歴史と文化の香る まほろばの郷 - 農業農村整備情報総合センター ARIC

06
■ 事 業 紹 介
06―■ 事業紹介
歴史と文化の香る
まほろばの郷
猿ヶ石川地区 二期事業の取組状況
★
東北農政局和賀中部農業水利事業所
猿ヶ石川農業水利事業建設所長
櫻井 睦
1.はじめに
猿ヶ石川農業水利事業は、岩手
あるが、ここで花巻市の概要につ
季は放射冷却現象により零下 20 度
いて紹介すると人口は約 10 万人、
近くまで下がることもある。
県の中西部に位置する花巻市、北
市の西部に観光地として有名な花
花巻といえば宮澤賢治生誕の地
上市にまたがる 2,504ha を受益と
巻温泉郷を擁している。また、市
であり、市内には宮澤賢治記念館、
して主に水田を中心に、水田の畑
内には県内唯一の花巻空港があ
童話館、
「雨ニモマケズ」の詩碑な
利用による大豆、麦、飼料作物、
り、東北新幹線新花巻駅、東北自
どゆかりの旧跡、観光スポットが
野菜等を組み合わせた複合経営を
動車道、東北横断自動車道などの
沢山残されている。さらには、戦
展開しており、県内有数の農業地
高速交通網が整備されている。気
後に高村光太郎が 7 年間過ごした
帯である。
候は太平洋側気候の特徴を有する
高村山荘や花巻新渡戸記念館など
が、北上川沿いにあることから冬
があり、少なからず今日の農業農
定供給に支障をきたしているとと
め老朽化等による施設機能の低下
による破損を防止するため凍上抑
村の振興につながる人々の業績が
もに、施設の維持管理に多大な労
がみられている。このため、本事
制層を設ける。立沢水路橋は上部
偲ばれる地域である。
力と経費を要しているところであ
業では施設毎の機能診断を行い用
工、下部工ともコンクリートの剥
る。このため、本事業では用水路
水路等の補修・改修計画を立てて、
離、骨材露出、クラック、継目から
等の補修・改修を行い、農業用水
機能保全工事を実施している。
の漏水が見られ、さらにコンクリー
本地区の受益の大半は花巻市で
事
施
設
業
名
概
要
計 画 諸 元
用水路
L=21.3km
取入施設
1式
水管理施設
1式
2.二期事業の工事概要
受 益 面 積 (ha)
用水改良
2,
504ha
排水改良
計
− ha
用水受益
ダム
取水施設
用水路
■猿ヶ石川農業水利事業概要図
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ARIC情報|No.114 2014-08
本地区の基幹水利施設である用
の安定的な供給と施設の維持管理
水 路 等 は、 国 営 猿 ヶ 石 川 土 地 改
の軽減を図り、もって農業経営の
良事業(昭和 28 年度∼昭和 38 年
安定に資するものである。
度)及び国営猿ヶ石土地改良事業
(昭和 34 年度∼昭和 45 年度)で
2,
504ha
凡 例
■田瀬ダム方面から花巻市に向けた受益地の様子
ト強度の低下が確認されたため、
①開水路、水路橋等
現場打ち開渠・暗渠の表面劣化、
継目欠損・目地材劣化による漏水
(1)更新工事の内容
PC コンクリート橋(L=45m)に改
修する。この際、橋脚を廃止し 1
スパンにより架橋する構造とする。
に対しては、平成元年から平成 4
造成された。しかし、造成後相当
本地区の基幹水利施設は、前歴
の年数が経過していることによる
事業により昭和 28 年度から昭和
状態が非常に良好であることから、
老朽化及び寒冷な気象条件による
45 年度にかけて造成されたが、そ
同様の製品により改修する。今後
ラック、目地材劣化による漏水に
劣化の進行により、農業用水の安
の後 50 年以上が経過しているた
の劣化対策として、背面土の凍結
対しては、更生工法により耐摩耗
年に施設整備した二次製品水路の
②サイホン(水管橋)
サイホン管のすり減り、管体ク
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06―■ 事業紹介
■施設経過年数及び劣化要因等
(平成19年度時点調査)
施設名
取入施設
取入水路
幹線水路
中央幹線用水路
谷内幹線用水路
猪鼻幹線用水路
完成年度 経過年数
S28
S29
S37
S37
S40
S55
S42
S42
S43
S43
54
53
45
45
42
27
40
40
39
39
標準耐用
年数
30∼50
45
50
40∼50
40∼50
30
40∼50
30
40∼50
30
劣化箇所
劣化要因
取水設備・制水設備
年数経過による老朽化
