水熱法を基礎とした金属酸化物の 基板堆積化 中央大学 理工学部 応用化学科 助教 田口実 1 発明に関して 発明名称 金属酸化物の堆積方法 発明概要 常温常圧の水を昇温昇圧すると、比誘電率、密度、イオン積が著 しく変化する。特に、比誘電率は温度上昇とともに減少していく。 このような高温高圧水は、水本来の特性に加え有機溶媒(例えば エタノールやアセトンなど)のような振舞いをする。この特性を利用 すると、常温の水に溶解した金属イオンは、昇温昇圧していくと比 誘電率の低下に伴い、それは次第に過飽和となる。そして、金属 (水)酸化物の核形成の誘起及び結晶成長が速やかに進行する。 この高温高圧水中における一連の金属(水)酸化物の結晶化機 構を利用し、この反応場中に金属イオン(源)と(被堆積)基板を共 存させると基板上に酸化物が堆積する。 2 22.1 圧力 / MPa 高温高圧水を利用したin-situ表面修飾法とナノ粒子合成 液体 超臨界状態 @室温 @臨界点近傍 水 超臨界水 有機分子(非溶解) ★臨界点 固体 無機イオン(溶解) Mn+ 気体 374 Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ 温度 / ℃ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ 加水分解 脱水反応 M(OH)n 微粒子生成 表面修飾 有機分子(溶解) 表面修飾酸化物ナノ粒子の合成が可能 東北大学WPI阿尻雅文教授開発多数特許有 圧力の水密度依存性(回分式) 温度と比誘電率の関係 3 表面修飾剤と金属酸化物ナノ粒子の結晶化 先端切断八面体 {100} {111} • 何も添加しない場合(未修飾) {111} {100} 結晶核 • • 分子内に金属イオンへ配位出来得る官能基を複数持っている場合 (例えば高分子) 複数持っているが、炭素鎖長が短い場合 {100} • • 立方八面体 立方体 炭素鎖長は短くてもいいが、分子内に金属イオンへ配位出来得る 官能基が一つの場合 炭素鎖長が長い場合 Cryst. Growth Des., 2009, 9, 5297., CrystEngComm, 2011, 13, 2841. RSC Adv., 2014, 4, 49605. 4 基板堆積化への応用 @室温 Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ 基 板 Mn+ @加圧加温 加水 分解 Mn+ 脱水 反応 M(OH)n 微粒子生成 120 mL 10 mL 未処理鏡面加工Si基板 5 作製方法 手順 回分式反応器へ金属塩(例えば硝酸塩等、濃 度は任意で、希薄溶液でも可能。)水溶液と適 当な基板(Si等)を封入する。 →容量が大きい場合は、大量作製、あるいは 大面積化も可能。 条件 • 温度:150~400 ℃ • 内部圧力:0.5~40 MPa • 時間:0.5~24 h 処理 • 洗浄(超音波洗浄等) 30 mL 反応前 反応後 Mn+ 基板 水 6 基板堆積試験(一部) 温度(℃) 時間(h) 圧力(MPa) 原料 濃度(M) 200 3 5 Ce(NO3)3・6H2O 0.01 200 12 5 Ce(NO3)3・6H2O 0.01 200 24 5 Ce(NO3)3・6H2O 0.01 250 1 5 Ce(NO3)3・6H2O 0.01 250 24 5 Ce(NO3)3・6H2O 0.01 250 24 5 ZrO(NO3)2・2H2O 0.02 250 24 5 Fe(NO3)3・9H2O 0.01 250 24 5 Pb(NO3)2 0.01 250 12 5 Dihydroxybis(ammoniuml actato)titanium (IV) 0.01 250 24 5 Dihydroxybis(ammoniuml actato)titanium (IV) 0.01 400 2 40 Ce(OH)4 0.1 300 2 40 Ce(OH)4 0.1 7 基板堆積実施例 反応条件 •温度:250℃ •昇温速度:1℃/分 •反応時間:12時間 •濃度:0.02M •水密度:0.3g/ml 原料 ① Fe(NO3)3・9H2O ② Al(NO3)3・9H2O ③ Y(NO3)3・6H2O ④ Cd(NO3)2・4H2O ⑤ Ce(NO3)3・6H2O ⑥ ZrO(NO3)2 Siのレーザー顕微鏡図 水及びEtOHを用い 超音波洗浄 ① ② ③ ⑤ ⑥ Si ④ 反応前Siには何も映らない。 