骨吸収可能で薬剤担体に応用可能 な新規生体活性セメントの開発 大阪市立大学 工学部 機械工学科 教授 横川 善之 1 人口(万人) 骨疾患患者の増加 変形性関節症 骨粗しょう症(1300万人) 脊柱圧迫骨折 65歳以上人口 4000 推計値 3000 2000 1000 0 1990 2000 10 20 40 35 30 25 20 15 10 5 0 高齢者率(%) 技術の背景 30 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」 ○椎体形成術 ○経皮的椎体形成術 充填材 人工骨ブロック 骨セメント,リン酸カルシウムセメント ロッド,スクリュー で固定 Hoya Co HP より 2 技術の背景 人工骨ブロック 骨セメント 充填材 アパタイトセラミッ クス ポリメタクリル酸メ チル樹脂セメント リン酸カルシウ ムセメント CPC 骨との結合 ○ × ○ 成形性 × ○ ○ 骨置換 △ × △ 骨と置換するリン酸カルシウムセメント 3 新技術 ◎生分解性多糖類、ジカルボン酸を用いた新規材料 機械的特性 崩壊性 吸収性 特願2014-096042, 096045 4 新技術 機械的特性 CPCch2.5→海綿骨(骨梁)の弾性率に近い (純水 1日浸漬) CPCcont CPCch2.5 0 圧縮強度/au 応力/au CPCmalic 0.05 ひずみ 0.1 CPCcont CPCmalic CPCch2.5 CPCcont CPCmalic CPCch2.5 0.1 0.05 0 CPCcont CPCmalic CPCch2.5 破壊エネルギ/au 降服ひずみ 0.15 ジカルボン酸(CPCmalic),生分解性多糖類(CPCch)で,圧縮強度,破壊エネルギが上昇 5 6 実験方法 JIS T6602 硬化時間測定(目標5~10分) ビガー針試験器を使用.練和開始2 分後から30秒おきにビガー針を落と す.圧痕が付かなくなった時間を測定 ビガー針試験器 崩壊率測定 試料成形器を用いてCPC1.0 mlを計量 金網台に押し出す 練和開始3分後,金網台と共に 生理食塩水に浸漬 崩壊率(%)= 崩壊した試料の質量 試料全体の質量 CPC 試料成形器 金網台 ×100 6 新技術 CPCcont CPCmalic CPCch2.5 硬化時間(min) 19±1 2.0±0.0 5.5±0.5 崩壊率(%) 測定不可 2.82±1.35 1.04±0.16 CPCch2.5 CPCmalic CPCcont 1cm 1cm 1cm 1cm 1cm 1cm 硬化時間 CPCcont>CPCch2.5>CPCmalic →手術中の操作時間 崩壊率 CPCcont>CPCmalic>CPCch2.5 →生分解性多糖類添加により非崩壊性実現. 7 8 吸収性試験 酢酸緩衝液(pH5.5) ※水中浸漬 7日硬化 試料形状:φ6×12 mm 試験溶液:酢酸ー酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5) 100ml ※破壊骨細胞が作り出す環境下 攪拌下,300分後の 1.Caイオン溶出量 2.質量減少量 試料 を測定 8 新技術 吸収性試験 酢酸緩衝液(pH5.5) Caイオン溶出量・質量減量 / mg 40 35 30 質量減量 Caイオン溶出量 その差 25 20 15 10 5 0 CPCcont CPCch2.5 CPCch10 生分解性多糖類添加 → pH5.5(破骨細胞存在下)では生分解性多糖類溶解も促進 9 10 試料表面の観察 吸収性 in vitro 試験 CPCcont before CPCch2.5 before CPCch10 before 10μ m 10μ m 100μ m after after after 10μ m 10μ m (c) ひび割れが発生 表面の針状結晶が溶解 100μ m マクロ孔が発生 10 新技術 吸収性試験 細胞培養試験 CPCch2.5 10μ m CPCch10 100μ m 多数の細胞が表面に見える. 細胞:MCT3T3-E1 100μ m 破骨細胞共存環境下では多孔化が進展,細胞の細孔侵入で, さらに多孔化が促進する.