TaKuMi Vol.14 www.bostonscientific.jp/takumi 『門脈にろう孔を伴った 胃十二指腸動脈の仮性動脈瘤に対して、 GDC ™が有用であった症例』 大阪医科大学 放射線科 山本 和宏 先生 山本 和宏 先生 『門脈にろう孔を伴った胃十二指腸動脈の 仮性動脈瘤に対して、GDC™が有用であった症例』 TaKuMi Vol.14 大阪医科大学 放射線科 山本 和宏 先生 症例 症例:56 歳男性 既往歴:アルコール性慢性膵炎、門脈血栓症 主訴:血管雑音 当科紹介目的:仮性動脈瘤に対する治療 現病歴 消化器内科にて繰り返すアルコール性慢性膵炎の治療中に、 腹部に血管雑音を認めたため造影 CT を施行。胃十二指腸動脈 ( GDA )に仮性動脈瘤を認め( Fig.1 )、また、同時に膵尾部の仮 性のう胞も認めた。仮性動脈瘤は門脈とろう孔を形成し、仮性の う胞は胃ろう孔を形成しいていた(Fig.2)。 仮性動脈瘤はだるま状になっており、破裂のリスクが考慮され、 また仮性のう胞内には出血を伴っており ( Fig.3 )、CT 画像からの MPR、3DCT 画像( Fig.4,5 )にて胃十二指腸動脈の仮性動脈瘤 と脾動脈の仮性動脈瘤に対してコイル塞栓術の適応が考えられ、 IVR治療を依頼された。 Fig.1 : 造影CTにて仮性動脈瘤を認めた Fig.2 : 胃壁のろう孔 Fig.3 : 造影CTにて仮性のう胞内に 造影剤の血管外漏出像を認めた Fig.4 : MPR画像 Fig.5 : 3DCT 『門脈にろう孔を伴った胃十二指腸動脈の 仮性動脈瘤に対して、GDC™が有用であった症例』 TaKuMi Vol.14 大阪医科大学 放射線科 山本 和宏 先生 血管造影 総肝動脈( CHA;Fig.6 )、上腸間膜動脈( SMA;Fig.7 )造影か ら仮性動脈瘤は造影され、仮性動脈瘤を介して、門脈が描出され ていたことより、GDA の isolationだけでは動脈瘤と門脈の交通 は残存すると考え、仮性動脈瘤の packingとGDA の isolationを 行う方法を選択した。 5Fr JC1、Excelsior™1018™ 2マーカー、GTワイヤー ダブル アングル( Terumo)を使用し (Fig.8)、仮性動脈瘤が大きいため、 まず、仮性動脈瘤の下端の framingをGDC™18 360°9 x 20 2 本から開始、次にGDC™18 2D 7 x30 1本にてpacking。その後、 仮性動脈瘤の上端の framingをGDC™18 360°24 x 40 3本、 p a c k i n g を I D C ™ 3 0 x 2 0 4 本 、I D C ™ 2 8 x 2 0 1 本 、 IDC™soft 4 x 10 1本、IDC™24 x 20 4本、IDC™22 x 20 2本 にて施行し、IDC™28 x 20 3本にて distalの GDA塞栓( Fig.9 )、 ■使用コイル 胃十二指腸動脈仮性動脈瘤 st 1 コイル: GDC ™18-360°9 x 20 nd 2 コイル: GDC™18-360°9 x 20 rd 3 コイル: GDC™18-2D 7 x 30 th 4 コイル: GDC™18-360°24 x 40 th 5 コイル: GDC™18-360°24 x 40 th 6 コイル: GDC™18-360°24 x 40 th 7 コイル: IDC™ 30 x 20 th 8 コイル: IDC™ 30 x 20 th 9 コイル: IDC™ 30 x 20 th 10 コイル: IDC™ 30 x 20 th 11 コイル: IDC™ 28 x 20 th 12 コイル: IDC™soft 4 x 10 th 13 コイル: IDC™ 24 x 20 th 14 コイル: IDC™ 24 x 20 th 15 コイル: IDC™ 24 x 20 th 16 コイル: IDC™ 24 x 20 th 17 コイル: IDC™ 22 x 20 th 18 コイル: IDC™ 22 x 20 th 19 コイル: IDC™ 28 x 20 th 20 コイル: IDC™ 28 x 20 st 21 コイル: IDC™ 28 x 20 nd 22 コイル:GDC™18-360°22 x 40 脾動脈仮性動脈瘤(SPA 本管塞栓) st 1 コイル: GDC™18-360°7 x 15 nd 2 コイル: GDC™18-soft 6 x 15 rd 3 コイル: GDC™18-360°7 