解答例

電子デバイス II
課題
解答例
清水大雅
2014 年 10 月 16 日出題分
1.前回の課題の条件と同じ条件にて p 型領域、
n 型領域における空乏層厚 xp, xn を求めよ。
2.Si の複素屈折率のデータを基に波長 800nm の近赤外光、650nm の赤色光、400nm の
青紫色光に対する強度反射率 RSi を求めよ。ただし光は垂直に入射する。
3.金の複素屈折率 N は波長 650nm の赤色光に対して 0.166 – 3.15 j である。金の強度
反射率 RAu を求めよ。
4.Si, GaAs の吸収係数のデータを基に波長 800nm の近赤外光、650nm の赤色光、400nm
の青紫色光が Si、及び、GaAs に吸収されて 1/e に減衰する膜厚をそれぞれ計算せよ。
ただし、表面には無反射コーティングが施されていて、表面での反射や裏面での多重反
射の影響は無視できるものとする。
また前回までの課題で出題した Si の空乏層厚や少数キャリアの拡散長と比較してみよ。
1.以下のように導かれる。
xp 
2 0 (VD  V )
ND

qN A
NA  ND
xn 
2 0  (V D  V )
NA

qN D
NA  ND


なお、順バイアス電圧を V > 0 とした。
また、内臓電界の最大値 Emax は、ポアソン方程式を解く過程で求められる。
E (接合面)  
d ( x)
dx
x 0

Q
 0
q
N D xn
 0
q
NAxp
 0

Emax は、電磁気学のガウスの法則からも求められる。接合面を含むようにガウス面をと
ればよい。
課題ではバイアス電圧を与えていなかったが、0.5V の順バイアスと 1V の逆バイアスを
例にとり計算する。
数値を代入すると
・0.5V の順バイアスを加えたとき、
xp = 80 nm, xn = 0.08 nm, Emax = 1.3×107 V/m
・1V の逆バイアスを加えたとき、
xp = 0.16 m, xn = 0.16 nm, Emax = 2.5×107 V/m
となる。逆バイアス電圧の印加とともに空乏層と内臓電界は大きくなる。また、xp / xn =
ND / NA が成り立つことを確認できる。
講義後半ではフォトダイオードと太陽電池を取り扱う。両者の光吸収や光電流の発生過
程は同じであるが、フォトダイオードには逆バイアス電圧が、太陽電池には弱い順バイア
ス電圧がかかっている点が異なる。計算したように空乏層の厚さが異なり、変換効率の差
となって現れる。
2.波長 800 nm、650 nm、400 nm の光に対する Si の複素屈折率はそれぞれおよそ、3.7
– 6×10-3 i、3.9 – 2.2×10-2 i、5.6 – 0.39 i と読み取られる。
垂直入射の強度反射率の式に代入すると
R r
2
2

n  1   2

(n  1) 2   2
波長 800 nm:RSi = 0.33
波長 650 nm:RSi = 0.35
波長 400 nm:RSi = 0.49
3.RAu = 0.941
4.
光が 1/e に減衰する距離(侵入長)は吸収係数の逆数 1/で求められる。

4

Si
波長 800 nm,  ~ 1×103 cm-1, 侵入長は 1/ [m] = 10 m
波長 650 nm,  ~ 4.5×103 [cm-1], 侵入長は 1/ [m] = 2 m
波長 400 nm,  ~ 1×105 [cm-1], 侵入長は 1/ [nm] = 0.1 m
GaAs
波長 800 nm,  ~ 1×104 cm-1, 侵入長は 1/ [m] = 1 m
波長 650 nm,  ~ 2×104 [cm-1], 侵入長は 1/ [m] = 0.5 m
波長 400 nm,  ~ 3×105 [cm-1], 侵入長は 1/ [nm] = 0.033 m
前回までに出題した pn 接合の空乏層や少数キャリアの拡散長と比較する。長い波長の光
は pn 接合の空乏層を越えて光が侵入するのに対し、
短い波長の光は表面で光が吸収される。
太陽電池を例にとると、
紫外光から近赤外光の波長範囲全体を単一材料の pn 接合で吸収し、
光電流として取り出すことは困難であり、変換効率を制限する原因となる。
直接遷移型半導体の GaAs は間接遷移半導体の Si と比較するとエネルギーギャップに相
当する光を効率よく(吸収の遷移確率が大)吸収する。したがって同じ波長に対して侵入
長は短くなる。
以上