec010gical life span(ELS)。 そ の 生 物 が 生 活 して い る場
で 見 られ る現 実 的 な寿 命 。 環 境 の 様 々 な 要 因 に よ り規 定 され
る。
経 時 的 寿 命 :chrOnologicaHife span(CLS)。
分 裂 停 止 後 の 出芽 酵 母 細
胞 が 生 き延 び る時 間 か ら規 定 され る寿 命 。通 常 同 じ培 地 中 で 、
長 期 培 養 を 行 つ た 後 に 、細 胞 を再 び 増 殖 で き る寒 天 培 地 上 に
移 して 何 %の 細 胞 が コ ロ ニ ー を作 れ た か に よ つ て 測 定 され る
細 胞 集 団 の 平 均 値 と して 規 定 され る。
分 裂 寿 命 :replicative life span(RLS)。 出芽 酵 母 が 分 裂 に適 した 条 件
下 で 行 え る分 裂 可 能 な 回 数 と して 規 定 され る。 生 理 的 寿 命 の
一 種 で あ る。
遺 伝 子 、 タ ン パ ク 質 、遺 伝 子 欠 失 株 の 表 記 お よび 遺 伝 子 命 名 は 以 下 に 従 つ
た。
表記
遺 伝 子 :VH■5
タ ン パ ク 質 :Whi5
遺伝子欠失株
:%″ σ∠
遺伝 子命名
HISθ :遺 伝 子 座 ま た は 優 性 対 立 遺 伝 子
カカθ:要 求 性 を生 ず る遺 伝 子 座 ま た は劣 性 対 立 遺 伝 子
カカチ:ヒ ス チ ジ ン 非 要 求 性
力お
:ヒ ス
チ ジ ン要 求 性
Vl
序
章
緒論
1
研 究 目的
近 年 力 β〃力ο、す な わ ち シ リ コ ン 内 で (コ ン ピュー タ を用 い て )実 験 解
析 す る手 法 が 増 加 して き た 。 そ の 背 景 に は 、 ゲ ノ ム解 析 や 速 度 論 的解 析 に
お い て 、膨 大 な 情 報 量 を扱 う よ うに な り、 この 解 析 にお い て 、 コ ン ピュー
タ の 力 を借 りな けれ ば 処 理 で き な くな つ て き た こ とが 考 え られ る 。 ま た 、
カ オ ス 理 論 の 進 歩 に よ り、非 線 形 的 な対 象 を扱 うこ とが で き る よ うに な つ
た こ とや 、 コ ン ピ ュー タ の 能 力 が 向 上 し、複 雑 な シ ミ ュ レー シ ョン が 可 能
に な っ た こ と も要 因 と して 考 え られ る。 一 方 、 こ こ 30年 にお け る分 子 生
物 学 の 発 展 は 日覚 ま し く、1985年 に 提 唱 され た ヒ トゲ ノ ム 解 析 計 画 も、当
初 の 予 定 を は るか に上 回 る速 さで 解 析 が進 み 、 ス タ ー トか ら 15年 後 に終
了す る計 画 で あ つ た も の が 、13年 に短 縮 され 2003年 に は全 て の 解 読 が 完
了 した (International Human GenOme Sequencing COnsortium,2004)。
さ らに 、解 読 され た 情 報 を用 い た 研 究 が 飛 躍 的 に 増 加 し、 生 命 機 能 に 関す
る知 見 も爆 発 的 に 増 加 した 。 そ して 、 そ の 後 の 変 化 と して 、 単 に 実 体 の み
を解 析 す る こ とに 留 ま らず 、数 学 モ デ ル を定 式 化 し、 コ ン ピ ュー タ シ ミ ュ
レー シ ョン や 数 理 解 析 に よ り、 そ の 変 化 を予 測 し、複 雑 な 系 を理 解 しよ う
とす る試 み もな され て い る。 ま た 、 これ と並 行 し、 これ ま で は実 験 科 学 と
して 扱 われ て き た 生 物 学 にお い て も、数 理 生 物 学 、数 理 生 態 学 な ど、数 学
を用 い た 解 析 が 従 来 に も増 して盛 ん に な され る よ うに な っ て き た 。
これ ま で の 科 学 の 進 歩 は 、実 験 科 学 と理 論 科 学 とで な され て き た も の で
あ るが 、研 究 す る対 象 に よ り、 そ の 重 み付 け が 異 な っ て い た 。 物 理 学 や 天
文 学 に お い て は 、理 論 化 し易 い こ とや 実 験 す る こ とが 困難 で あ る こ とな ど
か ら理 論 科 学 が 重 要 視 され て きた 。 一 方 、化 学 や 生 物 学 に お い て は 、現 象
そ の も の が 複 雑 で 数 学 的 解 析 が 困難 な 分 野 と され て き た 。 しか しな が ら、
測 定機 材 の 進 歩 、解 析 手 段 と して の コ ン ピ ュー タ の 能 力 向 上 な ど工 学 的 な
進 歩 に よ り、 実 験 科 学 と理 論 科 学 と の 垣 根 が 年 々 低 くな つ て きた 。 い ず れ
は 、実 験 科 学 が 主 体 と され る分 野 にお い て も、対 象 とす る 現 象 にお い て は 、
理 論 が 先 行 し、 そ の 証 拠 を実 験 に て 確 認 す る時 代 が 来 る の で は な い か と予
測 され て い る 。 例 え ば 、 医薬 品 の 開発 にお い て は 、 lin θ〃力ο創 薬 、 す な わ
ち IT技 術 を 導 入 した 、 実 験 を伴 わ な い 創 薬 手 法 が 一 般 化 して お り、 膨 大
な 化 学 構 造 式 デ ー タ ベ ー ス を基 に 、 必 要 とす る薬 理 活 性 を持 つ 化 合 物 を選
ゴ
οο創 薬 技 術 は 、今 後 の 創 薬 現 場 にお
出す る場 合 に用 い られ て い る。 Lsゴ ′
い て必 須 に な る 技 術 で あ る と考 え られ 、 コ ン ピュー タ の 処 理 能 力 が 勝 敗 を
分 け る とま で 言 われ て い る。 ま た 、 基 礎 生 物 学 の 分 野 にお い て も、 生 命 現
象 を つ か さ どる 分 子 メ カ ニ ズ ム に 関す る知 見 が 膨 大 とな り、 これ らを 系 統
的 に理 解 す る上 にお い て コ ン ピ ュー タが 利 用 され る よ うに な つ て き た 。 具
体 的 に は 、細 胞 間 動 態 の 数 学 的 モ デ ル 化 、 生 物 学 的組 織 の 機 構 に 関 す る数
学 的 モ デ ル 化 、 ニ ュー ロ ンや 発 癌 の 数 学 的 モ デ ル 化 、酵 素 反 応 速 度 論 に 関
す る理 論 化 、 さ らに 、細 胞 内代 謝 を全 て シ ミ ュ レー シ ョンす る e‐ Cellプ ロ
ジ ェ ク ト (http:〃 www.ttck keio.ac.jp/1AB/cOmputer‐ science/)や 、 生 命
シ ス テ ム の ロバ ス トネ ス (頑 健 性 )を 探 る 出芽 酵 母 の 細 胞 周 期 の 数 理 モ デ
ル とそ の 解 析 、 な どが あ り、 どの よ うな ア プ ロー チ が 可 能 で あ る か を理 解
す る上 にお い て 良 き例 と考 え る。
この よ うな背 景 の 中 、本 研 究 は 、先 行 研 究 にお け る出芽 酵 母 の 増 殖 お よ
び 世 代 構 成 に 関す る数 理 解 析 結 果 を 、最 新 の 実 験 手 法 に よ る実 験 結 果 と照
ら し合 わせ る こ とで 、 理 論 研 究 と実 験 研 究 と の 接 点 の 模 索 、す な わ ち数 理
解 析 の 可 能 性 と応 用 に お け る 問題 点 の 抽 出 を 目的 に行 つ た も の で あ る。 さ
らに 、数 理 解 析 に て 得 られ た 興 味深 い 現 象 を 、 実 験 的 に確 認 し、 そ の メ カ
ニ ズ ム の 解 析 を試 み た 。 具 体 的 に は 、 これ ま で 報 告 され て き た 中 で 、 い ま
だ に 解 決 が な され て い な い 疑 間 、す な わ ち 、 な ぜ 出芽 酵 母 は 増 殖 を 続 けて
い る と娘 細 胞 の 比 率 が 増 え て しま うの か ?そ の 原 因 を、母 細 胞 と娘 細 胞 と
の 世 代 時 間 の 相 異 の み で 説 明 す る こ とが 可 能 か ?ま た 、 なぜ 出芽 酵 母 は 栄
養 リ ッチ な寒 天 培 地 中 で 増 殖 を 止 め て しま うの か ?そ こ に は密 度 効 果 等
に よ る 原 因 が あ る の か ?な どに 関 す る知 見 を得 る こ と を 目的 に 実 施 した 。
さ らに 、出芽 酵 母 が 保 有 す る、世 代 構 成 の 確 認 が 可 能 で あ る利 点 を生 か し、
細 胞 集 団 内 に お け る個 の 応 答 に着 日 した 研 究 を実 施 した 。 研 究 を進 め て い
く中 で 、 先 行 研 究 で は 報 告 され て い な い 早 期 にお け る細 胞 死 が 、 実 験 に よ
る保 存 則 の 確 認 過 程 と、 そ れ を数 理 解 析 す る こ とで 、 わ ず か な変 化
(1%
未 満 )と して 捕 え る こ とが で き た 。 さ らに死 滅 した 細 胞 を 染 め る こ とに よ
り確 か な も の と した 。 これ ら の 知 見 は 、新 規 性 が 高 い も の と判 断 し、 さ ら
な る検 討 と して 、 ス トレス 応 答 、 老 化 、寿 命 に 関連 す る遺 伝 子 を欠 失 して
い る変 異 株 も材 料 と して 用 い 、細 胞 死 が 発 生 す る原 因 の 究 明 も合 わせ て 行
つ た 。 加 えて 、 出 芽 を 抑 制 す る物 質 、細 胞 死 を誘 発 す る物 質 の 特 定 に つ い
て も試 み た 。
な お 、本 論 文 で の 研 究 対 象 とす る 出芽 酵 母 は真 核 生 物 で あ り、母 細 胞 か
ら娘 細 胞 を 出芽 す る こ とで 子 孫 を 増 や す 増 殖 形 態 を示 す 。 ま た 、 増 殖 は 、
分 裂 酵 母 や 細 菌 な ど と 同様 に ロ ジ ス テ ィ ッ クな 増 殖 パ タ ー ン を示 す 。 出芽
酵 母 は 、 この よ うな 非 対 称 な 増 殖 をす る 単 細 胞 生 物 で あ り、 か つ 出芽 した
際 に傷 と して 残 る 出芽 痕 を数 え る こ とで 、成 熟 度 あ る い は老 化 度 を推 測 す
rO実 験 に
る こ とが 可 能 (世 代 構 成 の 確 認 が 可 能 )と な り、 生 態 学 の カ ガι
適 して い る。 そ の た め 、 細 胞 分 化 や 細 胞 系 譜 の 研 究 モ デ ル と して 汎 用 され
て い る (Thorpe θι′′
.,2009)。 ま た 、 出芽 酵 母
.,2008、 Neumuller θ″′′
に も寿 命 が あ る こ とが約
50年 前 に 明 らか とな り (Mortimer 1959)、 老 化
の 研 究 モ デ ル と もな っ て い る (Bitterman θオ′■,2003、 Fabrizio θ ′
`′
2008、 Steinkraus θι′■,2008、 Barea θι′′,2009)。
,
研 究 に よ つ て 得 られ た 成 果 は 、 出芽 酵 母 を用 い た 実 験 結 果 の 解 釈 にお い
て 、 あ る い は数 理 解 析 をす る上 に お い て 有 用 な 情 報 に な る も の と考 え る。
さ らに 、 あ る特 定 の 物 質 に対 す る 出芽 酵 母 へ の 作 用 点 を予 沢1す る に あた り、
様 々 な作 用 点 に対 す る実 験 結 果 の パ タ ー ン化 とそ れ に至 る シ ミ ュ レー シ
ョン を数 学 的 に予 め 設 定 して お く こ とで 、未 知 な る物 質 の 作 用 点 予 測 を容
易 に す る こ とが 可 能 に な る も の と考 え る。
4
2
先行研 究
1)出 芽 酵 母 の 世 代 構 成 にお け る数 理 解 析
酵 母 は 、人 類 に と つ て 係 わ りの 深 い 微 生 物 で あ る。パ ン 、酒 な どの 食 料 ・
嗜 好 品 と して の 利 用 も さ る こ とな が ら、 酵 母 が 保 有 す る特 殊 性 に よ り、研
究 にお け る 「モ デ ル 生 物 」 と して の 価 値 も高 い 。 後 に 、 ノ ー ベ ル 医 学 ・ 生
理学賞
(2001年 )の 受 賞 に つ が な る 、 Hartwellに よ る細 胞 周 期 の 主 要 な
制 御 因 子 の 発 見 や 、細 胞 周 期 の チ ェ ック ポ イ ン トとそ の 制 御 に 関 わ る遺 伝
子 群 の 発 見 、 さ らに 2000年 以 降 、 飛 躍 的 に研 究 が進 ん で い る寿 命 遺 伝 子
に 関す る研 究 も、酵 母 を用 い た 実 験 が 引 き金 とな って い る。 酵 母 に は 、 分
裂 酵 母 と出 芽 酵 母 とが あ る が 、 この 内 出芽 酵 母 は 、 前 述 した よ うに母 細 胞
か ら娘 細 胞 を 出芽 す る こ とで 子 孫 を 増 や す 非 対 称 な 増 殖 形 態 を示 す 。 娘 細
胞 が 母 細 胞 か ら分 離 す る と、母 細 胞 に は 出芽 痕 が 残 る。 そ の た め 、 出芽 痕
を数 え る こ とで 出芽 回数 が 特 定 で き る。 出芽 回数 が 多 い 細 胞 は成 熟 した 細
胞 あ る い は老 化 した 細 胞 で あ る と推 測 す る こ とは 十 分 可 能 で あ るた め 、 増
殖 と老 化 を解 析 す る の に適 して い る。
ま た 、 出芽 酵 母 は 世 代 時 間 が 短 く、 一 倍 体 世 代 ・ 三 倍 体 世 代 が 安 定 して
存 在 し、 自由 に行 き来 で き る こ とや 、突 然 変 具 体 を容 易 に 得 る こ とが 可 能
で あ る こ とな ど、 多 く の 利 点 を持 つ て い る。 さ らに 、 出芽 の 状 態 に よ り
Gl期 、S期 、G2期 か ら M期
に 分 別 す る こ とが 可 能 で あ る こ とや 、温 度 感
受 性 変 異 株 な どを 用 い る こ とで 、増 殖 を コ ン トロー ル す る こ とが 可 能 で あ
。
る こ と (Cho θι′′
,1998)な どか ら、細 胞 周 期 に 関 す る研 究 に も積 極 的 に
用 い られ て い る。
この よ うに 優 れ た 特 徴 を 有 す る 出芽 酵 母 を用 い た 、世 代 構 成 に 着 日 した
増 殖 に 関す る研 究 は 、 主 に 、 Hartwellら 、 」ohnstonら 、浜 田 ら、 泰 中 ら
に よつ て な され て きた 。 そ の 方 法 は 、数 理 生 態 学 的解 析 を基 礎 に して 、 こ
れ と実 験 結 果 とを比 較 し、 理 論 的 に 現 象 を論 述 す る こ とで 行 わ れ て き た 。
増 殖 に 伴 う世 代 構 成 の 変 動 を予 測 す る上 で 重 要 な ポ イ ン トは 、 母 細 胞 と
娘 細 胞 の 世 代 時 間 を どの よ うに 設 定 す る か に あ る。 世 代 時 間 を設 定 す る方
法 と して は 、顕 微 鏡 下 で 出芽 か ら出芽 ま で の 時 間 を測 定 す る方 法 や 娘 細 胞
の 出現 比 率 を基 に理 論 的 に決 定 す る方 法 な どが あ る。Hartwellら は 、理 論
解 析 に お け る 初 期 設 定 にお い て 、細 胞 周 期 に は 出芽 の 周 期 と DNA合 成 の
周 期 が あ り、 そ れ らの 開始 を コ ン トロー ル す る部 分 が あ る こ とを 報 告 した
.,1974)。 ま た 、非 対 称 な 増 殖 をす る 出芽 酵 母 に あ つ て は 、
(Hartwell θ ′
`′
母 細 胞 と娘 細 胞 と の 世 代 時 間 は異 な り、結 果 と して ス テ ー ジ が 2ラ イ ン と
な る Two‐ stageモ デ ル を提 唱 した (Hartwell θι″ .,1977)(図 2)。 この
こ とに よ り、 そ れ ま で のモ デ ル (One‐ stageモ デ ル :細 菌 と 同様 な 増 殖 モ
デ ル )(図
1)を 飛 躍 的 に 向 上 させ た 。 さ らに 、そ の 後 の 研 究 にお い て 泰 中
らは 、 〔娘 ―母 〕 モ デ ル と 〔
未 成 熟 ―成 熟 〕 モ デ ル か らな る Two― stageモ
デル に、 〔
未 成 熟 小 型 細 胞 ―成 熟 大 型 細 胞 〕 モ デ ル を加 え た Three― stage
モ デ ル (図 3)を 報 告 (Tainaka θι′■,2006)し 、 よ り現 実 に近 い も の と
した 。
一 方 、浜 田 らは 、増 殖 中 の 細 胞 集 団 にお い て 、 出産 回数
nに お け る細 胞
頻 度 (■ )が 一 定 に 達 した とき 、 母 細 胞 と娘 細 胞 の 出芽 率 の 比 が母 細 胞 の
分 裂 回数 に よ らず 一 定 (4=均 =… Fn=g駒 、 Fn:単 位 時 間 あ た り娘 細 胞 を生
む確 率 )で あれ ば 、 4は 全 て
,(“
と rθ の比 率)の み に よつ て 表 現 で き る
Hamada θι′工,1985)。 これ は 、 対 数
こ とを 報 告 した (Hamada,1982、
増 殖 期 の 細 胞 集 団 にお い て 各 ス テ ー ジ の 細 胞 頻 度 (■ )と 全 体 の 増 殖 率 (Fl
を確 認 す る こ とで 母 細 胞 と娘 細 胞 の 出産 率 と世 代 時 間 を求 め る こ とが 可
能 で あ る こ とを 示 して い る。
nの 出 産 率
ふ :ス テ ー ジ nの 細 胞 数
■ :ス テ ー ジ nの 頻 度
0の 出 産 率
為 :ス テ ー ジ 0の 細 胞 数
る :ス テ ー ジ 0の 頻 度
rn:ス
莉 :ス テ ー ジ
テー ジ
9′ ′″ と rθ の ″ 事
対 数 増 殖 期 が 長 く続 く と、ん が 一 定 に な る (定 常 ス テ ー ジ 構 造 )。
全 体 の 増 殖 率 お よび 細 胞 数 を rと xと す る とき 、 Xク と 為 の 時 間
変 化 は 以 下 の よ うに な る。
為
■
∞
[
﹃
“
ヽ
/
〓
鍋丁
αXn
dt
―rnXn+rn-1為 _.
この 理 論 に基 づ き、 西 村 らは 、 対 数 増 殖 期 と対 数 増 殖 後 期 で の 、 母 細 胞
と娘 細 胞 の 世 代 時 間 の 変 化 と増 殖 率 の 低 下 との 関係 に つ い て 調 べ た とこ
ろ 、対 数 増 殖 期 か ら対 数 増 殖 後 期 へ の 移 行 に 伴 い 全 体 の 増 殖 率 が 低 下す る
と、 主 と して 娘 細 胞 の 世 代 時 間 が 延 び 、娘 細 胞 の 大 き さ も小 さ くな る こ と
を明 らか に した (Nishimura,1983)。 この こ とは 、そ れ 以 前 に 報 告 され て
い た 、娘 細 胞 が 出芽 可 能 に至 る ま で に は 、 あ る 一 定 の 大 き さに な る ま で の
時間が必 要 で あ る こ と
(」
ohnstOn θ ■,1977)や 、増 殖 率 と細 胞 の 大 き
`′
さに は 関連 が あ り、増 殖 率 が 高 い 場 合 は 母 細 胞 と娘 細 胞 の 大 き さに大 き な
開 き は な い も の の 、 増 殖 率 が 低 い 場 合 は娘 細 胞 が 小 型 化 す る報 告
(Hartwell θι′工,1977、 Carter θ′′■,1978、 Wheals θι′ヱ,1980) とも
一 致 す る。
以 上 の よ うに 、数 学 的 な 理 論 と して 、 One― stageモ デ ル か ら Two― stage
モ デ ル ヘ 、 TwO‐ stageモ デ ル か ら Three― stageモ デ ル ヘ と変 遷 し、 そ の 都
度 精 度 の 向 上 が 成 され 、解 析 に お い て も十 分 な る 検 討 が加 え られ て き た 。
しか しな が ら、 そ の 検 討 を 裏 付 け る実 験 にお い て は 、 当 時 に お け る研 究機
材 の 限 界 等 に よ り、標 本 の 作 製 か ら観 察 ま で 、 実 験 者 の テ ク ニ ック に 依 存
す る と こ ろ が 強 く、再 現 性 等 にお い て 改 良 の 余 地 が あ る と判 断 せ ざ る を得
な い も の で あ っ た 。 例 え ば 、 出芽 痕 の 算 定 にお い て は 、細 胞 を 一 旦 ホル マ
リ ン 固 定 し、 これ を ス ライ ドグ ラ ス 上 に 載 せ て 観 察 す る も の で あ るが 、 出
芽 痕 に お い て は 、 出芽 痕 6個 以 上 を 正 確 に 算 定 す る こ とが 難 し く、必 要 に
応 じて 細 胞 を微 妙 に動 か しな が ら算 定 して い た の が 現 状 で あ る。 この こ と
は 、保 存 則 の 確 認 にお い て 多 大 な影 響 を示 す も の で あ り、詳 細 な 検 討 を加
え る に は不 向 き で あ る とい わ ざ る を得 な い も の で あ っ た 。 本 研 究 で は 、先
行 研 究 に て 用 い られ て きた 実 験 手 法 の 見 直 しを行 い 、 これ ま で の 方 法 と比
較 して 、原 理 的 に 読 み 取 り誤 差 が な く、 デ ー タ の 保 存 性 も 向 上 す る方 法 を
確 立 した 。 さ らに 、 この 方 法 に よ り詳 細 な 検 討 を加 え た 結 果 、 前 述 した よ
うな 「予 期 しな い 細 胞 の 早 期 消滅 」 の 発 見 に つ な が っ た 。
,プ
○
二
〇″
世代時間
図
:娘 細 胞
〃 :母 細 胞
ユ
g:2の
成長率
1 0ne‐ stageモ デ ル
細 菌 な ど と 同様 な 直 線 的 な 増 殖 モ デ ル 。 世 代 時 間 は 成 長 時 間 と ほ
ぼ 同等 とな る。 シ ン プル な ロ ジ ス テ ィ ッ ク 方 程 式 に て 解 析 可 能 。
娘細胞 の世代 時 間
二 ●4げ ―→
θ盟
↑
:未 成 熟 な 娘 細 胞
∂ゴ
0
∂ :成 熟 した 娘 細 胞
“
g:'ゴ の 成 長 率
:∂
r“ ′
│
の 出産 率
“
母細胞 の世代 時 間
区12
Two‐ stageさモデ ル
One― stageモ デ ル の 母 細 胞 と 娘 細 胞 の 区 別 に 加 え 、成 熟 細 胞 と 未
成 熟 細 胞 の 区 別 を加 え た モ デ ル 。
娘細胞 の世代 時間
6-聟 ● 彙 げ _.6
「
2 0卜
:未 成 熟 な 娘 細 胞
θ″:成 熟 した 娘 細 胞
〃 :母 細 胞
ユ
g:,メ の 成 長 率
の 出産 率
r″ が
↑
物
'“
:〃 の 出 産 率
母 細胞 の 世代 時 間
図
3 Three‐ stageモ デ ル
母 細 胞 と娘 細 胞 の 区別 、成 熟 細 胞 と未 成 熟 細 胞 の 区別 に 、成 熟
大 型 細 胞 と未 成 熟 小 型 細 胞 の 区別 を加 え た モ デ ル 。
2)出 芽 酵 母 にお け る細 胞 死 と寿 命
細 胞 死 は 、非 ア ポ トー シ ス 細 胞 死 とア ポ トー シ ス 細 胞 死 に 大 別 す る こ と
が で き る。 さ らに 、非 ア ポ トー シ ス 細 胞 死 は 、ATPを 使 つ て 積 極 的 に実行
され る細 胞 死 (オ ー トフ ァ ジ ー を伴 う細 胞 死 と転 写 抑 制 あ る い は リ ソ ソー
ム を介 した ネ ク ロー シ ス 様 細 胞 死 )(Shimizu θ′′′
.,2004、 Yu θι′ヱ,2004)
と ATPの 涸 渇 に よ る受 動 的 な細 胞 死 (ネ ク ロー シ ス )に 分 け られ る。オ ー
食 )を 伴 う細 胞 死 は 、病 原 体 に感 染 した 細 胞 の生 体 防御 反
応 等 に よ り惹 起 され る。 ネ ク ロー シ ス は 、個 々 の 細 胞 にお け る障 害 性 あ る
トフ ァ ジ ー
(自
い は病 的 な細 胞 死 で あ る。 そ の 特 徴 と して 、細 胞 内小 器 官 の 膨 潤 や 細 胞 自
体 の 破 壊 等 が 発 生 す る。 ネ ク ロー シ ス は長 期 間 に わ た り漸 次 進 行 して い く。
ネ ク ロー シ ス の 発 生 原 因 は 、補 体 に よ る細 胞 破 壊 や 、薬 物 、 紫 外 線 な どが
報 告 され て お り、 細 胞 外 環 境 に よ る影 響 が 大 とな る。
一 方 、 ア ポ トー シ ス は 、 1972年 に病 理 学 者 で あ る Kerrと Wメ lieら が
ネ ク ロー シ ス とは 異 な る形 態 を した 細 胞 死 が あ る こ とを 発 見 し、 これ を ア
ポ トー シ ス 〔
枯 葉 が 落 ち る様 子 、 apo(離 れ る)と ptosis(落 ち る )と の
造 語 〕 と命 名 した こ とか ら始 ま る (Kerr θι′ム,1972)。 い わ ゆ る形 態 学 的
な 定 義 と して の 分 類 用 語 で あ る。 そ の 後 、 ア ポ トー シ ス は 、 管 理 ・ 調 節 さ
れ た 細 胞 の 自殺 、 す な わ ち能 動 的 に プ ロ グ ラ ム され た 細 胞 死 全 般 (狭 義 に
は caspaseに 依 存 す る も の )を 指 す よ うに な り、 現 在 に至 っ て い る 。
TNFリ ガ ン ドや サ イ トカ イ
ア ポ トー シ ス は 、腫 瘍 壊 死 因子 TNF受 容 体 ‐
ン Fas(Apo‐ 1/CD95)‐ Fasリ ガ ン ドな どの 誘 導 因子 の 発 見 (Trauth θι2ス
1989、 Yonehara θ ヱ,1989、 Itoh θ ′
.,1991)、 ノσθや ら″フ な ど の ア
`′
,
`′
ポ トー シ ス 関連 遺 伝 子 の 発 見 (Debbas θ′′■,1993、 Hengartner θ′′′
1994)、 Caspaseの 発 見 (Miura θル ス,1995)、 ア ポ トー シ ス の 決 定 (ces‐ 1,
,
ces‐ 2,egl‐ 1)、
実行
(ced‐ 3,ced‐ 4)、
抑制
(ced‐ 9)、
死 細 胞 の取 込 み
(ced‐ 1,
ced‐ 2)な
どの 発 見 に よ り、そ の 意 義 が深 く認 識 され る よ うに な つ た 。ま た 、
ア ポ トー シ ス は 、DNAの 断 片 化 、核 の 凝 縮 、核 の 断 片 化 、ア ポ トー シ ス 小
体 の 形 成 、細 胞 膜 ホ ス フ ァチ ジル セ リ ンの 露 出 、 シ トク ロ ム Cの ミ トコ ン
ドリア か ら細 胞 質 へ の 露 出 、 細 胞 の 凝 縮 と断 片 化 な どが 特 徴 とな り、短 時
間 に進 行 す る。 神 経 ネ ッ トワ ー ク の 形 成 や 、 昆 虫 /両 生 類 の 変 体 、 自 己 反
応 性 T細 胞 の 除 去 な ど も ア ポ トー シ ス で あ る。 さ らに 、癌 細 胞 の 不 死 化
(Wy71lie,1992、
Lotem θι′′.,1998、 Sachs θ ′.,1993)RP AIDS(Meyaard
`θ
θι′■,1992)と の か か わ りも報 告 され て い る。
ア ポ トー シ ス は 、細 胞 集 団 内 にお け る集 団 の 利 益 の た め に 計 画 的 に発 生
す る 個 の 細 胞 死 で あ る。 そ の た め 、 ア ポ トー シ ス は 多 細 胞 生 物 の み に認 め
られ る 現 象 で あ る と長 く認 識 され て き た 。 しか しな が ら、 単 細 胞 生 物 の 出
芽 酵 母 にお い て も、長 期 培 養 中 の 栄 養 源 飢 餓 、DNA障 害 、活 性 酸 素 な どに
よ リア ポ トー シ ス 様 の 細 胞 死 が 誘 導 され る こ とが 判 明 して きた
′■,1997、
(MadeO θ
Yamaki θ ′,2001、 」in C θ 工,2002、 Eva Herker θ
`′
`′
`2■
`
,2004、
Gabriela θι′ス,2006、 Paola Fabrizio θ′′■,2008、 Patrick Rockenfeller
θ ■,2008)。 単 細 胞 生 物 の ア ポ トー シ ス の 生 理 学 的意 義 と して は 、 ク ロ
`′
ー ン 中 か ら DNA等 が 傷 付 い て 変 異 を起 こす 可 能 性 の あ る細 胞 を積 極 的 に
除 去 す る こ とや 、 栄 養 源 飢 餓 時 に 、 一 部 の 細 胞 が 死 ぬ こ とで 細 胞 の 内容 物
を培 地 中 に放 出 し、残 りの ク ロー ン の 細 胞 に 栄 養 を与 え る こ と等 が 考 え ら
れ て い る。
次 に 、生 物 の 寿 命 とい う場 合 に は 、大 き く分 けて 2つ の 定 義 が 存 在 す る。
一 つ は 、条 件 を整 えた 場 合 に 実 現 す るポ テ ンシ ャ ル と して の 寿命 で あ り生
理 的 寿 命 と呼 ばれ る。 も う一 つ は 、 生 物 が 実 際 に 生 活 して い る場 で 見 られ
る寿 命 で あ り生 態 的 寿 命 と呼 ばれ る。 この 場 合 に は 、 そ の 生 物 が 生 存 して
い る環 境 が 大 き な 影 響 を及 ぼ す 。 生 物 界 全 体 を見 た 場 合 、原 核 生 物 に は 生
理 的 寿 命 に 相 当す る も の が な く、 生 理 的 寿 命 が 存 在 す る の は真 核 生 物 に 限
つ た も の で あ り少 数 派 で あ る。 生 物 の 進 化 史 で 見 た 場 合 で も、約 半数 に あ
た る期 間 は 、真 核 生 物 は 存 在 して お らず 、 生 物 に生 理 的 寿 命 は 存 在 して い
な か つ た 。 む しろ 、 生 理 的 寿 命 は進 化 の 過 程 で 獲 得 した 特 質 と も い え る。
ま た 、 ヒ トな どは 生 態 的 寿命 と生 理 的 寿 命 とが 近 い 生 物 で あ るが 、 多 く の
生 物 に と つ て 、 生 態 的 寿 命 は 生 理 的 寿 命 よ りか な り短 い 。
寿 命 の 研 究 に お け る 出芽 酵 母 の 貢 献 は 高 く、 SIR2フ ァ ミ リー (サ ー チ
ュ イ ン )の NAD依 然 性 脱 ア セ チ ル 化 酵 素 活 性 の 発 見 は 、 出芽 酵 母 を用 い
た 実 験 に よ る も の で あ る (Klar θ′′ム,1979)。 SIR2タ ン パ ク 質 は 、 NAD
依 存 性 に ヒス トン H4の 16番 の リジ ン に 特 異 的 に 脱 ア セ チ ル 化 す る 。これ
は 、転 写 が 不 活 性 化 (遺 伝 子 サ イ レン シ ン グ )す る際 の ク ロマ チ ンの 構 造
を確 立 す る上 で重 要 な 役 割 を担 っ て い る (Imai θ ■,2000)。 さ らにサ ー
`′
チ ュ イ ン は 、 カ ロ リー 制 限 に よ る老 化 の 抑 制 効 果 、寿 命 の 延 長 効 果 に 関 与
して い る (Imai,2007、 Haigis θ″′ヱ,2010、 Imai θ ′,2010)。 ま た 、
`′
動 物 に お い て も、 サ ー チ ュ イ ンが 同様 な 働 き を もつ こ とが 報 告 され て い る
(Guarente θι2■ ,2000)。
一 方 、細 胞 の 経 時 的 寿命 に大 き くか か わ る機 構 と して は 、TOR(target of
グナ ル 伝 達 径 路 が よ く知 られ て い る。TORは 栄 養 源 の 有 無
を感 知 して 、細 胞 の イ ベ ン トを 制 御 す るプ ロテ イ ン キナ ー ゼ で あ る (Evans
θ 工,2010)。 TORの 活 性 が 低 い と経 時 的 寿 命 が 伸 び る (Kaeberlein θ ′
rapamycin)シ
,
`′
`′
10
摂 取 す るカ ロ リー を 7割 程 度 に 抑 制 す る と、 生 物 の 老 化 が 遅 れ 寿
命 が 延 び る とい う現 象 が 酵 母 か らア カ ゲ ザ ル ま で 広 く観 察 され る
(Fontana θ′′′,2010)。 TORは 栄 養 源 飢 餓 で 不 活 性 化 され 、 カ ロ リー 制
2005)。
限 に よ る老 化 抑 制 、寿 命 延 長 に深 く関 わ つ て い る。逆 に言 え ば 、TORは 栄
養 源 飢 餓 に よ るア ポ トー シ ス を促 進 す る と言 え る。
本 研 究 で は 、 これ ま で の 先 行 研 究 を参 考 に して 、「予 期 しな い 細 胞 の 早
期 消 滅 」 の 原 因 を探 る と と も に 、世 代 構 成 へ の 影 響 を細 胞 死 と寿 命 の 観 点
か ら確 認 す る こ とを 目的 と して 検 討 を加 え た 。
3
論文構成
本 論 文 は 、序 章 と、本 体 部 分 に 相 当す る 3章 お よび 終 章 か ら成 る。 各 章
で 記 述 した 内容 は 以 下 の とお りで あ る。
序 章 は 、研 究 目的 と 出芽 酵 母 の 世 代 構 成 にお け る数 理 解 析 お よび 細 胞 死
と寿 命 に 関 す る先 行 研 究 に つ い て 記 述 した 。
第 一 章 は 、 世 代 構 成 を解 析 す るた め の 手 法 に つ い て 記 述 した 。 数 理 解 析
手 法 で は 先 行 研 究 にお け る解 析 法 を 紹 介 した 上 で 、今 回用 い た泰 中 らが 報
告 した 格 子 気 体 モ デ ル に Three‐ stageモ デ ル を拡 張 した 方 法 に つ い て 記 述
した 。 ま た 、 実 験 的 手 法 と して は 、 出芽 痕 の 読 み 取 り精 度 を 向 上 させ るた
め に 導 入 した 、細 胞 を 断層 的 に 解 析 す る方 法 を 従 来 法 との 比 較 で 紹 介 した 。
第 二 章 は 、液 体 培 養 した 場 合 に お け る 増 殖 に 伴 う世 代 構 成 の 変 動 を確 認
した 結 果 に つ い て 記 述 した 。野 生 株 と して S288C、 S288Cの 栄 養 要 求 性 株
と して BY4741、
写 阻 害株 で あ る
BY4741に 対 す る遺 伝 子 ノ ッ ク ア ウ ト株 と して G1/S期 転
″力″ ∠、GO期 進 入 抑 制 株 で あ る βο
力θ∠ を用 い 、増 殖 開始
か ら定 常期 ま で の 濁 度 ・ 細 胞 数 の 変 化 と、対 数 増 殖 期 か ら定 常期 ま で の 世
代 構 成 の 変 化 を 確 認 した 結 果 を 、ま た S288Cを 用 い た 細 胞 の 大 き さ と増 殖
過 程 (細 胞 周 期 )を 確 認 した 結 果 を記 述 した 。 さ らに 、 実 験 に て 得 られ た
デ ー タ と数 理 解 析 との 比 較 を行 つ た 結 果 に つ い て も記 述 した 。
第 二 章 は 、 四 節 構 成 と し、第 二 章 に て 得 られ た 結 果 の 原 因 を探 る 目的 で
実 施 した 実 験 結 果 を記 述 した 。 い ず れ の 影 響 も ス トレス と捉 え 、 第 一 節 に
栄 養 源 飢 餓 に よ る影 響 を 、第 二 節 に活 性 酸 素 に よ る影 響 を 、 第 二 節 に密 度
効 果 お よび そ の 他 の 影 響 を 、第 四節 に これ らの 影 響 をお よば す 物 質 の 特 定
に 関 す る 試 み に つ い て 記 述 し た 。 細 胞 死 の 確 認 は 、 Annexin‐ Vに
Propidium iOdideと Calcofluor Whiteを 加 え た 二 重 染 色 に よ るア ポ トー
シ ス とネ ク ロー シ ス の 発 生 頻 度 に よ り行 つ た 。
第 一 節 の 栄 養 源 飢 餓 にお い て は 、 栄 養 源 と して 炭 素 源 に 着 日 し、 グル コ
ー ス の 影 響 に つ い て 記 述 した 。
第 二 節 の 活 性 酸 素 にお い て は 、 SOD遺 伝 子 を欠 損 した βο″ ∠ (細 胞 質
局 在 型 )と ,α ´ ∠ (ミ トコ ン ドリア型 )を 用 い た 、野 生 株 と の 比 較 の 結 果 、
増 殖 曲線 に て 差 が 発 生 し始 め る タ イ ミ ン グ と娘 細 胞 の 比 率 が 変 化 し始 め
る タイ ミ ン グ とが 一 致 した こ とに ヒ ン トを 得 て 実 施 した 結 果 を記 述 した 。
第 二 節 の 密 度 効 果 お よび そ の 他 の 影 響 にお い て は 、密 度 効 果 を キ ー ワー
ドと した 影 響 評 価 に つ い て 記 述 した 。 ま た 、寒 天 培 地 を用 い て 実 施 した 揮
発 ガ ス に よ る影 響 に つ い て も記 述 した 。 さ らに 、 そ の 他 の 影 響 と して 、 老
化 ・ 寿 命 に 関 連 す る遺 伝 子 を欠 損 した 、 ん″ ∠ (rDNA領 域 の 組 み 換 え が
つ4
r2∠ (長 寿 遺 伝 子 SIR2が 欠 損 した 株 )、 ″ ′fZ(ア ポ
抑 え られ た株 )、 βゴ
トー シ ス に 関連 す る遺 伝 子 が 欠 損 した 株 )を 用 い た 検 討 結 果 と、 実 験 とそ
の 数 理 解 析 に お い て 得 られ た 細 胞 消 滅 の 原 因 を 探 る た め に 用 い た 、 わ″グθ
∠ (セ プ チ ン カ ラ ー に 異 常 を持 つ 株 )、 ″ρ■2Z(細 胞 壁 の 安 定 性 に 関 与 す
る MPKl遺 伝 子 を欠 損 した 株 )で の 検 討 結 果 を記 述 した 。
第 四 節 の 出芽 抑 制 お よび 細 胞 死 を誘 発 す る物 質 の 特 定 にお い て は 、培 養
