葛丸川流域基本計画 (PDFファイル 1.2MB)

葛 丸 川 流 域 基 本 計 画
~活 気 あふれる葛 丸 川 流 域 をめざして~
花
巻
地
方
0
振
興
局
目
次
第1章
はじめに
(2 )
第2章
葛丸川流域の現状と課題
(2 )
1 流域の概況
(2 )
2 現状と課題
(3 )
(1) 森 林 の 保 全
(2) 河 川 の 整 備
(3) 農 業 用 水 の 保 全
(4) 河 川 水 質 の 保 全
(5) 希 少 野 生 動 植 物 等 の 保 全
(6) 流 域 資 源 の 活 用
(7) 環 境 学 習 の 推 進
(6 )
3 葛丸川流域における課題への取組み
(1) 重 点 的 な 取 組 み
(2) 課 題 へ の 取 組 み 方 法
第3章
計画の目標
(6 )
第4章
実施施策・事業
(7 )
1
(7 )
課題に関する施策・事業
(1)森林の保全
(2)水質の保全
(3)自然環境の保全と創造
2
第5章
(8 )
主な事業指標
(8 )
計画の見直し等
1
第1章
はじめに
・ こ の 計 画 は「 岩 手 県 ふ る さ と の 森 と 川 と 海 の 保 全 及 び 創 造 に 関 す る 条 例( 平 成 15 年 岩
手 県 条 例 第 64 号 )」 に 基 づ き 、 葛 丸 川 流 域 ( 石 鳥 谷 地 区 の 中 小 河 川 を 含 む ) の 健 全 な
水循環を確保していくために、森林や川に対する住民の関わりや公益的機能の低下し
ている森林や河川の水質汚濁などの流域環境の改善を通して、森や川に対する住民の
関わりを考え、流域環境の改善などを通して、良好な環境を後世に伝えていくために
流域住民、事業者、行政が協働して行う目標をつくっていくものです。
・葛丸川流域はいにしえから稲作の適地として開拓が進められてきましたが、水源の流
域面積が少なく降雨量も少ないことから深刻な水不足となり、干ばつ・凶作に幾度と
なく見舞われた歴史があります。
・葛丸川には宮沢賢治ゆかりの地があり、葛丸ダム公園には宮沢賢治歌碑が建立されて
います。
・葛丸川流域の歴史や現況を踏まえ、流域に関わる住民、事業者、行政が協力して、課
題に関する施策・事業をつくり、継続的に推進していきます。
第2章
1
葛丸川流域の現状と課題
流域の概況
・葛丸川流域には葛丸川のほかに耳取川や薬師堂川があり、西側の山裾から東に石鳥谷
地域を横断して北上川に注いでいます。
・葛丸川は石鳥谷地域の西端の山々に源を発し、西から東に横切るように流れ、北上川
に 注 ぐ 指 定 区 間 延 長 1 7 .3 キ ロ メ ー ト ル の 県 管 理 の 一 級 河 川 で す 。
・流域に位置する石鳥谷地域の面積は、119平方キロメートルあり、その41%を山
林が占めています。人口は 1 万6千人ほどであり、山裾まで田園地帯が広がっていま
す。
・ 葛 丸 ダ ム 周 辺 の 平 成 4 年 度 か ら 平 成 1 6 年 度 の 平 均 年 間 降 水 量 は 約 1 ,3 0 0 mm/年 と
なっています。
・葛丸ダムは上流部の狭い渓谷に設置されており、集水面積に比べダムの貯水容量が少
ないことから、北側の山を隔てた山王海ダムと2本のトンネルで連結され、両ダムの
間で水をやり取りできる全国でも珍しい親子ダムとなっています。
・葛丸ダムは農業用水の貯水池として北上川の西側の灌漑に利用され、受益面積は1,
6 8 0 ha と な っ て い ま す 。 ま た 、 大 雨 ・洪 水 時 に は 洪 水 防 止 機 能 を 果 た し て い る と 伴
に、山林火災の時にはダムから直接用水補給し消火活動を行った事例もあり、多面的
な機能を発揮しています。
・葛丸ダム周辺は風光明媚な景観であり、葛丸頭首工までの中流域もまた植生豊かな山
地の中を流れる美しい渓流、渓谷となっています。
・葛丸ダムの築造と水利用の変化により葛丸川の水量は少なくなり、下流部は土砂の堆
積による中州が大きくなっています。
2
2 現状と課題
(1) 森 林 の 保 全
<現状>
・平 成 1 4 年 度 の 葛 丸 川 流 域 周 辺 の 森 林 面 積 は 4 ,1 0 3 ha あ り 、そ の 7 2 % が 国
有林、23%が民有林で占められています。
・流 域 上 流 部 で は 広 葉 樹 の 天 然 林 が 多 く 見 受 け ら れ 、大 半 が 国 有 林 と な っ て い ま す 。
