塗装鋼材構造物欠陥の 非接触・非破壊検査方法 長崎大学 長崎大学 大学院工学研究科 技術職員 出水 享 大学院工学研究科 教授 松田 浩 1 開発背景 ◆鋼構造物の劣化 経年劣化による耐荷力や耐久性の低下が構造物の安 全性を損なうことの無い維持管理を適切に行う必要 ◆亀裂の発生 外力が繰返し作用し溶接部などの応力が集中しやすい 箇所から亀裂が発生 →鋼材の破断などの安全性の低下 亀裂の早期発見の必要性 2 亀裂検査の従来技術とその問題点 ◆磁粉探傷試験(MT)、浸透探傷試験(PT) →塗装除去・検査後さらに塗装の必要性 →作業性・効率性の問題 ◆超音波探傷試験(UT)、渦流探傷試験(ET) →欠陥の種類によっては検知できない →欠陥判定に熟練を要する →検出できる範囲が局所的 →装置が高価(数百万円) 3 新技術の特徴 誘導加熱法により塗装内部の鋼材のみを直接加熱して、 き裂を強制的に開口/閉口させ、その歪み変化を塗装膜 上からの画像処理(デジタル画像相関法)によって検出 被測定物(亀裂とひずみ発生) 検出対象部位 被測定物50 加熱 加熱手段(誘導加熱) 表示手段 撮影手段 (カメラ) 画像解析手段 4 新技術と従来技術との比較 • • • • • • 検査のための塗装除去(及び再塗装)が不要 検査時間が短い 計測装置、計測コストが安い 検査範囲が広い 欠陥の種類の判断が容易(熟練を要さない) 電子データで記録可能(データベース構築) 5 亀裂検出実験 実験概要 6 亀裂検出実験 実験概要 撮影および解析装置 加熱装置 シリコンラバー ヒーター 誘導加熱装置 (IHクッキングヒーター) 7 亀裂検出実験 亀裂の裏側を加熱 実験概要 計測状況 8 亀裂検出実験 画像解析原理 原 理 測定対象物表面模様のランダム性を基にして,変形前後の計 測対象物をデジタルカメラで撮影したデジタル画像を用い,解析 することで,計測範囲全体にわたって表面変位量と方向を計測 する手法 解析手順 サブセット (N×N) 撮影範囲 ピクセル 変位前位置 CCDカメラ スキャナ等 変位後位置 変位前位置 変位後位置 サブセット (N×N) 階調値 変位前位置 変位後位置 9 亀裂検出実験 画像解析ひずみ算出 ひずみは任意の2点間距離の変化率から求める。 B‘ A‘ Y ℓ1 ℓ0 A B X ε= ℓ1 ℓ0 ℓ0 A B:ひずみ発生前の任意の点 A‘ B’:ひずみ発生後の任意の点 10 亀裂検出実験 ラバーヒーター 25分 約25℃→約45℃ ラバーヒーター 実験結果 50℃ 50℃ 温度分布(パターン1) 温度分布(パターン1) 20℃ 20℃ IHヒーター 約25℃→約120℃ 5分 IHヒーター 温度分布(パターン2) 温度分布(パターン2) 6900μ ひずみ分布(パターン1) ひずみ分布(パターン1) 120℃ 120℃ 20℃ 20℃ 8500μ 6900μ 8500μ -6700μ -12300μ -6700μ ひずみ分布(パターン2) -12300μ 裏側加熱の表皮効果により逆そりが生じ、 ひずみ分布(パターン2) 亀裂が閉口(ひずみがマイナス=収縮) 11 No.1:加熱時間15秒 No.2:加熱時間30秒 No.3:加熱時間60秒 60秒程度の加熱 で検知可能 温度上昇量も 35℃程度 表面加熱の 表皮効果に より上そり が生じ、亀 裂が開口( ひずみがプ ラス=伸長 ) 温度上昇が少ない左側も亀 裂検知可能(そりの効果) 12 塗装の浮き検出実験 実験概要 13 亀裂検出実験 実験結果 浮きを模擬した全箇所全おいて引張ひずみの確認 →浮きに含まれる空気層が加熱によって膨張 14 14 実橋での亀裂検出実験 実験概要 鋼トラス橋(橋長237m) →横桁部分に発生した亀裂 計測条件 • 加熱箇所:き裂面 • 計測箇所:き裂面 • 撮影距離:650mm • 撮影次元数:2次元 • 画角の異なるカメラ でそれぞれ計測 15 実橋での亀裂検出実験 50mmレンズ 実験結果 17mmレンズ 従来法(磁粉探 傷試験)の結果 16 想定される用途 ●被覆された鋼構造物の亀裂検出 鋼橋、鉄塔(タワー ex.東京スカイツリー) 鉄骨造建築物、貯蔵タンク、水門、道路標識・信号機等 の支柱、柵・手すり、その他付属施設 ●運輸機器の亀裂検出・点検 船舶、トラック、鉄道、クレーンなど ●プラント、各種生産設備の亀裂検出・点検 生産設備の配管、フレーム、パイプラインなど ●鋼材表面の塗膜のはがれ、浮き、浮き錆 ●工場のラインでの製品の鉄部の欠陥検査 幅広い分野に適用可能!! 17 実用化に向けた課題 • 実現場での計測実績を重ね実用性の高い装置を確 立 • 多種多様の部位・部材に対応可能なフレキシブルな 加熱装置の製作 • 現場で効率的に検査可能な撮影装置と加熱装置を 一体化させた検出装置の開発 • 高所、狭隘部など人間が容易に近づくことができない 箇所で検査できるロボットの開発 • 工場のラインでの鉄製品の欠陥検査システムの開発 • 検査法のマニュアル作成 18 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :亀裂検出方法及び亀裂検出 システム • 出願番号 :特願2013-217722 • 出願人 :長崎大学、佐賀大学 • 発明者 :松田浩、出水享、伊藤幸広、志岐和久 19 お問い合わせ先 長崎大学 知的財産部門 坂田 智昭 TEL 095-819-2187 FAX 095-819-2189 e-mail tomoaki-sakata-nu@nagasaki-u.ac.jp 20
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