1日 日お よび 6日 目の 細 胞 懸 濁 液 を用 い 、 そ の 上 澄 み お よび 酵 母 細 胞 を抽
出 /分 画 した 画 分 か ら、 出芽 抑 制 を促 す 物 質 お よび 細 胞 死 を 誘 発 す る物 質
の 特 定 を試 み た 結 果 に つ い て 記 述 した 。
終 章 は結 論 で あ り本 研 究 の 内容 と成 果 を ま とめ た 。 さ らに 、 今 後 の 課 題
に つ い て 論 述 した 。
13
第 一章
出芽酵母 の世 代構 成解 析 手法
14
1
数理解析 法
実 世 界 の 現 象 を理 解 し予 測 す るた め に用 い る数 理 モ デ ル は 、そ の 目的 に
よ り求 め られ る内容 が 異 な っ て くる。 複 雑 な現 象 を ユ ニ ッ ト化 し、 それ ぞ
れ の 影 響 を 評 価 す る場 合 で は 、 単 純 化 す る こ とが重 要 とな り、 そ の こ とに
よ り実 世 界 で は 見 え な い も の が 見 えて く る場 合 が あ る。 ま た 、複 雑 な系 を
モ デ ル 化 す る場 合 に は 、 実 世 界 に て 得 られ る情 報 の 質 が 問 われ 、変 動 要 因
の 緻 密 な分 析 が 求 め られ る。 出芽 酵 母 の 世 代 構 成 に 着 目 した 増 殖 に 関す る
研 究 は 、 実 世 界 の 現 象 を モ デ ル 化 す る こ とを 目的 と した も の で あ る。
生 物 の 個 体 数 の 動 態 は 、個 体 群 の ダイ ナ ミ ッ ク ス と して 常微 分 方 程 式 に
て 得 られ る。 い わ ゆ る ロ ジ ス テ ィ ク方 程 式 で あ る。 最 も シ ン プ ル な 系 は 、
倍 々 で 増 加 す るネ ズ ミ算 で あ り、細 菌 の 増 殖 は これ に 相 当す る。 個 体 数 を
χ と表 し、 個 体 数 を時 間 ιの 関数 と考 え る と、 増 加 速 度 が 集 団 サ イ ズ に比
例 す る こ と とな る。
α一
置
比 例 定 数 ″ は 1個 体 当た りの 増 加 率
=η χ
これ を満 た す 解 は 、 Xの =XO)e"`で あ り、 Xの が 1よ りず つ と小 さい 環 境
が 続 く と個 体 数 が 指 数 関数 (対 数 増 殖 )を 描 い て 増 加 す る こ とを表 して い
る。 しか しな が ら、 この 式 で は無 限 に 増 殖 す る こ と とな る が 、 実 世 界 で は
栄 養 源 の 涸 渇 な ど 、 生 息 環 境 の 悪 化 に よ り増 殖 は鈍 化 し定 常 期 に 移 行 す る。
この 現 象 を数 式 化 した も の が ロ ジ ス テ ィ ク方 程 式 で あ る。
霧
=″ く 1-#)
この 式 で 得 られ る図 形 は
S字 曲線 とな る。
一 方 、 出芽 酵 母 の 場 合 は細 菌 とは 異 な り、母 細 胞 か ら娘 細 胞 が 出芽 す る
こ とで 増 加 して い く非 対 称 な増 殖 形 態 を示 す 。 この こ とか ら、 ロ ジ ス テ ィ
ック方 程 式 に 、 非 対 称 な増 殖 要 因 を付 加 させ る必 要 が あ る。 母 ―娘 モ デ ル
で の 、母 細 胞 を ルヘ 娘 細 胞 を
下 の よ うに な る。
>′
'に
'
ル年 0→ ル件 ′
全個 体数
,と
した 時 の 出芽 酵 母 の 増 殖 プ ロセ ス は 、以
(増 殖 率
:均 )
(増 殖 率
:助
X=摯 ,と
)
な る。
この とき の 指 数 増 殖 は以 下 の 式 で 表 され る。
dX/d`=′χ
(全 体 の 増 殖 率 :r)
娘 細 胞 の 比 率 力 は ケ ク (″ 午〕 と表 され る 。
F√
(1-力 )r■■a
助 =Fdr/(1-力 )
15
と
rご
r“
の 関 係 は 、 娘 細 胞 が 母 細 胞 に な る ま で の 時 間 に 起 因 し、 常 に
ん と な る 。母 細 胞 と 娘 細 胞 の 増 殖 に 伴 う個 体 数 密 度 変 化 は 図
4の
rグ ≦
よ うに な
り、 娘 細 胞 の 密 度 が 母 細 胞 を 上 回 る 結 果 と な る 。 ま た 、 増 殖 す る 様 子 を 気
体 分 子 モ デ ル (格 子 モ デ ル )に て 解 析 し 、 空 間 パ タ ー ン を 各 細 胞 に よ る 色
分 け に て 表 す と、 図
5の
よ うに な る 。
粍種言
撃
華肇
理嚢
華
理弄髪
輩
瑳基顎理聾垂
個体数密度
my難1轟攀曇
灘κ詈
埒
藝貪量
星
攀重
図
4母 細 胞
と娘 細 胞 の 時 間 変 化 を 示 す 。
図
に す る と、 図
(rグ
6の
格 子 モ デル 空 間パ ター ン
■ D:娘 細 胞
娘 細 胞 の 密 度 が 母 細 胞 を 上 回 る。
さ らに 、 増 殖 率
5
)の 変 化 に お け る ス テ ー ジ 構 造
■ M:母 細 胞
(力 )の 推 移 を グ ラ フ
よ うに 、 娘 細 胞 の 増 殖 率 が 上 が る と娘 細 胞 の 比 率 が 減 少
(r)が 上 が る と 、母 細 胞 の 増 殖 率 が ほ ぼ 一 定 で
す る 。 ま た 、全 体 の 増 殖 率
あ る こ と に 対 し 、娘 細 胞 で は 増 殖 率 が 増 加 す る (図
7)。
す な わ ち 、全 体 の
増 殖 率 は 娘 細 胞 の 増 殖 率 に だ け 影 響 を 及 ぼ して い る 。
1
0.9
ス
0.45+― 一一一一一一一―一
08
1 07
母
035
06
孫
造
o5
結03
04
胞
o娘 の増殖率 (0
102
率 ol ___一
o■
―
―
日母の増殖率 (rm)
一 ――
―
―
T―
―
―
一
―
一
―
―
一
一
04
06
一
―
一
一
一
一
08
娘 細 胞の 増 旭 ¥(0
全体の増殖率{r)
―
図 6 増 殖 率 とス テ ー ジ構 造 の 関係 を
示 す 。 増 殖 率 が 高 い 程 、娘 細 胞 の構
所 比 率 が 低 下 す る。
図 7 全 体 増 殖 率 に 対 す る母 ・ 娘 細 胞
の増 殖 率 の比 較 を示 す 。 全 体 増 殖 率 が
上 が る と 、娘 細 胞 の 増 殖 率 が 低 下 す る 。
16
一 方 、 母 ―娘 モ デ ル と 成 熟 ―未 成 熟 モ デ ル を 合 体 させ た Three―
stageモ
デ ル で は 、 母 細 胞 と娘 細 胞 を 以 下 の 対 応 関 係 で 設 定 す る 。
娘
大 き い 一小 さ い
:未 成 熟 娘 細 胞 (出 芽 痕 0個 )
,″ :成 熟 娘 細 胞 (出 産 経 験 無 )(出 芽 痕 0個
協 :母 細 胞 (出 芽 痕 n個 )(n≧ 1)
'ゴ
)
θ :空 地
ス テ ー ジ構 成 は 、 母 細 胞 の 個 体 数 を 払
娘細胞 の個体数 を
〃
I)′ P2
a
,と
した 時 の 、
娘 細 胞 の 比 率 力 は 以 下 の よ うに な る。
,=,ゴ +ク ″
ケ
'/(胎
,)
母 細 胞 と 未 成 熟 娘 細 胞 お よ び 成 熟 娘 細 胞 の 増 殖 に 伴 う個 体 数 密 度 変 化 は
8の
図
よ う に な り、 成 熟 娘 細 胞 の 密 度 が 母 細 胞 を 上 回 る 結 果 と な る 。 さ ら
に 、 未 成 熟 娘 細 胞 の 比 率 は 20 stepを ピ ー ク に 、 以 後 減 少 して い く。 増 殖
す る 様 子 を 気 体 分 子 モ デ ル (格 子 モ デ ル )に て 解 析 す る と 図
9の
よ うに な
る。
個体数密 度
│:liIIIIII:菫 :三
‐
「
f
02上
o
図
8
l≡
l。
m幡
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蜘細胞の 密度
│ │
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二
三≡
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肩
′「
■娘細胞 (Dr;の 密度
娘細胞 1〕 Iの 密度
.‐
10
20
30
40
so
50
70i
時 間 (step)
母 細 胞 と娘 細 胞 の 密 度 の 時 間 変
図
化 を示 す 。 時 間 の 経 過 と と も に娘 細 胞
9
格 子 モ デ ル 空 間 パ ター ン
クゴ:娘 細 胞
の 密 度 が 上 昇 す る。
■ Jビ
■ ″ :娘 細 胞
“
:イ 摯糸
包
田月
加 え て 、 ス テ ー ジ 構 造 の 時 間 変 化 を 、 密 度 効 果 の あ る な しで 比 較 した と こ
ろ、図
10お
よび
11に 示
した よ うに 、 密 度 効 果 を 想 定 し た 場 合 に お い て 、
娘 細 胞 の 比 率 の 上 昇 が 認 め られ た 。 す な わ ち 、 増 殖 に よ り空 地 が な く な る
と 、 娘 細 胞 の 母 化 が 抑 制 され 、 そ の 比 率 を 上 昇 させ る こ と が 推 察 さ れ る 。
17
この よ うに 、泰 中 らが 報 告 した 、格 子 気 体 モ デ ル に Three― stageモ デ ル を
拡 張 した 方 法 は 、詳 細 な 確 認 が 可 能 で あ るた め 出芽 酵 母 の 増 殖 に 関す る検
討 を加 え る数 理 解 析 法 と して 有 用 で あ る。
晰
晰
5
・
晰 晰 幌 0
娘 綱 胞 の比率
娘 56
綱 o55
胞 。54
の
53
比
率 052
0・
0・
昭
時間 (step)
図
10
密 度 効 果 が ない場合 で の娘 細 胞
図
11
密 度 効 果 が あ る場 合 で の 娘 細 胞
の 比 率 を 示 す 。 一 旦 上 昇 し以 後 低 下 し
の 比 率 を示 す 。 密 度 効 果 と と もに比 率
安 定 的 に な る。
が 上 昇 す る。
18
2
実験的手法
出 芽 酵 母 の 母 細 胞 と娘 細 胞 の 比 率 お よ び 出 芽 痕 数 毎 の 分 布 状 態 と な る
世 代 構 成 を 確 認 す る 実 験 的 手 法 と し て は 、 出 芽 痕 を 染 め る こ と か ら始 ま る 。
図 12に 出 芽 酵 母 像 を 示 し た が 、 小 さ な 細 胞 が 娘 細 胞 で あ り 、 へ そ の よ う
写真 は 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 に よ る もの で あ るが 、
通 常 の 顕 微 鏡 で は 出芽 痕 を 見 分 け る こ とが で
F 一
な も の (出 芽 に よ っ て で き た 傷 :出 芽 痕 )を 保 有 した 細 胞 が 母 細 胞 で あ る 。
き な い 。そ こ で 、そ の 部 分 を 染 色 す る こ と と な
る が 、染 色 は 細 胞 壁 に 含 ま れ る キ チ ン を 染 め る
こ と で 行 う。キ チ ン は 出 芽 に 伴 い 出 芽 部 位 に 集
ヽr・〉鶴¶蛛
中 す る こ と か ら 、出 芽 痕 に 多 数 存 在 して い る こ
メtt壺
と と な り 、キ チ ン を 染 め る こ と で 出 芽 痕 を 識 別
(BacOn θι′ノ.,1966)。
CalcofluOr Whiteを 用 い る 。
す る こ とが 可 能 と な る
キチ ンの染 色 に は
図
12
:
出芽 酵 母 像
ま た 、 実 験 にお い て 注 意 す べ き こ とは 、 ① 培 養 条 件 を揃 え る こ と 、② 細
胞 凝 縮 を防 ぐ手 立 て を施 す こ と 、③ 明確 な 判 定 基 準 を設 定 す る こ とで あ る。
① に つ い て は 、 細 胞 の 培 養 は 、 前 々 培 養 、 前 培 養 と 2度 の 前 処 理 を加 え 、
か つ そ の 採 材 ポ イ ン トも揃 え る よ うに す る。 これ は 播 種 した 細 胞 の 世 代 分
布 構 成 を均 一 化 す る こ とが 目的 とな る。 ② に つ い て は 、細 胞 凝 縮 を 防 ぐ方
法 と して 、超 音 波 処 理 を用 い る。③ に つ い て は 、具 体 的 な も の を 後 述 す る。
一 方 、 本 研 究 を 行 うに あ た り、 従 来 法 か ら改 良 した 点 が あ る 。 一 つ は 、
観 察 時 に 断 層 写 真 を流 用 した 点 で あ る。 これ ま で に 実 施 され て きた 方 法 に
5mMの
Na2P04 Cirtic acid buffer(pH5.8)に て 洗 浄 し、
2 mg/mLの snail enzyme処 理 後 、 再 度 bufferに て 洗 浄 した 後 、 4%ホ ル
マ リ ン で 固 定 を 行 い 、超 音 波 処 理 を加 えた 後 、 遠 心 しそ の 沈 査 に O.1%
Calcofluor Whiteを 終 濃 度 1× 107cellS/mLに な る よ うに加 え 、1時 間 室 温
よ る と、細 胞 は
にお い た も の を ス ライ ドグ ラ ス に 滴 下 しカ バ ー グ ラ ス を か け鏡 検 す る も
の で あ る。鏡 検 は 、蛍 光 顕 微 鏡 に て 行 い 、 1処 理 に 800∼ 1000細 胞 の 出芽
痕 を 数 え る。 出芽 痕 の 算 定 に お い て は 、 一 つ 一 つ の 細 胞 毎 に ピン ト合 わせ
を行 い 、 必 要 に応 じて 細 胞 を 微 妙 に動 か し、読 み 取 り漏 れ が な い よ うに す
る。 この 方 法 にお い て は 出芽 痕 が 6個 以 上 の 細 胞 にお い て は 正 確 な 数 を 数
え る こ とが 困難 とな るた め 、 6個 以 上 の 場 合 は 一 括 して 「6個 以 上 」 と数
え る こ と とな る。 しか しな が ら、 この 点 は大 き な 問題 とな り、保 存 則 の 確
認 と世 代 構 成 の 評 価 に 影 響 す る。 そ こで 、細 胞 の 読 み 取 り誤 差 を な くす た
19
称 )す な わ ち 、 0.25 μm毎 に 顕 微 鏡 の 深 度 を 変
化 させ 、 そ の 像 を全 て 画 像 に て 残 し、 そ の 画 像 を基 に 出芽 痕 を 数 え る方 法
め に 、 細 胞 ス ライ ス 法
(自
を採 択 した 。 この 方 法 を用 い る こ とで 、 い つ で も、何 度 で も確 認 す る こ と
が 可 能 とな る。 ま た 、読 み 取 り漏 れ も皆 無 とな る。 さ らに細 胞 の 大 き さを
計 測 す る の に も都 合 が 良 い 。 図 13は 断層 撮 影 した 連 続 画 像 とな る。 実 験
で は 、一 視 野 あ た り 100細 胞 近 辺 に な る よ うに細 胞 懸 濁 液 を 調 整 す る。細
胞 数 が 多 い 場 合 は 細 胞 に重 な りが 生 じ、 正 確 な 算 定 が 困難 とな る 。 ま た 、
少 な い 場 合 は必 要 とす る画 像 の 枚 数 が 増 え て しま う。
↓出芽痕
↓出芽 痕 4
図
13
3
細胞 ス ライ ス法
鏡 検 時 に 深 度 を 変 更 (0.25 μmづ つ )し 、 そ の 中
で 出 現 す る 出 芽 痕 を 全 て 読 み 取 る 。上 記 の 写 真 は
7つ と な
AxioVisiOnソ
そ の 一 部 と な り 、こ の 例 で は 出 芽 痕 数 は
る 。 〔実 験 で は 、 Zeiss顕 微 鏡 に て
フ トを用 い解析〕
い ま 一 つ は 、 増 殖 状 況 を よ り詳 細 に 確 認 す る た め に 、 母 細 胞
分 類 の み に 留 ま らず 、 Gl期 、 S期 、 G2期 か ら
M期
0娘 細 胞 の
に 分 け て 分 類 した こ と
で あ る。 以 下 に そ の 分 類 基 準 を記 述 す る。
Gl期
Gl期
G2/M期
S期
図 14 出芽 痕 の 算 定
写 真 は 出 芽 痕 3と す る。
:出 芽 し て い な い 細 胞
S期 :出 芽 中 で あ るが 、 娘 細 胞 部 分 が 母 細 胞 の 1/2未 満 の も の
G2/M期 :娘 細 胞 部 分 が 母 細 胞 の 1/2以 上 の も の
さ ら に 、 鏡 検 に お い て は 、 出 芽 中 の 娘 細 胞 部 分 が 1/2以 上 で あ っ て も 、
完 全 に 分 離 して い な い も の は 娘 細 胞 と し て カ ウ ン トは し な か っ た (図 14)。
ま た 、出 芽 中 の 細 胞 か 、細 胞 分 離 が で き て い な い と こ ろ か 迷 う場 合 は 、DIC
に て 立 体 観 察 を し 、 接 合 部 分 の 状 況 を 確 認 した 上 で 判 定 した 。 分 離 が 確 認
で き た もの は
2つ の 細 胞
と して カ ウ ン ト し 、 分 離 が 明 確 で な い も の は 出 芽
中 細 胞 と して カ ウ ン ト した 。
20
第 二章
出 芽 酵 母 の 増 殖 に 伴 う世 代 構 成 の 変 動
つ4
1
要旨
出芽 酵 母 は 、母 細 胞 か ら娘 細 胞 を 出芽 す る こ とで 子 孫 を増 や す 増 殖 形 態
を示 す 。 ま た 、 出芽 酵 母 の 増 殖 は 、 分 裂 酵 母 や 細 菌 な ど と 同様 に ロ ジ ス テ
ィ ッ ク な 増 殖 パ タ ー ン を示 す 。 出芽 酵 母 の 母 細 胞 ・ 娘 細 胞 の 比 率 に 着 目 し
た 増 殖 に 関す る研 究 は 、古 くは Hartwellら Johnstonら 浜 口 ら泰 中 らに よ
っ て な され て きた が 、 出芽 痕 数 を正 し く算 出す る こ と 、 と りわ け 出芽 痕 の
多 い 細 胞 の 出芽 痕 数 を算 出す る こ とは容 易 な こ とで は な く、得 られ て い る
結 果 も限 られ た も の で あ っ た 。 ま た 、 そ れ を補 うた め に 増 殖 シ ミ ュ レー シ
ョン に よ る数 理 解 析 が 試 み られ て き た 。 我 々 は 、顕 微 鏡 観 察 時 に焦 点深 度
を 自動 変 動 させ る こ とで 、細 胞 中 に 存 在 す る 出芽 痕 を漏 れ な く算 定 す る方
法 を採 択 し、 この 方 法 を用 い て 、増 殖 ス テ ー ジ にお け る母 細 胞 と娘 細 胞 の
比 率 、母 細 胞 に 存 在 す る 出芽 痕 の 数 、 並 び に細 胞 の 大 き さに よ る比 較 を行
つ た 。 さ らに 、数 理 解 析 結 果 と、 実 測 値 との 比 較 を試 み た 。
そ の 結 果 、娘 細 胞 の 挙 動 にお い て 、密 度 効 果 が 現 れ て い な い 状 況 で 定 常
期 へ の 準 備 が 始 ま っ て い る こ と、定 常 期 以 後 に 娘 細 胞 の 増 カロと母 細 胞 の 高
齢 化 が 認 め られ る こ とを観 察 した 。 この 変 化 は 、 野 性 株 (S288C)に 留 ま
力″ ∠,θ θ∠)に お い て も 同様 に認 め られ た 。
らず 、 変 異 株 (BY4147,レ′
一 方 泰 中 は 、 出芽 酵 母 の 出芽 様 式“
か ら推 測 し、 出芽 され る娘 細 胞 の 総 数
(結 果 と して 細 胞 の 総 数 )と 出芽 痕 数 の 総 数 とに 一 致 性 が 認 め られ 、 生 育
環 境 が整 っ て い れ ば こ の 状 態 が 保 持 され て い る と考 え る「保 存 則 」(図 15)
を提 唱 した 。 しか しな が ら、 これ ま で の 実 験 手 法 で は 正 確 に 出芽 痕 を 数 え
る こ とが 困難 で あ り、 そ れ を実 証 す る に は至 っ て い な か っ た 。 今 回 、精 度
の 高 い 方 法 に よ り検 証 をカロえ た 結 果 、保 存 則 が 成 り立 つ こ とが 確 認 で き た 。
さ らに 、 そ の 状 況 を精 査 して い る 中 で 、 保 存 則 が 成 り立 つ 場 合 、 総 細 胞 数
と総 出芽 痕 数 の 比 率 は 1.0に な る は ず で あ るが 、実 測 値 にお い て 0.75程 度
の も の が 観 察 され た 。 ま た 、 対 数 増 殖 後 期 前 後 の 標 本 にお い て 壊 れ た 細 胞
が 散 見 され た 。 そ こで 、保 存 則 が 成 り立 た な くな つ た 原 因 を細 胞 消滅 と捉
え 、細 胞 消 滅 頻 度 を任 意 に設 定 しシ ミ ュ レー シ ョン した 結 果 、 出芽 痕 数 が
6以 上 の 細 胞 に細 胞 消 滅 が 発 生 す る と仮 定 した 場 合 に理 論 値 と実 測 値 とに
近 似 が 得 られ た 。 さ らに 、細 胞 消 滅 の 発 生 が 対 数 増 殖 後 期 に 一 過 性 に発 生
す る こ とが 確 認 され 、 そ の 頻 度 は 0.8%以 下 で あ つ た 。
以 上 の こ とか ら、今 回 用 い た 方 法 は 、増 殖 に 伴 う世 代 構 成 の 変 動 を確 認
す る方 法 と して 優 れ て い る と判 断 した 。 ま た 、 そ の 結 果 と して 、増 殖 環 境
の 悪 化 に 伴 い 集 団 全 体 の 増 殖 率 が 低 下 した 場 合 、子 供 の 比 率 が 増 え る とい
う逆 理 (少 子 化 パ ラ ドッ ク ス )、 母 細 胞 と娘 細 胞 と の 出 芽 を 開 始 す る ま で
つを
04
に至 る時 間 の相 異 や 、娘 細 胞 の 出芽 は抑 制 す るが 、母 細 胞 の 出芽 は抑 制 さ
れ な い こ と か ら発 生 す る 三 極 化 現 象 (セ パ レー シ ョ ン )、 な ら び に 対 数 増
殖 後 期 に 一 過 性 の 細 胞 消 滅 が 発 生 す る こ と が 認 め られ た 。
○
出芽痕
二
〇 一 ●
○
○ ―
図
細 胞 (緑 色 ):1
出芽痕
:1
細 胞 (緑 色 )
出芽痕
15
保存則
出 芽 痕 の 数 は 、 そ の 細 胞 か ら生 み 出 され た 娘 細 胞 の 数 と 同 じに な る 。 す な
わ ち 理 論 的 に は 母 細 胞 、 娘 細 胞 の 世 代 時 間 に か か わ りな く 、 細 胞 の 総 数 と
出 芽 痕 の 総 数 は 一 致 す る 。 こ れ を 「保 存 則 」 と い う。 図 は 、 出 芽 に よ り細
胞 が 増 え て い く様 子 を 現 した も の で あ る 。 一 度 目 の 出 芽 に よ り娘 細 胞 が 一
つ と 出 芽 痕 が 一 つ 発 生 す る。三 度 目の 出 芽 に よ り さ ら に 一 つ の 細 胞 が 増 え 、
成 長 した 娘 の 出 芽 と 合 わ せ 二 つ の 細 胞 が 発 生 し 、 出 芽 痕 も 二 つ とな る (オ
レ ン ジ 色 の 細 胞 は オ リ ジ ナ ル 細 胞 で あ り 、細 胞 数 に は 含 め な い )。
この よ う
に 、 理 論 的 な 保 存 則 が 成 り立 つ た め 、 あ る 特 定 の 実 験 に よ る結 果 を 解 釈 す
る場 合 に お い て 、 世 代 毎 の 比 較 を す る こ とが 容 易 とな り、 こ の こ とが 生 態
学 へ の 応 用 が 可 能 と考 え る 所 以 で あ る。
23
2
序論
多 細 胞 生 物 に は老 化 ス テ ー ジ の 異 な る細 胞 が 混 在 して い る。 そ れ らが 、
細 胞 分 裂 や 老 化 に ど の よ うに か か わ りあ つ て い るか は 、 ほ とん ど理 解 され
て い な い 。 出芽 酵 母 は 単 細 胞 生 物 で は あ る が 、 出産 回数 に 等 しい 数 の 出芽
痕 を もつ た め 、個 々 の 細 胞 の 老 化 ス テ ー ジ を求 め る こ とが で き る。さ らに 、
寿 命 制 御 に 関 与 す る遺 伝 子 は 、酵 母 か ら ヒ トま で 高 度 に保 存 され て い る た
め (Bitterman θ
.,2003、 Fabrizio θι′′
.,2008、 Steinkraus θ ′
.,2008、
`2′
`′
Barea θι′ヱ,2009)、 出芽 酵 母 は真 核 細 胞 の 老 化 ・ 寿 命 の 研 究 に適
して い
る (Thorpe θι′′
.,2008、 Neumiller θι′′,2009)。 老 化 の 進 ん だ 出芽 酵
母 の 母 細 胞 中 に は 、 ERCs(extrachrOmOsomal ribOsOmal DNA circles)
と呼 ばれ る染 色 体 か ら切 断 され た DNA断 片 、 お よび 活 性 酸 素 に よ リダ メ
ー ジ を受 け た ミ トコ ン ドリア や タ ン パ ク 質 が 蓄 積 す る も の の 、 これ らは 分
裂 中 の 娘 細 胞 に は 分 配 され な い 保 護 機 能 が 備 わ つ て い る (Sinclair θι′ス
1997、 Lai θ ′,2002、 Aguilaniu θι′′
.,2003、 ShcheprOva θι2■ ,2008、
,
`′
Kaeberlein,2008、 Erjavec θ ′
.,2007、 Ganley θι′■,2009)。
この よ う
`′
に 、 出芽 酵 母 は形 態 的 の み な らず 、細 胞 内部 の 構 造 体 に 関 して も、非 対 称
的 な 分 裂 様 式 を も つ て い る。 そ の た め 、 分 裂 を重 ね るた び に 、 母 細 胞 の 老
化 が進 む と考 え られ る。
出芽 酵 母 の 寿 命 と して は 、 分 裂 可 能 な 回数 か ら規 定 され る分 裂 寿 命
(RLS:Replicative life span)と 分 裂 停 止 後 の 細 胞 が生 き延 び る時 間 か ら
規 定 され る経 時 的 寿 命 (CLS:chron。 10gical life span)と が 知 られ て い る。
分 裂 寿 命 は 、通 常 、 寒 天 培 地 上 に 置 かれ た 一 つ の 母 細 胞 か ら娘 細 胞 が 出芽
す るた び に顕 微 鏡 下 で 取 り除 き、何 個 の 娘 細 胞 を 出芽 で き る か を調 べ る こ
とで 測 定 され 、 一 般 に 出芽 酵 母 の 分 裂 寿 命 (本 論 分 で は 、 分 裂 回 数 で ス テ
ー ジ を規 定 す る )は 20‐ 30回 程 度 で あ る (Mortimer θι′′,1959、 Matt θι
′′
.,2005、
Kristan θι′′,2009)。
しか しこれ は 周 囲 に 他 の 酵 母 が い な い
条 件 下 の 分 裂 回数 で あ り、これ が 実 際 の 細 胞 集 団 内 で の 寿 命 (生 態 的 寿 命 )
を反 映 して い るか ど うか は 不 明 で あ る。
一 方 、経 時 的 寿 命 にお い て も、 これ は 、液 体 培 地 に て 培 養 した 定 常 期 の
細 胞 の 培 養 を続 け て 一 定 時 間後 に細 胞 を寒 天 培 地 に 蒔 い て 出 現 す る コ ロ
ニ ー 形 成 率 か ら求 め られ るた め 、 そ の 際 の ス テ ー ジ の 異 な る個 々 の 細 胞 の
経 時 的 寿 命 は不 明 で あ る。 こ の よ うに 、様 々 な世 代 が 混 在 す る細 胞 集 団 内
にお い て 、 ス テ ー ジ の 異 な る細 胞 の 増 殖 と老 化 が どの よ うに 制 御 され て い
るか は ほ とん ど理 解 され て い な い 。 そ こで 我 々 は 、 出芽 酵 母 を用 い 、集 団
内 にお け る個 の ス テ ー ジ の 分 布 を 調 べ る と と も に 、時 間 の 経 過 に 伴 う変 化
24
を確 認 した 。
出芽 酵 母 は 出芽 に よ つ て 生 じた 娘 細 胞 が 母 細 胞 か ら分 離 す る と、母 細 胞
に は 出芽 痕 が残 るた め 、個 々 の 細 胞 の ス テ ー ジ が 判 断 で き、 ス テ ー ジ に応
じた 増 殖 と老 化 を解 析 す る の に適 して い る。 そ の 際 、 出芽 痕 の 数 は 、 そ の
細 胞 か ら産 み 出 され た 娘 細 胞 の 数 と同 じに な る。 つ ま り、 理 論 的 に は 、 母
細 胞 、娘 細 胞 の 世 代 時 間 に か か わ りな く、細 胞 の 総 数 と出芽 痕 の 総 数 は 一
致 す る。 い わ ゆ る 「保 存 則 」 が 成 立 す る。
出芽 酵 母 の 母 細 胞 と娘 細 胞 との 比 率 お よび 保 有 出芽 痕 (ス テ ー ジ )数 毎
の 分 布 状 態 で あ る 「世 代 構 成 」 に着 目 した 増 殖 に 関す る研 究 は 、数 理 解 析
を基 に し、 これ と実 験 結 果 とを比 較 して理 論 的 に 現 象 を論 述 す る こ とで 行
.,1997、 Hamada,
われ て き た (Hartwell θι′■,1974,1977、 Johnson θ ′
`′
1982,1985、 Tainaka θ ノ
.,1978、 Wheals,1980)。
.,2006、 Carter θ ′
`′
`′
しか しな が ら、 これ ま で の 研 究 で は 、 出芽 痕 数 を正 確 に 算 定 す る こ とが 難
し く、 か つ 多 大 な 労 力 と時 間 を 要 して い た こ とか ら、 そ の 解 析 は 十 分 な も
の で は な か っ た 。 我 々 は 、 出芽 痕 の 特 定 にお い て 、顕 微 鏡 下 で Z軸 方 向 に
ス ライ ス して 断層 的 に 画 像 を撮 影 し、 そ の 画 像 を解 析 す る こ とで 算 定 す る
方 法 を採 択 した 。 そ の 結 果 、従 来 法 に比 較 して よ り詳 細 な確 認 が 可 能 とな
った。
本 章 で は 、実 験 に て 詳 細 な 検 討 を加 え た結 果 得 られ た 、環 境 の 悪 化 に伴
う娘 細 胞 の 比 率 の 増 力日と母 細 胞 の 多 産 化 傾 向 に つ い て 論 述 す る。 ま た 、 実
験 に て 確 認 した 保 存 則 か らの 実 測 値 の ズ レ を数 理 解 析 した 結 果 、 ス テ ー ジ
の 高 い 細 胞 の 選 択 的 細 胞 死 が 示 唆 され た こ とに 関 し論 述 す る。
25
3 材 料 お よび 方 法
(1)使 用 株
出芽 酵 母 (3密 あ ′Fο ″ノοθS Oθ Fθ
7ゴ
S力 θ、以 下 同 じ)は 、
野 生 株 と して
S288C
(Mortimer θι′■,1986)、 S288Cの 栄 養 要 求 性 株 と して BY4741
BY4741に 対 す る遺 伝 子 ノ ック ア ウ ト株 と し
.,2004)、 βあ θ∠ (GO期 進
て %″
転 写 阻 害株 )(Michael θ′′′
入 抑 制 "(G1/S期
株 )(Casamayor θι′ム,1999)を 用 い た 。そ れ ぞ れ の 株 の Genotype
(Brachmann
θ′′ム 1998)、
お よび 遺 伝 子 の 機 能 を 表 7お よび 表 8に 示 した 。
(2)使 用 培 地
1,000 mLあ た り、 1.7gの Yeast nitrogen bese、 5gの 硫 酸 ア ンモ ニ ウ
ム 、 20gの グル コ ー ス (終 濃 度
complete)合 成 培 地 を用 い た 。
2%)に 以 下 の ア ミノ 酸 を加 えた SC(SD
IsOleucine
18.8 mg
Valine
93.8
12.5
12.5
12.5
62.5
18.8
12.5
Adenine hemisuifate
Aargnin HCl
Histidine H Cl monohydrate
Leuclne
Lysine HCl
Methionine
Phenylalanine
Threonlne
Tryptophan
Tyrosine
Uracil
mg
mg
mg
mg
mg
mg
mg
313 mg
125 mg
12 5 mg
18.8 mg
12.5 mg
(3)培 養 条 件
1,000 mL用 の 三 角 フ ラ ス コ に 200 mLの SC合 成 培 地 を加 え 、30℃ の 培
養 器 内 に て 振 盪 培 養 した 。 播 種 酵 母 数 は 、 前 々 培 養 (約 24時 間 )お よび
前 培 養 (約 24時 間 )し た酵 母 を 8× 104/mL(終 濃 度 )に 調 整 し培 養 液 に加
えた 。
(4)サ ンプ リ ン グ
細 胞 の 増 殖 状 態 を確 認 す るた め に 、 濁 度 (OD600)測 定 お よび 細 胞 数 算
定 を行 つ た 。 濁 度 測 定 お よび 細 胞 数 算 定 の た め の サ ン プ リ ン グは 、培 養 開
26
始 か ら 3時 間 お き に 36時 間後 ま で 行 つ た 。 母 細 胞 ・ 娘 細 胞 の 分 布 お よび
出芽 痕 数 算 定 用 ス ライ ドを 作 製 す るた め の サ ンプ リ ン グ は 、S288Cで は 培
9,12,15,18,21,36時 間 後 、 BY4741、 %″
"、
24,27,30,36時 間後 に行 つ た 。
養
sο
力
で は 培 養 18,21,
`必
(5)標 本 の 作 製 お よび 観 察
採 取 した
l mL液 を遠 心 分 離
(卓 上 遠 心 機
:VORTEX 5秒 間 )し 、 この
沈 澄 を蒸 留 水 に て 洗 浄 した 後 、再 度 遠 心 分 離 (同 上 )し た 。この 沈 澄 に 100
μLの Calcofluor White液 (l mg/mL)(Sigma社 製 、No F3543)を 力日え 、
3分 間染 色 した 。 再 度 遠 心 分 離
(同 上 )後 、蒸 留 水 に て
2度 洗 浄 し、 洗 浄
後 、 蒸 留 水 を 500 μL加 え た 。 これ を 、 氷 冷 下 に て 超 音 波 処 理 (20秒 間 、
約 65」 )し 、弱 く結 合 して い る細 胞 同 士 を 分 離 させ た 。 そ れ を再 び 遠 心 分
離 (同 上 )し 、 一 定 濃 度 (顕 微 鏡 観 察 時 に 一 視 野 100細 胞 程 度 に な る よ う
に 調 整 )の 懸 濁 液 を 作 製 した 。 この 懸 濁 液 を ス ライ ドグ ラ ス に 1.7 μL滴 下
し、 これ に カ バ ー グ ラ ス を載 せ 、 さ らに透 明 な マ ニ キ ュ ア に て カ バ ー グ ラ
ス の 辺 縁 を 覆 い 、乾 燥 を 防 止 した 。標 本 の 観 察 は 、蛍 光 顕 微 鏡 (Carl Zeiss,
AxiO Imager M l)を 用 い 、 UV励 起 に て 63倍 の 油 浸 レン ズ を用 い て 630
倍 に て 鏡 検 した 。鏡 検 時 に 、焦 点 深 度 を 自動 で 0.25 pm毎 に 変 動 させ る こ
とで 細 胞 の 断 層 面 の 画 像 を取 得 した 。 この 画 像 を基 に 、母 細 胞 と娘 細 胞 の
比 率 、 出芽 痕 の 数 的 分 布 の 時 間変 化 、 な らび に 出芽 中 の 細 胞 を
Gl期 、 S
期 、 G2/M期 に 分 類 して 計 数 した 。 ま た 、 それ ぞ れ の 株 の 増 殖 に 伴 う娘 細
胞 の 大 き さに よ る比 較 を 行 つ た 。 細 胞 の 大 き さは 、画 像 解 析 ソフ ト (Axio
Vision Re1 4.6)に て 行 っ た 。
(6)数 理 解 析
.,2006)
出芽 酵 母 の 増 殖 モ デ ル の 解 析 は 、 泰 中 らが 報 告 (Tainaka θι′′
した 、 格 子 気 体 モ デ ル に Three‐ stageモ デ ル を拡 張 した 方 法 に て 行 つ た 。
さ らに 、 実 験 に て 得 られ た 結 果 とシ ミ ュ レー シ ョン結 果 と の 比 較 を行 い 、
ズ レが 発 生 した 場 合 は 、 そ の 原 因 を探 る た め 、新 た な設 定 条 件 を加 え る こ
とで 両 間 の ズ レ補 正 を行 い 、 実 験 で の 結 果 が 何 を意 味 す る も の か 予 測 した 。
η‘
04
4
実験結果
(1)細
胞 の増殖 状 況
細 胞 の 増 殖 状 況 を 、 細 胞 濁 度 (単 位 培 養 液 中 の 生 体 量 、 細 胞 の 大 き さ に
よ っ て 変 化 す る )お よ び 細 胞 数 (単 位 培 養 液 中 の 細 胞 数 )に よ り確 認 した 。
(S288C)と
、 そ れ とは 異 な る細 胞 増 殖 プ ロ フ ァイ ル を
ヾた 。 BY4741は S288C
も つ 株 BY4741,助 ″ J∠ お よ び sθ 力θ∠ を 用 い て 調 ン
実験 には、野生株
由 来 の 栄 養 要 求 性 株 で あ り 、 そ の た め 増 殖 が 遅 延 す る 。 ″力″ ∠ と
は
BY4741由
と
SCH9(TORの
来 の 株 で あ り 、そ れ ぞ れ
sθ 力θ∠
Nm5(G1/S進 行 を 抑 制 す る 遺 伝 子
)
下 流 で 働 く プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ の 遺 伝 子 )を 欠 損 して い
る 。 そ の た め 、 ″r力 ″ ∠株 は 娘 細 胞 が 大 き く な る 前 に
G1/S進 行 が 起 こ り 、
そ の 結 果 、 細 胞 が 小 さ く な る 。 一 方 、 sθ 力θ∠ も 細 胞 成 長 に 欠 損 を 持 つ た め
細 胞 が 小 さ くな る。
S288C,BY4741,″ L渉 ∠ ,sθ 力θ∠ の 増 殖 に 伴
を図
16お
よび
17に 示
う濁 度 お よ び 細 胞 数 の 変 化
した 。
0
8
§8 ︶Щ興
︵
S288C
BY4741
6
″力/J∠
sσ 力′∠
4
21
24
27
30
21
24
27
30
33
36
1
0
1
§8 ︶撻興
︵
0
1
「
18
.
