特別養護老人ホ‐ムで生活する 高齢者のエンパワメント支援に関する検討

島根 県立大学短期大学部 出雲 キ ャ ンパ ス
研究紀要 第 1巻 ,51-58,2007
特別養護 老人ホ ‐ ムで生活す る
高齢者 のエ ンパ ワメン ト支援 に関す る検討
∼施設入居前後 の社会関連性 の変化 か ら∼
伊藤 智子 ・加藤
*・
常松 さゆ り 諸井
真紀 。梶谷 みゆ き
***
**・
金 築 真志
望
概
要
生活 の場 が変化す ることでエ ンパ ワメン トの維持 が困難 にな りやす いと考 えられ
ている特別養護老人 ホ ームで生活 をする高齢者 の施設 入居前後 の社会関連性 の変化
を把握 した。そ して ,そ の変化 の理由を本人へのインタビュー,家 族 へ の質問紙調
査,施 設内既存資料 で得 られた結果 か ら事例検討により分析 した。その結果 ,特 養
で生活 す る高齢者 のエ ンパ ワメン ト支援 として1.本 人の施設 入居受 け入れ支援2.特
養生活 の 中で役割 を倫Jる 3.家 族 とのほどよい距離感 を感 じる支援4.本 人 の落ち着 く
居場所づ くり5,視 聴覚機能 を補 う支援 の 5点 が明 らかとな った。今後 ,事 例別 の結
果 を現在 のケア内容 と照 らし合わせ ,エ ンパ ワメン トを支援す るケアの改善が必要
である。
キー ワー ド :特 別養護老人 ホーム,高 齢者 ,エ ンパ ワメン ト,社 会関連性
I.研
小田 らは,高 齢者 ケアにおけるエ ンパ ワメン ト
につ いて ,「 高齢者 が生 活全般 にわた る適切 な
サポ ー トを受 ける ことに よって,最 期 の 時 まで
究 の 目的
在宅介護 が困難 な家族 にとって特別養護老人
ホ ーム (以 下 「特養」 とす る。)は 重要 な社会
主体的なその 人 らしい生 き方 を続 けていけるこ
とを実現 してい く働 きかけ こそ,高 齢者 ケアに
資源 である。 しか し,特 養 で生活 を送 る高齢者
は身体的な障害 のみな らず様 々な喪失体験 をも
おけるエ ンパ ワメ ン トの重要 な働 きで ある。
」
べ
ている
と述
(小 田 ,1999)。
ち,無 気力 に陥 りやす い。そ して ,そ の状況 が
続 くことで身体的 な廃用性 の障害 が更 にすす む
また,エ ンパ ワメン ト支援 の理念 として ,1.
住民第 一主 義 ,2.情 報提示 と本人 の意志決定
を重視 した支援 ,3.専 門家 が住民 の行動 に価
と考 えられて いる。 (池 田 ,2004)。 その よ うな
精神的 。身体的 な能力 を低下 させ ないために特
養 において も,在 宅 ケア同様 ,サ ー ビス利 用者
の社会関連性 を大切 に したケアが求 め られて い
る (安 梅 ,2000)。
エ ンパ ワメ ン トとは辞書 によると,「 力や権
力 を与 える こと,能 力 を与 えること,可 能 にす
る こと」 と定 義 され ,「 個人 が 自己 の生 活 をコ
ン トロール ・決定す る能力 を開発す るプ ロセス」
を意味す る用語 として多くの支持者 を得 るに至っ
ている
値 をつ け て 判 断 しない ことが提 唱 され てい る
(星 ,2004)。 介護予防 が緊急課題 の今 日におい
て ,高 齢者 エ ンパ ワメ ン ト支援 は重 要 で ある。
本研究 は,一 生涯社会 と自分 の関わ りをみつ
め自分の存在意義 を認識す る ことが主体的なそ
の人 らしい生活 を送 ることに繋 が り,エ ンパ ワ
メン トを助 けると考 え,特 養 で生活 す る高 齢者
の入居前後 の社会関連性変化 か らエ ンパ ワメン
ト支援 について検討 した。
(野 嶋 ,1996)(朝 原 ,2000)(星 ,2004)。
Ⅱ.対 象 と 方 法
本
特別養護老人 ホームやまゆ り苑
料
特別養護老人 ホーム湖水苑
辛
キ*出
雲市役所健康増進課
平成18年 6月 にA市 内の特養 2施 設において
,
-51-
伊藤
智子 ・加藤
真紀 ・梶谷みゆ き・ 常松 さゆ り・諸井
高齢者 12名 に対 して施設入居前後 の社会関連性
