平成18年度 事業原簿(ファクトシート) 平成18年 平成19年 制度・施策名称 事業名称 推進部署 事業概要 4月 1日作成 3月現在 海外炭の安定供給確保 海外地質構造調査 コード番号:P80005 石炭事業部 海外における石炭資源開発を誘導するため、発展途上国などにおいて相 手国と共同で地質構造調査等の基礎的調査を実施する。 平成18年度は以下の事業を実施した。 ①日本・ベトナム石炭共同探査(クアンニン地域プロジェクト) 主要石炭資源保有国であるベトナムにおいて、賦存が限定される日本へ の石炭輸出向け高発熱量炭を開発するため、クアンニン省クアンニン炭田 の深部地域を対象とした石炭資源調査を行い、石炭資源量を把握するとと もに、採掘計画素案を策定する。本プロジェクトは平成16年10月に相 手国石炭・鉱物工業グループとの間で調印した MOU に基づき調査に着手、 平成18年度は第3年次として、4地域の試錐及び地質解析からなる調査 結果の中間評価を行い、精査を行う地域を選定する。選定後はフェーズ2 として精査を実施する。 ②日本・インドネシア石炭資源解析調査 アジア太平洋地域においては、中長期的にエネルギー需要、特に石炭需 要の大幅な増加が予想されており、石炭需給の将来に亘る安定確保が重要 な課題である。アジアの主要石炭資源保有国であるインドネシアの石炭資 源を体系的に評価・解析するため、南スマトラ炭田の未開発地域を対象と した石炭資源解析調査を行い、資源量及び炭質を把握するとともに、石炭 供給ポテンシャルを評価する。本プロジェクトは平成17年1月に相手国 エネルギー鉱物資源省地質鉱物資源総局との間で調印した MOU に基づき調 査に着手した。平成18年度は第3年次として、南スマトラ地域の20地 区の既存探査データの収集・デジタル化、地質解析モデリングを実施し、 石炭資源量・埋蔵量の評価を行うともに、解析・評価システムの基礎とな る基本システムを構築する。また、インドネシア及び日本においてシステ ムのデモンストレーションを行い関係者の意見の聴取を行うともに、外部 有識者の意見を取り入れてフェーズ1の中間評価を行う。 ③日本・モンゴル石炭共同探査(東ゴビプロジェクト) 資源ナショナリズムが台頭している現状をかんがみると、モンゴルは我 が国にとって重要な供給国の一つとなり得ると推測される。 同国東ゴビ地域はこれまで十分な資源探査が実施されていないが、良質 の石炭が賦存する可能性があり、かつ基幹インフラであるシベリア鉄道周 辺に位置することから、今後の石炭開発の高いポテンシャルを有している と考えられる。本プロジェクトは、東ゴビ地域を対象とし、モンゴル産業 貿易省との間で平成18年2月に MOU を締結した。平成18年度は第2年 次として、主に対象地域北部域において、地表踏査、空中磁気探査を実施 する。また、既存資料の収集、地質解析、各種調査結果のデータベース化 も実施し、石炭資源開発有望地域の選定に資するデータを取得する。 事業規模 事業期間:昭和57年度∼ [百万円] S57∼H17 年度 H18 年度 H19 年度 合 計 (予定) (総額実績) (実績) 予算額 10,566 750 721 12,037 執行額 9,160 664 ― 9,824 1.事業の必要性 我が国の一次エネルギー供給において、石炭は石油に次いで約 20%を占めるとともに、そ の約 99%を海外に依存し、輸入量は年間約1億 7700 万トン(18年実績)と世界最大の石 炭輸入国である。石炭は他の化石燃料と同様に減耗性のある資源であることから、中長期的 な視点で石炭資源の継続的な探鉱・開発が必要である。特にアジア地域においては、経済発 展に伴う石炭需要が今後も年率3%程度と高い伸び率が見込まれており、地域のエネルギー 安定確保を図るためには、当地域に豊富に賦存する石炭資源の開発・利用を進めるとともに、 さらに産炭国の石炭供給力の拡大により、我が国への石炭安定供給及び適正供給を図ること が必要である。 また、最近の石炭市場は、アジア地域を中心とした需要の増加、石炭輸出や自給自足が可 能であった産炭国での石炭輸入の増加から、現在世界の石炭需給がタイト化しており、さら に原油高騰も後押しし、市場価格が高値で推移している。 そのため、民間企業のみではリスクが高い開発途上国において民間企業の調査及び開発等 の活動を誘導するため、当該産炭国において NEDO 技術開発機構と相手国との共同による先行 的な地質構造調査等の基礎的調査を実施することの意義は高い。 