0.01
0.001
0
3
6
9
12
15
18
33
36
培 養 時 間 (hr)
図
16
は
"の
30時 間 、 sθ 力θ∠ は 27時 間
、 %西
細 胞 増 殖 曲線
濁 度 の 変 化 を 上 段 は 自然 数 、 下 段 は 対 数 に て 表 記 した 。 増 殖 の 速 さ は 、
S288C<BY4741,sθ 力θ∠<″ 万
順 とな っ た 。S288Cは 24時 間 、BY4741
28
"は
33時 間 以 降 に 定 常 期
とな っ た。
10.0000
S288C
3ミ ∞
2 x︶ 輛 星 軍
BY4741
1.0000
″カノJ∠
sσ 力′∠
0.1000
0.0100
0.0010
0.0001
0
3
6
9
12
15
18
21
24
27
30
33
36
培 養 時 間 (hr)
図
17
細 胞 増 殖 曲線
細 胞 数 の 変 化 を示 した 曲線 の 印 は 図 16と 同 じ。
野生株
S288Cに 対
し 、BY4741,"「 力″ ∠ お よ び
sθ 力θ∠ は
い ず れ と も増 殖
遅 延 が 認 め られ た 。 そ の 度 合 い は 、 S288C<BY4741,sθ力θ∠ <″ 力″ ∠ の 順
で あ つ た 。 さ ら に 、 sθ 力θ∠ は 増 殖 遅 延 に 加 え 、 定 常 期 の 濁 度 が 低 下 し た 。
細 胞 数 に つ い て は 、栄 養 要 求 性 、 ノ ッ ク ア ウ ト株 と も に
S288Cよ
り緩 や か
な 増 殖 と な っ た 。 S288C以 外 の 遺 伝 子 欠 損 株 に 関 して は 、細 胞 数 の 増 加 は
ほ ぼ 同 じで あ っ た (対 数 増 殖 期 に お け る 倍 加 時 間 は 、S288Cが 約 1.5時 間 、
そ の他 が約
(2)培
2時 間 で あ つ た )。
養 中の娘 細胞 の大 き さ
Hartwell,Carter,Whealsら
は 、増 殖 率 と 細 胞 の 大 き さ に は 関 連 が あ り 、
増 殖 率 が 高 い 場 合 は 母 細 胞 と娘 細 胞 の 大 き さ に 大 き な 開 き は な く 、 増 殖 率
が 低 下 した 場 合 、娘 細 胞 が 小 型 化 す る と 報 告 した (Hartwell θ′′ノ
。
,1977、
Carter θ′′ノ.,1978、 Wheals θ′ノ 。
,1980)。 こ れ を 検 証 す る た め に 、 娘 細
胞 の 大 き さ を 測 定 した 。 そ の 結 果 、 い ず れ の 株 に お い て も 対 数 増 殖 期 か ら
(S288Cは 18時 間 、BY4741は 27時 間 、″力″ ∠ は 30時 間 、
27時 間 :細 胞 数 に て 評 価 )ま で は 、 細 胞 の 小 型 化 が 認 め られ た
対数 増殖後期
sθ 力θ∠ は
(表
1、
図 18)。 そ の 後 、 減 ″ ∠ と
ん だ が 、 S288C(21時 間 )、
sθ 力θ∠ は 定
BY4741(36時
常 期 ま で さ らに 小 型 化 が 進
間 )で は 、 そ れ ま で の 小 型 化
傾 向 か ら 、 肥 大 化 に シ フ ト した 。 ま た 、 細 胞 の 大 き さ を 株 毎 で 比 較 した と
こ ろ 、培 養 期 間 中 の 全 て の 時 期 に お い て 、BY4741は
型 で あ っ た (表
∠と
1、
sθ力θ∠ の 細
S288Cよ
りも常 に小
図 18)。 ま た 、培 養 期 間 中 の 全 て の 時 期 に お い て 、 ″力″
胞は
BY4741細 胞 よ り も さ ら に 小 型 で あ っ た
29
(表
1、
図
ち な み に 、培 養 36時 間後 の 娘 細 胞 の 大 き さを株 毎 で 比 較 した と こ ろ 、
S288Cで は 3 μm未 満 が 28.0%に 対 し 3 μm以 上 が 72.0%、 BY4741で は
18)。
67.1%と 32.9%、 助″例 で は 91.4%と 8.6%、
sθ 力θ
∠で は
71.5%と 28.5%
と、野 生 株 に 対 し変 異 株 は い ず れ も小 型 化 して い た 。 特 に 肋薔測 が 顕 著 で
あ つ た 。これ は 、過 去 の 報 告 (Jorgensen θιノ.,2002、 Zhang θ′ノ。
,2002)
と一 致 して い た 。
S288C
21`
hr
e
t
θ ・L
ン
●
ザ
(
● ′
・
18 hr (
15 hr
BY4741
18け
′
争.主
1響
●
《
′tt
・
.
)
.0
│「
、
曖7 hr
F
36 hF→
ヽ
`
摯
●
●
●
″力/J∠
蹄
.
21け
27 hr
●
・ ‐
″●
`.Ct
一
ヽ
中
、
。
●
sθ 力θ∠
ヽ
.
27 hr
r
一h
=
6
■6
21 hr
0
●●
.
ヽ・
●
し
ご
、 、
図
(3)世
18
′
実 験 に用 い た 株 の 培 養 時 間 毎 の 代 表 的 な 写 真 像 を示 す 。
代 構 成 お よび 出芽 痕 の発 生 状 況
培 養 過 程 に お け る 母 細 胞 と娘 細 胞 の 比 率 、 出 芽 痕 の 数 的 分 布 の 時 間 変 化
につ い て は、 図
19お
よび 表
2か
ら
5に 示
した 。
そ の 結 果 、 い ず れ の 株 に お い て も対 数 増 殖 期 か ら対 数 増 殖 後 期 ・ 定 常 期
に か け 、 娘 細 胞 の 比 率 が 上 昇 した 。 そ の 上 昇 率 は 最 大 で 、 S288Cが 1.28
倍 、 BY4741が
1.15倍 、"「 カゴσ∠ が 1.26倍 、sθ 力θ∠ が 1.20倍 で あ っ た 。
30
ま た 、 出 芽 痕 数 を 総 細 胞 数 で 割 つ た 値 (保 存 則 の 保 持 状 況 の 確 認 、 図 中
で は 青 色 実 線 )に つ い て は 、 S288Cで は 0。 74∼ 0。 96、 BY4741で は 0。 78
∼ 0.97、 %″ σ∠ で は o。 76∼ 0。 97、 sα iθ ∠で は 0。 73∼ 0。 95と 、 株 に お け る
大 差 は な く、 ほ ぼ 同程 度 で あ っ た。 ま た そ の値 は 、全 て の株 にお い て 、 対
数 増 殖 期 で 高 く 、 対 数 増 殖 後 期 ・ 定 常 期 で 低 い 傾 向 が 認 め られ た 。
S288C
出芽痕数
BY4741
100%
90%
90%
80%
80%
70%
70%
■7
60%
60%
■6
50%
40%
50%
■5
40%
■4
出現率
100%
10
凛9
:8
■3
30%
30%
20%
20%
10%
10%
0%
0%
9 hr
12 hr
15 hr
18 hr
21 hr
■2
1
0
36 hr
21 hr 24 hr
27 hr
30 hr
36 hr
培養時間
N憔
sa力 θ∠
ヘ
100%
100%
90%
90%
10
日9
80%
80%
70%
70%
■7
60%
60%
■6
50%
50%
■5
40%
40%
■4
30%
30%
20%
20%
10%
10%
0%
18 hr
21 hr
24 hr
27 hr
30 hr
,8
■3
■2
1
0
0%
36 hr
18 hr
21 hr 24 hr
27 hr
30 hr
36 hr
19
培 養 中 の 細 胞 の ス テ ー ジ 分 布 と保 存 則 比 の 変 化
培 養 時 間 中 の 細 胞 の ス テ ー ジ (出 芽 痕 0∼ 10)分 布 を 棒 グ ラ フ の 色 で
図
示す。 出芽痕 数
0の 娘 細 胞 の 出 現 比 率 が 増 加 す る こ と を 示 す 。 参 考 の
た め 、増 加 前 の値 を薄 い 青 ライ ン に て 示 す 。 棒 中 の数 値 は総 出芽 痕 数
を総 細 胞 数 に て 割 つ た 値 を示 す 。 保 存 則 比 の 低 下 が 発 生 す る こ とを 青
色 曲線 に て 示 す 。
00
さ らに 、 母 細 胞 の 出 芽 痕 数 毎 に お け る 出現 率 の 比 較 で は 、 図
20に 示 す
よ う に 、 密 度 効 果 が 認 め られ る 前 で は 出 芽 痕 の 少 な い 母 細 胞 が 多 く 、 密 度
効 果 が 現 れ た 後 は 出 芽 痕 の 少 な い 細 胞 が 減 少 し、 出 芽 痕 の 多 い 細 胞 が 増 加
す る傾 向 が 認 め られ た 。
S288C
RY4741
BY4741
25
-21 hr
-24
hr
甕 L=27 hr
-15 hr
-18 hr
5 0
出現率
・→卜
● 21 hr
`“
-30●
hr
バ
、
-36 hr
o・ ra●
36 hr
%
ヽ
″力/J∠
…
sθ 力θ∠
-21
-24
-27
-30
hr
hr
hr
hr
a― ,-36
-21
hr
‐口 ‐
■卜 24 hr
い
ヽ
・
● -127 hr
-30 hr
15
hr
s,F`・
‐36 hr
10
123456
12345678910
20
母 細 胞 の 出芽 痕 数 毎 にお け る 出現 率 の 比 較
培 養 時 間 の 経 過 に 伴 い 、出 芽 回数 が 少 な い 母 細 胞 は 減 少 し、出 芽 回 数 が 多 い
母 細 胞 が 増 加 し、 母 細 胞 の 多 産 化 傾 向 が 認 め られ る 。
図
加 え て 、 Gl期 、 S期 、 G2‐ M期 で の 比 較 で は 、 対 数 増 殖 期 か ら対 数 増 殖
後 期 に か け 、娘 細 胞 が
S期 、G2… M期
の 比 率 を 著 し く低 下 さ せ る の に 対 し 、
母 細 胞 で は 平 行 あ る い は 僅 か な 減 少 で あ つ た 。 ま た 、 S期 お よ び G2-M期
の 出 現 比 率 に お い て 、 出 芽 回 数 が 多 い 細 胞 へ の シ フ トが 認 め られ た 。 こ の
傾 向 は い ず れ の 株 に お い て も認 め られ た が 、 増 殖 が 緩 や か な ″力″ ∠ 、 増
殖 に お け る 頭 打 ち 現 象 が 認 め られ る
sθ 力θ∠で
は 弱 く 、 S288C、
BY4741で
は 顕 著 で あ っ た 。 加 え て 、 対 数 増 殖 後 期 以 降 、 S期 、 G2-M期 の 出 現 は ほ
と ん ど 認 め られ な か っ た (表
6)。
32
(4)対 数 増 殖 後 期 にお け る死 細 胞
顕 微 鏡 観 察 時 に 壊 れ た 細 胞 が 散 見 され た が 、 そ の 発 生 頻 度 は 、対 数 増 殖
後 期 前 後 に 多 か っ た (図 21)。 この 壊 れ た 細 胞 の 発 生 原 因 と して 、標 本 作
製 時 にお け るア ー テ ィ フ ァ ク トを疑 い 、超 音 波 処 理 条 件 (超 音 波 処 理 を し
な い 条 件 も含 め )、 撹 拌 処 理 条 件 、遠 心 分 離 条 件 、標 本 へ の 滴 下 条 件 な ど、
様 々 な 検 討 を加 え た が 発 生 状 況 に 変 わ りは な か っ た 。 そ の 壊 れ た 細 胞 はす
べ て 母 細 胞 で あ り、 且 つ 多 産 化 した も の が 多 い 傾 向 が 認 め られ た 。
S288C21hr
○
A
□
C
G
F
D
巨
21
壊 れ た細胞 像
した 母 細 胞 の 細 胞 壁 に 亀 裂 が 入 つ て い る
壊 れ た 細 胞 の 出 現 状 況 (S288C培 養 21時 間 後 )。
図
A,B:多 産
(S288C培
D,E:Dに
養
21時 間 後 )。 C:
Calcofluor White
Eに Propidium iodide染
染色像 を
色 像 を 示 した 。 2つ の 細 胞 が 死 細 胞 と して 赤
い
く染 色 され て る が 、壊 れ た 細 胞 は 染 色 され て い な い 。Gは 壊 れ た 細 胞 か ら漏 れ
出 た ク ロマ チ ン が 染 色 され て い る像 で あ る が 、Eの 壊 れ た 細 胞 も 同 様 に ク ロマ チ
ン が 流 出 して しま い 染 ま っ て い な い 可 能 性 も あ る (詳 細 は 第 二 章 第 二 節 を 参 照 )。
33
5
数理解析結果
出芽 酵 母 の 増 殖 モ デ ル の解 析 は 、 泰 中 らが 報 告 した 格 子 気 体 モ デ ル に
Tree‐ stageモ デ ル を 拡 張 した 方 法 に て 行 つ た 。 ま た 、 実 験 結 果 に お い て 、
対 数 増 殖 後 期 前 後 に 壊 れ た 細 胞 が 散 見 され る 現 象 が 認 め られ た た め 、 モ デ
ル に 細 胞 消 滅 に 関 す る 要 素 を 加 え 解 析 し た 。 各 細 胞 は 次 の よ うに 定 義 し た 。
Di:未 成 熟 娘 細 胞
0個
Dm:成 熟 娘 細 胞 (出 芽 痕 0個
Mn:出 芽 痕 保 有 細 胞 (出 芽 痕 n個 )(n≧
(出 芽 痕
)
)
1)
0:空 地
各 細胞 の反 応 式 は以 下 を用 い た。
Di一 二 → Dm
Dm+O Ml+Di
M.1+0-M.+Di
Mn一
〇
g:未 成 熟 娘 細 胞 か ら成 熟 娘 細 胞 へ の 成 長 率
rnd:娘 細 胞 の 出 芽 に よ る 増 殖 率
rm:出 芽 痕 保 有 細 胞 の 出 芽 に よ る増 殖 率
ま た 、 こ の モ デ ル で は 以 下 の 仮 定 を加 え た 。
・ 出芽痕保 有 細胞 の増殖 率 は、 出芽痕数
これ は Hartwellと
nに よ る違 い が な い も の と した 。
Unggerら の 幸艮告 と近 似 して い る。
・ 各 格 子 セ ル に は 1つ の 細 胞 しか 入 れ な い 。
・ 母 細 胞 の 消 滅 率 は 、 ml≦ m2≦
mnと
した 。
一 方 、 平 均 場 近 似 に お け る 数 値 計 算 と して 、 各 細 胞 の 密 度 の 時 間 変 化 を
微 分 方 程 式 で 示 す と 、 以 下 の よ うに な る 。
生=_威 +布′
Q。 +犠
塔4フ
傷
〆
λθ
争=ρ ―
%4ο ―
%4 おrノ =L2フ
争 =%″ 几―
サ
=布 に ο―られ
・
34
1
こ れ ら を 用 い て 、 各 細 胞 数 密 度 の 時 間 変 化 、 出 芽 痕 数 と細 胞 数 と の 関 係 を
調 べ 、 実 験 値 と比 較 した 。 ま た 、 シ ミ ュ レー シ ョ ン に お け る 初 期 密 度 の 設
定 は 、 一 度 定 常 状 態 に な っ た 各 細 胞 の 密 度 を 測 定 し、 そ の 時 の 密 度 組 成 を
初 期 状 態 の 比 率 と して 用 い た 。 さ ら に 、 細 胞 消 滅 は 以 下 の 条 件 を加 え た 。
出 芽 痕 が 6以 上 の 細 胞 が 消 滅 す る と 仮 定 した 条 件
ml=… ・=m5=0,m6=m7=… 。=mn=1
出 芽 痕 が 7以 上 の 細 胞 が 消 滅 す る と 仮 定 した 条 件
ml=… ・=m6=0,m7=m8=… 。=mn=1
8以 上 の 細 胞 が 消 滅 す る と仮 定 した 条 件
ml=… ・=m7=0,m8=m9=… ・=mn=1
出芽痕 が
細胞 数 密度 の時 間変化 を図
22に 示
した 。
0.1
細
°01
胞 ・
密
度 0.001
0.01
BY4741
S288C
″カゴσzl
0.001
sθ 力θ」
0.0001
0.000
0
10
20
30
40
培 養 時 間 (hr)
50
0
20
30
40
各 パ ラ メー タの数 値
各 パ ラ メー タの数 値
(g):0.7
(rmd=rm):o.3
増 殖 率 (密 度 効 果 後 rmd):0.0
密 度 効 果 発 生 時 間 :15
消 滅 率 (青 線 ):0.0
消 滅 率 (赤 線 ):1.0
消 滅 開 始 出 芽 痕 数 :6
(g):0.7
(rmd=rm):o.3
増 殖 率 (密 度 効 果 後 rmd):0.0
密 度 効 果 発 生 時 間 :25
消 滅 率 (青 線 ):0.0
消 滅 率 (赤 線 ):1.0
消 滅 開 始 出 芽 痕 数 :6
成長率
成長率
増殖率
図
10
22
増殖率
細胞数密 度 の時 間変化
数 理 解 析 に て 得 られ る 増 殖 曲 線 と 実 測 値 と の 比 較 を示 す 。
シ ミ ュ レー シ ョ ン は
100回 試 行
し 、 ア ン サ ン ブ ル 平 均 で 算 出 した 。 そ の
結 果 、 細 胞 密 度 の 時 間 変 化 は 、 い ず れ の 株 も シ ミ ュ レー シ ョ ン 結 果 と 実 験
結 果 と が 近 似 した 。 ま た 、 細 胞 消 滅 に お け る 細 胞 数 減 少 の 影 響 は 非 常 に 少
な く 、 総 細 胞 数 の 時 間 変 化 に ほ と ん ど 影 響 は 見 られ な か っ た 。 ち な み に 、
stageモ デ ル で は 密 度 効 果 を 計 算 式 に 付 加 して お り 、 そ の 結 果 と して 、
密 度 効 果 後 の 成 熟 娘 細 胞 の 出 生 率 は 0と な る 。 な お 、 シ ミ ュ レー シ ョ ン に
お け る 初 期 状 態 は 、 娘 細 胞 8に 対 し 母 細 胞 2の 割 合 で 検 証 した 。
Tree‐
35
次 に 、 上 記 の 微 分 方 程 式 を 用 い て 、 出 芽 痕 と細 胞 数 の 保 存 則 の 成 立 状 況
を シ ミ ュ レー シ ョ ン した 。 出 芽 痕 数 毎 の 細 胞 密 度 の 時 間 変 化 を 図
23に 示
した (打 点 が 実 測 値 、 実 線 が シ ミ ュ レー シ ョ ン 結 果 と な る )。
娘細胞
出 芽 痕 数 毎 の細 胞 密 度
I r szaac
■母 細 胞 、 出芽 痕
1
0母 細 胞 、 出 芽 痕
2
◆母 細 胞 、 出芽痕
3
母細胞 、出芽痕 4
●母 細 胞 、 出 芽 痕
5
母細胞 、出芽痕 6
-娘 糸田月包
― 母細胞 、出芽痕 1
‐
・母 細 胞 、 出 芽 痕 2
0
5
10
15
20
25
30
35
-母 細 胞 、 出 芽 痕
-母 細 胞 、 出 芽 痕
40
培 養 時 間 (hr)
図
23
出芽 痕 数 毎 の細 胞 数 密 度 の 時 間変化
3
4
… 母細胞 、出芽痕
5
-母 細 胞 、 出 芽 痕
6
数 理 解 析 に て 得 られ る 世 代 構 成 分 布 と実 測 値 と の 比 較 を 示 す 。
「
そ の 結 果 、 実 測 値 と シ ミ ュ レー シ ョ ン 結 果 と が 近 似 した 。 な お 、 シ ミ ュ
増 殖 率 :rmd=rm=0056、
レ ー シ ョ ン で は 、 成 長 率 :g=0.67、
Di=Dm=Ml=M2=0。 001を パ ラ メ ー タ と して 設 定
初期密 度
した 。 さ ら に 、実 験 に て 得
られ た 保 存 則 の 結 果 と 細 胞 消 滅 を 計 算 値 に 加 え た 結 果 と を 比 較 した 。 細 胞
消 滅 は 、 消 滅 開 始 の 出 芽 痕 数 の 違 い に よ る 変 化 を シ ミ ュ レー シ ョ ン し た 。
S288Cで の 結 果 を 図 24に 、 BY4741、
〃力″ ∠ 、 sθ 力θ∠ で の 結 果 を 図
25に
示 した 。
各 パ ラ メー タの数値
(g):0.7
(rmd=rm):o.3
増 殖 率 (密 度 効 果 後 rmd):0,0
密 度 効 果 発 生 時 間 :15
消 滅 率 (密 度 効 果 前 ):0.05
消 滅 率 (密 度 効 果 後 ):1.0
-出 芽 痕 5以 上 が 消 滅
成長率
増殖率
6 4
保存則比
― 出 芽 痕 6以 上 が 消 滅
… 出 芽 痕 7以 上 が 消 滅
S288C
10
― 出 芽 痕 8以 上 が 消 滅
20
30
40
50
一 出 芽 痕 9以 上 が 消 滅
,一
培養時間
(hr)
24
出 芽 痕 10以 上 が 消 滅
細 胞 消 滅 予 測 シ ミ ュ レー シ ョ ン .保 存 則 比 の 実 測 値 と 数 理 解
析 に よ る 細 胞 消 滅 予 測 シ ミ ュ レー シ ョ ン 結 果 と の 比 較 を 示 す 。
図
36
各 パ ラメー タの数値
(g):0.7
(rmd=rm):o.3
増 殖 率 (密 度 効 果 後 rmd):0.0
密 度 効 果 発 生 時 間 :25
消 滅 率 (密 度 効 果 前 ):0.05
消 滅 率 (密 度 効 果 後 ):1.0
-出 芽 痕 5以 上 が 消 滅
成長率
0.8
増殖率
保 0.6
存
貝J
4
上ヒ0・
BY4741
0.2
,予
― 出 芽 痕 6以 上 が 消 滅
うゴσzl
出 芽 痕 7以 上 が 消 滅
sθ 力θ」
― 出 芽 痕 8以 上 が 消 滅
… 出 芽 痕 9以 上 が 消 滅
… 出 芽 痕 10以 上 が 消 滅
0
0
10
20
30
40
50
培 養 時 間 (hr)
図
25
細 胞 消 滅 予 測 シ ミ ュ レー シ ョ ン
保 存 則 比 の 実 測 値 と 数 理 解 析 に よ る 細 胞 消 滅 予 測 シ ミ ュ レー シ ョン
結 果 との 比 較 を 示 す 。
シ ミ ュ レー シ ョ ン は
100回 試 行
し 、 ア ン サ ン ブ ル 平 均 で 算 出 した 。 そ の
結 果 、い ず れ の株 にお い て も 出芽 痕 数
6以 上 の 細 胞 が 消 滅 す る と 仮 定
した
場 合 に 、 実 測 値 と シ ミ ュ レー シ ョ ン 結 果 が 近 似 した (図 26)。
1
0.8
6 4 2
保存則比
0
20
30
培養時間
図
26
50
0
10
(hr)
細 胞 消 滅 予 測 シ ミ ュ レー シ ョ ン
保 存 則 比 の 実 測 値 と数 理 解 析 に よ る細 胞 消 滅 予 測 シ ミ ュ レー シ ョン
結 果 で の 近 似 値 との 比 較 を 示 す 。
さ ら に 、 細 胞 が 消 滅 す る 頻 度 を 任 意 に 設 定 し 、 時 間 軸 に よ る シ ミ ュ レー
シ ョ ン を 行 っ た 。 設 定 は 、 密 度 効 果 が 現 れ る 前 は 、 消 滅 率 を 0.05∼
と し、 密 度 効 果 が 現 れ た 後 は 、 消 滅 率 を
は
100回 試 行
1。
0%と
1.0%
した 。 シ ミ ュ レー シ ョ ン
し 、 ア ン サ ン ブ ル 平 均 で 算 出 した 。
そ の 結 果 、 密 度 効 果 前 の 消 滅 率 を 変 化 させ て も 、 全 体 の 細 胞 の 消 滅 割 合
37
0.8%を 超 え る こ と は な か っ た 。 ま た 図 27お よ び 28の 結 果 は 、 密 度 効
果 前 の 消 滅 率 は 0.05の 時 に 最 も 実 験 結 果 に 近 い シ ミ ュ レー シ ョ ン が 得 ら
は
れ る こ と を 表 して い る 。 こ の 傾 向 は 、 S288Cお よ び
BY4741と
もに 同様 で
あ った。
細胞消滅率
各 パ ラ メー タの数 値
成長率
(g):0.7
%
増 殖 率 (rmd=rm):o.3
増 殖 率 (密 度 効 果 後 rmd):0.0
密 度 効 果 発 生 時 間 :15
消滅 開始 出芽痕数
0
10
20
培 養 時 間
図
30
40
50
(hr)
一
出 密 度 効 果 前 細 胞 消 滅 率 0.05%、
―
出 密 度 効 果 前 細 胞 消 滅 率 0.5%、
効果後
一
出 密 度 効 果 前 細 胞 消 滅 率 1.0%、
効果後
27
:6
1.0%
1.0%
1.0%
効果後
細 胞 消 滅 予 測 シ ミ ュ レー シ ョ ン
数 理 解 析 に よ る細 胞 消 滅 頻 度 の 予 測 を示 す 。
0。
8
BY4741
0
0
%
6 4 2
0
細胞消滅率
各 パ ラ メー タの数 値
(g):0.7
(rmd=rm):o.3
増 殖 率 (密 度 効 果 後 rmd):0.0
密 度 効 果 発 生 時 間 :25
消 滅 開 始 出 芽 痕 数 :6
成長率
増殖率
0
10
20
培 養 時 間
図
28
30
40
50
(hr)
一
出 密 度 効 果 前 細 胞 消 滅 率 0.05%、
―
出 密 度 効 果 前 細 胞 消 滅 率 0.5%、
効果後
―
出 密 度 効 果 前 細 胞 消 滅 率 1.0%、
効果後
1.0%
1.0%
1.0%
効果後
細 胞 消 滅 予 測 シ ミ ュ レー シ ョ ン
数 理 解 析 に よ る細 胞 消 滅 頻 度 の 予 測 を示 す 。
38
これ を 、 細 胞 数 密 度 の 時 間 変 化 、 い わ ゆ る細 胞 増 殖 曲線 と、 保 存 則 の 保
存 状 況 を 時 間 軸 に て 表 し 、 細 胞 消 滅 予 測 を シ ミ ュ レー シ ョ ン し 、 実 測 値 と
シ ミ ュ レー シ ョ ン 結 果 と が 一 致 した 曲 線 と を 重 ね る と 図
29の
よ うに な る 。
そ の 結 果 、 対 数 増 殖 後 期 に 一 過 性 に 細 胞 消 滅 が 発 生 す る こ とが 分 か る。
ま た 、 一 過 性 の 細 胞 消 滅 の 後 に 保 存 則 の 低 下 が 認 め られ 、 保 存 則 比 に 細 胞
消 滅 が 影 響 し て い る こ と が 分 か る 。 こ の 傾 向 は 、 S288Cお よ び
BY4741と
もに 同様 で あ っ た。
S288C
BY4741
細胞密度
0.01
0.01
0.001
0.001
0.0001
0.0001
0
1
0.8
0.8
6
0.6
4
0.4
保存則比
1
2
0.2
0
0
0.8
0.8
%
6 4 2
細胞消滅率
0.6
―
0.4
0.2
20
培養時間
図
29
0
30
(hr)
細 胞 密 度 、保 存 則 比 、 細 胞 消滅 率 の比 較
S288C,BY4741と
も に 、 対 数 増 殖 後 期 か ら保 存 則 比 が 減 少 す る 。
ま た 、対 数 増 殖 後 期 に 一 過 性 の 細 胞 消 滅 が 発 生 す る 。赤 線 は 変 曲 点 、
す な わ ち 個 体 数 が 最 終 平 衡 状 態 の 半 分 (密 度 が 1/2)に な る 時 間 を
示す。
39
6
考察
本 研 究 は 、 これ ま で に 報 告 され て き た 世 代 構 成 に 対 す る数 理 解 析 結 果 と
実 験 に よ る実 測 値 との 比 較 結 果 を参 考 に して 、 出芽 痕 数 計 測 の 精 度 を高 め
る こ とに よ り、よ り詳 細 な検 討 をカロえ る こ とを 目的 に実 施 した 。実 験 で は 、
出芽 酵 母 の 、増 殖 過 程 にお け る濁 度 お よび 細 胞 数 を基 と した 増 殖 挙 動 の 確
認 お よび 娘 細 胞 と 出芽 回数 を加 味 した母 細 胞 の 分 布 に よ る ス テ ー ジ 構 成
の 変 動 に つ い て 検 討 を加 えた 。
(1)娘 細 胞 の 増 加
そ の 結 果 、野 生 株
S288Cに お い て 、対 数 増 殖 期 以 降 に 連 続 的 に娘 細 胞 の
増 加 と母 細 胞 の 減 少 が 認 め られ た 。 この 傾 向 は 、既 に報 告 され た も の と一
致 して い た 。 ま た 、S288Cの 栄 養 要 求 性 株 BY4741に お い て も同様 な傾 向
が 認 め られ 、栄 養 要 求 性 に よ り細 胞 の 成 長 速 度 に影 響 す る も の の 、 ス テ ー
ジ 構 成 に は 顕 著 な 影 響 を 及 ぼ さな い こ とを意 味 す る。
さ らに 、細 胞 周 期 に 関す る遺 伝 子 を欠 損 した %″ σ∠、 sο 力θ∠ に お い て
も同様 な傾 向 が 認 め られ た 。 %″ σ∠は
G1/S進 行 が 野 生 株 に比 較 し早 め に
促 進 され 、出芽 の タイ ミ ン グが 早 ま る。 %″ σ∠で は 、出芽 細 胞 の 出現 率 が
最 も高 か つ た に も か か わ らず 、 細 胞 の 増 殖 に 伴 う娘 細 胞 の 増 加 に 関 して 、
同 じよ うな傾 向 が 認 め られ た こ とは 、 出芽 の タイ ミ ン グが 異 な っ て も ス テ
ー ジ構 成 に は顕 著 な影 響 を及 ぼ さな い こ とを意 味す る 。ま た 、TORの 下 流
で 働 くプ ロ テ イ ン キナ ー ゼ 遺 伝 子 を欠 損 して い る sあ θ∠株 に お い て も同
様 な傾 向 を示 した こ とは 、TORシ グナ ル 伝 達 経 路 が ス テ ー ジ 構 成 に深 く関
与 して い る 訳 で は な い こ とを示 唆 して い る。
調 べ た 複 数 の 変 異 株 か ら得 られ た知 見 は 、環 境 の 変 化 (外 部 影 響 )に よ
り細 胞 はそ れ に応 答 した 世 代 構 成 を取 り得 るが 、多 少 の 遺 伝 型 (内 部 影 響 )
の 変 化 が あ つ て も、 そ れ に 対 応 で き る 柔 軟 性 を持 つ こ とを示 して い る。 な
お 、娘 細 胞 の 出芽 は 抑 制 され るが 、母 細 胞 の 出芽 が 抑 制 され な い こ とか ら
多 産 化 傾 向 が 認 め られ 、 そ の 結 果 と して 二 極 化 現 象 (セ パ レー シ ョン)が
発 生 す る こ とは 、 これ ま で に 報 告 が な され て い な い 。 本 研 究 にお い て 詳 細
な 分 布 確 認 を行 つ た 成 果 と判 断 した 。
環 境 の 悪 化 (密 度 効 果 )が 高 ま る に つ れ 、娘 細 胞 の 出芽 の み 抑 制 され た
結 果 と して 、少 子 化 パ ラ ドッ ク ス 、す な わ ち集 団 全 体 の 増 殖 率 が 低 下 す る
環 境 に お い て 、子 供 の 比 率 が 増 え る とい う逆 理 が 発 生 した 。 そ の 機 構 は 未
だ不 明 で あ るが 、 この 生 物 学 的 理 由 は な ん で あ ろ うか 。 出芽 分 裂 に よ つ て
新 た に生 じた 娘 細 胞 が 母 に な り、 出芽 す るた め に は 、 細 胞 の 成 長 (細 胞 体
40
積 の 増 加 )が 必 要 とな る の に 対 して 、 母 細 胞 は す で に大 き くな つ て い るた
め 、分 裂 後 す ぐに ま た 出芽 して 娘 細 胞 を作 る こ とが で き る。 そ の た め 、 対
数 増 殖 後 期 に な り、炭 素 源 が や や 涸 渇 して それ ま で の 発 酵 か ら呼 吸 に シ フ
ト (diauxic shift)す る時 期 に 、 細 胞 数 を少 な い 栄 養 源 で 増 す た め に は 、
母 細 胞 に細 胞 分 裂 を させ た 方 が 利 に 叶 つ て い る。 そ れ に加 えて 、 娘 細 胞 は
ス トレス に 対 し死 に 易 い (第 二 章 参 照 )事 か ら考 え る と、 ス トレス に 対 し
て の 適 応 も ま だ 備 わ つ て お らず 、 そ の 点 にお い て も細 胞 分 裂 を行 うの に 適
して い な い の か も しれ な い 。
(2)娘 細 胞 の 小 型 化
一 方 、 対 数 増 殖 期 以 降 の 増 殖 率 の 低 下 に 伴 い 、娘 細 胞 の 小 型 化 お よび 出
芽 制 限 が 認 め られ た こ とは 、Hartwellら 、Carterら 、Whealsら の 報 告 と
同様 で あ つ た 。増 殖 時 に G1/S進 行 が 遅 れ た 場 合 に は 、Gl期 が 長 引 くた め
細 胞 は 大 き くな る。 しか し、小 型 化 が 同 時 に観 察 され た とい うこ とは 、Gl
初 期 で 細 胞 周 期 が 停 止 して い る こ とを示 唆 して い る。 これ は 、栄 養 源 が 不
足 して 定 常 期 に入 る と一 般 的 に 認 め られ る細 胞 の 応 答 と一 致 して い る。
(3)保 存 則 の破 綻 と酵 母 の 生 態 的 寿 命
ま た 、 総 出芽 痕 数 と総 細 胞 数 に よ る実 測 値 は 、保 存 則 か ら の 乖 離 が 対 数
増 殖 後 期 で 大 き くな つ た 。 保 存 則 比 が 低 下 す る こ とは 、 出 芽 痕 総 数 が 総 細
胞 数 よ り少 な くな る こ とを意 味 す るが 、 この 原 因 と して 出芽 痕 を多 く保 有
す る母 細 胞 の 消 滅 を想 定 した 。 数 理 モ デ ル に細 胞 消 滅 要 素 を加 え た と こ ろ 、
理 論 値 と実 測 値 との双 方 にお い て 近 似 が 認 め られ た 。 ま た 、 この 結 果 に基
づ き、 さ らに詳 細 な実 験 標 本 に よ る画 像 解 析 を行 つ た 結 果 、 ほ ぼ 同 時期 に
死 細 胞 が 多 数 観 察 され た 。 この こ とは 、 老 化 の 進 ん だ 細 胞 が 対 数 増 殖 後 期
で選 択 的 に死 ん で い る こ とを示 唆 す る。
出芽 酵 母 は 、母 細 胞 か ら娘 細 胞 を 出芽 す る こ とで 子 孫 を 増 や す 増 殖 形 態
を示 して い る。 出芽 酵 母 は不 均 等 分 裂 で あ り、 老 化 の 原 因 と され る extra―
chromosomal DNA circle(ERC)(Sinclair θι′■,1997)は 分 裂 に 際 し母
細 胞 に の み 残 され る。ま た 、老 化 に は rDNAの 不 安 定 化 も関 与 して い るが 、
母 細 胞 の rDNAは 出芽 の 度 に不 安 定 化 して い く も の の 、娘 細 胞 で は rDNA
が 安 定 化 して い る (Austen θι′′
.,2009)。 出芽 回数 (分 裂 寿 命 )に は ヒス
トン脱 ア セ チ ル 化 酵 素 Sir2遺 伝 子 が 関 与 して お り、 この Sir2は 栄 養 が 少
な い 状 態 にお い て 母 細 胞 の 寿 命 を延 期 させ る機 能 を も つ て い る (Lin θ ′
,
`′
この Sir2の 分 裂 寿 命 制 御 に は 、 少 な く と も ERC量 の 制 御 を介 す
るが 、 ERCが 検 出 され な い 哺 乳 類 細 胞 で も同様 に Sir2に よ る寿 命 制 御 が
2002)。
41
存 在 す るた め 、共 通 した 別 径 路 を介 す る制 御 も存 在 す る と考 え られ て い る。
一 般 的 に 、母 細 胞 は約 10回 の 出産 を繰 り返 す こ とで 老 化 が 顕 著 とな り、
分 裂 周 期 の 遅 延 や 細 胞 の 肥 大 化 が 起 こ り、 さ らに約 10回 程 度 の 出芽 を し
た 後 に 死 滅 す る と言 わ れ て い る (Mortimer θ′′′,1959)。 ま た 、本 研 究 で
用 い た BY4741の 場 合 、マ イ ク ロマ ニ ュ ピュ レー タ ー を用 い た 同 一 母 細 胞
に よ る 分 裂 寿 命 を確 認 す る と、 母 細 胞 の 平 均 出産 回数 は
25回 で あ り、 10
回 以 内 に死 ん で しま う (出 芽 しな くな る )細 胞 は 10%に も満 た な い こ とが
報 告 され て い る (Kaeberlein θι2′ .,2005)。 これ を数 理 モ デ ル に 取 り込 ん
だ 場 合 、少 な く と も出芽 痕 が 10以 上 の も の は 13個 (平 均 倍 加 時 間 を 3時
間 、 12回 出芽 を想 定 した 値 )、 6か ら 9の も の は 189個 (同 上 )検 出 され
て しか る べ き で あ る。 しか しな が ら、今 回 の 実 験 に お い て は 、 12,908の 細
胞 を観 察 した も の の 、出芽 痕 が 10以 上 の も の は 6(理 論 値 に 対 して 46%)、
6か ら 9の も の が 106(理 論 値 に対 して 56%)と 、計 算 値 と比 較 して 少 な
い 数 とな っ て い る。 そ の 原 因 を 、 実 測 値 を基 と した 数 理 解 析 シ ミ ュ レー シ
ョン に て 検 討 した 結 果 、 よ り早 い 段 階 で母 細 胞 の 消滅 、特 に 出芽 痕 数 が 多
い 母 細 胞 の 消 滅 が 発 生 して い る こ とが 示 唆 され た 。
興 味深 い こ とに 、娘 細 胞 へ の 影 響 、 母 細 胞 へ の 影 響 が 、 一 般 に言 わ れ る
密 度 効 果 が 現 れ て い な い 対 数 増 殖 期 時 点 に お い て 、既 に そ の 傾 向 が 始 ま っ
て い る点 に あ る。 密 度 効 果 に つ い て は 、 そ の 原 因 と して 、 栄養 飢 餓 に よ る
も の 、 増 殖 に 伴 い 発 生 す るオ キザ ロ酢 酸 が
C02を 増 加 させ 、 これ に よ り
pHが 酸 性 側 に 変 化 す る こ とで発 生 す る増 殖 抑 制 に よ る も の (Hayashi
θ′
′■,1998)、 容 量 的 フ ァ ク タ ー に よ る も の 、 な ど様 々 な 原 因 が 報 告 され て
い る が 、い ず れ も密 度 効 果 が 発 生 す る環 境 に起 因 して い る。 しか しな が ら、
今 回 の 結 果 は 、 そ れ よ りも 早 い 段 階 で 準 備 が 始 ま っ て い る こ とが 確 認 され
た 。 こ の よ うな こ とを起 こ させ る原 因 に 関す る 検 討 結 果 を 第 二 章 に て 記 述
す る。
0ん
′仕
第 二章
出 芽 酵 母 の ス トレス 応 答 に よ る
増 殖 へ の影 響 お よび細 胞 死
43
1