x 15 th 4 コイル: GDC™18-soft 6 x 15 th 5 コイル: GDC™18-360°7 x 15 th 6 コイル: GDC™18-soft 6 x 15 th 7 コイル: GDC™18-360°7 x 15 th 8 コイル: GDC™18-soft 6 x 15 th 9 コイル: GDC™18-360°8 x 20 th 10 コイル: GDC™18-soft 6 x 15 th 11 コイル: GDC™18-360°8 x 20 GDC™18 360° 22 x 40 1本にてproximalの GDA塞栓による isolationを施行した。 なお、Proximalの GDA塞栓最終の GDC™を切り離す前に、対 側鼠径部からのカテーテルにて、腹腔動脈( CA:Fig.10 )、SMA ( Fig.11 )を造影し血流状況を確認後、完全に仮性動脈瘤への血 流が消失していることも確認し、最終のGDC™を切り離した。 次に脾動脈( SPA)にマイクロカテーテルを進め SPA本管塞栓 を 施 行 。C o i l m i g r a t i o n を 防 ぐ た め に A n c h o r とし て GDC™18 360° を使用( Fig.12 )。GDC™18 360°7 x 15 4本、 ™ GDC 18 360°8 x 20 2本、GDC™18 soft 6x15 5本をもって SPAを塞栓した。脾臓への血流は脾動脈からは血流遮断された が( Fig.13 )、側副路の胃大網動脈からは塞栓直後より良好な血 流が保たれていた( Fig.14)。 Fig.6 : CHA造影 Fig.7 : SMA造影 Fig.8 Fig.9 : 瘤内Packingと DistalのGDA塞栓後 Fig.10 : ProximalのGDA塞栓にて 最終GDC™を電気離脱する前の 対側からのCA造影 Fig.11 : 最終GDC™を 電気離脱する前の対側からの SMA造影 Fig.12 : 脾動脈はGDC™360° を Anchorとして塞栓。 Fig.13 : CA造影 Fig.14 : SMA造影直後に 胃大網動脈からの側副動脈にて 血流が保たれている TaKuMi 『門脈にろう孔を伴った胃十二指腸動脈の 仮性動脈瘤に対して、GDC™が有用であった症例』 考察 Vol.14 大阪医科大学 放射線科 山本 和宏 先生 このことにより、瘤内部を横切るLoop が少なく、内部への coil の packing が容易となる可能性が高まる。また 30cm 、40cmと 腹部領域の動脈瘤の塞栓は頭部領域とは異なり、動脈瘤の流 十分な長さがあるため、瘤壁を満遍なく覆うことができ、既存コ 入路と流出路を遮断する “ Isolation ” を行うことが多く、ほとん イルと比較して1 本あたりの充填率を高めることにつながるため、 どの場合は従来のデタッチャブルコイルで対応可能であるが、瘤 塞栓効率を向上させると考える。 内のpackingが必要な症例も時に経験する。 さらにGDC ™ 360° を重ねることで強固な Frame が形成され、 本症例は慢性膵炎治療中にGDAに仮性動脈瘤が形成された neck 部やろう孔部分をコイルが取り巻き、結果として高いネック 症例で、GDA からの血流がピンポイントの prominently neck カバレッジが得られ、血流遮断に有用と考える。 narrowで流入しており、さらに門脈とのろう孔を形成している状 また、GDC™は電気離脱式であるため、 コイルのデタッチポイン 態であった。 したがって、本症例の仮性動脈瘤の破裂先は消化管 トがマイクロカテーテル先端から出ても、電気を流さない限り離 や仮性のう胞ではなく、門脈に認められるという特殊な症例であ 脱しないことから、理想のcoil形状形成、位置留置が行えないとき、 ると考えられた。 また必要以上の抵抗が認められるときには、通電前に、デリバリー したがって 、通 常 の 仮 性 動 脈 瘤に対 するコイ ル 塞 栓による ワイヤーとともに回収が可能で、 マイクロカテーテル先端の微調整、 isolation だけでは、瘤内へ門脈からの流入が残存して閉塞しな コイル形状・サイズの変更によりスムーズに理想的なコイル留置 い可能性が考えられた。 が可能となり、 より適切な位置でのコイル塞栓が可能となる。 