調 査 速 報 国内新車販売統計(2014年12月) - 浜銀総合研究所

調 査 速 報
浜銀総合研究所
調査部
産業調査室
2015.1.6
国内新車販売統計(2014年12月)
在庫削減が一向に進んでおらず、2015年は出足から難しい生産の舵取りが迫られる
○軽乗用車の 積極販売 が続いている
・1月5日発表の 2014 年 12 月の国内新車販売台数(登録車+軽自動車、貨物車含む)は前
年同月比 2.1%増と6か月ぶりにプラスに転じた。季調済年率換算値(X-12-ARIMA にて当
社試算、以下 SAAR)でみた 12 月の販売台数は前月比 11.5%増の 624 万台と2か月連続の
増加となった(図表1)
。
・内訳をみると、乗用車(登録車+軽)の販売台数の SAAR は前月比 11.5%増の 525 万台と
なった(図表2)
。このうち、登録乗用車は同 0.4%増の 283 万台と2か月連続の増加となっ
たが、勢いの弱い状況が続いている(図表3)
。11 年 12 月末発売のトヨタ「アクア」
(発
売後の 12 年1∼3月累計の販売台数は 6.5 万台。
年率換算で 26 万台となり、
現在の SAAR
対比で9%と規模が大きい)が初回車検更新を迎え、買い替え需要を下支えしている一方
で、2015 年秋発売予定の新型「プリウス」を待って、新車乗り換えを先送りするユーザー
が増えているという情報も最近の取材活動で確認しており、これが登録乗用車需要の下押
し要因となっている側面もあろう。新型「プリウス」の燃費はリッター当たり 40km を超
えるとも言われている上、トヨタ自動車としては新プラットフォーム方式を採用した初め
てのモデルとなることなどから、現行車から燃費性能が改善すると同時に、他の機能向上
を含めた大幅なスペック変更が施される見通しである。10 万円強の車検費用を今は払って
でも新車乗り換えを先送りするだけの価値がある、と考えるユーザーは多いと推測される。
・また、軽乗用車の SAAR は前月比 28.1%増の 242 万台と大幅増が続いた(図表4)
。年間
販売目標の達成を意識した大手メーカーが、収益性を犠牲にした積極販売を継続している
可能性が高い。今月末から発表される大手軽自動車メーカーの 15 年3月期第3四半期決
算にて、国内事業セグメントの利益率が前第2四半期比で改善・悪化したかが注目される。
・貨物車
(普通+小型トラック)
の販売台数の SAAR は前月比 1.4%減の 42.9 万台となった。
3か月後方移動平均でトレンドを見ると、12 月は前月比で減少基調に転じており、頭打ち
感がある。震災復興や都市圏の再開発投資を背景とした旺盛な受注が需要を下支えし、販
売は高水準で推移しているが、足元では大型トラックに分類されるダンプカーなどの受注
が落ち着いてきたという声が多く聞かれており、今後の動向に注意したい(図表5)
。
・2014 年(暦年)の国内新車販売台数は前年比 3.5%増の 556 万台となった。内訳は、登録
乗用車が同 0.4%減の 286 万台、軽乗用車が同 8.8%増の 184 万台、貨物車が同 10.2%増
の 41.8 万台であった。なお、軽自動車(含む軽貨物車)の販売台数は同 7.6%増の 227 万
台と3年連続で過去最高を更新し、国内販売台数に対するシェアは 40.9%と4割を超えた
(図表6∼10)
。
・2014 年の販売台数は前年比で伸長したものの、手放しで喜べる状況ではない。後述するが、
メーカー各社は 14 年後半から生産調整を続けているが、一向に在庫削減が進んでいない
のが現状である。メーカー各社は年度末に向けての顧客獲得に努める一方で、在庫削減を
推し進める必要に迫られており、2015 年は出足から難しい生産の舵取りを余儀なくされる。
1
図表1 国内新車販売の SAAR は前月比で大幅に増加
新車販売台数(登録車+軽自動車、貨物車含む):SAARと前年同月比
季調済、千台
前年同月比、%
14年12月SAAR 624万台
前月比+11.5%
7,000
6,500
100
80
6,000
60
5,500
40
5,000
20
4,500
0
4,000
-20
3,500
-40
季節調整済年率換算値:SAAR(左軸)
前年同月比(右軸)
3,000
-60
2,500
-80
2010年
11
12
13
14
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値
注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算
出所: 日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会のデータより作成
図表2 乗用車販売は2か月連続の増加
季調済、千台
6,500
乗用車新車販売台数(登録車+軽):SAARと前年同月比
図表3 登録乗用車販売も増加したが回復は緩慢
前年同月比、%
6,000
5,500
季調済、千台
120
12月SAAR 525万台
前月比+11.5%
登録乗用車新車販売台数:SAARと前年同月比
前年同月比、%
4,500
100
100
12月SAAR 283万台
前月比+0.4%
4,000
80
80
3,500
60
5,000
60
4,500
40