管理棟・機械室
年数経過による老朽化、凍害
隧道・水路橋・猿ヶ石川サイホン(水管橋)
年数経過による老朽化
開渠・隧道・水路橋・折木沢サイホン(水管橋) 年数経過による老朽化、凍害
開渠・暗渠・隧道・サイホン・水路橋・水管橋 年数経過による老朽化、凍害
分水工ゲート
年数経過による老朽化、凍害
開渠・暗渠・隧道・サイホン・水管橋
年数経過による老朽化、凍害
分水工ゲート
年数経過による老朽化、凍害
開渠・暗渠・隧道・サイホン・水管橋
年数経過による老朽化、凍害
分水工ゲート
年数経過による老朽化、凍害
の水管橋の工事にあたっては、猿ヶ
る田瀬ダムに、昭和 38 年に築造さ
標 高は EL=190.0 ∼ 207.0m で あり
石川を横断していることから仮設桟
れ昭和 54 年に改築されてから約 30
第 7 号と第 8 号ゲートは常時水中
橋を設置している。この仮設工事
年が経過している。田瀬ダムは洪水
に没している状態である。このた
にあたり、猿ヶ石川の河床がハン
調整を主目的に発電及びかんがい
め、ゲート塗装等の維持管理は困
レイ岩で硬いことからダウンザホー
用水(Q=3.4m3/s)を供給している
難な状況であり、今後の維持管理
ルによる基礎掘削工法を採用して
ため、年間のダム水位は貯水位ルー
の軽減を図るためゲート本体の材質
いる。また、水管橋の下は国道 283
ル カー ブ で WL=192.1m ∼ 210.0m
を SS から SUS に更新した。併せて、
号線が通過していることから交通
で運用管理されている。取水口は
現在の管理事務所は老朽化が著し
の安全確保のため、この 3 月の夜
第 1 号∼第 8 号まで 8 門設置され、
いことや水管理施設を導入すること
系の著しい発錆、分水工ゲートの発
は新サイホンを使用して初めてかん
間に 200 t 級クレーン(カウンター
特に、猿ヶ石川サイホンは鋼管
錆、腐食の進行が見られるため、こ
がい用水の供給が始まった。主要
ウエイトを調整して 120 t 相当)を
の発錆が著しく、所要の板厚が確
れに対して、斜樋取水ゲートは耐候
施設の完成とともに、各幹線水路の
使用して、延長 85 m の水管橋を 2
保されていない、溶接継目からの
性に優れるステンレス鋼材による更
補修・改修工事も順調に進行してお
回に分けて架設したところである。
漏水が頻繁に発生、配管基礎の台
新、制水ゲートの部分更新、分水
り、平成 25 年度までの 6 年間の進
併せて老朽化の進んだ取入水路、
座コンクリート、斜路コンクリー
ゲートもステンレス鋼材を採用する。
捗率は 7 割を超えたところである。
幹線水路、中央幹線用水路の隧道、
性・水密性を向上させる。
平成 25 年度の工事内容は、平成
開水路、パイプラインなど補修・改修
23 年から継続している猿ヶ石川サ
工事を約 2,800 m ほど実施している。
本事業の主要な施設である田瀬
イホン工事が行われており、左右
平成 26 年度の工事内容は、既
ダム取入施設のゲート設備及び猿ヶ
岸斜面の配管工事及び猿ヶ石川を
設猿ヶ石川サイホン工の旧水管橋
斜樋取水ゲートの戸当たり損傷及
石川横断サイホン工の架け替え工
横断する水管橋(逆三角トラス補
(パイプビーム式)及び斜面配管撤
び扉体等の発錆、制水ゲート駆動
事もほぼ完了し、平成 26 年度から
剛式)の架設工事を実施した。こ
去、中央幹線用水路の調整池、谷
トの損傷が著しいことから、新た
(2)工事の取り組み状況
に架け替えて改修する。
③取入施設等
■水管橋施設概要表
(現況−計画対比)
項 目
水管橋形式
斜面配管形式
現 況
計 画
3 連@単純支持π補剛
2 連@単純支持逆三角トラス補剛
露出配管
露出配管
管種
SP
SP
口径
φ1100
φ1100
水管橋部:t = 12mm∼22mm
水管橋部:t = 8 mm
斜面部:t = 9 mm
斜面部:t = 8 mm
施設容量
Q= 2.961m3/s
Q= 2.961m3/s
設計内圧
0.66Mpa
0.66Mpa
L = 28.10+31.00+23.10 = 81.20m
L = 40.15+40.15 = 80.30m
92.706m
90.672m
SL = 83.554m(左岸)
SL = 82.774m(左岸)
SL = 99.616m(右岸)
SL = 98.673m(右岸)
θ= 38°
(左岸)
θ= 37°
∼45°
(左岸)
θ= 27°
∼ 34°
(右岸)
θ= 28°
∼45°
(右岸)
管厚
支間割、
支間長
水平部長
斜面配管長
