佐久医療センター - 佐久総合病院

長野県厚生農業協同組合連合会 佐久総合病院
佐久医療 センター
長野県佐久市
設計・監理/日建設計
施工/清水建設
Saku Central Hospital Advanced Care Center
NIKKEN SEKKEI
上/花 びらが 開 いたような 形状 の 病棟外観 曲面上に裾広 がりに個室を並 べることで 病室同士 の 向き合 いに配慮している 下/3 階(一部 4 階)建 ての 低層 で 伸 びやかに水平展開 する建物全景
佐久総合病院 再構築計画
大 きな 枠組 み の 中 で 、一般医療・地域医療
超急性期フロア
「農民とともに 」の 精神 のもと、開院以来地
を担う佐久総合病院本院と高度専門医療・救
救急車 を 専用 スロープにより2 階 へ 導 き、救
域 に 根差した 医療 を 続 けてきた 佐久総合病
急医療 を 担う佐久医療 センタ ーに 病院 を 分
急部門と、関連 する救急病棟・手術部門・血
院。「 いつでも 、どこでも 、誰 でも 必要 なと
割 するという、全国 でもこれまで 例 を 見 ない
管造影部門・GICU・HCU 、さらに周術期病
きに 必要 な 医療 サ ービスが 受 けられる」こと
プロジェクトである。
棟・分娩室を含 む 周産期病棟をフロア内 の 水
を 目標 に、第一線医療 から 高度専門医療 ま
病棟と診療棟を分棟とした 低層 の 建物
平移動 だけで 連絡 させる「超急性期 フロア 」
で 包括的 に 担う、 まさに「二足 のわらじ」を
計画地 は 広大 で 緑豊 か な 工場跡地 で ある。
とした 。 エレベーターなどによる上下移動 を
履 いてきた 老舗 の 病院 である。 建物 の 老朽
20m の 高 さ 制限 は 地区計画 で 緩和 すること
減らし患者 の 負担軽減 に 配慮 するとともに、
化・狭隘化とともに、医療 の 高度化・専門分化、
もできたが 、病院関係者 とのプラン 検討 の
スタッフ業務 の 効率化を図った 。
診療圏拡大 の 流 れの 中 で 、 より広域 に 従来
議論 の 結果行 きつ いた 機能構成 と、診療棟
水平移動 での 機能連携
どおりの 医療 を 提供 することが 難しくなって
と病棟 を 分棟として 水平に展開 する建物構成
水平 で の 機能連携 の 考 えは 他 のフロアでも
きた 。 これらの 問題 の 解決策として 病院再構
がマッチし、制限 の 範囲内 に 高 さを 抑 えた 、
取り入 れている。 1 階 はがん 治療病棟と通院
築計画 が 立案 された 。 病院完結型医療体制
佐久医療 センターを 特徴 づ ける 低層 で 横 に
治療 センター 、放射線治療部門 を 配した「 が
から 地域完結型医療体制 へ の 転換 を 目指 す
広 い 建物形態 が 実現した 。
ん 診療フロア」、 3 階 は「リハビリフロア」とし
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光庭 からの 優しい 自然光に包まれた 外来ホール 2 階に見 える緑 が 訪問者を和ませる
北門
給食棟
交流
広場
駐車場
特高棟
院内保育所
立体
駐車場
駐車場
駐車場
病院建物
駐車場
多目的
広場
駐車場
交流
広場
南門
配置図 縮尺 1/9,000
スタッフステーションから一目で 全体を見渡 すことのできるV字型 の 病棟
て 、リハビリ部門と関連 が 強 い 、脳卒中・循
見通しのよさと看護業務 の 効率化を両立させ
いきいきの 森
環器系病棟 などを配置している。
