自立活動だより - 広島県立福山特別支援学校

広島県立福山特別支援学校 自立活動だより
自立活動だより
平成 26 年度 No.3 平成 26 年 12 月 18 日 広島県立福山特別支援学校 自立活動部発行
自立活動だより No.2(以下 No.2とします)ではコミュニ
この遊びを繰り返し,快経験を重ねさせていく中で「い
ケーションの成り立ちの基礎(物事に対して注意を向けるこ
ないいない・・・」というフレーズと身ぶりを手がかりとして,
とや3項関係,物事を予期して次の動作に期待すること等)
子どもは期待反応を形成していきます。
について説明しました。今回も引き続き「コミュニケー
②安定した期待反応とは,手がかりとなる特定の刺激を
ションの成り立ち」について,次の3つの観点から詳し
受けると,子どもが必ず期待反応を示すようになることを意
く説明していきます。
味しています。「いないいない・・・」というフレーズと身ぶり
1
期待反応の分化について
の後には必ず「ばぁ」という楽しい快刺激が提示されるとい
2
期待反応の分化を促す指導の実際
う因果関係が確立してくると,その手がかりの無い時には,
3
意思伝達の発達
期待反応を示さなくなります。しかし,「いないいない・・・」と
いう刺激を再び受けると,すぐに期待反応を示します。
1
期待の分化について
②安定した期待反応
安定した期待反応へ
なんだろう(注視)
注意
No.2で説明した期待反応とは,期待を伴って注意して
いないいない・・・
いる間,これから起きる事象や働き掛けを期待するような
必ず,
ばぁ~がくるよ(注視)
表情や行動を示す反応です。この期待を伴って外界から
期
の刺激を受け止めるプロセスは,子どもが外界に興味をも
注意
ち,気持ちが外へ向き始めている能動性(外界に対しての
主体性)を反映していることに気付くことが大切です。
待
この段階になると,周囲の大人は期待反応の有無に
この期待反応が形成されると次の段階として,働きかけ
よって Yes を判断することが可能になります。
の有無によって,期待を示す場合と示さない場合が明確
期待反応から期待の分化へ
になってきます。これを安定した期待反応と呼びます。
そして,この安定した期待反応と連動して③期待反応
そして,さらに次の段階では,複数の働きかけや提示さ
の分化へ発達していきます。この段階では,複数の働きか
れた物に対して,期待反応を示す場合と示さない場合が
けや提示された物に対して,自分の期待の有無で判断し,
明確になってきます。このように対象によって期待反応に
どちらか選択的に期待反応を示すようになります。
変化が現れてくる段階を期待反応の分化と呼びます。
つまり,手がかり刺激に対して期待反応を示さない場合
No.2で紹介した「いないいないばあ遊び」を例に「期待
は,“興味がないよ,この後に提示される事象は好みでは
反応の分化」にまで発達していく例を説明します。
ないよ”という No の意思の表れと,周囲からとらえることが
まずは①期待反応の形成の段階です。
できるようになります。
①期待反応
ばぁ~がくるよ(注視)
③期待反応の分化
いないいない・・・
○○○
注意
注意
期
判
断
待
ばぁ~
ばぁ~じゃないな(注視)
いないいない・・・
やっぱり♪
これは,ばぁ~がくるよ(注視)
受容
注意
期
待
快の反応
-1-
広島県立福山特別支援学校 自立活動だより
したがって,この段階に達すると,大人は複数の働きか
期待反応の分化から次のステップへ
けや“物”を提示し,子どもの期待反応の違いで,ある程
度 Yes/No の判断ができるようになります。
この期待反応の分化が安定してくると,大人は期待反
応の表出を Yes の意思,無い場合を No の意思と判断する
さまざまな期待反応の分化
ことができるようになります。したがって,大人は状況等か
期待反応の分化は様々な場面で観察することができま
