酸素欠損を導入した Ti2Nb10O29 負極材料の合成および特性 (豊橋技術科学大学)○稲田亮史・高島俊生・成美憲吾・櫻井庸司 Synthesis and characterization of Ti2Nb10O29 with oxygen defect as anode material for lithium ion battery/ R. Inada, T. Takashima, K. Narumi, Y. Sakurai (Toyohashi University of Technology) / We synthesized Ti2Nb10O29-x and investigated the influence of introducing oxygen defect on electrical and electrochemical property of Ti2Nb10O29. X-ray diffraction patterns, size and morphology for Ti2Nb10O29 and Ti2Nb10O29-x are nearly identical but the color of Ti2Nb10O29-x is dark blue while Ti2Nb10O29 is white. Oxygen defect introduced into Ti2Nb10O29-x was clearly confirmed by TG analysis. X-ray photoelectron spectroscopy measurements also indicated that Ti4+ and Nb5+ in Ti2Nb10O29-x are partially reduced into Ti3+ and Nb4+, respectively. Electronic conductivity for Ti2Nb10O29-x is estimated to be 10-5 S cm-1 and much higher than that for Ti2Nb10O29 (= 10-9 S cm-1). The enhancement of intrinsic electronic conductivity in Ti2Nb10O29-x greatly contributes to the improvement of rate performance. 問合先:E-mail: [email protected] 【緒言】現行リチウムイオン電池の負極材料に使用されているグラファイト(理論容量 372 mAh g-1)は,作 動電位が Li 金属の析出電位に近く安全性に課題がある。Li 基準で 1 V 以上の高電位で作動し,高い安全性・ サイクル安定性を有する負極材料として Li4Ti5O12 が広く研究されているが[1],充放電容量が低いという課題 がある。本研究では,Li4Ti5O12 と同等な作動電位を有し,より高容量を示す負極材料の一つである Ti2Nb10O29 に着目し[2],その充放電レート特性改善に向けて,酸素欠損の導入による電子伝導性の向上を試みた。 【実験方法】Ti2Nb10O29 および Ti2Nb10O29-x は, TiO2 と Nb2O5 を Ti:Nb=1:5 となるよう秤量・混合した後,大気中もしく は真空中にて 1100°C,24 時間焼成することで合成した。各 試料の結晶相同定および微細構造観察には,X 線回折 (XRD) および走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した。また,構成 元素の結合状態は X 線光電子分光(XPS)測定,酸素欠損 の導入の有無は熱重量(TG)測定により評価した。 Ti2Nb10O29 および Ti2Nb10O29-x を導電助剤,結着剤と所定 Fig. 1. Comparison of TG curves measured in air for の比率で混合したペレットを作用極,金属 Li 箔を対極,電 Ti2Nb10O29 and Ti2Nb10O29-x. 解液に 1mol/L LiPF6-EC:DMC(1:1v/v%)を用いてコインセル を構成し,電圧範囲 1~2.5V,電流密度 0.5~10 mA/cm2, 20°C の条件で電気化学特性を測定した。また,各粉末試料 を加圧した状態で,直流四端子法により電流-電圧特性を 30°C の条件で測定し,電子伝導率を算出した。 【結果・考察】各試料の XRD 測定結果は Ti2Nb10O29 の回折 パターンと一致しており,熱処理時の雰囲気の違いによる 結晶構造の変化は見られなかった。また,SEM 観察の結果 から,粒子形態の違いもないことを確認した。一方で,大 気中焼成により合成した試料は白色であったのに対し,真 空中で焼成した試料は暗青色であり,XPS 分析より,真空 中で焼成した試料では Ti4+および Nb5+の一部が Ti3+および Nb4+に還元されていることを確認した。Fig. 1 に,大気中で 測定した Ti2Nb10O29 および Ti2Nb10O29-x の TG 曲線を示す。 大気中で焼成した試料では,測定範囲全域において重量増 加はなかったが,真空中で焼成した試料では 100~350°C Fig. 2. Charge and discharge curves for Ti2Nb10O29 にて 0.5%程度の重量増加が観測された。この重量増加は, (Top) and Ti Nb O (bottom). 2 10 29-x 試料の酸化による酸素欠損の消失によるものと考えられる。 Ti2Nb10O29 および Ti2Nb10O29-x の定電流充放電特性を Fig. 2 に示す。0.5 mA cm-1 の低電流密度下では,どち らの試料も 240~250 mAh g-1 程度の可逆容量を示しているが,高電流密度下では酸素欠損が導入された Ti2Nb10O29-x が Ti2Nb10O29 より高容量を示している。室温下で粉末試料の電子伝導率 σe を測定した結果, Ti2Nb10O29 は 10-9 S cm-1 であったのに対し,酸素欠損が導入された Ti2Nb10O29-x は 10-5 S cm-1 と,前者より 4 桁 程度高い値を示した。これが,Ti2Nb10O29-x におけるレート特性の改善に寄与していると考えられる。 【謝辞】本研究の一部は,公益財団法人日比科学技術振興財団研究助成(一般研究)の支援により実施した。 【参考文献】 [1] N. Kumagai, D. Yoshikawa, Y. Kadoma, K. Ui, Electrochemistry 78, 754-756, 2009. [2] X. Wu, J. Miao, W. Han, Y-S. Hu, D. Chen, J-S. Lee, J. Kim, L. Chen, Electrochem. Commun. 25, 39-42, 2012.
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