2014/12/22 静岡支店 静岡市葵区追手町 9-22 TEL: 054-254-8301 http://www.tdb.co.jp/ 特別企画 : 2015 年の景気見通しに対する静岡県内企業の意識調査 「原油・素材価格(上昇) 」が最大の懸念材料 ~ 景気回復を見込む企業は前年比 8.6 ポイント減 ~ はじめに 消費税率が引き上げられた 4 月以降、国内景気は人手不足や円安などによるコスト上昇分を吸 収できない中小企業を中心に景況感の悪化が広がっている。また、2014 年 11 月 17 日に発表され た 7~9 月期の実質 GDP 成長率(1 次速報値)が前期(4~6 月期)比 0.4%減、年率換算で 1.6% 減と、2 四半期連続のマイナス成長となったことで、政府は 2015 年 10 月の消費税率 10%への再 引き上げを 1 年半延期した。 帝国データバンクは、2014 年の景気動向および 2015 年の景気見通しに対する企業の見解につい て調査を実施した。本調査は、TDB 景気動向調査 2014 年 11 月調査とともに行い、全国調査分から 静岡県内企業を抽出して分析した。 ※調査期間は 2014 年 11 月 14 日~30 日、調査対象は 554 社で、有効回答企業数は 280 社(回答率 50.5%)。 ※本調査における詳細データは、景気動向調査専用 HP(http://www.tdb-di.com/)に掲載してい る。 調査結果(要旨) 1.2014 年、「回復」局面だったと判断する企業は 8.6%となり、2013 年から 7.2 ポイント減少し た。さらに、 「悪化」局面だったとする企業は 29.3%に達し、前年の 8.8%から 3.3 倍に拡大し た。 2.2015 年の景気見通し、 「回復」見込みは 12.5%で、2014 年見通し(2013 年 11 月調査)から 8.6 ポイント減少した。 3.2015 年景気への懸念材料は「原油・素材価格(上昇)」が前年比 2.4 ポイント増の 55.0%とな り最多。次いで、「為替(円安)」・「消費税制」が 4 割を超えた。 4.景気回復のために必要な政策、 「個人消費拡大策」 「所得の増加」 「個人向け減税」がいずれも前 回調査から大きく増加し、個人消費関連が上位 3 項目を占めた。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 1 1. 2014 年の景気動向、「悪化」は前年比 3.3 倍に拡大 2014 年の景気動向について尋ねたところ、 「回復」局面であったと回答した企業は 8.6%となり、 2013 年の景気動向(2013 年 11 月調査)と比較すると 7.2 ポイント減少した。さらに「悪化」局 面とした企業は 29.3%に達し、2013 年実績の 8.8%から 3.3 倍に急増した。 「回復」局面とみている企業からは、 「円安は急激ではあるが全体では好影響だと思われ、株価 も高水準であることもあり回復局面と考えます」 (製造)や「客先が大手電機メーカーのため円安 の恩恵を受けている」 (サービス)といった、アベノミクス効果の一つである円安が景気回復の要 因として挙げる声があった。一方で、「悪化」局面とした企業からは、「消費税率引き上げと円安 のダブルパンチ」 (製造)や「急激な円安によるコスト上昇は価格転嫁できずに利益減少要因とな った」 (製造)、「アベノミクス効果で景気が良くなりつつある状況での消費税率引き上げという景 気後退策の影響は大きかった」(卸売)、「9 月以降少しは改善すると思っていたが芳しくなかった」 (サービス)などの声が挙げられ、消費税率引き上げによる消費の低迷や円安によるコスト負担 増が景気悪化の大きな要因と考える企業が多かった。 リーマン・ショックの翌年(2009 年)以降 2012 年までは、 「回復」局面とする見方は 1~4%台 で推移していた。その後、2013 年はアベノミクスが本格化し 15.8%まで拡大したが、2014 年には 消費の減退やコスト負担の増大などもあり 8.6%と、再び 1 桁台に落ち込んだ。 