望 `金 築
真志
,
V.結 果 及 び 考 察
入居 前 か ら現在 まで継続 してい る こと,施 設 入
居前後 の 役割 内容 ・趣味 内容 ,入 居後 の 気持 ち
の 変化 に つ いて構成 的個人面接 を行 った 。社 会
関連性 に つ いて は安梅 による社会 関連性指標 を
用 い (安 梅 ,2000),そ の 5領 域別 に点数化 し
その バ ラ ンス を図示 した 。 また ,同 年 6月 か ら
,
8月 にか け て ,対 象高齢者 の 家族 に対 して面会
の頻度 。心得 ,家 族 の 役割 ,施 設生活 を始 めて
回答 の有効事例 は12事 例 中11事 例 で あり,対
象高齢者 の平均年齢 は84.5歳 だった。
結果 の概要 を表 1に 示 した。
1,事 例別の社会関連性の変化
1)事 例 1に ついて
問紙郵 送 法 にて 行 っ た。 さらに ,特 養 で作成 さ
本事例 は,ゆ くゆ くは現 在 の特養入居 を考 え
てお り,納 得 して入 った ことで生活 に対す る意
れ た 対 象 高齢 者 の入 居 時 か らの 情報 記 録 か ら
欲 を落 とす ことな く「生活の主体性」 が維持 で
年齢 ,入 居年 月,入 居前 の家族構成 ,入 居理 由
アセス メ ン ト内容 ,入 居 してか らの介護度 の 変
きていると考 えられた。家族 との頻 回な面会や
外泊時 の近所 の人 との会話 が今 までの社会 との
化 を把握 した 。
つ なが り感 を保 ち,本 人 の心の安定 につ ながっ
か らの 本 人 の 気持 ちにつ いての調査 を構成 的質
,
,
てい ると思われた。社会 へ の関心 ,他 者 との 関
Ⅲ .分 析 方 法
わ りは特養生活 5年 の 中で徐 々に薄 くなってい
対象高齢者社会関連性 に関す る特養 入居前後
の変化結果 を基 に,本 人へ の面接調査 ,家 族 へ
の質問紙調査 ,記 録物 で得 られた結果か ら「生
活 の主体性」,「 社会 へ の関心」,「 他者 との 関わ
り」,「 身近 な社会参加」,「 生活の安心感 」 の 5
領域 の変化理由 について個別 に事例検討 を行 っ
ると考 えられ るが,特 養生活 の 中での役割 を本
人の意向を聞いた り,本 人 の入居前 の趣味 を生
か した もの とす る ことで維持 で きると考 えられ
た。
2)事 例 2に つ いて
本事例 は ,特 養 入 居前 か らシ ョー トステ イの
利 用 や夫 の 特養利 用 が あったため ,特 養 の様 子
た。 さらに,事 例検討 で考 えられた変化理由の
共通性 を見 いだ しなが ら,特 養 で生 活 を送 る高
ため,入 居後の 2年 の生活では「生活の主体性J
齢者 の エ ンパ ワメ ン ト支援 につ いて検討 した。
を維持 していると考 えられた。家族 も本人に家
が よ くわ か って お り,自 ら入居 を希望 していた
族 を感 じさせ る努力 を してお り,「 生活の安心
感」 が維持 で きていると考 えられた。 また、希
Ⅳ 。倫 理 的 配 慮
本調査 を実施 す るにあた り,本 学 の研 究倫理
望 して外出を行 っているため,社 会 にも関心 を
向 ける ことが出来 てい ると考 え られ た。「身近
な社会参加」や 「他者 との関わ り」 は入居前後
審査 委 員会 の 承認 を得 た 。
各施設 長 に対 し,研 究 を実施 したい 旨 の 説 明
で低下 しているが,入 居者同士 の交流 によ ぅて
と,研 究 対 象者 の 選定 ,記 録物 閲覧 を依頼 し
維持 が可能 と考 える。入居 してか ら「気持 ちが
書面 にて 同意 を得 た 。高齢者 へ の構成 的面接 で
は ,高 齢 者 本人 に研 究 の趣 旨 を説 明 し,書 面 に
楽 にな った」 とい う気持 の変化 は,忙 しい息子
夫婦 にお世話 を して もらわなければな らない負
て 同意 を得 た 。本人 が 自 ら書 く こと を希望 しな
い 日か ら解放 されたことが関係 してい ると考 え
