第19回肝臓病教室 肝硬変について 慢性肝疾患のない場合の経過 肝 臓 の バ イ タ リ テ ィ ( 予 備 力 ) 慢性肝疾患のない肝臓では、一過性に肝障害が 生じてもほぼ元の予備力に回復する。 急に肝障害が生じたときには、全身倦怠感や 黄疸などの症状が一時的に生じる場合もある。 一生かかってもだいぶん余裕がありそう 肝不全のライン 時間 慢性肝疾患の経過 肝 臓 の バ イ タ リ テ ィ ( 予 備 力 ) 慢性肝疾患では、原因が取り除かれない限り 肝臓の予備力は徐々に悪化し、最終的には 肝硬変、肝不全になる。 悪くなる速さは一定ではない 慢性肝炎 肝硬変 肝不全のライン 時間 慢性肝疾患では線維化が蓄積 F1:軽度の線維化 F2:中等度の線維化 F3:高度の線維化 F4:肝硬変 F3 までは慢性肝炎、F4 から肝硬変 肝硬変の原因 ウイルス性 アルコール性 その他 日本では、B 型肝炎ウイルスと C 型肝炎ウイルスによる 肝硬変が圧倒的です。その他には、脂肪肝(NASH)や 自己免疫性、代謝性、薬剤性などがあります。原因の 分からないものもあります。 肝硬変の症状 大きくわけて 1 肝機能低下に伴う症状 2 「門脈圧亢進」による症状 肝機能低下に伴う症状 1. 合成能力の低下 低アルブミン血症 浮腫、腹水、胸水 貧血 凝固因子低下 出血傾向 2. 分解能力の低下 ビリルビン ホルモン アンモニア 黄疸 くも状血管腫、手掌紅斑、 女性化乳房、毛細血管拡張 肝性脳症、肝性昏睡 肝性脳症の症状 症状が進むと、トイレの場所を間違えたり、 眠りがちになったり、暴力をふるったりし、 最終的には昏睡におちいる 門脈圧亢進による症状 食道静脈瘤、 胃静脈瘤 脾腫 血小板減少、白血球減少 側副血行路 高アンモニア血症 腹水 痔 食道静脈瘤 食道静脈瘤 正常の食道像 注意:出血するまで症状はありません 成人男性の門脈血流は 1分間に1000~1200ml 腹水の成因 肝硬変 合成能力の 低下 分解能力の 低下 ホルモンバランスの 乱れ 低アルブミン血症 Na・水分の 貯留 腹水 門脈圧亢進 肝硬変の診断:血液検査で 1. 肝予備能を表す検査 アルブミン:肝臓で合成され、半減期長い 血液凝固因子:肝臓で合成され、半減期短い 血清ビリルビン値 血清コリンエステラーゼ値 血清コレステロール値 2. 門脈亢進症の指標 血小板数 など F1:17万/mm3 F2:15万/mm3 など F3:13万/mm3 3. 肝線維化マーカー Ⅳ型コラーゲン ヒアルロン酸 F4:10万/mm3 など AST、ALT と肝硬変は・・・ 肝臓は正常に近い 肝 臓 の バ イ タ リ テ ィ ( 予 備 力 ) 肝臓はもはや肝硬変 AST、ALT 低値 AST、ALT 高値 AST、ALT 低値 肝臓は正常に近い AST、ALT 高値 ・・・関連しません 時間 慢性肝炎と肝硬変の区別 慢性肝炎 肝硬変 肝硬変は本来は顕微鏡でみて診断される疾患なので、 「ここから肝硬変です」と断言するのは困難です。 肝臓に線維化がかなり蓄積しているが、肝機能は比較的保たれ 症状はない「代償期」と、肝臓の機能不全によるさまざまな 症状がみられる「非代償期」にわかれます。 慢性肝炎 肝硬変 代償期 肝硬変 非代償期 肝硬変の診断:血液検査で 肝硬変予測式 Z = 0.124×γ-グロブリン(%)+ 0.001×血清ヒアルロン酸値(μg/L) - 0.075×血小板数(万/mm3)- 0.413×性別(男= 1、女= 2)- 2.005 Z ≧ 0:肝硬変、Z < 0:慢性肝炎 血清ヒアルロン酸 130ng/mL 以上かつ 血清Ⅳ型コラーゲン 250ng/mL以上 正診率 91.2% 正診率 96% PT 80%未満かつ血清Ⅳ型コラーゲン 190ng/mL以上 正診率 80% 肝硬変の診断:画像検査で 腹部エコー 腹部CT 肝硬変の診断:画像検査で フィブロスキャン エラストグラフィ 肝硬変の予後を決めるのは 肝硬変の3大死亡原因 ★ 肝細胞癌 ★ 肝不全 ★ 消化管出血 肝硬変の原因により経過は異なるが、 肝硬変の予後を決めるのは 肝細胞癌の有無 と 予備力 肝硬変の死因の変遷 消化管 出血 33% 肝がん 34% 消化管 出血 10% 肝不全 20% 肝がん 70% 肝不全 33% 1970年代 最近 肝がんのコントロールがさらに重要になってきている 肝硬変の生存率 初診時の「代償性」が維持できた場合の肝硬変の生存率 1.00 生 存 率 代償性維持 0.75 代償性→非代償性 0.50 0.25 非代償性 0.00 0 患者数 12 24 36 48 60 72 84 96 108 120 806 600 450 335 275 248 843 288 133 55 26 13 月 (D‘Amico et. Al, J Hepatol, 2006) 肝硬変でも治療は重要 肝 臓 の バ イ タ リ テ ィ ( 予 備 力 ) 肝硬変になって一度症状が出てしまっても、 原因を治療し増悪因子を除去できれば、 ある程度の予備力の回復ができるかもしれない。 代償期肝硬変 非代償期肝硬変 時間 肝硬変の治療 ◆ 線維化の進展を食い止める ★ 原因疾患に対する治療 ★ 炎症を抑える:強ミノ、ウルソ など ★ 増悪因子を避ける:肥満改善、鉄分を摂りすぎない、 禁酒 など ◆ 合併症の治療 ★ 肝性脳症、腹水、静脈瘤の治療 ◆ 肝機能の温存 ★ アミノ酸製剤、late evening snack など ◆ 発癌対策 ◆ 肝移植
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