斜面配管勾配
内幹線用水路の補修・改修工事等
■取入施設(改修後)
を行う予定である。
(3)技術的検討事項の紹介
本事業の実施にあたって、主要
施設である取入施設(取水口ゲート)
及び猿ヶ石川と国道 283 号線を横断
する長大な猿ヶ石川サイホン工事の
技術的検討事項について紹介する。
第 1 支間:1/320
鉛直たわみ度
第 2 支間:1/292
1/915
第 3 支間:1/581
下部工形式
基礎形式
54
重力式橋台 2 基 + 壁式橋脚 2 基
重力式橋台 2 基 + 小判形橋脚 1 基
直接基礎
直接基礎
河積阻害率
8.00%
4.40%
橋脚の鉄筋段落し
有り
無し
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1)取入施設(田瀬ダム取水口)
①取水ゲートの改築
取入施設は特定多目的ダムであ
■取入施設(改修前)
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06―■ 事業紹介
■猿ヶ石サイホン水管橋改修工法比較表
径 間
全 体 図
第 1 案 単純支持π型補剛型式 1100A
2 径間
断 面 図
概算
65t
計
50t
2 径間
期間
上部工製作費
71,000
上部工架設費
48,406
桟橋設置費
184,725
(幅 14m)
橋台工事費
52,032
橋脚工事費
74,459 3 年
塗装塗替費
(2 回)
第 2 案 単純支持トラス補剛形式 1100A
工事
概算工費(千円)
鋼材重
○
△
△
維持 総合
管理 評価
○
○
17,200
◎
△
○
△
◎
101t
上部工製作費
135,200
上部工架設費
57,100
桟橋設置費
141,523
(幅 10m)
橋台工事費
92,628 2.5 年
塗装塗替費
52,860
(2 回)
計
×
○
◎
×
△
42t
景観的にも最も優れた形式で
ある。橋台規模が大きくなり、
上部工はベントと仮桟橋の併用
架設となるが、橋脚工事が不要
であるため、トータルとしての
施工性は他案より良い。だだし、
上部工製作費及び塗装塗り替え
費用が割高となり、全体工事費
は最も高くなる。
479,311
第 4 案 単純支持π型補剛形式 1100A
3 径間
同口径、同スパン上では最も
本体重量が軽くなる。その為重
機、ステージが小型化でき、架
設費用は削減出来る。一方上部
工本体幅が長い為、下部工工事
費は第 1 案より不利となる。全
体工事費はπ型より若干有利で
あり、かつ景観性を考慮すると
総合的に本案が有利となる。
439,048
第 3 案 アーチ補剛形式 800A × 2 条
1 径間
総 合 評 価
既設水管橋と同形式である。
橋幅が狭い為、下部工の小型化
が可能であり、第 2 案より下部
工工事費は若干有利である。た
だし上部工の本体重量がかさむ
ため、仮桟橋及び重機は第 2 案
より大きくなる。以上より全体
工事費は 2 番目となる。
維持管理(塗装替え)につい
ては最も経済的となる。
447,822
上部工製作費
72,550
上部工架設費
36,650
桟橋設置費
163,124
(幅 12m)
橋台工事費
59,465
3年
橋脚工事費
74,459
塗装塗替費
32,800
(2 回)
計
経済性 施工性 景観
上部工製作費
上部工架設費
桟橋設置費
橋台工事費
塗装塗替費
(2 回)
−
−
−
− 3∼
− 3.5 年
計
−
−
−
−
−
−
本形式は現況サイホンと同じ
スパンであるが、径間長及び河
積阻害率ともに河川管理施設等
構造令に合致しない。
径間長 6.15m < 20m・
・
・OUT
河 積阻 害 率=( 橋 脚幅 2 m × 2)
/
(河幅 49.8m)
= 8%> 5%・
・
・
・OUT
■猿ヶ石川サイホン(右岸を望む)
から、新たに新築することとした。
■猿ヶ石川サイホン(左岸を望む)
た。また、通水管が 1 条であるこ
イホン本体の安定には斜面部配管
とから逆三角トラス補剛式とした。
を固定する基礎工の設置が必要で
2)猿ヶ石川サイホン工
①水管橋形式の選定
ある。基礎工の選定にあたっては、
②斜面配管基礎工
斜面延長と 40°の急勾配斜面での
猿ヶ石川左岸法面の延長は、90 m
施工となることから安定した基礎
主に a)パイプビーム形式、b)フ
以上に渡って続くことからサイホ
形式と現場での施工性を考慮した
ランジ補剛形式、c)トラス補剛
ンの斜面配管長は 83 m の長大な