,
い
(ま
た は書 く ことがで きな い)場 合 は ,立 会
人 (施 設 職 員 )が 本 人 の意志 を確認 し,代 筆 し
た 。家族 へ の 調査 は ,調 査用紙 に倫理 的配慮 に
られた。
3)事 例 3に ついて
つ いて 明記 し,調 査 用紙 の返送及 び回答 が あっ
特養 入居 に当たっては生 活 の場 を変 えること
の納得 に時間を要 したが,自 分 の居場所 を確保
た ことで 同意 と した 心個 人名 は高齢者本 人 ,そ
す ることで 「生 活 の主体性 」 が入 居前 と同様
の家族 の デ ー タ,記 録物 が揃 った 時点 で 記号化
維持 で きていると考 えられた。 また,入 居前 と
同様 に 自分 の居場所 で本 。新聞 をゆっくり読 む
し,個 人 の 特定 がで きないよ うに配慮 した 。
-52-
,
∼
特別養護老人 ホ ームで生活 す る高齢者 の エ ンパ ワメ ン ト支援 に関す る検討 ∼施設 入居前後の社会関連性 の変化 か ら
表 1調 査結果 一覧
事例 NO
性別
1
2
女性
女性
男性
年齢
入居年
入居前の家族構成
既存 資 料
入居理 由
平成12年 4月
平成 16年 4月
平成13年 5月
夫婦 2人 暮 らし
息子夫婦と同居
夫婦 2人 暮 らし
スをⅢ
ス,ホ ームケルプサービ
Ⅲ
ながら
在宅生活 家は商売をしており息子夫婦は毎日忙しかつた。夫が先に入居 糖尿病を有し、人工肛問を創設している。糖
用し
デイサービ
ていた。ゆく
をし
ゆくは施設に入ろうと思っていたので入居の したが、その頃から入居希望をもっておられた,時 々ショート 尿病のコントロールのため入院。退院できる
ステイを手
ている時は大 ようになったが、家族に介護力がなく入所し
1用 し
た。 ステイを利用していた1シ ョート
がきたので説明をし
1っ た
,顆 番
込みをHI?4月 に
申し
い との交流があるが家に掃ると孤独だった,夕 食も不規即だった。た。しかし、本人は納得できていなかつた。
て考えて欲し
し
ても
外泊できる。1つ の生活の場とし
(入 居
本人は一時的なものと思つていた。
てきたので本人が決断された 施設職貫との人間関係もよく、日IB 4月 に入居。
なっ
夫だけでは介護が日難と
)
,
生活をはじ
めて
極設
から
の
介護
度の
変化
2
入居時
現
在
を開始し
てから
当分施設に蹴来めなかったが、ユニット
家族との関係は良好。ご主人とドライブに出かけた 裁縫が好きである。外出は買い物'散 髪'食 事。驚 入居し
くると
落ち着かれた,自 分
)を つ
する。 て本人の居場所(机 と明かり
り、家に帰つたときは近所の人と話をする。そのよ 聴のため話すときは職員が間に入リサボート
職員のアセスメン ト うなことが本人の心の安定に繁がつている。ユ三ッ 買い物のために外出し、気分転換することが必要。 のベースでゆっくりと
課である。行きたいと
新聞を読むのが日
ころ:戦 争中に行つ
ていたインド
ネシア 息子のいる沖褐
自分の時間を大切にして過ごすことが必要。
の中でも近所関係もよく、信頼されている。
ト
阜
身
近
な
社
て
音
生活の主体桂
生活の安心感
本 人 から
社会関連性
(施 設 入 居 前 と入届
後の比較)
:と
‐
社会へ の関心
身近な■会参加
3う
,こ :4i奪 :
他者との関わり
他者 との関わ り
国家 庭
□家庭
0家 庭 │
□施設
口施設 │
口施 設
施設入居前と後
の役割の内容
入居前
農業・郵便局の仕事
炊事
入居後
タオルたたみ
な し
家族 から
施設生活を始めてからの気持の変化
変化な し
面会の頻度
ほば存事日
面会時の心がけ
な し
変化な し
(気 持が楽になった)
変化があつた
月 1回 以下
週 1回 くらい
,励 ます
b配 するような話しはしない 好きな物を持っていく 楽しい話題を話す 近所の明るいニュースを話す
本人が′
無記入
家族の役割
の
の
てから
の
変
イ
と変化を感 じる
生
気
持ち
滝設
活を
始め
本人
(少
事例 NO
」
1生 月
家族 を感 じさせること
