『経営セミナー2015 in 東京』盛況 - 富士フイルムグローバルグラフィック

富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ
『経営セミナー2015 in 東京』盛況
アサプリホールディングス・松岡社長を講師に迎え、IT 活用による業態変革の実践例を紹介
2015 年 12 月 28 日
富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社
富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社(代表取締役社長:真茅久則、
以下 FFGS)は、11 月 27 日、東京ミッドタウンの富士フイルム(株)本社にて、『経営セ
ミナー2015』
(後援:全日本印刷工業組合連合会)を開催し、約 200 名が参加した。同セミ
ナーは、印刷業経営層を対象に、印刷業経営の参考になる情報を提供することを目的とし
て、例年、全国で開催している。今回は、株式会社アサプリホールディングス代表取締役
社長の松岡祐司氏を講師にお招きし、同社における業態変革の取り組みについてご紹介い
ただいた。
セミナーは 2 部構成で実施。第 1 部では、松岡社長が「~リーマンショック非常事態宣
言から 6 年~ 理念の共有と見える化による経営管理・IT 活用によるマーケットの拡大で強
い企業体質を」のテーマで講演し、第 2 部では、FFGS 営業本部 部長の中林鉄治が進行役
を務め、アサプリグループにおける現在の取り組みの詳細について取材映像も交えながら
ご紹介いただいた。
挨拶:FFGS 磯村専務
講師:アサプリホールディングス 松岡社長
■株式会社アサプリホールディングス 代表取締役社長 松岡祐司氏
~リーマンショック非常事態宣言から6年~
理念の共有と見える化による経営管理・IT 活用によるマーケットの拡大で強い企業体質を
【第 1 部の要旨】
◎企業体質強化のための「経営の3つの要諦」
2008 年 9 月のリーマンショックで、アサプリグループは売上が急激に減少した。
そこで、
企業の存続を図るため、当面の対応策として非常事態を宣言。「売上重視」から「付加価値
重視」の経営へと舵を切った。ここで言う付加価値とは、売上から仕入と外注費を引いた
社内生産額のことを指す。そのうえで 2012 年に長期事業構想を立案し、実践を開始した。
長期事業構想は、10 年先(2022 年度)の貸借対照表と損益計算書をつくり、そこから逆
算して「今年やること」を決めるという、先行目標管理型の取り組みである。これにより、
アサプリの付加価値率は 47%から 54%へと 7 ポイント増加した。その間、リストラは一切
していない。
こうした取り組みを通じて体得した「経営の要諦」として、以下の 3 つのポイントにつ
いてお話ししたい。

経営理念の共有(働く目的への共感)

“見える化”による経営管理(守り)

マーケットの拡大(攻め)
企業体質強化にあたり最初に行なうべきことは、
「経営理念の共有」である。経営者の思
いを社内で共有できていないと、
“見える化”は上手くいかない。“見える化”から始めて
しまうと、社内の雰囲気は悪くなる。この順番はとても重要である。
社員の意識を揃えたうえで、作業時間に注目した管理会計による“見える化”を行なう。
その際、営業や制作などホワイトカラーの“見える化”まで進めるのがポイント。アサプ
リグループでは、自社開発した MIS(経営情報システム)の『APG システム』を通じて、
ホワイトカラーも含めた“見える化”を実現している。
『APG システム』は、管理会計ベースでの日次決算を実現・共有できることに加えて、
毎月の目標付加価値金額、その時点までに実現された付加価値金額、固定費を、案件ごと
や工程ごと、部門ごと、個人ごとに先行管理できる。その結果、月末に利益が出るか出な
いかをいつでも把握できるようになった。
併せて、IT を活用してマーケットの拡大に取り組むことも重要である。付加価値の源泉
は売上だ。Web 入稿やリモート校正、デジタル検版などを通じたコスト削減提案は、既存
顧客の囲い込みや新規顧客獲得に、大いに役立っている。今後は、Web ポータルシステム
