俺が主人公じゃなくなった話をする 優狐 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にP DF化したものです。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作 品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁 じます。 ︻あらすじ︼ 愛する人達を次々に失い、最弱の赤龍帝は強さを求め、やがて最強 と呼ばれるようになる。 しかし、幾ら強くなっても失われた命は戻らない。 そんなある日、赤龍帝は油断して深手を負う。 もしも、やり直す事が出来るなら⋮⋮そう強く願い、赤龍帝は息を 引き取る。 再び目を覚ました赤龍帝こと兵藤一誠は懐かしい我が家に居た。 ││やり直しは出来た。 しかし、兵藤一誠は赤龍帝じゃなかった。更に主人公として身に起 きる全てが他人に降り懸かるのを見て把握する。 ││主人公じゃなくなった俺に何が出来るのだろうか。 考え、考えて、かつての主人公は現在の主人公を手助けする事を決 意する。 まさかの主役交代。 凡人の兵藤一誠が贈る新たな物語が今、幕を開ける。 俺が主人公じゃなくなった日 │││││││││││││││ 目 次 決意をする │││││││││││││││││││││││ 1 転入とやり直しの真実 ││││││││││││││││││ 双覇一刀龍 │││││││││││││││││││││││ 愛しき君との出会いを思ふ ││││││││││││││││ 愛すべき俺の嫁︵禁︶ ││││││││││││││││││ 7 13 19 23 28 俺が主人公じゃなくなった日 もしも、人生をやり直す事が出来るなら⋮⋮ 年 月 日。それが最強の赤龍帝が遺した最後の言葉 彼女達を救わせてくれ⋮⋮ ││平成 だった。 ││◆││ × 旦那様。朝で││パチン もぞもぞ⋮⋮ ﹁ふわぁ⋮⋮朝か﹂ 何だ、このデジャヴュ﹂ ? 有難う神様ッ ﹂ 夕麻ちゃんが来ないな ﹂ ? しかし、今回の俺は違う。何が起きるか知っているから、逆に仕掛 俺。 期待に胸、否⋮⋮股間にテントを張って待っていただろう前回の て、死ぬ前に良い思いはさせてくれる。 ある堕天使が来ない。クソ女だが、ミジンコ程度の優しさは持ってい ⋮⋮ところが、約束の時間になっても見た目美少女の中身クソ女で ﹁⋮⋮あれ それがやり直す前の出来事。今から起きる転機を忘れはしない。 れ、リアス・グレモリーに拾われて悪魔人生を始める。 今日は天野夕麻とのデート日。そして夕暮れの公園で一誠は殺さ そう意気込み、身支度を済ませて家を後にする。 これで、皆を救える てる ﹁戻ってる⋮⋮俺が赤龍帝として目覚めるきっかけになった日に戻っ 平成○○年○月○日。 を呑んだ。 何気なくカレンダーを見た一誠は目をこれでもかと大きく開き、息 ﹁⋮⋮ん を止めて布団からのそのそと這い出る少年。名を兵藤一誠と言う。 悪友に無理矢理渡された萌えボイス目覚まし時計︵メイドVer︶ ! 旦那様。朝でございます。 ×× ? 1 × ! ! ! けてやるつもりだ。 さあ、早く来い。天野夕麻⋮⋮仕事そっちのけでエクスタシーを味 ﹂ あわせてやるからよ。 ⋮⋮昼過ぎ。 ﹁来ねえ⋮⋮何でだ る。 ﹂ ﹂ ﹁天野夕麻とデートを約束してたのは俺だ んじゃねえ ﹁え、あ⋮⋮その⋮⋮うぅ⋮⋮﹂ 勝手に人の彼女奪って 慌てて二人の前に立ち塞がり、気弱な男の子に人差し指を突き付け ﹁ち、ちょっと待て 目の前を天野夕麻と知らない気弱な男の子が通過していった。 ﹁う、うん⋮⋮﹂ ﹁緊張しなくてもエスコートしてあげるから、気楽にしてよ。武君﹂ 苛立ちを隠せず、電柱に蹴りを浴びせる。そんな時だった⋮⋮ !? ! 何言ってんだよ ﹂ 俺だよ、兵藤一誠だよ ﹁⋮⋮ごめんなさい。誰ですか、貴方 ﹁は、なっ ﹂ ! いた。 ﹁ハァ 何で私が理由なく殺す必要があるのよ。あんた、私の本性 申し訳なさそうに謝ると夕麻は俺の耳元で信じられない言葉を呟 ﹁あの⋮⋮何が言いたいか分かりません﹂ 動揺し、余計な事まで喋ってしまう。夕麻は⋮⋮ 険だからデートした後に殺すんだろ ! ? !? 神器が危 きたか。こんなガキが夕麻とデートしようなんて百億年早ぇ。 じわり、と男の子の目が潤む。華奢でナヨナヨした見た目に弱虫と ! 殺すのは規約違反よ。とっとと失せなさい﹂ ⋮⋮言葉を失った。 神器を持たない凡人 俺、赤龍帝の篭手を持っていないのか ? ? 2 ! !? を知ってるみたいだから言っておくけど⋮⋮神器を持たない凡人を ? 何だよ、それ⋮⋮ それじゃあ、護れないじゃないか⋮⋮ ﹁ほらほら、武君。泣いてちゃ駄目。せっかくのデートなんだから、ね ﹂ ﹂ そう言う事なのか ﹁⋮⋮なのか 茫然としている俺の脇をすり抜けて二人が立ち去る。 ﹁ぐすっ⋮⋮うん⋮⋮﹂ ? 立ち去った。 ││◆││ ﹁やり直した意味ねえな⋮⋮神使えねえ﹂ 何それ美味しいの もうどうでもよくなり、公園で黄昏れる。 神様に様付けはしないのか ? テメエは駄目だ。 ハッ⋮⋮虚しいだけだな。やれやれだぜ。 ﹁││ねえ、武君。一つお願い事があるんだけど聞いてくれるかな ﹂ ? うが、大丈夫だろう。 良かったな。テメエの人生、桃色パラダイス確定だ。時折血飛沫舞 たんだな⋮⋮ ああ、俺が経験する筈だった人生の転機。武とか言うテメエに移っ ﹁な、何かな ﹂ トイレットペーパーには様付けして紙様と呼ぶが、役立たずの神。 ⋮⋮役立たずに様付けする程おひとよしじゃねえよ。 ? 乾いた笑い声をあげ、俺は夢遊病患者のようにふらふらとその場を ﹁は、ははっ⋮⋮﹂ 何 も 出 来 な い 。 自問自答をするまでもない。 ⋮⋮赤龍帝を宿していない凡人に何が出来る た 何かの本で読んだものと同様に、俺は主人公じゃなくなってしまっ ? ? ? 3 ? ? ふん、頑張れよ。 ││主人公。 ﹂ ﹁貴方と過ごした日々。楽しかったわ。でも⋮⋮さようなら﹂ ﹁っ 光り輝く槍が投擲され、真っ直ぐに主人公の心臓へ向かっていく。 主人公は驚き、泣きそうな顔をして⋮⋮俺を見た。 おい、何だよ⋮⋮そんな助けを求めるような目をすんなよ。 ﹂ 槍が到達するまで、残り一メートル。 ﹁た、助けてぇ ﹁っ﹂ ﹂ ああああああ、くそがっ ﹁だらっしゃああぁ ズシャアァ ﹂ ﹂ !? 何だろうな、何かスゲー、スカッとした。 鼻が潰れてみっともなく鼻血を垂れ流すクソ女。 ﹁あ、がっ、ごっ⋮⋮﹂ ⋮⋮予想外の身体能力に俺自身ビックリだ。 瞬時に距離を詰め、クソ女の顔面に拳を突き刺す。 ﹁うるせえよ ﹁あ、あんた⋮⋮よくも邪魔││ッ ペシンッ、と小気味よい音がした。 無意識に手の甲で涙を拭い、無事な方の手で軽く頭を叩く。 ⋮⋮﹂ ﹁ったく、男がみっともない醜態さらして助けを求めてんじゃねえよ つまり、そういう事。 じゃない。 肉を焼くと良い匂いをさせるが、人が焼ける臭いはたまったもん 熱していたらしく、手の皮が焼け、鼻をつんざく臭いが漂う。 あれだけの勢いがついた槍を掴み取って無傷で済む訳がない。発 ﹁っ、てえぇ⋮⋮﹂ 槍が到達するまで、残り数センチの所で俺は槍を掴み取っていた。 ! ! ! ! ! 4 ! ああ、そういえば俺はクソ女に殺されるわ、男心弄ばれるわ、護り たい人をぶち殺されるわ、恋する事にトラウマ植え付けられるわで 散々だったな。 理解した。要するに知らず知らずの内にクソ女に対して殺意を抱 いてたんだな。 ﹁てなわけで、クソ女。テメエは此処で││ぶっ殺す﹂ ﹂ こんなクソ女に拳は勿体ない。手頃な石で殴殺してやるか。 ﹁な、何で私が⋮⋮あんたは武君と関係ないでしょ かったものの⋮⋮何考えてやがる。 ﹂ ﹂ ﹁ゆ、夕麻ちゃんを見逃してあげて ﹁ ﹁あ ﹂ そうじゃな 殺したらつまらないから手加減したおかげで﹃痛い﹄で済んだから良 しかし、あろうことか助けたガキが身代わりになっていた。一撃で ﹁⋮⋮何してんだテメエ﹂ ﹁ったああぁ⋮⋮﹂ ガッ それなりに大きい石を逆手に持ち、振り下ろす。 んだよ。まあ、そういう事だ﹂ ﹁ハッ、関係なんてもんはな⋮⋮助けを求められ、助けた時点で出来て !? ﹁ゆ、夕麻ちゃんだって何か理由があったんだと思う 何をほざいてるんだ、このガキは。 ! でノロマだけど、夕麻ちゃんは││﹂ 惚気てんじゃねえよ⋮⋮ったく。 延々と続く夕麻ちゃんは良い人アピールに毒気を抜かれた俺は石 を噴水に投げ込むと⋮⋮ ﹁⋮⋮良かったなヒロイン。主人公が救うと決めた以上、俺は何も出 来ねえ。せいぜい、主人公に相応しいヒロインになるんだな﹂ あの時のお返しとばかりに耳元で呟き、すっかり暗くなった公園か ら静かに立ち去る。 5 ! かったら⋮⋮あんなに楽しそうにデートはしないもん⋮⋮僕は愚図 ! ? ! 主人公でもない俺が主人公の決意を無下にする事なんざ、出来ねえ よ。 全く⋮⋮﹃助けて﹄は俺にとって呪いの言葉だな。勝手に身体が動 いて助けちまう。 ハァ⋮⋮願わくば、あのガキが俺が救いたいヒロイン達を救ってく れる事を祈るだけだな。 ま、こういう前座ってのも悪くないかな。 6 決意をする ⋮⋮呪いの言葉でつい、助けちまったが⋮⋮どうすっかな。 主人公が死んでリアスの世話になる事からルートは分岐するんだ が⋮⋮死んでないからそれはない訳で。 ﹂ ﹁マジ、どうすっかな⋮⋮つーか、夕麻が改心したとするとアーシアが 死ぬ事もないのか ﹁殴り込みに行くよおぉ ﹁武君を止めて ﹂ あの子、私が上司に逆らえないと言ったら上司に 普通に声を掛けれるとか⋮⋮肝据わってんなぁ⋮⋮ 安堵したような顔してんじゃねえよ。つーか、殺されかけた相手に ﹁⋮⋮あ、あんた、まだ近くに居たのね⋮⋮良かった﹂ !? ! 分からないし⋮⋮っておぉい 殴り込みに行くって、何があった あのガキがどういう行動をとるか││ ? ﹂ ? ああもう こういう分岐とかアリかよ 武の行動が新たなルートを開きやがった ⋮⋮くそがっ ちっ、確かに関係が出来てる。 にゃろお⋮⋮さっきの仕返しか。 された者⋮⋮つまり、そういう事よ﹂ ! よ という ざまあみろ。テメエが俺を巻き込むなら、俺だって巻き込んでやん るめて俺の救いたい人達を救わせてやる。 ⋮⋮ちっ、巻き込まれるだけじゃ割に合わねえ。あのガキを言いく ! !? ﹁か、関係はあるわ あんたは私の仕事を邪魔した。邪魔した者と ﹁嫌だね。そんなの俺に関係ねえだろ あのガキ、武と言うのか。見た目に似合わない名前だな。 殴り込みに行くといって飛び出しちゃって⋮⋮﹂ ! ! かそれに巻き込まれてる俺って⋮⋮ ! ﹁い、言われなくても案内するわよ⋮⋮﹂ 7 ! ﹁⋮⋮案内しろ﹂ ! 俺が声を掛けたら夕麻がビクッと身体を震わせ、呟いた。 やれやれ、俺に声を掛ける時、勇気を振り絞ってたのかねぇ ハッ、この心配ぶり。相思相愛ってか ﹂ リ ア 充 爆 ぜ ろ 。 ││◆││ ﹁邪魔だああぁ ? ﹁あ、あんた⋮⋮何で﹂ に動揺を隠せないみたいだなぁ 背中から丸みを帯びた黒い翼を生やした堕天使の男共。俺の強さ ﹁何て奴だ⋮⋮﹂ ﹁こ、こいつ⋮⋮﹂ 面白いくらいに宙を舞う。 夕麻の上司が居ると言う本部に乗り込み、拳を奮う。殴る度に人が ? ﹂ 何 で や ね ん 。 ﹁こいつ、何て弱さだ ﹂ ﹁拳を奮う度に宙を舞うぞ ﹁これは面白い 面白いじゃねえぇ 何で俺が宙を舞ってんだ ││◆││ ﹂ ﹁⋮⋮やれやれ騒がしい事だ。そう思わないか ? オッサンが何かを言うも、傷心の武は泣きじゃくるだけ。 ? ぺろり、と涙を舐めとるオッサン。武の白い肌に鳥肌が立ち、硬直 ﹁ふう⋮⋮そんなに泣いてたら綺麗な顔が台なしじゃないか、うん ﹂ 本部の最奥部。そこに居たのは全裸のオッサンと同じく全裸の武。 ﹁⋮⋮うぐっ、ひぐっ﹂ ﹂ ⋮⋮それから俺は堕天使共に弄ばれ、ボロ雑巾と化した。 ! ふっふっふ。夕麻が⋮⋮﹃軽蔑﹄の眼差しを向けてるなぁ⋮⋮ ? あ、ちょ、見捨てるなああぁ⋮⋮HELPUUUU ﹁⋮⋮先行くわ﹂ ! !? ! ! 8 ! ! した。 ﹂ ﹁││ペネトレイトォ ﹁ぬうっ ﹂ ! ﹂ き飛ばす。 ﹁武君 した。 ﹁の、殺⋮⋮ ﹂ ﹁レイナーレ。少々おイタが過ぎ││うおぉあ ﹂ 泣き腫らした目で夕麻を見つめる武。それを見た瞬間、夕麻は決意 ﹁ひぐっ⋮⋮ゆ、夕麻ちゃん ﹂ 壁を突き破り、憤怒に身を包んだ夕麻がオッサンを光り輝く槍で吹 !? 消えなさい ﹂ 死に体を曝しなさい 人の恋人に毒を齎す害虫は ﹂ ﹁ぶっ、ふっ、ごっ、ちょ、何でこんなに強っ、かぺっ ! する夕麻。 て振り下ろす。 ﹁ゆ、夕麻ちゃん 駄目だっ ﹂ ! ﹂ ﹁く、ふふふ⋮⋮倍返しだ。レイナーレ ││ズドンッ ﹃ズドンッ ﹄﹂ ! ﹁離れたまえ﹂ ピアス。 夕麻の心臓を貫いたモノ、それは軍用魔術の一つ⋮⋮ライトニング ﹁っかは⋮⋮ら、ライトニングピアス⋮⋮ッ﹂ ! ! 僅かな隙。しかし、それは戦場では命取りになり⋮⋮ ﹁た、武君 ﹃人を殺す﹄禁忌を恐れた武が夕麻を羽交い締めにし、隙を作らせた。 ! トドメとばかりに片手で持っていた槍を両手で掴み、全体重を乗せ ﹁あああぁ ﹂ マウントポジションをとり、容赦なくオッサン︵上司︶を串刺しに ! ﹁死になさい 麻に詰めより、高速で突かれる槍の餌食になる。 デスクを壊して吹っ飛んでいたオッサンがキリッとした表情で夕 !? ! ! ! ! !? 9 ? ! 身体から力が抜けた夕麻を蹴り飛ばすオッサン。羽交い締めして いた武も一緒に吹っ飛ぶ。 ﹁やれやれ⋮⋮戯れに配下に加えたのだが、やはり﹃女﹄は駄目だな。 夕麻ちゃん ﹂ その点、﹃男﹄は良い。そもそも││﹂ ﹁夕麻ちゃん う ﹂ ﹁嬉しくない 夕麻ちゃんを返せ このホモ野郎ッ ﹂ ! ﹁っ ﹂ 出し⋮⋮ 助けて ﹂ ! と叫ぶのは簡単。しかし、武は先程の一誠の言葉を思い ﹁た、たたた⋮⋮﹂ だ。私のマグナムをくらうといい ﹁⋮⋮ふう、視姦だけで済まそうと思ったが、生意気な子にはお仕置き 涙目でも怒りを剥き出しにして睨みつける。 ! ﹁││となってだな、君ももうすぐ私の配下となるんだ。嬉しいだろ うとする。動揺していて止血と言う考えに至らないようだ。 心臓を貫かれ、身動き一つしない夕麻を揺さぶり、意識を取り戻そ い。 オッサンが何かベラベラと喋っているが、武はそれどころじゃな ! ﹂ ? ﹂ ! を叫んだ。 ││◆││ ! が再生した。 ! 唖然としていた堕天使共に鉄拳が飛び交う。先程と同じパターン ﹁ああ、成る程ね⋮⋮そういう事か、よっ ﹂ ボロ雑巾と化していた一誠の身体が光り輝き、傷やボロボロの衣服 ﹁っ、またあの言葉か ﹂ 身の毛をよだつ悪寒には耐えれなかったようだ。武は呪いの言葉 ﹁た、助けてえぇ ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべて舌なめずりをするオッサン。 ﹁良い度胸だなぁ 言葉を呑み、睨みを強くする事に留まる。 ! 10 ! ! ? ! だが、宙を舞うのは堕天使共だ。 ﹂ そのままの勢いで助けを求めた武の元へ急行。 ﹂ ﹁だらっしゃあああ ﹁ぷげっ ! ていたオッサンを鉄拳制裁。 ﹁きめぇ﹂ ゆ、夕麻ちゃんを助けて 更に言葉で口撃も忘れない。 ﹁あ、あの ! 麻から離れる。 ? ﹁夕麻ぢゃあ゛ぁ゛ん ﹂ もう、大丈夫だ。と安心させる言葉を忘れない。 ている上着を武に掛け、頭を撫でる。 夕麻が息を吹き返したのを確認した一誠は笑みを浮かべ、自分の着 ﹁蘇生完了っと﹂ ﹁っかは⋮⋮﹂ 手の平から微弱な電撃を放ち、電気ショックを与える。 ﹁﹃雷精よ・紫雷以て・撃ち倒せ﹄﹂ 合していく。 ぼやきながらも懐から針と糸を取り出し、破損した心臓を高速で縫 ﹁⋮⋮堕天使としての姿になれば防げたんじゃないのか ﹂ 切羽詰まった状況に自然と目つきが鋭くなる。武は怯えながら夕 ﹁⋮⋮傷を見せろ﹂ ﹂ 夕麻が開けた穴から飛び込み、今正にマグナムを突き立てようとし ! まあ、それでも﹃お願い﹄を言っても良いよな という事で、俺は武に事情を説明した。 ? 同時に、言葉がないと俺はボロ雑巾になるしかない⋮⋮ 言葉を聞いてから強くなった。 そう。夕麻をぶん殴った時も、今回の時も、俺は武の﹃助けて﹄の 力を発揮出来ないみたいだしな⋮⋮﹂ ﹁気にすんな。どうも、俺はこいつの﹃助けて﹄と言う言葉がないと実 ﹁武君は本当に泣き虫ねぇ⋮⋮あ、あんた⋮⋮その、有難う﹂ ! 11 ! ﹁成る程⋮⋮予言者ね。