第3日目H会場 3H−13pラット肝癌細胞の増殖・浸潤に対する魚油含有輸液 の作用解析 3H−14p脂肪肝における血清サイトケラチンー18の上昇 ○林真愉美U、沖田美佐子1}、塚本幾代1)、冨岡加代子2)、川上貴代2)、村上 ○萩彰文ρ、中山満雄1)、三浦豊2}、矢ヶ崎一三2) 泰子2)、平松信3〕、糸島達也3) 1)㈱大塚製薬工場・研究開発センター、2)東京農工大学大学院・共生科学技術 1)奈良女子大院・人間文化、2)岡山県立大・保健福祉、3)岡山済生会総合病院 研究院・生命農学部門 用されている。本研究では魚油を含有する輸液の癌細胞増殖・浸潤への 【目的】脂肪肝は健診において高頻度に認められる。脂肪肝の中には過栄 養を基盤とした非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が存在し、肝線維化 から肝硬変、さらに肝癌への進展が示唆されており、脂肪肝の早期発見と 作用を、サフラワー油を含有する輸液と比較することで検討することを目的と した。【方法】モデル癌細胞としてラット肝癌細胞AHlO9A細胞を使用した。 ともに適切な治療が望まれる。 サイトケラチンー18(CK−18)は、カスパーゼによって切断され、血清CK−18 肝癌細胞の増殖能はWST−8法により、浸潤能はラット腸間膜由来中皮細 断片はアポトーシスの指標とされ、NASHにおいても上昇することが報告さ れている。そこで、本研究では健診受診者の血清CK−18断片の測定を行 い、脂肪肝の有無、肝機能検査値、身体計測値等との関連性について検 【目的】術後の栄養補給に使用される輸液として、魚油を含有したものが使 胞との共培養系により測定した。魚油ベースの輸液(FO)およびサフラワー 油ベースの輸液(SO)を1%添加した培地でAH109Aを48時間前培養す ることで細胞膜脂質へ脂肪酸をあらかじめ取り込ませた後に増殖能・浸潤 能を測定した。細胞膜への脂肪酸の取り込みはガスクロマトグラフィーによ り測定した。またそれぞれの輸液を3日間投与したラットから血清を調製し、 調製した血清の増殖能・浸潤能への影響を測定した。FOによる浸潤抑 制機構を解析するため、浸潤能測定時にPGE2およびPGE3を添加し、浸 潤能の変化を解析した。【結果と考察】あらかじめFO添加培地で48時問 前培養することで、細胞膜中のn−3/n−6比は、SO添加培地で前培養した 場合および通常の維持培地で培養した場合に比べて大きく低下し、細胞膜 にn−3系脂肪酸が取り込まれていることが確認された。その際の肝癌細胞 の増殖能には大きな変化は見られなかったが、浸潤能が有意に低下した。 前培養時のFOの添加量を変化させて同様の解析を行ったところ、FOの 用量依存的に浸潤能が抑制されることが明らかとなった。さらにSOおよび 討した。 【方法】対象は、平成19年6、7月に岡山済生会総合病院健診センターに て健診受診した男性77名である。栄養素等摂取状況調査、身体計測、 腹部超音波検査、および採血を実施した。血清中のCK−18断片の濃度を モノクローナル抗体M30を用いたELISA法によって測定するとともに、肝 機能検査(ALT、AST、アーGTP)とTNF一α濃度の定量を行った。 【結果および考察】対象者77名のうち42名(55%)が腹部超音波検査に て脂肪肝と診断された。脂肪肝例では非脂肪肝例に比べ腹囲、BMI、体 脂肪率が有意の高値を示し、腹囲85cm以上者は88%を占めた。肝機 能検査値はγ一GTPを除いて脂肪肝例で有意の高値を示した(ALT:脂 肪肝例35±19UIL、非脂肪肝例20±8UIL(p<0つ01)、AST:脂肪 肝例25±9UIL、非脂肪肝例19±4U/L(p<α001))。CK−18(M30− FOを投与したラット血清でAH109Aを前培養した際にも増殖能には変化 が見られず、浸潤能のみが有意に抑制された。FO前培養による浸潤抑 制作用はPGE2の添加により添加量依存的に解除され、またSO添加培地 で前培養したAH109Aの浸潤能はPGE3の添加により添加量依存的に抑 制された。以上の結果より、魚油含有輸液で肝癌細胞を前培養し、細胞 antigen)は脂肪肝例(715±5α3UIL)が非脂肪肝例(498±9.1U/L) に比べ有意の高値であった(p<0.05)。全対象および脂肪肝例において 血清CK−18とBMI、ALT、ASTおよびTNF一α値との間に有意の正相関を、 AST/ALT比との間に有意の負相関を認めた。栄養素等摂取量に明らか 膜中のn−3系脂肪酸含量を増加させることにより浸潤能のみが有意に抑制 され、その抑制作用には細胞膜脂質より産生されるプロスタグランジンの種 脂肪肝では、BMIの上昇によってAST/ALT比が低下するとともに 類の違いが関与していることが明らかとなった。 と考えられた。 3H−15p腎臓と骨を結ぶリン代謝系の探索:NaPi−Ilcの遺 3H−16p小麦グリアジンが運動誘発アナフィラキシーに与える 伝子制御機構の解明 影響 ○福島有佳子1)、辰巳佐和子1)、島村仁子1)、山本浩範2)、伊藤美紀子1)、瀬 な差は認められなかった。 