ら子どもの要求を推察して,繰り返し複数の物を提示し表
す。例えば,食事の際には,好みの物とそうではない物を
情を観察すること等によって Yes/No を判断し,適切な
自分の経験や記憶と照らし合わせ,自身の好みの物が食
物を与えることができるようになります。
べさせてもらえることを期待して,目線を好みの物のほうに
ただし,このように大人と子どもの間で問いかけに対す
動かして期待していることがあります。
るやり取りが成立しているような場面であっても,子どもは
期待反応の分化の例(食事の場面)
能動的に大人に対して要求を表出しているわけでないこと
好みの食べ物と苦手な食べ物があり,食べている時に好み
の方を期待する行動を示す。
に注意してください。この“子どもが快刺激を手に入れるこ
こっちのほうが
おいしいなあ…
食べたいなあ…
とができた”という結果は,周囲からの推察と期待反応の
解釈によって成立しているに過ぎません。
しかし,この結果の経験が大きな意味を持ちます。
注意
期待反応の分化によって周囲が Yes と判断し,期待通り
に快刺激が提供される体験を重ねて,子どもは自分の期
期待反応の分化の例
待反応(主体的行動)が周囲の人の行動に影響を与える
・複数の大人がそれぞれ子どもへ働きかけた場面で,
ことができる(この場合は快刺激を提供してくれる)ことに気
同じ刺激(例:いないないばあ遊び)にも関わらず,
付いていきます。そして,大人からの働きかけが自分への
特定の大人へ対して応答が異なることを行動で示す。
選択肢の提示を意味しており,自分に選択権を与えられ
・大人が怒っている表情と笑っている表情では応答が
ていることに気付き,期待反応を Yes のサインに使うことが
異なることを行動で示す。
できるらしい,ということを徐々に理解していきます。
・好みの遊び(音)と苦手な遊び(音)があり,遊ん
やがて,この成功体験を重ねることで,期待反応は単な
でいる時(聞く時),好みを期待する行動で示す,
・①色カード(赤)提示後→好きな音を聞かせる
る反応から問いかけに対する応答へと変化していきます。
②色カード(青)提示後→嫌いな音を聞かせる
これこそが,子どもが要求の意思を反映した外部への初
①,②を交互に働きかけた場合,①色カード(赤)提
めての意思表出となるのです。
示の際に期待反応を示す。②色カード(青)の際には
これが周囲からの問いかけに対して,明確に「Yes」の表
示さない。
出ができるようになる前段階となります。
このように期待反応から安定した期待反応を経て,期待
期待反応の分化の段階→Yes の表出の前段階
反応の分化の段階へと順を追って発達していきます。
いないいない・・・
①期待反応→②安定した期待反応→③期待反応の分化
ばぁが来るから
手を伸ばそう!
注意
期
期待反応の分化が意味すること
手を伸ばす
期待反応の分化は,特定の手がかり刺激の後に,
待
特定の快刺激がやってくるということが分かり始めてい
る段階で,手がかりとなる刺激と,後の事象との因果
手を伸ばしてきた っ
関係,つまり,“この手がかり”なら“この刺激”という組
てことは,きっと
して欲しいのね
手を伸ばしたら,す
ぐに「ばぁ~」して
くれたなあ・・・
み合わせが分かり始めている段階ともいえます。
これは提示される手がかり刺激を自分の体験による
ばぁ~
記憶と照らし合わせて,これから楽しいことが起きるの
か,そうではないのかを正しく判断することができるよ
受容
希望が伝わったぞ
うになっていることを意味しています。
快の反応
-2-
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⑤ 強化刺激として,再度赤スイッチを押すと,3~4秒
2
期待の分化を促す指導の実際
後に好きな音が流れてくる。
そうそう!こっち
が聞きたかった!
