鉱さい等集積場の技術指針の概要 - 関東東北産業保安監督部東北支部

鉱さい等集積場の技術指針の概要
平成26年9月
経済産業省
関東東北産業保安監督部東北支部
鉱害防止課審査室
1.集積場の概要
(1)集積場とは
 鉱山における「集積場」とは、鉱物の採掘時に発生する「捨石」、選鉱・製錬時に発
生する「鉱さい(スライム)」、坑廃水処理で発生する「中和澱物」等を集積処分する
場所をいう。
(2)集積場の分類
たい積物別
築堤方法別
築堤材料別





石塊かん止堤 (石塊又はズリが主)
砂かん止堤 (砂が主)
土かん止堤 (シルト、粘土等の混合物が主)
コンクリートかん止堤 (コンクリート)
混成かん止堤 (主たる築堤材料が異なる2以上からなる)
1
集積場の概念図
2.鉱さい等集積場に係る技術指針
① かん止施設
<かん止施設>
鉱さい等集積場
〔基礎地盤要件〕 所要支持力を有していること。滑動に対して安全であること。湧水が無いこと。
〔設計要件〕 基礎地盤に対して許容指示力以上の荷重が作用していないこと、自重及び土圧、地震力、
水圧等の外力に対して安定であること。集積物の含有水を排除することに適している構造であること。
浸潤線が下流側法面に現れていないこと。等
〔土圧〕 集積物がコンクリートかん止施設に及ぼす土圧計算式(省略)
かん止施設
〔設計震度(強震帯地域)〕 コンクリートかん止堤以外 0.15、 コンクリートかん止堤 0.12
〔基準水位〕 静水圧、間隙水圧、揚圧、動水圧の算定、浸潤線の推定を行う場合に基準とする水位は、
原則として最高場内水位をとること。
〔水圧の算出〕 静水圧計算式提示(省略)。揚圧力、動水圧、氷圧は(社)日本大ダム会議編「ダム設計基準
(1978年)」を参考に算出
〔築堤しつつ集積を行う場合〕 平常時場内水位との差を規定。法面保護工、所要の土留め施設設置等。
〔築堤材料(石塊又はずり)〕 堅固なこと。風化しにくいこと。成分が水に溶解しにくいこと。
石塊かん止堤
〔設計要件〕 平均法面勾配:上流側1:1.3(37°)を標準、下流側→安定解析による所要の安定度を確保。
堤頂幅B=1.1√H (H:かん止堤有効高さ)。 築堤しつつ集積を行う場合の堤体の水平幅(省略)。
法尻崩壊防止の石積工等の措置。 堤体内浸透水排除のための地盤下基礎地盤への盲溝設置、浸出
水集水排出。 上流側法面への集積物流出防止の遮泥層設置。
〔築堤材料(砂)〕 風化しにくいこと。成分が水に溶解しにくいこと。
砂かん止堤
〔設計要件〕 平均法面勾配:上流側1:1.5(34°)を標準、下流側→安定解析による所要の安定度を確保。
堤頂幅B=1.3√H (H:かん止堤有効高さ)。 築堤しつつ集積を行う場合の堤体の水平幅(省略)。
法尻崩壊防止の石積工等の措置。 堤体内浸透水排除のための地盤下基礎地盤への盲溝設置、浸出
水集水排出。 下流側法面に高さ10m以内毎に小段を設けること。 下流側法面に雨水集水排除の雨
水溝設置。 築堤材料飛散防止措置。
3
<かん止施設>
鉱さい等集積場
〔築堤材料(土)〕 せん断強度が安全上十分であること。多量の有機物が含まれていないこと。
多量の年度が含まれていないこと。成分が水に溶解しにくいこと。
土かん止堤
〔設計要件〕 平均法面勾配:上流側1:1.8(29°)を標準、下流側→安定解析による所要の安定度を確保。
堤頂幅B=1.3√H (H:かん止堤有効高さ)。 法尻崩壊防止の石積工等の措置。 堤体内浸透水排除
のための地盤下基礎地盤への盲溝設置、浸出水集水排出。 下流側法面に高さ10m以内毎に小段を
設けること。 下流側法面に雨水集水排除の雨水溝設置。 かん止堤両岸に雨水溝設置。 築堤材料
飛散防止措置。