を活用した Web to Print や Print to Web で、お客さまのクロスマーケティングに貢献する
ことも目指している。
経営体質を継続的に強化していくには、社員と情報や成果を共有しながら PDCA サイク
ルを回すことが必要だ。アサプリグループでは、毎月の目標付加価値金額の設定、毎日の
売上・付加価値金額の共有、月次評価面談、
「目標達成見える化シート」、目標達成報奨金、
「トラブルサンキューレポート」などの施策を通して、PDCA サイクルをきめ細かく回し
ている。
◎将来の姿を明確に描き、バランスのとれた施策で体質強化
以下が、アサプリグループの長期事業構想(2012 年度〜2022 年度)である。
 私達は 2023 年までに重点戦略である M&A でグループ企業 6 社、連結売上 60 億円、連
結経常利益 3 億円、社員数 350 名、自己資本比率 40%以上、帝国データバンク評点 65
点以上の魅力ある情報産業での多角化・連邦経営グループに挑戦します。
 全社員が「希望」と「生きがい」をもって勤められる一流のオンリーワン中小企業グル
ープになります。
この構想の実現に向けた具体的な取り組みとして、印刷事業では、POD も含めた多様な
印刷ジョブへの対応力強化、ジャパンカラー対応・
『XMF ColorPath』による印刷品質の安
定化と品質管理の効率化、などを進めている。また、BPO(ビジネスプロセスアウトソー
シング)事業、太陽光発電事業、人材採用コンサル事業、映像制作など、新たな事業も展
開。事業継承の体制も整えている。
いま、印刷業界も含め、あらゆる業界で経営環境が厳しくなっている。しかし、どの業
界にも必ず勝ち組が存在する。重要なのは、
「業界が良いか悪いか」ではなく「経営者が良
いか悪いか」である。
印刷企業の体質強化にあたっては、ハード面での差別化が難しくなるため、ソフト力の
強化、すなわち人材育成が必要だ。併せて、
「見える化による経営管理」「経営理念の共有」
「M&A 戦略や IT 活用戦略の差別化によるマーケットの拡大」をバランスよく行なえば、勝
ち残ることは十分可能である。
そのためには、数字に強い(決算書が読める)経営者になることが求められる。ぜひ、
熱い思いと高い志を持って、果敢にチャレンジするリーダーになっていただきたい。
【第 2 部要旨】
第 2 部では、
『XMF』を活用した独自のサービスモデルによるマーケット拡大の取り組み
や、M&A を通じた顧客基盤拡大・人材多様化の取り組みを含む、アサプリグループにおけ
る経営戦略実践の詳細について、FFGS 営業本部長の中林が松岡氏にお伺いした。
◎『XMF Remote』による全ジョブ運用で進捗が円滑に
中林:アサプリ様は、日本で最初に『XMF Remote』を導入いただいた会社で、現時点で
約 200 社の顧客に『XMF Remote』を通じてオンライン校正サービスを提供している。ま
た、ファイル転送機能を活用している顧客は 400 社に上る。現在の『XMF Remote』の運
用についてご紹介いただきたい。
松岡社長:アサプリグループでは、印刷会社 3 社全社と、広告デザインを手がける株式会
社バロックの一部で『XMF Remote』を活用している。すべてのジョブを『XMF Remote』
に登録・運用しており、件数は毎月新規だけで 3,000 件、前月からの仕掛かりを含めると
4,000 件に上る。営業 50 名全員が、これらのジョブの校正チェックや進捗管理を iPad で行
なっており、管理者権限でアクセスすれば、全ジョブの進捗状況がリアルタイムで確認で
きる。また、トラブル防止のため、初稿から一貫して全ジョブを RIP 済みデータで運用し
ている。
中林:商業印刷以外でも、たとえば出版分野で『XMF Remote』の活用が進んでいる。出
版物の制作フローは非常に複雑であるが、
『XMF Remote』で全ジョブ運用することで進捗
状況を把握できるようになる。また、汎用フォルダを活用することで一元的にデータを管
理でき、データのやり取りもスムーズになる。
◎Print to Web でマーケット拡大
中林:
『XMF Remote』は、マーケット拡大という“攻め”の戦略にも力を発揮する。その