8 レーザー顕微鏡による観察 ①Fe(NO3)3 ②Al(NO3)3 ③Y(NO3)3 9 レーザー顕微鏡による観察 ④Cd(NO3)2 ⑤Ce(NO3)3 ⑥ZrO(NO3)2 10 CeO2のSi基板堆積化 11 Si基板上のCeO2の元素分析結果 元素 見掛濃度 wt% 標準物質 Si 44.62 92.25 SiO2 O 0.89 3.05 SiO2 Ce 1.43 4.69 CeO2 12 CeO2の粉末XRDパターン 13 超音波洗浄後のCeO2堆積基板 14 PbOのSi基板堆積化 15 TiO2のSi基板堆積化 アニール前 アニール後 16 従来製膜・基板堆積技術とその問題点 既に実用(一般)化されているものには、①物理・化学 蒸着法、②めっき(電解めっき及び無電解めっき)法、 ③スピンコート法やラングミュア・ブロジェット膜(LB膜) 法がある。一般的ではないが、本技術と類似する④水 熱法もある。 ① 特殊・大型装置を必要とすることや、大量作製や大 面積化が難しい。 ② 通常は金属被膜であって、金属酸化物の被膜では ない。 ③ 堆積物と基板との吸着相互作用が非常に弱い。 ④ 金属塩とは別に複数試薬の添加が必要であり、さら に複数段階プロセスを要する。 17 本技術の特徴・従来技術との比較 • 手順が簡便(one-pot)である。大量作製及び大面積 化も可能である。 • 種々の金属(水)酸化物に応用できる。 • 金属酸化物に依存した機能を発現する。 • 様々な基板へ堆積化できる。 • 温度、金属塩濃度を制御して堆積密度を制御できる。 • 比較的強力に基板上に堆積、吸着している。 • 再利用も可能と考える。 • 環境負荷低減化にも貢献できる。 18 Si基板のエッチング効果 (温度と原料を制御) 19 想定される用途 • 本技術で作製される金属酸化物の機能・特徴を生 かした電極材料に適用できると考える。例えば、セン サー(医療用等含む)、色素増感太陽電池用基板、 絶縁膜、磁気テープが想定される。 • 上記以外に、本技術は装飾も期待できる。 • 本手法の材料加工プロセスへの組み込み。 →手法(エッチング効果もあるので)の組み合わせが 実現できれば、様々な分野や用途に展開することも可 能と思われる。簡便且つ大量にできることから、使い捨 て材料の用途及び、再利用も視野に入れている。 20 実用化に向けた課題 • 金属(水)酸化物に関しては、二元系について成功 している。金属酸化物の機能を考えると三元系や多 元系が望ましい。それらが未開発であるので、順次 試験していく。 • 製膜・堆積のムラがあるため、時間、温度、濃度、 基板設置状態を制御し、単層・高密度化を実現する (用途によって)。 • 洗浄方法を確立する(用途によって)。 • 実用化を念頭に置くと、繰り返し使用が望まれるが、 耐久性や堆積密度と機能性についての相関性を検 証する必要がある。 21 企業への期待 • 実際の機能評価(例えば、電気化学分析な ど)ができる企業との共同研究を希望する。 • 手法の組み合わせができる(材料生産プロセ スに基板を使用する技術を持つ)企業との共 同研究を希望する。 • また、色素増感太陽電池を開発中の企業、 触媒分野への展開を考えている企業、化学 研磨に興味ある企業は、本技術を参考にして もらいたい。 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 金属酸化物の堆積方法 • 出願番号 特願2014-008077 • 出願人 学校法人 中央大学 • 発明者 田口 実 23 お問い合わせ先 中央大学 研究支援室 加藤 裕幹 TEL 03-3817 - 1603 FAX 03-3817 - 1677 e-mail [email protected] 24
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