2014.9 No.70 - 住宅生産振興財団

家とまちなみ
Vol.33 No.2 ISSN 0287-8968
70
2014.9 No.
70
2014.9特集〝まちなみ計画〟を展望する 第 回 まちコン実施報告 まちネット 第 回総会
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特 集
“まちなみ計画”を展望する
http://www.machinami.or.jp/
座談会 まちなみコーディネート事業の今後 横田 滋・石毛治明・伊藤昭憲
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──事業運営委員の立場から
最近のプロジェクトから 一般財団法人 住宅生産振興財団
●阿見オルティエ本郷クロスアヴェニュー●マリンタウン ラ・コスタ●リファージュ高坂●ピオニシティ高坂●グリーンヒルズ
いさはや西部台●フルールコモン明日花●スマートプロジェクト240三田ゆりのき台●クイーンズフォレスト流山おおたかの森
●オーチャードパークみらい平陽光台●コモンパーク上毛彩葉●掛川紅葉台●グラッドヒルズ柏●ウェルネスシティつくば桜
●ガーデンシティ舞多聞●城野ゼロカーボン先進街区1工区●「荒井西」プロジェクト
座談会 財団活動をステップとして 小林秀和・小松﨑英明・古川淳也・堂城直人・舘 智徳
──若手設計担当者の立場から
インタビュー 少子高齢社会を乗り切るための住環境整備 流山市長 井崎義治 氏
まちコン
まちネット
平成25 年度 国土交通省・まちづくり月間協賛
第9回 住まいのまちなみコンクール実施報告
「すまいのまちなみネットワーク」第6回総会
住民と大学研究者がコラボしたまちづくり活動
心に残るまちなみ
神奈川県横浜市金沢区
金沢シーサイドタウン
時と共に彩りを深める団地
藤本による板状住棟と家形住棟
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志岐祐一(日東設計事務所)
金沢シーサイドタウンは、横浜の埋立地に造られた団地である。
生まれはオイルショック後の1970年代半ば。戦後多くの団地をつくってき
①
た日本住宅公団も大量の空屋をかかえるなど、集合住宅計画は転換期を迎え
ていた。横浜市は、市街地に混在していた工場の移転と慢性的な住宅不足の
まちなみ遺産 シリーズ 21
解消のため、みなとみらいや港北ニュータウンと並ぶ 6 大プロジェクトの一
白山市白峰(石川県白山市白峰)
つとして市内最後の自然の海岸線を埋め立てて職住近接の街を計画。その新
写真・文:江田修司
しい住宅団地のマスタープランを槇文彦に依頼した。
区割は複数の事業者による供給が見込まれたためグリッドプランを採用。
京都の町屋を参考に、街路に大通りから路地までのヒエラルキーを持たせた
配置計画が練られた。特に 1 丁目のセンター地区付近は、街区の外周部には
陸屋根の中層住棟、内側は勾配屋根の 2 階建てとして、通り沿いと路地の違
いを際立たせた。その通り沿いの住棟は各社が実施設計を担当したので手摺
りの形状など細部が微妙に違う。またあまりにも整然とした配置に、着工後
に現場を見た公団の幹部が変更を指示し、一部の住棟を雁行させた逸話を持
つ。そんな適度な混ざり具合が今見ると心地良い。
公団の単独事業となった 2 丁目は、街路を途中で45度曲げて変化をつけ、
日本海沿いの白山市や小松市から内陸に約50km、日本三霊山の
上:沿道性を意識した対比を見せる1丁目の
住宅
表紙:晩秋の並木道、2丁目の歩行者専用道路
に宮脇の低層住宅が顔を出す
裏表紙(上)
:大高正人によるセンター地区か
ら2丁目を望む。水面は漁港の面影を残す舟溜
まり
裏表紙(下)
:グリッドプランの1丁目の街路
に立つとロングビスタがひらける。東西方向
は自然の緑、南北方向は住棟がアイストップ
となる
中央を南北に貫く歩行者専用道路沿いの低中層集合住宅は神谷宏治、藤本昌
ひとつ白山の西の麓、手取川ダムで生まれた湖の上流に位置する。
周囲を山々に囲まれた豪雪地帯で積雪は 4mに及ぶという。稲
作はほとんど行われないが、そのかわりかつては全国でも有数の
養蚕業を誇り、江戸期を通じて天領とされた。明治にかけても製
あって賑わい、町場のような景観が形成された。
集落の骨格となる道沿いを中心に、かつて2階建て、3階建ての
比較的大型の建物が建ち並んでいたと言うが、現在もその面影は
色濃く残っており、また信仰深い土地柄、社寺も多く、平地から
也、内井昭蔵、宮脇檀の 4 人の建築家に託された。設計の経緯をたどると、
山間の道を辿って集落に入ると他にはない意外な印象を受ける集