る形状とした 。個室群 は 円弧上に端部になる
既存 の 豊 かな 緑 を 取り込 んだ 外構部分 は“ い
一目 で 端部まで 見渡 せる病棟
ほど裾広 がりになるように 配置し、窓 に 角度
き い き の 森”と 名付 けられた 。 1 周 1,000m
病棟形状 についても 看護 スタッフとのやり取
を 付 けることで 、隣 の 病棟と視線 が 干渉 する
のウォーキングコース沿 いには 健康遊具 が 配
りの 中 から生 まれた 。 最初 に 共有したイメー
ことがないように配慮した 。
され、急性期病院 で ありな がら 地域住民 の
ジは「 V 字型 の 病棟。 要 の 位置 にスタッフス
患者 サポートセンター
健康増進 の 場となる役割 が 意図 されている。
テーションを 置 けばそこから病棟全体 を 見渡
エントランスを入った 正面、外来・検査・治療・
多目的グラウンドは 地域に開放 され、各種 イ
すことができる」というものだった 。結果とし
入退院 の 動線 の 要となる位置に、患者 サポー
ベントや 近隣自治会 のお 祭りなどに 活用 され
てそのイメージどおり死角 のない 病棟 が 実現
トセンターを 配置した 。 医事課・地域医療連
ている。
できた 。「 ナーシングホール 」は 単 なる「広 い
携室・医療相談室・入退院支援室(持参薬管理・
病院開院後、 スタッフが 種 から育 てた 苗木 を
廊下」という概念を超 えた 、 ベッドサイドナー
入院受付・術前検査・周術期外来・外来栄養
植樹した 。今後 は 近隣住民 も 参加し、地域と
シングの 拠点となる多目的 でフレキシブルな
指導)
・患者相談窓口 などを 一堂 に 集 めワン
ともに徐々に森を育 てていくことになる。
空間とした 。 奥 に 行くほど狭くなり、幅広 い
ストップで 対応 することで 、患者に対 するサー
部 分 に は 物 品 収 納 や 車 い すプ ー ル を 配し、
ビス向上を図った 。
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省 エネルギー 計画
佐久地域 の 気候特性 である以下 の 3 点に着目
SCU
して 環境配慮手法を取り入 れた 。
循環器・脳疾患センター
①「冬 の 厳しい 寒 さ 」外気と室内 の 間 に 縁側
のような 緩衝空間を設 け 、室内 への 外気によ
医局
管理・会議
リハビリテーション
る 影響 を 最小限 に 抑 える 建築 プランとした 。
格納庫
周術期病棟Ⅲ
冬 は 断熱性 を 高 めるため、中間期 や 夏 は 自
研修
事務
職員食堂
然換気により建物を冷やす「 ナイトパージ」の
ための 通風空間として 機能 する。
ヘリポート
②「豊 かな 地中 エネルギー 」クールヒートトレ
小児・内科・感染病棟
ンチを介して 外気を取り入 れ空調負荷 の 低減
を図るとともに、地下水 の 熱 エネルギーを空
調熱源 などとして 活用している。
病棟
中央診療
管理・厚生
3 階平面図
③「日照時間 の 長さ」太陽光発電、太陽熱給
湯を導入している。
周術期病棟Ⅱ
GICU
HD(透析)
HCU
救命救急
MEセンター
周術期病棟Ⅰ
分娩
検体検査
手術
NICU
救急病棟
周産期病棟
病棟光庭 の 自然換気窓
GCU
アンギオ
病棟
救急
中央診療
放射線
供給
病理検査
2 階平面図
がん治療病棟Ⅱ
血液内科病棟
エントランスホールと患者 サポートセンター 受付
いこいの広場
患者サポートセンター
がん治療病棟Ⅰ
高機能診断センター
内視鏡
生理検査
一般・透視
通院治療センター
外来
CT・MRI