特に、主要供給国である豪州では、積み出し港での滞船等による船賃が高騰していること、 また中国では国内需要増加により、石炭の輸出が制限されていることから、これを補完すべ く、本事業を通して主要石炭供給国であるインドネシア、ベトナム及びモンゴルでの石炭供 給ポテンシャルを確認することは重要である。 2.事業の目標、指標、達成時期、情勢変化への対応 ①目 標 石炭の賦存が期待される有望地域における石炭の有無、拡がり等を確認することにより、 炭質、石炭賦存量、石炭層の地質構造を解明し、石炭資源開発の可能性等(具体的には石炭 層を物理的及び環境制約下における開発の可能性)を把握する。 ②指 標 ・把握した石炭賦存の有無、賦存地域、炭質、埋蔵量 ・調査結果を基に開発に移行した件数 ・調査結果を基にした近隣地域での開発件数(情報の外部性に基づく開発可能性) ③達成時期 未定 ④情勢変化への対応 市場タイト化により、石炭資源量の安定確保のニーズが高まる反面、環境に配慮した石炭 開発が求められている。また、現状では炭量確認、採掘計画素案策定を含む石炭資源のポテ ンシャル評価にとどまっているが、資源有効利用の観点から、オプションとして山元火力発 電所、石炭ガス化、ブリケット、低品位炭の場合 UBC(Upgraded Brown Coal:脱水による改 質技術)プロセスなどの適合性評価まで、調査範囲を広げる様、相手国からの要望もある。 このため、該当地区に賦存する石炭の特性を活かせる様、CCT(Clean Coal Technology:石 炭をきれいに効率よく使う技術)適合性調査も視野に入れた対応が必要。 3.評価に関する事項 ① 評価時期 毎年度 :プロジェクトごと 平成19年度:事業全体(中間評価) ②評価方法(外部or内部評価、レビュー方法、評価類型、評価の公開方法) 毎年度 :内部評価(成果報告会などを捉えたユーザーアンケートを実施し、 プロジェクトごとの評価を行う。) 平成19年度:外部評価(プロジェクトごとの炭鉱開発状況、生産状況等の調査を実施し、 有識者及びユーザーに対するヒアリング等の外部性を反映させた 事業全体の評価を行う。 ) [添付資料] (1) (2) (3) (4) 平成18年度概算要求に係る事前評価書(経済産業省策定) (略) 海外地質構造調査費補助金交付要綱 (略) 平成18年度実施方針 (略) 平成18年度事業評価書 平成18年度 事業評価書 作成日 制度・施策名称 事業名称 担当推進部 海外炭の安定供給確保 海外地質構造調査 石炭事業部 平成19年 9月21日 コード番号:P80005 0.事業概要 海外における石炭資源開発を誘導するため、発展途上国などにおいて相手国と共同で地質 構造調査等の基礎的調査を実施する。なお、相手国と締結する協定書(MOU)には「日本 の優先交渉権(利用権) 」を含めており、我が国の国益に繋がるものである。 平成18年度は以下の事業を実施した。 ①日本・ベトナム石炭共同探査(クアンニン地域プロジェクト) 主要石炭資源保有国であるベトナムにおいて、賦存が限定される日本への石炭輸出向け高 発熱量炭を開発するため、クアンニン省クアンニン炭田の深部地域を対象とした石炭資源調 査を行い、石炭資源量を把握するとともに、採掘計画素案を策定した。本プロジェクトは平 成16年10月に相手国石炭・鉱物工業グループとの間で調印した MOU に基づき調査に着手、 平成18年度は第3年次として、1地域の概査と4地域概査の結果を取りまとめ、中間評価 により精査地域を選択し、精査地域において主に試錐による調査を実施した。 ②日本・インドネシア石炭資源解析調査 アジア太平洋地域においては、中期的にエネルギー需要、特に石炭需要の大幅な増加が予 見されており、石炭需給の将来に亘る安定確保が重要な課題である。アジアの主要石炭資源 保有国であるインドネシアの石炭資源を体系的に評価・解析するため、南スマトラ炭田の未 開発地域を対象とした石炭資源解析調査を行い、資源量及び炭質を把握するとともに、石炭 供給ポテンシャルを評価する。本プロジェクトは平成17年1月に相手国エネルギー鉱物資 源省地質鉱物資源総局との間で調印した MOU に基づき調査に着手した。平成18年度は第3 年次として、南スマトラ地域の20地区の既存探査データの収集・デジタル化、地質解析モ デリングを実施し、石炭資源量・埋蔵量の評価を行うとともに、解析・評価システムの基礎 となる基本システムを構築した。また、インドネシア及び日本においてシステムのデモンス トレーションを行い関係者の意見の聴取を行うともに、外部有識者の意見を取り入れてフェ ーズ1の中間評価を行った。 ③日本・モンゴル石炭共同探査(東ゴビプロジェクト) 資源ナショナリズムが台頭している現状をかんがみると、モンゴルは我が国にとって重要 な供給国の一つとなり得ると推測される。 同国東ゴビ地域はこれまで十分な資源探査が実施されていないが、良質の石炭が賦存する 可能性があり、かつ基幹インフラであるシベリア鉄道周辺に位置することから、今後の石炭 開発の高いポテンシャルを有していると考えられる。本プロジェクトは、東ゴビ地域を対象 とし、モンゴル産業貿易省との間で MOU を平成18年2月10日に締結した。平成18年度 は第2年次として、主に対象地域北部域において、地表踏査、空中磁気探査を実施した。ま た、既存資料の収集、地質解析、各種調査結果のデータベース化を実施し、石炭資源開発有 望地域の選定に資するデータを取得した。 1.必要性(社会・経済的意義、目的の妥当性) 我が国の一次エネルギー供給において、石炭は石油に次いで約 20%を占めるとともに、そ の約 99%を海外に依存し、輸入量は年間約1億 7700 万トン(18 年実績)と世界最大の石炭 輸入国である。石炭は他の化石燃料と同様に減耗性のある資源であることから、中長期的な 視点で石炭資源の継続的な探鉱・開発が必要である。特にアジア地域においては、経済発展 に伴うエネルギー需要が今後も年率3%程度と高い伸び率が見込まれており、地域のエネル ギー安定確保を図るためには、当地域に豊富に賦存する石炭資源の開発・利用を進めるとと もに、さらに産炭国の石炭供給力の拡大により、我が国への石炭安定供給及び適正供給を図 ることが必要である。 また、最近の石炭市場は、アジア地域を中心とした需要の増加、石炭輸出や自給自足が可 能であった産炭国での石炭輸入の増加から、現在世界の石炭需給がタイト化しており、さら に原油高騰も後押しし、市場価格が高値で推移している。 そのため、民間企業のみではリスクが高い開発途上国において民間企業の調査及び開発等 の活動を誘導するため、当該産炭国において NEDO 技術開発機構と相手国との共同による先行 的な地質構造調査等の基礎的調査を実施する必要がある。 特に、主要供給国である豪州では、積み出し港での滞船による船賃が高騰していること、 また中国では国内需要増加により、石炭の輸出が制限されていることから、これを補完すべ く、本事業を通して主要石炭供給国であるインドネシア、ベトナム及びモンゴルでの石炭供 給ポテンシャルを確認することは重要。 2.効率性(事業計画、実施体制、費用対効果) ① 手段の適正性 開発途上国政府と共同で先行的な地質調査を実施し、石炭資源量等を把握して炭鉱開発へ の誘導を図っているが、開発途上国等では民間企業ベースでの地質調査の実施の困難性が高 いことから、日本国政府が主導し、地質調査を実施することは適当である。また、民間企業 のみではリスクの高い国において先行的な国ベースでの地質構造調査の結果得られた情報に よって、調査地域及び隣接地域において石炭資源開発の可能性を高め、価値を上昇させる等 の情報の外部性が認められることからも、日本国政府が係わるべきである。 調査計画は、前年度調査結果を踏まえた上で、地質学的に必要最低限の情報収集を目指し て立案されており、ローリングプラン方式(結果をリバイスしながら計画していく方式)の ため、効率的な調査方法となっている。また、試錐工事費用を削減するために地震探査も取 り入れており、少ない費用で最大限の調査結果を得るよう努力している。 調査体制としては、相手国政府機関と共同実施の体制をとっており、当該地域の調査経験 を活かせ、地域住民との用地補償交渉など調査に付随するロジスティック面でも負担を軽減 することができる。また、実施国自らまたは国営石炭会社が、当該地区の将来の石炭開発実 施者となる可能性が高いことからも、調査の段階より、相手国政府機関と共同実施体制を組 むことは有効である。 ② 効果とコストとの関係に関する分析 本事業により、これまで中国、インドネシア等で 10 件のプロジェクトを実施し、約 88 億 トン(約 57 兆円相当:@54$/t、120 円/$で換算)の資源量を確認している。うち3プロジ ェクトが開発済みであり、年間約 1,050 万トン(約 680 億円相当)を生産しており、さらに、 4プロジェクトが開発中であり、今後の当該産炭国の供給力の向上により我が国の石炭輸入 量の確保に貢献することになる。 インドネシア石炭資源解析調査は、南スマトラ地域 20 地区の解析・評価を行うことにより、 石炭資源量は約 400 億トン、試算埋蔵量は 260 億トンとなった。 