頻回の画会必要とされていると思ってもらえる心の支え
無記入
変化を感じる(表 情が切るくなった気持が撮やかになった
し明るくなった)
)
4
5
6
女性
女性
男性
年齢
77
入居年
平成 13年 7月
既存資料
平成 18年 2月
夫婦 2人 暮 らし
息子夫婦 と同居
娘夫婦と同居
ー
ー
HIBは
ス
仕事をやめて
い
し
し
シ
テイを11用 1息 子が介護のために
H朽
て
た
の
み
も
ョ
ト
シ
ス
を
し
。
入
居
申
込
か
ら
ョ
ト
テ
イ
11用
脳梗塞の既往があり、不自由ながら家
ート
て
て たが、介護を経
験し
てきた。最初は家で看たいと
思っ
れる 帰っ
ステイ 月中下血し
、救急車にて搬送さ
場から介護保険 ていた,シ ョ
庭で暮らしていた
`役 しないかという OHPに て協Xの OPを 編う。衛後落ち着いてきて特養での生活は「家では大変Jと 考えるようになった。入居の話をした時も「とう
制度が始まる前に入居
、本人
てい
た1ケ 7マ ネージャー0勧 めも
あり
よう
かJと 送っ
勧めがあった。本人も家族に迷惑をか 可能となった,息 子夫婦は共鶴とのため家庭での介護は困難な し
た
たが入居,徐 々に
なかつ
駐条んでき
はあまり
んが当施設の職員
納得てきてい
入居.槻 さ
けては申し訳ないと思い入居を決める。 ため家族も本人も納得し
平成12年 7月
入居前の家族構成
iヽ
,
I‖
入居理 由
,
1
はじ
めて
施設生
活を
から
の
介護
度の変
│ヒ
5
入居時
現
3
在
たい。孫に会いたいと 他の
できるだけ白
分で出来るようになり
分のことは自
ておら
れ
ユニット
、観成のことをとでも気にかけて大切にし
の人とよくお茶を飲んでいる。家族との面会が気 家族のこと
の
、さり
げない支援と家まと
思っている1今 のペースを維持てきるよう
工夫する。日
たいときに出来るよう
記を書
の関係づく る。好きなことをし
きとなっているので面会時の配慮と
職員と
持の安ら
い
の
い
い
と
し
て
あ
る
生
活
つ
て
た
だ
た
り
宅
外
な
潤
自 出
職員のアセスメン ト 関係を くり百会に来
たりと
たいことがある。
、歌を唄っ
たり
、習字をし
色々し
た生活 いたり
ながら
ゆつくりとし
をする。日
課を通し
楽しく
会話し
ていたため、林が不自由に り
を送る。元気な頃は年の世孟や家事をこなし
ておら
を行う
。 長時間の作業は疲れるので疇員と―絡にli介 ∼30分 行う
れる墓参り
送る。体調が良いときに希望し
、家疾はそれを負担に
恩っていた を
たら
なり
なっ
宗まへの即待が大きく
,
,
身二
生活の主体性
生活の主体性
社会関連性
後の比較)
::::と
│ヱ
ti:::〕
'■
■会への関心
会への関心
他者との関わ り
国家庭
口施 設
一
一
嫌
噛
本 人 から
(施 設 入 居 前 と入居
生 活 の 主 lA牲
生活の安心感
■ 会 へ の関心
身近な社会参加
他者 との問わ り
国家庭
口施設
炊事 ・牛の世話
おしばり・落 とし紙たたみ
炊事・墓掃除・草取 り
な し
落 とし紙たたみ
ハモニ カ
施設生活を始めてからの気持の変化
わからな い
変化な し
変化な し
面会 の頻度
ほ ば毎 日
週 1回 くらい
週 1回 くらい
面会 時の心がけ
心配するような話 しはしない
本人が′
無記入
施設入居前と後
の役割の内容
入居前
入居後
家 族 から
家族 の役割
の変
の
の
lt
変化を感 じる
生
気
持ち
施設
活を
始めてから
本人
出来るだけ話 しをする
無記入
変化な し
(性 格が丸 くな つた)
-53-
懐か しい山菜を持 っていく
面会に出来るだけ行き、子ども,孫
,規 戚
の
議をする
変化を感じる (身 体の調子がよくなったようだ
)
伊藤 智子 。加藤
望 。金築 真志
真紀 ・梶谷みゆき・常松 さゆ り '諸 井
事例 NO
7
性別
女性
男性
女性
平成 18年 1月
平成16年 7月
平成 16年 6月
年齢
入居年
入居前の家族構成
既存 資 料
入居理 由
生
はじ
めて
施設
活を
の
から
介護
償の
変
化
娘夫婦 と同居