期待反応の分化を促す指導の実際
このように期待反応の分化はコミュニケーション発
押すよ~。
楽しいね~。
達の中では重要な位置を占めています。
期待反応の分化を促すためには,まずは期待反応の
表出が確立していることが前提です。また期待の分化
形成には反復試行が大切であるといわれています。
指導を行っていく上で重要なことは,手順を毎回同じパ
※この指導例の No2で説明した「手がかり刺激(次に来
ターンで行うことです。また,環境を整えて同じ場所,同じ
ることをの予期を促す働きかけ)」とは,ここでは「赤スイッ
姿勢で行うことで,活動そのものへの見通しを持ちやすく
チ」「青スイッチ」の色の違うスイッチです。
なり,そのことが子どもの「あの後~次は~だ!」という認
評価の観点
知を育むことの支援となります。

うれしそうに笑顔を表出する。
【具体的な指導例】色と好きな音・嫌いな音
準備物
赤スイッチを押すと,音が流れだすまで注視する,
赤スイッチに好きな音を録音
青スイッチに嫌いな音を録音

青スイッチを押しても,期待反応を示さない。

好きな音が鳴った後,赤スイッチを注視する,再度
スイッチを押そうとする。

① 赤スイッチを提示しスイッチを押すと,3~4秒後に
好きな音が流れてくることを示す。
赤スイッチの提示で喜ぶ。
指導の際の留意点としては次のようなものがあります。
② 青スイッチを提示しスイッチを押すと,3~4秒後
期待反応が前提の指導であり,子どもの興味関心
に,嫌いな音が流れてくることを示す。
に応じた快刺激をもたらす教材を活用する。
こっち見て
押すよ~
赤スイッチを押した後,音が聞こえてくるまでに「何
が聞こえるかな?まだかな?まだかな?」等の期
待を高める働きかけを繰り返します。
好きな音が流れてくると,音に注意を向けさせるよ
うに「楽しいね,おもしろいね。」等の楽しさを共感
する働きかけが大切です。
③ 子どもの前に赤・青2つのスイッチを置き「押してみ
よう,何が聴こえるかな?」とスイッチ操作を促す。
青スイッチを押して嫌いな音が流れてきた場合は,
「嫌だね」等の共感的な働きかけを繰り返します。
一連の働きかけを反復することが重要です。7~8
押してみ
よう~
回程度反復することが効果的といわれています。
期待反応の分化を促すためには,子どもの興味関心や
④ 子どもが赤スイッチを押す(難しい場合は支援者が
好きなものがきっかけとなってきます。これは,「気持ちい
一緒に押す)
い,○○が楽しい」という子どもの気持ちから始まります。大
スイッチを押してから,音が流れるまでの間,期待
人は子どもの気持ちを的確に受け止め,望んでいる快経
反応の表出(快の表情や好きな音が鳴るスイッチ
への視線,身体の動き等)を観察する。
験を繰り返すことによって“気持ちいい,楽しい”から“○○
したい”という要求へ発展させていくことが重要になってき
ます。日々の生活の様子から,丁寧に子どもの興味関心や
期待して
いるわね
好きなものを見取り,コミュニケーション指導の場面で生か
していくことが大切です。
-3-
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この段階の後期にかけては,子どもと大人の遊びの中
3
意思伝達の発達
で見られる物のやりとりや,大人と子どもが同じ刺激に対し
て注意し感情を共有する様子(共同注意)が見られ,意思
これまで,注意する力から快の反応,期待反応の分化
伝達の基礎が形成される重要な時期でもあります。
まで,コミュニケーションの基礎となる発達の様子を順に説
同時に注意を向け感情を共有する(共同注意)
明してきました。ここからは,今まで述べてきたことに併せ
おいしそうね
て,外界への意思伝達の発達について説明します。
ここでの「意思伝達」とは,自分の意思(気持ちや考え)
を何らかの行動で外部へ表出することと定義します。
おいしそう
初期の意思伝達の発達段階について
子どもは,これまでも説明してきたように,ことばが活用
できない初期の段階であっても視線,表情,身体の動き等
ここでは,快刺激を伴う感覚遊びを中心として働きかけ
により意思伝達を行っています。また共同注意等が形成さ
て,注意を促し期待反応を育てていきます。そして安定し
れてくる段階になると,指さしや手伸ばし等による具体的
た期待反応が周囲に与える影響に気付かせていきます。
な意思伝達の方法で要求を表出し,大人と活発なやりとり
後半になると,遊びの中で笑ったり声を出したりすること
ができるようになってきます。そして,さらに発達すると,こ
に大人が推察して意味付けを行い,積極的に評価するこ
とばや手話,サイン,絵カード等の方法で意思伝達をする
とで意図伝達段階につながる力を育成します。
ようになっていきます。
例えば,「キャー」(楽しいね),「アー」(もう一回したいの
ね),「ワー」(びっくりしたのね)と声に対して意図を持った
視線・表情