てっきり頭のおかしい人かと思っていたわ﹂ ﹂ ﹁否定はしねえ。確かに最初が最初だしな⋮⋮まあ、それはおいとい て⋮⋮引き受けてくれるか ︶だな。 武の力を借りて今度こそ救ってやる。 先行き順調︵ ﹁ぼ、僕に出来るか分からないけど⋮⋮恩人の頼みは断れないよ﹂ ? ああ、後⋮⋮ホモオッサンはゲイバーにぶちこんどいた。 12 ? 愛すべき俺の嫁︵禁︶ 翌日。リアス・グレモリーの眷属になる為に行動を開始する。 眷属になる=悪魔になるのだが、武はその事を承諾しているからそ の点は問題ない。 問題なのは⋮⋮ ﹁神器が武君に宿っているのは間違いないのだけど⋮⋮何か鎖のよう なモノでがんじがらめにされてるのよね⋮⋮ご丁寧に南京錠まで付 いてるのが見えたわ﹂ 武が学園に行って授業を受けている時、俺は夕麻からそう聞かされ た。 どうやらこの夕麻、見えないモノを見る魔眼を持っているようで、 武の中に神器があるのを確認したと言う。 前回も所持してたかもしれないが、リアスに消し飛ばされてたか 13 ら、確認のしようがない。 ⋮⋮眠そうな目で内股を擦り合わせて難しい表情をしていたので 俺は二人に赤飯を贈ろうと決意した。 まあ、それはおいといて⋮⋮ ﹁って事は現状だとリアス・グレモリーが武を眷属に迎え入れる事は ない訳だ。メリットが無い﹂ ﹁そうなるわね。ところであんたが予言者の件。⋮⋮半信半疑だった けど、信じるわ﹂ ││堕天使共が裏切り者になったテメエに制裁を加えにやってく る。一人になっても警戒を怠るな。 それが昨夜別れ際に夕麻へ伝えた予言︵普通に考えれば分かる事+ 根回ししたのは俺︶。そして、それは的中し⋮⋮夕麻は九死に一生を 得たのだった。 ﹂ そういえば、レイナーレ︵夕麻︶以外の堕天使を見てないな。あい つも居なかったし⋮⋮ ﹁⋮⋮なあ、トルテって堕天使じゃないのか ? ﹁トルテ ﹂ キョトン、とする夕麻。こういう顔は珍しい⋮⋮と思いながら﹃堕 天使にミッテルトはいないのか﹄と再度尋ねる。 ﹁⋮⋮ああ、ミッテルトね。トルテなんて聞いた事ない名前だったか ﹂ ら⋮⋮ってそれはおいといて、上司のセクハラに反発してリストラさ れたわよ。どうかした 彼女はそんな事は一言も⋮⋮﹂ 空を見上げ、噴水に腰掛けていたのは水を吸って若干膨らんだゴス ﹁⋮⋮トルテ﹂ そして、そこに彼女は居た。 濡れる事はお構いないなしに俺は公園に向かった。 ﹁⋮⋮そういえば、あの時もこんな雨降りだったな⋮⋮﹂ るのを覚悟して走るしかない。 帰路に着く途中、雨が降ってきた。傘など持って来てない俺は濡れ ﹁⋮⋮うわっ、降ってきやがった﹂ 光線を発射する奴がいる。武に後程戦ってもらうつもりだ。 そう言って見覚えのある建物付近から離れる。建物の中には某、乳 ﹁分かったわ﹂ い。放課後、此処に集合だ﹂ ﹁ま、まあいい。それより武が神器を発現させない事には話にならな ⋮⋮地味に傷つくわー。 リアクションを期待していたが、スルーされた。 ﹁⋮⋮﹂ えている方が異常だ﹂ ﹁それは仕方ない。だって星が生まれる前に交わした約束だから。覚 新鮮だなぁ。 うろたえる夕麻。 ﹁ちょっと待って⋮⋮嫁 く浣腸ぶっ刺しとくべきだった⋮⋮人の嫁に何してやがる﹂ ﹁あのホモ野郎⋮⋮ゲイバーに放り込むだけじゃなく、ケツにいちじ ? ? ロリを着た金髪ツインテールの少女だった。 14 ? ﹁⋮⋮隣、良いか ﹂ 近づき、声をかける。少女は無言で頷いた。 ﹁⋮⋮よく降るな。五月雨って奴だな﹂ ﹁⋮⋮そっすね﹂ ちらっと俺を見た後、再び空を見上げる。 ﹁湿っぽいから⋮⋮一つ予言をしようか。実は俺、予言者なんだ﹂ ﹁⋮⋮そっすか﹂ ﹁ミッテルトと言う女の子は運命的な出会いをし、やがて幸せになる でしょう。そして運命の相手もまた、一日千秋の思いを経て巡り会 い、誰もが羨む夫婦としていつまでも幸せに暮らすでしょう﹂ ﹁⋮⋮そっすか﹂ 全く信じていない、と言う訳ではなく⋮⋮ほんの少しだけ、予言通 りになれば良いな、と少女ことミッテルトは思った。 ﹁予言は外れねえよ。俺の予言は百発百中。実を言うとな⋮⋮嬢ちゃ ﹂ んが此処に居るのも、居る理由も予言で知ったんだ﹂ ﹁マジっすか⋮⋮ 少しだけ声に元気が戻ってきたトルテが聞き返す。 ﹂ ﹁ああ。嬢ちゃんが此処に居るのは上司からセクハラされて反発し、 リストラされて行く当てもなくさ迷って辿り着いた。違うか ﹁当たってるっす﹂ ﹁凄いっす。驚きっす。ガチの予言者なんすね が見えなくて途方に暮れていたから。そうだろ ﹂ ﹁で、そんな死んだ魚のような目をしているのは行く当てもなく、未来 同じように会ったからだし。 まあ、夕麻から聞いた事だけどな。公園に居ると思ったのは前回も ? ﹂ 好物を前にして大人しくしていられない程、俺は飢えている、と言 も後悔した訳で⋮⋮ くっ、トルテは俺にとって﹃特別﹄な訳で⋮⋮護れなかった事を最 興奮して息がかかる距離まで近づいてきてる。 近い近い。顔が近い。 !? ? 15 ? ? えば分かるよな。 ﹂ ﹁もう一つ予言をしよう。ミッテルトの処女は予言者と出会ってから すぐに野外で頂かれるでしょう﹂ ﹁そ、それって⋮⋮﹂ 何かを察したトルテが顔を赤くする。 ﹁ミッテルト⋮⋮いや、トルテ。俺と家族にならないか ﹁⋮⋮不思議っすね。出会って間もないのに嫌じゃなくて⋮⋮寧ろ、 ウチからもお願いしたいと思ってるっす。まるで、そうなる事が当た り前とでも言ってる感じっすね⋮⋮﹂ そう言うとトルテは俺に抱き着いてきた。 