システム制御工学Ⅰ 電気電子工学科 2014年度 今日の講義内容 安定性(2) • ナイキストの安定判別法 • 安定度 2 復習 伝達関数 6 𝐺 𝑠 = (𝑠 + 2)(𝑠 + 3) のナイキスト線図を描け. 3 ナイキストの安定判別法(1) 𝑅(𝑠) + 𝐺(𝑠) − 𝐻(𝑠) 𝐺(𝑠) 𝐺𝑜 𝑠 = 1 + 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) • 本来は負帰還となるように 設計 • 開ループ 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) の位相 が −180° になると負帰還の つもりが正帰還に • 正帰還の状態でゲインが1 なら発振,その時ナイキスト 線図は (−1, 𝑗0) を通る 開ループ伝達関数 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) のナイキスト線図の (−1, 𝑗0) 付近での挙動を調べることにより安定性 を判別 4 ナイキストの安定判別法(2) • 開ループ伝達関数 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) の極が 𝑠 平面 の右半平面にない場合 プラントそのもの は安定または安 1. 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) のナイキスト線図を描く 定限界な場合 2. ナイキスト線図において,𝜔 が 0 ~ + ∞ と 増加する向きにたどるとき,(−1, 𝑗0) 点を左 側に見れば安定,右側に見れば不安定 ラウス・フルビッツの判別法が代数計算に基づ くのに対し,ナイキストの判別法はナイキスト線 図の幾何学的な特徴に基づいている 5 ナイキストの安定判別法(3) 𝜔増加 Im Im −1 Im −1 0 −1 0 Re 不安定 0 Re Re 不安定 安定限界 Im Im −1 −1 0 安定 0 Re Re 安定 6 持続振動する場合 • ナイキスト線図が複素平面の −1 を通過する 場合 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = −1 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 1 ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 180° このとき,閉ループ伝達関数は 1 1 𝐺𝑜 𝑗𝜔 = = =∞ 1 + 𝐺 𝑗𝜔 𝐻(𝑗𝜔) 1 − 1 ゲイン無限大⇒入力0でも出力がある⇒角周波 数 𝜔 で発振 (この 𝜔 が持続振動周波数) 7 ナイキスト線図の描き方 𝜔𝜋 𝜔→∞ −1 −1, 𝑗0 点を左に見るかど うかだけが問題 ⇒ ナイキ スト線図は概形で良い • 特に重要なのは,𝜔 = 0, 𝜔 → ∞,および軌跡が負 の実軸と交わる周波数(位 相交差周波数)𝜔𝜋 に対応 するところ • 位相交差周波数において, 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) の実部は負,虚 部は0,位相は −180° • Im 0 𝜔𝜋 : 位相交差周波数 𝜔 = 0 Re 8 1次の場合 Im 𝜔→∞ 0 Im 𝜔=0 0 𝜔 → ∞ Re Re 𝜔→0 1 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = 𝑠 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 =𝑠 Im 𝜔→∞ 0 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = 1 𝜔=0 1 1 + 𝑎𝑠 Re (𝑎 > 0) 𝜔→∞ 𝜔=0 0 1 Re 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = 1 + 𝑏𝑠 (𝑏 > 0) 9 2次の場合(1) Im −1 𝜌 1𝜔=0 𝜔→∞ Re 𝑗 − 2𝜁 𝜔 →大 𝜔 = 𝜔𝑛 𝜔𝑛 2 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = = (𝑗𝜔)2 +2𝜁𝜔𝑛 𝑗𝜔 + 𝜔𝑛 2 軌跡が実軸と交わるためには,虚部= 2𝜁 𝜔 𝜔𝑛 1 𝜔 1− 𝜔𝑛 2 + 𝑗2𝜁 𝜔 𝜔𝑛 = 0 .そのとき実部が−1 にな るためには,𝜔 = 2𝜔𝑛 ≠ 0 .したがって,𝜁 = 0 でなければならない. 𝜁 = 0 のとき安定限界,それ以外では安定 10 2次の場合(2) 𝜁 = 0 の場合 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 1 𝜔 1− 𝜔𝑛 2 Im 1 −1 𝜔 → 𝜔𝑛 𝜔→∞ 𝜔 → +0 Re 𝜔 → 𝜔𝑛 𝜔 = 2𝜔𝑛 11 3次のシステム(1) 𝐾 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = (𝐾, 𝑎, 𝑏, 𝑐 > 0) (𝑠 + 𝑎)(𝑠 + 𝑏)(𝑠 + 𝑐) 𝐾 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = (𝑗𝜔 + 𝑎)(𝑗𝜔 + 𝑏)(𝑗𝜔 + 𝑐) 𝐾 = 𝑎𝑏𝑐 − 𝑎 + 𝑏 + 𝑐 𝜔 2 + 𝑗𝜔(𝑎𝑏 + 𝑏𝑐 + 𝑐𝑎 − 𝜔 2 ) 𝐾 lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = , lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 0° 𝜔→0 𝑎𝑏𝑐 𝜔→0 𝐾 lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = lim =0 3 𝜔→+∞ 𝜔→+∞ (𝑗𝜔) 𝐾 lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = lim ∠ = −270° 𝜔→+∞ 𝜔→+∞ (𝑗𝜔)3 lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 0, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 270° 𝜔→−∞ 𝜔→−∞ 12 3次のシステム(2) 位相交差周波数 𝜔𝜋 Im 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 0 𝑎𝑏 + 𝑏𝑐 + 𝑐𝑎 − 𝜔2 = 0 ∴ 𝜔𝜋 = 𝑎𝑏 + 𝑏𝑐 + 𝑐𝑎 𝜔𝜋 におけるゲイン 𝜌 = 𝐺 𝑗𝜔𝜋 𝐻 𝑗𝜔𝜋 𝐾 = 𝑎𝑏𝑐 − 𝑎 + 𝑏 + 𝑐 𝜔𝜋 2 𝐾 = 𝑎𝑏𝑐 − 𝑎 + 𝑏 + 𝑐 𝑎𝑏 + 𝑏𝑐 + 𝑐𝑎 13 3次のシステム(3) ナイキスト線図 Im −1 0 𝜔→∞ 𝜔=0 Re 𝜌 𝜔𝜋 𝜌 < 1 であれば軌跡は (−1, 𝑗0) の右側を通り, (−1, 𝑗0) を左に見るので,閉ループシステムは安定. また 𝜌 は 𝐾 に比例するので,𝐾 が小さい方が安定 14 問 開ループ伝達関数が 10 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = 3 𝑠 + 3𝑠 2 + 2𝑠 + 4 となるフィードバック制御系がある.