更衣
森 づくり スタッフによる植樹イベント
放射線治療
RI・PET
病棟
外来
中央診療
放射線
管理・厚生
1 階平面図 縮尺 1/1,800
3F
周術期Ⅲ
内・小・感
循環・脳疾
2F
周術期Ⅰ
周術期Ⅱ
周産期
分娩・手術・集中治療
救急・救急病棟
1F
がん化学療法
がん病棟
がん病棟
放射線治療・診断・生理検査・内視鏡
外来
診療棟
外来棟
病棟
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リハビリ
ヘリポート
いきいきの 森 ウォーキングコース
スタッフ動線と見舞 い 動線を分離した
広大 な 敷地を活用した 工事手法
GICU、 HCU
曲面 が 連続 する病棟 の 特徴的 な 外観をつくり
GICU、HCU は 見舞 い 客動線 を 病床 の 外周
出 す 外壁部分 につ いては 、当初 は 現場打 ち
側 からとし、治療側 のスタッフホー ルと明確
コンクリートで 設計していたが 、広大 な 敷地
に区分した 。患者 のプライバシーと見舞 い 客
を 活用したサイト PC 工法 によりプレキャスト
の 利便性 に 最大限配慮しながら、 スタッフ側
化し、作業所内 での 品質確保と運搬コストの
からの 見守りやすさ、高 い 作業性を実現した 。
低減を図った 。
(近藤彰宏、漆間一浩/日建設計)
近藤 彰宏……こんどう あきひろ
1962 年 東 京 都 生 ま れ。 1988 年 東 京
理科大学大学院工学研究科建築学専
攻 修 了、 同 年 日 建 設 計 入 社。 現 在、
同社設計部長
GICU
GICU
HCU
HCU
救命救急
GICU
HD(透析)
漆間 一浩……うるま かずひろ
1968 年 東 京 都 生 ま れ。 1994 年 東 京
HCU
GICU
都立大学大学院工学研究科建築学専
HCU
攻 修 了、 同 年 日 建 設 計 入 社。 現 在、
同社設計主管
分娩
サイト PC 工法による病棟個室側 の 外壁
検体検査
手術
救急病棟
GCU
アンギオ
病棟
救急
中央診療
放射線
供給
病理検査
GICU ホール スタッフが患者を見守りやすいよう配慮されている
スタッフの 治療側動線と完全に分離した GICU の 面会通路
長野県厚生農業協同組合連合会 佐久総合病院
最高高さ
佐久医療センター データ
駐車台数 約 1,000 台
式 給湯/中央式給湯 排水/屋内合流方式、感染系排
地域地区 佐久市都市計画北中込地区計画
水処理設備、RI 排水処理設備
所在地
長野県佐久市中込 3400 ー 28
主要用途
建築主
病院
長野県厚生農業協同組合連合会
設計・監理
日建設計
19.90m 軒高 19.10m
[病棟概要]
衛生設備
給水/上水+雑用水の 2 系統給水、高置水槽方
防災設備 消火/ スプリンクラー 設備(全館)、粉末消火
想定外来患者数 700 人/日
設備(ヘリ格納庫)、泡消火設備(ヘリ着陸帯、地下搬入ヤ
診療科目 全 31 科
ード)
排煙/自然排煙+機械排煙
担当/総括:川島克也 建築:近藤彰宏、漆間一浩、
血液内科、呼吸器内科、循環器内科、腎臓内科、糖尿病・
水野 勝、長谷川 知香、八町公章(元所員)
、後藤三夫、
内分泌内科、放射線診断科、内視鏡内科、腫瘍内科、リウ
撮影/㈱エスエス東京 中島真吾
西 勇 構造:小板橋 裕一、朝川 剛、貞許美和、
マチ膠原病内科、緩和ケア内科、甲状腺外科、呼吸器外科、
長嶋千草、田中佑樹、山根尚志 電気:小倉良友、
乳腺外科、消化器外科、消化器内科、麻酔科、心臓血管外科、
協力会社
橋口裕彦、細田麻奈 機械:山下 開、村松 宏、