独居
自宅で介護を受けながら生活していた。 H朽 骨折をきっかけに入院。治療
在宅サービスも利用していたが本人に馴 が終わ り老健 に入居。帰 って も在
染まなかった。障害に合わせた住宅改修 宅生活は無理 と考え弟が当施設入
も行った。当施設のショー トステイを利 居の申し込みを行 う。本人 も納得
用したら本人が「ここなら」と思われた。 ずみで入居。
息子と2人 暮 らし
Hll脳 梗墓 にて入院。退院後は 自
宅近 くの特護 に入居。 H12息 子 さ
んが死亡。その後、娘 さんのいる
町の施設を希望。 (本 人娘共に)
入居時
3
4
現
3
3
在
時々家に帰 りたい気持があるので、 職員に気をつかっている。独居生活をしてい モルモ ッ トを部屋で飼 っている。
できるだ け配慮する。今の生活意 たため人との関わりをあまり好まない。集団 えさは職員と買 いに行 く。家 に帰
職員のアセスメン ト
欲 を維持 し,で きる ことは 暖か い で何かするときも離れたところで見ておられ りたい気持がある。
気持で見守る。
る。本、新聞、テレビ、国芸、盆栽が好き。
生活の安心感
生活の主体性
生活の安心感
生活の主体性
身近な社会参
加
社 会 へ の関心
身近な■会参カ
社 会 へ の関心
他者との関わ り
g羅
設 庭
施 家
庭 設
家施
本 人 から
社会関連性
(施 設 入居 前 と入居
後の比較)
割
入居前
炊事 ・親成 づきあい
農業・家事
農業・新聞配達
入居後
な し
な し
朝夕のお茶配 り
滝設生活を始めてからの気持の変化
変化があった
変化な し
変化な し
面会の頻度
週 1回 くらい
週 1回 くらい
週 2回 くらい
面会時の心が け
楽 しく笑えるような話題を話す
耳が聞こえないので実えることを書く
無記入
家族を感 じさせること
自宅に帰る回数を増やす
施設入居前と後
の役割の内容
家族 か ら
家族の役割
ゆとりをもって見守 り、関わること
の本人の気持ち
の変化
海設生活を
始めてから
変化を感 じる (お 互いよい点をみて話せるように
なった) 入居 してから親子関係がよくなった
変化を感じる (ボ ーっとしていることが多くなった 変化を感じる (や きもちをやくようになった
)
事例 NO
1
1生 月
11
女性
男性
平成 13年 4月
平成 13年 5月
年齢
入居年
入居前の家族構成
既存 資 料
入居理 由
め
て 入居時
海設生
活をはじ
の
から
介
護
度の
郷と 現 在
夫婦 2人 暮 らし
H9変 形性膝関節症 にて歩行不能 H12ア ル コール依存症のため、入
とな り入院。 H134ま で老健を利 院。その後地元の老健を利用。そ
用。その後在宅での生活は無理 と の後 当施設の開設を知 り、施設利
いう判断か らH13当 施設に入居。 用を家族が希望 され、本人 も納得
し入居。
娘 と同居
2
1
1
朝昼時間を決めずに施設の周りを車椅子で回つたり、大 落ち着いた生活が出来ている。苑長から勧められ自
と語をしている。施設の外にはあまり出ない。役に立ち 己流で短歌をつくっている1毎 月15日 のみお酒を飲
職員のアセスメン ト たい い い
と う思 を大切に、眺濯協たたみJ「 食器洗い む。毎日日記を書く。今の生活をできるだけ続けた
など、施設でできることを行ってもら,こ とが必要。 いと思っている。家族には元気であつて欲しい。
J
生活の安心感
本人 から
社会関連性
(施 設 入居 前 と入居
後の比較)
身近な社 会→
加
入居前
家事全般
入居後
な し
な し
施設生活を始めてからの気持の変化
変化な し
しな し
変イ
施設入居前と後
の役割の内容
畑づくり
家 族 から
面会の頻度
月 1回
月 1回 以下
面会時の心が け
無記入
無記入
家族の役割
無記入
無記入
の4tAり 気持ち
の変化
悔計生
活を
始めてから
わか らな い
変化を感じる(職 員さんのケアで若々しくなった
)
-54-
)
∼
特別養護老人 ホームで生活 す る高齢者 のエ ンパ ワメン ト支援 に関す る検討 ∼施設入居前後の社会関連性 の変化 か ら
とい う自分 の ライフスタイルが出来た ことで