雨で互いに濡れているのに、抱き合った身体は火傷してしまいそう に熱く感じた。 トルテは一度﹃火﹄が点くと積極的になる事を俺は身をもって知っ ている。 ﹁んっ、ちゅっ、ウチのファーストキスっすよ。ちゅぴっ、ふっ、ふ あっ﹂ 貪るように俺の唇に自らの唇を合わせるトルテ。それだけに留ま らず、舌を絡ませて淫らな水音を奏でる。 ﹁ちゅっ、ぴちゃっ、それは光栄だ。はむっ、ちゅぷっ﹂ 負けじと応戦し、俺も舌を絡める。酸欠覚悟で互いに行為に没頭す る。 ⋮⋮とは言え、Dキスで死亡とか笑えないし、序盤で終わるのも惜 しい。まだまだこれからだし、俺達はもっと愛し合うんだ。 俺とトルテは目だけで以心伝心を果たし、名残惜しげに唇を離す。 銀色の糸が伸び、雨によって洗い流された。 ││このトルテは俺が愛したトルテと違うと分かっていても、長年 付き添って会得したアイコンタクトを軽々と熟してしまう辺り、どう しようもなく﹃懐かしく﹄なる。 でも、それは駄目だ。俺が護れなかった前回のトルテにも、護りた いと思う今のトルテにも、失礼だ。 だから、俺は失った辛さを忘れず、二度と失わないと決意して﹃今﹄ 16 ? のトルテを愛するんだ。 ﹂ 雨で体温が奪われるのを理解した上で俺とトルテは互いに服を脱 がし合い、裸を曝す。 ﹁長引くと風邪を引くからな⋮⋮行くぞ ﹁大丈夫っす﹂ トルテが噴水の縁にしがみつき、顔を向けて頷く。それを確認した 俺は歳不相応に膨張した息子を秘部に差し込む。 ﹁うっ、くっ⋮⋮マジヤバっす。外見にそぐわぬ強者っす⋮⋮﹂ まだ先端しか入ってないのだが⋮⋮ というか、この頃の俺の息子はこんなに強くないんだが⋮⋮何つー か、戦闘力は低いくせに他の経験値だけは引き継いだ感じ。 例えるなら、強くてニューゲーム。 ただし引き継げるのは戦闘力に関係ないステイタス、図鑑、レシピ。 引き継げないのは戦闘力に関係あるステイタス、装備、CG集。 つまり、俺のステイタスはこんな所か 攻撃・1 防御・1 素早さ・1 魔力・1 精力・∞ 家事・∞ 交渉力・∞ 演技力・∞ そうこうしている内に雨音が強くなり、これ以上はヤバイと判断し た俺とトルテは行為を中断し、濡れた衣類を簡単に着る。 簡単=補導されないギリギリのラインで着崩す。パンツに至って は穿いてない。 ト ル テ ⋮⋮ ゴ ス ロ リ の み。俺 ⋮⋮ ジ ャ ケ ッ ト に ズ ボ ン の み。互 い に下着は身につけていない。 17 ? ? そしてトルテの手を引いて自宅に駆け込んだ。 余談だが、俺の両親は海外旅行に行っていたと両親からの電話で 知った。 ﹄ ⋮⋮武の影響か知らないが、所々俺の知らない状況が相次いでい る。 ﹃くしゅん また、互いに風邪をひき⋮⋮武の神器発現は後日となった上に某、 乳光線を発射する奴は討伐されたと言う。 や っ ち ま っ た 。 18 ! 愛しき君との出会いを思ふ 風邪を引いて寝込むと人は弱気になってしまう。 口が悪い俺も例外ではなく⋮⋮ 弱気になった事で昔を思い返してしまっていた。 ││◆││ グッバイ、俺の初恋。 そう言って天野夕麻への恋心を断ち切ろうとした俺。でも、初恋を 忘れる事は容易ではなく⋮⋮ アーシアが悪魔になる事で蘇った事は嬉しかった。でも、その一方 で夕麻の死を歎く俺が居て⋮⋮ リアス・グレモリーに忠誠を誓う俺 と リアス・グレモリーに殺意を抱くスレた俺 る相手に認められてもらえると言っていた。あいつは優しさのカケ ラもない自分勝手な奴だ。 19 が生まれていた。所謂二重人格と言うやつだ。 部長と言って甘えたり、セクハラを働く俺が居た。しかし、ふとし た時に天野夕麻を殺したリアスに殺意を向けている俺も居た。 ││天野夕麻は俺を殺した。リアスは俺を助けてくれた。 でも、交渉の余地は有ったんじゃないか 俺が夕麻の﹃助けて﹄を拒絶したのに交渉の余地は有ったのか 夕麻はアーシアの神器を奪って殺した。リアスは恩人だ。だから て消されるのを恐れた俺は彼女の命をリアスに売ったんだ。 あの時拒絶したのはリアスが恐ろしかったからだ。下手に逆らっ ? ? でもアーシアはレイナーレの行為に戸惑ってい 夕麻は死んで当然だ。 本当にそうか 俺とアーシアを殺したんじゃないか ? それはない。だってレイナーレはアーシアの神器を使って心酔す ? た。つまりそういう事だろう やむを得ない事情があって夕麻は ? それが全て演技だとしたら としたら 性は皆無に等しく⋮⋮ ﹁⋮⋮最後は此処か﹂ 今の俺達みたいに二重人格だった それにしては傘も差さずに何をしているんだ ? 俺にとって思い入れの深い公園に足を踏み入れる。 ﹁⋮⋮先客か ﹂ とは言え、リアスや眷属に滅ぼされた堕天使の生き残りが居る可能 生き残りを捜し始めた。 最終的に真実を知ると言う結論に行き着き、雨が降る中、堕天使の 何だか変な感じだ⋮⋮ 鏡 を 使 っ て 互 い の 意 見 を 交 わ し て い た 忠 誠 を 誓 う 俺 と ス レ た 俺。 い。 天野夕麻、或はレイナーレの知人に会い真実を明るみにすればい ⋮⋮確かに一理ある。なら、どうする。 ? ただ、空を見上げていた。 ﹁⋮⋮君、天野夕麻かレイナーレについて何か知らないか ? ﹁⋮⋮後者なら知ってるっすよ。今更、何を聞きたいんすか ﹂ ﹂ 降り続ける雨。噴水の縁に腰掛けた彼女はずぶ濡れになりながら、 ? ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮ や っ ぱ り 夕 麻 ち ゃ ん は 良 い 人 だ っ た ん だ な ⋮⋮ そ れ を 俺 は 前に私が殺す。大丈夫、機会を見計らって蘇生するから﹄と⋮⋮﹂ もアーシアも戦いに身を投じて欲しくない。だから、力を利用される び水となって望まなくても戦いに身を投じる事になる。でも、一誠君 ﹁先輩は言ってたっす。﹃力ある者は戦いを避けられない。それは呼 ﹁⋮⋮﹂ 力を利用されないために⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮全部、先輩が一人で行った事っす。お前とアーシアが身に宿す 実を知りたいと告げた。 空を見上げたまま、彼女は尋ねてきた。だから俺は事情を伝え、真 ? 20 ? ﹁⋮⋮後悔するよりもお前にはやる事があるっす。何か分かるっすか ﹂ ﹂ 此処にきて初めて俺と目を合わせた女の子。強気な目つきで俺を 真っ直ぐ見てくる。 ﹁⋮⋮利用されないように自分をしっかり持つ、か もあった。 ││◆││ ﹁んがっ⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮おはようっす﹂ ﹁⋮⋮おう﹂ ﹁ふふっ﹂ 微 笑 む 俺 の 嫁。や っ ぱ り 可 愛 い な ぁ ⋮⋮ っ て あ れ よな、俺達。 ﹁吸い取った⋮⋮ ﹂ 熱はウチが吸い取ったっす﹂ 寝 込 ん で た ﹁バリバリ全快っすよ。堕天使様々っすねぇ。あ、ちなみに御主人の ? 同時に、俺の二重人格がリアスに殺意を抱く者に固定された瞬間で ││それが、トルテとのファーストコンタクトだった。 す。それが、先輩亡き今、ウチに出来る事﹂ るっす。お前は演じる。苦しくて辛くなったらウチが癒してやるっ ﹁そ っ す。で も、そ れ は と て も 苦 し く て 辛 い。だ か ら 役 割 分 担 を す ? スロリメイド服を着せて一緒に来てもらおう。 さて、そろそろ武の様子を見に行くか。トルテは⋮⋮髪を染めてゴ どうりで頭が熱い=陽射しが強いと思ったよ⋮⋮ ﹁⋮⋮まあ、直せば良いから気にするな﹂ ﹁でも、放出先がまずかったっすね⋮⋮御主人の家半壊したっす﹂ ⋮⋮やだ、俺の嫁。マジカッケエ︵笑︶ ねぇ⋮⋮﹂ 砲﹄っす。先輩からは魔弾の射手とか大層な名前を付けられてたっす ﹁ウチの能力は熱を吸収し、波動エネルギーに変換して撃ち出す﹃魔 ? 21 ? また、目を離して失いたくないしな。 ││◆││ ﹂ ﹁あ、勇者様﹂ ﹁何故に勇者 ﹂ 良くってよ ? ﹂ か ﹂ ﹁はいっ。何か僕が頼んだら﹃ショトゥア最高 言って⋮⋮ショトゥアって何でしょうかね ! そんなモノ聞いた事ないぞ ⋮⋮夕麻が言っていた南京錠を外すには鍵が必要なのか。しかし、 ﹁⋮⋮確かに未知だな﹂ なる人の魂が宿って初めて使える未知のモノみたい⋮⋮﹂ ﹁うーん⋮⋮リア姉ちゃんも言ってたけど、何か僕の神器って﹃鍵﹄と すれば良い。後、神器を使えるようになる事だな﹂ ﹁それは気にしない方が良いぜ。今後だが⋮⋮リアスに従って行動を ⋮⋮リアスはショタコンだったのか。 ﹄とか ﹁僕にとっては勇者様だから、かな。後⋮⋮次はどうしたら良いです 奴。 待ち合わせ場所に行くと、武が居た。討伐相手は居ないのに律儀な ? ⋮⋮もしかしてリアスの眷属になれたのか ﹁次 ? 武の模擬戦が今、始まる。 フを取り出し、逆手に構える。 トルテが一誠の指示で太ももに付けたナイフホルスターからナイ ﹁まあいい。だったら今から模擬戦をして地力を鍛えるぞ﹂ ちょ、リアス⋮⋮主従逆転してんじゃねえか。 護ってくれるから心配はないんだけどね﹂ ﹁まあ、リア姉ちゃんは何故か僕が怪我しそうになったら身を挺して ? 22 ? ! ? 双覇一刀龍 模擬戦が始まり、武は考えが甘かった事を思い知らされた。 それに加え、油断していた。相手はメイド。メイドとは奉仕する存 在。 武は﹃戦える﹄メイドの存在を知らなかった。故に﹃戦えない﹄と 思い込み、逃げ続けてスタミナ切れによる降参を狙っていたのだが ⋮⋮ ﹂ ﹁とりゃあっす﹂ ﹁わあああぁ 何 で あ ん な に ヒ ラ ヒ ラ し た 服 で こ ん な に も 速 く 動 け る ん だ ろ う ⋮⋮そんな事を思いながら武はトルテの繰り出した技﹃魔焔拳・双打﹄ をマトモにくらい、吹っ飛んだ。 ﹁⋮⋮﹂ そして、二人の様子を見ていた俺はトルテが打撃戦を挑んだ事に軽 く驚いた。前回は槍を巧みに使っていたし⋮⋮ 同時に何の抵抗もなく吹っ飛んだ武に軽く失望も覚えた。 ││主人公は大きく分けて三つのパターンがある。 この世に生誕した際に特別な力を持つパターン。 生誕した際は弱いが、追い詰められて覚醒するパターン。 生誕した際も、追い詰められても何も変わらないパターン。 しかし、何れも最終的には世界を救ってたりする。その理由は力・ 知恵・勇気・特殊能力諸々が良い方向に働いたからだ。 だが、武は違う。何かあるかもしれないが⋮⋮一向にそれが見られ ない。 トルテが容赦なくボコるが、一般人と同じ、否、それ以下。される がままにボコられ、主人公補正が全く働いていない。 ﹂ ﹁学習系・蓄積系・反撃系⋮⋮どれも違う。もしかして武は主人公じゃ ないのか 23 ! そんな事思いたくないが⋮⋮可能性としては有り得る。﹃主人公に ? は主人公にしかない力がある﹄と言うのが王道だ。実際、俺が主人公 だった頃は主人公だけの力が有ったからな。 