アフリカ:IEAのアフリカの エネルギー見通しについて 2014年12月19日 調査部 竹原 美佳 1 本日の内容 IEAのアフリカのエネルギー見通し サブサハラにおけるエネルギーの現状 石油供給の現状と見通し 天然ガス供給の現状と見通し その他 まとめ 2 IEAのアフリカのエネルギー見通し アフリカのエネルギー見通し (“Africa Energy Outlook”;AEO) IEAの2014年世界エネルギー見 通し(”World Energy Outlook”; WEO)の特集 発行:2014年10月13日 作成:IEA WEOチームを中心に OECD/資源国政府、国際機関、 企業他が協力 対象地域:主にサハラ以南アフリ カ(サブサハラ) 内容:地域のエネルギー需給の現 状、2040年までの見通し、重要事 項、課題など AEOの主な対象地域 以下のアドレスより無料でダウンロード可能 http://www.worldenergyoutlook.org/africa/ 3 参考:IEA(国際エネルギー機関) International Energy Agency;IEA 設立:1974年、OECD*枠内の機関、事務局はパリ 事務局長:マリア・ファン・デル・フーフェン 加盟国:現在29カ国 目的・活動:エネルギーの安全保障の確保、環境保護、経済成長、 世界的なエンゲージメント *OECD(Organization for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構) 北米(2) 欧州(23) アジア・太平洋(4) カナダ 米国 オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、 豪州 エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、 日本 ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリ ニュージーランド ア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、 韓国 ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペ イン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国 4 参考:IEAシナリオ(WEO・AEO) IEA WEO IEA AEO 備考 新政策シナリオ (“New Policies Scenario”) 新政策シナリオ (“New Policies Scenario”) 450シナリオ アフリカの世紀 ケース(“African Century Case”) 現在のエネルギー・ 環境政策(計画を 含む)が実行される ことを想定した将来 像 目標達成のための 規範的な将来像 5 新政策シナリオ:エネルギー需給 【エネルギー需給のポイント】 ・エネルギー需要:1.8倍(バイ オエネルギー消費5割以下に 低下) ・石油:2020年頃生産ピーク、 域内消費増加で輸出漸減 ・天然ガス:生産4倍増、モザン ビークがナイジェリアと並ぶ産 ガス国に。域内消費・輸出とも に拡大 ・石炭:南アフリカに加え、モザ ンビークが輸出国に。 ・電力需要:4倍増、多様化(水 力・天然ガスの比率高まる) 域内需要に対し供給は限定的 1,200 石油換算百万トン 1,000 800 その他再生可能 バイオエネルギー 600 水力 原子力 400 ガス 石油 200 石炭 0 AEOにもとづき作成 人口:9.4億→17.5億人 GDP(2013年米ドル、PPP):2.7兆ドルから4 倍増 6 参考:アフリカの世紀ケース 新政策 アフリカの世紀シナリオ 経済・社会発展加速の規範的シナリオ アフリカの 世紀 人口 12年9.4億人 →40年17.5億人 都市部 住民 12年3.4億人 →40年9億人 GDP (2013年 米ドル、 PPP) 4倍増 新政策シ ナリオ比 30%増 電気を利 6.5億人 用できな →40年 い人口 5.3億人 新政策シ ナリオ比 40%減 (3億人) 7 現状:豊富な資源と限定的な利用 石油確認埋蔵量 (2013年) 650億バレル(世界の5%) 開発可能な資源量:2,000億 バレル(海洋7割、3割はナイ ジェリア) 天然ガス確認埋蔵 量(2013年) 318Tcf(世界の5%) 開発可能な資源量:1,100Tcf (深海7割) エネルギー消費 (2012年) 5.7億toe(世界の4%) (人口は世界の13%) 発電設備容量 (2012年) 158GW(うち送電網への接続 90GW) 電力消費(2012年) 358TWh その他再生可能 0.2% 石炭 17.8% バイオエネル ギー 61.3% 石油 15.0% ガス 3.9% 水力 1.4% 原子力 0.5% エネルギー消費 2012年 5.7億toe 8 参考:アフリカにおける資源ポテンシャル Gas OilGas Oil Hydro Fossil fuels Oil Wind Oil Solar Gas Oil Coal IEA WEO2014 London (Nov,2014) 過去5年の石油・天然ガス発見の3割はサブサハラ 再生可能エネルギーのポテンシャル(特に水力、太陽光) 9 参考:サブサハラの電力 バイオ 0.5% 水力 20.4% 水力 21.8% 石炭 41.8% 原子力 2.0% その他再生 可能 0.5% ガス 13.3% 原子力 3.0% ガス 9.1% 石油 22.4% 発電設備容量* (2012年)90GW *送電網に接続 石炭 56.1% 石油 9.1% 発電電力量 (2012年)440TWh 供給は非効率で不安定、世界で最も高い水準のコスト。電力投資の 深刻な不足が社会・経済の発展を阻害 10 石油:供給の現状と見通し① 現状:西アフリカ主体、深海4割 輸出国の多くが生産の85%以 上を輸出 見通し:2020年頃供給ピークへ 2020年以降ナイジェリアを除く 既存産油国減退へ。 