「社会への関心」 が維持 できていると考 えられ
であることがわか り,家 族 との 関係 の質 は上 がっ
てい る と考 え られ た 。
た。
8)事 例 8に つ いて
4)事 例 4に つ いて
本事例 は ,入 居 してか ら 2年 が経過 してい る
が ,社 会 関連性 は保 たれていた。家庭 で生 活 し
特養生活 は本人 の 納得 で 始 まって いた 。 また
本人 に 出来 るだ け自分 の ことは 自分 で行 お うと
す る意志 があるため「生活 の主体性」,「 社会へ
の 関心」 は維持 で きて い ると思われた。「生活
の安心感」 は困った ときの相談相手 の有無 を聞
く項 目について 「困 ったことがない」 と答 えて
ている時 か らの趣味 である「薄茶 をたてること」
は今 で も行 ってお り,楽 しみの一つ となって い
る と思 われ た。 しか し,入 居後 の役割 がな く
それが 「身近 な社会参加」項 目の点数 を下 げて
,
い ると考 えられた。その影響 か ,家 族 か らみ る
いたためで あ り,そ れ が阻害 されて いるわけで
はな い と考 え られ た 。 む しろ家族調査結果 の
と 「以前 に比 べ てボー っ としている ことが多 く
なった」 よ うに見 えるのではないだろ うか。 自
「入居後忙 しか っ た家庭 での生活 か ら離れ ,性
格 が丸 くなった」 ことは安心 して生活が出来て
分 も役 に立 ってい るとい う実感 が もて る役割 を
探す ことが必要 である。
い るか らであると考 えられた。
9)事 例 9に ついて
5)事 例 5に ついて
本事例 は,以 前 か ら施設生活で ,息 子 の死 に
よ り娘 が暮 らす家 の近 くの施設 を希望 し入居 と
本事例 は,特 養 へ の入居 はス ムーズに受 け入
れ られ ているため生活 に対す る意欲 を落 とす こ
なったため,特 養 での生活 に抵抗 はない と考 え
られた。施設入居前 より後 の方 が 「社会 へ の関
とな く生活 がで きて いると考 えられた。本人 も
家族 も入居前 と比 べ て本人 の気持 ちに変化 はな
心」 の項 目が高得点 になって い るのは,家 庭 で
は忙 しい生 活 で趣味 は特 になかったが ,特 養 で
い と考 えて い る。入居 して 4ヶ 月 だが ,「 社会
へ の 関心」項 目の点数 が以前 よ り下 がって い る
生活 をす るようになってか ら様 々なことを習 い
趣味 がで きたか らで あると考 えられた。家族 は
,
のは,視 力 の低下 か ら新聞 ,雑 誌 など読 む機会
週 2回 面会 に来 てお り,家 族 とのつ なが りも保
つ ことが 出来 ていることも生活 が安定 している
がな くなって きた ことが原因 と考 えられた。
6)事 例 6に ついて
ことにつ ながって い ると考 えられた。
本事例 の「身近 な社会参加」 の項 目の点数 が
入居前後で下 がっているのはパ ーキ ンソン病 を
10)事 例 10に ついて
有 し,あ まり他の利用者 との会話 がない ことが
理由 と考 えられた。 しか し,団 築 の時間 にハー
本事例 は,特 養 入居 5年 が経過 してい るが
ほ とん ど社会 関連性 の変化 はみ られ なか った 。
モニ カをふ き,他 の利用者 が歌 をうたって い る
ことか ら,さ さやかではあるが自分 の特技 を生
,
「身近 な社会参加」項 目の得点 の低下 は生活 の
中での役割 がない ことか らきて いると考 えられ
か して社会参加 を してい るため,こ れ を継続す
る必要 があると考 えられた。
7)事 例 7に つ いて
本事例 は,本 人が 「ここな ら」 と思 うほど様
子 がわか っての入 居 で あっ たため ,入 居後 の
「生活 の主体性 ,安 心感」 は入居前 と変化 はな
いと思われた。家 にいた ときは親戚 づ きあいや
家事 の役 割 が あったが ,今 は特 にない ことが