形成外科、脳神経外科、神経内科、リハビリテーション科、
菅原華子 ランドスケープ:根本哲夫、佐藤 勇、
放射線治療科、小児科、耳鼻咽喉科、整形外科、歯科口腔
小嶋咲紀、天羽敏江 工務:小路直彦、大友茂春、
外科、泌尿器科、眼科、小児外科、産科、婦人科
土肥哲生、鬼頭泰裕、秋山春雄、馬場好春、若槻佳宏、
病床数
平田勝彦 監理:金 泰彦、斎藤俊宏、中塔昭晴、
救命救急病棟 20 床、GICU 16 床、HCU 20 床、NICU 6 床、
森本健一、新保 友三郎 CR:高村 光
GCU 12 床、感染症 4 床、一般 372 床
1 床当延床面積 110.80 ㎡
病棟基準階面積 4,883.86 ㎡
1 床当病棟基準階面積 33.92 ㎡
土木 日建設計シビル 担当/三星道広、石川 稔
インテリア
日建スペースデザイン
担当/三沢里彩、九十九 優子、中井真樹
施工
清水建設 担当/吉川直志
全 450 床
ア ル ミ 製 建 具 工 事
Y
K
K
O
K
A
P
事
紙
ジ形空調機 熱源/ターボ冷凍機、吸収式冷温水発生機、
家
家
ナ
サ
具
工
具 ・ 什 器 備
ー
ス コ
ー
イ
ン
工
事
品
ル
水熱源チラー、小型貫流ボイラ
外
事
事
日
(4,000kVA ×2)
、 高 圧 変 圧 器( 病 院・ 特 高 ) 合 計
建ぺい率 18.36%(許容 70%)
11,300kVA 予 備 電 源 / 非 常 用 発 電 機 ガ ス タ ー ビ ン
1,500kVA×2 台、無停電電源装置 200kVA×2 台、80kVA
×2 台、直流電源 MS ー E 700AH、400AH、50AH×2
容積率
空調設備
40.40%(許容 200%)
構造規模 RC 造、一部 S 造、一部 SRC 造 地下 1 階、地
上4階
量
事
ー
ン
き
ん
で
ん
高 砂 熱 学 工 業
田 中 建 設 工 業
横
森
製
作
所
カヤバシステムマシナリー
ナ
ブ
テ
ス
コ
工
電気設備 受電方式/77kV 特別高圧 2 回線(本線・予備)
受 電 変 圧 器 容 量 / 特 別 高 圧 変 圧 器 合 計 8,000kVA
延床面積 49,861.57 ㎡
事
事
木
壁
[設備概要]
工事期間 2012 年 2 月~ 2013 年 12 月
敷地面積 129,100.05 ㎡ 建築面積 20,442.79 ㎡
気 設 備 工
調 設 備 工
墨 出 し 工 事・建 築 測
鉄 骨 階 段 工
オ イ ル ダ ン パ
ド
ア
エ
ン
ジ
小 松 ウ オ ー ル 工 業
三 和シ ヤッタ ー 工 業
セ ント ラ ル コ ン クリ ート
本
久
サ
ク
塗
装
セ ン ト ラ ル ユ ニ
技
研
興
業
ナ
カ
工
業
フ
ィ
グ
ラ
ニ
ュ
ー
ス
ト
カイダ ー・ベ ー スボ ード 工業
第
一
建
設
ル
ノ
ン
清 藤 家 具 製 作 所
岡
村
製
作
所
ケ
ア
コ
ム
設計期間 2009 年 7 月~ 2011 年 12 月
[建築概要]
電
空
空調方式/外気処理空調機+水熱源 パッケー
鋼 製 建 具 工 事
鋼 製 建 具 工 事
打放しコンクリート表面仕上工事
押出成形 セメント板・シート防水工事
塗
装
工
事
手
シ
術
室
工
事
ー
ル ド
工 事
内 装 工 事( 手 摺・ガ ー ド )
ガ
ラ
ス
発
熱
木・ア ル ミ 複 合 サ ッ シ 工 事
UB枠・サッシ枠・カーテンBOX・ポックカウンター
構
工
Y
本
A
道
M
A
路
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