遂行係数(成績係数) 逆カルノーサイクル 熱は高温の物体から低温の物体に流れは自然に起こるが、その逆方向に流すには特別な カルノーサイクルは高温と低温の熱浴と等温的に熱のやりとりをする過程を二つの 機構が必要である。冷凍空間から熱を奪うことによってその空間を低温に保つ装置を冷凍 断熱過程(等エントロピー過程)でつないだ全可逆サイクルである。 機という。またより低温の空間から熱を吸収して暖房空間を高温に保つ装置を熱ポンプ よって、カルノーサイクルを逆に運転すれば冷凍機やヒートポンプとして作動する。 (ヒートポンプ)という。これらの装置は熱力学的なサイクルによって実現される。 動 力 サ イ ク ル の 場 合 は 熱 効 率 η (thermal efficiency) に よ り そ の 性 能 が 評 価 さ れ る が 、 冷 凍 機 (対 象 を 冷 や す )や 熱 ポ ン プ (対 象 を 暖 め る )は 、 遂 行 係 数 c . p . (coefficient of performance) で 評 価 さ れ る 。 動力熱機関では、熱機関が吸収した熱量に対して、外部にした仕事の割合が大きいほど 良い機関である。 T -s 図 に お い て 、 Q H = [ 四 角 形 1564の 面 積 ] 、 Q L = [ 四 角 形 2563の 面 積 ] 、 仕 事 w = [ 四 角 形 1234の 面 積 ] で あ る 熱 力 学 第 二 法 則 に よ り 、 温 度 T H の 高 温 熱 源 と 、 T Lの 低 温 熱 源 の 間 で 作 動 す る 冷 凍 機 ・ 熱ポンプとして逆カルノーサイクルは「最も遂行係数の良い冷凍機・熱ポンプ」となる。 遂行係数は熱源の絶対温度を用いて次のように表わすことができる。 一方、冷凍機や熱ポンプは、最小の仕事で最大の熱移動を生み出すことが目的なので、 遂行係数が大きいほど良い機関である。このとき定義から明らかなように、遂行係数は1 よ り も 大 き く な り 得 る 。 T Hゃ T Lの 値 に も よ る が 、 実 際 の 冷 凍 機 や ヒ ー ト ポ ン プ は 遂 行 係 数 が 2~ 3で 運 転 さ れ て い る 。 また、両遂行係数間には の関係がある。 よって、 遂 行 係 数 の 値 は 、 温 度 差 が 少 な く な る ( T L が よ り 高 く 、 T Hが よ り 低 く ) に 従 っ て 大 き くなる。つまり外界と対象物(対象の部屋)との温度差が小さくなれば加える仕事が同じ 冷凍機の遂行係数の値は必ず正の値だから熱ポンプの遂行係数の値は必ず1よりも でもより多くの熱を移動させることができる。 大きくなる。 また、熱ポンプの遂行係数は必ず1より大きくなる。 PVはエネルギー、RTもエネルギー。 逆(カルノー)サイクル・ヒートポンプの熱効率η 低 熱 源 (300K)か ら 熱 機 関 が Q L KJの 熱 量 を も ら い 、ま た 外 部 か ら W′ KJ PV = n RT の 仕 事 を さ れ た と き 、500K に お い て 外 部 へ 熱 量 Q H KJ 放 出 し た 。 気 体 n molの エ ネ ル ギ ー エネルギー ー Q H KJ エネルギー P V = Pa m3 n R T J/ mol・K K T H 500 k 逆サイクル + W′ KJ N/m2 mol × m3 J(ジ ュ ー ル ) = N m = J (ジュール) T L 300 k +QL 逆 カ ル ノ ー サ イ ク ル の 熱 効 率 η (イ ー タ ) η= KJ + QL ……+ ( プラス ) 内部へ 吸収 - QH ……- ( マイナス ) 外部へ放出 |+W′| = |-QH| |+QL| |-QH| = 1- PLVL PHVH = 1- 低 熱 源 (内 部 ) か ら 熱 を 奪 い 、 高 熱 源 (外 部 ) に 熱 を 放 出 す る こ と が 可 能 で あ る 。 そ の と き の 熱 効 率 η (イ ー タ )は 、 η TL = 1- TH 例) |-QH| = 1- = 1- 循環過程において、外部から力学的仕事を加えることにより、 |-QH |-|+ QL | W ′ , Q , P V , R T の 単 位 は J (ジ ュ ー ル ) であり、エネルギーを表す。 密閉されたシリンダー内の理想気体の量n は一定だから定数であり、Rも定数だから (n R ) は 定 数 で あ る 。 (nR)一定・TL (nR)一定・TH 分 子 、 分 母 の 定 数 (n R )は 相 殺 さ れ る 。 TL TH 低 熱 源 27℃ , 高 熱 源 2 2 7 ℃ の と き η = 1- TL TH = 1- = 1- である。 = 0 .4 2 73 + 27 2 73 +2 27 3 00 5 00 ヒートポンプの遂行係数 C.P ヒ ー トポ ン プ = ヒートポンプの熱効率ηとエントロピー QH W 【問題A】 外 部 か ら 200 KJの 仕 事 が な さ れ 、500K に お い て 外 部 へ 放 出 し た 熱 量 Q H は 500 KJで あ っ た 。 