景気動向の推移(2009年~2014年) 回復局面 2009年 (2009年11月調査) 2010年 (2010年11月調査) 2011年 (2011年11月調査) 2012年 (2012年11月調査) 2013年 (2013年11月調査) 2.7% 踊り場局面 33.9% 3.5% 41.2% 4.1% 38.9% (2014年11月調査) ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 8.6% 11.3% 41.2% 14.2% 41.5% 15.6% 53.6% 54.0% 7.2ポイ ント減 2014年 分からない 52.1% 1.1% 29.6% 15.8% 悪化局面 15.7% 8.8% 21.4% 3.3倍 45.4% 29.3% 16.8% 2 2. 2015 年の景気見通し、「回復」見込みは前年から 8.6 ポイント減少 2015 年の景気は、 「回復」局面にあると見込む企業が 12.5%となり、2014 年見通し(2013 年 11 月調査)の 21.1%より 8.6 ポイント減少した。また、 「踊り場」局面や「悪化」局面にあると見込 む企業はいずれも 2014 年見通しより増加した。 企業からは、「大幅な円安が輸入品のコストを押し上げるが、原油などは価格が低下している。 円安のスピードより原油の落ちが速く、いずれバランスが取れ始め、円安環境にも慣れてきて消 費も伸びると思われる」 (製造)といった「回復」局面とした企業があった。一方の「悪化」局面とし た企業からは、「現況脱出にはまだ時間が掛かり 2015 年後半までは不景気脱出は難しい」(製造)、 「気を良くするための政策と大手優遇ではなく中小・零細企業まで行き通る政策を考えて頂きた い」(卸売) 、「個人消費は超緊縮になりそう。大手(輸出)企業は、どこまで好調を維持できるか が疑問」(サービス)など、アベノミクス効果が一部にとどまっているなかで、実質所得の低下に より消費が停滞することを懸念する意見が挙がった。 景気見通しの推移(2010年~2015年) 回復局面 2010年見通し 8.6% 33.9% 7.6% 37.4% (2009年11月調査) 2011年見通し (2010年11月調査) 2012年見通し (2011年11月調査) 2013年見通し (2012年11月調査) 踊り場局面 10.7% 7.5% 2014年見通し 36.7% 26.8% 21.1% (2013年11月調査) 悪化局面 33.9% 23.7% 32.9% 22.1% 29.6% 23.0% 40.0% 31.6% 分からない 20.0% 25.7% 27.4% 8.6ポイ ント減 2015年見通し (2014年11月調査) 12.5% ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 33.2% 27.9% 26.4% 3 3. 2015 年景気の懸念材料、「原油・素材価格(上昇)」が半数以上 2015 年の景気に悪影響を及ぼす懸念材料を尋ねたところ、 「原油・素材価格(上昇)」が 55.0% で最も高かった(3 つまでの複数回答、以下同)。 「原油・素材価格(上昇)」は前回調査(2013 年 11 月)同様に半数以上の企業が懸念していることが判明した。 「為替」については、円安が過去 2 年間で 21.8%→47.5%と倍増したのに対して、円高は過去 3 年間で 33.9%→13.3%→5.7%へと減少し、為替相場から受ける景気悪化懸念は円高から円安へ と様変わりした。 また、消費税率引き上げが延期された「消費税制」は 42.9%で 3 位に挙がっており、税制面か らの個人消費低迷を懸念する見方も多い。その他 1 割を超えた懸念材料としては、 「人手不足」が 16.1%、「物価上昇(インフレ)」が 15.4%、「所得(減少)」が 13.9%、「中国経済」が 12.9%、「政 局」が 11.1%となった。 2015年景気の懸念材料(複数回答、3つまで) 2014年11月調査 2013年11月調査 構成比(%) 回答数(社) 構成比(%) 回答数(社) 1 原油・素材価格(上昇) 55.0 154 52.6 150 2 為替(円安) 47.5 133 21.8 62 3 消費税制 42.9 120 - - 4 人手不足 16.1 45 - - 5 物価上昇(インフレ) 15.4 43 13.0 37 6 所得(減少) 13.9 39 10.2 29 7 中国経済 12.9 36 21.1 60 8 政局 11.1 31 4.2 12 9 米国経済 9.3 26 18.2 