〔築堤材料(コンクリート)〕 コンクリートの品質等は土木学会コンクリート標準示方書によること。
コンクリートかん止堤
混成かん止堤
〔設計要件〕 底面の基礎地盤応力が当該基礎の許容指示力以下であること。 底面両端の基礎地盤応力
の計算式(省略)。 かん止堤の滑動に対する安全度は4.00以上であること。 かん止堤の滑動に係
る安定解析の計算式(省略)。
〔材料、設計、施工〕 それぞれの部分を構成する材料を主たる築堤材料とするかん止堤について定めると
ころによること。
〔築堤材料〕 上流側に浸透性の小さいもの。各築堤材料の接触部は急激な粒度変化を避けること。
4
② 排水施設
<排水施設>
鉱さい等集積場
流量に対して、余裕のある構造であること。
沢水排水路
堤体外の地山に設置。
地形上、地山に設置できない場合、基礎地盤を切り込み堅固な構造とし、かつ、その内部を検査できること。
流木、土石等による閉塞防止のため、上流部に土砂止め、流木止め等の施設設置。
流量に対して、余裕のある構造であること。
集積場の周囲になるべく接近して設置。
山腹水路
山腹水をよく捕集することができる構造。
雪崩又は土砂流入のおそれがある箇所に、適切な保護装置設置。
かん止堤付近において越流又は破損のおそれがないように適切な設計・設置。
設置位置は、かん止堤からできるだけ離れており、かつ、人が接近して排水調節作業をしやすい場所。
上澄水排除装置
最高場内水位を堤頂より1m以上低くする排水能力を有すること(コンクリートかん止堤を除く)。
ポンプにより上澄水を排除する場合は、予備設備を設置。
降水量は、100年確率降水量を採用すること。
場内水・場外水排除施
設の排水能力
降水量は、集水区域を代表する降水観測所の長期降水観測資料に基づき算定すること。
降水量から流入水量を求めるに当たって、降水量と流入量との関係が実測から相当の精度をもって求めら
れる場合はそれによる。その他の場合は、計算式(省略)。
集水区域の状況により、土砂流を考慮すること。
場内水排除施設
集積場内の湧水、集積物の含有水を排除するための暗渠又は盲溝の設置。
暗渠、盲溝には、集積物流出防止のためのろ過層による被覆等の措置。
5
<排水施設>
鉱さい等集積場
流量に対して、余裕のある構造であること。
鉛直圧力、水平圧力に対して、堅固な構造であること。
原則として基礎地盤を切り込んで設置。
有害な不等沈下が生じない位置、構造であること。
集積場内の暗渠
基礎地盤を切り込んで設置する場合、側面を埋め戻し、締固めが十分に行われていること。
基礎地盤上に設置する場合は、原則として側面を盛土し、締固めが十分に行われていること。
周辺が洗掘されないための措置。
鉄筋コンクリートによる暗渠を設置する場合であって、浸透水が鉄筋を腐食する成分を含むおそれがある場
合には、無筋状態で外力に耐えることが出来る構造であること。
流量に対して、余裕のある構造であること。
原則として専用の排水路であること。
非常用排水路
原則として堤体外に設けられていること。
非常最高水位が、堤頂より常に0.5m以上低い状態になる排水能力を有すること。
集積場内に流入した水をできるだけ短時間い排除できる構造であること。
放水管式、立孔式又はこれに類する型式とする場合、空気を連行しない構造であること。
6
③ 安定解析
鉱さい等集積場
<安定解析>
・原則として「円形滑り面法」により行うこと。
・安定解析による安定度は、1.20以上であること。
安定度等
・液状化の可能性のある集積場であって液状化を考慮しない安定解析による安定度が1.60未満のものについては、
液状化を考慮した安定解析を行うこと。
・この液状化を考慮した安定解析は、試験値を用いて行うこと。
・ただし、浸潤水位が【9ページ】のフロー図の【要件1】に該当する集積場については、概略値を用いることができる。