・ 昭 和 2 0 年 代 に は 戦 後 の 復 興 造 林 、 続 く 30 年 代 に は 森 林 資 源 の 充 実 を 目 的 と し
て 人 工 造 林 が 行 わ れ ま し た 。 現 在 、 人 工 林 面 積 に つ い て は 国 有 林 は 1 ,6 2 9 ha、
民 有 林 は 9 5 6 ha と な っ て い ま す 。
・近年の木材価格の低迷や採算性の悪化に伴い、森林所有者の経営意欲の低下や林
業労働者の高齢化が進み、森林の管理が十分に行われず、荒廃しつつある森林が
増加するなど、森林の公益的機能の低下が懸念される状況となっています。
・森林の健全な整備を促進するため、間伐材の利用、木質バイオマスへの利用等の
森林資源の循環的な利用を図っていく必要があります。
<課題>
・水源涵養など流域における環境保全上健全な水循環の確保を図るために果たす役
割は重要なものとなっています。
・森林の有する多面的機能を高度に発揮するためには、森林の機能に応じた適正な
森林施業、主に間伐、枝打ち等保育施業を推進する必要があります。
葛 丸 川 流 域 の 森 林 面 積 (ha)
国有林
県有林
市有林
民有林
2,956
137
54
956
(2) 河 川 の 保 全
<現状>
・葛 丸 川 流 域 の 河 川 整 備 状 況 は 葛 丸 川 92.8% 、耳 取 川 100% 、薬 師 堂 川 59.5% と な
っています。
・耳取川の支流の平滝川では平成12年度から21年度まで、多自然型川づくりを
基本に河川改良が進められています。
・農業関連事業を進める中で平成3年度に葛丸ダム等が整備され、農業の利便性の
向上が図られたが川の水量が少なくなるなど、葛丸川の水辺環境を取り巻く状況
が大きく変化しています。
<課題>
・葛丸川は、農業用水利用の効率化により、河川流量が少なくなって中洲が形成さ
れるなど、川としての機能が十分に果たされない面もあります。事業者と地域住
民等関係者が一緒になって、機能回復方法を協議して行くことが必要です。
(3) 農 業 用 水 の 保 全
<現状>
3
・田園は、農地及び農地周辺の水路等で構成されており、洪水防止、水源涵養、生
態系の保全や防火・生活用水等の生活環境上多面的な機能がありますが、近年の
水利用の形態変化により生物の生態系等の変化も認められます。
<課題>
・農業用水路は、従来集落の農業者を中心に維持管理されてきましたが、近年集落
機能の低下や農業用水利用方法の変化により維持管理が難しくなって来ている
ことから、地域住民の一体的な保全活動を推進する必要があります。
(4) 河 川 水 質 の 保 全
<現状>
・ 葛 丸 川 流 域 の 水 質 環 境 は 、 県 で 測 定 し た 結 果 を 見 る と 葛 丸 川 は BOD で は 0.6~
1.1mg/L と ほ ぼ 横 ば い と な っ て お り 、 良 好 な 水 質 と な っ て い ま す 。 一 方 、 住 宅 密
集 地 の 近 く を 流 れ る 上 口 川 は BOD、窒 素 、燐 が 高 く 生 活 排 水 の 影 響 が 見 受 け ら れ
ます。
・市内の小学校では環境学習の一環として、児童生徒が水生生物調査を行い、河川
の汚れ具合を調べています。
<課題>
・石鳥谷地区では公共下水道・農業集落排水及び浄化槽施設整備事業等により生活
雑 排 水 対 策 の 推 進 が 図 ら れ て い る が 、 平 成 16 年 度 末 で 人 口 に 対 す る 普 及 率 は
54.2% で あ り 、今 後 も 整 備 を 促 進 し て い く と と も に 住 民 に 対 す る 啓 発 が 必 要 で す 。
・葛丸川水質検査結果(葛丸橋)
昭 和 57 年 度 昭 和 63 年 度 平 成 5年 度
pH
DO(mg/L)
BOD(mg/L)
SS(mg/L)
大腸菌群数
(MPN/100ml)
平 成 10 年 度 平 成 15 年 度
6.8~7.6
6.1~7.4
6.8~7.2
7.1~7.8
7.0~7.8
11.0
11.0
11.0
12.0
11.4
0.6
0.6
1.1
0.7
0.9
6
6
5
5
5
1,300
2,000
18,000
13,000
24,000
・上口川水質検査結果(東橋)
平 成 5年 度 平 成 10 年 度 平 成 15 年 度
pH
6.5~7.3
6.8~7.3
7.0~7.2
DO(mg/L)
8.8
9.5
9.2
BOD(mg/L)
35.0
2.5