身体の動き
等
①聞き手効果段階
指さし
手伸ばし
等
ことば
手話・サイン
絵カード等
②意図伝達段階
表出として評価して子どもに返していくことなどです。
大切なことは,上に示したように子どもの気持ちを的確
に受け止め,意思表出を促し,適切に評価することです。
③命題伝達段階
子どもが周囲の大人に関わったことを評価され,「気持ち
が伝わった!」ことを喜び,大人とのやりとりを楽しい体験
発達が進むにつれて,誰にでも伝わる手段で意思
伝達することができるようになっていきます。
として積み重ねていくことで「もっと伝えたい」と表出の要
求が高まり,さらに高次の意思表出が促されていきます。
子どもは,大人と相互のやりとりを繰り返しながら,より具
②意図伝達段階
体的で意図のある意思伝達を行う力を獲得します。図のよ
うに,初期の意思伝達の発達段階は大まかに3つの段階
この段階になると,三項関係(自分と母親とおもちゃ)の
に分けることができ,それは①聞き手効果段階,②意図伝
理解が進み,視線や指さしや身ぶりで伝達が可能となり,
達段階,③命題伝達段階の3段階に区分されます。
発声と併せて意図的な手段を用いて要求表出を行うこと
次にそれらの詳細を示していきます。
ができるようになります。また,直接物を見せたり,渡したり
することで要求を表出することもできるようになります。
①聞き手効果段階
物に指さしをして要求を伝えている様子
この段階では,笑顔や不快を表す表情,視線,身体の
見たい?
(指さしているの
は見たいのかな)
動き,泣くなどの発声といった方法で意思の表出を行いま
す。この段階ではまだ具体的に「こうして欲しい!」という
これ見たい
目的と意図をもっていませんが,大人が状況から推察して
「こうして欲しいのかな?」と意図があるものとして解釈する
こと(聞き手効果)によって,結果として意思伝達コミュニケ
ここで大切なことは,周囲が配慮して意図を表出しやす
ーションが成立している段階です。
い環境を整え,意図を伝達したことによって,その要求が
-4-
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実現できる成功体験を多く経験させることです。
コラム
そのためには,実態に応じた意思を表出しやすい伝達
子どもは,言葉を話す前に,指さ
手段を指さしや身ぶり,発声等から反復試行する中で確
しやリーチングなどの前言語的行動で大人に対して要
立していくが重要です。
求表出し,大人と活発なコミュニケーションをとります。
(これは②意図伝達段階にあたります)表情等での要求
三項関係とは
子ども(自分),大人(他者),物(対
象)の関係で,大人と子どもが物
のイメージを共有すること。
例:ボールで遊んでいる時に大
人に注意を向けることができな
かった子どもが,ボールを意識す
るだけでなく,同時に大人がその
ボールに注意を向けていること
を意識できるようになる。
表出に比べ,より具体的に自身の要求を伝えることが
できるようになり,このように活発にコミュニケーションを
繰り返すことで,意思疎通の方法を獲得していきます。
前言語的行動とは
①共同注視・・・大人が見ているものと同じ刺激を見る。
②指さしの理解・・・大人が指さした方を見る。
③指さしの表出・・・自分で指を差して対象を示す。
④レファレンシャル・ルッキング(参照視)・・・大人と自分が同じ
刺激を見ているか確認する
③命題伝達段階
④レファレンシャル・ルッキングの例
この段階では,対象と意図が明らかになり,要求を表出
あっ!
猫だ!
①猫を発見する
するだけではなく,伝えたい内容を意図的に声と行為によ
って伝達しようとします。一般的には,指さしやことばを中
心とした意思表出の方法ですが,絵カードやコミュニケー
ションボード,サイン等も含まれます。
②お母さんも同じ猫を見ているか確認する
「ちょうだい」をサインと言葉で伝えている様子
ちょー(だい)!
ママも猫を見ているかな?
はい!どうぞ。
肢体不自由のある子どもたちは,経験が少なく意図
この段階で重要なことは,話し言葉を理解しつつあるの
を明確に持ちにくい傾向があります。子どもたちが意図
で,理解言語(聞く言葉)を増やしていくことです。生活に
を持てるようにするためには,スイッチなどを活用して自
関連した言葉を丁寧に話していく必要があります。説明を
分の力で物を操作するなど,自らの力でできることを設
定して達成感を味わえる活動をすることが大切です。
加えながらの絵本の読み聞かせ等が効果的です。
どの段階においてもコミュニケーションを取っていく上で,
子どもから大人への積極的な要求や期待の表出を促すこ
とが大切です。子どもの「伝えたい!」という気持ちを育む
ためには,子どもの気持ちを受け止め,子どもの達成感,
自己肯定感を育み,信頼関係を築くことが必要です。
【要求を感じたら…すぐに実現してあげましょう】
これが欲
しかった
のね?
