第8回講義資料

システム制御工学Ⅰ
電気電子工学科
2014年度
今日の講義内容
安定性(2)
• ナイキストの安定判別法
• 安定度
2
復習
伝達関数
6
𝐺 𝑠 =
(𝑠 + 2)(𝑠 + 3)
のナイキスト線図を描け.
3
ナイキストの安定判別法(1)
𝑅(𝑠)
+
𝐺(𝑠)
−
𝐻(𝑠)
𝐺(𝑠)
𝐺𝑜 𝑠 =
1 + 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠)
• 本来は負帰還となるように
設計
• 開ループ 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) の位相
が −180° になると負帰還の
つもりが正帰還に
• 正帰還の状態でゲインが1
なら発振,その時ナイキスト
線図は (−1, 𝑗0) を通る
開ループ伝達関数 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) のナイキスト線図の
(−1, 𝑗0) 付近での挙動を調べることにより安定性
を判別
4
ナイキストの安定判別法(2)
• 開ループ伝達関数 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) の極が 𝑠 平面
の右半平面にない場合
プラントそのもの
は安定または安
1. 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) のナイキスト線図を描く 定限界な場合
2. ナイキスト線図において,𝜔 が 0 ~ + ∞ と
増加する向きにたどるとき,(−1, 𝑗0) 点を左
側に見れば安定,右側に見れば不安定
ラウス・フルビッツの判別法が代数計算に基づ
くのに対し,ナイキストの判別法はナイキスト線
図の幾何学的な特徴に基づいている
5
ナイキストの安定判別法(3)
𝜔増加
Im
Im
−1
Im
−1
0
−1
0
Re
不安定
0
Re
Re
不安定
安定限界
Im
Im
−1
−1
0
安定
0
Re
Re
安定
6
持続振動する場合
• ナイキスト線図が複素平面の −1 を通過する
場合
𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = −1
𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 1
∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 180°
このとき,閉ループ伝達関数は
1
1
𝐺𝑜 𝑗𝜔 =
=
=∞
1 + 𝐺 𝑗𝜔 𝐻(𝑗𝜔) 1 − 1
ゲイン無限大⇒入力0でも出力がある⇒角周波
数 𝜔 で発振 (この 𝜔 が持続振動周波数)
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ナイキスト線図の描き方
𝜔𝜋
𝜔→∞
−1
−1, 𝑗0 点を左に見るかど
うかだけが問題 ⇒ ナイキ
スト線図は概形で良い
• 特に重要なのは,𝜔 = 0,
𝜔 → ∞,および軌跡が負
の実軸と交わる周波数(位
相交差周波数)𝜔𝜋 に対応
するところ
• 位相交差周波数において,
𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) の実部は負,虚
部は0,位相は −180°
•
Im
0
𝜔𝜋 : 位相交差周波数
𝜔 = 0 Re
8
1次の場合
Im
𝜔→∞
0
Im
𝜔=0
0 𝜔 → ∞ Re
Re
𝜔→0
1
𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 =
𝑠
𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 =𝑠
Im
𝜔→∞
0
𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 =
1
𝜔=0
1
1 + 𝑎𝑠
Re
(𝑎 > 0)
𝜔→∞
𝜔=0
0
1
Re
𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = 1 + 𝑏𝑠 (𝑏 > 0)
9
2次の場合(1)
Im
−1
𝜌
1𝜔=0
𝜔→∞
Re
𝑗
−
2𝜁
𝜔 →大
𝜔 = 𝜔𝑛
𝜔𝑛 2
𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 =
=
(𝑗𝜔)2 +2𝜁𝜔𝑛 𝑗𝜔 + 𝜔𝑛 2
軌跡が実軸と交わるためには,虚部= 2𝜁
𝜔
𝜔𝑛
1
𝜔
1−
𝜔𝑛
2
+ 𝑗2𝜁
𝜔
𝜔𝑛
= 0 .そのとき実部が−1 にな
るためには,𝜔 = 2𝜔𝑛 ≠ 0 .したがって,𝜁 = 0 でなければならない.