意見はかみ合わず時間切れになったようであるが、むしろ良かったのかもし
落である。2012 年、重伝建地区に選定された。
れない。白色の外壁に勾配屋根という共通点はあるものの、2 丁目のマスタ
ープランを描いた神谷が周辺の中高層になじむ板状住棟なのに対し、藤本は
伝統的民家のスタイルは、切妻屋根で 2階建て以上の建物では、
板状と共に大きな家型を提案。内井はブロックの組み合わせによる迷宮のよ
1回は板壁、2階は土壁で、積雪時の出入口となる大背戸や縦長の
うなアクセス、宮脇は戸建っぽく見えるなど、それぞれの個性が現れたまち
窓が特徴である。現在は、それらをアレンジして修景された建物
なみが広がっている。
この春、1 丁目の幾つかの分譲街区では外壁の修繕が行われた。隣と相談
したかは知らないが、街区ごとに微妙に違いはあれど落ち着いたトーンでま
とまって見える。計画者から設計者、居住者と手が加わるごとに彩りを深め
ていく。行く末が楽しみなまちなみである。
②
糸業が盛んで、山間の小さな集落でありながら、商店や飲食店も
志岐祐一(しき・ゆういち)
1966年生まれ。1990年東京都立大学卒業。関
東学院大学、前橋工科大学非常勤講師。主な業
務に同潤会代官山アパート等の住戸を移築再現
したUR集合住宅歴史館。主な著書に『世界一
美しい団地図鑑』
も多いが、ゆったりとした時間の流れを感じさせる。
集落のほぼ中央の「白峰温泉総湯」は最近リニューアルされた
大型の温泉施設、いまはその前に特産品の販売所もできている。
日本の集落の中心にある温泉前広場はどこでも、人々が行き交わ
う落ち着けるタウン・スポットである。
③
①白峰に唯一残っている小羽葺き屋根の行観寺の庫裏
②大型の民家が建ち並び町場のような景観。右は修景された白峰
郵便局の建物
③メインと通り沿いの町並み。明治期に建てられた古民家を利用
したカフェも並ぶ
70
2014.9 No.
http://www.machinami.or.jp/
心に残るまちなみ39 神奈川県横浜市金沢区
金沢シーサイドタウン
時と共に彩りを深める団地
特 集
志岐祐一(日東設計事務所)
“まちなみ計画”を展望する
座談会
まちなみコーディネート事業の今後
──事業運営委員の立場から
横田 滋(ミサワホーム株式会社)
石毛治明(トヨタホーム株式会社)
伊藤昭憲(積水ハウス株式会社)
最近のプロジェクトから
2
10
●阿見オルティエ本郷クロスアヴェニュー●マリンタウン ラ・コスタ●リファージュ高坂●ピオニシティ高坂
●グリーンヒルズいさはや西部台●フルールコモン明日花●スマートプロジェクト240三田ゆりのき台
●クィーンズフォレスト流山おおたかの森●オーチャードパークみらい平陽光台●コモンパーク上毛彩葉
●掛川紅葉台●グラッドヒルズ柏●ウェルネスシティつくば桜●ガーデンシティ舞多聞●城野ゼロカーボン先
進街区1工区●「荒井西」プロジェクト
座談会
財団活動をステップとして
──若手設計担当者の立場から
小林秀和(ミサワホーム株式会社)
小松㟢英明(トヨタホーム株式会社)
古川淳也(パナホーム株式会社)
堂城直人(積水ハウス株式会社)
舘 智徳(大和ハウス工業株式会社)
インタビュー 「クイーンズフォレスト流山おおたかの森」に寄せて
少子高齢社会を乗り切るための住環境整備
ブランド化した良質なまちづくりをめざして
エッセイ64
福岡県の多様な町並み
エッセイ65
東日本大震災からのまちなみ復興
38
井崎義治氏(千葉県流山市 市長)
大森洋子
(久留米工業大学教授)
44
阿部俊彦(早稲田大学都市・地域研究所 客員主任研究員、 46
住まい・まちづくりデザインワークス代表)
平成 25 年度 国土交通省・まちづくり月間協賛
まちコン
30
第9回 住まいのまちなみコンクール実施報告
48
〈国土交通大臣賞〉木綿街道振興会 〈住まいのまちなみ賞〉旭ヶ丘自治会、いわき市中央台鹿島三区自治会、
七日町通りまちなみ協議会、フィオーレ喜連川管理組合
第6回総会
「すまいのまちなみネットワーク」
まちネット
60
住民と大学研究者がコラボしたまちづくり活動
住宅地研究
住宅地開発とランドスケープ 新連載
坂井 文(北海道大学工学部建築都市コース准教授)
70
第1回 ロンドンの都市型タウンハウス:スクエアーという共用庭園
まちなみ研究
郊外住宅地の成熟過程 柴田 建(九州大学大学院助教)
77
第9回(最終回)
ストック時代の住宅地デザインへ
住宅総合展示事業実績(平成 25 年 6月〜平成 26 年 7月)
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バックナンバー 財団日誌
99
まちなみ遺産 シリーズ 21 白峰(石川県白山市白峰)