工法検討が重要となる。
形式に分類される。水管橋は口径
配管となる。法面の地質は、表層
基礎形式を比較した中で場所打
1,100 mm、支間長 40.1 m のため水
に礫質土が堆積しその下に硬質ハ
ち杭は、いずれも大型の施工機械
管橋設計基準よりフランジ補剛形
ンレイ岩(硬岩Ⅱ)の層が堆積し
を必要とするが、猿ヶ石川サイホ
式とトラス補剛形式の経済比較を
て、表層の砂礫層が比較的厚い崖
ンの施工場所は、急傾斜での工事
行って、トラス補剛形式を採用し
錐層をなしている。このため、サ
となり施工が困難である。これに
用水路に用いる水管橋形式は、
■各種基礎形式の適用性の目安(道路橋示方書より抜粋)
■猿ヶ石川サイホン断面図
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杭 基 礎
オール
基礎形式
アース
深礎基礎
ケーシ リバー
ドリル
適用条件
ング工 ス工法
工法
法
5 m 未満
×
×
×
○
深度
5 m∼15m
○
△
○
○
砂・砂礫(30<N) ○
○
○
○
土質
支持層
硬岩
△
△
△
○
地盤条件
の状態 傾斜が大きい、層面の
凹凸が激しい等、支持
○
○
○
○
層の位置が同一深度で
無い可能性が高い
支持杭
○
○
○
○
支持形式
摩擦杭
○
○
○
施工条件
作業空間が狭い
○
○
○
○
■深礎杭
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06―■ 事業紹介
■断面図
■平面図
④仮設締切工
対 し て、 深 礎 基 礎 は ラ イ ナ ー プ
川に仮設桟橋を設置した。常設の
レート敷設及び掘削など人力施工
桟橋として、使用するクレーンの
猿ヶ石川サイホン工に新設する
を主体とする工法であり、十分対
アウトリーガーの幅を考慮し 8 m
橋脚は河川中央に位置するため締
応可能な工法である。
以上の幅を確保する。桟橋に使用
切工が必要である。締切工法は、
する杭の支間は、河川管理施設等
鋼管杭工法を採用した。鋼管杭の
構造令から 20 m(洪水時も存置す
打設は、基礎地盤が硬岩(一軸圧
サイホン工は猿ヶ石川と国道 283
るため橋脚と同様の考え方)と定
縮強度 122.5 N/mm2)であったこ
号を横断していること、左岸側に
められている。使用するクレーンの
とから、ダウンザホールにより削
は施工用の進入路等作業するため
最大規格は、常設桟橋架設・撤去
孔し、削孔内に鋼管を建込み後中
本地区の用水管理施設は、田瀬
の十分な広さが確保されていない
時及び水管橋架設・撤去時で 120 t
詰コンクリートを充填する締切工
ダム取入施設(子局)における取
ことから、作業足場として猿ヶ石
クローラークレーンが必要となる。
法とした。
水流量を計測し、立沢水路橋(孫
1)水管理システム導入の目的・方針
局)地点の幹線水路の水位を計測
①用水の合理的配分
③仮設桟橋の架設
3.水管理システムの導入
し、中央管理所に NTT 専用回線
して適正な操作・管理を行えるよ
迅速なデータ収集により、施設の
うな水管理システムを構築する。
的確な操作を行うことで未然に災
害を防止する。
田瀬ダムからの取水量、各幹線
用水路流下量の把握、使用割合の
水工及び放水工等が広域に点在し、
取水ゲート及び分水工ゲートの遠
維持、時間的需要量変動への対応、
多大な管理労務と経費を必要とし
隔操作ができないことから、用水
地域的需要量変動への即応を図る。
ており、水管理システム構築により
時間を要している。このため、今
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受益地には、ダム取入施設・分
を介して伝送されている。しかし、
監視・制御を一元的に行い管理労
管理及び施設管理に多大な労力と
■ダウンザホールハンマ工法施工状況
③維持管理費の軽減
②施設の保全と災害防止
後の管理労力の軽減を図り管理体
管理区域が広域に及ぶこと及び
制の高齢化に対処するため、中央
各施設・機器等の異常の早期発見、
管理所 1 局集中管理体制を基本と
保護並びに各種気象災害における
務費・維持管理費等の軽減を図る。
4.地域環境に配慮した取組
地区内の環境は、農業生産及び
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06―■ 事業紹介
■コウモリピット
■脱出用スロープ
■田瀬発電所
■百ノ沢発電所
農村環境が整備されており、特に
物の生息・生育環境への影響に配