要旨
第 二 章 で は 、対 数 増 殖 期 以 降 に何 らか の ス トレス が 発 生 し、 そ れ に よ り
娘 細 胞 の 出芽 が 抑 制 され る こ と、対 数 増 殖 後 期 に ス テ ー ジ の 進 ん だ母 細 胞
の 細 胞 死 が もた ら され る こ と を示 した 。 本 章 で は 、 ス トレス の 一 因 と想 定
され る栄 養 源 飢 餓 、活 性 酸 素 、 そ の 他 の 影 響 に つ い て 検 証 を加 え 、 さ らに
定 常 期 で の 世 代 構 成 と細 胞 死 に つ い て も、 老 化 、寿 命 等 に 関連 す る遺 伝 子
に変 異 を持 つ 変 異 株 を用 い て 調 べ た 。 加 え て 、 出芽 お よび 細 胞 死 に 影 響 を
も た らす 物 質 の 特 定 も試 み た 。
そ の 結 果 、栄 養 源 飢 餓 に 対 す る検 討 で は 、 対 数 増 殖 期 の グル コー ス の 濃
度 に 依 存 した 増 殖 阻 害 物 質 が 発 生 して い る こ とが示 唆 され た 。 活 性 酸 素 に
対 す る検 討 で は 、 活 性 酸 素 の 除 去 に 関 与 す る SOD遺 伝 子 を欠 損 した βο′ゴ
∠ (細 胞 質 局在 型 )お よび sα″ ∠ (ミ トコ ン ドリア 局 在 型 )に お い て 、 い
ず れ も増 殖 の 抑 制 が 観 察 され た 。ま た 、そ の 増 殖 抑 制 は sο ごゴ∠に お い て ア
ス コル ビン 酸 を加 え る こ とで 緩 和 され た 。 この こ とは 、 少 な く とも増 殖 過
程 で 発 生 す る活 性 酸 素 が 細 胞 の 増 殖 抑 制 に 関 与 して い る こ とを示 す 。 さ ら
に 、細 胞 壁 の 安 定 性 に 関 与 す る MPK■ 遺 伝 子 を欠 損 した ″′上ゴ∠で は 、対
数 増 殖 後 期 に お い て ア ポ トー シ ス が 誘 導 され て い た 。 分 裂 寿 命 が 延 び る欠
損 株 ん″ ∠ (rDNA領 域 の 組 換 え 抑 制 )と βル′Z、 さ らに 、 ア ポ トー シ ス
に 関 与 す る caspaseを 欠 損 した
yι ′
′∠で は 、い ず れ の 株
にお い て も経 時 的
寿 命 が 短 くな つ た 。 さ らに 、 セ プ チ ンカ ラ ー に異 常 を持 ち 、 娘 細 胞 の 老 化
が もた ら され る ろ″ごδZに お い て は 、 定 常 期 の ア ポ トー シ ス が 増 加 した 。
一 方 、 出芽 お よび 細 胞 死 に影 響 を もた らす 物 質 の 特 定 に 関 して は 、 酵 母
細 胞 に は 存 在 せ ず 、培 養 液 中 に あ る こ と、 ま た ヘ キ サ ン 、酢 酸 エ チ ル に て
抽 出 した 水 層 お よび 透 析 後 に 得 られ た 分 子 量 3500以 下 の 画 分 に活 性 が あ
り、原 因 物 質 の 存 在 が示 唆 され た 。た だ し、物 質 の 特 定 に は 至 っ て い な い 。
44
2
序論
第 二 章 に て 、 出芽 酵 母 の 増 殖 に 伴 う世 代 構 成 の 変 動 を 、実 験 と数 理 解 析
に て 検 討 を加 え た 。そ の 結 果 、増 殖 に伴 い 娘 細 胞 の比 率 が 増 加 す る こ と (少
子 化 パ ラ ドッ ク ス )お よび 娘 細 胞 の 出芽 が 抑 制 され 母 細 胞 の 出芽 が 抑 制 さ
れ な い こ とか ら起 こ る 二 極 化 現 象 (セ パ レー シ ョン )を 実 験 に て 認 め た 。
さ らに 、対 数 増 殖 後 期 に 一 過 性 の 細 胞 消滅 が 発 生 す る こ と (選 択 的 細 胞 死 )
を実 験 とそ の 数 理 解 析 に よ り認 め た 。 しか し、 そ の 原 因 、機 構 に 関 して は
不 明 で あ る。
生 物 は 、細 胞 、組 織 、個 体 の レベ ル で 様 々 な刺 激 や ス トレス の 影 響 を受
け て い る。 外 部 か らの ス トレス と して は 、 温 度 、 湿 度 、 光 (紫 外 線 な ど の
特 定 波 長 に よ る影 響 を 含 む )、 放 射 線 、 栄 養 素 の 存 在 比 率 、 化 学 物 質 等 が
あ り、 内部 か らは 、 酸 化 的 ダ メ ー ジ や DNAダ メ ー ジ 等 が あ る。 しか しな
が ら、 両 ス トレス は あ る局 面 に お い て は分 ち難 い 。 例 え ば 、放 射 線 に よ る
ス トレス は 、細 胞 外 部 に ダ メ ー ジ を与 え るだ けで は な く、細 胞 内 部 の DNA
の 化 学 修 飾 お よび 切 断 を 引 き起 こす 。 一 般 に生 物 は 、 これ ら の ス ト レス に
適 応 す るた め の メ カ ニ ズ ム を保 持 して い る 。
第 二 章 に て 記 述 した 生 物 反 応 も、増 殖 に 伴 い 発 生 す る上 記 の 外 部 お よび
内部 ス トレス に よ る環 境 応 答 と考 え られ る。 出芽 酵 母 が 液 体 培 地 中 に て 増
殖 して い く過 程 で は 、栄 養 源 、代 謝 に よ り発 生 す る老 廃 物 (エ タ ノ ー ル 等 )、
pHの 変 化 、 浸 透 圧 ス トレス 等 が 環 境 制 限 要 因 と して 考 え られ る。 これ ら
の 環 境 制 限 要 因 に つ い て は い くつ か の 報 告 が あ り、 例 え ば 、鎌 田 らは窒 素
源 飢 餓 に よ リオ ー トフ ァ ジ ー が 誘 発 され る こ とを 報 告 して い る (Kamada
θι′ヱ,2004)。 広 島 大 学 の 林 らは密 度 効 果 が 認 め られ る段 階 にお い て オ キ
ザ ロ酢 酸 が 生 成 され 、 C02が 増 力日し pHが 酸 性 に な る こ とで 増 殖 が 抑 制 さ
れ る と報 告 して い る (Hayashi θ ′,1998)。 北 垣 は エ タ ノ ー ル に よ つ て
`′
ミ トコ ン ドリア が 分 裂 し、 ア ポ トー シ ス が 起 こ る こ とを 報 告 して い る
(Kitagaki θι′■,2009)。 上 園 らは 浸 透 圧 ス トレス に よ り翻 訳 開始 の 制 御
機 構 に 影 響 が 出 る こ とを 報 告 して い る (Uesono θι′■,2002)。
期 培 養 が 続 く と酵 母 は徐 々 に死 滅 して ゆ く。
さ らに 、長
一 方 、 単 細 胞 で あ る酵 母 に も高 等 動 物 に 存 在 す る よ うな ア ポ トー シ ス 機
構 が あ る。 さ らに酵 母 の ア ポ トー シ ス を実 行 す るた め の 径 路 も動 物 細 胞 と
類 似 して い る (Madeo θ′′■,2009、 Carmona― Gutierrez α ′■,2010)。
酵 母 の ア ポ トー シ ス も、caspase、 cytochrome c、 AIF(apoptosis― inducing
factOr)、
AⅣ IID (apoptosis― inducing factOr(AIF)‐ like mitOchondrion
associated inducer of death)、
EndoGヌ ク レア ー ゼ が 関 与 す る。
45
これ らの 事 実 は 、 ア ポ トー シ ス とい うシ ス テ ム が 、進 化 の 過 程 で 単 細 胞
生 物 に お い て 既 に 獲 得 され て い た こ とを示 す 。 定 常期 にお け る酵 母 の 細 胞
死 も ア ポ トー シ ス で あ る (Fabrizio θ ム,2008)。 つ ま り、 経 時 的 寿 命 は
`′
ア ポ トー シ ス に よ り制 御 され て い る 。
これ ら の こ とを視 野 に入 れ 、本 章 で は 、 少 子 化 パ ラ ドック ス 、 セ パ レー
シ ョン 、細 胞 死 を発 生 させ る原 因 を探 るた め に 、栄 養 源 飢 餓 に よ る影 響 (第
一 節 )、 活 性 酸 素 に よ る影 響 (第 二 節 )、 老 化 ・ 寿 命 等 に 関連 す る遺 伝 子 を
欠 損 させ た 株 を用 い た 、 そ の 他 に よ る影 響 (第 二 節 )、 物 質 の 特 定 (第 四
節 )を 検 討 した 。 そ の 過 程 で 、長 期 定 常期 培 養 にお い て 、分 裂 寿 命 の 進 ん
だ細 胞 が 優 先 的 に ア ポ トー シ ス を起 こす こ とを 見 出 した 。 これ ら の 結 果 と
ア ポ トー シ ス の 生 物 学 的 意 義 に つ い て 考 察 す る。
46
第 一節
1
栄 養 源 飢 餓 に よ る影 響
は じめ に
真 核 生 物 の 細 胞 の 増 殖 は 、細 胞 周 期 (基 本 的 に Gl期 → S期 → G2期 → M
期 )の 各 段 階 が (」 orgensen θι′ム,2004)正 し く進 行 す る こ とで 正 確 に な
され る。 そ の 細 胞 周 期 は チ ェ ック ポ イ ン トに よ つ て 制 御 され て い る (Lew
θォ′■,1995、 Elledge 1996、 Muhual)。 例 え ば 、G1/Sチ ェ ック ポ イ ン ト、
G2/Mチ ェ ック ポ イ ン ト、微 小 管 重 合 チ ェ ック ポ イ ン ト等 が 存 在 す る。 こ
れ らの シ ス テ ム は 、酵 母 か ら ヒ トま で 保 存 され て い る。
G1/S進 行 は細 胞 に と つ て 増 殖 を 開始 す る重 要 な 時期 で あ る。出芽 酵 母 の
G1/S進 行 の 推 進 を担 つ て い る転 写 因 子 が Swi4‐ Swi6複 合 体 か
らな る SBF(SCB Binding Factor)と Mbpl― Swi6か ら MBF(MCB Binding
Factor)で あ る。 SBFと MBFは そ れ ぞれ SCB(Swi4‐ Swi6 cell cycle
box, "CACGAAA")と MCB(Mlu l cell cycle box, "ACGCGTNA")と 呼
場 合 、 この
ば れ る プ ロモ ー タ ー の
DNA配
列 に 結 合 しそ の 遺 伝 子 の 転 写 を促 進 す る
主 に 出芽 に 関 わ る CInl,2な ど の 遺 伝 子 発
(Dirick θι′ム,1992)。 SBFは
現 を促 進 し、 一 方 、 MCBは 主 に DNA合 成 や 修 復 に 関 わ る Clb5,6な どの
遺 伝 子 の 発 現 を促 進 す る。 そ の 後 、 SBFに よ つ て 転 写 され た Clnl,2は
Whi5と Clb/CDK阻 害 因 子 Sic lを リ ン酸 化 し抑 制 す る こ とで 、さ らに G1/S
期 の 進 行 を促 進 させ て い る (Dirick θι′′,1995、 Skotheim θι′■,2008)。
G1/S進 行 は 増 殖 細 胞 にお け る細 胞 体 積 に 影 響 す る。細 胞 成 長 は Gl期 に
お い て 起 こ り、 あ る 一 定 の 閾 値 に 達 しな い と G1/S進 行 は 起 こ ら な い
(FOster θι′■,2010)。 これ が Glノ Sチ ェ ッ ク ポ イ ン トで あ る。 つ ま り、
G1/S進 行 が 早 まれ ば細 胞 は小 さ くな り、遅 れ れ ば大 き くな る。細 胞 サ イ ズ
を どの よ うに細 胞 が 判 断 して い るか の 詳 細 は 哺 乳 類 細 胞 で は 不 明 だ が 、酵
母 の 場 合 に は以 下 の よ うな機 構 が 存 在 す る。 Gl前 期 に は SBFと MBFは
Whi5に
.,2004)。
よ つ て 機 能 が 阻 害 され て い る (CostanzO θι′′
転 写 因 子 Mcmlが M/Gl期 に Glサ イ ク リ ン CIn3の 転 写 を行 う(Mclnerny
θι′■,1997)。 細 胞 が あ る程 度 大 き くな るま で は Cln3は 小 胞 体 に 蓄 積 し続
け るが 、 閾値 に達 す る と細 胞 質 へ 放 出 され る (Verges θ ■,2007)。 この
阻害 因子
複 合 体 を形 成 し、 SBFと MBFの 阻 害 因 子
リ ン 酸 化 し核 外 に放 出 し分 解 を促 進 す る 。これ に よ り SBFと MBF
の 抑 制 が 解 除 され る (de Bruin θι′工,2004)。 Nmb欠 損 株 で は 時 期 尚早
CIn3は
Whi5を
CDKで あ る Cdc28と
`′
G1/S進 行 が 起 こ り、細 胞 は小 さ くな る (」 orgensen θル ′.,2002)。 さ ら
に 、 栄 養 シ グナ ル も G1/Sチ ェ ック ポ イ ン トを活 性 化 す るた め 、 栄 養 が 不
な
47
足 して い る状 況 下 で は
G1/S進 行 が 抑 制 され る (Foster
θ′′ヱ,2010)。 窒
素 源 も し くは炭 素 源 等 の 欠 乏 は 細 胞 の Gl期 にお け る細 胞 成 長 と と もに 、
G1/S進 行 の 抑 制 に よ る細 胞 増 殖 を 抑 制 す る。 TOR(target of rapamycin)
キナ ー ゼ は 、栄 養 シ グナ ル に応 答 し細 胞 の 成 長 と分 裂 を制 御 す る 中 心 的 な
タ ンパ ク 質 で あ る (Foster θ′′′,2010)。 栄 養 源 が 涸 渇 す る と、TORが 不
活 性 化 し、Glノ S進 行 が 抑 制 され 細 胞 は
Gl期 に 蓄積 す る 。 一 方 、栄 養 源 が
低 下 した 場 合 に は 、 Gl期 に細 胞 の 大 き さが 十 分 に大 き くな る こ とを 待 た
.,2004)。 こ
ず に G1/S進 行 が 起 こ り、細 胞 は 小 型 化 す る (」 orgensen θ′′′
の 応 答 に は TOR、 RAS/PKAお よび TOR下 流 の プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼ Sch9
が 関 与 して い る
(」
orgensen θι′′。
,2004)。 θCH9を 欠 損 した 細 胞 で は 、
Gl期 で 細 胞 の 大 き さが 十 分 に大 き くな らず に S期 に進 行 す るた め 、 細 胞
の 大 き さが 小 さ くな る。
そ れ に加 え て 、 栄 養 源 飢 餓 は
TORを 介 して 飢 餓 と対 抗 す るた め の 様 々
な細 胞 内 で の 応 答 を誘 導 す る。 以 前 か ら、 出芽 酵 母 、 分 裂 酵 母 で は 栄 養 源
飢 餓 時 に 、 RNAや タ ン パ ク質 の 分 解 を促 進 す る こ とが 知 られ て い た
(Tsuboi θ′′ム,1975,1976、 Tsuboi θ ス,1978、 NIcFarlane,1980、 Swida
`′
θみ′ノ,1981、 Ryk θ ′,1985)。 窒 素 源 飢 餓 に 対 して は 、 自 ら窒 素 源 を供
`′
給 す るた め の 液 胞 (リ ソ ソー ム )内 で の RNA、 タ ンパ ク 質 、 ミ トコ ン ドリ
ア を 含 む 細 胞 内容 物 の 大 規 模 分 解 、 い わ ゆ るオ ー トフ ァ ジ ー (自 食 作 用 )
が 誘 導 され る 。 オ ー トフ ァ ジ ー は 多 くの Иrθ 遺 伝 子 群 に よ り実 行 され る
(Suzuki θι2■ ,2007)。 栄 養 源 飢 餓 に よ るオ ー トフ ァ ジ ー の 誘 導 制 御 に は
関 与 して お り、 TORの 特 異 的 阻 害 剤 で あ る ラパ マ イ シ ン は オ ー ト
フ ァ ジ ー を 誘 導 す る (Bjedov θ ′,2010))。 栄 養 が 豊 富 な 状 態 で は 、TOR
TORが
`′
は Atg13を 直 接 リ ン 酸 化 す る こ とで オ ー トフ ァ ジ ー を 抑 制 して い る が 、栄
養 源 飢 餓 時 に は TORが 不 活 性 化 す る こ とに よ り Atg13が 脱 リ ン 酸 化 され 、
これ が 引 き金 とな リオ ー トフ ァ ジ ー が 誘 導 され る (Kamada θル ′
.,2010)。
一 方 、炭 素源 飢 餓 に 対 して は 、糖 新 生 お よび 炭 素 源 の 貯 蔵 形 態 で あ る グ リ
コ ー ゲ ン の 蓄積 が 誘 導 され る (Slone θι′■,1959)。
前 述 の よ うに (第 二 章 参 照 )、 対 数 増 殖 後 期 に な る と、 炭 素 源 が 涸 渇 し
て き て 、 それ ま で の 発 酵 に 頼 っ て い た ATP産 生 か ら呼 吸 に よ る ATP産 生
ヘ シ フ ト (diauxic shift)す る (主 に グル コ ー ス を用 い て の 研 究 に よ る )。
つ ま り、 この 時 期 に は主 に 炭 素 源 の 欠 乏 が 起 こ る。 こ の 炭 素 源 欠 乏 が 、 こ
の 時 期 に起 こ る娘 細 胞 の 割 合 の 増 加 と一 過 的 な細 胞 死 の 原 因 に な つ て い
る の か 不 明 で あ る 。 一 方 、 グル コー ス 培 地 で 培 養 され た 酵 母 が 対 数 増 殖 期
後 期 に な る と、 グル コ ー ス の 低 下 と と も に 、培 地 中 に は発 酵 で 生 じた アル
48
コ ー ル が 増 加 す る。 この アル コー ル の 増 加 も増 殖 に 阻 害 的 に働 く と考 え ら
れ るが 、 しか し、 そ の 寄 与 の 程 度 は 明 らか で は な い 。
本 節 に お い て は 、炭 素 源 涸 渇 とア ル コー ル の 増 加 に 着 日 し、酵 母 の 対 数
増 殖 期 に 対 す る 両者 の 影 響 を 検 討 した 。
49
2 材 料 お よび 方 法
(1)使 用 株
1:出 芽 酵 母 は W303由 来 の US356(b″ 」Z)を 用 い た 。 US356
実験
の
Genotypeお よび 遺 伝 子 の 機 能 を表 7お よび 表 8に 示 した 。
実験
2:同 上
実験
3:BY4741を 用 い た 。 BY4741の Genotypeお
を表
よび 遺 伝 子 の 機 能
7お よび 表 8に 示 した 。
(2)使 用 培 地
実 験 1 :YPA溶 液 (1,000 mL当 り Yeast extract 5 g、 Peptone 10 g、
ア デ ニ ン 50 mg)に グル コ ー ス (終 濃 度 は 1,2,4%)を カロえた 。
実験
2:SC合
実験
3:同 上
組 成 は 第 二 章 3(2)を 参 照 〕。 た だ し、 グ
成 培 地 を用 い た 〔
ル コー ス の 終 濃 度 は 1,2,4%と し、 そ れ ぞ れ の 培 養 液 を設 け た 。
(3)培 養 条 件
実 験 1:100 mL用 の 三 角 フ ラ ス コ に 10 mLの YPA培 地
(グ ル コー ス
1,2,4%)を 加 え 、 30℃ の 培 養 器 内 に て 振 盪 培 養 した 。 播 種 酵
母 は 、 前 培 養 (約 24時 間 )し た 酵 母 を濁 度 (OD600)0.1に 調 整 し培
終濃 度
養 液 に加 え た 。
実 験 2:100 mL用 の 三 角 フ ラ ス コ に 10 mLの SC合 成 培 地 (グ ル コ ー
ス 終 濃 度 1,2,4%)を 加 え 、 30℃ の 培 養 器 内 に て 振 盪 培 養 した 。 播 種
酵 母 は 、前 培 養 (約 24時 間 )し た 酵 母 を濁 度 (OD600)0.1に 調 整 し
培 養 液 に加 えた 。 そ の 後 、20
3 mL加
mL用
の 試 験 管 に 後 述 す る① か ら⑥ 液 を
え 、 30℃ の 恒 温 器 内 に て 振 盪 培 養 した 。
実 験 3:300 mL用 の 三 角 フ ラ ス コ に 60 mLの SC合 成 培 地 (グ ル コ ー
ス 終 濃 度 1,2,4%)を 加 え 、 30℃ の 培 養 器 内 に て 振 盪 培 養 した 。 播 種
酵 母 は 、前 々 培 養 (約 24時 間 )お よび 前培 養 (約 24時 間 )し た酵 母
(OD600)0.1に 調 整 し培 養 液 にカロえた 。 そ の 後 、 200 mL用 の
三 角 フ ラ ス コ に 後 述 す る i)i)面 )に て 調 整 した 培 養 液 を 20 mL加
を濁 度
え 、 30℃ の 培 養 器 内 に て 振 盪 培 養 した 。
50
(4)方 法
実 験 1:濁 度 の 測 定 は 、 酵 母 を 増 殖 培 地 に加 え て か ら 30時 間後 ま で 2
48時 間値 を加 え た 。 増 殖 の 定 常化 が 確 認 さ
れ た 段 階 (培 養 26時 間 後 )で 、 20%グ ル コ ー ス を lmL(終 濃 度 2%
時 間 お き に行 い 、 これ に
相 当 )加 え 、 そ の 後 の 挙 動 を確 認 した 。 ま た 、 これ とは別 に 、培 養
8,
24,72時 間後 に濁 度 を確 認 す る系 を設 け た 。
実験
2:濁 度 の 測 定 は 、酵 母 を 増 殖 培 地 に加 え て か ら定 常 期 とな り、 以
下 の 処 理 を加 えて か ら 、12時 間 後 ま で は
24,36,48時
2時 間 お き に 測 定 し、これ に
間値 を加 えた 。
i)酵 母 を SC合 成 培 地
(グ ル コ ー ス 終 濃 度
1,2,4%)10 mLに
て定常
期 (培 養 24時 間 )ま で 増 殖 させ た 。
i)こ の 液 を 3,000回 転 で 3分 間遠 心 分 離 した 。
面 )遠 心 分 離 後 、上 清 を 以 下 の比 率 で 新 た な SC合 成 培 地 (終 濃 度
グル コ ー ス 含 む )と 混 和 した 。
2%
①液 1(4%グ ル コ ー ス 上 清 1 5mL):1(SC合 成 培 地 1.5mL)
②液 1(2%グ ル コ ー ス 上 清 1 5mL):1(SC合 成 培 地 1.5mL)
③液 1(1%グ ル コー ス 上 清 1.5mL):1(SC合 成 培 地 1.5mL)
④液 SC合 成 培 地 3.OmL)
⑤液 2%グ ル コ ー ス 3.OmL
⑥液 l(2%グ ル コ ー ス 上 清 1 5mL):1〔 SC(‐ D:グ ル コ ー ス 含
まず )合 成 培 地 1.5mL〕
市)そ れ ぞれ の液 に 、 出芽酵母 を濁度 0.5に な る量 を加 えた 。
v)30℃ にて 24時 間培養 し、2時 間お きに濁 度 を測 定 した。
実験
3:細 胞 外 の環境 変化 に よる影 響 を確認 す る群 、細 胞 内 の 変化 に よ
る影 響 を確 認 す る群 、揮 発 性 物 質 の 影 響 を確 認 す る群 にて構 成 した 。
1)細 胞 内 の 変化 に よる影 響確認
① 酵母 を SC合 成 培 地 (グ ル コー ス 終濃度 1,2,4%)60 mLに て
30時 間培養 した 。
② 培養 終 了後 、遠 心 分離 (3,000rpm× 5分 間 )し 、そ の 沈澄 を得
た。
③ 沈澄 の 全量 に 新 た な SC合 成 培 地 (グ ル コー ス 終濃度 2%)を
加 え 6 mLと し、 そ の l mLを 三 角 フ ラ ス コ に加 えた 。
④ 三 角 フ ラ ス コ に 、新 た な SC合 成培 地 を 20 mL加 えた 。
⑤ 培養 を継 続 し、 4,8,12時 間後 に濁 度 を測 定 した 。
51
1)細 胞 外 の 環境 変化 に よる影 響確 認
① 酵母 を SC合 成 培 地 (グ ル コー ス 終濃度
30時 間培養 した 。
1,2,4%)60 mLに
て
② 培養 終 了後 、遠 心 分離 (3,000rpm× 5分 間 )し 、そ の上 澄 み を
得 た。
③ これ とは別 に 、② の 時点 で 培養 21時 間 とな る酵 母懸濁液 (グ
ル コー ス 終濃度 2%)を 準備 し、 これ を遠 心 分離 (同 上 )し て
上 澄 み を除去後 、酵母 の み と した もの に SC合 成培 地 (グ ル コ
ー ス 終濃度
2%)を
6 mLカ ロえ 、そ の l mLを 三 角 フ ラ ス コ に
加 えた 。
④ 三 角 フ ラ ス コ に 、③ で 得 た液 を 10 mLと 新 た な
(グ ル コー ス 終濃 度 2%)を 10 mL加 えた 。
SC合 成 培 地
⑤ 培養 を継 続 し、 4,8,12時 間後 に濁度 を測 定 した 。
五)揮 発性 物 質 の 影響確 認
① 酵母 を SC合 成 培 地 (グ ル コー ス 終濃度
30時 間培養 した 。
1,2,4%)60 mLに
て
② 培養 終 了後 、遠 心 分 離 (3,000rpm× 5分 間 )し 、そ の上 澄 み を
得 た。
③ 得 られ た上 澄 み を、 100℃ 温水 中 で 10分 間 加 温 した 。
④ これ とは別 に 、② の 時点 で 培養 21時 間後 とな る酵母 懸濁液 (グ
ル コー ス 終濃 度 2%)を 準備 し、 これ を遠 心 分離 (同 上 )し て
上 澄 み を除去後 、酵母 の み と した も の に SC合 成培 地 (グ ル コ
ー ス 終濃度 2%)を 加 え 6 mLと し、 そ の
コ に加 えた 。
l mLを 三 角 フ ラ ス
⑤ 三 角 フ ラ ス コ に 、② で 得 た液 を 10 mLと 新 た な SC合 成 培 地
10 mLを 加 えた 。
⑥ 培養 を継続 し、 4,8,12時 間後 に濁 度 を測 定 した 。
52
3
結果
(1)実
験
1(グ
ル コー ス 濃 度 が 増 殖 に 与 え る影 響 )
培 養 液 中 で の グ ル コ ー ス 濃 度 が 、 ど の よ うに 細 胞 の 増 殖 に 影 響 を 与 え る
1,2,4%を
か を検 証 す る た め に 、 グル コー ス
含 む培 養 液 で の酵 母 の増 殖 を
比 較 した (通 常 の グ ル コ ー ス 濃 度 は 2%)。 密 度 効 果 が グ ル コ ー ス 濃 度 の 低
下 に よ り起 こ る な ら ば 、 グ ル コ ー ス が 低 下 した 後 (定 常 期 に 入 つ た 後 )、
グ ル コ ー ス を 追 加 し て 与 え る こ と で 増 殖 が 回 復 す る 可 能 性 が 考 え られ る 。
そ れ に つ い て も 検 証 した (図 30)。
董 ―――――.ttltZ
10
6 4 2 0
§8 ︶赳興
︵
││―
/
0
2
4
6
8
10 12
14 16
18 20 22 24 26 28 30 48
培 養 時 間 (hr)
図
30
グル コ ー ス 濃 度 可 変 に よ る 増 殖 へ の 影 響
グル コ ー ス 濃 度
1,2,4%を 含 む YPA培
地 に 、 酵 母 を濁 度 (OD600)0。
1
に 調 整 した も の を加 え 、 培 養 器 内 (30℃ )に て 振 盪 培 養 した 。 培 養 26
時 間 後 に 、 1,2%液 に グ ル コ ー ス を追 加 した と こ ろ 、 回復 へ の 影 響 が と
もに認 め られ 、 そ の 強 さは
1%>2%で あ つ た 。
定 常 期 に 入 りか け て い る 播 種 16時 間 後 ま で は 、 グ ル コ ー ス 濃 度 の 違 い
に よ る 細 胞 増 殖 へ の 影 響 は 認 め られ な か っ た (図 30)。 つ ま り 、 対 数 増 殖
後 期 か ら定 常 期 進 入 時 に か け て の 細 胞 増 殖 の 応 答 に は 、 こ の 範 囲 の グ ル コ
ー ス 濃 度 で は 影 響 しな い こ と と な る 。 しか しな が ら 、 そ れ 以 降
ま で 、 グル コー ス 濃 度
1%お
よび
2%に 対
26時 間 後
して 、 4%の も の で は 僅 か な が ら
定 常 期 に お け る 細 胞 濁 度 が 高 か っ た 。 た だ し、 グ ル コ ー ス 量 の 比 を 考 え る
と 、 こ の 条 件 下 で の 細 胞 の 増 殖 に 対 して 、 グ ル コ ー ス
る と 考 え られ る 。 つ ま り 、 通 常 の
2%グ ル
1%は 十 分 な 量 で あ
コー ス 存 在 下 に あ つ て 、 グル コ
ー ス 濃 度 低 下 が 主 要 因 で 、 細 胞 増 殖 が 制 限 され て い る の で は な い こ と を 示
唆 す る。
こ の 示 唆 を 支 持 す る 現 象 と して 、播 種
液 に終 濃 度
2%グ ル
26時 間 後 の グ ル
コー ス
1%液 、2%
コ ー ス を 添 加 した と こ ろ 、 細 胞 増 殖 の 再 開 が 認 め られ
53
た 。 特 に 、 1%液 で よ り増 加 が 認 め られ た (図 30)。 そ れ と 反 対 に 、 グ ル コ
ー ス 4%の も の に 、同 様 に 2%グ ル コ ー ス を 加 え て も ほ と ん ど 増 殖 再 開 を 誘
導 し な か っ た (デ ー タ 示 さ ず )。
も し グ ル コ ー ス 不 足 で 増 殖 が 制 限 され て
い る の で あ れ ば 、 どれ も 回 復 率 は 同 じ に な る 筈 で あ る 。 つ ま り 、 グ ル コ ー
ス 以 外 で 細 胞 の 増 殖 阻 害 に 働 い て い る別 の 環 境 要 因 が 存 在 して お り 、 そ れ
4%グ ル コ ー ス で の 培 養 液 中 に よ り 多 く存 在 す る こ と を 示 唆 して い る 。
さ ら に 、 途 中 で グ ル コ ー ス を 加 え る こ と な しに そ の 後 72時 間 ま で 長 期
は
培 養 を 続 け た と こ ろ 、 72時 間 後 の 細 胞 濃 度 は グ ル コ ー ス 濃 度 と 負 の 相
関 を 示 し 、 1%>2%>4%と な っ た (図 31)。
5 0
§8 ︶撻頌
︵
“電卜…0%
■ 1%
-2%
-4%
0
培 養 時 間 (hr)
図
31
グル コー ス 濃 度 可 変 に よ る増 殖 へ の 影 響
グル コー ス 濃 度
0,1,2,4%を
含む
YPA培 地 に 、酵 母 を 濁 度 (OD600)0.1
に 調 整 した も の を 加 え 、培 養 器 内 (30℃ )に て 振 盪 培 養 した 。 増 殖 性 の
強 さ は 、グ ル コ ー ス 濃 度 1%>2%>4%の 順 で あ っ た 。 グ ル コ ー ス を加 え
な く て も あ る程 度 の 増 殖 は 得 られ た 。
対 象 実 験 と した グ ル コ ー ス
0%で は 、 細 胞 の 増 殖 は 対 数 増 殖 期 に お い て
悪 く 、 定 常 期 の 細 胞 濁 度 も低 か つ た (グ ル コ ー ス を 全 く加 え な い で も 細 胞
増 殖 が 観 察 され た の は 、Yeast extract中 に 炭 素 源 が 含 ま れ て い る た め と 考
え る )。
(2)実
実験
験
2(培
養 液 中 の成 長 阻 害 物 質 存 在 の検 証 )
1に て 、 定 常 期 培 養 液 中 に は グ ル コ ー ス の 濃 度 に 依 存 した 密 度 効 果
物 質 の 発 生 が 示 唆 され た 。 そ れ を 検 証 す る た め 、 新 鮮 な
SC合 成 培 地
(新
鮮 培 地 )に 定 常 期 ま で 酵 母 を 増 殖 させ 、 酵 母 を 遠 心 で 取 り除 い た 残 り の 培
養 液 (培 養 後 液 )を 等 量 混 合 させ た 液 に て 培 養 を 行 っ た 。 ま た 、 対 照 と し
54
SC合 成 培 地 の み で 増 殖 させ た も の 、グ ル コ ー ス 終 濃 度 2%培 養 液
に グ ル コ ー ス を 含 ま な い SC合 成 培 地 を 等 量 混 合 させ た も の 、 グ ル コ ー ス
て新 鮮 な
の み を設 け た。 結 果 を 図
32に 示
した 。
6 4
§8 ︶撻唄
︵
― ① 4%+SC
― ② 2%+SC
③ l%+SC
― ④ SC
⑤ 2%
― ⑥ 2%+SC(‐ D)
8
10
12
培 養 時 間 (hr)
図
32
グル コ ー ス 濃 度 可 変 に よ る 培 養 液 の 増 殖 へ の 影 響
1,2,4%を 含 む SC合 成 培 地 に 、酵 母 を濁 度 (OD600)0。 1
に 調 整 した も の を加 え 、 培 養 器 内 (30℃ )に て 24時 間 振 盪 培 養 した 。
そ の 上 澄 み 液 と 、2%グ ル コ ー ス を 含 む 新 鮮 な SC合 成 培 地 を等 量 混 合 し
た も の (① ② ③ )、 新 鮮 培 地 (④ )、 2%培 養 上 澄 み 液 の み (⑤ )、 2%培 養
グル コー ス 濃 度
上 澄 み 液 とグ ル コ ー ス を 含 ま な い SC合 成 培 地 の 等 量 混 合 (⑥ )に て 比
較 した 結 果 、 グル コ ー ス 濃 度 が 高 い ほ ど増 殖 抑 制 が 認 め られ た 。
培 養 後 液 を混 ぜ た もの で は 、 明 らか に 対 照 の新 鮮 培 地 の み の もの に 比 ベ
て 細 胞 増 殖 が 阻 害 され た (図 32)。
そ の 度 合 い は 、 グル コー ス 濃 度 が 高 い
培 養 後 液 を混 ぜ た もの程 、 増 殖 抑 制 が 強 か っ た。 この こ とは 、培 養 後 液 グ
ル コ ー ス 濃 度 に 相 関 して 蓄 積 した 増 殖 阻 害 物 質 が 存 在 して い る こ と を 強
く示 唆 す る 。
グル コー ス は
1%濃 度 で 細 胞 培 養 に は 十 分 で あ
り (図 30)、 グ ル コ ー ス 濃
度 が 低 下 して い る 培 養 後 液 を 混 ぜ た こ と で 、 グ ル コ ー ス 濃 度 が 相 対 的 に 下
が つ た (1∼
2%の
範 囲 )こ と が 原 因 で 、 こ の よ うな 結 果 に な っ た と い う可
能 性 は 考 え難 い 。
(3)実
験
3(高
濃 度 グ ル コ ー ス で 前 培 養 され た 細 胞 は そ の 後 の 増 殖 回 復
が 阻 害 され る )
実 験 1と
2の 結 果 か
ら 、 培 養 後 液 中 に グ ル コ ー ス 濃 度 に 応 じた 増 殖 阻 害
物 質 が 存 在 す る こ と が 強 く示 唆 され た 。 こ の よ うな こ と が 、 細 胞 中 に も 起
55
こ つ て い る か を検 証 す る た め 、 様 々 な グル コー ス 濃 度 を含 む 培 地 で
30時
間 培 養 し 定 常 期 に 達 した 酵 母 細 胞 を 回 収 し 、 新 鮮 培 地 に 移 して そ の 後 さ ら
に 培 養 した 。 細 胞 が 分 裂 を 繰 返 して し ま う と細 胞 中 の 前 歴 が 薄 ま っ て し ま
う可 能 性 を 考 え 、 植 継 い だ 直 後 の 細 胞 の 増 殖 (定 常 期 に 達 し た 細 胞 が 再 び
対 数 増 殖 期 に 進 入 す る 過 程 )を 調 べ た 。
8時 間 ま で は 、 そ れ ら の 増 殖 に は 大 き な 違 い は 認 め られ な
か つ た も の の 、 12時 間 後 は 1%グ ル コ ー ス で 前 培 養 した 酵 母 は さ ら に 増 加
を 示 した (図 33、 上 )。 しか し 、 2%グ ル コ ー ス で の 前 培 養 した も の で は さ
ら な る 増 殖 は 認 め られ ず 、4%グ ル コ ー ス 前 培 養 酵 母 で は 濁 度 の 減 少 が 認 め
培養 液 交換 後
%
%
%
一
0
5
4
3
2
「
1
‐
5
一
日
︱上 ︱ ︱ ■
‐
→
-
0
︲
2%―
細 胞 ■環境
日
濁度
1%一
5
1
30時 間培 養
0
2
細 胞 内 環境
__
0
日日目 □日一¨
られ た 。 つ ま り 、 同 じ定 常 期 に あ つ た に も か か わ らず 、 前 培 養 の 際 の グ ル
コ ー ス 濃 度 に 応 じ て 、 細 胞 の そ の 後 の 増 殖 が 抑 制 され た 。
5
1
0■ ― 一 ― ― 一 一 一 ― 一 一 =― 一 一 一 一 ― ― ― ― ―
上澄 み
―… 沈 澄
図
33
2
数値 はグル コース濃度
3
2%一
4
加熱効果
21時 間培養
8
累 積 時 間 (hr)
グル コ ー ス 濃 度 可 変 に よ る 細 胞 内 環 境 、 細 胞 外 環 境 へ の 影 響
お よび 揮 発 性 物 質 の影 響 確 認
細 胞 内環 境 で は
4%培 養 に て 増 殖 阻 害 が 強 く認 め られ た 。 細 胞 外 環 境 で
は 本 実 験 条 件 下 に お い て グ ル コ ー ス 濃 度 の 違 い に よ る差 は 少 な い も の
で あ っ た 。 揮 発 性 物 質 の 影 響 で は 、濃 度 に 依 存 した 変 化 は 認 め られ な か
った。
56
この こ とか ら、培 養 後 液 中 に グル コ ー ス 濃 度 に応 じた 増 殖 阻 害 物 質 が 存
在 す るだ け で は な く、 そ れ ま で の 培 養 に お け る グル コ ー ス 濃 度 の 履 歴 が 細
胞 中 に残 つ て い る とい う興 味深 い 結 果 が 得 られ た 。
一 方 、21時 間培 養 して 定 常 期 に達 した細 胞 を回 収 し、グル コ ー ス 濃 度 の
異 な る培 養 後 液 (1,2,4%)を 加 え て 、 上 述 の 細 胞 外 で の 影 響 と同様 な確