・この概略値を用いた安定解析を行う場合の集積場の安定度は、1.40以上であること。ただし、【9ページ】のフロー
図の【要件2】に該当する集積場は、この限りでは無い。
・集積場の安定度とは、滑り面を円弧と仮定して、【9ページ】の安定解析式【(1)式】又は【(2)式】によって算出される安全率
のうち、最小の値をいう。
・安定解析は、浸潤水位の位置が最も高い断面を推定して、その断面において行うこととする。
その断面は通常、中央断面であるが、浸潤面の位置、形状は季節的要因、暗渠の位置等により変動するので、中央
断面以外のかん止堤の軸に鉛直な面における浸潤水位の推定位置が、中央断面における浸潤水位の推定値より高
いときは、基礎地盤の形状等を考慮していずれかの断面を取ることができる。
レ
ベ
ル
1
地
震
動
計算式等
イ.設計時における安定解析
〔安定解析〕 【9ページ】の【(1)式】を用いるものとする。
〔浸潤水位(集積物)〕 最高場内水位と等しいものとする。
〔浸潤水位(かん止堤)〕 集積物浸潤水位、基礎堤、暗渠、遮泥層等の水理的構造を基に推定。
〔間隙水圧〕 最高場内水位・浸潤水位、集積物、基礎堤、暗渠、遮泥層等の水理的構造を基に推定。
ロ.集積中、集積終了後
〔安定解析〕 【9ページ】の【(1)式】を用いるものとする。
〔浸潤水位〕 実測値により求める。実測値が無い場合、設計時の浸潤水位に準じて求める。
〔間隙水圧〕 実測値により求める。間隙水圧分布は場内の水理的構造によって静水圧分布とならず、
非静水圧分布を示す場合があるため、実測値や水理的構造を十分考慮して定めるものとする。
ハ.イ及びロにおいて液状化を考慮した場合の解析
〔安定解析〕 【9ページ】の【(2)式】を用いるものとする。
〔間隙水圧〕 【9ページ】の式【①】~【⑥】により算出する。
二.液状化により集積場の安定に影響を及ぼすと思われる位置
集積場の表面下20m以内、かつ、浸潤面以下の部分にあって、N値が20未満である部分のうち、
液状化することによって安定解析による安全率に影響を及ぼす位置をいう。
※安定解析のフロー図と計算式を【9ページ】に掲載する。
7
<安定解析>
鉱さい等集積場
・ レベル1地震動の安定解析とは別に、次のイの要件の全てを満たす集積場ついては、
大規模地震動における安定性評価を行い、ロ(a)に示す耐震性能を満足するものであること。
〔イ.評価対象集積場〕
(a)基礎堤より高く積まれた内盛り式スライム集積場
(b)浸潤水位が集積面より10m以浅又は飽和状態にある集積場(浸潤水位又は飽和状態の部分が
基礎堤堤頂より下部にあるものを除く。)
(c)集積量が5万m3以上の集積場(5万m3未満であっても直下に重要構築物等があり流出による
被害のおそれがあるものを含む。)
レ
ベ
ル
2
地
震
動
〔ロ.評価手法〕
フィルダムや河川堤防等の土木構築物分野で用いられている、レベル2地震動に対する耐震評価
手法を参照しつつ評価を行う。なお、連動型地震動が想定される地域については長時間地震動に
よる地震動特性についても検討対象とすること。
(a)耐震性能:レベル2地震動に対する集積場の耐震性能は、下流の重要構築物等に重大な被害
を生じさせないこととし、そのような被害に至らない集積場の滑りや変形を許容する範囲とする。
(b)評価方法:土木構築物のレベル2地震動に対する耐震性能照査で採用されている動的解析法
等を用いること。具体例として以下の評価手法を参照。
(土木構築物のレベル2地震動耐震照査例)
○大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)・同解説 (平成17年3月)国土交通省河川局