し脱出が困難な構造となっている
棟屋根部及び中央幹線用水路百ノ
平 成 20 年 度 着 工 以 来 今 年 度 で 7
前歴事業による大規模開墾事業に
慮した施設整備を行っている。幹
ことから、除塵機を設置する際に脱
沢余水吐敷地を活用して設置して
年が経過することとなる。この間、
者個人に属し、農林水産省の公式
よって形成された棚田が保全され
線水路は山間部を通過することか
出用のスロープを新たに設置した。
いる。この太陽光発電設備は、
「電
主要な基幹施設の整備も完了し、
見解を示すものではありません。
美しい景観を維持しているところ
ら隧道区間が多く、この中にコウ
気事業者による再生可能エネル
残りは取入水路の水路橋、中央幹
である。また、北上川の支流で本
モリ(モモジロコウモリ、コキク
5.再生可能エネルギー導入
ギー電気の調達に関する特別措置
線用水路の調整池、水管理システ
引用文献
地区の中央を流下する猿ヶ石川や
ガシラコウモリ、テングコウモリ)
本事業では、土地改良施設の維
法」に基づき再生可能エネルギー
ム導入の整備のみとなっている。
1)国営猿ヶ石川土地改良事業 水源である田瀬湖など憩いの場を
の生息が確認されており、坑内に
持管理費軽減策の一環として太陽
発電設備の認定を受けて、固定価
平成 27 年度完了に向けて工事も大
提供するなど、多様な自然環境を
コウモリピットを設置している。
光発電所を設置した。太陽光発電
格買取制度に則って電力会社と供
詰めを迎えているところである。
幹線水路は断面が大きく、カモ
所は、猿ヶ石北部土地改良区で管
給契約されている。この太陽光発
本事業の取り組みは、前歴事業で
シカ等の哺乳類が度々水路に転落
理している田瀬ダム取入施設管理
電所により発電される電力は、天
老朽化し機能低下した土地改良施設
候により発電量が変動するため全
の機能保全を図るため補修・改修工
て電力会社に送電し、土地改良施
事を実施し長寿命化を図るとともに、
利事業 水管理システム実
設の運転・操作に必要な電力は電
施設を管理している土地改良区の維
施設計業務
有している。受益地の花巻市では、
「まほろばの郷」として自負して
いる地域である。
本事業の主要施設である取入施
設、取入隧道、水路橋、猿ヶ石川
■電力需要施設の概要
区 分
施設数
総出力
年電力量
年使用料
(箇所)
(kw)
(kwh)
(千円)
サイホンなどの改修にあたっては、
国営施設
15
54
9,500
495
力会社により安定的に供給される
持管理の負担軽減につなげることを
現況の周辺環境になじむように線
その他施設
21
335
192,300
3,059
36
389
201,800
3,554
仕組みとなっている。太陽光発電
目的に実施してきたものである。
形、デザイン、色彩等を考慮した
施設として施工してきている。コ
ンクリート構造物は自然環境に配
計
■太陽光発電施設の概要
区 分
仕 様
田瀬発電所
百ノ沢発電所
慮して化粧型枠を使用、サイホン
モジュール
240w − 205w
44 枚
96 枚
工は従来から地域になじんできた
パワコン
3.0kw − 5.5kw
3台
4台
10.56kw
19.68kw
7,000
14,000
シルバー塗装をして整備している。
さらに、地区内に生息する動植
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ARIC情報|No.114 2014-08
出 力
概算費用
(千円)
の 運 用 に よ っ て、 年 間 発 電 量 は
工期も残すところ後 2 年間である
31,000 kwh となり、土地改良区が使
が、事業計画に則って、基本的には
用する電力量の 15 % に相当するこ
用水計画としての適正配分、適正
ととなる(電力料金では 37 % 相当)
。
管理の再確認と土地改良区の維持
※本投稿文の内容や意見は、執筆
事業計画書
2)平成 21 年度猿ヶ石川農業水
利事業 猿ヶ石川サイホン
他実施設計業務
3)平成 24 年度猿ヶ石川農業水
4)平成 25 年度猿ヶ石川農業水
利事業 猿ヶ石川サイホン
詳細設計業務
5)農村振興 いわて 岩手県
農村振興技術連盟第 204 号
管理軽減に資する更なる取り組みの
6.おわりに
国営猿ヶ石川農業水利事業は、
掘り起こしなどを再度確認をしてい
きたいと考えているところである。
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