「身近 な社会参加」項 目点数 を下 げてい ると考
た。 しか し,実 際 には役 に立 ちたい とい う気持
ちを大切 にす るため特養 の 中で洗濯物 たたみ を
役割 として担 って もらうプランを実施 している
が,本 人 にはそれ らを自分 の役割 として認識 し
ていない と考 えられた。
■)事 例 ■について
「生活 の主体性」項 目の点数 が家庭生活 の時
よ りも上 がっているのは,家 庭 にいた時 はアル
コール 依存症 で あり,生 活 が乱れ ていたためと
えられた。 しか し,入 居 して家族 と距離 が出来
てか ら,お 互 いの 良 い点 をみ て話 がで きるよう
考 え られ た。 また,視 力 が落 ちたため ,新 聞
雑誌 は読 まなくなっていた。施設長 に勧 め られ
にな り,親 子関係 が入居前 より良 くなった こと
入居後短歌 や川柳 を作 るようになったが ,本 人
の 「社会 へ の 関心」 には反映 されなかった。 し
か ら家族 との新 しい関係 を作 り上 げてい る途上
-55-
,
,
伊藤 智子・加藤 真紀・梶谷みゆき 常松 さゆ り 。諸井
望 ・金築 真志
か し,家 族 は「本人 は職員 との 関わ りで若 々 じ
は理 想 的 と考 え られて い るが ,介 護 を必要 とす
くなった」 と感 じていた。 この ことか ら職員の
る高 齢者 はお世話 を受 けなけれ ば な らない 「負
関わ りが社会関連性 に大 きく影響 してい ると考
い 目」 を常 に感 じてい ることが 事例 2か ら伺 え
えられた。
た 。 また ,事 例 7は 生活 の場 を家族 と別 にす る
2.特 養生活を送る高齢者のエ ンパ ワメン ト支
ことで どち らに も心 の 余裕 が 出来 ,家 族 関係 が
援のポイン ト
以上 の事例検討 を基 に,特 養生活 を送 る高齢
者 の エ ンパ ワメン ト支援 のポ イ ン トを以下 5点
改善 され た と考 え られ た 。身体介護 中心 の ケア
に整理 した。
よ りも人 間関係 の 調整 を含む精 神 的 なケアの重
要性 を大河 は述 べ てい る (大 河 ,2004)。
,
「支援す る側」 と「支援 され る側」 の双方 がパ ー
1)本 人の特養入居 の受 け入れ支援
事例
また
トナ ー とい う関係 (星 ,2004)は 双方 に心の 余
1.2.5.7は 入所前 か らその特養 に併設
裕 を必要 とす る。両 者 の ほ どよい距 離 を保 つ た
されている在宅サ ー ビス事業所 を利用 してお り
めに介護職 は本 人 のみで はな く家族 との 関係 づ
特養 の様子 がよ くわか っていた。長年住 み慣れ
た生 活 の場 か ら離れ ,新 しい生活 の場 に移 るこ
くりを行 い ,そ の パ イプ役 にな ることが必 要 で
ある。
とはだれ で も抵抗 があるが,新 しい生 活 の場 の
4)本 人 の落 ち着 く居場所 づ く り
,
情報 を十分 に得 ることで ,こ れか らの 自分 の生
活 を創造す る ことがで きる。事例 4の よ うに入
りに支配 され ず ,生 活 の場 を作 り出す こ とが重
居 の受 け入れが 「家族 に迷惑 だか らJと い う理
要 で ある (外 山 ,2002)(泉 田 ,2002)。 事例 3
由 は,そ の他 の事例 の特養 入居理由 と して も考
えられ るが,近 年 の斬究報告 で もエ ンパ ワメ ン
で は ,入 所 当時 は不安定 だった高齢者 が ,自 分
ト支援 の理念 として 「本人 の意志決定 」 力dあ
これ か らの 介護 は職 員側 か らの垂 直 的 な 関わ
の机 や電灯 を もつ こ とで ,そ こ を使 って 自分 の
る
趣味 ,や りたい ことがで き,生 活 の 安心感 を高
と言 われて い る (星 ,2004)こ とか ら,こ れ か
め る ことにつ なが って い ると考 え られ た。今 ま
らの 自分 の生 活 を自分 自身で考 える主 体 と して
での生 活史 を振 り返 り,生 活環境 は変 わ って も