認 を した 結 果 に お い て は 、 グ ル コ ー ス 濃 度 に応 じた 増 殖 再 開 の 阻 害 は認 め
られ な か つ た (図
中 )。
さ らに 、培 養 後 液 中 の アル コー ル 等 の 揮 発 性 物 質 の 阻 害 作 用 を検 証 す る
33、
目的 で 、 培 養 後 液 を 10分 間煮 沸 した も の を 培 養 に用 い て も、 特 に 増 殖 再
開 の 促 進 は観 察 され な か つ た (図 33、 下 )。 む しろ 、 2%グ ル コ ー ス で は 、
12時 間後 の 増 殖 の 阻 害 が 僅 か な が ら認 め られ た 。
7‘
EU
4
考察
グル コ ー ス は 、 エ ネ ル ギ ー 源 と して 、 ま た炭 素源 と して 生 物 に と つ て極
め て 重 要 な物 質 で あ る。 細 胞 は 、 細 胞 内 お よび 生 息 環 境 中 にお け る グル コ
ー ス 量 を把 握 して 効 率 的 に利 用 して い る と考 え られ る。 グル コー ス の 終 濃
度 が 低 い 1%の も の で は 、 出芽 酵 母 の 増 殖 す る速 さに影 響 を与 え な か つ た
も の の 、 定 常期 ま で 増 殖 を続 け る時 間 が 延 長 し、 そ の 結 果 定 常 期 の 細 胞 濁
度 が 増 加 した (図 31)。 通 常使 用 され て い る グ ル コ ー ス 濃 度 の 2%が どの よ
うな経 緯 で選 ばれ た も の な の か は不 明 で あ るが 、少 な く と も 2%が 定 常 期
に達 す る酵 母 の 培 養 に 一 番 良 い 条 件 で は な い こ とが示 され た 。 本 実 験 で は
対 数 増 殖 後 期 の タイ ミ ン グ で 、 グ ル コー ス 濃 度 で 顕 著 な差 を認 め な か つ た
た め 、 グ ル コ ー ス 濃 度 の 違 い に よ る娘 細 胞 へ の 影 響 確 認 は行 わ な か つ た 。
定 常 期 に達 した と こ ろ に グル コ ー ス を追 加 添 付 した と こ ろ 、 そ れ ま で の
培 地 中 の グ ル コー ス 濃 度 とは 負 の 相 関 を も つ 増 殖 再 開 を示 した (図 30)。
この こ とは 、細 胞 増 殖 に 伴 い 発 生 す る物 質 が 培 養 液 中 に 蓄 積 し、 そ れ が 細
胞 増 殖 を 阻 害 して い る こ とが 示 唆 され た 。 さ らに 、 グル コ ー ス 濃 度 に 依 存
した 影 響 が 細 胞 内 に残 つ て い る こ とが示 唆 され た (図 32)。
一 方 、 増 殖 に よ り発 生 す る揮 発 性 物 質 、具 体 的 に は ア ル コ ー ル の 影 響 を
疑 い 、加 熱 処 理 を す る こ とで アル コ ー ル の 影 響 を 除 い た も の と比 較 した と
こ ろ 、加 熱 に よ る増 殖 再 開 の 改 善 は認 め られ ず 、本 試 験 条 件 下 で は 、 阻 害
に 対 す るア ル コ ー ル の 関 与 は認 め られ な か つ た 。
炭 素 源 に 着 目 して 、少 子 化 パ ラ ドック ス お よび セ パ レー シ ョンが 発 生 す
る原 因 を探 ろ う と した が 、 い ず れ の 実 験 に お い て もそ れ を 解 明す る に は 至
っ て い な い 。 そ の た め 、発 生 す る原 因 に窒 素 源 あ る い は他 の 要 因 に よ る可
能 性 が あ る も の と推 察 す る。 先 に 記 述 した 、 窒 素 源 涸 渇 に よ り、成 長 過 程
を ス キ ップ した 緊 急 な 出芽 が 行 わ れ 、 そ れ 以 後 停 止 状 態 に な る応 答 に ヒ ン
トが あ る の か も しれ な い 。
58
第二節
1
活 性 酸 素 に よ る影 響
は じめ に
生 物 は 分 子 状 酸 素 の 高 い 化 学 的 反 応 性 を利 用 した エ ネ ル ギ ー 代 謝 の 代
償 と して 「両 刃 の 倹1」 とな る 反 応 性 の 高 い 酸 素 分 子 種 で あ る活 性 酸 素
(reactive Oxygen species,ROS)と の 関 わ りを余 儀 な く され て い る 。ROS
は
1940年 代 に発 見 され 、そ の 後 の 研 究 に よ り、種 々 の ROSに よ る酸 化 ス
トレス が 、DNAや タ ンパ ク 質 。脂 質 に影 響 を及 ぼ し、生 命 活 動 に 多 大 な 関
与 を示 す こ と、生 活 習 慣 病 の 元 凶 に な る こ とが 報 告 され て き た (Taniyama
.,2006)。
θι′ノ,2003、 Sakai θ′′′2003、 MacNee,2005、 Houstis θ′′ノ
さ らに生 物 の 寿 命 を決 定 す る 因 子 の 一 つ で もあ る こ とが 、 Tolmasoffら に
よ つ て 指 摘 され て きた (Tolmasoff θι′′,1980)。 ま た 、 1956年 に は 、 ミ
トコ ン ドリア にお い て ROSが 産 生 され 、「加 齢 は ミ トコ ン ドリア 由来 の フ
リー ラ ジ カ ル に よ つ て 引 き起 こ され る細 胞 損 傷 が 蓄 積 した も の で あ る」 と
の 仮 説 が 報 告 され た (Harman,1956)。 そ の 後 しば ら くは この 仮 説 は 注 目
され る こ とは な か っ た が 、1973年 に過 酸 化 水 素 が 単離 ミ トコ ン ドリア か ら
.,1972,1973)、
産 生 され て い る こ とが 明 らか とな つ て か らは (Boveris θ ′
`′
ミ トコ ン ドリア 呼 吸 鎖 由来 の ROSが 寿 命 に重 要 な役 割 を 演 じて い る こ と
が知 られ る よ うに な つ て き た 。
生 物 は 上 述 の よ うに生 体 反 応 で 不 可 避 的 に 発 生 す る
ROSを
消 去 す るた
め の 系 を有 して い る。 Superoxide(02)を 消 去 す る superoxide dismutase
(SOD)は そ の 防御 系 にお い て 中 心 的 な 役 割 を担 っ て い る (M cCord θι′′.,
SODは 細 胞 質 と ミ トコ ン ドリア に 存 在 し、 そ れ ぞ れ 重 要 な 役 割 を
担 つ て い る (酵 母 で は細 胞 質 SODは Sodl、 ミ トコ ン ドリア SODは Sod2)。
1969)。
第 二 章 に 、対 数 増 殖 後 期 に 一 過 性 の 細 胞 消滅 が 発 生 す る こ とを記 述 した 。
本 章 本 節 で は 、 そ の 原 因 の 一 つ と して ROSを 疑 い 、 これ を 検 証 した 。
59
2 材 料 お よび 方 法
(1)使 用 株
実 験 1:出 芽 酵 母 は 、 BY4741と
、 BY4741に 対 し活 性 酸 素 の 消 去 に か
か わ る SODlお よび SOD2遺 伝 子 を欠 損 した sο ごゴ∠ (細 胞 質 局 在 型 )
お よび sα ″ Z(ミ トコ ン ドリア 局 在 型 )を 用 い た 。βο′ゴZお よび sα″
∠の
GenOtypeお よび 遺 伝 子 の 機 能 を表 7お よび 表 8に 示 した 。
実験
2:BY4741、
sο ″′Z、
実験
3:BY4741、
βο′ゴ∠ を用 い た 。
実験
4:S288C、 BY4741,θ Oご ゴZ、 sα´ ∠ を用 い た 。
sα ″∠を 用 い た 。
(2)使 用 培 地
SC合 成 培 地 を用 い た
〔
組 成 は第 二 章
3(2)を
参 照 〕。
(3)培 養 条 件
100 mL用 の 三 角 フ ラ ス コ に 10 mLの SC合 成 培 地 を加 え 、 30℃ の 培 養
器 内 に て 振 盪 培 養 した 。 播 種 酵 母 数 は 、 前 々 培 養 (約 24時 間 )お よび 前
培 養 (約 24時 間 )し た酵 母 を 8× 104/mL(終 濃 度 )に 調 整 し培 養 液 に加
えた 。
(4)サ ンプ リ ン グ
実 験 1:細 胞 の 増 殖 状 況 を確 認 す るた め に 、 濁 度 (OD600)測 定 お よび
細 胞 数 算 定 を行 つ た 。 濁 度 測 定 お よび 細 胞 数 算 定 の た め の サ ンプ リ ン
グ は 、培 養 開 始 か ら 3時 間 お き に 36時 間後 ま で 行 つ た 。 ま た 、 これ
に
ゴZ、
sο ご
sα″ ∠で は
42,48時 間値 を加 えた 。
実 験 2:実 験 1と 同様 に 、 濁 度 測 定 お よび 細 胞 数 算 定 の た め の サ ンプ リ
ン グ を 、培 養 開始 か ら 3時 間 お き に 36時 間 後 ま で 行 つ た 。
3:同 上
実 験 4:死 細 胞 染 色 の 予 備 検 討 は S288Cを 用 い て行 つ た 。 S288Cで の
実験
サ ン プ リ ン グ は 、培 養
30時 間後 お よび 42時 間後 に行 つ た 。 BY4741,
よび sα ″∠ を用 い た 本 試 験 で は 、培 養 開始 後 、約 1日 後 (対
数 増 殖 後 期 )、 3日 後 、 5日 後 、 7日 後 にサ ンプ リ ン グ を 行 い 、 死 細 胞
sο ′ゴ∠お
の 染 色 を行 つ た 。 さ らに染 色 標 本 を素 に 、約
細 胞 (ア ポ トー シ ス 陽性 細 胞 )を 算 定 した 。
60
500細 胞 中 に発 生 す る死
(5)死 細 胞 の 染 色
死 細 胞 の 染 色 は 、予備 検 討 と して 、Acridine Orange、 DAPI、 PhloxinB、
Propidium iodide(PI)、 TUNEL、 Annexin‐ V+PIに て 行 い 、 本 試 験 は
Annexin‐ V+PIに て 行 つ た 。 い ず れ の 染 色 法 にお い て も、 これ ま で に報 告
の な い 出芽 痕 を染 め る Calcofluor White(CW)染 色 を併 用 す る方 法 に て
行 つ た 。 そ れ ぞ れ の 染 色 原 理 、 お よび 染 色 方 法 を以 下 に示 す 。
Acridine Orangeの 染 色 原 理
Acridine Orangeは 、 ア ン トラ セ ンの 一 つ の 炭 素 が 窒 素 に 置 換 した 構 造
を持 つ 環 状 有 機 窒 素 化 合 物 の 誘 導 体 で あ り、 正 電 荷 を持 つ 蛍 光 色 素 で あ
る。 核 酸 に イ ン タ ー カ レー トす る性 質 を持 ち、結 合 部 位 の 構 造 が 変 化 す
るた め に 、励 起 波 長 を あ て る こ とで 蛍 光 を発 す る。 染 色 にお い て は この
特 徴 を生 か し、核 酸 の 視 覚 化 を行 う。 Acridine Orangeは 、 生 細 胞 に も
浸 透 す るが 、選 択 的 に細 胞 外 へ 排 出 され る の で 染 色 され な い 。 死 細 胞 で
は排 出 が 行 わ れ な い た め 、核 酸 が 染 色 され る。 この 性 質 を利 用 して 死 細
胞 の 同 定 を行 う。
Acridine Orange+Calco■ uor White(CW)の 染 色 方 法 と標 本 作 製 観 察
i)培 養 懸 濁 液 の 一 部
離 (卓 上 遠 心 機
(懸 濁 液 の 濃 度 に よ り調 整 す る)を 取 り、遠 心 分
:VORTEX 7秒
間 、以 下 同 じ)し 上 澄 み を 除 去 す る。
1)蒸 留 水 500 μLに て 2回 洗 浄 す る。
血 )CW液 (l mg/mL)を 上 記 の 沈 澄 に
100 pL加 え 、 3分 間染 色 す る 。
市)蒸 留 水 500 pLに て 2回 洗 浄 す る。
v)Acridine Orange(0.05 mgノ
mL)液 を上 記 の 沈 澄 に 100
pL加 え 、 1
分 間 染 色 す る。
宙 )蒸 留 水
500 pLに て 2回 洗 浄 す る。
前 )氷 冷 下 に て 超 音 波 処 理 (20秒 間 、約 65」 )す る。
価 )遠 心 分 離 後 の 沈 澄 に 蒸 留 水 を加 え 適 当量 (1視 野 100細 胞 程 度 )の
懸 濁 液 とす る。
破 )こ の 懸 濁 液 を ス ライ ドグ ラ ス に 1.7 pL滴 下 し、これ に カ バ ー グ ラ ス
を 載 せ 、 さ らに透 明 な マ ニ キ ュ ア に て カ バ ー グ ラ ス の 辺 縁 を 覆 い 、
乾 燥 を 防 止 す る。
x)蛍 光 顕 微 鏡 は励 起 波 長
488nm、 検 出波 長
518nmに て 観 察 す る。
DAPIの 染 色 原 理
DAPIは 、二 重 鎖 DNAを 優 先 的 に 染 色 す る 正 電 荷 を持 つ 蛍 光 色 素 で あ る。
61
特 に 、 ア デ ニ ン とチ ミ ン (A‐ T)に 特 異 的 に 作 用 す る性 質 を持 ち 、 核 酸
にイ ン タ ー カ レー トす る 。 結 合 部 分 に 紫 外 線 を 当 て る と強 い 青 色 の 蛍 光
を発 す る。 DAPIは 細 胞 膜 透 過 性 を 有 す る。 この た め 、 生 細 胞 も 死 細 胞
も と も に処 理 され るが 、 死 細 胞 は形 態 で 判 断す る。
DAPI+CWの 染 色 方 法 と標 本 作 製 観 察
染 色 液 お よび 励 起 波 長 以 外 は Acridine Orangeと 同様 とす る。
DAPIの 濃 度 は l μLノ mLと し、 沈 湾 に 100 pL加 え 、 1分 間染 色 す る。
蛍 光 顕 微 鏡 で の 観 察 は励 起 波 長
345nmと
す る。
PhloxinBの 染 色 原 理
Ph10xinBは 、 キ サ ン チ ン 系 酸 性 染 料 (赤 色 104号 )で あ り、核 を赤 く
染 め る。PhloxinBは 細 胞 膜 透 過 性 が な く、死 細 胞 の 核 の み を染 色 す る。
そ の た め 、 染 色 され た細 胞 は死 細 胞 とな る。
PhloxinBの 染 色 方 法 と標 本 作 製 観 察
染 色 液 お よび 励 起 波 長 以 外 は Acridine Orangeと 同様 とす る。
PhloxinBの 濃 度 は 5 mg/mLと し、 沈 澄 に 100 pL加 え 、 1分 間染 色 す
る。 蛍 光 顕 微 鏡 は励 起 波 長 488nm、 検 出波 長
518nmに て 観 察 す る。
PrOpidium iodideの 染 色 原 理
Propidium iodideは 正 電 荷 を持 つ 蛍 光 色 素 で あ り、 DNAの イ ン タ ー カ
レー タ ー と して知 られ る。 二 本 鎖 DNAを 選 択 的 に染 め る。 細 胞 膜 に 対
す る透 過 性 が な い た め 、生 細 胞 の 核 DNAを 染 色 す る こ とは で き な い が 、
死 細 胞 で は細 胞 膜 の 構 造 が 崩 壊 す るた め に 、核
DNAを 染 め る こ とが で
き る。
Propidium iodide(PI)+CWの 染 色 方 法 と標 本 作 製 観 察
染 色 液 お よび 励 起 波 長 以 外 は Acridine Orangeと 同様 とす る。
Propidium iodideの 濃 度 は 0.25 pg/mLと し、 沈 査 に 100 μL加 え 、 1
分 間染 色 す る。蛍 光 顕 微 鏡 は励 起 波 長 488nm、 検 出波 長
518nmと
す る。
TUNELの 染 色 原 理
ア ポ トー シ ス 細 胞 死 に 伴 い 発 生 す る DNA切 断 に よ る DNA断 片 の 3'‐ OH
末 端 に 、酵 素 反 応 に て 修 飾 した 核 酸 を標 識 す る こ とに よ つ て 同 定 す る 。
タ ー ミナ ル トラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ は DNA断 片 核 酸 の 重 合 を触 媒 し、 フル
オ レセ イ ン を取 り込 ませ る こ とに よ り蛍 光 顕 微 鏡 に て 検 出 可 能 とな る
., 1992)。
(Gavrieli θ ′
`′
つ乙
rO
TUNEL+CWの
i)10mL用
染 色 方 法 と標 本 作 製 観 察
フ ァル コ ン チ ュー ブ に 8
さ らに 、 lM
室温で
KP04を
l mL、
30分 間 振 盪 処 理 す る
mLの 細 胞
107/mL)を 入 れ る。
37%ホ ル ム アル デ ヒ ドを l mL加 え 、
(2×
(箱 に入 れ 振 盪 器 で処 理 す る)。
1)振 盪 が 終 了 した ら、 上 記 液 を エ ッペ ン ドル フ チ ュー ブ に入 れ 替 え 、
PBSに て 3回 洗 浄 す る 。 遠 心 は 、 2,500 rpm 3分
間 とす る。 上
清 の 除 去 は 、 細 胞 の ロス を少 な くす るた め に 、数 回 に 分 け て 行 う。
1×
ア ス ピ レー タ ー の 使 用 は不 可 とす る。2回 日以 降 の 洗 浄 は 300∼ 500
μLに て 行 う。
五 )上 清 を捨 て た ら、 450 pLの
PBSに て 懸 濁 す る。
さ らに 、 10× Zymolyase 50 μLを 入 れ ピペ ッテ ィ ン グす る。
市)37℃ 300 rpmで 35分 間 (厳 密 に )振 盪 す る。 処 理 時 間 が 長 い と細
胞 は壊 れ る。 処 理 時 間 が 短 い と抗 体 が細 胞 内 に 取 り込 まれ る。
v)3,000 rpmで 1分 間遠 心 し、そ の 沈 澄 を 1× PBS 500 μLで 3回 洗 浄
す る。 最 後 は 100 μLの 1× PBSに て懸 濁 す る。
宙 )3,000 rpmで 1分 間遠 心 した 沈 湾 に 30 FLの TUNEL反 応 液 を加 え
37℃ で 30分 間染 色 す る。
前 )1× PBS 500 μLで 3回 洗 浄 す る。洗 浄 後 3,000 rpmで 1分 間遠 心 し
た 沈 澄 を 得 る。
価 )沈 澄 に CW液 (l mg/mL)を 100 pL加 え 3分 間染 色 し、1× PBS 500
μLで 3回 洗 浄 す る。 洗 浄 後 3,000 rpmで 1分 間遠 心 した 沈 湾 を得
る。
破 )沈 澄 に 1×
PBS 500 pLを 加 え 、 氷 冷 下 に て 超 音 波 処 理 (20秒 間 、
約 65」 )す る。
x)上 記 の 液 を 3,000rpmに て 1分 間遠 心 し、 沈 澄 に適 当量 の 1× PBS
を加 え 、この 1 7pLを ス ライ ドグ ラ ス に 載 せ カ バ ー グ ラ ス を か け た
後 、 カ バ ー グ ラ ス の 4隅 に マ ニ キ ュ ア を塗 り、 ス ライ ドグ ラ ス に の
せ 、 蛍 光 顕 微 鏡 に て 観 察 す る。 励 起 波 長 450∼ 500 nm、 検 出波 長
515∼ 565 nm(緑 )を 使 用 す る。
Annexin‐ V+PIの 染 色 原 理
ア ポ トー シ ス の 初 期 段 階 に は 、細 胞 膜 の 内側 に あ るホ ス フ ァ チ ジル セ リ
ン (PS)が 細 胞 膜 の 外 411に 表 出す る。この PSに 親 和 性 の 高 い Annexin‐ V
(35∼ 36kDaの Ca++依 存 性 に リ ン脂 質 と結 合 す る タ ンパ ク )が 結 合 可
能 とな る。従 つ て 、Annexin‐ Vと の 結 合 を 検 出す る こ とで ア ポ トー シ ス
00
′U
の 初 期 段 階 に あ る細 胞 を 同定 す る こ とが 可 能 とな る (Andree θι2■
1990、 K00pman θ ス,1994、 Vermes θ ■,1995)。 さ らに 、PI染 色
,
`′
`′
を加 え る こ とで 、 ネ ク ロー シ ス (細 胞 膜 の 重 合 度 の 消 失 に 伴 い 、 PSを
露 出す る )と の 分 別 を可 能 とす る。 ア ポ トー シ ス とネ ク ロー シ ス との 分
別 は 、Annexin‐ V(+)PI(― )は 初 期 段 階 の ア ポ トー シ ス 、Annexin‐ V
(+)PI(+)は 進 行 型 の ア ポ トー シ ス 、 Annexin‐ V(― )(+)PI(+)
はネ ク ロー シ ス と評 価 す る。
Annexin‐ V+PI+CWの 染 色 方 法 と標 本 作 製 観 察
i)10mL用 フ ァル コ ン チ ュー ブ に 8 mLの 細 胞 (2× 107/mL)を 入 れ る。
1)2,500 rpm 3分 間遠 心 分 離 す る。 沈 澄 に 1× PBSを 加 え エ ッペ ン ドル
フ チ ュー ブ に入 れ 替 え る。
rpm 3分 間遠 心 分 離 す る。 上 清 を捨 て た ら、 450 pLの PBS
にて 懸 濁 す る。 さ らに 、10× Zymolyase 50 pLを 入 れ ピペ ッテ ィ ン
血 )2,500
グ す る。
市)37℃
300 rpmで 35分 間
(厳 密 に )振 盪 す る。処 理 時 間 が 長 い と細
胞 は 壊 れ る 。 処 理 時 間 が 短 い と抗 体 が 細 胞 内 に 取 り込 まれ る。
v)3,000 rpmで 1分 間遠 心 し、そ の 沈 澄 を 1× PBS 500 μLで 3回 洗 浄
す る。 最 後 は 100 μLの 1× PBSに て 懸 濁 す る。
宙 )3,000
rpmで 1分 間遠 心 した 沈 澄 に 100 pLの Annexin‐ V+PI混 合 液
を加 え 15∼ 25℃ で 15分 間染 色 す る。
前 )1×
PBS 500 pLで 3回 洗 浄 す る。洗 浄 後 3,000 rpmで 1分 間遠 心 し
た 沈 湾 を得 る。
CW液 (l mg/mL)を
100 pL加 え 3分 間染 色 し、1× PBS 500
pLで 3回 洗 浄 す る。 洗 浄 後 3,000 rpmで 1分 間遠 心 した 沈 査 を得
価 )沈 澄 に
る。
PBS 500 pLを 加 え 、 氷 冷 下 に て 超 音 波 処 理 (20秒 間 、
65」 )す る。
破 )沈 澄 に 1×
約
x)上 記 の 液 を 3,000rpmに て 1分 間遠 心 し、 沈 澄 に適 当量 の
1×
PBS
を加 え 、この 1 7μ Lを ス ライ ドグ ラ ス に 載 せ カ バ ー グ ラ ス をか け た
後 、 カ バ ー グ ラ ス の 4隅 に マ ニ キ ュ ア を塗 り、 ス ライ ドグ ラ ス に の
せ 、 蛍 光 顕 微 鏡 に て 観 察 す る。 励 起 波 長 450∼ 500 nm、 検 出波 長
515∼ 565
出波 長
nm(緑 )を 使 用 す る。 PI染 色 は 、励 起 波 長 488nm、
518nm(赤 )を 使 用 す る。
64
検
上 記 の 染 色 法 は予 備 検 討 に て用 い た 。 予備 検 討 の 結 果 、Annexin‐ V+PI+
CWを 採 択 した 。 そ の 後 、 Annexin‐ V+PI+CW染 色 の 改 良 を加 え 、 上 記 の
染 色 法 と同 等 で あ る こ とを確 認 しな が ら簡 易 な方 法 へ の 改 変 を行 つ た 。 結
果 と して 以 下 の 方 法 を確 立 し、本 試 験 で は これ を用 い た 。
Annexin‐ V+PI+CWの 染 色 方 法 (改 良型 )
1)培 養 懸 濁 液 の 一 部 (懸 濁 液 の 濃 度 に よ り調 整 す る )を 取 り、 遠 心 分
離 (卓 上 遠 心 機 :VORTEX 7秒 間 、以 下 同 じ)し 、 上 澄 み を除 去 す
る。
1)蒸 留 水 500 μLに て 2回 洗 浄 す る。
血 )CW液 (l mg/mL)を 上 記 の 沈 湾 に 100 μL加 え 、 3分 間染 色 す る。
市)蒸 留 水 500 μLに て 2回 洗 浄 す る。
v)Annexin‐ V+PI液 (Annexin‐ V― FLUOS Staining Kitで の 指 定 濃 度
)
を上 記 の 沈 澄 に 100 μL加 え 、 15分 間染 色 す る。
宙 )蒸 留 水 500 μLに て 2回 洗 浄 す る。
前 )氷 冷 下 に て 超 音 波 処 理 (20秒 間 、 約 65」 )す る。
価 )遠 心 分 離 後 の 沈 湾 に 蒸 留 水 を加 え適 当量 (1視 野 100細 胞 程 度 )の
懸 濁 液 とす る 。
破 )こ の 懸 濁 液 を ス ライ ドグ ラ ス に 1.7 μL滴 下 し、これ に カ バ ー グ ラ ス
を 載 せ 、 さ らに 透 明 な マ ニ キ ュ ア に て カ バ ー グ ラ ス の 辺 縁 を 覆 い 、
乾 燥 を 防 止 す る。
x)蛍 光 顕 微 鏡 に て 観 察 す る。 Annexin‐ Vの 励 起 波 長 は 450∼ 500 nm、
検 出波 長 は 515∼ 565 nm(緑 )を 使 用 す る。 PI染 色 は 、励 起 波 長
488 nm、 検 出波 長 518 nm(赤 )を 使 用 す る。 CW染 色 は励 起 波 長
345 nmを 使 用 す る。
65
3
結果
(1)実
1(細
験
胞 の増 殖 ステ ー ジ にお け る
細胞 の増殖 ステー ジにお け る
株
sθ ご′
∠、 sθ 沈グ
と野 生 型
期 に な る と 、 sθ ごゴ∠ と
ROSの 影 響
)
ROSの 影 響 を 検 証 す る た め に 、 SOD欠 損
(BY4741)を 用 い て 増 殖 を 比 較
sθ 洗グ
した 。 対 数 増 殖
は 明 ら か に 野 生 株 に 対 して 増 殖 不 全 を 示 した
ROSの 発 生 が 顕 著 と な り 、そ れ
Sodl、 Sod2と も に そ の ROSス ト レ
(図 34)。 こ の こ と は 、対 数 増 殖 期 以 後 に
が 細 胞 増 殖 を 阻 害 す る こ と、 お よび
ス を 低 下 させ る こ と で 細 胞 増 殖 阻 害 を 防 い で い る こ と を 示 して い る 。
一 方 、対 数 増 殖 初 期 で は
2の 増 殖 不 全 は 観 察 され な か つ た 。
ROSの 発 生 が 極 め て 少 な く 、 ROSに よ る
∠ と sθ 溌
sθ グゴ
この こ とは 、 対 数 増 殖 初 期 で は
細 胞 増 殖 阻 害 が 殆 どな い こ と を示 す 。 逆 に 、 対 数 増 殖 初 期 で は
sθ 沈グ は 野 生 株 と比 べ て 僅 か な が ら 増 殖 が 良 好 で あ っ た 。
sθ グゴ
∠
と
6 4 2
§8 ︶拠頌
︵
―●― BY4741
-sο
d■△
Sο ″
一
│
1__
0
3
6
9
12
15
18
21
24
27
30
33
36
42
48
培 養 時 間 (hr)
34
活 性 酸 素 消 去 機 構 の 変 異 に よ る増 殖 へ の 影 響
培 養 21時 間 以 降 、変 異 ス ポ ッ トに対 す る野 生 株 (BY4741)と 変 異 株
図
(sθ グゴ∠,s∝″ ∠)と
で 増 殖 性 に 明確 な 差 が 認 め られ た 。培 養
以 降 に活 性 酸 素 が 増 加 した こ とが推 測 され る 。 増 殖 抑 制 は
18時 間
sθ ごゴ∠が
s∝ ″ ∠ よ り強 い も の で あ っ た 。
(2)実
実験
験
2(ア
ス コル ビ ン酸 添 加 は
sθ グゴ∠の
生 育 不 全 を 回 復 させ る )
ROSの 細 胞 増 殖 阻 害 が 示 され た た
した 。 そ の 結 果 、 細 胞 質 型 SOD欠 損 株 sθ ごI∠ に お
1に て 、 対 数 増 殖 後 期 に お け る
め 、 さ らに そ れ を検 証
い て 、 酸 化 防 止 剤 で あ る ア ス コ ル ビ ン 酸 の 添 加 に よ り、 対 数 増 殖 後 期 で の
増 殖 の 回 復 が 認 め られ た (図 35)。
一 方 、 野 生 型 で は 回 復 傾 向 は 見 られ な
か っ た 。 こ れ ら の 結 果 は 、 ROSが 対 数 増 殖 後 期 の 細 胞 に 対 して 、増 殖 阻 害
効 果 を も た ら して い る と い う考 え を 支 持 す る も の で あ る 。
66
8
BY4741
7
6
J BY4741 GSH O.lmⅣ I
A BY4741 GSH O.3mヽ [
5
゛
ー
BY4741 GSH lmM
日 BY4741 GSH 3mⅣ I
―囀い‐BY4741 GSH 10mM
4
3
§8 ︶撻興
︵
一
゛
2
一
1
一
BY4742 A lmM
BY4741 A 3mM
BY4741 A 10mⅣ l
0
24
丁+ 上 ︱ 十 二 ︱ 市 + ︱
8
7
―
SOdlΔ
6
り sodl△
GSH O.lmM
A sodl△ GSH O.3mM
5
4
3
2
1
GSH lmM
GSH 3mM
-0-sodlΔ GSH 10mM
゛ sodl△ A lmM
―倒‐ sodl△ A3mM
-0-sodlΔ A 10mM
, sodl△
日
sodl△
0
24
27
8
sod2△
7
一
6
5
ジ sod2△
GSH O.lmLI
A sod2△
GSH O.3mM
GSH lmM
4
シ sod2△
LJ sOd2△ GSH 3m1/1
3
-く )― sod2△
GSH 10mM
゛ sod2△ A lm1/1
2
-sod2△
A3mⅣI
1
-0-sod2△ A10mM
0
3
6
9
12
15
18
21
24
0乙
o hr
培 養 時 間 (hr)
GSH:還 元 型 グ ル タ チ オ
A:ア ス コ ル ビ ン 酸
ン
35
活 性 酸 素 消 去 機 構 に 変 異 を 持 つ 株 に お け る還 元 型 グ ル タ チ オ
イ お よ び ア ス コ ル ビ ン 酸 に 対 す る応 答 .還 元 型 グ ル タ チ オ ン お よ び
図
ア ス コル ビ ン 酸 添 加 に よ る増 殖 性 の 回 復 は
sθ ごゴ∠で 強
く、 s∝″ ∠で
は 変 化 が な か っ た 。 ま た 、 sθ ごゴ∠ア ス コ ル ビ ン 酸 添 加 で 効 果 が 強 く、
変 異 ス ポ ッ トに 対 す る 野 生 株
(BY4741)に 近 似
67
した 。
そ れ に 対 して 、 ミ トコ ン ドリア 型
SOD欠 損 株
sο 凛夕
で は βοグZ∠ で 観 察
され た よ うな 増 殖 回 復 は認 め られ な か つ た 。 この こ とは 、外 か ら添カロした
ア ス コル ビン 酸 は 、 ミ トコ ン ドリア 内 で の ROSに よ る酸 化 的 障 害 に影 響
を与 え て い な い こ とを示 唆 す る。
一 方 、 同 じ く酸 化 防 止 剤 で あ る還 元 型 グル タチ オ ン の 添加 は 、 βο′f∠ に
対 して 、 ア ス コル ビ ン酸 添 加 の よ うな 増 殖 回復 は 観 察 され ず 、 10mMで は
却 っ て 増 殖 に 阻 害 的 に働 い た 。 この 高濃 度 の グル タチ オ ン の 増 殖 抑 制 は他
の 2株 にお い て も観 察 され た 。
(3)実 験 3(ROSと
細 胞 壁 ス トレス の 関連 の 検 証 )
ROSは 様 々 な 細 胞 内物 質 に ダ メ ー ジ を与 え るた め 、そ の 総 体 と して 細 胞
の 増 殖 阻 害 が 起 こ る と考 え られ る。 しか し、増 殖 細 胞 の どの よ うな機 能 が
最 も ROSに 対 して 感 受 性 が 高 い の か は不 明 で あ る。 前 述 の よ うに 、 対 数
増 殖 後 期 に は細 胞 壁 が 破 壊 され た細 胞 が 見 出 され た 。 この こ とは 、 細 胞 壁
が 脆 弱 に な つ て い る細 胞 が この 時 期 に 出現 す る可 能 性 を示 唆 す る。 さ らに 、
後 述 す る よ うに細 胞 壁 構 築 に 支 障 を も ち低 浸透 圧 ス トレス に弱 い ″ρ″ ∠
は対 数 増 殖 期 で 顕 著 な生 育 不 全 を示 した 。 この こ とは 、細 胞 壁 ス トレス が
細 胞 増 殖 に大 き な影 響 を与 え て い る こ とを示 唆 す る。
対 数 増 殖 後 期 に ROSが 細 胞 壁 ス トレス を 引 き起 こ しこれ が 細 胞 増 殖 阻
害 を も た ら して い る の で は な い か と の 仮 説 を 立 て て 、 これ を検 証 す るた め
に 、 浸 透 圧 保 持 剤 で あ る lMソ ル ビ トー ル の 細 胞 増 殖 へ の 影 響 を調 べ た 。
sο ′
′∠に ア ス コル ビ ン 酸 を添加 す る と野 生 株 レベ ル に ま で 増 殖 が 回復 した
しか し、 ソル ビ トー ル 添加 で は そ の よ うな増 殖 回 復 は認 め られ
ず 、却 つ て 増 殖 が 悪 化 した 。 さ らに、 ソル ビ トー ル を ア ス コル ビン 酸 と併
(図 36)。
用 させ る と、 ア ス コル ビン 酸 単 独 で の 生 育 不 全 回 復 を逆 に悪 化 させ た 。 ソ
ル ビ トー ル の 悪 影 響 は 、 βοごfZで の生 育 阻 害 が 認 め られ な か つ た 対 数 増 殖
初 期 で も起 こっ て い る こ とか ら、今 回 の 実 験 条 件 で は ソル ビ トー ル が 浸 透
圧 保 持 剤 と して の 効 果 で は な く、ア ス コル ビン酸 と の 相 互 作 用 、ま た ROS
を消 去 させ る物 質 と ソル ビ トー ル が 作 用 した た め の 結 果 と解 釈 した 。 そ の
た め 、本 実 験 か らは 浸 透 圧 の 変 化 と ROSの 重 複 作 用 を 疑 う仮 説 を 裏 付 け
る結 果 とは な らず 、 ソル ビ トー ル が 抗 酸 化 剤 と作 用 す る こ とで 毒 性 が 強 ま
こ とを確 認 した 結 果 とな つ た 。
なお 、 ソル ビ トー ル は ソル ビ トー ル グル コ ー ス を還 元 し、 アル デ ヒ ド基
を ヒ ドロ キ シル 基 に変 換 して 得 られ る糖 アル コ ー ル の 一 種 で あ り、 そ の 代
謝 は ブ ドウ糖 か ら得 られ 果 糖 に 分 解 して い く。
68
8
7
-{F
8Y4741
6
+sod1a
5
§8 ︶Щ唄
︵
<-sod1a_A_ 10mM
\ sodln_S_ lM
- sodla_s_ lM+A10mM
4
3
2
1
0
o hr
3
6
9
12
15
A:ア ス コ ル ビ ン 酸
S:ソ ル ビ トー ル
18
21
24
27
30
33
36
培 養 時 間 (hr)
36
活 性 酸 素 消 去 機 構 に 変 異 を持 つ 株 に お け るア ス コル ビン 酸 お
よび ソル ビ トー ル 添 加 に よ る 影 響 。 ア ス コ ル ビン 酸 10mMの 添 加 に
よ り野 生 型 とほ ぼ 近 似 した 増 殖 状 況 とな つ た 。ア ス コ ル ビ ン 酸 に ソル
図
ビ トー ル を添 加 す る と増 殖 の 回 復 は 抑 え られ 、ソル ビ トー ル が ア ス コ
ル ビ ン 酸 と反 応 し効 果 を弱 め た と推 察 され る 。
4(死 細 胞 の 染 色 と 増 殖 過 程 に お け る ROSの 影 響
第 二 章 に て 、 (1)娘 細 胞 の 数 と 等 し い は ず の 出 芽 痕 総 数 が 対 数 増 殖 後
期 に は 減 少 す る こ と (保 存 則 の 破 綻
(2)こ の 時 期 、 ス テ ー ジ の 進 ん だ
(出 芽 痕 を 多 く 有 し て い る )母 細 胞 の 死 が 増 加 す る こ と 、 (3)ス テ ー ジ
(4)実
験
)
)、
の 進 ん だ 母 細 胞 が 選 択 的 に 消 滅 す る と 仮 定 した 場 合 に は 、 出 芽 痕 の 総 数 と
娘 細 胞 数 の 実 測 値 に 理 論 値 が よ く相 似 す る こ と を 示 した 。 しか し 、 観 察 さ
れ た 細 胞 死 が 、 ア ポ トー シ ス (能 動 死 )、
ネ ク ロ ー シ ス (受 動 死 )の ど ち
ら に よ つ て も た ら さ れ た も の か は 不 明 で あ る 。 本 節 の 実 験 1と
ROSが
2よ
り、
対 数 増 殖 期 で 増 殖 しそ れ が ス ト レ ス に な っ て い る こ と が 示 唆 され
た 。酵 母 に お い て
ROSは
ア ポ トー シ ス の 原 因 と な る (Madeo θ′″ 。
,2002、
Agulilaniu θ′″ .,2003、 Herker θ′″ .,2004)。
こ の こ とは 、 上 記 で 認 め
られ た 細 胞 死 が ア ポ トー シ ス に よ る も の で あ る 可 能 性 を 示 唆 す る 。
本 実 験 で は 、細 胞 死 を判 別 す る特 異 的 蛍 光 色 素 を用 い る こ とに よ りこの
可 能 性 を 検 証 した 。 さ ら に は 、 細 胞 の ス テ ー ジ (出 芽 回 数 )と 細 胞 死 の 関
連 を検 証 す る た め に 、 ま だ報 告 例 の な い 死 細 胞 と出 芽 痕 の 多 重 染 色 法 を試
み た 。 ま ず 初 め に 、 CWと 多 重 染 色 し や す い 細 胞 死 検 出 色 素 の 選 定 を 行 つ
た。 こ こで用 い た もの は以 下 の
4つ
で あ る 。 acridine
orenge(細 胞 膜 を 浸