CK−18(M30−antigen)が上昇することから、早期の栄養学的介入が必要 ○田中守1)、加藤保子1)、矢野博巳2}、松田幹3)、長野隆男1) 川博子1)、宮本賢一1) 1)川崎医福大院・臨床栄養、2〕川崎医福大・健康体育、3)名古屋大院・農 1)徳大院・ヘルスバイオサイエンス・分子栄養、2)徳大院・ヘルスバイオサイエンス・ 【目的】小麦グリアジンはα,β,γ,ω一グリアジンから構成され,小麦依存性運 臨床栄養 動誘発アナフィラキシー(WDEIA)の主要アレルゲンとして知られている。 【背景と目的】生体において無機リン酸(以下リン)は骨の主要な構成成分 小麦の食品加工や調理加工では,薄力粉や強力粉などの異なる小麦粉が であり、エネルギー代謝にも必須の栄養素である。生体内リン濃度は腎 臓において排泄、再吸収を介して厳密に制御されている。その中心的役 使用される。異なる小麦粉のグリアジン組成は違うことから,小麦粉の違い 割を果たすのがII型ナトリウム依存性リン輸送坦体(NaPi−II)である。最 近、高カルシウム尿を伴う遺伝性低リン血症性くる病、HHRH(Hereditary ほとんど研究されていない。そこで,異なる小麦粉から調製したグリアジン がWDEIAに与える影響を明らかにすることを目的として研究をおこなった。 【方法】薄力粉,中力粉,強力粉から70%エタノールに可溶なグリアジン画 分を調製し,それぞれの感作マウス(B10・Aマウス)を作製した。感作マウス Hypophosphatemic Rickets with Hypercalciuria)患者の責任遺伝子 がNaPi−Ilcであることが明らかとなった。そこで我々はNaPi−IIノックアウト (KO)マウスを作製し骨の解析を行ったが、HHRH患者で診られる様なくる 病症状を呈さないことを見いだした。よってヒトとマウスにおけるNaPi−Ilcの 生理学的機能の違いが示唆された。本研究では腎臓と骨における、ヒトお よびマウスNaPi−Ilc発現調節機構の相違点を明らかにすることを目的とし でWDEIAに与える影響は異なると予想される。しかし,この点については の胃内にグリアジン(200mg/mouse)を投与して運動負荷(時間30min、 傾斜20%、速度15/min)後,WDEIAの指標として体温と自発運動量の低 下を測定した。グリアジンの吸収量は,胃内投与,運動負荷後30分の門脈 血を採取して70%エタノール可溶画分を得た後,競争阻害ELISAを用い responseelement)を持つことを見つけた。そこで、活性型ビタミンD (1,25(OH)2D3)により転写制御を受けるか否かをOK、MC3T3−E1細胞 て求めた血清グリアジン濃度を指標とした。グリアジンの成分組成はSDS− PAGEと免疫ブロティングによりおこなった。【結果及び考察】体温は,薄力 粉グリアジン群で有意な低下が認められ,中力粉と強力粉のグリアジン群で は有意な低下は認められなかった。自発運動量は,すべてのグリアジン群 で低下が認められ,薄力粉グリアジン群で最も大きな低下が観察された。グ リアジンの吸収量については,薄力粉グリアジンは中力粉や強力粉のグリア ジンよりも門脈血中の濃度が高い傾向がみられた。門脈血グリァジン濃度と 自発運動量の低下には相関があり,グリアジン濃度が高い個体ほど自発運 を用いて検討した結果、ヒトNaPi−Ilcプロモーターのみが、両方の細胞に 動量は低下した。さらに,グリアジン組成を調べたところ,薄力粉グリアジンに おいて、活性の上昇を認めた。これらの事実により、HHRH患者とNaPi− Hc KOマウスにおける骨病態の違いが骨芽細胞におけるNaPi−Hcプロモー 中力粉や強力粉のグリアジンよりもω一グリアジンが多く含まれていた。以上 の結果から,WDEIAは小麦粉の違いで異なること,その要因としてグリアジ ンの吸収量が関係していることが示された。このグリアジンの吸収量とω一グ リアジン含量とが関係している可能性が示唆された。 た。 【結果と考察】マウスとヒトNaPi−Ilcプロモーターを単離し、プロモーター活 性をOK細胞(フクロネズミ腎臓細胞)で調べた結果、両者ともに高い活性 を認めた。同様にMC3T3−E1細胞(マウス骨芽細胞様細胞)において 検討したところ、マウスNaPi−Ilcプロモーターは活性を示さなかった。ま たプロモーター配列よりヒトにのみ典型的なVDRE(Vitamin D receptor ター上のVDREへの125(OH)2D3/VDR複合体の結合に依存する可能 性が考えられた。さらにヒト骨標本にNaPi−Ilcが発現しているか否かを現 在検討中である。 【結語】マウスとヒトNaPi−Ilc遺伝子の125(OH)2D3による転写制御が異なっ ていることを明らかにし、ヒトの骨代謝におけるNaPi−Ilcの重要性を示唆し た。 一289一
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