にこっ(伝わった!
次も伝えよう!)
-5-
【主な参考,引用文献】
・「肢体不自由特別支援学校における重度重複障害児のコ
ミュニケーション学習の実態把握と学習支援」
編著:小池敏英,雲井未歓,吉田友紀
ジアース教育新社
・「重症心身障害児の認知発達とその援助 生理学的アプ
ローチの展開」共著:片桐和雄,小池敏英,北島善夫.
北大路書房
・「コミュニケーション発達支援シリーズ 絵で見ることば
と思考の発達」著 坂口しおり.ジアース教育新社
・中村保和,川住隆一(2007)「盲ろう児のかかわり手との
共同的活動の展開過程」.特殊教育学研究 45
・徳永豊(2003)「乳幼児の発達における共同注意関連行動
について」. 「重度・重複障害児のコミュニケーション行
動における共同注意の実証的研究」研究成果報告書.独
立行政法人 国立特別支援教育総合研究所
・東京都教育庁指導部義務教育特別支援教育課(2013)「学
習指導状況把握表を活用した指導の手引~小学部編~」
広島県立福山特別支援学校 自立活動だより
書籍紹介
平成 26 年度 No.3 平成 26 年 12 月 日 広島県立福山特別支援学校 自立活動部発行
NO.1
コミュニケーションの発達と指導プログラム-発達に遅れをもつ乳幼児のために-
コミュニケーションは,自己の目的のために他者を動かすための実用的,
実際的な発話行為である「要求伝達系」と挨拶や叙述等他者の気持ちに添
い,信頼もってかかわること自体が目的の相互的な発話行為である「相互
伝達系」の2種類に分けられ,これらの2つの側面を中心に事例を基にコ
ミュニケーションの発達について述べられています。また,乳幼児コミュ
ニケーションアセスメント・指導プログラム(CAP),乳幼児のコミュニ
ケーション発達アセスメント(ASC)の記述可能な用紙や課題を添った指
導を行うための乳幼児のコミュニケーション指導プログラム(TSC)の課
題シートも多く添付されており,課題に添った指導の指南となる一冊です。
長崎勤・小野里美帆
日本文化科学社(2008)
No.2
コミュニケーション発達支援シリーズ 絵で見ることばと思考の発達
0 歳から 22 歳までの幅広い時期を,「思考」と「言語」の育ちに着目しなが
ら 6 つの段階に分けて子どもを捉えています。子どもがことばを獲得し,意味
づけをしながら本人の中に作り上げていく「知識マップ」や子どもの思考の発
達過程をイラストで分かりやすく示してあり,読みやすい一冊となっています。
また,人との関係に弱さが見られる子どもは,彼らの「知識のマップ」を社会
に出て様々な状況に適切に対処できるように,精密で柔軟性があり応用可能な
内容に作り変えられる必要があると述べられています。これから社会に出て行
く児童・生徒たちへの指導に役立つような事例・指導方法も提示されています。
坂口しおり
ジアース教育新社(2009)
No.3
障害児の療育ハンドブック
医療的ケアの必要な児童生徒が安心・安全な環境づくりが優先的課題と
なっている昨今,学校現場,家庭において配慮すべきこと全般について理
学療法士,医師が共同執筆した一冊です。児童生徒の健康観察・健康管理
について,日常生活における介助の基本,配慮を要する疾患について,摂
食・嚥下障害とその対応,口腔ケア等の基本的なことについて,図や写真
等を含めて分かりやすく示されています。気管切開・経管栄養の児童生徒
のプール指導における配慮や宿泊学習参加にあたっての対応等,特別な配
慮を要する活動についても具体的に示され,日々の指導や生活において役
立つ事例も提示されています。
社会福祉法人
日本肢体不自由児協会
-6-
(2004)