○河川構造物の耐震性能照査指針・解説 (平成24年2月)国土交通省河川局治水課
○道路橋示方書・同解説 Ⅴ耐震設計編 (平成24年3月)社団法人日本道路協会
○道路土工盛土工指針 (平成22年4月)社団法人日本道路協会
〇NEXCO設計要領第一集 土工編 (平成21年7月)
東日本高速道路㈱・中日本高速道路㈱・西日本高速道路㈱
○鉄道構造物等設計標準・同解説 (耐震設計編平成11年10月)
(土構造物編平成19年1月)鉄道総合研究所
※上記の照査例を参考にした評価の一例を【10ページ】に示す。
8
④ 安定解析のフロー図と計算式(レベル1)
スタート
(1)式
Fs=ΣR(C′ℓ+{(W-U′b)cosα-Kh・Wsinα}tanφ)
Σ(R・Wsinα+Kh・W・h)
(1)式
Fs≧1.6
終了(OK)
Fs<1.2
Fs(安全率)
1.2≦Fs<1.6
要対策
(2)式(液状化考慮)
Fs=ΣR(C′ℓ+{(W-Ub)Wcosα-Kh・Wsinα}tanφ)
Σ(R・Wsinα+Kh・W・h)
No
終了(OK)
液状化可能性
Yes
浸潤水位が次のいずれにも該当
1)液状化により集積場の安定に影響を及ぼす位置にないこと
又は集積場表面から10m以深にあること
2)堤頂幅中心から降ろした垂線との交点がかん止堤の有効
高さの1/2以深にあること
Yes
No
液状化考慮安定解析
(2)式(略算式)
Fs≧1.4
終了(OK)
Fs(安全率)
Fs<1.4
Yes
② Uℓ=0 ( FL>1.25)、Uℓ=0.3σv'( 1.0≦FL≦1.25)、Uℓ=σv' ( FL<1.0)
③ FL=R/L
④ R=1.2Rℓ
⑤ L=4/3Kh(σv/σv') (1-0.025Z)
黒鉱鉱床より生ずる捨石又は鉱さいよりなる築
堤材料又はたい積物の場合
R = 0.0 8 8
N
+ 0.2 0
0.1σv'+0.7
上記以外の捨石又は鉱さいよりなる築堤材料又
はたい積物の場合
R = 0.0 8 8
N
0.5
+ 0.0 8 5lo g1 0
0.1σv'+0.7
D5 0
沈でん物よりなるたい積物の場合
R = 0.0 8 8
N
+ 0.1 0
0.1σv'+0.7
No
液状化考慮安定解析
(2)式(試験値使用)
Fs≧1.2
終了(OK)
① U=U'+Uℓ
⑥ Rℓの略算式
次のいずれかに該当
1)下流側近傍に人家、重要構築物等が存在せず、かつ重要
河川、湖沼等が存在しないこと
2)たい積量が10万m3未満で、かつ沢の傾斜が緩やかである
こと
終了(OK)
Fs:安全率
R :滑り面の半径(m)
W :各スライスの単位長さ質量(kN/m)
U′:各スライスのすべり面上に働く静的な間隙水圧(kN/㎡)
U :液状化による過剰間隙水圧を考慮した各スライスのすべり面上に働くな間隙水圧(kN/㎡)
Kh:設計震度
b :スライスの幅(m)
α :滑り面の中点と滑り面を円弧とする円の中心とを結ぶ直線が鉛直線となす角度(°)
h :滑り面を円弧とする面の中心と各スライスの重心との鉛直距離(m)
ℓ
:滑り面の長さ(m)
φ :有効応力により求めた内部摩擦角(°)
C′:有効応力により求めた粘着力(kN/㎡)
Fs<1.2
Fs(安全率)
要対策
Uℓ
:各スライスのすべり面上に働く液状化による過剰間げき水圧(t/m3)
:液状化に対する抵抗率
FL
σv :上載圧(t/m2)
σv':有効上載圧(t/m2)
R
:現位置における繰返し応力比
Rℓ
:繰返し応力比(試験値は繰返し三軸試験より得られる数値、略算式は上記式を使用)
L
:地震時作用応力比
Z
:集積場面からの深さ
N
:標準貫入試験によるN値
D50
:土粒子の平均粒径(mm)
9
⑤ 集積場の調査・解析のフロー図例(レベル2)