52 10 雇用(悪化) 8.6 24 6.0 17 注1: 以下、「株価(下落)」(7.1%、20社)、「金利(上昇)」(6.4%、18社)、「金融市場の混乱」・「為替(円高)」 (5.7%、16社)、「物価下落(デフレ)」(5%、14社)、「法人税制」(4.6%、13社)、「地政学リスク」(4.3%、 12社)、「税制(消費税制、法人税制を除く)」(3.2%、9社)、「台風などの天候要因」(2.1%、6社)、「電力 供給の制約」(1.4%、4社)、「欧州経済」(1.1%、3社)、「訪日観光客数の減少」(0.4%、1社) 注2:2014年11月調査の母数は有効回答企業280社。2013年11月調査は285社 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 4 4. 景気回復に必要な政策、個人消費関連が上位を占める 今後、景気が回復するために必要な政策を尋ねたところ、 「個人消費拡大策」が 50.4%(複数回 答、以下同)で最多となった。次いで「所得の増加」が 46.1%、「個人向け減税」が 35.4%とな り、いずれも前回調査から大きく増加し、個人消費関連が上位 3 項目を占めた。2014 年 4 月から の消費税率引き上げによる影響が長引き、今後の景気回復には個人消費の拡大が最大の課題であ ると捉えている様子が浮き彫りとなった。 また、第 4 位は「法人向け減税」と「規制緩和」がそれぞれ 34.3%で続き、企業の収益力拡大や、 よりビジネスを行いやすい環境の整備を求める傾向がある。また、前回調査で倍増した「原発事 故の収束」は前年比 4.3 ポイント減の 13.6%にとどまり、再び減少した。円安が進み一部地域で 電気料金の値上げもみられるなかで、原発再稼働を求める意見もあり、原発に対する意識の変化 が窺える。 企業の声としては、「大会社の工場海外移転の阻止・抑制」(製造)や「原子力発電所の再稼働」 (卸売)、 「地域循環を考えた木材チップなどのエネルギー政策」 (小売)、 「高齢者から若年層への 資産・予算の再分配」(小売)、「人口減少対策」(その他)など様々な意見が挙がった。 今後の景気回復に必要な政策(複数回答) 2014年11月調査 2013年11月調査 構成比(%) 回答数(社) 構成比(%) 回答数(社) 1 個人消費拡大策 50.4 141 41.8 119 2 所得の増加 46.1 129 35.4 101 3 個人向け減税 35.4 99 26.3 75 法人向け減税 34.3 96 35.8 102 規制緩和 34.3 96 29.8 85 6 年金問題の解決(将来不安の解消) 28.9 81 23.2 66 7 財政再建 28.2 79 18.2 52 8 雇用対策 27.1 76 26.0 74 9 公共事業費の増額 21.1 59 28.1 80 10 物価(デフレ)対策 15.7 44 16.5 47 4 注1: 以下、「地方への税源移譲」(13.9%、39社)、「原発事故の収束」(13.6%、38社)、「TPP(環太平洋パー トナーシップ協定)への参加」(11.8%、33社)、「金融緩和政策」(11.1%、31社)、「災害対策」(8.9%、25 社)、「研究開発の促進税制」(8.9%、25社)、「震災復興」(8.9%、25社)、「個人向け手当の創設」 (7.9%、22社)、「環境関連の優遇策(補助金など)」(6.8%、19社)、「道州制の導入」(3.9%、11社)、「女 性登用」(3.2%、9社)、「その他」(6.4%、18社) 注2:2014年11月調査の母数は有効回答企業280社。2013年11月調査は285社 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 5 まとめ 2014 年の景気は、2014 年 4 月の消費税率引き上げや円安による原材料価格の上昇、人手不足に ともなう人件費増加など、コスト負担が増大したことから大きく悪化した。 2014 年の景気を「回復」局面とみる企業は 8.6%となり、2013 年実績の 15.8%から 7.2 ポイン ト減少し、「悪化」局面とみる企業は 29.3%と前年の 3.3 倍に拡大した。2015 年の景気見通しで は「悪化」が「回復」を大きく上回るなど、企業は景気が後退傾向にあるという見方を示してい る。 