従来の材料に無い骨置換の可能性. 11 新技術 新規なリン酸カルシウムセメントまとめ 体内で骨と置換しうる材料を開発した Probably YES 生体外試験では確認している. 動物実験を大阪市大医学部で実施. 今後の実用化に向けて 生理活性物質、情報伝達物質との複合化により、 より早い骨との結合、置換を実現する. 既存材料との差別化. 12 従来技術とその問題点 骨粗鬆症などに伴う圧迫骨折による椎体再建 術において、低侵襲な経皮的椎体再建術が行 われている。充填材には、骨セメント、リン酸カ ルシウムセメント(CPC)があるが、 骨セメントは骨と結合せず、重合熱が発生 CPCは骨と結合するが、骨置換しない問題 点があり、臨床現場から、骨置換するCPCの開 発が要望されている。 13 【骨粗鬆症性椎体骨折の経時的変化】 L1 14° 受傷時 19° 1ヶ月 26° 3ヶ月 33° 18ヶ月 【椎体形成術のコンセプト】 著しく後弯変形した 椎体骨折後骨癒合不全 経皮的アプローチによる低侵襲手術 骨欠損部に骨充填材料を注入 後弯矯正と脊椎安定化の獲得 14 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術の問題点であった、骨置換を可能と することに成功した。 • また、早期固化、非溶血性の実現、圧縮強度 の向上に成功し。 • 骨置換が可能なCPCは世界的にも見られず、 世界市場への展開が期待される。 15 想定される用途 • 本技術の特徴を生かすためには、椎体再建 術の治具と組合わせたキットを開発することで ユーザービリティを高めることが妥当である。 • 椎体再建術のみならず、骨補てん剤、組織培 養担体への応用が期待される。 • また、骨同化機能に着目すると、薬剤担体な どの用途に展開することも可能と思われる。 16 実用化に向けた課題 • 現在、in vitro試験で多孔化することを確認し た。医学部に試料提供している。 • 今後、in vivo試験で実験データを取得し、前 臨床から臨床応用に進め,材料の改良を行っ ていく。 • 実用化に向けて、生体機能に働きかける成長 因子を取り込んだ素材へ発展させていく。 17 企業への期待 • in vivo試験結果は、大学医学部との共同研 究を実施している。 • 医用材料としての実用化には、臨床試験、承 認が必要である。 • また、骨粗鬆症、転移がんへの薬剤担体への 展開を考えている企業には、本技術の導入が 有効と思われる。 18 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :自己硬化型リン酸カルシウ ム組成物、該組成物を製造するための キットおよび製造方法 • 出願番号 :特願2014-096042,096045 • 出願人 :大阪市立大学 • 発明者 :横川善之 19 産学連携の経歴 共同研究 • 1994-95年 不二見セラミックス「無機系リサイクル材料による環境浄化セラ ミックスの開発」 • 1996-97年 日本特殊陶業「機能性アパタイト複合繊維に関する研究」 • 2002-05年 東洋アルミホイルプロダクツ「家庭等の水まわりにおける効率 • • • • 的かび除去に適したセラミックス材料の開発と評価に関する研究」 2004-06年 四国計測工業「高機能性セラミックス製造方法開発に関する研究」 2006-07年 岩谷化学「化学処理による微細セラミックス粉体調製及び複合化に 関する研究」 2005-09年 FKP研究所「骨と歯の迅速石灰化に関する研究」 2009-10年 フジクリーン工業「メソポーラス技術を活用した排水処理装置の 開発」 • 2012年 • 2012年 JST「知財活用促進ハイウェイ」に採択 JST「AStep」に採択 20 お問い合わせ先 大阪市立大学 産学連携コーディネーター 三村 忠昭 TEL 06-6605 -3550 FAX 06-6605 -3552 e-mail mimura.t@ado.osaka-cu.ac.jp 21
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