低 熱 源 (300K)か ら 熱 機 関 が 奪 っ た 熱 量 Q L を 求 め な さ い 。 、 = QH Q H- Q L 熱力学第一法則: 熱力学でもエネルギー保存の法則は成り立つ。 よ っ て 、 X (KJ) + 200 (KJ) = 500 1 = 1- KJ T H 500 k 1 = ー 500 QL QH 1- = -QH ∴ X = 300 (KJ) (KJ) +W′ +200 逆サイクル TL KJ TH T L 300 k 1 η= η +QL |+W′| |-QH| = 200 500 + 300 kJ 【問題B】 熱 効 率 η = 0.4 ( T H 500 k ,TL 300 k )のとき, 全体のエントロピーはどれだけ増加したか? ヒートポンプは、最小の仕事で最大の熱移動を生み出すこと が目的なので、遂行係数の値が大きいほど性能の良い熱機関 +QL S1 = TL = 300 300 KJ = K 300000 J =1000 300 K J/K である。よって、上式よりηの値が小さいほど性能の良いヒー トポンプである。 S2 = 500 -QH = 500 TH よ っ て 、 Δ S = S 2- S 1 KJ K = = 500000 J = 1000 500 K 1000 - 1000 = 0 J/K ( J/K) (全体のエントロピーの増加はない。) = 0.4 ヒートポンプ(逆サイクル)の熱効率ηと遂行係数 遂 行 係 数 (coefficient of performance) 【問題1】 外 部 か ら 150 KJの 仕 事 が な さ れ 、500K に お い て 外 部 へ 放 出 し た 熱 量 Q H は 450 KJで あ っ た 。 低 熱 源 (300K)か ら 熱 機 関 が 奪 っ た 熱 量 Q L を 求 め な さ い 。 という。これらの装置は熱力学的なサイクルによって実現される。動力サイクルの場合は ∴ X = 300 (KJ) (KJ) 機構が必要である。冷凍空間らから熱を奪うことによってその空間を低温に保つ装置を冷 凍機という。またより低温の空間から熱を吸収して暖房空間を高温に保つ装置を熱ポンプ 熱力学第一法則: 熱力学でもエネルギー保存の法則は成り立つ。 よ っ て 、 X (KJ) + 150 (KJ) = 450 熱は高温の物体から低温の物体に流れは自然に起こるが、その逆方向に流すには特別な 熱 効 率 η (thermal efficiency) に よ り そ の 性 能 が 評 価 さ れ る が 、 冷 凍 機 (対 象 を 冷 や す )や ー 4 5 0 KJ -QH 熱 ポ ン プ (対 象 を 暖 め る )は 、 遂 行 係 数 c .p (coefficient of performance)で 評 価 さ れ る 。 ヒートポンプは、最小の仕事で最大の熱移動を生み出すことが目的なので、 T H 500 k 遂 行 係 数 ( c .p ) の 値 が 大 き い ほ ど 性 能 の 良 い 熱 機 関 で あ る 。 C.Pヒートポンプ = +W ′ 逆サイクル + 1 5 0 KJ = QH W QH QH-QL 1 = 1- QL QH T L 300 k η= +QL |+W′| |-QH| = 150 450 ≒ 0.33 = + 300 kJ 1 TL 1- TH 【問題2】 熱 効 率 η = 0.33 ( T H 500 k ,TL 300 k )のとき, 全体のエントロピーはどれだけ増加したか? 300000 J 300 KJ +QL = = 1000 J/K = = S1 300 K 300 K TL S2 450 -QH = = 500 TH よ っ て 、 Δ S = S 2- S 1 KJ K - 100 η ほど性能の良い熱機関である。 J/K 900 - 1000 = 1 動力熱機関では、熱機関が吸収した熱量に対して、外部にした仕事の割合が大きい η= 450000 J = = 900 500 K = = W QH = QH - QL QH = 1- ( J/K) QL QH ( 全 体 の エ ン ト ロ ピ ー は 、 100 ( J/K) 減 少 し た 。 ) エントロピーの増大とは、エネルギーの質の低下を意味し、逆に エントロピーの減少とは、エネルギーの質の向上を意味している。 ヒ ー ト ポ ン プ の 熱 効 率 が 、 0.4か ら 0.33に 変 化 し た と き 、 遂行係数は、 1 η = 1 0.4 = 2.5 か ら 1 η = 1 0.33 ≒ 3.03 = 1- TL TH 『性能が良い』と『実用的である』は一致しない。 に向上した。 『 実 用 的 で あ る 』 は 、 単 位 時 間 あ た り の エ ネ ル ギ ー 吸 収 量 (or 放 出 量 ) を 重 要 視 し て い る 。
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