そのため、個人消費拡大策や所得増加策、個人向け減税など、個人消費関連の復調が今後の景 気回復に対する最大の焦点になるとみられる。 現在までの静岡県内企業の景況感は 8 月以降 4 カ月連続で悪化するなど、景気減速感が広がっ ている[「TDB 景気動向調査 2014 年 11 月」 (帝国データバンク)]。総選挙後の内閣は、減速してい る経済を再び上向かせるために景気回復を第一の使命とした政策の実行が求められる。 〈参考〉景気動向(2008年~2014年)および景気見通し(2009年~2015年) リーマン・ショック(2008年9月)後 2008年11月調査 2008年 景気 回復局面 踊り場局面 悪化局面 分からない 合計 2009年 景気見通し 2009年11月調査 2009年 景気 東日本大震災(2011年3月)後 2010年11月調査 2010年 景気見通し 2010年 景気 2011年 景気見通し 2011年11月調査 2011年 景気 2012年 景気見通し 2012年11月調査 2012年 景気 2013年 景気見通し 2013年11月調査 2013年 景気 2014年 景気見通し 2014年11月調査 2014年 景気 2015年 景気見通し 構成比 0.0% 2.0% 2.7% 8.6% 3.5% 7.6% 4.1% 10.7% 1.1% 7.5% 15.8% 21.1% 8.6% 12.5% (社数) (0社) (5社) (7社) (22社) (10社) (22社) (11社) (29社) (3社) (21社) (45社) (60社) (24社) (35社) 構成比 7.1% 11.5% 33.9% 33.9% 41.2% 37.4% 38.9% 36.7% 29.6% 26.8% 54.0% 31.6% 45.4% 33.2% (社数) (18社) (29社) (87社) (87社) (119社) (108社) (105社) (99社) (83社) (75社) (154社) (90社) (127社) (93社) 構成比 84.5% 70.2% 52.1% 33.9% 41.2% 32.9% 41.5% 29.6% 53.6% 40.0% 8.8% 20.0% 29.3% 27.9% (社数) (213社) (177社) (134社) (87社) (119社) (95社) (112社) (80社) (150社) (112社) (25社) (57社) (82社) (78社) 構成比 8.3% 16.3% 11.3% 23.7% 14.2% 22.1% 15.6% 23.0% 15.7% 25.7% 21.4% 27.4% 16.8% 26.4% (社数) (21社) (41社) (29社) (61社) (41社) (64社) (42社) (62社) (44社) (72社) (61社) (78社) (47社) (74社) 構成比 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 (社数) (252社) (257社) (289社) (270社) (280社) (285社) (280社) ※網掛けは、「景気(各局面)」の構成比が前年調査「景気見通し(各局面)」の構成比以上。または、同年調査の「景気見通し(各局面)」構成比が「景気(各局面)」の構成比以上 【 内容に関する問い合わせ先 】 株式会社帝国データバンク TEL 静岡支店 担当:竹岸 隆浩 054-254-8301 FAX 054-254-6602 当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用 HP(http://www.tdb-di.com)をご参照下さい。 リリース資料以外の集計・分析については、お問い合わせ下さい(一部有料の場合もございます)。 当レポートの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。 当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法 の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。 ©TEIKOKU DATABANK, LTD. 6
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