𝜁 = 0 のとき安定限界,それ以外では安定
10
2次の場合(2)
𝜁 = 0 の場合
𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 =
1
𝜔
1−
𝜔𝑛
2
Im
1
−1
𝜔 → 𝜔𝑛
𝜔→∞
𝜔 → +0
Re
𝜔 → 𝜔𝑛
𝜔 = 2𝜔𝑛
11
3次のシステム(1)
𝐾
𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 =
(𝐾, 𝑎, 𝑏, 𝑐 > 0)
(𝑠 + 𝑎)(𝑠 + 𝑏)(𝑠 + 𝑐)
𝐾
𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 =
(𝑗𝜔 + 𝑎)(𝑗𝜔 + 𝑏)(𝑗𝜔 + 𝑐)
𝐾
=
𝑎𝑏𝑐 − 𝑎 + 𝑏 + 𝑐 𝜔 2 + 𝑗𝜔(𝑎𝑏 + 𝑏𝑐 + 𝑐𝑎 − 𝜔 2 )
𝐾
lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 =
, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 0°
𝜔→0
𝑎𝑏𝑐 𝜔→0
𝐾
lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = lim
=0
3
𝜔→+∞
𝜔→+∞ (𝑗𝜔)
𝐾
lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = lim ∠
= −270°
𝜔→+∞
𝜔→+∞ (𝑗𝜔)3
lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 0, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 270°
𝜔→−∞
𝜔→−∞
12
3次のシステム(2)
位相交差周波数 𝜔𝜋
Im 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 0
𝑎𝑏 + 𝑏𝑐 + 𝑐𝑎 − 𝜔2 = 0
∴ 𝜔𝜋 = 𝑎𝑏 + 𝑏𝑐 + 𝑐𝑎
𝜔𝜋 におけるゲイン
𝜌 = 𝐺 𝑗𝜔𝜋 𝐻 𝑗𝜔𝜋
𝐾
=
𝑎𝑏𝑐 − 𝑎 + 𝑏 + 𝑐 𝜔𝜋 2
𝐾
=
𝑎𝑏𝑐 − 𝑎 + 𝑏 + 𝑐 𝑎𝑏 + 𝑏𝑐 + 𝑐𝑎
13
3次のシステム(3)
ナイキスト線図
Im
−1
0 𝜔→∞
𝜔=0
Re
𝜌
𝜔𝜋
𝜌 < 1 であれば軌跡は (−1, 𝑗0) の右側を通り,
(−1, 𝑗0) を左に見るので,閉ループシステムは安定.
また 𝜌 は 𝐾 に比例するので,𝐾 が小さい方が安定
14
問
開ループ伝達関数が
10
𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 = 3
𝑠 + 3𝑠 2 + 2𝑠 + 4
となるフィードバック制御系がある.ナイキスト
線図の概形を描き,制御系の安定性を判別
せよ.