開
始
既存資料の整理
・地形測量図、・地山コンター
・鉱さいたい積場現状構造図
・既往地盤調査結果
排水施設や法面の状況等の現
地踏査に基づいた地盤調査の詳
細計画立案と協議
【地盤調査】
原位置試験
・ボーリング
・標準貫入試験
・PS検層
・孔内水位
解析モデル作成(代表1断面)
【レベル1相当地震動安定性検討】
「鉱業上使用する工作物等の
技術基準を定める省令の技術
指針(第25章集積場)(H16年
11月)」による検討
(液状化の判定、安定検討)
室内試験
・物理試験
(土粒子の密度、含水比、
粒度、液性限界、塑性限界)
・三軸圧縮(CUB)
・液状化試験
・動的変形試験
解析用地盤物性値の設定
L2入力地震動の設定
・動的強度試験
二次元静的・動的FEM解析
ダム基準による波形作成
距離減衰、方位補正
(海洋型、内陸型)
液状化安全率の分布図作成
FEM解析結果を用いた安定解析
Fs>1.0
【レベル2相当地震動安定性検討】
Yes
安定性評価
終
No
地震時変形滑動解析
1.入力地震動設定
入力地震動の設定に当たっては、あらかじめ集積場周辺に
おいて過去発生した地震に関する情報や周辺に分布する活
断層やプレート境界等の情報について、文献資料等により
十分な調査を行い、その結果に基づき最も大きな影響を及
ぼす可能性のある内陸型及び海洋型の双方について検討す
る。
2.耐震性能評価方法
(1)二次元有限要素法(FEM)による地盤内応力時刻歴の算定
二次元FEMによる常時並びに地震時の応力~変形解析結果
を重ね合わせることで応答地盤内応力の時刻歴を求める。
(2)液状化判定
上記地震時の地盤内応力を用いて地盤内の液状化安全率
(FL)を算定した結果を用いて液状化判定を行う。
(3)すべり安全率の時刻歴の算定
液状化すると判定された地盤内範囲について低減させた
地盤定数と応答地盤内応力の時刻歴を用いてすべり最小
安全率の時刻歴を求め、安全率が地震動中に常に1.0以上
であることを確認する。
(4)液状化を考慮した地震時変形・滑動解析
地震動中に一時的に安全率1.0を確保できないが、平均的
には1.0を確保できている場合は、滑動量算定による下流
への影響を評価するものとする。耐震性能を満足すると
判断する滑動量の上限は、集積場の規模と下流への影響
度合いを勘案して個別に判断する。
なお、より実現象に近づけるため、地震時の地盤内過剰
間隙水圧の挙動を考慮することができるものとする。
ただし、この場合には、地盤定数の低減は行わないもの
とする。
了
10
〔参考1〕レベル2地震動に対する安定性評価について
<集積場管理対策研究会での検討>
1)概要
東日本大震災による集積場事故を受け、事故原因の検証と集積場技術指針の見直しの検討をおこなうた
め、有識者からなる集積場管理対策研究会を立ち上げ、平成23年9月~平成24年5月の間に5回の検討
会を開催し検討を行った。
2)検討結果
(1)流出集積場
 東北地方太平洋沖地震により、3つの集積場において集積物が流出し、下流の民家、河川、田畑等へ
の流入被害が発生。
 流出した集積場は、いずれも以下の条件を満たす集積場で、流出は基礎堤より高く積んだ部分が基礎
堤を越流することにより発生し、基礎堤部分の崩壊はなし。
・スライム集積物を内盛り式に高く積み上げた集積場
・浸潤水位は高い又は飽和状態
(2)事故原因
東北地方太平洋沖地震による、2分間以上におよぶ長時間で強い地震動に伴い、集積物のせん断強度
が低下し流出したと考えられる。特にスライム集積物の性状が砂質の集積場では液状化が発生した。
<研究会メンバー>
座長 安田
岡村
横田
国松
福井
清田
進
未対
聖哉
直
勝則
隆
東京電機大学 理工学部 教授