3,000
40
4,000
20
2,500
20
3,500
0
2,000
0
3,000
-20
2,500
1,500
-40
季節調整済年率換算値:SAAR(左軸)
前年同月比(右軸)
2,000
1,500
2010年
11
12
13
-60
1,000
-80
500
14
図表4 軽乗用車販売は大幅に増加
2,500
季調済、千台
500
前年同月比、%
80
12月SAAR 242万台
前月比+28.1%
60
2,000
40
1,500
20
500
0
季節調整済年率換算値:SAAR(左軸)
前年同月比(右軸)
0
-60
図表5 貨物車販売は高水準だが頭打ち感
軽乗用車販売台数:SAARと前年同月比
1,000
-40
2010年
11
12
13
14
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値
注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算
出所: 日本自動車販売協会連合会のデータより作成
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値
注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算
出所: 日本自動車販売協会連合会及び全国軽自動車協会連合会のデータより作成
季調済、千台
3,000
-20
季節調整済年率換算値:SAAR(左軸)
前年同月比(右軸)
貨物車販売台数:SAARと前年同月比
前年同月比、%
100
12月SAAR 42.9万台 前月比▲1.4%
450
80
400
60
350
40
300
20
250
-20
200
-40
150
2010年
11
12
13
14
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値
注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算
出所: 全国軽自動車協会連合会のデータより作成
0
季節調整済年率換算値:SAAR(左軸)
SAARの後方3か月移動平均値(左軸)
前年同月比(右軸)
2010年
11
12
13
14
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値
注2: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算
出所: 日本自動車販売協会連合会のデータより作成
2
-20
-40
図表6 14 年新車販売は前年比 3.5%増の 556 万台 図表7 登録乗用車は同 0.4%減の 286 万台
万台
新車販売台数(登録車+軽自動車、貨物車含む)
前年比、%
700
30
650
25
585
600
574
535
550
500
538
537
508
万台
461
336
313
300
15
496
前年比、%
40
350
20
556
登録乗用車新車販売台数
400
10
250
30
295
280
301
293
264
287
286
239
20
10
5
200
0
400
0
150
-10
350
-5
450
421
100
-10
300
新車販売台数(左軸)
前年比(右軸)
250
200
05年
06
07
08
09
10
11
12
13
-15
50
-20
0
-20
新車販売台数(左軸)
前年比(右軸)
-40
14
05年
図表8 軽乗用車は同 8.8%増の 184 万台
350
30
300
20
250
150
万台
50
40
400
184
200
139
151
145
143
169
156
128
128
114
新車販売台数(左軸)
前年比(右軸)
07
08
09
10
11
12
13
36.8
30
36.9
08
09
10
11
12
13
29.2
10
-20
10
5
-30
新車販売台数(左軸)
前年比(右軸)
0
05年
40.9
20
07
26.8
06
07
08
-40
09
10
出所: 日本自動車販売協会連合会のデータより作成
36.1
20
-10
25
06
28.9
30
37.9
36.4
15
32.9
05年
39.6
0
36.6
34.8
40
41.8
20
45
35.9
前年
貨物車新車販売台数
25
国内新車販売に占める軽自動車販売シェア
35.3
14
-10
50
35
13
0
14
39.3
12
30
図表 10 軽自動車販売シェアは4割を超えた
40
11
10
出所: 全国軽自動車協会連合会のデータより作成
シェア、%
10
35
-40
06
09
46.5
40
-30
0
05年
08
45
-20
100
50
07
図表9 貨物車は同 10.2%増の 41.8 万台
前年比、%
軽乗用車新車販売台数
06
出所: 日本自動車販売協会連合会のデータより作成
出所: 日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会のデータより作成
万台
-30
14
出所: 日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会のデータより作成