それは言わずと知れた赤龍帝の篭手。あれが主人公の証だと俺は 思う。 ﹁弱すぎっす﹂ やれやれと肩を竦めて俺の方に歩いてくるトルテ。それに対して 武は仰向けに倒れたまま身動き一つしない。胸が上下しているので 生きてはいるようだが⋮⋮ ﹁お疲れ。紅茶を煎れといたから﹃冷えきった﹄身体を暖めな﹂ いつの間に用意したのか、長机が置かれており、更にティーポット とティーカップも置いてあった。 ティーポットからティーカップに手慣れた動作で紅茶を注ぐと色 素が抜け落ち、真っ白になっていたトルテに手渡す。 24 ﹁有難うっす。でも御主人、これでは立場が逆っす﹂ 頬 を 膨 ら ま せ て 抗 議 す る ト ル テ。テ ィ ー カ ッ プ を 持 っ た 手 か ら 徐々にだが、色素が戻っている。 トルテは熱を吸収して放出する能力を持つ。それを利用する事で 使う技は体温︵熱︶を消耗する。その代わり、炎属性の特徴である﹃攻 撃に特化﹄した一撃をお見舞い出来る。 ﹂ ただし、やり過ぎると体温が無くなって冬眠する。現在の真っ白い 姿はその一歩手前を表す。 ﹁で、トルテから見て武はどんな感じだ こえ、ステイタスが倍加した。武の﹃Dragon﹄もその類だとし 赤龍帝の篭手を使った際、 ﹃BOOST﹄と言う音声が10秒毎に聞 そう返しながら、俺は一つの可能性を考えていた。 ﹁確かに怖いな﹂ Dragonと呪詛のように聞こえたのが怖いっす﹂ けて焦げないのは凄いっすね。後⋮⋮攻撃受けた際にDragon、 ﹁そっすね⋮⋮一言でいえば﹃弱い﹄っす。でも、ウチの魔焔を浴び続 自分の紅茶を煎れ、冷ましながら一口飲み、尋ねる。 ? たら ダメージを攻撃力に換算する神器だろうか もないが⋮⋮ 聞いた事も見た事 ﹁悩んでいても仕方ねえ。武、今日は此処までだ。早く立て﹂ 起き上がるように催促するが、指がピクリと反応しただけで起き上 がる事はない。 ﹁やり過ぎたっすかね⋮⋮﹂ ﹁少々な﹂ バツが悪そうな顔をしたトルテに言葉を返し、起き上がらない武に 手を差し延べる。 バチィッ た。 トルテ、何か言ったか ││Noble ﹁ん ﹂ ﹁何も言ってないっす。何か聞こえたっすか ﹁ああ、Noble││﹂ ││Dragon ││CrossDrive ? ? いた。 ﹁わわっ、御主人 ﹂ 倒れる一誠の身体を慌てて抱き留めるトルテ。 ウチみたいに冷たいっす !? ﹄ 蒼い刀が飛来し、トルテの額に刺さった。 ﹃待て待て そしてナイフを自分の心臓に突き立てようとした時││ ﹁ご、御主人が死んだならウチも⋮⋮﹂ のショックで治ったばかりの血の気が引いていった。 慌てて一誠の額や手の平に触るが、まるで死人のように冷たく、そ !? !? ﹁⋮⋮御主人の身体が冷たいっす ﹂ ﹃CrossDrive﹄と言う言葉が聞こえた途端、俺の意識が遠退 ﹁って⋮⋮﹂ ﹂ 触れた指先から全身に激しい電流が駆け巡り、思わず顔をしかめ ! ! 25 ? ? ? ﹁ぎゃおっす ﹂ ﹃斬新な悲鳴だな。取り敢えず分かった事を言っておくぜ。俺の魂が 本体を離れて武の腰に現れた刀に吸い込まれてたんだよ⋮⋮だから 魂を失った本体は死人みたいにな⋮⋮﹄ そう言って浮遊する刀からは確かに一誠の声がしていた。ポカン とするトルテだったが、理由を知ってホッと胸を撫で下ろした。 ⋮⋮トルテにとって一誠はナニモノにも換えられないものとなっ ており、死んだら後を追うのは確実である。 ﹃⋮⋮恐らく、これが武の神器だろうな。聞いた事も見た事もないが ⋮⋮多分こういう事だ﹄ 刀が床にゴリゴリと字を書いていく。 そこには次のような事が書かれていた。 ・武がダメージを受ける毎に﹃Dragon﹄の音声が聞こえる。そ れが神器にエネルギーを蓄積してる事を表す。 ・武と親密な関係になったものが触れた時、神器にエネルギーが溜 まっていた場合、相手を表す名称が音声として聞こえ、双方認識の元、 神器が発動する。 ・神器が発動すると、相手の魂は本体を離れて具現化した神器に吸 い込まれる。本体は魂を失った事で死人になるが、魂があれば蘇生は 可能。 ・以上の事から俺は武の神器を﹃双覇一刀龍﹄と名付ける。 ・由来は ﹃双覇﹄やがて覇道を歩む双方。 ﹃一刀﹄具現化された神器が一振りの刀。 ﹃龍﹄武から聞こえる音声が﹃Dragon=龍﹄。 ・最後に、あくまで推測である事を忘れないように。また、親密な 関係っていうのも誤解しないように。 ・俺↓手の掛かる弟みたいなもの。 武↓尊敬する勇者様 26 ! これも一つの親密な関係になると思われる。故に神器が発動した。 ﹃何故、Nobleなのかは分からねえがな⋮⋮﹄ ﹁そっすね﹂ 27 転入とやり直しの真実 双覇一刀龍を発動させると傷の治りも早くなるようだ。 瀕死状態だった武は何事も無かったかのように学園に向かい、今は HRを受けている。 その一方で俺は武に頼まれたのもあるが、今の所神器の発動条件を 転校生は男と女だ ﹂ 満たしたのが俺だけと言う意味で近くに居た方が良いと判断した。 つまり、そういう事だ。 喜べクズ共 ! ││◆││ ﹁転入生を紹介する ! ﹄と言う声と共に放たれたチョークに撃ち抜かれて静まり ﹂ ! スなやり取りに肩を竦めていた。 俺が居た世界とまるで違うぞ ? か﹃やり直し﹄ではなく﹃パラレルワールド﹄に迷い込んだのか ⋮⋮というか、何だこれ まさ 教室の外で待機していた転入生二人は室内で繰り広げられるカオ ﹁言ってやるな⋮⋮﹂ ﹁⋮⋮何すかね、このカオス﹂ どうやら、ロクでなしと何かあったようだ。 