ナイキスト 線図の概形を描き,制御系の安定性を判別 せよ. 15 ナイキストの安定判別法(4) • 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) の極が右半平面にある場合 プラントそのものが不安定な場合 1. 開ループ伝達関数 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) のナイキスト 線図を描く 2. 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 の右半平面にある極(不安定な 極)の数を 𝑃 とする 3. 𝜔 が −∞ から ∞ まで変化するとき,ナイキ スト線図が (−1, 𝑗0) の周りを反時計方向に 回る回数を 𝑁 とする(時計回りに回った場合 は−1回と数える) 4. 𝑁 = 𝑃 なら閉ループ系は安定 16 1次システムの例(1) 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = 𝐾 𝑠−1 + の場合 𝐾 − + + (𝐾 > 0) 1 𝑠 1 • 極 𝑠 = 1 は 𝑠平面の右半平面にある 𝐾 −𝐾(1 + 𝑗𝜔) 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = = 𝑗𝜔 − 1 1 + 𝜔2 lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 0, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = 90° 𝜔→−∞ lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 𝜔→−0 lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 𝜔→+0 lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 𝜔→+∞ 𝜔→−∞ = 𝐾, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = 180° 𝜔→−0 = 𝐾, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = − 180° 𝜔→+0 = 0, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = − 90° 𝜔→+∞ 17 1次システムの例(2) Im −1 𝜔 → −0 𝜔 → +0 𝐾 0 Im 𝜔 → −∞ 𝜔 → +∞ Re 𝜔 → −0 −1 𝜔 → +0 Re 0 𝜔 → +∞ 𝐾 𝐾>1 • 不安定な極の数 𝑃 = 1 • (−1, 𝑗0) の周りを左回りに1 回まわる 𝑁 = 1 • 𝑁 = 𝑃 = 1 なので,閉ルー プは安定 𝜔 → −∞ 𝐾<1 • 不安定な極の数 𝑃 = 1 • (−1, 𝑗0) の周りを左回りに0 回まわる 𝑁 = 0 • 𝑁 ≠ 𝑃 なので,閉ループは 不安定 𝐾 が大きい方が安定になる 18 1次システムの例(3) ブロック線図の等価変換 + 𝐾 − + + 1 𝑠 1 𝐾 + − 𝐾 は負 帰還 + 1 𝑠 1 𝐾 1は 正帰 還 プラントが不安定な場合は, 𝐾 を大きくし て負帰還の比率を高めた方が安定になる 19 問 開ループ伝達関数が 𝐾 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = (𝐾 > 0) 𝑠−2 であるとする.ナイキスト線図を描いて,閉ルー プ系の安定性を調べよ. 20 安定度(1) 実際の制御系 • 安定であることは第1条件 • その上で,どの程度安定か? 不安定になる までどの程度の余裕があるか? という定量 的な評価が必要 安定余裕 の定義 21 安定度(2) ゲイン余裕(GM : gain margin) 1 GM[dB] = 20 log = −20 log 𝜌 𝜌 = −20 log[𝐺 𝑗𝜔𝜋 𝐻(𝑗𝜔𝜋 )] (𝜔𝜋 : 位相交差周波数) Im 単位円 𝜌 (−1, 𝑗0) 𝜔→∞ 1 𝜔𝜋 𝜙𝑀 0 𝜔𝑐 𝜔→0 Re 位相が−180°となるとき,ゲインが 1 からどれだけ小さいか 位相余裕(PM : phase margin) PM = 𝜙𝑀 = 180° + ∠𝐺 𝑗𝜔𝑐 𝐻(𝑗𝜔𝑐 ) (𝜔𝑐 : ゲイン交差周波数) ゲインが 1 となるとき,位相が − 180° からどれだけ離れているか 22 安定度(3) 𝜙(𝜔) [degree] gain [dB] ゲイン余裕,位相余裕は ボード線図でも確認できる 𝜔𝑐 0 GM 𝜔𝜋 0 −180 PM 演算増幅器の位相補 償の解析に使うはず • ゲインが0dBとなる周波 数 𝜔𝑐 において,位相 𝜙(𝜔) と−180° との差が 位相余裕 • 位相が−180°となる周波 数 𝜔𝜋 において,ゲインと 0dBとの差がゲイン余裕 23 問 開ループ伝達関数を 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = 4 (𝑠+1)3 とする. 1. ナイキスト線図を描いて,ゲイン余裕 GM およ び位相余裕 PM を求めよ.位相余裕は簡単な 式にはならないので,図からおおよその値を読 み取ること. 2. 折れ線近似でボード線図を描いて,GMとPMを 求めよ. 24 練習問題 下図のフィードバック系について,ナイキストの 方法を用いて安定性を判別せよ. + − 𝐺(𝑠) 21 (1 + 𝑠)(1 + 2𝑠) 1 1 + 3𝑠 𝐻(𝑠) 25
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