透 す る が 、 生 細 胞 で は 選 択 的 に 細 胞 外 へ 排 出 され る の で 染 色 され な い 。 死
69
細 胞 で は 排 出 が 行 わ れ な い た め 核 酸 が 染 色 され る )、
phloxin B(acridine
orengeと 同 様 に 細 胞 膜 を 浸 透 す る が 、生 細 胞 で は 選 択 的 に 細 胞 外 へ 排 出 さ
れ る の で 染 色 され な い 。 死 細 胞 で は 排 出 が 行 わ れ な い た め 染 色 さ れ る )、
4ち
6-diamidino-2-phenylindole(DAPI、 細 胞 膜 透 過 能 は 高 く な く 生 細 胞 は
染 色 され に く い が 、 死 細 胞 は 細 胞 膜 に 支 障 を 持 つ た め 透 過 し
す る )、
DNAを
染色
prOpidium iodide(PI、 DAPIと 同 様 に 生 細 胞 の 膜 は 透 過 せ ず 、
死細胞 の細胞 膜 は通過 し
DNAを
Acridine Orenge+CWで
染 色 す る )。
は 死 細 胞 と正 細 胞 と の 分 染 は 良 好 に な され た も
の の 、 出 芽 痕 に つ い て は 明 確 に 判 別 で き な か つ た (図 37)。
DAPI+CWで
は 出 芽 痕 の 観 察 は 良 好 で あ っ た が 、 死 細 胞 と生 細 胞 と の 分 別 は 困 難 で あ っ
た 。 Phloxin
B+CW,PI+CWで
は 、 死 細 胞 と生 細 胞 の 分 別 、 出 芽 痕 の 観 察
と も に 良 好 で あ り 、 細 胞 の 委 縮 化 、 膨 張 化 な ど形 態 学 的 に 判 別 を 困 難 と す
る よ うな こ と も な く観 察 し 易 い も の で あ っ た 。 そ の た め 、 CWと の 共 染 色
では
Phloxinも し く は PIを 選 ぶ こ と と した 。
Acridine orange*CW
DAPIttCW
Phloxi nB+CW
Propidium iodide+CW
り
0
く
け
凡_●
図
37
各 種 染 色 法 の染 色 動 態
(S288C)
死 細 胞 の 染 色 動 態 を 示 す 。染 色 の 良 否 判 定 は 明 確 な 死 細 胞 の 染 色 と 出 芽 痕 の 染 色
性 に て 行 っ た 。 PhloxinB+CWと
prOpidium iodide+CWが 良 好 で あ る 。
70
さ ら に 、 酵 母 の ア ポ トー シ ス を 特 異 的 に 判 別 す る た め に TUNEL
(TdT‐ mediated dUTP nick end labeling)法 と Annexin‐ V法 を試 み た 。
は ア ポ トー シ ス に よ り生 じる ク ロマ チ ン 断 片 の DNAの 31‐ OH
末 端 を タ ー ミナ ル トラ ンス フ ェ ラ ー セ (TdT)に よ リ フル オ ロセ イ ン標 識
TUNEL法
dUTPで 染 色 す る
(Gavrieli θι′■,1992)。
一 方 、 ア ポ トー シ ス の 初 期 段 階 で は、細 胞 膜 の 完 全 性 は保 た れ て い るが 、
膜 の リ ン 脂 質 の 非 対 称 性 が 失 わ れ る 。 そ れ に 伴 い 、生 細 胞 で は 細 胞 膜 の 内
側 に 局 在 す る 陰性 荷 電 リ ン脂 質 の フ ォ ス フ ァ チ ジル セ リ ン (PS)が 細 胞 外
表 面 に 露 出す る 。 Ca2+依 存 性 の リ ン 脂 質 結 合 タ ン パ ク で あ る Annexin‐ V
が この
PSに 選 択 的 に結 合 す る性 質 を利 用 して 、 FITC標 識
Annexin‐ Vを
用 い て ア ポ トー シ ス 細 胞 を 特 異 的 に 検 出 す る (Andree θι′■,1990、
Koopman θ ■,1994、 Vermes θι′′.,1995)。 Annexin― Vは し,ず しば PI
と組 み 合 わせ て ア ポ トー シ ス 検 出 に用 い られ る こ とに加 え て 、 TUNEL法
で 必 要 な細 胞 固定 も不 要 で あ る。
`′
PSに 結 合 した Annexin
の 蛍 光 は 観 察 され るが 、 細 胞 膜 の 構 造 自体 は 保 た れ て い るた め PIに は 染
ア ポ トー シ ス の 初 期 段 階 の 細 胞 で は 、 露 出 した
色 され な い (後 述 す る判 定 参 照 )。 ア ポ トー シ ス の 進 行 が 進 み 、細 胞 膜 の
構 造 が 崩 壊 す る と、 Annexinと PIの 両 方 の 蛍 光 が 観 察 され る。 一 方 、 ネ
ク ロー シ ス で は
PIで の み 染 色 され る。
TUNEL+CWで
は ア ポ トー シ ス 細 胞 が 良好 に 染 色 され た も の の 、 CWに
よ る 出芽 痕 染 色 の 効 率 は 低 下 した (図
38)。
この 原 因 は 、TUNEL法 で は 、
TdTを 細 胞 内 に 透 過 させ る た め に 、細 胞 固 定 後 にザ イ モ リア ー ゼ 処 理 を行
うた め細 胞 壁 を部 分 消 化 す る こ とに よ る。 出芽 痕 を構 成 して い る キ チ ン が
ザ イ モ リア ー ゼ 中 の キ チ ナ ー ゼ に よ り分 解 され て しま う こ とに よ り出 芽
痕 が 消 失 (減 少 )し て しま うた め で あ る。 ザ イ モ リア ー ゼ 処 理 時 間 を短 く
す る等 の 条 件 を振 つ て み た が 、 TUNEL法 との コ ン ビネ ー シ ョンで 効 率 よ
く出 芽 痕 を CWで 検 出す る条 件 は見 出 せ な か つ た (デ ー タ示 さず )。
それ に対 して 、Annexin‐ V+PI+CWで は ア ポ トー シ ス 細 胞 が 良好 に染 色
され 、 さ らに CWに よ る染 色 も良好 で あ っ た (図 39)。 以 上 の 結 果 か ら、
本 試 験 に は Annexin― V+PI+CWを 採 択 した 。
Annexin― V+PI+CWに よ る二 重 染 色 で は 、 そ れ ぞ れ の 染 色 像 を画 像 解 析
処 理 す る こ とに よ り、初 期 型 ア ポ ト‐ シ ス 、遅 延 型 ア ポ トー シ ス 、 ネ ク ロ
ー シ ス 、出芽 痕 と の 関係 を容 易 とす る (図 40)。 この 点 も、Annexin― V+PI
+CWの 利 点 と考 え る。
71
TUNEL
CW
ア ポ トー シ ス 細 胞 の 染 色
性 は 良好 で あ つ た。
●"
図
38
S288C
TUNEL+CWの
(S288C)
染色動態
の 培 養 3日 後 の 像 を 示 す 。
Annexin-V
CW
PI
―
ヮ
●
´●
“
図
39 Annexin‐ V+PI+CWの 染 色 動 態
S288Cの
培 養 3日 後 の 像 を 示 す 。 ア ポ トー シ ス と ネ ク ロ ー シ ス の 分 染
が な され 、 出 芽 痕 も 明 瞭 に 確 認 で き る 。
染 色 像 を重 ね る こ とで そ れ ぞ れ の 細 胞
に お け る分 布 の 把 握 が 可 能 とな る。 緑
色 が 強 い 細 胞 は 初 期 ア ポ トー シ ス 、 橙
● ハ
色 は 終 期 ア ポ トー シ ス 、 赤 色 は ネ ク ロ
ー シ ス 、 青 色 に て 出芽 痕 の観 察 が 可 能
と な る。
図
40 Annexin‐ V+PI+CWの
S288Cの
合成像
培 養 3日 後 の 像 を 示 す 。 全 て の 染 色 を 重 ね た 画 像 を 得 る こ と
も可 能 で 、 全 体 の 様 子 を確 認 す る 際 に 有 効 とな る。
72
Annexin‐ V+PI+CWで の 判 定 は 以 下 の よ う に した (CastrO θιノ 2011)。
終 期 ア ポ トー シ ス
q
1/√
細 胞 死 の タイ プ
戸r/√
初 期 ア ポ トー シ ス
│
Annexin-V I
初 期 ア ポ トー シ ス
Propidium iodide
十
終 期 ア ポ トー シ ス
ネ ク ロー シ ス
十
な お こ こ で 得 られ た い く つ か の 興 味 深 い 結 果 を 述 べ る 。
第 二 章 で 示 し た 細 胞 壁 に 亀 裂 が 生 じて い る 細 胞 が こ こ で も観 察 され た
(図 42)。
対 数 増 殖 後 期 の 細 胞 (S288C、
生 じた 亀 裂 か ら
Aと
B)。
PIに
21時 間 後 )で
は 、 この細 胞 壁 に
て 赤 色 に 染 色 され る 染 色 体 が 漏 れ 出 て い た (図 41、
そ れ に 対 し、 同 様 に
PIで 染 色
は 観 察 され な い も の も 存 在 した 。 (図 41、
され た 別 の 細 胞 で も
Cと
DNAの
漏出
D)。 後 者 タ イ プ の 死 細 胞 が
時 を 経 て 、 前 者 タ イ プ の 細 胞 壁 に 亀 裂 を 生 じた も の か 、 も し く は 細 胞 死 に
は 物 理 的 に 壊 れ て い く も の と そ うで な い も の と存 在 す る の か は 不 明 で あ
る。
図
41
壊 れ か け て い る 細 胞 と死 細 胞 の 染 色 動 態
S288Cの
く像 を 示
21時 間 後 の 像 を 示 す 。 A,Bに 細 胞 が 物 理 的 に 壊 れ て い
し 、 C,Dに 細 胞 全 体 が 染 色 され た 像 を 示 す 。
培養
73
A
ヽ
図
42
壊 れ か け て い る細 胞 と死 細 胞 の
図
/
43
B
出 芽 中 に 見 られ た 死 細 胞 の
染色動態
染色動態
S288Cの
培 養 42時 間 後 の 像 を 示 す 。
図 41と 同 様 に 亀 裂 か ら染 色 体 が 漏 れ
こ れ が 染 色 され た 像 と 、 細 胞 全 体 が 染
ま つ て い る細 胞 が 観 察 され た 。
上 の 細 胞 は 娘 細 胞 の み 、下 の 細 胞 は 娘
細 胞 と母 細 胞 と も に 染 色 され て い る 。
セ プ チ ン カ ラ ー の 機 能 を確 認 す る方
法 と して も有 用 と判 断 す る 。
さ ら に 、 定 常 期 以 降 で は ス テ ー ジ の 進 ん だ (多 産 化 した )細 胞 が 選 択 的
に
PIに
よ り染 色 され る わ け で は な く 、 む し ろ 小 型 の 娘 細 胞 が 染 色 され る
傾 向 が 認 め られ た 。 ま た 、出 芽 中 の 娘 細 胞 が
43)。
PIで
し ば し ば 染 色 され た (図
こ の こ と は 、 細 胞 成 長 中 の 娘 細 胞 が 死 に や す い こ と を 示 して い る 。
A(図
43、
白矢 印 )の 細 胞 で は 娘 細 胞 の み
PI染 色
され て お り 、 母 細 胞
は 染 色 され て い な い 。 PIは 、異 常 な 細 胞 膜 よ り細 胞 に 進 入 し 細 胞 を 染 色 す
る が 、 娘 細 胞 と母 細 胞 は 細 胞 質 で つ な が っ て い る に も か か わ ら ず 、 母 細 胞
が 染 色 され て い な い の は 、 細 胞 壁 は つ な が っ て い る も の の 細 胞 質 分 離 が 起
こ つ て い る細 胞 で あ る か 、娘 細 胞 の影 響 が 母 細 胞 に伝 わ る逆 流 現 象 を起 こ
さ な い 機 構 が 備 わ っ て い る こ と の い ず れ か が 考 え られ る 。 そ れ に 対 し
Bの
PI染 色 され て い る 。 こ の 原 因 と して は 、
よ り流 出 した PIが 娘 細 胞 に 流 入 し た も の と 考 え ら
細胞 では、娘・母 両細胞 ともに
死 ん だ母 細 胞 の細 胞 膜
れ る。
ま た 、図
44(第 二 章 に て 提 示
る 多 産 化 した 細 胞 の 中 に は
し た も の と 同 じ )に 示 す よ う に 、壊 れ て い
PI染 色 陰 性 の も の が 認 め られ る 。こ の こ と は 、
死 に 近 い 過 程 を 経 た 後 に 細 胞 が 壊 れ る の で は な く 、 あ る と こ ろ (ル ー ズ 化
した セ プ チ ン カ ラ ー 部 位 を 想 定 して い る )を 起 点 と して 、 一 気 に 壊 れ て い
く も の と 推 察 され る 。 い わ ゆ る 物 理 的 な 影 響 で 壊 れ て い く と 推 察 され る 。
ま た 、 興 味 深 い こ と と して 、 小 型 の 娘 細 胞 も染 ま っ て い る。 こ の こ とは 、
娘 を 死 に 至 ら せ る 原 因 物 質 が 細 胞 内 に あ る こ と を 予 感 させ る 。
74
図
44
壊 れ か け て い る細 胞 と
死 細 胞 の染 色 動 態
S288Cの 培 養 30時 間 後 の 像 を 示
す 。 壊 れ た 細 胞 は PI染 色 に 陰 性
とな っ て い る 。 細 胞 内 の 染 色 体
が 既 に 流 出 して しま っ て い る の
か も しれ な い 。
上 記 の 結 果 を 基 に 、 ROSの 細 胞 死 へ の 影 響 を Annexin― V+PI+CW染 色
法 に よ り評 価 した 。そ の 結 果 、培 養 3日 後 の sθ ごゴ∠ で は 、野 生 株 (BY4741)
に 比 べ て 、 よ り 多 く の ア ポ トー シ ス 細 胞 が 認 め られ た (図 45)。 しか し な
が ら 、本 条 件 下 で は s∝″ ∠で の ア ポ トー シ ス は 顕 著 に 増 加 し な か っ た 。 ま
た 、 sθ ごゴ∠ に お い て 、 ス テ ー ジ の 進 ん だ 細 胞 と 出 芽 中 の 娘 細 胞 に ア ポ トー
シ ス が 認 め られ た 。 こ の こ と は 、 老 化 細 胞 と 出 芽 中 の 娘 細 胞 が 、 ROSに よ
つ て よ リダ メ ー ジ を 受 け る こ と で 、 ア ポ トー シ ス を 起 こ し 易 く な っ て い る
こ と が 示 唆 され る 。
図
A
BY 47
4L 3 days
45
出 芽 中 に 見 られ た 死 細 胞 の 染 色 動 態
sodl
3 days
sod2
A
3 days
上 の 細 胞 は 娘 細 胞 の み 、 下 の 細 胞 は 娘 細 胞 と母 細 胞 と も に 染 色 され て
い る。
さ ら に 、BY4741,sθ グゴ∠ ,sα´ ∠ の 培 養 開 始 約 1日 後 (対 数 増 殖 後 期
)、
3日 後 、 5日 後 、 7日 後 に 死 細 胞 の 発 生 頻 度 (図 で は 生 存 率 )を 算 定 し た 結
果 、 図 46に 牙きナ よ う に BY4741に 文lし sθ グゴ∠ ,sθ グ′∠ と も に 培 養 3日 目
以 降 有 意 に 死 細 胞 の 発 生 が 認 め られ た 。細 胞 質 局 在 型 の
sθ グゴ∠
と ミ トコ ン
ド リ ア 局 在 型 の sα ´ ∠ の 比 較 で は 、 3日 後 に お い て sθ ごゴ∠が 強 く 、 7日 後
に お い て sα″ ∠が 強 い 結 果 と な っ た 。 ミ ト コ ン ド リア 局 在 型 で は 影 響 が 遅
延 す る傾 向 が 認 め られ た 。
75
S 掛性川
一
20
BY4741
“モ 富sod′ 4
10
sod2△
…
1 day
3 days
5 days
7 days
培 養 日数
図
46
約
500細 胞 あ た りに 発 生 す る ア ポ トー シ ス 細 胞 に よ り算 定 した 生 存 率
活 性 酸 素 消 去機 構 の 変 異 に よ る生 細 胞 率 へ の影 響
を 示 す 。培 養 3日 後 以 降 、sθ グゴ∠,s∝″ ∠ と も に 生 存 率 の 低 下 が 認 め ら
れ た。最 初 に細 胞 質 局 在 型 の
sθ ごゴ∠が 反 応
し、以 後 ミ トコ ン ド リ ア 局
在 型 が 細 胞 質 局 在 型 を 上 回 り強 さ で 反 応 した 。
76
4
考察
対 数 増 殖 後 期 に 発 生 す る 一 過 性 の 細 胞 消 滅 に 対 し、 そ の 原 因 の 一 つ と し
て ROSを 疑 い 、 本 章 本 節 で は SOD欠 損 株 を 用 い た ROSの 増 殖 へ の 影 響
お よ び 細 胞 死 へ の 関 わ りに つ い て 検 討 を 加 え た 。 そ の 結 果 、 対 数 増 殖 期 以
降の
sχ ″ ∠で 細 胞 増 殖 が 抑 制 され 、 さ ら に そ の sθ ごゴ∠の 増 殖 阻
害 が ア ス コ ル ビ ン 酸 添 加 に よ り 野 生 株 と 同 程 度 ま で 回 復 した 。 こ れ ら の こ
sθ ごゴ∠ と
ROSが 細 胞 に ス ト レ ス を 与 え て い る こ と
47は ROSの 代 謝 マ ッ プ で あ る が 、H202を H20
とは 、 対 数 増 殖 期 以 降 に お い て
を 示 唆 す る も の で あ る 。図
に す る 際 に 機 能 す る グ ル タ チ オ ン ーア ス コ ル ビ ン 酸 回 路 に 作 用 し た も の
と 半U断 され る 。
+t>7>
ヒポキサ ンチ ン
Fe3+,cu2+
H202
02・
e―
`
・ OH―…
…
==L…
…→H20
02
Gtu Cys
Asp
LOH+H20
グル タチオ ンーアス コル ビン酸 回路
2H20
Arginosuc:ア ルギ ノコハ ク酸、Cit:シ トル リン、CPS iカ ルバ ミル リン酸合成酵素、
CySH:シ ステ ィン、Fum:フ マール酸、Y‐ Gtu Cys:Y‐ グル タミルシステ ィン、
CSH:還 元型 グルタチオ ン、GSSG:酸 化型グルタチオ ン
GR:グ ル タチオ ンリダクターゼ、APX:ア スコル ビン酸 ペルオキ シダーゼ
図
47
活性酸素
(ROS)の 代 謝 マ ッ プ
活 性 酸 素 種 の 挙 動 と係 わ りを も つ 物 質 の 関 係 を 図 式 化 した 。
sθ ごゴ∠の 増 殖 性 回 復 に グ ル タ チ オ ン ーア ス コ ル ビ ン 酸 回 路 が
影 響 し、 ア ス コル ビ ン 酸 添 加 に よ る
で あ った。
77
ROSの 影 響 軽 減 が 顕 著
細 胞 質 局 在 型 SOD欠 損 株 βοごゴZで は ア ス コル ビン 酸 が 強 く作 用 し、
GSHは 低 い 濃 度 で 僅 か な効 果 の み で あ つ た 。これ に 対 し ミ トコ ン ドリア局
在 型 で あ る ,α ´∠は 両剤 と も に 作 用 しな か つ た 。 グル タ チ オ ン が 細 胞 内 、
ア ス コル ビ ン酸 が 細 胞 表 層 の ラ ジ カ ル 消 去 に 作 用 す る 。 恐 ら く、 こ の グル
タチ オ ン とア ス コル ビ ン 酸 の 働 き の 違 い が 、効 果 の 差 を生 じて い る可 能 性
が あ る と推 察 され る。
当初 の 目的 と予 想 で は 、SOD欠 損 株 で 一 過 性 の 細 胞 消滅 が 増 加 す る こ と
を期 待 した が 、細 胞 死 とい う よ りは この よ うに 細 胞 増 殖 の 阻 害 とい う こ と
が 顕 著 に 現 れ た た め 、 細 胞 死 へ の 影 響 は予 測 され る も の の 、 一 過 性 に 作 用
す る原 因 と して 特 定 す る に は 至 らな か つ た 。
78
第 二節
1
密 度 効 果 /そ の 他 に よ る影 響
は じめ に
出芽 酵 母 は 、母 細 胞 か ら娘 細 胞 を 出芽 す る こ とで 子 孫 を増 や す 非 対 称 分
裂 を行 うた め 、 細 胞 分 化 や 細 胞 系 譜 の 研 究 モ デ ル と して 汎 用 され て い る
(Thorpe θ ′,2008、 Neumiller θ ′.,2009)。 形 態 的 な 非 対 称 性 だ け
`′
`′
で は な く、細 胞 成 分 も非 対 称 に 分 配 され る。 母 細 胞 は 分 裂 の 度 に細 胞 へ の
酸 化 ダ メ ー ジ な どを 受 け た 老 化 成 分 を 引 き受 け る こ とに な り老 化 が進 む
一 方 、娘 細 胞 に は 老 廃 物 は 引継 が れ な い 。 そ の 結 果 、 老 化 した 母 細 胞 か ら
で も若 い 娘 細 胞 が 生 じ る こ とが 可 能 で あ り、 い わ ゆ る娘 細 胞 の 若 返 り
(rejuvenation)が 走ユこ る。
第 二 章 で述 べ た よ うに 、 出芽 酵 母 細 胞 に は 分 裂 寿 命 (RLS)と 経 時 的 寿
命 (CLS)が あ り、 そ れ ぞれ は 哺 乳 類 細 胞 の 分 裂 回数 と分 裂 停 止 後 の 細 胞
の 寿 命 に 相 当す る 。 さ らに 、酵 母 と ヒ ト細 胞 の 老 化 ・ 寿 命 の 分 子 機 構 も非
常 に似 て い る。 こ れ らの こ とか ら、 酵 母 にお け る老 化 研 究 は 、 ヒ ト細 胞 の
.,2003、
老 化 研 究 にお け る よい モ デ ル とな つ て い る (Bitterman θオ′′
Fabrizio θ ′
.,2008、 Steinkraus θ ノ
.,2008、 Barea θ′′′,2009)。
`′
`′
生 物 に は 最 適 な 条 件 下 で 実 現 す る生 理 的 寿 命 (PLS)と 、 そ の 生 物 が 生
活 して い る 場 で 見 られ る現 実 的 な生 態 的 寿 命 (ELS)と が あ る。 これ は 単
細 胞 生 物 に と つ て も同様 で あ る と考 え られ る。 出芽 酵 母 は ス テ ー ジ の 異 な
る細 胞 が 混 在 す る ヘ テ ロ な細 胞 集 団 で あ り、 そ の 細 胞 集 団 に お い て 個 々 の
細 胞 が 同 じ RLSと
CLSを 示 す か ど うか は 不 明 で あ る。 しか し、 自然 界 で
(ス テ ー ジ の 進 ん だ )動 物 が 飢 餓 や ス トレス で 死 にや す
年 を取 つ た 老 い た
い の と同 様 に 、 出芽 酵 母 にお い て も環 境 が 悪 化 す る定 常 期 にお い て 、 ス テ
ー ジ の 進 ん だ 母 細 胞 が 死 にや す い こ とは 十 分 に あ り得 る。
RLSは 、 単 離 され た 一 つ の 細 胞 の PLSと して 測 定 され る も
の で あ る (Xiao‐ Fen et al.,2009)。 一 方 、CLSは 細 胞 集 団 の 平 均 寿 命 と し
て 測 定 され る も の で あ る (Fabrizio θι′′,2007)。 そ の た め 、RLSと CLS
出芽 酵 母 の
の どち らにお い て も、 ス テ ー ジ の 異 な るヘ テ ロ な細 胞 集 団 内 にお け る 、
個 々 の 細 胞 の ELSは 全 く不 明 で あ る。 多 細 胞 生 物 にお い て も 同様 で あ り、
分 裂 回 数 が 異 な る ヘ テ ロ な細 胞 集 団 内 で の 個 々 の 細 胞 の そ の 後 の 分 裂 回
数 、 分 裂 後 の 寿 命 が 同 じで あ る の か 、違 うの か 、 ま た 違 う とす る とそ れ が
ど の よ うに制 御 され て い る の か は全 くの 不 明 で あ る。
上 述 の 研 究 を通 して 筆 者 は 、出芽 酵 母 が 細 胞 の ELS研 究 に 対 して 非 常 に
有 用 な モ デ ル 生 物 で あ る こ とに気 付 い た 。 ヒ ト細 胞 で は 、 あ る時 点 で そ の
79
細 胞 を観 察 して もそ の 細 胞 の 履 歴 と して の ス テ ー ジ (過 去 の 分 裂 回数 )は
判 断 で き な い 。 しか し、 出芽 酵 母 の 場 合 に は 、過 去 の 分 裂 回 数 は 出芽 痕 と
して 刻 印 され て い るた め 、 あ る時 点 で の 細 胞 の ス テ ー ジ が 判 断 で き、
Annexin‐ V+PI+CW染 色 法 と組 み 合 わせ る こ とで 、個 々 の 細 胞 の ス テ ー ジ
と CLSを 検 証 す る こ とが で き る は ず で あ る。
定 常 期 長 期 培 養 中 の 酵 母 の 死 は ア ポ トー シ ス で あ る (Herker θι2■
,
ア ポ トー シ ス が 能 動 的 な 死 で あ る こ とを 踏 ま え る と、 そ こ に は 何
らか の 生 物 学 的 意 義 が あ る は ず で あ る。 提 唱 され て い る生 物 学 意 義 と して
2004)。
は 、極 度 の 栄 養 源 飢 餓 環 境 にお い て は 、集 団 中 の 一 定 の 割 合 の 細 胞 に積 極
的 に死 を もた らす こ とに よ り、残 り少 な い 栄 養 を生 き残 り細 胞 に よ り多 く
分 配 す る こ とが で き る こ とに加 えて 、 死 細 胞 が 持 つ て い た 細 胞 成 分 が 培 地
中 に 放 出 され 、 そ れ が 栄 養 源 と して 生 き残 り細 胞 に供 給 され る、 とい うも
の で あ る。厳 しい ス トレス 環 境 下 の生 物 に と つ て は 、自分 の 遺 伝 子 (子 孫 )
を殖 や す よ り、遺 伝 子 を 絶 や さな い こ とが 重 要 で あ る。 近 接 した 空 間 に 存
在 す る酵 母 集 団 は通 常 、 遺 伝 子 を共 有 す る ク ロー ン 個 体 で あ る こ とか ら、
細 胞 集 団 の 戦 略 と して は 、 全 て の 細 胞 を 中途 半 端 に生 き延 び させ る戦 略 を
とる よ りは 、少 数 の 個 体 を よ り長 く生 き延 び させ る 戦 略 が 結 果 的 に適 応 的
で あ る とい う理 屈 で あ る。
この 酵 母 の 定 常期 長 期 培 養 中 の 適 応 的 ア ポ トー シ ス 理 論 か らは 、 老 い 先
短 い (あ ま り分 裂 で き な い )ス テ ー ジ が進 ん だ細 胞 が 選 択 的 に ア ポ トー シ
ス を起 こす こ とが 予 見 され る。 しか し、これ ま で そ れ は 確 認 され て い な い 。
本 節 で は それ を 検 証 した 。 カロえて 、 予 期 して い な か つ た 、 最 も若 い ス テ ー
ジ 0の 娘 細 胞 が ア ポ トー シ ス を起 こ しや す い こ とを 見 出 した 。 さ らに 、
Annexin‐ V+PI+CW染 色 に よ り、定 常 期 長 期 培 養 中 の ア ポ トー シ ス にお け
る ROS、 細 胞 壁 ス トレス 等 に お い て も検 証 した 。
加 え て 、密 度 効 果 に よ る増 殖 へ の 影 響 を確 認 す るた め に 、 これ ま で の 液
体 培 地 中 で の 検 討 (二 次 元 環 境 )か ら、寒 天 培 地 中 で の 検 討 (二 次 元 環 境 )
を行 つ た 。 そ の 結 果 、揮 発 性 ガ ス が 増 殖 抑 制 に 作 用 して い る こ とが 明 らか
とな つ た 。
80
2
材 料 お よび 方 法
(1)使 用 株
″ρ力Z
実 験 1:出 芽 酵 母 は 、 あυ′∂∠ (セ プ チ ン カ ラ ー に 異 常 を 持 つ 株
Z(細 胞 壁 の 安 定 性 に 関 与 す る MPKl遺 伝 子 を 欠 損 し た 株 ん あfZ
(rDNA領 域 の 組 み 換 え が 抑 え られ た 株 sir2∠ (長 寿 遺 伝 子 SIR2
)、
)、
)、
を 欠 損 した 株
)、
/η ゴ∠
(ア ポ トー シ ス に 関 連 す る 遺 伝 子 を 欠 損 し た
株 )を 用 い た 。 そ れ ぞ れ の 株 の
お よび 表
8に 示
Genotypeお
よび 遺 伝 子 の機 能 を表 7
した 。
2 :出 芽 酵 母 は 、 S288C,BY4741,%″ σ∠ ,sο 力θ∠ ,β ο′ゴ∠ ,sο ど2
″メ fZ,ら υグθZ,力 らゴ∠ ,′
,sir2∠ を 用 い た 。
"∠
実験
実験
3:S288Cを
(2)使 用 培 地
実 験 1:SC合
実験
2:同
実験
3:YPD寒
zl,
用 い た。
組 成 は第 二 章
成 培 地 を用 い た 〔
3(2)を
参 照 〕。
上
天 培 地 を 用 い た 。 YPD寒 天 培 地 の 組 成 は 以 下 の 通 り と
した 。
BactO yeast extract(1%)
10g
Bacto peptone(2%)
20g
Glucose(2%)
BactO ager(2%)
20g
20g
上 記 の組 成 を蒸 留 水 に て溶 解 し
しシ ャー レに
(3)培
25 mL加
1000 mLと
した も の を 高 圧 蒸 気 滅 菌
え た。
養条件
10 mLの SC合 成 培 地 を 加 え 、30℃
の 培 養 器 内 に て 振 盪 培 養 した 。播 種 酵 母 数 は 、前 々 培 養 (約 24時 間
お よ び 前 培 養 (約 24時 間 )し た 酵 母 を 8× 104/mL(終 濃 度 )に 調 整
実験
1:100 mL用
の三角 フ ラス コに
)
し培 養 液 に 加 え た 。
実験
2:200 mL用
の三 角 フ ラス コに
30 mLの SC合 成 培 地 を 加 え 、30℃
の 培 養 器 内 に て 振 盪 培 養 した 。 以 下 は 実 験 1と 同 様 と した 。
実験
2:10 mL用
器 内 にて
l mLの SC合 成 培 地 を カロえ 、 30℃ の 培 養
し た 。 細 胞 は 前 培 養 (約 24時 間 )し た 酵 母
の試 験 管 に
12時 間 振 盪 培 養
81
を濁 度
(OD600)0.1に 調 整 し加 えた 。培 養 終 了後 、希 釈 し必 要 個 数 と
した 酵 母 を シ ャ ー レ に加 え 30℃ のふ 卵 器 内 に て 7日 間培 養 した 。
(4)方 法
実 験 1:細 胞 の 増 殖 状 態 を確 認 す るた め に 、濁 度 (OD600)測
定 お よび
細 胞 数 算 定 を行 つ た 。 濁 度 測 定 お よび 細 胞 数 算 定 の た め の サ ンプ リ ン
グ は 、培 養 開 始 か ら 3時 間 お き に
行 つ た。
36時 間後 ま で と、 42,48時 間 後 に
2:死 細 胞 染 色 の た め の サ ンプ リン グ は 培 養 約
1日 後 (対 数 増 殖 後
期 とな る 、S288Cは 24時 間後 、 ァカ″ ∠は 33時 間後 、そ の 他 は 30時
間後 )、 3日 後 、 5日 後 、 7日 後 と した 。 死 細 胞 の 染 色 は 、本 章 第 二 節
実験
の Annexin‐ V+PI+CW(改 良 型 )を 用 い た 。 生 存 細 胞 率 は 、約 500細
胞 算 定 す る 内 に観 察 され るア ポ トー シ ス の 出現 比 率 を素 に 算 定 した 。
実験
3:シ ャ ー レ に加 え る細 胞 数 は 10,100,1000と
した 。 シ ャ ー レの
中央 に 薄 い プ ラ ス テ ィ ッ ク板 を入 れ 、栄 養 供 給 にお け る相 互 作 用 を遮
断 した 。 空 気 層 に つ い て は シ ャ ー レの 蓋 に よ る外 部 との 遮 断 以 外 行 わ
ず 解 放 系 と した 。 これ に 、 10細 胞 ず つ 入 れ る も の 、 10細 胞 と 100細
胞 を入 れ る も の 、10細 胞 と 1000細 胞 を入 れ る も の を 調 整 した 。ま た 、
シ ャ ー レ全 体 に 10細 胞 入 れ る も の と 100細 胞 入 れ る も の を調 整 した 。
シ ャ ー レ に入 れ て か ら 1日 後 か ら 7日 ま で 1日 お き に 観 察 した 。 コ ロ
ニ ー の 大 き さは画 像 解 析 ソフ トを用 い 、最 長 と最 短 を 勘 案 した 平 均 値
と して 求 め た 。重 な っ た コ ロ ニ ー は計 数 対 象 か ら外 した 。1000細 胞 で
の 計 数 は行 わ な か つ た 。
つ4
00
3
結果
(1)実 験 1(老 化 。寿 命 等 に 関連 す る遺 伝 子 に 変 異 を持 つ 株 の 増 殖 状 況
)
ROSの 細 胞 増 殖 に 対 す る影 響 を 調 べ る 際 に用 い た 、 SOD欠 損 株 で あ る
βο″ ∠′θο崚グ は 、対 数 増 殖 後 期 にお け る 増 殖 阻 害 と と も に 、定 常期 長 期 培
養 に お い て 、 ア ポ トー シ ス が 促 進 され CLSも 短 くな つ た (本 章 第 二 節 )。
この よ うに 、 共 通 の ROSス トレス に よ り、 細 胞 増 殖 阻 害 と定 常 期 に お け
るア ポ トー シ ス 促 進 が 観 察 され た 。 この こ とは 、 細 胞 にお い て 、細 胞 増 殖
と分 裂 後 の 寿 命 に相 関 が あ る こ とを示 唆 す る。 これ を 検 証 す る 目的 で 、 老
化 あ る い は寿 命 に 関連 す る変 異 株 (ら ′ご闊 ,ん らゴ∠,sir2△,′ ηゴ∠)を 用 い て 、
細 胞 増 殖 と定 常 期 にお け る生 存 率 に 相 関 が あ るか を調 べ た 。
出芽 部 位 にお け る母 細 胞 か ら娘 細 胞 へ の 細 胞 成 分 の 移 行 は 、能 動 的 且 つ
選 択 的 に行 わ れ る。 しか し ろυご図 で は この 選 択 性 が 損 な われ るた め 、娘 細
RLSが 短 くな り、 母 細 胞 の RLSが 長 くな る (Kaeberlein,2008)。
ゲ ノ ム の 不 安 定 性 も酵 母 の RLSに 大 き く影 響 す る。真 核 生 物 で は 多 数 の
rDNAが 1∼ 数 力 所 に集 中 して 存 在 し、酵 母 で は 12番 染 色 体 の 1カ 所 に 約
150コ ピー 存 在 す る (」 ohnston ο ′.,1997)。 Ettf遺 伝 子 は 、この rDNA
`′
の 転 写・ 複 製 に 関 与 し、 この 遺 伝 子 欠 損 株 んみゴ∠で は rDNA領 域 内 の 相 同
組 換 え が 起 こ らな い こ と、 rDNAの コ ピー 数 の 増 幅 ・ 縮 小 が 起 こ らな い こ
と、 そ して そ の 結 果 と して 、 RLSが 延 び る こ とが 報 告 され て い る。 rDNA
の 相 同組 換 え の 結 果 生 じる rDNAか ら切 り出 され た 環 状 の extra rDNA
胞の
circle(ERC)は 母 細 胞 中 に徐 々 に 蓄 積 す るが 、 この 蓄積 が進 む と細 胞 は
そ れ 以 上 分 裂 で き な くな る。 つ ま り、 ERC生 成 が RLSを 規 定 して い る。
ん″ ∠で は rDNA組 換 えが 抑 制 され 、 ERC生 成 が 抑 制 され 、 そ の 結 果 と し
RLSが 延 長 す る (Kaeberlein
θ
,2005)。 ヒス トン脱 ア セ チ ル 化 酵
`2■
素 で あ る Sirtuinの 遺 伝 子 漁 2を 欠 損 した 株 sir2△ で は 、 逆 に rDNA組
て
換 え と ERC生 成 が 促 進 され て RLSが 短 縮 す る (Sinclair&Guarente.,
らfzl,siF2△の CLS力 `どの よ う│こ な る か は よ く分
1997)。 た だ し、 わ′ど
か ってい ない。
",ル
野 生 株 (BY4741)に 比 べ て 、 い ず れ の 株 も対 数 増 殖 後 期 以 降 に 増 殖 阻
害 が 認 め られ た (図 48)。 一 方 sir2△ とア ポ トー シ ス 実 行 に 関係 す る
caspase遺 伝 子 を欠 損 した 株 yι ′ゴ∠ に 関 して は 、 そ の 差 は少 な い も の で あ
っ た。
対 数 増 殖 後 期 に細 胞 壁 が 破 壊 され た細 胞 を観 察 した こ とか ら、細 胞 壁 維
持 に必 要 な 圏 K■ 遺 伝 子 を欠 損 した 株 ″ρ″ ∠ も用 い た 。 酵 母 で は細 胞 壁
合 成 に 異 常 が 生 ず る と細 胞 周 期 を停 止 す る細 胞 壁 チ ェ ッ ク ポ イ ン ト (the
83
cell wall integrity checkpoint)が 提 唱 され て い る (Levin 2011、 Negishi
&Ohya 2010)。 細 胞 壁 の セ ン サ ー の 一 つ と して は Mid2遺 伝 子 が 報 告 され
て い る (Ketela θ′″ 。
,1999)。 さ ら に 、 細 胞 壁 多 糖 類 の 一 つ で あ る ペ ク チ
ン は カ ル シ ウ ム イ オ ン と複 合 体 を 形 成 す る 。 増 殖 が 進 む と培 地 の
下す るが 、環境 中の
pHは 低
pHが 低 下 す る と 複 合 体 か ら カ ル シ ウ ム イ オ ン が 溶 け
出 て し ま い 細 胞 に 強 い ダ メ ー ジ を 生 ず る と の 報 告 が な され て い る
(Koyama
θ′′ノ
。
,2001)。 対 数 増 殖 後 期 に お い て ″′女ゴ∠ は 強 い 増 殖 阻 害 を
こ れ は 上 記 の よ うな 、 細 胞 壁 の 維 持 が 対 数 増 殖 後 期 の 細
示 した (図 48)。
胞 増 殖 に非 常 に重 要 で あ る こ とを示 す 。
8
7
<-8Y4741
6
+mpk1a
5
§8 ︶拠興
︵
fobl A
4
*-*-* ycal A
3
.