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ナイキストの安定判別法(4)
• 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) の極が右半平面にある場合
プラントそのものが不安定な場合
1. 開ループ伝達関数 𝐺 𝑠 𝐻(𝑠) のナイキスト
線図を描く
2. 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 の右半平面にある極(不安定な
極)の数を 𝑃 とする
3. 𝜔 が −∞ から ∞ まで変化するとき,ナイキ
スト線図が (−1, 𝑗0) の周りを反時計方向に
回る回数を 𝑁 とする(時計回りに回った場合
は−1回と数える)
4. 𝑁 = 𝑃 なら閉ループ系は安定
16
1次システムの例(1)
𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 =
𝐾
𝑠−1
+
の場合
𝐾
−
+
+
(𝐾 > 0)
1
𝑠
1
• 極 𝑠 = 1 は 𝑠平面の右半平面にある
𝐾
−𝐾(1 + 𝑗𝜔)
𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 =
=
𝑗𝜔 − 1
1 + 𝜔2
lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔 = 0, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = 90°
𝜔→−∞
lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔
𝜔→−0
lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔
𝜔→+0
lim 𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗𝜔
𝜔→+∞
𝜔→−∞
= 𝐾, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = 180°
𝜔→−0
= 𝐾, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = − 180°
𝜔→+0
= 0, lim ∠𝐺 𝑗𝜔 𝐻 𝑗 = − 90°
𝜔→+∞
17
1次システムの例(2)
Im
−1
𝜔 → −0
𝜔 → +0 𝐾
0
Im
𝜔 → −∞
𝜔 → +∞ Re
𝜔 → −0
−1
𝜔 → +0
Re
0
𝜔
→
+∞
𝐾
𝐾>1
• 不安定な極の数 𝑃 = 1
• (−1, 𝑗0) の周りを左回りに1
回まわる 𝑁 = 1
• 𝑁 = 𝑃 = 1 なので,閉ルー
プは安定
𝜔 → −∞
𝐾<1
• 不安定な極の数 𝑃 = 1
• (−1, 𝑗0) の周りを左回りに0
回まわる 𝑁 = 0
• 𝑁 ≠ 𝑃 なので,閉ループは
不安定
𝐾 が大きい方が安定になる
18
1次システムの例(3)
ブロック線図の等価変換
+
𝐾
−
+
+
1
𝑠
1
𝐾
+
−
𝐾 は負
帰還
+
1
𝑠
1
𝐾
1は
正帰
還
プラントが不安定な場合は, 𝐾 を大きくし
て負帰還の比率を高めた方が安定になる
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問
開ループ伝達関数が
𝐾
𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 =
(𝐾 > 0)
𝑠−2
であるとする.ナイキスト線図を描いて,閉ルー
プ系の安定性を調べよ.
20
安定度(1)
実際の制御系
• 安定であることは第1条件
• その上で,どの程度安定か? 不安定になる
までどの程度の余裕があるか? という定量
的な評価が必要
安定余裕 の定義
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安定度(2)
ゲイン余裕(GM : gain margin)
1
GM[dB] = 20 log = −20 log 𝜌
𝜌
= −20 log[𝐺 𝑗𝜔𝜋 𝐻(𝑗𝜔𝜋 )]
(𝜔𝜋 : 位相交差周波数)
Im
単位円
𝜌
(−1, 𝑗0)
𝜔→∞ 1
𝜔𝜋
𝜙𝑀
0
𝜔𝑐
𝜔→0
Re
位相が−180°となるとき,ゲインが
1 からどれだけ小さいか
位相余裕(PM : phase margin)
PM = 𝜙𝑀 = 180° + ∠𝐺 𝑗𝜔𝑐 𝐻(𝑗𝜔𝑐 )
(𝜔𝑐 : ゲイン交差周波数)
ゲインが 1 となるとき,位相が
− 180° からどれだけ離れているか
22
安定度(3)
𝜙(𝜔) [degree]
gain [dB]
ゲイン余裕,位相余裕は
ボード線図でも確認できる
𝜔𝑐
0
GM
𝜔𝜋
0
−180
PM
演算増幅器の位相補
償の解析に使うはず
• ゲインが0dBとなる周波
数 𝜔𝑐 において,位相
𝜙(𝜔) と−180° との差が
位相余裕
• 位相が−180°となる周波
数 𝜔𝜋 において,ゲインと
0dBとの差がゲイン余裕
23
問
開ループ伝達関数を 𝐺 𝑠 𝐻 𝑠 =
4
(𝑠+1)3
とする.
1. ナイキスト線図を描いて,ゲイン余裕 GM およ
び位相余裕 PM を求めよ.位相余裕は簡単な
式にはならないので,図からおおよその値を読
み取ること.
2. 折れ線近似でボード線図を描いて,GMとPMを
求めよ.
24
練習問題
下図のフィードバック系について,ナイキストの
方法を用いて安定性を判別せよ.
+
−
𝐺(𝑠)
21
(1 + 𝑠)(1 + 2𝑠)
1
1 + 3𝑠
𝐻(𝑠)
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