ベトナム・クアンニン地域プロジェクトにおいては、4地区の石炭資源量約 6.1 億トン、 約4兆円相当(@54$/t、120 円/$で換算)の石炭資源を確認したことになる。 モンゴル・東ゴビプロジェクトにおいては、北部域の地質構造の概略、炭層の分布状況、 石炭品位に影響を与えると考えられる火成岩の分布が把握できた。今後の調査により炭田の 分布、資源量、炭質等石炭開発ポテンシャルが判明するにつれ、効果とコストがより的確に 把握されることとなる。 3.有効性(目標達成度、社会・経済への貢献度) ・相手国と締結する協定書(MOU)には「日本の優先交渉権(利用権)」を含めており、我 が国民間企業が将来の開発に参画することが優先的に可能となるなど、本事業の実施は、 我が国の国益に繋がるものである。 ・ベトナム・クアンニン地域プロジェクトでは、マオケー、ケーチャム、ケータム、ハーラ ムの 4 地域の中から精査を行う1地域を選択し、ケーチャム地区においてボーリング調査 を実施している。その結果、深部域における重要な炭層の分布が明らかになってきている。 ・インドネシア石炭資源解析調査では、南スマトラ地域において、これまでの NEDO、インド ネシア政府、国営企業及び私企業が有する 726 本の試錐、1,788 カ所の露頭、3,027 試料の 石炭分析結果等の地質情報をデータベース化でき、当該 20 地区の地質モデリングを構築す ることができた。これにより有望石炭鉱区発掘のツールとなることが期待できる。 ・モンゴル・東ゴビプロジェクトでは、北部域の地質構造の概略、炭層の分布状況、石炭品 位に影響を与えると考えられる火成岩の分布が把握でき、石炭鉱床の有望地域を選定する 上での有益なデータが得られた。 4.優先度(事業に含まれる各テーマの中で、早い時期に、多く優先的に実施するか) 特記事項なし 5.その他の観点(公平性等事業の性格に応じ追加) 特記事項なし 6.総合評価 ①総括 石炭安定供給を支援する当該事業は、我が国のみならず、相手国にとっても石炭資源ポテ ンシャルを確認する上で意義がある。 ベトナム・クアンニン地域プロジェクトは、概査4地区の中からケーチャム地区がフェー ズ2の精査地区として選択され、主に試錐工事によって深部での主要炭層の分布が明らかに された。次年度も引き続き試錐工事等を実施し、炭層分布の把握に努める。 インドネシア石炭資源解析調査は第3年次として、南スマトラ地域において、これまでの NEDO、インドネシア政府、国営企業及び私企業が有する 726 本の試錐、1,788 カ所の露頭、 3,027 試料の石炭分析結果等の地質情報をデータベース化でき、地質解析モデリングを実施 した。引き続き今後は、これらの解析データをクラス分けし、公開方法の検討することで、 同国の石炭鉱区管理システムの基礎となるばかりでなく、有望石炭鉱区発掘のツールとなる ことが期待できる。 モンゴル・東ゴビプロジェクトでは北部域の地質構造の概略、炭層の分布状況、石炭品位 に影響を与えると考えられる火成岩の分布が把握でき、石炭鉱床の有望地域を選定する上で の有益なデータが得られた。 ユーザーアンケートでは、民間企業が独自に調査することが難しい国や地域についての情 報や概要を把握することができるので評価できるとの結果であった。また、ロシアやインド 等の他の国や地域についても調査を要望する意見もあった。 ②今後の展開 ・ベトナム・クアンニン地域プロジェクトにおいては、中間評価によりフェーズ2へ移行し 試錐工事等を実施しているが、これらに加え、深部における炭層の賦存を包括的に把握す るための地震波探査を実施する。 ・インドネシア石炭資源解析調査では、中間評価においてフェーズ2への移行が適当という 結果が得られたため、平成19年度年度計画を調印後、東・南カリマンタン地域において、 各種データのデジタル化、地質解析モデリングを実施するとともに、公開用データベース 作成に向けた石炭資源解析・評価システムの設計・構築を行う。 ・モンゴル・東ゴビプロジェクトでは、平成19年度年度計画を調印後、フェーズ1として 東ゴビ地域南部を対象に、既存資料の収集、地表踏査、空中磁気探査及び地質解析を実施 する。また、フェーズ1の調査結果について中間評価を行い、精査対象地域の選定を行う。 ・上記の3事業の他に、地質構造調査の実施可能な国や地域について、現地調査や相手国政 府機関との交渉を行う。調査の実施が適当と認められれば、相手国政府と MOU を結び、新 規プロジェクトとして公募を行い、調査を開始する。
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