2
*
-
Sir2A
bud6a
1
0
33
36
42
86
42
10.0000
3ミ ∞
〓 ×︶ 輛 里 尋
1.0000
0.1000
0.0100
0.0010
0.0001
0
3
6
9
12
15
18
21
培養 時間
図
48
24
27
30
33
48
(hr)
変 異 ス ポ ッ トが 及 ぼ す 増 殖 へ の 影 響
細 胞 壁 の 安 定 性 遺 伝 子 欠 損 株 ″ρ女ゴ∠に お い て 顕 著 な 増 殖 抑 制 が 認 め ら
れ た。 野 生株
(BY4741)と
比 較 した 場 合 、 い ず れ の 株 も対 数 増 殖 後 期
以 降 に 増 殖 抑 制 が 認 め られ た 。BY4741の デ ー タ は 第 二 章 の 値 を加 え た 。
84
(2)実
2(定
験
常 期 長 期 培 養 に お け る ア ポ トー シ ス と生 存 率 低 下 )
酵 母 の 定 常 期 長 期 培 養 中 の ア ポ トー シ ス と そ の 原 因 を 明 ら か に す る 目
的 で 、 こ れ ま で 用 い て き た 様 々 な 株 に お け る Annexin‐ V‐ PI― CW染 色 を 行
い 、 ア ポ トー シ ス の 発 生 状 況 を 確 認 した 。 さ ら に 、 出 芽 痕 の 観 察 に 第 一 章
2で 記 述 した 細 胞 ス ラ イ ス 法 を 併 用 した 。
図 49は 、S288Cの 培 養 1日 後 、3日 後 、7日
後 に 採 材 した 細 胞 懸 濁 液 よ
り得 た 染 色 像 で あ る (5日 後 の 染 色 像 は 割 愛 した )。 Annexin― Vに よ リア ポ
トー シ ス 細 胞 が 、PIに よ り死 細 胞 が 、CWに よ り出 芽 痕 が 染 色 され て い る 。
桃 色 丸 で 示 した も の が 初 期 タ イ プ の ア ポ トー シ ス と な る 。
S288C l day
3 days
7 days
0
.
ロ
〕
r
、
,O
CW
l-
.<D
o
`
ヽ
図
49
1**O
り 、
a
t
も0
a
定 常 期 長 期 培 養 に よ る死 細 胞 の 発 生 状 況
染 色 は Annexin‐ V(AV)+PI+CWの 二 重 染 色 を 施 し た 。 写 真 は 、 S288C
500細 胞 算 定
し 3日 後 で 約 5倍 、 7
の 培 養 1日 後 、 3日 後 、 7日 後 の 標 本 よ り得 た も の 。 約
中 に 発 生 し た ア ポ トー シ ス は 、 培 養 1日 後 に 対
日後 で 約
35倍 で あ つ た 。
85
定 常 期 長 期 培 養 に お け る 死 細 胞 の 発 生 状 況 を 観 察 した 。 観 察 は 、 培 養 約
(S288Cは 培 養 24時 間 後 、 ″力″ ∠ は 33時 間 後 、 そ の 他 は 30時 間
後 )、 3日 後 、 5日 後 、 7日 後 と し 、 約 500細 胞 中 に 出 現 す る ア ポ トー シ ス
陽 性 細 胞 の 出 現 頻 度 に よ る 生 存 率 に て 判 定 した 。 結 果 を 図 50に 示 し た 。
1日 後
100
0
7
0
6
{-8Y4741
whiSA
0
5
S 冊緯川
<-S288C
'{-
sch9A
0
4
sodl A
0
3
-esE& sod2A
+mpk1A
0
2
*'+** buddA
I fobl A
0
1
. - ycalA
0
sir2A
3 days
l day
5 days
7 days
培 養 日数
図
50
定 常 期 長 期 培 養 に よ る生 細 胞 率 の変 化
糸句 500 細 胞 中 に 出 現 す る ア ポ トー シ ス 陽 性 細 胞 の 出 現 頻 度 に よ る 生 細
胞 率 と して 表 示 した 。
ア ポ トー シ ス を 起 こ した 細 胞 を 死 細 胞 と し 、 定 常 期 長 期 培 養 に お け る 細
胞 の 生 存 率 を 求 め た 。培 養
48)わ ログびZは 、 3日
48時 間 ま で 大 き な 増 殖 抑 制 を 示
さ な か っ た (図
後 、 5日 後 、 7日 後 と 著 し く細 胞 の 生 存 率 が 低 下 し 続
ρ女ゴ∠ も顕 著 な 生 存 率 低 下 を 示 した 。 RLSに 関 し て は 長 寿
“
命 と な る ん bI∠ で も 野 生 型 BY4741よ り短 命 と な っ た 。 同 様 に ア ポ トー シ
けた。 同様 に
ス が 抑 制 され る /θ ′ゴ∠ も 野 生 株 よ り長 寿 命 を 想 定 し た が 、結 果 は 短 命 で あ
つ た 。こ れ に 関 し て は 、同 様 な こ と が 報 告 され て い る (Herker θ′ノ .,2004)。
一 方 、 観 察 中 に 興 味 深 い 像 を 得 た (図 51)。 栄 養 源 飢 餓 時 に は
Gl期 細
胞 が 増 加 す る が 、 わログ例 で は 出 芽 中 の 細 胞 が 多 く 観 察 され 、 さ ら に そ れ ら
出 芽 中 の 細 胞 に お い て ア ポ トー シ ス が 観 察 され た 。 こ の よ うな 傾 向 は 他 の
株 で は 認 め られ な か っ た 。
86
bυ
d64 30 hrs
図
51
mpkl
A
whi1A
30 hrs
5 days
定 常 期 長 期 培 養 に よ る死 細 胞 の 発 生 状 況
染 色 は Annexin… V+PI+CWの 二 重 染 色 を施 した 。 わログθ∠ (30 hrs)に
て 出芽 中 の ア ポ トー シ ス が 多 数 観 察 され た 。
J22′
女ゴ∠ は 早 期 (30 hrs)
に 多 数 の ア ポ トー シ ス を 誘 発 す る。 ″カゴ∠ (5 days)は 娘 細 胞 の ア ポ ト
ー シ ス が 顕 著 で あ っ た。
(3)実
験 3
これ ま で は 細 胞 の 密 度 効 果 に よ る増 殖 へ の 影 響 を 液 体 培 地 中 で の 二 次
元 環 境 で 検 証 して き た が 、 こ れ と比 較 す る 目的 で 寒 天 培 地 中 で の 二 次 元 環
境 で の 検 討 を 行 っ た 。 寒 天 培 地 上 に 細 胞 が 多 く存 在 す る と 、 そ れ ぞ れ の コ
ロ ニ ー が 育 ち 難 い こ と は 経 験 的 に 知 られ て い る 。 そ の 要 因 が 、 養 分 の 取 り
合 い に あ る の か 、 揮 発 性 物 質 を 介 した 細 胞 同 士 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に あ
る の か は 結 論 が 出 て い な い 。 そ れ を 検 証 す る た め に 、 シ ャ ー レー つ に 10
細 胞 、 100細 胞 を そ れ ぞ れ 播 種 し 、 そ の 後 の コ ロ ニ ー の 生 育 を 観 察 した 。
そ の 結 果 、 100細 胞 の も の で は 10細 胞 の も の に 比 べ て 明 ら か に コ ロ ニ ー
の 成 長 阻 害 が 認 め られ た (図 52)。
ま た 、 栄 養 源 補 給 の差 が成 長 に影 響 を
も た ら して い る も の か 検 証 す る 目的 で 、 シ ャ ー レ を 薄 い プ レー トに て 完 全
に 半 分 に 分 断 し 、 栄 養 源 の 干 渉 が な い 環 境 を 整 え (空 気 層 に お い て は 遮 断
され て い な い )、
片側 に
10細 胞 を 播 種
播 種 した 。 そ の 結 果 、 細 胞 数 が 多 い 程
し、 そ の 隣 に
10,100,1000細 胞 を
10細 胞 の コ ロ ニ ー の 生 育 が 阻 害
さ
れ た 。 こ の こ と は 、 酵 母 が 増 殖 し て い く過 程 で 発 生 す る 揮 発 性 物 質 が 、 他
87
の 酵 母 細 胞 の 増 殖 に 悪 い 影 響 を 与 え て い る こ と が 示 唆 され 、 コ ロ ニ ー 数 の
変 化 に よ る コ ロ ニ ー サ イ ズ ヘ の 影 響 は 、 栄 養 源 補 給 よ り揮 発 性 物 質 の 影 響
が 強 い こ と が 考 え られ る 。同 様 な こ と は 、二 次 元 環 境 に お い て も想 定 され 、
密 度 効 果 に よ り も た ら され る 増 殖 へ の 影 響 の 元 凶 の 一 つ か も し れ な い 。
12
12
10
10
8
8
6
6
4
4
2
2
0
100
0
1234567
12
12
10-10(L)
10
10
8
8
6
6
4
4
2
2
0
0
10‐
10
│
]-t-
10(R)
s288c
10-
looo
R
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EE U 回
10-10
-10-10
L
L
10- 1000
-
│
│
│
::互
100
≡
:I≡≡
≡
≡
萱
菫
厖
璽
====
0
3
4
3
5
52
5
平均値の比較
培 養 日数
図
4
寒 天 培 地 中の コ ロニ ー に及 ぼす ガ ス の影 響
コ ロ ニ ー の 大 き さ は 画 像 解 析 ソ フ トを 用 い て 行 つ た 。 重 な つ た コ ロ
ニ ー は 計 数 対 象 か ら外 した 。
88
一 方 、 出芽 酵 母 にお い て 、 窒 素 源 の 制 限 に よ り誘 導 され る酵 母 形 態 か ら
繊 維 状 形 態 へ の 変 換 に ア ンモ ニ ウ ム トラ ン ス ポ ー タ ー が 関 与 して い る
(Lorenz θι′■,1998、 Smith θι′■,2003、 Biswas θι′ヱ,2005)。 この ア
ンモ ニ ウ ム トラ ンス ポ ー タ ー は 1994年 に 出芽 酵 母 と シ ロイ ヌ ナ ズ ナ か ら
遺 伝 子 が 初 め て ク ロー ニ ン グ され た 。 ま た 、 ア ンモ ニ ウ ム トラ ンス ポ ー タ
ー の 通 路 は 、疎 水 性 で あ り NH4+は 通 さず NH3を 選 択 的 に透 過 させ る と推
測 され 、 ア ンモ ニ ウ ム トラ ン ス ポ ー タ ー は ガ ス チ ャネ ル で あ る と提 唱 され
た (Khademi θι′■,2004、 Zheng θι′■,2004)。 さ らに 、 ア ンモ ニ ア が
コ ロニ ー 間 の シ グナ ル 分 子 と して 働 く こ とが提 唱 され て い る (Palkova et
al.,2003)。 出芽 酵 母 にお い て ア ンモ ニ ウ ム が K+チ ャネ ル を介 して細 胞 内
。
に入 る こ とを示 唆 す る報 告 が な され て い る (Hess θι′′
,2006)。 さ らに分
裂 酵 母 で の 報 告 で は あ るが 、3つ の ア ンモ ニ ウ ム トラ ンス ポ ー タ ー (22ι 」
Z,′ ″′ ∠,′ ″′
θ∠)を ノ ッ ク ア ウ トした株 で は 、 低 ア ンモ ニ ウ ム 培 地 に
お け る生 育 が 野 生 株 よ り非 常 に遅 い こ とが 報 告 され て い る (Mitsuzawa,
2006)
89
4
考察
増 殖 に 伴 い 栄 養 源 が 減 少 し、増 殖 活 動 で 生 じた 排 泄 物 が 増 加 す る 対 数 増
殖 後 期 以 降 で は 、す で に細 胞 に とつ て 強 い ス トレス が 始 ま っ て い る と考 え
られ る。 さ らに 、 そ の ス トレス に どれ ほ ど耐性 が あ る か は 、 定 常 期 の 細 胞
濁 度 、 お よび そ の 後 の 長 期 培 養 中 の 細 胞 生 存 率 に も反 映 され る と考 え られ
る。 対 数 増 殖 期 で の 増 殖 速 度 、定 常 期 の 細 胞 濁 度 、 定 常期 7日 後 に お け る
生 存 率 の 三 者 に 相 関 が あ る の か 検 証 す るた め に 、本 章 と第 二 章 で 用 い た 株
の デ ー タ を該 当す る グ ラ フ に ま とめ て 表 示 した (図 53)。
この 内 、 A群
(S288C,BY4741,7カ ″ И)で は 増 殖 状 況 、 生 存 状 況 とも
に 良好 で あ つ た 。 細 胞 が 小 型 で 増 殖 が 遅 れ る ″力″ ∠にお い て も同様 な 傾
r2/1)で は
向 を示 した 。 ま た 、 B群 (sο 力θZl,ろ υどθИ,ん ″ Z,yο ′IИ ,θ ゴ
遅 延 的 に生 存 率 の 低 下 が 認 め られ た 。み″ごθ∠にお い て は 出芽 中 の 細 胞 死 が
多 数 認 め られ 、 他 の株 と比 較 し早 期 に生 存 率 の 低 下 が 認 め られ た 。 C群
′ゴ∠,sα ´ ∠,″′■′∠)で は細 胞 の 消 滅 が 他 の 群 と比 較 して 早 期 に 現
(θ ο
れ 、増 殖 状 況 にお い て も常 に悪 い も の で あ つ た 。 これ らの 違 い は 、 生 息 環
境 に よ る適 応 能 力 の 差 と考 えた 。 と りわ け影 響 を 受 け た株 は ROSに 高感
受 性 の も の で あ り、別 な 見 方 をす れ ば 、ROSが 及 ぼ す 細 胞 へ の ス トレス が
特 に強 い こ とを示 して い る と も い え る。 なお 参 考 の た め 、本 研 究 に用 い た
変 異 株 の ROSと 今 回用 い た 変 異 株 の 変 異 遺 伝 子 との 関係 を 図 54に 示 した 。
90
B
S288C
一
BY4741
一
§8 ︶Ц興
︵
。 wわ ′
54
-SC力
9乙
口 sOdイ 4
- sod24
ツ
o mρ 々′4
日 bυ d“
′ fob′ 4
o ycaイ 4
・ S′r24
21
24
27
培 養 時 間 (hr)
100
A
B
90
80
C
0 0 0
6 5 4
S 掛母畑
S288C
一
― E― BY4741
-● ― w力 ′
54
● scわ 94
-Sο
σ′4
mpkl
A
-E― sOσ 24
-mpた
30
′4
0 0 0
2 1
■ わυd64
゛ fobイ ム
l day
▲
ycaf4
日
siρ△
3 days
培養 日数
5 days
7 days
53
本 研 究 に 用 い た 出 芽 酵 母 の 増 殖 状 況 と生 存 率 の 変 化
上 段 に 第 二 章 、 第 二 章 に て 用 い た 出 芽 酵 母 の 増 殖 状 況 を 示 す (US356
は 割 愛 )。 大 き く分 け て 3つ の パ タ ー ン と な っ た (矢 印 )。 下 段 に こ の
図
パ タ ー ン に よ る 色 分 け を加 え た 生 存 率 で の 比 較 を 示 す 。A群 で は 増 殖 状
況 、生 存 状 況 と も に 良 好 で あ つ た 。B群 で は 遅 延 的 に 生 存 率 の 低 下 が 認
め られ た 。 C群 で は 早 期 に 生 存 率 の 低 下 が 認 め られ た 。
91
←
M b卜
呻
上
︱国
l ψ
―嘔
″
イ
“
“
胤l需 :電
aged
Bud6-septin barier
DNA, protein and lipid
54
︲
a︰
上一
︲
C
Y
図
本 研 究 に用 い た株 の 作 用 点
″″ ゴ∠ ,Sθ ごゴ∠ ,sθ ご2∠ ,yθ ′ゴ∠ ,sir2∠ ,わ υごδ∠ の
作 用 点 を示 す 。
92
第 四節
1
出 芽 抑 制 お よ び細 胞 死 を誘 発 す る物 質 の 特 定
は じめ に
第 一 節 に て 栄 養 源 飢 餓 に よ る影 響 、 第 二 節 にて 活 性 酸 素 に よ る影 響 、第
二 節 に て 密 度 効 果 /そ の 他 に よ る影 響 に つ い て 記 述 した 。 第 一 節 で は グル
コ ー ス に起 因 した 阻 害 物 質 が 存 在 して い る こ とを示 した 。 第 二 節 で は活 性
酸 素 が 増 殖 抑 制 に 強 く影 響 し、細 胞 死 も誘 発 す る こ とを示 した 。 第 二 節 で
は老 化 、寿 命 関連 遺 伝 子 を欠 損 した 変 異 株 で は短 命 で あ る こ と、 細 胞 構 築
に 関与 す る 鬱
K■ 遺 伝 子 を欠 損 した 変 異 株 にお い て 、早 期 に ア ポ トー シ ス
が 誘 発 され る こ とを示 した 。
本 節 で は 、 こ れ ま で の 検 討 に て 得 られ た 現 象 、す な わ ち対 数 増 殖 中期 か
ら定 常 期 にお け る娘 細 胞 の 連 続 的 な 増 加 、 一 過 性 の 老 齢 細 胞 の 死 、 長 期 定
常 期 培 養 にお け る娘 細 胞 と老 齢 細 胞 の ア ポ トー シ ス 、 これ らを誘 発 す る原
因物 質 の 特 定 を 目的 に 検 証 を加 えた 。検 証 は 、培 養 1日 目お よび 6日 目の
細 胞 懸 濁 液 を用 い 、 そ の上 澄 み 液 (酵 母 培 養 上 清 )お よび 酵 母 細 胞 を抽 出
/分 画 した 画 分 か ら、 出芽 抑 制 を促 す 物 質 お よび 細 胞 死 を 誘 発 す る物 質 の
特 定 を試 み た 。評 価 は 、抽 出液 を添 加 した 場 合 で の 増 殖 性 (濁 度・ 細 胞 数 )
へ の 影 響 、娘 細 胞 出現 頻 度 (出 芽 抑 制 の 確 認 )、 ア ポ トー シ ス 発 生 頻 度 (細
胞 死 誘 発 の 確 認 )に て 行 つ た 。 そ の 結 果 、特 定 の 分 画 中 に 出芽 抑 制 お よび
細 胞 死 を 誘 発 す る活 性 を も つ も の が 存 在 し、活 性 物 質 の 同 定 が 可 能 で あ る
こ とを 見 出 した 。
93
2 材 料 お よび 方 法
(1)使 用 株
出芽 酵 母 は
を表
S288Cを 用 い た 。 S288Cの Genotypeお
よび 遺 伝 子 の 機 能
7お よび 表 8に 示 した 。。
(2)使 用 培 地
SC合 成 培 地 を用 い た
〔
組 成 は 第 二 章 3(2)を 参 照 〕。
(3)培 養 条 件
抽 出 /分 画 の た め の 培 養
成培地 に
:2,000 mL(三
角 フ ラ ス コ に小 分 け )の
S288Cを 加 え 、 30℃ の 培 養 器 内 に て
SC合
1日 お よび 6日 間 振 盪
培 養 した 。抽 出 /分 画 の た め に用 い た 培 養 液 量 は 、1日 培 養 が 870 mL、
6日 培 養 が 950 mLと した 。
実 験 1:原 因物 質 を特 定 す る初 期 ス ク リー ニ ン グ と して 実 施 した 。20 mL
用 の 試 験 管 に 2 mLの SC合 成 培 地 を加 え 、 30℃ の 培 養 器 内 に て振 盪
培 養 した 。播 種 酵 母 数 は 、前 培 養 (約
22時 間 )し た 酵 母 を濁 度 (OD600)
01に 調 整 し加 えた 。
実験
2:原 因 物 質 を 詳 細 に セ レ ク トす るた め に 実 施 した 。 20 mL用 の 試
2 mLの SC合 成 培 地 を加 え 、 30℃ の 培 養 器 内 に て 振 盪 培 養 し
た 。 播 種 酵 母 数 は 、 前 培 養 (約 22時 間 )し た 酵 母 を 1× 106/mLに 調
験管 に
整 し加 えた 。
(4)抽 出 /分 画 液 の 採 取
(図 55)
。1日 お よび 6日 間 振 盪 培 養 した 細 胞 懸 濁 液 を遠 心 分 離 し、上 澄 み 液 (酵
母 培 養 上 清 )と 酵 母 細 胞 に 分 離 した 。
〔酵 母 培 養 上 清 か ら の 抽 出 /分 画 〕
・ 酵 母 培 養 上 清 を等 量 分 配 (各 435 mL)し 、 そ の 一 方 を 、 分 液 漏 斗 を
用 い て ヘ キ サ ンで 液 ―液 分 配 した 後 、 酢 酸 エ チ ル で 液 ―液 分 配 した 。
得 られ た ヘ キサ ン 可溶 部 、 酢 酸 エ チ ル 可溶 部 を エ バ ポ レー タ ー に よ つ
て 減 圧 乾 固す る こ とで 、 ヘ キ サ ン層 、酢 酸 エ チ ル 層 を得 た 。 水 可 溶 部
は 凍 結 乾 燥 に供 しt濃 縮 し水 層 を 得 た 。
・ も う一 方 は 、 凍 結 乾 燥 後 、 Spectra/por 3 Dialysis Membrane MWCO:
3500の 透 析 膜 を用 い て 一 晩 透 析 (二 回 )し た 。 この 透 析 膜 に よ つ て 分
子 量 3500以 上 の 化 合 物 と以 下 の 化 合 物 を 分 離 した 。
94
〔
酵 母 細 胞 か ら の 抽 出 /分 画 〕
・ 酵 母 細 胞 を等 量 分 配 し、 そ の 一 方 を、 固 ―液 分 配 で ヘ キ サ ン層 、 酢 酸
エ チ ル 層 に 分 取 した 。 ま た 、両 層 に 含 まれ な い も の を残 湾 Aと して 分
取 した 。
・ も う一 方 は 、 凍 結 乾 燥 後 、 酵 母 培 養 上 清 と同 じ透 析 膜 を用 い て 透 析 を
3500以 上 と以 下 の 物 質 を 分 離 した 。 た だ し、 3500以 上
の 画 分 の 一 部 に不 溶 物 が 認 め られ た た め 、遠 心 分 離 しこれ を残 澄 Bと
行 い 、分 子 量
した 。
(5)抽 出 /分 画 液 の 処 理
実 験 1:抽 出 /分 画 液 の 処 理 濃 度 は 、 終 濃 度 2%と
した 。 濃 度 設 定 は 溶
媒 と して 用 い た dimethylsulfoxide(DMSO)の 毒 性 を 勘 案 し設 定 した 。
実 験 1は 初 期 ス ク リー ニ ン グ と して 実 施 し、22の 全 て の 画 分 に つ い て
行 つ た 。 各 画 分 お よび 用 い た溶 媒 は 以 下 と した 。 抽 出 /分 画 液 は 培 養
開始 時 に処 理 した 。
酵母 細胞
酵母培養 上清
1‐
1‐
1‐
1‐
1‐
2‐
2‐
2‐
2‐
2‐
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
水層
3‐
(H20)
M.W.3500以
M.W.3500以
ヘ キ サ ン層
3‐
上
下
(H20)
(H20)
3‐
3‐
(DMSO)
酢 酸 エ チ ル 層 (DMSO)
ヘ キ サ ン層
水層
1
(DMSO)
3-2 酢 酸 エ チ ル 層 (DMSO)
3 残 澄 A (H20)
4 M.W13500以 上 (H20)
5 M.W.3500以 下 (H20)
6 残 澄 B(H20)
4-1 ヘ キ サ ン 層 (DMSO)
4-2 酢 酸 エ チ ル 層 (DMSO)
4-3 残 澄 A(H20)
4 MW.3500以 上 (H20)
(DMSO)
酢 酸 エ チ ル 層 (DMSO)
ヘ キ サ ン層
3‐
(H20)
MoW.3500以 上 (H20)
M.W.3500以 下 (H20)
4‐
4-5 M.W.3500以 下 (H20)
4-6 残 澄 B(H20)
実験
2‐
2:実 験 1に て 増 殖 阻 害 効 果 が 認 め られ た
1‐
1,1‐
2,1-3,1-5,2‐
2,
3,2-5に つ い て さ らに詳 細 な 解 析 を した 。 培 養 開始 時 に各 画 分 を 終
濃度
2%で 添 カロした 。 た だ し、 細 胞 毒 性
(増 殖 阻 害 )が 強 く認 め られ
た 画 分 2-3,2-5に つ い て は 、1.0,0.5,0.1%濃 度 を追 加 した 。そ の 結 果 、
2‐
3に お い て は 01%、
2‐
5に お い て は 1.0%が 至 適 な 濃 度 と判 断 され
95
た た め 、 こ の 濃 度 に お け る確 認 を 行 つ た 。
(6)濁
度 、 細 胞 数 、 出 芽 抑 制 な らび に 細 胞 死 誘 発 の 確 認
濁 度 (OD600)、 細 胞 数 の 確 認 は 、培 養 後
4時 間 毎 に 行 っ た 。出 芽 抑 制 は 、
500細 胞 中 に 含 ま れ る 娘 細 胞 の 出 現 比 率 に よ り算 出 した 。細 胞 死 の 誘 発 は 、
500細 胞 中 に 含 ま れ る ア ポ トー シ ス 細 胞 の 出 現 比 率 に よ り算 出 した 。 出 芽
痕 の 染 色 お よ び ア ポ トー シ ス の 染 色 は 、 本 章 第 二 節 の Annexin‐ V+PI+CW
の二重 染 色 改 良法 にて行 つた。
培養 1日 目酵母培養 上 清
1′
2′
酵母培養上清 (950 mL)
酵母培養上 清 (870 mL)
435 mL
435 rnL
(2
培養 6日 目酵母培養 上 清
475 rnL
475 rnL
)東 結乾 燥
i
i
500 mL)X2
凍結乾燥
運
l
:
冒
_」L」 illttl×
M.W.
M.W.
「
3500以 上 3500以
凍 結 乾 燥 EtOAC層
-2)
│ (38.l mg′ ■
水層
(1‐ 3)
鷺
っ眈
り
2
の化合物
{46.2 mg)
14
に9656J
下
の化合 物
a3m6η
」
相 「
(2.2322g)
酵早細胞
遠心分離
(10000g′ 10 min)
EtOAC層
残漕B M.W.
{421.l mg)3500以 上
の化合物
3‐ 6
親
」
_」 illLttL×
「
遠心 分離
M. W.
3500以 下
M・ W・
3500以 下
の化合物
(273.l mg)
(142.7 mg)
3‐
男が査A
5
EtOAC層
(1.1454g)(7.4 mg)
4‐ 3
4‐ 2
残澄B
M.W.
4‐
5
{946.8 mg)3500以 上
4‐
6
の化合物
{45.6 mg)
34
55
2
の化 合物
{71.O mg)
図
培養 6日 目酵母細胞
2.2541g
:
3‐ 2
5
:
:
3‐ 3
2‐
凍結乾燥
1.6120g
残 澄A
24
酵早細胞
凍結乾 燥
{0.7156g){25.3 mg)
M. W.
3500以 下
)
{3.2829g)
4′
上
離銚)8.多群
│{を
1‐ 5
培養 1日 目酵母細胞
3′
3500以
凍結乾燥 EtOAC層
44
抽 出 /分 画 の 流 れ 図
1日 お よ び 6日 間 培 養 した 細 胞 懸 濁 液 を 、酵 母 培 養 上 清 と 酵 母 細 胞 に 遠 心 分 離 し 、
酵 母 培 養 上 清 か ら ヘ キ サ ン 層 、酢 酸 エ チ ル 層 、水 層 、分 子 量 3,500以 上 と 以 下 の
化 合 物 を 得 た 。 ま た 、 酵 母 細 胞 か らヘ キ サ ン 層 、 酢 酸 エ チ ル 層 、 分 子 量 3,500
以 上 と 以 下 の 化 合 物 な らび に 残 澄 を 得 た 。 合 計
96
22の 画 分 を 得 た 。
3 結果
(1)実 験 1(濁 度 へ の 影 響
)
酵 母 培 養 液 を 、遠 心 分 離 に よ り酵 母 細 胞 お よび 培 養 液 上 清 に 分 け た 。 そ
の 後 、そ れ ぞ れ を 抽 出 /分 画 し 22の 画 分 を得 た (図
水 も し くは
55)。
そ れ らの 画 分 は
DMSOに 再 懸 濁 した 。 そ の そ れ ぞれ を 、 前 培 養 した 細 胞 に加
え 〔
終 濃 度 2%(v/v)〕 、そ の 後 の 増 殖 過 程 (濁 度 )を 調 べ た 。作 業 仮 説 と し
て 、 出芽 抑 制 お よび 細 胞 死 を もた らす 活 性 物 質 が そ の 画 分 に あれ ば 増 殖 が
阻 害 され る は ず で あ る と考 え た 。 そ の 結 果 、溶 媒 対 照 と比 較 して 増 殖 抑 制
が 認 め られ た も の は 、 酵 母 培 養 上 清 の 培 養 1日 目の ヘ キ サ ン層 (1‐ 1)、 酢
酸 エ チ ル 層 (1‐ 2)、 水 層 (1-3)、
酸 エ チル 層 (2-2)、 水 層 (2‐ 3)、
MoW.3500以
下 (1-5)と 培 養 6日 目の 酢
MoW3500以 下 (2-5)で
あ り、 全 て 酵 母
培 養 上 清 に あ つ た 。 中 で も、 1-1,2-3,2‐ 5は 強 い も の で あ っ た (図 56)。
一 方 、酵 母 細 胞 (ア ポ トー シ ス に て 死 滅 した 細 胞 も含 まれ る )か らの 画 分
中 に は 、増 殖 阻 害 を起 こす 活 性 は認 め られ な か つ た 。
(2)実 験 2(出 芽 抑 制 お よび 細 胞 死 の 誘 発
実 験 1で 絞 り込 ん だ 画 分
1‐
)
1,1‐ 2,1-3,1-5,2-2,2‐
3,2-5に つ い て 、 さ
らに詳 細 な 検 討 を加 え た 。 1‐ 1,1‐ 2,1‐ 3,1‐ 5,2‐ 2に つ い て は 、 実 験 1と 同
2%に 設 定 して 行 つ た 。2-3お
5に 関 して は 、実 験 1で
強 い 毒 性 が 認 め られ た た め 、 2‐ 3に つ い て は 0.1%、 2-5に つ い て は 1.0%
様 に終 濃 度 を
よび
2‐
で 確 認 した 。 そ の 結 果 、 実 験 1と 同様 に全 て の 画 分 に お い て 濁 度 の 低 下 が
認 め られ た 。 ま た 、細 胞 数 の 減 少 も認 め られ た (図 57)。 培 養
12時 間後 に
Annexin― V+PI+CW染 色 し、娘 細 胞 出現 率 に よ る 出芽 抑 制 の 確 認 、 ア ポ ト
ー シ ス 細 胞 の 出現 率 に よ る細 胞 死 誘 発 の 確 認 を行 っ た 。 そ の 結 果 、 ア ポ ト
ー シ ス 出現 率 に つ い て は 図 59Aに 示 す よ うに 、画 分 1‐ 3お よび 2‐ 3に 強 い
58に 示 した )。 娘 細
胞 出 現 率 にお い て は 図 59Bに 示 す よ うに 、 1‐ 2,1-3,1‐ 5が 特 に強 く、 2-3,
誘 発 作 用 が 認 め られ た (代 表 的 な細 胞 死 誘 発 画 像 を図
2-5も 弱 い な が ら影 響 され て い た 。細 胞 周 期 へ の 影 響 にお い て は 図
示 す よ うに 、 1‐ 1,2‐ 3で
S期 細 胞 の 割 合 が 増 加 した 。
97
59Cに
§8 ︶撻興
︵
-0-1‐ lD
引蟄峰 1-2D
― 酵母培養 上 清 (1日 後 )
-1-3H
+1-4H
゛ 1-5H
DMSO
一
―o― H20
0
10
-2-lD
一哺
憂… 2-2D
-2-3H
.-2-4H
8
6
― 酵母培養 上 清 (6日 後 )
―七作
◇
2-5H
DMSO
一
―o― H20
4
2
0
0
4
10
丁甘■L
8
6
4
2
0
8
12
16
20
-0-3… lD
3-2D
-3‐ 3H
+3-4H
‐
―
・
ン ー3-5H
ム 3-6H
DMSO
一
H20
―
L」
一 酵母細胞 (1日 後 )
04812162
10
8
6
4
-4-lD
―
B-4‐ 2D
3H
-4‐
―E-4‐ 4H
―くトー4‐ 5H
▲ 4‐ 6H
DMSO
一
―●― H20
― 酵母細胞 (6日 後 )
2
0
8
12
培 養 時 間 (hr)
図
56
各 画 分 の 増 殖 濁 度 へ の 影 響 。 酵 母 培 養 上 清 か ら得 た
細 胞 か ら得 た
10画 分 お よ び 酵 母
12画 分 の 増 殖 濁 度 へ の 影 響 を示 す 。 溶 媒 と比 較 し濁 度 の 低 下 が あ
る 場 合 、 出 芽 抑 制 あ る い は 細 胞 死 が あ る も の と推 察 す る 。
98
日 1-52.00/。
3 2 1
§8 ︶撻唄
︵
-0-1-12.0%D
1-22.0%D
・1-32.0%H
…
―
H
-2-22.0%D
-2-3
0.10/OH
―▲.2-51.0%H
DMSO
―
H20
―
0
︵
崚日
黙m
幸
コE\∞
〇一× ︶ 一
1.000
2.0%D
2.0%D
2.0%H
日 1-5 2.0%H
2.0%D
-2-2
A 2‐ 51.0%H
‐●DDMSO
H20
―
-1-1
-1‐
-1-3
0.100
2
0.010
4
培 養 時 間 (hr)
図
57
各 画 分 の 増 殖 濁 度 お よび 細 胞 数 へ の影 響
.
