COP21 直前 ミャンマーセミナー・メモ_2015/11/27 COP21直前セミナー: 「村の未来は石炭火力発電では創れない」 ―ミャンマー各地から日本へのメッセージ ― 【日時】2015年11月27日(金)18:00~20:30 【場所】地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)国連大学1F 【主催】FoE Japn、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、 メコン・ウォッチ、気候ネットワーク 【場所】350.org、A SEED Japan、アーユス仏教国際協力ネットワーク、 Fair Finance Guide Japan 【プログラム】 1.日本が海外で支援する石炭火力発電の問題とミャンマー電力計画への日本の関わり 2.ミャンマー市民社会から日本への要請書(逐次通訳) 3.日系企業が石炭火力発電事業を計画中の各地から日本に対するメッセージ(逐次通訳) 1)モン州より 2)エーヤワディー管区より 3)タニンダ―リ管区より [発表内容] 1.日本が海外で支援する石炭火力発電の問題とミャンマー電力計画への日本の関わり (メコン・ウォッチ 土川氏) 日本と世界各国の石炭火力への支援についての概要を提示するとともに、日本が海外に 輸出している石炭技術、特に大気汚染に関する公害対策技術が国内と同等の性能(高効率 かつ汚染物質の排出濃度も少ない)を有しないことが調査により明らかになっています(No Coal、Go Green!ウェブサイト掲載の「事業の問題」ファクトシート3の比較表参照)。JBIC の公的融資の環境審査は、現地基準に準ずる、もしくは世界銀行の基準に準ずるとなって いるため、日本より低いレベルとなってしまい、ミャンマーでも同様の状況となり、現地 の環境破壊や住民の健康被害の原因となることが懸念されます。 2.ミャンマー市民社会から日本への要請書 「ミャンマーと石炭:日本の関与とミャンマー市民からのメッセージ」(DDA タンズィン 氏) 現地での状況を報告し、石炭火力発電所の建設への反対意思を示すために来日しました。 ミャンマーでも石炭採掘が行われていますが、石炭の質はあまり良くありません。ミャン マー政府は石炭採掘量を増やしていく考えですが、ミャンマーの発電における石炭の割合 は2%程度しかありません(稼働中なのは 1 基、2 基は石炭不足のために停止中、計画中が 14 基ある) 。しかも世界は石炭への投融資を制限する方向に進んでいます。 ミャンマーの発電所建設候補地は国境に近い場所にあることが多いのですが、国境付近 は政治的に不安定です。国境付近に多い理由は、タイなどの隣国に電力を供給(売電)す るからで、今後の石炭火力発電所計画も売電のための設備増強であることが多いのが実情 です。国内で利用する電力の供給としても、送電設備(グリッド)の整っていないミャン マーで大型の石炭発電により電力を補おうとする国のエネルギー政策は間違っていると考 1 COP21 直前 ミャンマーセミナー・メモ_2015/11/27 えています。複数の村落が団結して抗議行動を起こしており、反対運動にかつてないほど の人数(6000 人程度)が参加した村もありました。 今回、JBIC、JICA に提出した要請書では、彼らのガイドラインに則した開発が現地で行 われていないことを示しました。政治的な判断で建設計画が進められても現地住民にとっ てはプラスになりません。気候変動を防ぐため、ミャンマーの住民が望む方向に、単なる (短期的な)資金投資のことを考えるのではなく、長期的な視野を持って人と人がつなが っていければと願っています。 3.日系企業が石炭火力発電事業を計画中の各地から日本に対するメッセージ 1)モン州より(Andin Youth ニーマーウー氏) TTCL が進める石炭発電所建設が地元住民に与える悪影響について、また、同事業への住 民の建設反対の意思を伝えるために来日しました。村民の主な生計手段はビンロウジ(植 物)等の生産ですが、他の農業や漁業に従事する村民や、村外からの移住就労者もいます。 この伝統的な村の生活が石炭火力発電所の建設によって壊されることを懸念しています。 村民は現在の生活に満足しており、石炭火力は要らないのです。 TTCL は、村の権利を無視するようなやり方で事業を進めており(住民の読めない英語の 文書のみの提示、賛成署名の偽造、石炭火力は良いとのプロモーション、アンディン村か ら 14 マイルも離れた場所で開催された説明会など)、住民の知らない間に TTCL とミャン マー政府の間で MOA(合意覚書)が締結されていました。村から1マイル(2 キロ弱)の 距離に建設される発電所で作られる電気は村に供給されません。そんな発電所の建設に村 民は強く反対しています。 *関係各社に書簡を届け、意見交換を行ったが、TTCL の筆頭株主である東洋エンジニアリ ングは面談等を一切拒否したため、話を聞いては貰えず、同本社受付窓口での書簡の提出 のみとなった。 2)エーヤワディー管区より(BBDN モーチョートゥ氏) エーヤワディー管区は、ベンガル湾とアラカン山脈にはさまれた細長い土地で、飲料水 の確保が非常に難しい地域です(特に乾季の 3-4 月は厳しい)。