行政情報 雑豆をめぐる事情について 農林水産省生産局生産流通振興課 課長補佐(土地利用第2班担当) 土居下 充 洋 はじめに 小豆は、そのほとんどが餡の原料として 雑豆とは、大豆、落花生以外の豆類の総 使用されており、近年、7万トンから9万 称であり、小豆、いんげん、えんどう、そ トン程度の輸入がある加糖餡と、1万トン ら豆等を指しますが、小豆を中心に、その 前後の輸入がある冷凍小豆(いずれも、中 生産・流通事情等を説明いたします。 国産が8~9割を占める)を乾豆換算する と3万トン程度となり、これを乾豆の消費 1 需給動向 量に合算すると11万~13万トンとなります。 国内の小豆(乾豆)の消費量は、平成22 これら、輸入加工品を含めた消費量につ 豆年度(平成21年10月~平成22年9月)で いても、1豆年度以降は減少傾向にあり、 約8万1千トンであり、これまでのピーク 直近の22豆年度では11万トンを下回ってい であった平成4豆年度の12万5千トンから ます。 3割程度減少しています。 ○ 小豆の消費量と加糖餡、冷凍小豆の輸入量 どいした みつひろ -- 乾豆の消費量がピークであった4豆年度 感が増大しこと、また、中国側が輸出に慎 と直近の22豆年度を比較すると、輸入量が 重になり検査を厳しくしたということもあ 約3千トンから約1千トンへ大きく減少し り、平成21年には6万9千トン台まで減少 ています。これは、加糖餡の輸入が、平成 しました。 に入ってから増加したことが原因である考 し か し な が ら、 平 成22年 を み る と、 えられます。その背景としては、消費者が 7万3千トンまで再び増加しており、今後 より安い製品を求めたこと、輸入豆を含む も動向を注視していく必要があります。 乾燥豆の供給が不安定であったこと、輸入 輸入加糖餡への対応策としては、国産小 加糖餡の品質・食味が向上したこと等様々 豆や輸入小豆を使った国内加工業者から生 な要因が指摘されています。 産される製品の「豆の品質がよい」、「味や 近年の推移は、平成17年に9万トンを超 風味が良い」といった品質面での優位性等 えて、その後、少しづつ増加していました を活かして、積極的に表示をして消費者の が、平成20年の1月末に起きた冷凍餃子事 商品選択の機会を増やすといったことを実 件を契機に、消費者の中国産食品への不安 践する必要があると考えています。 ○ 加糖餡の輸入量の推移 円/ kg トン 2 国内生産の状況 程度で推移していますが、「エリモショウ 豆類は、北海道の畑作地帯において、麦 ズ」などの安定多収品種が普及した近年に 類、てん菜、ばれいしょとともに輪作体系 おいても、平成15年産の不作時は生産量が を維持する上で必要不可欠な作物であり、 5万トンに減少する一方、豊作であった16、 豆類の中でも作期・リスク分散の観点から、 17年産では7~8万トンに増加、そして21 小豆、いんげん、大豆のバランスのとれた 年産は4万7千トンに減少するなど、豊凶 作付けが重要です。 変動も激しいものになっています。こうし 北海道における小豆の作付面積は、近年 たことは、価格にも大きな影響を与えてお 2万3千 ha 前後、生産量は6~7万トン ります。 -- 今後は、多様な需要に見合った安定的な せることが需要の維持・拡大を図る上で重 生産と供給を図り、合わせて価格を安定さ 要な要素となります。 ○ 小豆の生産量及び作付面積の推移 (千トン、千 ha) 100.0 80.0 90.5 90.0 70.0 78.9 80.0 70.0 82.3 52.8 32.2 32.7 50.0 40.0 46.5 38.3 30.0 54.9 61.3 58.1 56.0 42.6 40.0 20.0 60.0 69.6 60.0 50.0 69.3 65.6 63.9 32.1 31.7 48.7 30.0 30.7 20.0 31.9 28.2 10.0 23.8 22.8 23.4 23.5 23.2 0.0 10.0 0.0 16年 17年 18年 19年 20年 全国作付面積 全国生産量 21年 22年 うち北海道作付面積 うち北海道生産量 ○ 価格の推移 (円) 3 関税割当制度について 者・加工業者の保護を図っています。これ 雑豆は、関税割当制度により、一定数量 は、平成7年度から、ガット・ウルグァ の枠内での輸入に限り、低税率(1次税 イ・ラウンド農業合意に基づき実施してい 率)を適用して実需者に安価な輸入品の供 るものであり、カレントアクセス数量(最 給を確保する一方、1次税率の輸入数量枠 低限のアクセス機会を提供すべき数量)と を超える輸入分については、高税率(2次 しては、雑豆全体で12万トン、関税率は、 税率)を適用することによって、国内生産 1次税率は10%、2次税率は平成12年以降、 - 10 - 354円 /kg が設定されています。 ととなります。 関税割当の仕組みとして、1次税率での なお、枠内輸入実績は、平成17年以降、 輸入枠は、国内需要を国内生産で賄えない 10万トンを下回る傾向が続いており、平成 数量について設定することが基本となって 22年度は約7万5千トンと、割当に対する おり、需要量に大きな変動がない場合、国 消化率は約60%となっています。 内生産の変動により割当数量も変動するこ ○ 雑豆の輸入数量の推移(年度) (トン) 4 輸入の動向 減少傾向であり、平成22年度では、2万ト 世界の農作物、穀物生産をめぐっては、 ンを割り込み、1千5百トンとなっていま 近年のバイオエタノール用作物の生産拡大、 す。 中国等新興国の穀物需要の拡大などを背景 また、輸入数量の8割から9割を中国が に穀物相場が高騰し、雑豆の輸入について 占めていましたが、近年、中国産食品に対 も、昨年末から調達コストが上昇している する不安感から中国産の輸入が減少してお 状況であり、今後の動向を注視していく必 り、21年度以降は約7割となっています。 要があります。 一方、高品質であると評価されるカナダ産 なお、豆別の主な輸入状況は以下のとお の輸入が増加傾向であり、21年度以降は全 りとなっています。 体の2割を超えました。 ① 小豆:年3万トン程度でしたが、近年 - 11 - ○ 小豆の輸入量の推移 (トン) ② いんげん:(赤系)約1万トン輸入さ されています。そのうち、ミャンマー、米 れています。そのうち、カナダから約5割 国からそれぞれ約3割輸入されています。 輸入されています。その他は中国、米国と ミャンマーの輸入単価は、他の国の5~6 なっています。(白系)2~3万トン輸入 割程度と低価格となっています。 ○ いんげん(赤系)の輸入量の推移 (トン) ○ いんげん(白系)の輸入量の推移 (トン) - 12 - ③ えんどう:約1万トンの輸入されてい れています。 ます。そのうち、カナダから約7割輸入さ (トン) ④ そら豆:約6千トンの輸入。そのうち 中国から約9割輸入されています。 (トン) - 13 -
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