方法としては、 また、既存の IDC ™のデリバリーワイヤーと比べ、GDC ™のデリ 1 )Coilによるisolationだけによって、瘤内への門脈からの逆流は動 バリーワイヤーの方が細く、 しなやかなため、屈曲が激しい血管 脈に比較すると少なく、 自然に仮性動脈瘤の血栓化を期待する。 や繊細なテクニックでのコイル塞栓を要求される血管や状況下 2 )Coilによるisolationと仮性動脈瘤内へ NBCAを注入する方法 では、カテーテルにかかるテンションも異なる為、GDC ™ の方が では門脈への流入も危惧される。 3 )Coilによるisolationと経皮経肝的にカバーステントを門脈に 留置する方法では門脈血栓症の増悪が危惧される。 4 )Coilによるisolationと仮性動脈瘤内へのコイルによる控えめ な packingによる門脈ろう孔の閉塞による方法では仮性動脈 瘤内へのcoil packingは推奨されない。 が 検 討 されたが 、4 )の 方 法 を 選 択し、マイクロカテ ー テ ルと GDC ™を用いて正確で繊細なpacking 、isolatingが施行でき、術 後約 6ヶ月にてcoil compactionによる動脈瘤の再発、また仮性 動脈瘤の破裂は認めず、経過良好である。また、脾動脈の仮性 より的確なピンポイント塞栓が可能と考えられる。 さらに、 コンプレックス形状であるGDC ™360° の最大の利点は コイルの出し入れとマイクロカテーテルの先端位置を同時に制 御することでコイル形状をより積極的にコントロールできるよう になることであるため、術前の 3DCTにて動脈瘤の形状を十分把 握し、有効且つ安全にマイクロカテーテルの先端位置を制御しな がら、 コイル自体をコントロールして留置することが大事である。 なお、今回の症例の仮性瘤塞栓終 了の目安は, マイクロカテーテルが 瘤 外 へ 押し戻された時 点とした。 動脈瘤に関しては、GDC ™ 18 360° をAnchorにして良好なコイ UltraSoft ™タイプのコイルを用い ル塞栓術が施行できた。 れば、まだ追加挿入可能であったと 以上、本症例では治療方法の選択、塞栓コイルの形状の選択を 思われるが、仮 性 動 脈 瘤に対して 慎重に行うことが肝要であると考えられた。 tight packingする事はやり過ぎで はないかと考え、控えめの packing GDC のポイント(Fig.15) )が有 動脈瘤内の framing は Complex shape(GDC ™ 360° 用で、GDC ™360° は従来の 3Dコイルよりもコイルの形状記憶性 が弱く、さらに従来の 3Dコイルとは異なったコンプレックスタイ を施行した。 Fig.15 まとめ プの形状なので、 コイル留置時形状の自由度が高く、瘤壁に内側 GDC ™18 360° は360° Shape 特有の「外向きに拡がるコイル 挙動」を示すため留置コイルの安定性が高く、360° Shapeを重 から張り付くように広がるframing が可能であるとされている。 ねて留置することにより外側からしっかりと殻を重ねるような安 特に瘤形状が不整でも、瘤の形状に沿って抵抗無く外向きに展開 定した塞栓を行うことができ、理想的な血管閉塞を可能とする。 されるため、対応が可能と考えられる。 TaKuMiウェブサイトのご案内 www.bostonscientific.jp/takumi 販売名:GDCコイル 医療機器承認番号:21300BZY00488000 販売名:プラチナコイル バスキュラー オクルージョン システム 医療機器承認番号:21000BZY00328000 販売名: トラッカー エクセル インフュージョン カテーテル 医療機器承認番号:21000BZY00720000 製品の詳細に関しては添付文書等でご確認いただくか、弊社営業担当へご確認ください。 © 2011 Boston Scientific Corporation or its affiliates. All rights reserved. GDC™、IDC™、UltraSoft™、Excelsior™、1018™はストライカーグループのトレードマークです。 GTワイヤーはテルモ株式会社の製品です。 ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社 本社 東京都新宿区西新宿1-14-11 日廣ビル www.bostonscientific.jp 1103・82413・W / PSST20110314-0147
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