建築基礎構造講義(11) 沈下量の検討(1) 沈下の原因と即時沈下量の計算 1 到達目標 z地盤沈下の原因がわかる。 z即時沈下と圧密沈下の違いがわかる。 z圧密沈下のメカニズムを説明できる。 z不同沈下の原因となるものを説明できる。 z即時沈下量が計算できる。 2 地盤沈下 z 地盤上に荷重(建物)を載せると地盤は当然変形します。こ の変形が「沈下」です。沈下する量は荷重の大きさや地盤の 性質などの諸条件によって異なります。 z 一般に沈下量は荷重が増せば、大きくなり、載荷幅が増して も、大きくなります。 また、良く締まった砂や砂利では沈下量 は小さく、含水比の高い、水分で飽和した粘性土では大きく なります。 z さらに、沈下速度も砂と粘土とでは明らかな違いがあり、砂 地盤では荷重に対して瞬時に沈下が終息する即時沈下(弾 性沈下)を、粘土地盤では時間をかけて沈下する長期沈下 (圧密沈下)を生じます。 テキストp.29 3 地盤沈下はどのようにして起こるか? z 「地盤沈下」とは、「地盤面が沈下していくこと」であ り、それは「ある範囲の土の体積が減少していく、ま たは移動していくこと」を意味しています。移動する のは見当がつきやすいと思いますが、では、減った 分はいったいどこへいってしまうのでしょうか? z 地盤を構成している「土」は“土粒子”,“水”,“空気”, に分類されます。このうち"水"と"空気"は土中の「間 隙」と呼ばれており、実はこれが「土の体積減少」に 深く関わっているのです。 4 圧密沈下のメカニズム z 「圧密」は、図-1で説明されます。 "土粒子のピストン"の間隙を満た している"水のバネ"が、荷重(p) の圧力によって、ゆっくりと排水さ れて生じる土の圧縮現象です。 z ただし、住宅地盤の場合は地下 水位より浅い部分も大きく影響さ れているため、間隙(水と空気) が減って(=排気・排水されて)、 地盤が沈下したことになります。 テキストp.32,33 5 不同沈下とは? z 通常、「土」の構成は複雑であるため、地盤の沈下は均一に は起こりにくく、より弱い方へ傾いて生じます。このような不 均等な沈下現象を「不同沈下」と言います。また、一見して均 一な地盤と考えられる場合でも、建物自体の荷重が不均等 (部分2階など)であるがために、より重い方へ「不同沈下」す ることもあります。 z ひとたび「不同沈下」を生じると、基礎のたわみや構造部材 の歪みなどから建物内外に深刻な不具合をもたらし、居住が 困難になったり、倒壊の危険がでてくる場合もあるため、注 意が必要です。 6 不同沈下による主な障害 実際には「不同沈下」は、発生初期段階から倒壊の危険にさらされる最終 段階まで、建物の傾斜に伴って、徐々に進行して行きます。下記は各段 階で主に生じる障害と建物の傾斜との関係をまとめたものです。 ◆ 木造住宅における不同沈下の進行段階と主な障害 段階 不同沈下障害の状況 傾斜の限度 モルタル外壁・コンクリート犬走りに亀裂が発生する 1/1000 第1期段階 つか立て床の不陸を生じ、布基礎・土間コンクリートに亀裂 が入る 3/1000 5/1000 第2期段階 壁と柱の間に隙間が生じ、壁やタイルに亀裂が入る。窓・額 縁や出入口枠の接合部に隙間が生じ、犬走りやブロック塀な ど外部構造に被害が生じる 第3期段階 柱が傾き、建具の開閉が不良となる。床が傾斜して支障を生 じる 10/1000 最終段階 柱の傾斜が著しく倒壊の危険がある。床の傾斜もひどく使用 困難である 15/10007 初期段階 不同沈下の起こりやすい事例 軟弱な地盤上に荷重の不均等な建物(部分 2階など)。荷重の大きい側の沈下量が大き くなるため、不同沈下に発展する。 8 軟弱地盤上に不用意な盛土を施すと、 盛土荷重と建物荷重の双方が加わり、 大きな沈下に発展する。 9 建物の下にゴミやガラなどが埋められて いたり、浄化槽などの埋設物除去跡の埋 戻し処置が不十分な場合、不同沈下に発 展する。 10 宅地造成のために擁壁の埋め戻しや盛土 の転圧が不完全なため、不同沈下に発展 する。 11 付近一帯が軟弱地盤の場合、建物の近 隣で過大な盛土が施されると、その荷重 が周辺地盤の沈下を生む。 12 建物が性質の異なる基礎地盤に跨っている 場合、あるいは下部の硬質層(地山)が傾 斜している場合には、上部の軟弱層の分布 範囲や層厚の違いから、不同沈下に発展 することが多い。 13 広範囲な埋土地盤では各所で埋土の厚さ が不均一であるため(例えば、旧谷地の土 手と最深部)、埋土自体の沈下と建物荷重 によって、不同沈下が発生しやすい。 14 即時沈下 z 基礎の沈下量には、発生する時間の相違により次 の2種類がある。 {沈下量=即時沈下量+圧密沈下量 z 載荷と同時に生ずる沈下を即時沈下と呼ぶ。弾性 論等により計算する。 テキストp.29 15 即時沈下量の計算方法 z 地盤を半無限弾性体と仮定すると,即時沈下量Se は下式によって与えられる。 1 −ν Se = qB IS E 2 ここに、 Se : 即時沈下量 ( m ) q : 基礎の平均荷重度 ( kN m 2 ) B : 基礎底面の短辺長さ,円形の場合は直径 ( m ) E : 地盤の弾性係数 ( kN m 2 ) I s : 沈下係数(無次元) テキストp.76,77 16 地盤のポアソン比とヤング係数 z 砂質地盤のポアソン比は,0.25~0.35程度であり, 通常0.3を用いる。 z 砂質地盤のヤング係数はN値から計算できる。 砂礫,洪積層の砂 E = 0.28 N ( kN cm 2 ) 沖積層の砂 E = 0.14 N ( kN cm 2 ) ただし,Nは基礎底面から基礎短辺幅Bの深さ までのN 値の平均 テキストp.31,77 17 沈下係数Is テキストp.77 18 例題 z一様な沖積層の砂地盤が堆積している地点 に2m×2mの正方形基礎を設ける場合の即 時沈下量を求めよ。ただし,砂地盤は基礎底 面位置から6mまでの平均N値は20であり,さ らに深い位置のN値は20以上である。基礎に は200kN/m2の荷重が作用し,基礎の剛性は 非常に大きいものとする。 テキストp.77,78 19 解答 z 沖積層の砂の弾性係数とN値との関係から E = 0.14 N = 0.14 × 20 = 2.80kN cm 2 = 2.80 × 104 kN m 2 z 砂地盤であることから ν=0.3 z 沈下係数は表5.7から Is=0.88 z 以上より 1 −ν 2 Se = qB IS E 1 − 0.32 = 200 × 2 × × 0.88 = 0.01144m = 1.144cm 4 2.80 × 10 20
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