3.5
18
17
28
大腸菌群数
(MPN/100ml)
430,000
210,000
310,000
全 窒 素 (mg/L)
1.37
1.00
1.37
全 燐 (mg/L)
0.116
0.067
0.155
SS(mg/L)
4
数値は当該年度の単
純 平 均 値 、 pH は 範 囲
で示しています。
―――――――――
pH: 水 素 イ オ ン 濃 度
DO: 溶 存 酸 素 量
BOD:生 物 化 学 的 酸 素
要求量
SS: 浮 遊 物 質 量
(5) 希 少 野 生 動 植 物 等 の 保 全
<現状>
・葛丸川では鮭や岩魚、ヤマメ、にじますなどの稚魚の放流を実施して、健全な水
環境の啓発を行っています。特に鮭の溯上時期にはダム放流を多めにして河川流
量を調整しています。
・公 共 事 業 を 実 施 す る 場 合 は 、必 要 に 応 じ て 事 業 実 施 箇 所 を 事 前 調 査 す る な ど し て 、
希少野生動植物などに配慮した取組みを行っています。
<課題>
・番屋地区の用水路にはホタルが生息しており、それらに配慮した環境の保全が望
まれます。
・魚道等の整備や外来種対策の検討が望まれます。
(6) 流 域 資 源 の 活 用
<現状>
・ 上 流 域 に は 、「 た ろ し 滝 」 が あ り 、 た ろ し 滝 測 定 保 存 会 が 組 織 さ れ て い ま す 。 毎
年2月に滝に生成したつららの太さを測定しています。農作物の豊凶予想ととも
に地域の恒例の風物詩になっており、学術的にも貴重なものとなっています。
・流 域 に は 宮 沢 賢 治 が 地 質 調 査 の た め に 野 営 し た 場 所 を は じ め 、史 跡 等 が あ り ま す 。
・葛丸川流域は自然に恵まれた渓流美と葛丸ダム湖の景観があり、下流部は田園地
帯を形成しております。
<課題>
・史 跡 等 の 掘 り 起 し と と も に 、来 訪 者 が わ か る よ う に 掲 示 板 の 設 置 な ど が 必 要 で す 。
・葛 丸 川 流 域 は 自 然 に 恵 ま れ た 渓 流 美 と 葛 丸 ダ ム 湖 の 景 観 が あ り 、下 流 部 は 田 園 地
帯 を 形 成 し て お り 、農 業 体 験 等 を 利 用 し た グ リ ー ン・ツ ー リ ズ ム や 葛 丸 川 渓 流 の
自然観察を楽しむためのエコ・ツーリズムの推進が期待されています。
・恵 ま れ た 景 観 を 有 効 に 活 用 す る た め に は 、流 木 の 処 理 や 川 岸・湖 岸 の 雑 草 木 の 刈
払いなどの管理を実施していく必要があります。
・河川と親しめる環境をつくっていくことが必要です。
(7) 環 境 学 習 の 推 進
<現状>
・市内の小学校では環境学習の一環として、児童生徒が水生生物調査を行い、河川
の汚れ具合を調べています。
・鮭の稚魚の放流に参加している。
<課題>
・きれいな河川環境を守り、流域における健全な水循環を確保するためには、流域
に住む住民、事業者、団体、行政等が協働して環境教育に取組むことが課題とな
っています。
5
・地域住民はもとより、特に小中学生に対する環境学習の推進は重要であり、水生
生物調査や地球温暖化の仕組み、川や森林保全等の啓発活動が必要となっていま
す。
3 葛丸川流域における課題への取組み
(1) 重 点 的 な 取 組 み
○
住 民 や 森 林 ボ ラ ン テ ィ ア 等 と 協 力 し 、森 林 の 公 益 的 な 機 能 を 守 る た め 間 伐 、枝
打ち、入山者に対する防火意識の普及啓発や森林に親しむ行事等を推進するなど
水源涵養に向けた取組みを行います。
○
中 洲 な ど の 適 正 な 管 理 に よ り 、植 生 や 生 態 系 の 保 全 及 び 育 成 を 図 っ て い く 取 組
みを行います。
○
農 業 用 水 路 の 多 面 的 機 能 を 維 持 す る た め 、地 域 住 民 参 加 に よ る 保 全 活 動 の 取 組
みを行います。
○
流域の水質保全のために、汚水処理施設の利用促進の取組みを行います。
○
葛 丸 川 の 水 利 用 に つ い て は 、関 係 団 体 や 住 民 等 と 協 議 し 、よ り 良 い 状 況 を つ く
るように取組みます。
○
魚道等の整備や外来種対策について検討していきます。
○
グリーン・ツーリズム等の推進に取組みます。
○