成功例をいくつかご紹介いただきたい。
松岡社長:アサプリでは、注文住宅会社様のカタログやチラシの仕事で、『XMF Remote』
を活用し、お客さまの大幅な業務効率改善に貢献している。その結果、以前はチラシの仕
事を 3 社に発注されていたが、現在はアサプリ1社だけとなっている。
また、
『XMF Remote』を活用した Print to Web モデルを構築することで、マーケットを
拡大することもできる。たとえば、現在アサプリでは、200 店舗を展開する某衣料関係の小
売店様向けに、チラシの印刷に加えて、各店舗の会員が Web でもチラシを見られる QR コ
ードが付いた『ニコ!とく!チラシ』を開発・提供している。この仕組みで会員数が大幅
に増加し、お客さまに満足いただけた。
『XMF Remote』を使うことで、印刷と Web の両
方のサービスを提供できるようになったので、お客さまとの信頼関係の強化が図れている。
Web to Print と『XMF Remote』の連携を武器とした新規顧客開拓も進めている。
「Web
上に原稿をアップし、変更があれば『XMF Remote』で指示を受けて修正する」という、
校正機能を含む仕組みを構築した。これもお客さまの業務効率向上に大きく貢献しており、
現時点で 5 社ほどの上場企業・大手企業にお使いいただいている。なお、このシステムを
提案する際には、業務改善を担当する役員の方への訴求が効果的だった。
◎M&A では互恵関係を重視
中林:株式会社バロック様は、M&A を通じてアサプリグループに参加したことで、年商が
10 億円から 19 億円へと大きく伸びたそうだが、双方にとっての経営メリットについてお聞
きしたい。
松岡社長:バロックはクリエイティビティに優れた“尖った”デザイン会社で、大阪に 40
名ほど、東京に 8 名ほどのスタッフを擁している。毎月 2〜3 社の上場企業・大手企業から
プレゼンの依頼があり、実際、顧客には大企業が多い。
「東京や大阪でより顧客に近いとこ
ろに行きたい」と考えていたアサプリにとって、バロックの顧客層は魅力的であったこと
から、資本提携が実現した。
バロック側も、デザインには自信があっても、この先グラフィックの仕事だけでは厳し
くなると危機感を持ち、印刷や IT・Web の仕事ができる会社と組みたいと考えていた。ア
サプリグループに加わることで、新たに印刷や映像系の仕事を受けたり、IT ソリューショ
ンを提案したりと、仕事の領域を広げることができている。バロックとは今後も会社レベ
ル・個人レベルでさらに交流を深めながら、顧客の共有や顧客サービスの拡充を進める計
画である。
◎企業を強くする最大のカギは人材育成
中林:アサプリグループの今後の取り組み、そして本日のまとめとして、業界へのメッセ
ージをお願いしたい。
松岡社長:紙の値上がりが続くなど、印刷会社の経営環境は引き続き厳しい状況にある。
アサプリグループでは、厳しい環境下でも長期事業構想を実現するための手段について全
社で議論している。アサプリグループの強みの一つは、社員一人ひとりが問題意識を持っ
ていることだ。
企業体質を強化していくには、人材の育成が非常に重要である。その観点から、当グル
ープでは、評価制度や面談を通じて経営層と社員とで密なコミュニケーションをとるよう
努めている。同時に、
『XMF Remote』や MIS など、IT をフル活用して“見える化”やマ
ーケットの拡大を実現することも不可欠だと考えている。
今後も印刷市場は厳しい状況が続くことが予想されるが、よい人材を育て、IT をうまく
活かしながら、強い企業体質を実現していただきたい。今日の講演がその一助となれば幸
いである。
FFGS 中林部長
アサプリホールディングス 松岡社長
【アサプリグループ】
株式会社アサプリホールディングス(三重県桑名市)を持ち株会社とした総合印刷業グル
ープ。傘下に株式会社アサプリ、株式会社プリンター、株式会社オリエンタルという 3 つ
の商業印刷会社と、広告企画・デザインなどを手がける株式会社バロック、映像や Web 制
作を手がける株式会社ナナメの 5 社を擁し、社員数は 230 名。2014 年 7 月時点で、連結売
上高 45 億円、経常利益 2.5 億円の規模を誇っている。