酵 母 培 養 上 清 か ら得 た
7画
分 の 増 殖 濁 度 へ の 影 響 お よ び 細 胞 数 へ の 影 響 を 示 す 。溶 媒 と比 較 し 、い ず れ の 画
分 も濁 度 ・ 細 胞 数 と も に 低 下 が 認 め られ た 。
﹁ 引
/
0
2 ご H
1… 3
′
図
58
代 表 的 な細 胞 死誘 発 画像
.
緑 色 が 強 い 細 胞 は 初 期 ア ポ トー シ ス 、 橙 色
は 終 期 ア ポ トー シ ス 、赤 色 は ネ ク ロ ー シ ス 、青 色 は 出 芽 痕 を 形 成 す る キ チ ン 質 が
染 ま っ て い る 。 左 の 溶 媒 に 対 し、 右 の 1-3(培 養 1日 目 の 水 層 )で は 約 8 倍 の ア
ポ トー シ ス が 誘 導 され て い る 。
99
A
Apoptosis
%"
■8.0
■6.0
■4.0
■2.0
■0.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
B
2-5
DMSO Water
2-5
DMSO Water
〔娘 /全 細 胞 〕%
85.0
80.0
75.0
70.0
65.0
60.0
55.0
50.0
2-2
.
∞
5.
9
。.
9
G
5.
8
。.
8
5.
7
。.
7
5.
6
。.
6
5.
5
。.
5
2-5
図
度
59
各 画 分 の 出 芽 抑 制 お よび 細 胞 死 誘 発 へ の 影 響 .
(A)に
2‐
Water
ア ポ トー シ ス の 出 現 頻
よ り細 胞 死 の 誘 発 を 、 全 細 胞 数 に 占 め る娘 細 胞 の 比 率
芽 抑 制 を 、各 細 胞 周 期 細 胞 の 比 率
お よび
DMSO
(C)か
(B)に
よ り出
ら細 胞 周 期 へ の 影 響 を 調 べ た 。画 分 1-3
3に 強 い ア ポ トー シ ス 誘 発 作 用 が 認 め られ た 。娘 細 胞 出 現 率 に お い て は 、
1-2,1‐ 3,1‐ 5が 特 に 強 く、 2‐ 3,2… 5も 弱 い な が ら影 響 され て い た 。 細 胞 周 期 へ の
影 響 で は 、 1-1,2‐ 3で
S期 細 胞 が 増 加
した 。
100
4
考察
第 二 章 で 認 め られ た 、少 子 化 パ ラ ドック ス 、 セ パ レー シ ョン 、選 択 的 細
胞 死 を 誘 導 す る物 質 の 特 定 に 向 け て 、培 養 後 の 細 胞 懸 濁 液 の 画 分 を用 い て
出芽 抑 制 お よび 細 胞 死 を 誘 発 す る活 性 を 測 定 した 。 最 終 的 な物 質 の 特 定 に
は 至 っ て い な い が 、 そ の 候 補 とな る画 分 を い くつ か 見 出 した 。 中 で も、 酵
母 培 養 上 清 を ヘ キ サ ン と酢 酸 エ チ ル に て 抽 出 /分 画 した 後 に 得 られ る水
層 にそ の 原 因 物 質 が 含 ま れ て い る可 能 性 が 強 く示 唆 され た 。 ま た 、分 子 量
3500以 下 の 物 質 の 中 も疑 われ た 。 ア ポ トー シ ス に つ い て は 培 養 6日 目の
酵母培養 上清
養上清
(1‐
(2‐
3)で 最 も強 い 作 用 を示 し、 次 い で 培 養
1日 目の 酵 母 培
3)が 強 い も の で あ つ た 。 これ は 同様 な物 質 が 作 用 し、そ の 強 弱
は 、 定 常 期 培 養 の 進 行 に 伴 う蓄 積 量 の 差 に よ る の か も しれ な い 。 一 方 、分
子 量 3500以 下 の 画 分 (1‐ 5,2‐ 5)で は 娘 細 胞 出現 率 が 高 い も の で あ つ た 。
特 に 、 培 養 1日 目の 画 分 にお い て そ の傾 向 が 強 い も の で あ っ た 。
これ ら の こ とか ら、 出芽 抑 制 を示 す 原 因物 質 は 分 子 量
3500以 下 の 画 分
に 、 ま た 細 胞 死 を 誘 発 す る物 質 は水 層 に あ る も の と推 察 す る。 さ らに 、分
画 中 にそ の 活 性 が 失 われ な か つ た こ とか ら比 較 的 安 定 性 の 高 い 物 質 で あ
る こ と、水 溶 性 の 物 質 で あ る こ と、分 画 後 の 溶 媒 除 去 過 程 に も失 わ れ な か
った こ とか ら揮 発 性 物 質 で あ る可 能 性 が 低 い こ と、 な どが 示 唆 され た 。
一 方 、 多 細 胞 生 物 にお け るア ポ トー シ ス は 、組 織 /個 体 の た め の 計 画 的
な細 胞 死 とな る。 これ に対 し、 単 細 胞 生 物 で は 、個 の 集 団 を組 織 と して捉
え るか 、 そ れ と も単 な る集 ま り と考 え る か で 、 そ の 解 釈 が 大 き く異 な る 。
単 な る集 ま り と考 え た 場 合 、計 画 的 な細 胞 死 は 存 在 しな い こ と とな る 。 し
か しな が ら、 ア ポ トー シ ス の 発 現 /進 行 機 序 は 多 細 胞 生 物 と同様 で あ り、
組 織 的 な 反 応 と解 釈 す る こ とが で き る。 ま た 、 同 じ く単 細 胞 生 物 で あ る粘
菌 の 行 動 パ タ ー ン を見 る と、驚 くほ どの 統 制 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン が な さ
.,2006)。 さ
れ て い る こ とが 分 か る (Smirnov et al.,2005、 Schaap θι′′
らに 、 出芽 酵 母 にお い て も、 ア ンモ ニ ア が コ ロ ニ ー 間 の シ グナ ル 分 子 と し
て 働 き 、寒 天 培 地 上 にお け る細 胞 増 殖 抑 制 に 関与 して い る こ とが 報 告 され
て い る (Palkova θ′′ム,2003)。
これ らの 事 か ら、 出芽 酵 母 に お い て も組
織 的 な 対 応 が な され て い る も の と考 え 、 ア ポ トー シ ス に 関 して も、 これ ま
で に 報 告 は な され て い な い も の の 、 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン を担 う物 質 が 存 在
す る の で は な い か と考 え る。
本 実 験 にお い て 、 ア ポ トー シ ス を誘 導 す る活 性 を持 つ 物 質 は 、培 養 液 上
101
清 に 存 在 し、細 胞 画 分 に は 存 在 しな い こ とが 明 らか とな つ た 。 ア ポ トー シ
ス が盛 ん に進 行 して い る培 養 6日 後 にお い て も同様 で あ っ た 。 ア ポ トー シ
ス を起 こ した 細 胞 の 細 胞 内容 物 は 培 地 中 に 放 出 され る (そ れ が 残 りの 生 細
胞 の 栄 養 に積 極 的 に使 われ る と考 え られ て い る )。 培 地 中 の ア ポ トー シ ス
誘 導 活 性 物 質 の 濃 度 と 、そ れ に よ り誘 導 され る死 細 胞 の 数 に は 相 関 関係 が
あ る と期 待 で き る。 加 えて 、最 終 的 に は 、 あ る一 定 の 割 合 の 細 胞 は 生 き残
らな くて は な らず 、 ど こか で ア ポ トー シ ス が 終 燎 す る よ うな機 構 を有 して
い る と期 待 で き る。 ア ポ トー シ ス 誘 導 活 性 物 質 が 、 生 細 胞 か ら培 地 中 に 分
泌 され た も の か 、 ア ポ トー シ ス で 死 ん だ細 胞 の 内容 物 由来 の も の で あ る の
か は 現 在 の と こ ろ 明 らか で は な い 。 前者 の 場 合 、 生 細 胞 か らそ の 物 質 の 産
生 ・ 分 泌 が 徐 々 に進 行 し、 培 地 中 に 蓄 積 し続 け る こ とで濃 度 が 上 昇 し、 細
胞 死 が 誘 導 され る こ とが 想 定 され る 。 この 場 合 、 定 常 期 が 長 期 化 す れ ばす
る ほ ど生 細 胞 の 数 が 減 少 し、 ア ポ トー シ ス 誘 導 物 質 の 濃 度 の 下 が り、結 果
と して 細 胞 死 の 誘 導 も抑 制 され 、 あ る 一 定 割 合 の 細 胞 が 生 き延 び る こ とが
期 待 され る。 一 方 、後 者 の 場 合 、 死 細 胞 が 増 えれ ば 増 え る程 、集 団 中 の 細
胞 の ア ポ トー シ ス が加 速 度 的 に促 進 され 、 生 細 胞 が残 れ な い こ とが 予 想 さ
れ る。 これ らを考 え 合 わせ る と、 生 細 胞 か ら分 泌 され た物 質 で あ る可 能 性
が 高 い も の と考 え られ る。
い ず れ の 場 合 に して も、分 裂 年 齢 ご とに そ れ に対 す る感 受 性 が 異 な るた
め 、分 裂 年 齢 ご と の 細 胞 の ア ポ トー シ ス に 関す る振 舞 い 方 が 異 な っ て い る
と考 え られ る。 今 後 の 研 究 に よ り物 質 が 同 定 され れ ば 、 そ の 現 象 とそ の 機
構 の 解 明 が 大 き く進 展 し、 研 究 上 の イ ン パ ク トは 非 常 に 高 くな る。 現 在 、
活 性 の あ つ た 画 分 を さ らに細 か く分 画 して い る と こ ろ で あ るが 、 い ず れ は
原 因 とな る物 質 の 同定 を した い と考 えて い る。
0々
nυ
章
終
総括
103
1
結論
20世 紀 が 物 理 学 や 化 学 の 時 代 だ つ た とす れ ば 、 21世 紀 は正 に生 物 学 の
時代 だ とい え る。 特 に 、 ゲ ノ ム の 解 析 が な され て か らは 爆 発 的 な進 展 が な
され 、 と りわ け生 命 科 学 へ の 期 待 が 大 き い 。 ま た 、 生 物 学 へ の ア プ ロー チ
の 方 法 に つ い て も、 これ ま で の 実 験 科 学 的 手 法 の み で は な く、数 理 解 析 に
よ る シ ミ ュ レー シ ョン 分 析 も盛 ん に行 われ る よ うに な っ て きた。 中 で も生
態 学 は 、数 理 的研 究 が 最 も進 ん だ 分 野 とい え 、 Lotka― Volterra方 程 式 に代
表 され る よ うな 数 理 モ デ ル の 理 論 が 定 式 化 され 、 フ ィ ー ル ド研 究 の 推 進 に
指 針 を与 え て き た 。 さ らに 、1970年 代 に入 つ て か らは 、行 動 生 態 学 に お け
る最 適 化 理 論 、 ゲ ー ム 理 論 な どが研 究 され 、実 験 科 学 的 手 法 で は 答 え を得
る こ とが 困難 な事 象 に つ い て も成 果 を あ げ て き た 。
本 研 究 で は 、 出芽 酵 母 の 増 殖 に 伴 う世 代 構 成 の 変 動 確 認 を生 態 学 の一 部
と して 捉 え 、 そ の 挙 動 を実 験 と理 論 とで 比 較 した 場 合 で の 、数 理 解 析 の 可
能 性 を確 認 す る こ とを主 の 目的 と して 行 つ た 。 実 験 に よ る解 析 にお い て は 、
これ ま で の 実 験 手 技 を大 幅 に 改 良 し、算 定 漏 れ が ほ とん どな く、 か つ 評 価
した 像 の 保 存 性 を 確 保 す る方 法 を確 立 した 。 ま た 、 この 手 法 を用 い る こ と
で 精 度 の 高 い 解 析 が 可 能 とな つ た 。
第 二 章 に示 した よ うに 、 泰 中 らが 報 告 した 格 子 気 体 モ デ ル に Three‐
stageモ デ ル を拡 張 した 方 法 は 、 実 験 結 果 の 再 現 シ ミ ュ レー シ ョン に 有 効
に機 能 した 。 ま た 、 実 験 結 果 と数 理 予 測 とに ズ レが 生 じた が 、 こ の ズ レの
原 因 を細 胞 消 滅 と仮 定 し、 モ デ ル に細 胞 消 滅 条 件 を加 え た と こ ろ 、 実 験 値
と理 論 値 とに近 似 を 得 る こ とが で き た 。 そ の 結 果 と して 、0.8%未 満 とい う
実 験 で は確 認 す る こ とが 困難 な低 い レベ ル で の 細 胞 消 滅 の 出現 を捕 え る
こ とが で き た 。 ま た 、 この 結 果 を加 味 して 詳 細 な 実 験 を行 つ た と こ ろ 、 同
様 な細 胞 消 滅 が 確 認 で きた。 さ らに 、増 殖 に 伴 うア ポ トー シ ス の 発 生 状 況
を確 認 した とこ ろ 、第 二 章 に示 した よ うに 、活 性 酸 素
(ROS)が
大 き な影
響 を示 して い る こ と、 ま た そ の 影 響 を さ らに強 め る要 素 と して 、 MAPキ
ナ ー ゼ 1に 起 因 した 細 胞 膜 の 不 均 衡 な状 態 が 存 在 して い る こ とが 強 く示 唆
され た 。 さ らに 、そ の
MAPキ ナ ー ゼ
1に 対 す る影 響 も ROSが 関 与 して い
る こ とが 予 測 され た も
ま た 、 これ ま で に行 われ て き た 酵 母 の 寿 命 確 認 方 法 に つ い て は 、 分 裂 寿
命
(RLS)で 個 の ポテ ン シ ャ ル と して の 寿 命 を 、 経 時 的 寿 命 (CLS)で 集
団 と して の 寿 命 が 確 認 され て きた。 しか しな が ら、集 団 内 で の 個 の 寿 命 に
104
つ い て は不 明 の ま ま で あ っ た 。 本 研 究 で は 、集 団 内 で の 世 代 構 成 を緻 密 に
分 析 す る こ とで 、 ス テ ー ジ 毎 の 影 響 確 認 を よ り詳 細 に 観 察 す る こ とを可 能
と した 。 さ らに 、 細 胞 死 を形 態 学 的 に確 認 す る方 法 と して 、 これ ま で 行 わ
れ て き た ア ポ トー シ ス 染 色 に よ る 分 染 と形 態 学 的 特 徴 に よ る 分 類 に加 え 、
出芽 痕 を染 め る染 色 法 を重 ね る こ とで 、 ス テ ー ジ 毎 の ア ポ トー シ ス・ ネ ク
ロー シ ス の 特 定 も可能 とな つ た 。 こ の こ とか ら、本 研 究 に よ つ て モ デ ル 生
物 と して の 出芽 酵 母 の 役 割 が さ らに深 ま っ た も の と考 え る。
一 方 、 い ま 一 つ の 研 究 目的 と した 、密 度 効 果 を示 す 物 質 の 特 定 に つ い て
は 、炭 素 源 で あ る グ ル コー ス 由来 の 代 謝 産 物 を想 定 して い た が 、 現 時 点 に
お い て そ の 証 拠 を 得 る に は 至 っ て い な い 。 実 験 に さ らな る 工 夫 を加 え る こ
と と、 窒 素源 を 涸 渇 す る こ とで 一 過 性 の 出芽 が 現 れ 、 そ の 後 停 止 状 態 に な
る との 報 告 が あ る こ とか ら、 窒 素 源 に よ る影 響 も重 ね て 検 討 す る必 要性 を
感 じた 。 ま た 、 二 次 元 環 境 (寒 天 培 地 上 )に よ る検 討 に お い て ガ ス 状 物 質
(具 体 的 に は ア ンモ ニ ア を想 定 )が 明 らか に 増 殖 阻 害 を示 す こ とを 観 察 ・
確 認 した 。 二 次 元 環 境 (培 養 液 中 )に お い て も 同様 な代 謝 産 物 が 影 響 して
い る こ と も考 え られ る。 さ らに 、 物 質 を特 定 す る 目的 で 培 養 1日 日、 6日
日の 細 胞 懸 濁 液 を 素 に 、 上 澄 み 液 (酵 母 培 養 上 清 )と 酵 母 細 胞 で の 抽 出 /
分 画 を行 つ た 結 果 、 出芽 を 抑 制 す る物 質 、 ア ポ トー シ ス を誘 発 す る物 質 と
も に 酵 母 培 養 上 清 に あ り、 酵 母 細 胞 で は 細 胞 増 殖 に 影 響 を 与 え な か つ た 。
酵 母 培 養 上 清 で は 、 ヘ キ サ ン と酢 酸 エ チ ル にて 抽 出 した 残 りの 水 層 に 存 在
す る物 質 が 出 芽 抑 制 に 、 ま た 凍 結 乾 燥 後 に透 析 に て 得 られ た 分 子 量 3500
以 下 の 物 質 が ア ポ トー シ ス の 誘 発 に 関 与 して い る と考 え られ た 。 原 因物 質
の 特 定 に つ い て は 、研 究 進 行 中 で あ る。
加 え て 、 実 験 に よ る世 代 構 成 確 認 手 法 を用 い て 解 析 した 結 果 、 増 殖 に伴
い 娘 細 胞 の 比 率 が 増 カロす る こ と (少 子 化 パ ラ ドック ス 、 Tainaka θι′′
,
2006)お よび 娘 細 胞 の 出 芽 が 抑 制 され 母 細 胞 の 出 芽 が 抑 制 され な い こ とか
ら起 こ る 二 極 化 現 象 (セ パ レー シ ョン 、新 た な知 見 )を 認 め た 。 これ ら の
現 象 が 起 こ る機 序 と して 、娘 細 胞 と母 細 胞 の 生 息 環 境 に 対 す る適 応 能 力 の
差 が 関 与 して い る こ とが 想 像 され る。 長 期 定 常 期 培 養 中 にお け る ア ポ トー
シ ス が どの よ うに 誘 導 され るか は ま だ十 分 に 解 明 が進 ん で い な い が 、ROS
が 一 因 で あ る こ とは
,ο グ
f∠
お よび sα ″∠で ア ポ トー シ ス が 増 加 す る こ と
か ら示 唆 され る。 そ れ を踏 ま えて 考 え る と、 セ プ チ ン カ ラ ー に 異 常 を も ち
娘 細 胞 へ の 物 質 移 行 が 正 常 に な され ず 老 廃 物 の 選 別 が で き な い ら″ごθ∠ に
105
お い て 、 出芽 中細 胞 の ア ポ トー シ ス が 顕 著 で あ っ た こ とは 、娘 細 胞 に 渡 さ
れ る 傷 付 い た タ ン パ ク 質 等 が ROSの 発 生 源 とな つ て い るか 、 も し くは
ROSの 効 率 的 な消 去 の 妨 げ に な つ て い る こ とが 想 定 され る。加 え て 、細 胞
壁 強 靭 チ ェ ック ポ イ ン トが 損 な わ れ て い る ″p″
Zで ア ポ トー シ ス が 増 カロ
した こ とよ り ROSの タ ー ゲ ッ トが細 胞 壁 で あ る こ とが 想 定 され る。 さ ら
7カ ″ ∠で 娘 細 胞 の ア ポ トー シ
に 、 G1/S進 行 が 時 期 尚早 に起 こ っ て しま う 予
ス が 強 く認 め られ た こ とか ら、ROSに よ る ア ポ トー シ ス 誘 導 が 娘 細 胞 に よ
り強 く作 用 す る こ とが示 唆 され た 。
あ る 一 定 数 の 細 胞 の ア ポ トー シ ス は 単 細 胞 生 物 の 生 き残 り戦 略 と捉 え
る こ とが で き る。 ア ポ トー シ ス 実 行 に 関 与 す る caspaseを 欠 損 した ′勉ゴ
∠は 、長 期 定 常期 培 養 の 短 期 的 に は ア ポ トー シ ス が 抑 制 され るが 、長 期 的
に は 逆 に ア ポ トー シ ス が 促 進 され て しま う。 これ は 、 あ る時 期 に 一 定 の 割
合 の 細 胞 で ア ポ トー シ ス が 起 こ る こ とが残 りの 細 胞 の 生 存 に は重 要 で あ
る こ とを強 く示 唆 す る。 酵 母 は 細 胞 の 生 理 学 的 寿 命 の 現 象 と機 構 の 解 明 に
とて も有 用 な 生 物 で あ る。
106
2
今 後 の課 題
生 物 は 非 常 に 複 雑 で あ りな が ら、 巧 妙 な 挙 動 シ ス テ ム を保 有 して い る 。
これ を 、数 学 的 に 解 析 し理 解 す る こ とは 容 易 な こ とで は な い 。 しか しな が
ら一 方 にお い て 、複 雑 で あ る が ゆ え に 、 そ れ ぞ れ の 事 象 を細 分 化 しシ ン プ
ル な 系 と して 解 析 す る こ とに 意 義 が 生 ず る。 ま た 、 そ の よ うな こ とで 実 験
科 学 で は 得 られ な い 情 報 を 、解 析 に よ り入 手 す る こ とが 可 能 とな る。21世
紀 に 入 り、 ゲ ノ ム 解 析 に よ る結 果 を は じめ 、 これ ま で とは比 較 に な らな い
〃οοす な わ ち シ リ コ ン 内 (コ ン ピ
程 の 情 報 を 得 る よ うに な っ て か ら、 力 βゴ
ュー タ 内 )で 結 果 を 解 析 す る手 法 が 増 加 して き た 。21世 紀 の 生 物 学 に と つ
て 数 学 的解 析 は途 方 もな い 可 能 性 を 秘 め た も の と考 え る。
本 研 究 は 、 この よ うな背 景 の 中、 出芽 酵 母 を用 い て 実 施 した 実 験 で の 結
果 を数 学 的 に解 析 し、 さ らにそ の 結 果 を実 験 に 反 映 させ る試 み の 一 つ と し
て 実 施 した も の で あ る。 実 験 と数 理 との 比 較 に お い て 、対 数 増 殖 期 ま で は
両 間 に 良 い 相 似 が 得 られ た が 、対 数 増 殖 後 期 以 降 、保 存 則 の 保 存 状 況 にお
い て 、実 験 値 が 予 測 値 よ り低 い 値 を示 した (出 芽 痕 数 が 細 胞 数 を 下 回 つ た )。
そ の 原 因 を細 胞 消 滅 と仮 定 し数 式 に補 正 条 件 を加 えた 結 果 、 両 間 に近 似 を
得 た 。 この よ うに 、不 確 定 な 要 素 を どの よ うに 数 理 に 反 映 させ る か が 、数
理 解 析 にお け る鍵 とな る。本 研 究 に用 い た Tree― stageモ デ ル は 当初 細 胞 消
滅 を想 定 して い な い モ デ ル で あ つ た が 、不 確 定 要 素 と して 細 胞 死 が 重 要 な
要 因 と して加 わ っ た 。 さ らに 定 常 期 以 後 の 挙 動 に お い て は 、 細 胞 内 あ る い
は細 胞 外 の 環 境 が 大 き く変 わ る こ とか ら、 さ らに 予 測 が 難 し くな る 。 本 研
究 の 実 験 条 件 にお い て 、増 殖 パ タ ー ンが 大 き く 3つ に 分 類 され た が 、 そ の
要 因 に は そ れ ぞれ の 株 が も つ ス トレス の 受 け方 が 大 き く影 響 して い る。 今
後 の 課 題 と して は 、 Tree‐ stageモ デ ル に 細 胞 死 に 関 す る 要 因 をカロえ た
Four―
stageモ デ ル の 構 築 が 求 め られ る。ま た これ に 関連 して ス トレス 応 答
に 関 す る 挙 動 を パ タ ー ン 化 し未 知 な る変 化 の シ ミ ュ レー シ ョ ン が で きれ
ば 、 よ り有 用 な 解 析 手 法 に な る も の と考 え る。 そ れ に は 、 細 胞 周 期 の どの
チ ェ ック ポ イ ン トに 作 用 し、そ れ が 結 果 と して どの よ うに 作 用 す る の か を
知 る必 要 が あ る。 一 見 、 この よ うな 予 測 は不 可 能 な よ うに感 じる が 、 定 量
的 な評 価 は 難 し く も、 定 性 的 な パ タ ー ン 分 析 は 可 能 な も の と考 え る。 先 行
研 究 に お い て 、 Kathcrineら は 出芽 酵 母 の 細 胞 周 期 モ デ ル を提 唱 し、 細 胞
周 期 の 振 る舞 い を コ ン ピ ュ ー タ シ ミ ュ レー シ ョ ン に よ つ て 解 析 し よ う と
試 み た (Kathcrine θ
`′
′
.,2000)。
このモ デ ル の 特 徴 は 、 細 胞 周 期 に重 要
107
な 役 割 を示 す サ イ ク リ ン を反 応 速 度 式 に 当 て は め 、数 理 に て 解 析 す る こ と
で あ る。 さ らに この モ デ ル に ヒ ン トを得 て 、 マ イ ク ロ ア レイ に よ る実 験 デ
ー タ を加 えた
E―
Cell Systemに よ る検 討 が 慶 応 義 塾 大 学 にて な され て い る
(http:〃 www.ttck keio.ac.jp/1AB/computer‐ scienceノ )。 マ イ ク ロ ア レイ を
用 い て 細 胞 周 期 に 同調 して 発 現 が 見 られ る遺 伝 子 の 研 究 も盛 ん に行 わ れ
(Cho θι′′.,1998、 Spellman θ″′′.,1998)、 そ の 数 は 800と も言 わ れ て
い る。 E‐ Cell Systemで は 実 験 に て 得 られ た デ ー タ を仮 想 デ ー タ と して シ
ス テ ム に加 え る こ とで発 現 検 証 が 可 能 と の こ とで あ る。さ らに 、Cln2,Clb2,
Clb5の 3つ の サ イ ク リ ンの 振 る舞 い を
E‐
Cell Systemを 用 い て シ ミ ュ レ
ー シ ョン した 結 果 、現 実 に近 い 値 を得 た と報 告 して い る。 ち な み に 、本 シ
ス テ ム を用 い た シ ミ ュ レー シ ョン にお い て 、苦 慮 す る点 は 、 出芽 酵 母 が 非
対 称 な 分 裂 をす る こ とで 予 測 を複 雑 に して い る こ と の よ うで あ る。 本 研 究
に て 得 られ た 知 見 は 、今 後 の シ ミ ュ レー シ ョン に 有 効 に活 用 可能 と考 え る。
一 方 、密 度 効 果 に 関す る原 因物 質 の 特 定 に つ い て は 、今 回 検 討 を加 え た
炭 素 源 に 、 窒 素 源 あ る い は硫 黄 源 の 影 響 に つ い て も確 認 す る必 要 が あ る。
特 に 、 二 次 元 環 境 に て 得 られ た ガ ス 状 代 謝 産 物 (具 体 的 に は ア ンモ ニ ア )
の 影 響 を参 考 に 、 二 次 元 環 境 にお け る代 謝 産 物 で の 確 認 をす る こ とが必 要
と考 え る。 さ らに 、培 養 後 の 細 胞 懸 濁 液 か ら得 られ る画 分 を注 意 深 く分 析
す る こ とで 、 出芽 を 抑 制 す る物 質 、 ア ポ トー シ ス を誘 発 す る物 質 の 特 定 が
期 待 で き る。 そ の 際 に 、本 研 究 に て 確 立 した 実 験 手 法 は 有 効 に機 能 す る も
の と考 え る。
最 後 に 、前 述 した よ うに 、21世 紀 の 生 物 学 に と つ て 、数 学 的解 析 は途 方
もな い 可 能 性 を 秘 め て い る。 そ れ を 現 実 の も の とす るた め に は 、 生 物 学 者
と数 理 学 者 が 共 同 で 研 究 を進 め て い く こ とが 何 よ り大 切 な こ と と考 え る。
108
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120
謝
辞
本 研 究 は 、著 者 が 静 岡 大 学 大 学 院 自然 科 学 系 教 育 部 博 士 後 期 課 程 在 学 中
に 、 同大 学 院 吉村 仁 教 授 の ご指 導 の も とに 行 つ た も の で あ る。
本 研 究 を行 うに あ た り、 終 始 ご熱 心 な ご指 導 、 ご鞭 撻 を賜 り、 か つ 本 稿
の ご校 閲 を い た だ き ま した 、本 学 環 境 エ ネ ル ギ ー シ ス テ ム 専 攻 の 吉 村 仁 教
授 に 厚 くお 礼 申 し上 げ ます 。 ま た 、本 研 究 にお け る 、数 理 解 析 に 関す る ご
指 導 お よび適 切 な ア ドバ イ ス を い た だ き ま した 本 学 環 境 エ ネ ル ギ ー シ ス
テ ム 専 攻 の 泰 中啓 一 教 授 に 厚 くお 礼 申 し上 げ ます 。 そ して 、本 研 究 にお け
る、酵 母 実 験 の ご指 導 お よび 適 切 な ア ドバ イ ス と実 験 教 材 の ご提 供 を い た
だ き ま した 本 学 バ イ オ サ イ エ ン ス 専 攻 の 丑 丸敬 史 教 授 に厚 くお 礼 申 し上
げ ます 。
ま た 、本 研 究 を進 め る に あ た り、適 切 な ご指 導 、 ご助 言 を 戴 き ま した 本
学 バ イ オ サ イ エ ン ス 専 攻 の 瓜 谷 員裕 教 授 、 山本 歩 教 授 に厚 くお 礼 申 し上 げ
ま す 。 さ らに 、物 質 の 特 定 に お け る抽 出 /分 画 にお い て は本 学 バ イ オ サ イ
エ ンス 専 攻 の 河 岸 洋 和 教 授 、修 士 課 程 の 小 堀 一 さん に ご 協 力 を い た だ き厚
くお 礼 申 し上 げ ま す 。ま た 、数 理 解 析 にお い て は修 士 課 程 の 倉 知 宏 憲 さん 、
大 津 武 士 さん 、酵 母 実 験 に お い て は修 士 課 程 の 山 田 ち ひ ろ さん 、端 野裕 樹
さん に研 究 の ご協 力 を い た だ き深 く感 謝 い た しま す 。
加 え て 、長 年 に わ た り様 々 な 面 で お 世 話 に な つ た 吉 村 研 究 室 、泰 中研 究
室 、 丑 丸 研 究 室 の 皆 様 方 及 び 先 輩 方 に この 場 を 借 りま して 心 か ら感 謝 を 申
し上 げ ます 。
最 後 に 、博 士 課 程 在 籍 に あ た り暖 か く見 守 って 下 さ つ た 第 一 三 共 株 式 会
社 執 行 役 員 の 員鍋 淳 博 士 、 通 学 へ の ご配 慮 を い た だ き ま した 第 一 三 共 株 式
会 社 研 究 開発 本 部 安 全 性 研 究 所 長 の 三 分 一 所 厚 司 博 士 、第 一 三 共 株 式 会 社
薬 制 部 長 の 塩 谷 宏 明博 士 に 厚 く感 謝 申 し上 げ ま す 。
121
添付資料
04
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表
1
出芽 酵 母 の 増 殖 に 伴 う娘 細 胞 の 大 き さ の 変 化
Strain
S288C
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21 hr
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24 hr
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27 hr
845
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30 hr
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36 hr
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245
21 hr
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24 hr
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O ll
00
0
OЮ
O ll
OЮ
O ll
O ll
O ll
00
4
70
9
7 7
3
7
0
0
0
0
0
0
4
912
91 8
77
91
2
3
4
101
7
27 hr
OЮ
0
0
4
2
0
0
0
0
1
4
6
30 hr
1
7
1
2 3
1000
0
21
21
5
977
91
0
0
0
0
128
1
1
表
7
本 研 究 に用 い た 出芽 酵 母 株 の リス ト
Strain(Alias)
Genotype
W303
ゴゴ,ゴ 5′ ごθ2‐ ゴο′″ゴ‐
ゴθθ
βθ‐
』乙乙乃 υFaθ ‐
′′
θ″2‐ afゴ 2 trpゴ・′カゴ
US356(ろ ariZ)
W303わ ′rf rrカ ゴθθ
MArα ″ ′′ga′2
S2880
BY4741
SCU2505(″ カゴ5Z)
S288C i44Zレ
カゴ
s」 zl
ゴ5∠
i′ ο″2△θ″ θι
BY4741″ カゴ」==Ka″ 豚
SCU2144(sο 力θZ)
BY4741,0カ
SCU2817(b″ ′θ∠)
BY4741 b″ どθriKa″ i4κ
SCU271(″ ρttfZ)
BY4741″ β女′==Ka″ 豚
BY4741,0′ f==Ka″ ittY
SCU2906(sο ごゴ∠)
SCU2907(β Od2△)
θ==Ka″ 豚
BY4741 sOご2'=Ka″ 』乙ど
SCU25(ん らIZ)
BY4741カ
SCU806(sir2zl)
BY4741,ir2==Ka″
SCU2846(ノ 0′ ′∠)
BY4741 yO′
=US356,野 生 株
θ υFaθZθ
わZ==Ka″ 豚
″
ゴ==Ka″ 豚
(栄 養 要 求性 あ り);S288C, 野 生 株 ;BY4741,S288Cに
栄 養 要 求 性 が 付 加 され た株 。 出 芽 酵 母 は全 て Saο ο力 ′Fο
ηyOθ S σθFθ フISI′ θ.
“
129
表 8
本 研 究 に 用 い た欠 損 株 の 遺 伝 子 の 機 能
WH15
of G1 transcription that binds to SCB binding factor
(SBF) at SCB target promoters in early G1; phosphorylation of
Whi5p by the CDK, CInBp/Cdc28p relieves repression and promoter
binding by Whi5; periodically expressed in G 1
SCH9
Protein kinase involved in transcriptional activation of
osmostress-responsive genes; regulates G1 progression, cAPK
activity, nitrogen activation of the FGM pathwayi involved in life
Repressor
span reguiationi homologous to mammalian Akt/PKB
BUD6
Actin- and formin interacting proteini stimulates actin cable
nucleation by recruiting actin monomers to Bnilpi involved in
-
polarized cell growthi isolated as bipolar budding mutanti potential
Cdc28p substrate
MPKl
rine/threo nine MAP kinasei involved in regulating maintenance
of cell wall integrity, progression through the ceII cycle, and nuclear
Se
mRNA retention in heat shocki required for mitophagy and
pexophagyi affects recruitment of mitochondria to the phagophore
assembly site (PAS); regulated by the PKCl'mediated signaling
p
SODl
athw ay
Cytosolic copper-zinc superoxide dismutasei some mutations are
analogous to those that cause ALS (amyotrophic lateral sclerosis) in
hu m ans
SOD2
FOBl
Mitochondrial manganese superoxide dismutase, protects cells
against oxygen toxicityi phosphorylated
Nucleolar protein that binds the rDNA replication fork barrier
(RFB) site; required for replication fork blocking, recombinational
hotspot activity, condensin recruitment to RFB and rDNA repeat
segregationi related to retroviral integrases
SIR2
YCAl
Conserved NAD+ dependent histone deacetylase of the Sirtuin
famiiy involved in regulation of lifespani plays roles in silencing at
HML, HMR, telomeres, and the rDNA locusi negatively regulates
initiation of DNA replication
Putative cysteine protease similar to mammalian caspases; involved
in regulation of apoptosis upon H:Oz treatmenti contributes
to
clearance of insoluble protein aggregates during normal growthi
may be involved in ceII cycle progression
*Saccharomyces Genome Database (http:77***.reastgenome.
130
o
ryl)
t
D