次の世代を担う小中学生に対する環境学習等に取組みます。
○
河 川 の 水 質 保 全 や 流 域 の 景 観 保 全 の た め 、廃 棄 物 等 の 不 法 投 棄 を な く す 取 組 み
を行います。
○
講演会、学習会等による地域住民への啓発活動に取組みます。
(2) 課 題 へ の 取 組 み 方 法
流域における活動を実践していくため、行政機関と協働して地域住民、団体を主
体としたネットワークをつくり、重点課題への取組みはもとより、各活動主体にお
ける施策・事業を連携、協力して実施します。
第3章
計画の目標
平成26年度を目標に、この流域の住民、事業者、行政などが協働して行う施策
を設定します。
6
第4章
1
実施施策・事業
課題に関する施策・事業
(1)森林の保全
実施
施策内容
今後の取組み
主体
・県 民 参 加 型 の 住 民 、事 行 政 や 森 林 所 有 者 、NPO 等 の 民 間 団 ・ NPO 等 と の 連 携
森林整備
業 者 、行 体 と の 協 働 に よ り 、 間 伐 等 の 施 業 ・ 森 林 関 係 N P O の 育 成
や森林ボランティア
政
及び植林等を実施します。
民 有 林 (956ha),国 有 林 (2,956ha)、 の 支 援 等 の 実 施
県 有 林 (137ha),市 有 林 (54ha)で の ・ 広 葉 樹 育 成 等 の 植 林 事
・ 国 有 林 、県 有
間伐等
林 、市 有 林 の
業の実施及び啓発
整備
・間伐事業の実施
(間 伐 、 除 伐 、 枝 打 ち )
施策項目
(2)水質の保全
施策項目
実施
主体
・ 下 水 道 、農 業 集 住 民 、行
落排水処理施 政
設 、浄 化 槽 に よ
る汚水処理の
推進
施策内容
今後の取組み
下 水 道 、農 集 排 の 整 備 率 の 向 上
広報等による普及啓発
を図るとともに浄化槽の設置の 活動などに取組む。
推進
・農 業 用 水 路 の 維 事 業 者 、 草 刈 り な ど 水 路 の 維 持 管 理 活 動
持 管 理 と 活 用 住 民 、行 の 実 施
政
継続して取組む。
・河川岸の草刈
事業者、 水辺環境を維持するための草刈
住 民 、行 等 の 実 施
政
継続して取組む。
・減 農 薬 栽 培 の 推 事 業 者 、 農 薬 や 化 学 肥 料 を 減 ら し 、 環 境
進
行政
に余計な負担をかけない栽培に
取組む。
継続して取組む。
7
(3)自然環境の保全と創造
実施
主体
・ 河 川 等 の 多 自 然 住 民 、行
型水辺空間形
政
成の推進
施策項目
施策内容
今後の取組み
川の中洲や堰堤を調査し、多
自然型水辺空間形成を推進。
継続・新たに取組む。
継続して取組む。
・水生生物調査
住 民 、学
校 、行 政
水生生物を採取して川の汚染
度を調べる。
対象河川全域で実施。
・稚魚放流
事業者、
住民
ヤ マ メ 、岩 魚 、に じ ま す 、鮭 等 の 継 続 し て 取 組 む 。
稚魚の放流。
・ホ タ ル の 育 成 調 事 業 者 、
査
住民、行
政
・希 少 野 生 動 植 物 事 業 者 、
等の保全
住民、行
政
ホ タ ル の 生 息 環 境 の 調 査 、育 成 新 た に 取 組 む 。
環境の検討。
公共事業について希少野生生
物検討委員会での検討。
魚道等の整備や外来種対策に
ついての検討
継続・新たに取組む。
・流 域 資 源 の 活 用 事 業 者 、 流 域 を 観 光 資 源 等 と し て 活 用 継 続 ・ 新 た に 取 組 む 。
住民、行 を図るための行事やグリー
政
ン ・ツ ー リ ズ ム の 推 進 、施 設 整
備等の検討。
2
主な事業指標
現状及び将来目標
指
標
項
目
現 状
(16 年 度 )
森 林 整 備 延 べ 面 積 ( ha)
汚水処理施設普及率(%)
5
54.2
目標年次
(26 年 度 )
60
83.2
備
考
間伐、下刈等
注 1)旧 石 鳥 谷 町 内
注 1) 浄 化 槽 、 農 業 集 落 排 水 処 理 施 設 、 公 共 下 水 道 を 合 わ せ て 推 計 し た も の で す 。
第5章
計画の見直し等
こ の 計 画 は 、他 の 計 画 と 整 合 性 を と り 、必 要 に 応 じ て 見 直 す こ と が で き る も の と し ま す 。
8
ダム公園の碑
奥名滝
葛丸上流頭首工
ポケットパーク
たろし滝
一の滝
葛丸橋付近
石仏頭首工付近
9