本人 が意思決定す る こ とが重 要 で あると考 える。
落 ち着 いて安心 して 過 ごせ る環境 を創 る ことが
本 人 の 施設 入 居後 の生 活 が思 い描 け る よ うな
家族 ・専 門職 によるケアが特養 入 居前 か ら必 要
重要 と考 える。
,
5)視 聴覚機 能 を補 うケア
で あ る。
入居 前 と現 在 の 介護度 を比較 す る とほ とん ど
2)特 養 生活 の 中での役 割 を創 る
の 高齢者 に大 きな変化 はなか った。 しか し,事
障害 を もちなが ら生活 を送 る場合 も社 会参加
例
5。
■ は祝 力 の 低 下 が 顕 著 で あ った。社会 に
は重 要 で あ る (伊 藤 ,2006)。 事 例 2.3.7.8,
10.■ が 施 設 入 居 後 「役 割 が ない 」 と答 えて い
情報 の キ ャ ッチ が必 要 で ある。 その 2事 例 は視
た 。事例 6は ,入 所前 か らの趣味 で あ ったハ ー
力 が低下 した ことで新 聞や雑誌 が読 めな くな り
モ ニ カ を吹 くこと を自分 の 役割 に して い た 。大
その ことが原 因 で 社会 に対す る関心 がな くな っ
切 な ことは ,高 齢者 が 自分 で 出来 る こ とに焦点
て きていると考 え られた。新 聞 ・雑誌 の代読等
を当 てて助 けるだ けで はな く,残 され た 能 力 に
ケアの 中 に積極 的 に取 り入れ る必 要 が ある。
関心 を向 け るため には ,社 会 の 出来事 に関す る
,
,
焦点 を当 てて社会 的 なつ なが りを積極 的 に作 り
出 し,失 われた役割 を取 り戻 した り,新 しい役
割 を創 り出 した りす ることである (松 岡 ,2002)。
グル ー プ リビング ケア を参考 に (小 田 ,1999)
家庭 で生活 して いた時 に得 意 だ っ た分野 で ,社
会 的 な役 割 を見 つ け出す ことが 出来 るプ ロ グ ラ
ムづ くりが必要 で ある。
3)家 族 とのほ どよい距離感 を感 じるケ ア
高齢者 が ,家 族 と共 に暮 らす ことは一 般 的 に
-56-
Ⅵ。お わ
り に
今回 は事例検討 で特養生活 を送 る高齢者 の エ
ンパ ワメン ト支援 のポ イ ン トを考察 した。今後
は事例別 に今回 の分析 内容 の上 に実際 に行 って
い るケア内容 を置 きなが ら,充 分出来て いるケ
ア,工 夫が必要 なケアについて 明 らかに し,エ
ンパ ワメン トを促すケアの改善 に繋 げてい きた
∼
特別養護老 人ホームで生活する高齢者 のエ ンパ ワメン ト支援 に関す る検討 ∼施設入居前後の社会関連性 の変化 か ら
ニ ッ トケアの 3つ の 介護 ソフ トで高齢者 に
い と考 える。
望 まれ るケアが可能 に一 ,G P net,49(1):
謝
2併23.
辞
(2006):社 会福祉 士養成 講座 介護概
論 ,139-146,中 央法規 ,東 京 。
伊藤 セツ
本研究 を行 うにあた り,ご 協力項 いた施設利
用者 の方 々 ,家 族 の方 々,職 員 の方 々に深謝致
大河 由美
(2004):ADL評 価 か らみ たユニ ッ
します。
トケア導 入の効果 。第 3回 山 口 県看護研 究
学 会集 会 プ ロ グ ラム集 録 ,54-56.小 田兼
*本 研究 は島根県立看護短期大学の平成 18年 度
三 ,杉 木敏夫 ,久 田則 夫
特別研究費 によ り行 った。
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外 山良義
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Study(】 l Support of the Aged E五 螂Юttcコmα■
t Living
h Special Nursing Homes of the Aged:
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