産業ニュース 暦年企業に注目

マーケットウィークリー・857号
産業ニュース
2016.1.1
暦年企業に注目
作成者:兵藤三郎
新たな企業選別の
着目点として、暦
年企業を考える
新年号発刊に当たり、新たな企業選別の着目点を考えてみた。企業の平均的な
寿命は30年程度などと言われている。創業時に成功したビジネスモデルが、社会
情勢の変化などで競争力を失ってしまう。世代交代等も要因として挙げられよう。
逆に、30年をはるかに超え、長期間存在し続ける企業には危機を乗り越える対応
力があったのであろう。また、創業100周年など節目を迎える企業(以下、暦年企
業と略す)では、高い目標を設定するケースも多く、従業員の意欲も高く注目で
きるのではないだろうか。今回の産業テーマでは、長期続く企業、特に暦年企業
を取り上げてみた。
100年続いた山一
も、実は約30年で
破綻へ
証券界に詳しい人であれば、山一證券が創業100年目に経営破綻したことを記憶
していよう。しかし山一はその30年ほど前に事実上経営破綻し日銀特融で再生し
た。その後もリテール強化など時代に合わせた対応が競合他社より遅れた。前段
で指摘した、30年寿命説が見事に一致する。
比較的多い、創業
100周年、70周年企
業
本年(2016年)に100周年を迎える企業(1916年創業)は、第一次世界大戦さな
かに創業した。同大戦は主戦場がヨーロッパであり、国内等への被害はほとんど
なかった一方、戦時特需等が発生し景気動向は比較的良好な年であった。さらに
70周年(1946年創業)は、終戦翌年、新たな理想をめざし創業意欲が高まった年。
共に創業企業数は比較的多い。創業100年を迎える上場企業には大特鋼(5471)が
ある。その他明治HD(2269)の前身、明治製菓も1916年の創業。
ソニーもホンダも
かつてはベンチャ
ー企業だった
創業70周年には時代背景もあり、ハイテク系の姿が多い。井深大氏と盛田昭夫
氏が真空管電圧計の製造を行うため東京通信工業を創業したのが1946年。同社は
後にソニー(6758)となる。大きく成長する企業をIPOの段階で見極める有効
性を表現して「ソニーも、ホンダ(7267)も、かつてはベンチャーだった」など
と言われる。その他カシオ(6952)、岡村製(7994)、エステー(4951)、コー
セー(4922)、学研HD(9470)なども1946年創業組。
創業100周年に向
けた新中計発表に
期待
暦年を迎える企業は、従業員の意欲も高まり業績が向上しやすい。企業側でも
キャンペーン等販促強化するケースも見られる。中期経営計画などが、「創業○
○年に向けて」と題し意欲的な目標が示されるケースも多い。その観点からは来
期に節目に向けた新規中期経営計画等が出そうな1919年、20年創業の企業にも注
目できよう。1919年創業組にはオリンパス(7733)、ダイヘン(6622)、高島屋
(8233)、小林製薬(4967)など。1920年創業ではANA(9202)、スズキ(7269)、
日立(6501)、マツダ(7261)、横河電(6841)などがある。
◇主な暦年企業
銘柄
(単位:円、倍)
コード
株価
PER
コメント
明治HD
2269
9,970
27.4 統合後の構造改革余地があり、中期的な成長継続が可能
日立
6501
693.1
10.8 構造改革断行し最高益更新を続けている、子会社改革余地あり
ソニー
6758
2,998.5
カシオ
6952
2,693
21.3 創業世代(4兄弟)から次世代へのバトンタッチ表明
オリンパス
7733
4,700
28.7 構造改革中のデジカメは苦戦続くが、医療中心に伸長
27.0 構造改革で経営不振を乗り越えつつある、エレキ再建に注目
(注)株価は12月18日の終値、PERは今期予想
(出所)各社資料等よりCAM作成