あのロクでなしめ、今度会ったらシメる ﹁全く⋮⋮何で私がこんなクズ共の教師をしないといけないんだ⋮⋮ この口調に容姿⋮⋮彼女はリズリザ。﹃あのリズリザ﹄である。 お分かりだろうか 返ると言う出来事があった。 れクズ共 その直後、男子生徒と女子生徒が歓喜の叫び声をあげ、教師の﹃黙 を合わせながら言った。 子供にしか見えない金髪の教師が浮遊魔術を使って生徒達と目線 ! ? 入生二人は室内に足を踏み入れた。 人知れず危惧していると室内から﹃入れ﹄と言う言葉が聞こえ、転 が難しくなるかもしんねえ。 だとしたら⋮⋮やべえ。何が起きてもおかしくないから、 ﹃護る﹄事 ? ? 28 ! ││◆││ ﹁訳あって駒王学園へ転入する事になった兵藤一誠だ。まあ、宜しく﹂ ﹂ ﹁同じく。ウチはトルテっす。野良メイドだった所を御主人、一誠に スカウトされてメイドになったっす。主人ともども宜しくっす 事前に打ち合わせた通りに自己紹介をする。 さりげなく室内を見渡すと一人だけペロキャンを舐めるのに夢中 ! つーか、何か目つきキツくね な白髪の女の子と﹃猫耳にしか見えない白髪﹄をした女の子と目が 合った。 一人は分かるが、もう一人は誰だ 何もしてないのに睨まれてる気がして嫌な感じだ。 ? 自己紹介を終え、俺は白髪女子二人に挟まれる形で空席に座り、ト ルテは﹃金髪ドリル﹄の隣の空席に座った。 図にすると 黒板 教壇 席 席 席 席 席 席 ドリル トルテ 席 白猫① 俺 白猫② ﹂ と言いたい所だが、クズ共はクズを気にして 席 席 席 席 と言った感じだ。 ﹁早速授業を始める るみたいだから質問時間とする 小生意気な幼女って感じがして寧ろ微笑ましい。 さて、予想通りの質問責めが始まるぞ。ククク、受けて立つ ││◆││ キーン⋮⋮ が終わりを迎えた。 チャイムが壊れているのか⋮⋮金的効果音と共に地獄の質問責め ! クズ、クズと酷い教師が居たものだ。まあ、見た目が見た目だから ! ! 29 ? ﹁し、死ぬ⋮⋮何だ、あのモンスターガール共は⋮⋮っ﹂ 前回の俺はエロ三昧で嫌われてたが、それをやめた結果、こうなっ た。 つまり、俺の見た目は良いらしい。だが、エロかったから前回は嫌 われていたと言う話。 聞いた話では﹃エロくなかったら付き合っても良い﹄と言っていた 女子が半数くらい居たと言う。 ちなみに情報源はクラスに溶け込んだアーシア・白音・レイヴェル だ。 ﹁⋮⋮どうぞ﹂ ﹁あ、ああ⋮⋮さんきゅ﹂ シュワード﹄と書かれた飴玉を手渡してきた。お礼を言っ ペロキャン︵五本目︶を舐めながら白猫その①こと塔城小猫が﹃疲 れに効く てズボンのポケットにしまう。 ちなみに本名は白音。名前が変わってると言う事は、前回と同じ過 去を歩んでいるのだろう。こればかりは仕方ない。 俺が目を覚ましたのは夕麻とのデート当日。それよりも前に白音 は不幸な目に遭っている。 もしも、その場面に立ち会えたなら⋮⋮死力を尽くして助けていた さ。 もう一度言う。こればかりは仕方ない。 ﹁はぁ⋮⋮リズリザ先生はあの駄目教師と違って立派だわ。教え方も 巧い、魔術実戦も巧い、それにあの容姿。最高だわ﹂ 白猫その②ことシスティーナが感極まった感じに呟き、 ﹃鼻血﹄を垂 らしていた。⋮⋮俺は見なかった事にした。 関 わ る と や ば い 。 ││◆││ 昼休み。俺は屋上で黄昏れていた。 幸い、授業レベルは俺が居た世界と変わらなかった。遅れはとらな くて助かった。 30 ! ただ一部を除いては。 魔術教科って何だよ⋮⋮魔力が皆無に等しい﹃今﹄の俺がマトモに 魔術を使えると思っているのか 無理に決まってんだろ ! 楽しくて女の衣類を粉砕してたのやら⋮⋮ だってよ、 ﹃親密な関係になれば﹄頼むだけで見せてくれるんだぜ あったな。 ・主人公より脇役が目立つ。 ・主人公を上回るハーレム。 ・主人公覚醒の踏み台 ・大抵死ぬ ⋮⋮補正が働いたりして死にたくねえなぁ。 ガチャ。 屋上に続く扉が開かれ、トルテ+三名が現れた。 ﹁御主人。皆もお昼ご一緒したいそうっすよ∼﹂ ﹁⋮⋮くよくよすんなよー﹂ ﹂ ﹁わ、私も魔術教科は散々でしたの。だから心情お察ししますの ﹁最初は皆躓くものよ。私もそうだったから﹂ ﹁お、おお⋮⋮さんきゅ。慰めてくれてるんだよな ⋮⋮これ、脇役補正か ﹂ まだ出会って間もないのに女子三人が俺に気を遣うとか⋮⋮つー ? ! そ う い え ば ⋮⋮ 主 人 公 補 正 以 外 に も 脇 役 補 正 っ て の も 物 語 に は 良いだろ わざわざ嫌われるような事するより双方嫌な気分にならない方が ? まあ、もう使わないけど。何つーか⋮⋮冷めた。あの頃の俺は何が 衣技だからなぁ。 あれか。ドレスブレイクの経験が生かされたからか。あれは﹃脱﹄ ただ、どういう訳か﹃脱﹄がつく魔術は普通に使えるんだよな。 赤龍帝必殺のドラゴンショットも米粒規模だったのに⋮⋮ ! ? 31 ? か、白音。テメエ、そんな口調だったか トクンッ⋮⋮ 少しときめいちまった。 小猫︵白音︶ 好感度+ レイヴェル 好感度+ システィーナ 好感度+ トルテ 好感度MAX と言った所か ? レ イ ヴ ェ ル が 既 に 駒 王 学 園 に 居 る 事 と か、気 に す る の は や め た。 色々と違い過ぎてツッコミきれねぇ⋮⋮ 32 ?
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