3
11
12
13
14
○乗用車の在庫調整の必要性が一段と高まっている
・12 月 26 日に公表された 11 月の鉱工業生産指数(速報値)では、乗用車の在庫削減が進ん
でいないことが明らかになった。
11 月の乗用車
(含む軽)
の在庫率指数は前年同月比 76.8%
上昇と前年同月比のプラス幅が 10 月(50.8%)より拡大しており、在庫循環上では在庫
調整の必要性が一段と高まった(図表 11)
。完成車メーカーは 10 月に生産にブレーキをか
け、11 月は前月の生産水準をほぼキープしたものの、一方で出荷が伸び悩んだために、在
庫の圧縮が小幅にとどまった。この背景には、新型車の相次ぐ投入にもかかわらず、国内
市場が盛り上がりを欠いていることがある。足元の在庫は依然として極めて高い水準にあ
り、更なる減産を迫られている状況である。
・加えて、輸出も低迷が続いている。図表 12 は財務省の貿易統計を用いて集計した乗用車
輸出台数(軽乗用車と中古車を除く)の SAAR であるが、11 月の SAAR は前月比 1.0%減
の 378 万台となった。3か月後方移動平均値でみると、8月に始まった減少基調が続いて
いる。輸出需要の伸び悩みも生産の下押し要因となっている。
・図表 13∼15 では鉱工業指数から、普通、小型、軽乗用車別の各指数(生産、出荷、在庫、
在庫率)の推移を示している。普通乗用車、小型乗用車ともに在庫率(原数値)の前年同
月比のプラスが前月から拡大しており、在庫調整の必要性が高まっている。軽乗用車の在
庫率の前年同月比は前月から低下したものの、依然として大幅なプラスとなっており、な
お過剰な水準にある。更なる減産に加え、販売競争の激化で、軽自動車市場での収益性が
一層悪化するリスクが払拭できない状況が続いている。
図表 11 11 月に乗用車在庫は積み上がり、在庫調整圧力が高い状況が続く
鉱工業指数の推移:乗用車
前年同月比、%
100
在庫
調整
在庫
積み上がり
在庫率(原数値)の前年同月比
50
0
-50
季調済、2010年平均=100
140
120
100
80
60
生産
出荷
在庫
40
.
2010年
2011
2012
2013
注: 赤いマーカーは各年の1月実績。
出所: 経済産業省「鉱工業指数」を基に浜銀総合研究所が作成
4
2014
図表 12 乗用車輸出は停滞している
鉱工業指数の推移:普通乗用車
前年同月比、%
乗用車輸出台数(除く軽):SAARと前年同月比
季調済、千台
5,000
4,500
4,000
3,500
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
500
0
.
図表 13 普通乗用車は在庫積み上がり局面に
前年同月比、%
120
11月SAAR 378万台
100
前月比▲1.0%
80
60
40
20
0
-20
季節調整済年率換算値:SAAR(左軸)
-40
SAARの3か月後方移動平均値(左軸)
-60
前年同月比(右軸)
-80
100
在庫率(原数値)の前年同月比
50
0
-50
季調済、2010年平均=100
120
100
80
60
2010年
11
12
13
14
注1: 赤塗りマーカーは各年の1月実績値。
注2: HSコード:870321929, -22920, -23919/929, -24920, -32919/929を集計。
注3: SAARは米センサス局法X-12-ARIMAにて浜銀総合研究所が試算。
出所: 財務省貿易統計のデータを基に作成
生産
出荷
在庫
40
.
2010年
2011
2012
2013
2014
注: 赤いマーカーは各年の1月実績
出所: 経済産業省「鉱工業指数」を基に浜銀総合研究所作成
図表 14 小型車の在庫は依然高水準
図表 15 軽乗用車の在庫も一向に減らない状況
鉱工業指数の推移:小型乗用車
前年同月比、%
250
在庫率(原数値)の前年同月比
200
150
100
50
0
-50
-100
500
400
300
200
100
0
-100
季調済、2010年平均=100
生産
在庫率(原数値)の前年同月比
季調済、2010年平均=100
200
180
鉱工業指数の推移:軽乗用車
前年同月比、%
出荷
400
360
320
280
240
200
160
120
80
40
在庫
160
140
120
100
80
60
40
.
生産
出荷
在庫
.
2010年
2011
2012
2013
2014
2010年
注: 赤いマーカーは各年の1月実績
出所: 経済産業省「鉱工業指数」を基に浜銀総合研究所作成
2011
2012
2013
2014
注: 赤いマーカーは各年の1月実績
出所: 経済産業省「鉱工業指数」を基に浜銀総合研究所作成
担当:調査部 産業調査室 深尾三四郎
TEL 045−225−2375
E-mail: [email protected]
本レポートの目的は情報の提供であり、売買の勧誘ではありません。本レポートに記載されている情報は、浜銀総合研究所・調査部が
信頼できると考える情報源に基づいたものですが、その正確性、完全性を保証するものではありません。
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