域内需要:倍増(400万バレル/日) 域内供給増加(製油所新設・ 改修)または製品輸入増加 輸出:12年比170万バレル/日減、 世界の石油貿易に占める比率は 横ばい、北米の増産による輸出へ の影響あり サブサハラ原油生産見通し(2000~ 2040年) 7 百万バレル/日 6 5 4 その他サブサハラ アンゴラ 3 ナイジェリア 2 1 0 2000 2012 2020 2025 2030 2035 2040 AEOにもとづき作成 域内消費増加により輸出は漸減するが、引き続き世界市場 への石油供給源としての重要な地位にとどまる 11 石油:供給の現状と見通し② ~2020年 ・ナイジェリア低迷、アン ゴラ増産 ・南スーダン、ガーナ、コ ンゴ共和国、ニジェール 等が増産 ナイジェリアとアンゴラを除くサブサハラ の原油生産見通し(2013~2040年) 2020年~ ・ナイジェリア復調 ・ウガンダ、ケニア供給 開始 ・アンゴラ*を含む既存 産油国減退へ *プレソルト開発の進展 による Source:AEO 12 地域の重要事項:ナイジェリアの石油 投資 石油法(Petroleum Industry Bill)の改正遅 延で投資低迷 ナイジェリアとアンゴラの計画中 プロジェクト 石油盗掘 15万バレル/日 (政府収入50億ドル/年 相当) 製油所 老朽化・補修の不足によ る低稼働率 Source:AEO 13 天然ガス:供給の現状と見通し① 現状:西アフリカ(大西洋圏)主体 天然ガス生産見通し(2000~2040年) 主にナイジェリアで生産、生産の5 割を輸出 見通し:2012~40年で生産4倍増。 ナイジェリアが首位を維持するが、 2025年に南部アフリカの生産が西 アフリカを凌駕 域内需要:5倍増 輸出:3倍増、世界の貿易に占める シェア微増、東アフリカの輸出が西 アフリカを上回る。北米のLNG輸出 AEOにもとづき作成 による影響あり(特に大西洋圏) 生産4倍増、域内需要増加。世界の貿易に占めるシェア増加、 モザンビークはナイジェリアと並ぶ産ガス・輸出国に 14 天然ガス:供給の現状と見通し② サブサハラの国別天然ガス生産増減 対比(2012年・2040年) 2040年までの増産 大幅増 ・ナイジェリア、モザン ビーク 増産 ・アンゴラ、タンザニア、 南アフリカ(カルー シェールガス) 小幅増 ・コートジボワール、カメ ルーン、ガボン、コンゴ 共和国、チャド Source:AEO 15 参考:世界の天然ガス増産国・地域(WEO) United States Angola Sub‐Saharan Africa Mozambique Nigeria Other Tanzania Russia Australia North Africa 50 100 150 200 250 bcm IEA WEO2014 London (Nov,2014) サブサハラは世界有数の天然ガス増産地域 増産の半数は域内消費(電力・産業)に回るが輸出も拡大 16 天然ガス:域内消費、輸出拡大 天然ガス国別需要(12・40年) bcm70 160 140 10億m3 Exports 60 120 Domestic consumption 50 100 40 80 60 30 40 20 20 0 2012年 2040年 10 その他サブサハラ 南アフリカ モザンビーク・タンザニア 2015 2025 2040 Mozambique 2015 2025 2040 Tanzania ナイジェリア AEOにもとづき作成 Source:AEO 域内需要5倍(ナイジェリアは3倍)、輸出3倍増(モザン ビークとタンザニアからの輸出拡大) 17 地域の重要事項:東アフリカの天然ガス利用 モザンビークとタンザニアの主要ガス田及び インフラ 天然ガス利用における 複数のオプション: LNG輸出(収入をイ ンフラや重点分野に 投資) パイプライン・配給 網整備(雇用・産業 振興) 発電 GTL、肥料、メタノー ル等(自給率向上・ 輸出) Source:AEO 18 その他:電力供給の現状と見通し 電源別発電電力量(12年・40年) 1,800 TWh 0% 1,500 22% その他再生可能 太陽光(PV) バイオ 水力 原子力 ガス 石油 石炭 1,200 900 600 3% 9% 9% 8% 4% 3% 26% 3% 25% 56% 300 4% その他再生可能 太陽光(PV) バイオ 水力 原子力 ガス 石油 石炭 27% 0 2012年 2040年 2012年 供給4倍増、多様化(石炭の比 率低下、水力・天然ガス増加) 2040年 AEOにもとづき作成 19 その他:シナリオ実現に向けたIEAの提言 石油に偏重した投資 を電力向けに 現実的かつ戦略的な 計画の立案 プロジェクトの開発・調 達・契約、未払いリス クへの対応 ガス価格の設定と割り 当て 電力小売価格と送電 費の設定 石油 ガス 電力 Source:AEO 政府の統治(ガバナンス)の改革を伴うエネルギー部門 における三つの行動①電力投資の拡大、②地域協力・ 統合の深化、③エネルギー資源と収入の管理改善 20 まとめ 2014年10月、IEAは包括的なサブサハラのエネルギー見 通しを作成。同地域は豊富な資源があるが利用は限定的。 現在エネルギー投資の3分の2は輸出向け。電力投資の 不足が社会・経済の発展を阻害。 石油生産は2020年頃供給ピークへ。域内消費増加で輸 出漸減。最大の産油国ナイジェリアは複数の課題に直面。 天然ガス生産は4倍増、域内消費・輸出ともに増加。モザ ンビークはナイジェリアと並ぶ産ガス・輸出国に。モザン ビークとタンザニアは天然ガス利用で、LNG輸出による収 入増加、パイプライン整備による雇用創出、産業振興の 他発電、GTL、肥料など複数のオプションあり。 IEAはシナリオ実現に向け政府の統治(ガバナンス)改革 を伴うエネルギー部門における三つの行動(①電力投資 の拡大、②地域協力・統合の深化、③エネルギー資源と 収入の管理改善)を提言。 21
© Copyright 2024 ExpyDoc