主な産業は漁業と農業で、 稲作と南京豆の栽培がおこなわれています(稲を刈り取った後に豆を植える二毛作) 。電力 に頼る仕事はなく、1 日 4 時間電気があれば事足りる生活をしています。 ミャンマー政府は 2016 年にこの地域にも電力を供給すると計画していますが、村の自然 が破壊されることを恐れています。村には昔ながらの林や森の風景が残り、海側にもサン ゴ礁のある美しい風景を有し(東南アジアで最も長い海岸線をもつリゾート地としての利 用が考えられるほどの景観と環境がある)、エコツーリズムで地域を発展させていきたいと 考えています。この美しい環境を守るために反対運動を進めています。 石炭火力発電所への反対署名を 8684 名分集め、ミャンマー政府、三菱のヤンゴン事務所、 三菱商事本社に提出しました。 ミャンマー政府やエーヤワディー管区の行政は住民の同意がなければ計画を進めないと 公言していますが、住民の意に反して建設が進むことが懸念されます。住民の要望ではな く企業の要望に沿って開発計画を進めていることを知ってもらいたいのです。 3)タニンダーリ管区より(Southern Youth サングウェ氏) 丸紅が関わる石炭火力発電所計画に対する懸念を伝えるために来日しました。2014 年 10 月にミャンマー政府と丸紅の間で MOU が結ばれましたが、住民はその事実を知らされてい ませんでした。 地域では、 自生するカンゾーオイルの木からのオイル採集を 150 年も前から行っており、 自然のサイクルに則した豊かな暮らしをしてきました。川魚の収穫もあり、自然の恵が生 活の糧となっています。 丸紅他、複数の企業の出資により火力発電所の建設計画が進んでいますが、タニンダー リ管区は特殊な土地です。ここでは2つの政府(ミャンマー政府とカレン少数民族による 政府)による二重支配(二重行政)が行われており、政治的に不安定です。現在は停戦状 2 COP21 直前 ミャンマーセミナー・メモ_2015/11/27 態にありますが、停戦調停後も小競り合いは起こっており、ミャンマー政府とカレン族(カ レン民族同盟(KNU:自治・分離運動組織))の間の争いがいつ再発するかも分からない不 安定な地域です。土地の所有権も曖昧なため、土地収用においても問題が生じると懸念さ れます。このような場所に発電所を建設することはリスクが大きいと丸紅に伝えました。 状況をきちんと把握し、建設計画を中止することを望みます。 [質疑応答] Q. NLD に政権が移ったときにどのように変わると考えるか? A. NLD は、環境問題の専門家やエネルギー関係の人を地域の会合に参加させ、発電所 反対に賛同してくれたが、管区の行政担当者の中には賛成派と反対派が混在している。た だ、これは選挙前のことなので変わっていく可能性はある。 現政権が決めたエネルギーのことを含めたプランがあるので、来年政権が交代しても、決 まってしまった政策を覆していくには時間がかかる。現政権は国民の声を聞かず、企業の 要望や利益を重視してきた。NLD は国民の声を尊重して、政策を変えていってくれること を祈っている。ミャンマー国民の全く望まない支援につき、日本政府とミャンマー政府間 で合意が結ばれているのは残念。今後の国の変化に期待したい。 Q. それぞれの建設計画の進捗状況は? A. 各自回答 ・モン州アンディン村では MOA(合意覚書)が結ばれた状態だが、着工はしていない。TTCL が村に来た際に住民が追い返したので、それ以来何も進んでいないが、心配は続く。 ・ガヨーカウンは MOU(覚書)までも進んでいない。 ・タラブウィンは 2014 年 10 月に MOU が調印されたが、 住民がそのことを知ったのは 2015 年 3 月で、それ以来反対運動をしている。このままでは着工にまで至らないだろうと考え ている。 Q. 土地の所有が不明とはどういうことで、どんな問題が生じるのか? A. ミャンマーの法律では土地、空気、水も“国”の所有と書かれているが、“国”の認識が 異なる。政府は「国=政府」と言い、住民は「国に民も含まれる」と考える。さらにミャン マーの国の地図は、政府が作るものとカレン民族同盟(KNU)が作るもので異なり、地図 として出てくるものも複数存在するという状況にあるため、地図上の“国”も確固としたもの がない。二重管轄が行われている地域では、住民登録も土地利用登録もミャンマー政府と KNU の両方にしなければならない。つまり書類上の所有と権利が曖昧になっているので、 そのような土地で収用が行われると混乱が生じる。そのことを日本企業、関係機関に理解 してほしいと思っている。ミャンマー政府とだけ話をしてきた日本企業に住民の声も聞い てもらいたい。 Q. 気候変動による海洋環境などへの被害状況は? A. ミャンマーは気候変動の影響を受けやすい国の1つであると認識しているし、今年 も全国的に大規模な洪水が発生しており、気候変動の影響は出ている。現政府は今以上の 森林伐採をしないと約束しているが、(地図上も事実上も)森林の区分けが難しいし、既に 自然林ではないところもある(自然林と植林地の混在) 。これ以上伐採しないと言っていて も信用できない。 3
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