愛媛大学大学院 理工学研究科 教授
(株)高速道路総合技術研究所 土工研究室長
(独)産業技術総合研究所 主任研究員
東京大学 工学系システム創成学専攻 准教授
東京大学生産技術研究所 基礎系部門 准教授
11
(3)技術指針見直しの考え方
 見直し対象は前記(1)の流出した共通の条件を有する集積場(これら以外の集積場での目立った被害は
無し)
 平成7年の兵庫県南部地震以降、レベル2地震動(現在から将来に渡って考えられる最大級の強さの地
震動)に対する耐震基準の考え方が河川堤防等他の多くの土木分野で導入されており、集積場についても
同手法による安定性評価が必要
 評価手法としては各種のものがあり、以下の照査例が適用可能
(土木構築物のレベル2地震動耐震照査例)
○大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)・同解説 (H17年3月)国土交通省河川局
○河川構造物の耐震性能照査指針・解説 (H24年2月)国土交通省河川局治水課
○道路橋示方書・同解説 Ⅴ耐震設計編 (H24年3月)社団法人日本道路協会
○道路土工盛土工指針
(H22年4月)社団法人日本道路協会
〇NEXCO設計要領第一集 土工編 (H21年7月)東日本高速道路㈱・中日本高速道路㈱・西日本高速道路㈱
○鉄道構造物等設計標準・同解説 (耐震設計編H11年10月)(土構造物編H19年1月)鉄道総合研究所
技術指針見直し前後の比較
12
他分野におけるレベル2地震動耐震基準の考え方
フィルダム
河川堤防
鉄道盛土
道路土工
盛土
現行基準
耐震性能
想定地震動
耐震性能照査
大規模地震に対するダム耐震性
能照査指針(案)・同解説
(H17年3月)
国土交通省河川局
地震による損傷が生じ
たとしても、ダムの貯水
機能が維持されるととも
に、修復可能な損傷に
とどまる範囲内
想定地震により、ダム地
点で発生が推定される地
震の加速度時刻歴波形
を用いることを基本(下限
加速度応答スペクトル有
り)
STEP1(堤体、基礎地盤の強度低下
の判定)
~等価線形化法等による動的解析
(FLUSH等)
STEP2(STEP1で×の場合、越流や浸
透破壊に対する安全性評価)
~塑性変形解析
(Newmark法、渡辺・馬場の方法)
河川構造物の耐震性能照査指
針・解説
(H24年2月)
国土交通省河川局治水課
堤防に変形、沈下等が
生じた場合においても、
河川の流水の河川外へ
の越流を防止する機能
を保持できる範囲内
加速度応答スペクトルに
基づき設定(標準化速度
応答スペクトルに地域別
補正、地盤種別等を考慮
)
設計震度(kh)は0.4相当
静的照査法
(有限要素法を用いた自重変形解析法(
ALID)又は流体力学に基づく永久変形
解析法)による堤防の変形解析・基礎地
盤と堤体の液状化判定
鉄道構造物等設計標準・同解説
(耐震設計編H11年10月)
(土構造物編H19年1月)
鉄道総合研究所
地震時沈下量が許容沈
下量以内(計算精度、
復旧難易度、社会的重
要性等を勘案し適宜定
める)
加速度応答スペクトルを
使用
動的解析法
(Newmark法で変位量を算出)
道路土工盛土工指針
(H22年4月)
社団法人日本道路協会
塑性変形をある程度許
容し、地震後に短期間
で車両の通行が可能で
あること。
等価加速度波形
(残留変位量はプレート
型より内陸型の方が大き
いため、内陸型地震動を
設計地震動とする)
盛土高30m未満~残留変形解析法(円
弧すべり面仮定Newmark法)
盛土高30m以上~残留変形解析法(地
震応答解析法を用いたNewmark法)によ
り滑動変位量を算出
13
〔参考2〕東日本大震災による集積場被害
大谷鉱山(萱刈たい積場)被災状況
14
15
16